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2018.08.11
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カテゴリ: 読書案内
【眉村卓/妻に捧げた1778話】
残暑お見舞い申し上げます。
しばらくブログの更新が滞っていました。
とくに多忙を極めていたわけでもなく、ごくごく日常をすごしていただけなのに、何か物事を継続するというのは大変難しい。
根気と努力が物を言う哲学のような気もする。
一週間に一冊本を読もう、一週間に一回DVDを鑑賞しよう、一週間に一度ウォーキングをしよう。
何度となく自分に課して来た目標なのに、それが今日まで継続できたためしはない。
ましてや毎日ショートショートを1本ずつ書くという気の遠くなるような継続は、たとえ作家と言えども容易なことではなかったであろう。

私は眉村卓の『妻に捧げた1778話』を読んだ。
この作品はテレビのバラエティー番組『アメトーーク!』の“読書芸人”という企画において取り上げられ、ベストセラーとなっている。


内容は、末期ガンを宣告された妻のために、1日1話ショートショートを書いた中の19話が抜粋され、エッセイとともに掲載されている。
眉村卓は大阪市西成区出身で、大阪大学経済学部卒である。
もともとはサラリーマンとして働きながらSF同人誌に参加していたようだ。
代表作に『ねらわれた学園』『なぞの転校生』などがある。
2011年には実話をもとにした映画『僕と妻の1778の物語』が公開されている。(ウェキペディア参照)

内容もさることながら、何がスゴイかと言えば、1997年に妻のガン宣告を受けてから亡くなる2002年5月28日遺体が戻った自宅で最終回を書くまで、一日たりとも途切れることなく書き続けたという事実である。
この継続力は見事な哲学と言っても過言ではあるまい。
某インタビュー記事を読むと、「1日1話を始めたのはなぜか」という質問に対し、次のように答えている。

「家内のために、ほかにできることがなかったからです。(中略)看病するにしても、素人ができることはそんなにありません」

作家として分をわきまえたこの物言いに感銘を受けた。
読書好きの妻のために「にやりと笑える話」を日々書き続けるという精神力と根気強さ。


作中、私はたいへん共鳴したところがあった。
それは眉村卓の妻が、「わたし、してもらいたいことがある」と病床の身ながらハッキリと口にしたことである。
「お葬式の名前は、作家眉村卓夫人・村上悦子にして欲しい」とのこと。
私はこの言葉に胸が熱くなった。
私も同じ立場ならそれを望んだかもしれない。

夫の職業に誇りを持ち、生涯協力者であり続けた妻の最後の願いに、涙が止まらなくなる。

本来なら作品一つ一つの主だった感想を述べるところだが、私が評価するのは何より、この作家の根気と努力である。
一つのことを淡々と継続していくことがどれほど大変なことか、おそらく皆さんもお分かりであろう。
「継続は力なり」という格言があるけれども、『妻に捧げた1778話』はその筆頭かもしれない。
熱しやすく冷めやすい方々、どうかこの作品のショートショートとエッセイを読んで、物事を続けていく意義とか意味を一考していただきたい。
暑い夏こそ、我が身を冷静に省みるのはいかがだろうか?!


『妻に捧げた1778話』 眉村卓・著


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から


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最終更新日  2018.08.11 07:00:06
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