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2016.09.03
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カテゴリ: 読書案内
【井手英策/18歳からの格差論】
20160903

勤労国家では対応できない社会経済の大変動
大学生の息子から勧められて手にした本、それが『18歳からの格差論』である。
イラストが多く、平易な文章で書かれていて、たいへん読み易いのが特徴である。
どうしてこれを読もうとしたのか息子に聞いてみたところ、アマゾンの本のカテゴリ「イデオロギー」部門でランキング1位だったからとのこと。
なるほど、そういう読書の仕方もあるのか、、、

それにしても最近の政治・経済への興味の傾向を見ていると、ごくごく平凡な地方の大学生も「なんかヘンだぞ」とか「このままじゃいけないのでは?」と、少しずつヤバイ感を抱いているような気がする。
いわゆる都市部のエリート大学生なら、この問題についてもっと現実味を帯びた危機感を持って、主義・主張を展開するのではなかろうか。
もしそうだとしたら、「若者も、お年寄りも、貧困におちいる危険性が高い国、年収200万円以下の人たちが1000万人をこえ、非正規雇用労働者も2000万人をこえる国」について、本当に腰をすえ、真摯に向き合う日もそう遠くはないかもしれない。

著者の井手英策は、東大卒で専門は財政社会学とのこと。
代表作に『経済の時代の終焉』等がある。


『18歳からの格差論』を読んで初めて知ったのは、日本が先進国のなかでも一番「小さな政府」であるということだ。
つまり、財政は大きくなく、公務員の数ももっとも少ない最低水準の「小さな政府」なのだとか。
我々はテレビの報道の一部だけを見て、公務員なんてスゴイ高給取りで、仕事がラクちんで、定時に帰宅できるなんて、まったく税金がもったいないと、さんざん悪口を重ねて来た。
ところが実際は、先進国中もっとも少ない人数で行政を運営している「小さな政府」だと知ると、「それはどうもどうもご苦労さん」と言いたくなった。
とはいえ、これだけ削っても巨大な借金を抱えているのはおかしいではないか! とも反論したくなる。
そう、当然みなさんご存じのとおり、「税金があまりに安すぎる」からなのだ。
たとえ消費税が10%に上がったとしても、日本の租税負担率は先進国の平均を大きく下回るというのが実情なのだとか。
これって、ゆゆしき問題だと思った人は、私と同じ感性を持っていて話が合いそうだ。
「べつにいいじゃん」と思った人は、その理由を聞かせて欲しい。

シンプルなことだが、税金は貧困にあえぐ人に、しっかりとお金や教育などのサービスとして提供することに使われて欲しい。
こんなことを言ったら極端すぎると反論されてしまうかもしれないが、犯罪を少なくするのはこれしかないと思うからだ。

もちろん、「あの人、ろくに働きもしないで、もらうだけもらってズルい」という意見もあるだろう。私も同感。
でも、この本を読んでたいへんな勘違いであることを知った。
たとえば生活保護の不正受給についてだが、な、な、なんと全体の0.5%ほどしかなく、1%にも満たない数字なのだ。
ほとんどが健康上の問題や、年齢的に仕事を見つけられない老人など、深刻な問題を抱えている人たちが受給しているのだ。
このデータが本当だとすれば、いかに我々が弱者に対し、いや他人に対して不信感を抱いているかがわかる。

それが日本人の根本気質だとしたら、ちょっと哀しい・・・

『18歳からの格差論』は、政治・経済の観点からはもちろん、福祉の観点から読み進めてもたいへん参考になる。
ぜひとも一読をおすすめしたい一冊である。

『18歳からの格差論』井手英策・著



コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2016.09.03 06:59:39
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