2005年08月26日
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塾講師のアルバイトを通じてあったいろいろな体験談を忘れないうちに書いていこうと思う。

第一弾『つるかめ事件』

これは問題児のうちの1人、U子の話である。

僕はグループ授業でU子に算数を教えていた。ある日のこと、U子を個別指導していたU田先生からこんな話が来た。

「U子はつるかめ算もできないんですけど。」

その時、僕はU子を担当してから3週くらいしか経っていなかった。つるかめ算は、僕の授業で扱う単元ではなかった。だから、つるかめ算ができなかったのは、僕の前にU子のクラスを担当していた先生のせいだ、と言える。

しかし、現時点でのグループ授業を担当は僕。責任があるのは事実。僕が教える生徒につるかめ算も解けない生徒がいると言われるのは大層不名誉なことと感じられた。責任を感じるとともに恥ずかしくもあった。

U子は僕に対して反抗的だった。無神経に僕が傷つくことを言う。
「前の先生の方がよかった。」「うざい。」「キモい」



U子は問題を解かせようとしてもしない。彼女を形容すると「フニャフニャした剣」だ。才能がないのではなく、勉強に対する意欲がないのだ。「受験したくないのに、親にやらされている」ということを友達と話していたのを聞いたことがある。

受験を敵。剣が生徒。剣を持って切りかかるのが先生としよう。
いくら強く剣を振りかざしても、敵になんのダメージも与えることができな。

このようなことから、僕には「U子がつるかめ算くらいは解けるようになって欲しい」という気持ちが潜在的にあった。

夏期講習の二日目だった。
塾長に呼ばれて話をした。
塾長「先日、U子さんのお母さんから電話があって…」

なにやら相談らしい。

「授業中に『つるかめ算もできないのか。』と二度も言われたっていうんだ。」

僕「はい。一度言ったのは覚えているんですけど、二度も言ったかな?」

塾長「U子はみんなの前でいわれたことがイヤだったんだって。しかも、二度も言われたから大変ショックを受けた。U子のお母さんは『U子も悩んでいるので、そういうことは言わないで欲しい。』と言ってきている。」


と言われた。

U子たちのことを思い浮かべた。僕のクラスの問題児集団。そんな優しく言って聞くような連中ではない。

僕「しかし、あいつらは甘い顔をしてると無限に増長するんです。」

塾長「まあ、一番下のクラスだから仕方ない部分があるよね。まあ、今回の件は生徒には言わず、今後はやんわりとやったほうがいいよ。」

ふむふむ。ちょっと考えてみよう。



だが、小6ぐらいになるとある程度はできる。ただし、友達同士に限ったものである。

「先生」と「友達」とで明らかに態度を使い分けをしている。
友達は日常生活に大きく関わってくるもの。敵にしたら自分の身が危ない。

先生は別である。日常生活とは関係ない。授業だけで接する関係である。先生に対して悪い態度を取るのは、自分たちの権利を拡大することになる。

例えば、生徒Aが先生に「ウザい。」と言ったとしよう。そのとき、もし、先生がAを咎めなかったとすると、「その先生には今後ずっと『ウザい』」と言ってもよい。」という事になる。

生徒Aが切り開いた道は、A以外の生徒たちにも開かれる。その結果、周りの生徒の自由度は増し、発言の幅が増える。このことは周り生徒にとって嬉しいことであり、危険を顧みず切り込んだAの勇気は賞賛の対象になる。

Aが苦労して「先生に『ウザい』と言える道」を切り開いたことよって、周りの生徒たちは以前よりも自由に振舞うことができ、Aは株が上がり、仲間内での地位が上がる、という算段だ。

つまり、先生は敵に回した方が、仲間内ではよい効果がある、ということなのだ。


生徒たちのトゲのある発言は筆舌に尽くしがたい。

「うざい。」「きもい。」「バカじゃないの?」「なんで、勉強しなくちゃなんないの。」「焼き鳥が冷えちゃうから食べたい」「先生、絵描いてていい?」

ある日のこと、あまりにも「絵を描きたい描きたい」と言うので、僕は「じゃあ、描いていいよ。」と言った。「周りの生徒は勉強してるんだし、しばらくしたら、不安になって勉強を始めるだろう」と思ってた。しかし、その生徒は90分の授業の間ずっと絵を描いていた。しかも、悪びれることなく楽しそうに。

授業中に絵を描かれるのは耐えがたかった。その子の席は前から2番目。先生からよく見える位置である。

僕がどれほど楽しそうに絵を描く生徒の横っ面を引っ叩きたい、と思ったかはご想像にお任せする。

だが、耐えた。いつか、自ら勉強をしよう、と思う日が来ると信じて。

授業後に、その生徒はこう言った。「連絡帳に『ずっと絵を描いてました』って描かないでね。先生が描いていいって言ったんだからね。」

連絡帳は親が見るものだ。この問題児も塾で勉強していないことを親に知られるのは嫌なのだ。

生徒のペースにはまっていること気づき、屈辱感を覚える。言いなりになるのはごめんなので、連絡帳には間接的な表現で今日の授業の様子をほのめかした。

連絡帳に「絵が上手なようですね。絵もいいですが、勉強の方も頑張りましょう。」と書いたことを覚えている。

生徒を震え上がらせ、言うことを聞かせられるようになった今となっても、過去に横行したこのような出来事は鮮烈に覚えている。だから、いつ同じような状況になるとも限らない、また、このような状況を二度と起こしてはならない、という気持ちが強い。

生徒に対して、厳しくなるのも当然の成り行きである。

それでも、愛情を持って、「頑張れ。」「わからないところは聞きにきてください。」「大変なのはわかる。」と生徒の立場も考えつつエールを送っている。

以前、生徒たちを野放しにしすぎて、「指導力がない」とM美の母から苦情を頂いた。今度は、厳しくあたったら、「傷ついた」とU子の母から苦情が来る。

8人も教えているのだから、全員が納得する教え方はない。どんな教え方を教え方をしても、苦情はくる、と割り切るべきなのか。

「つるかめ算も解けないのか。」と言わないようにするのは簡単なことだ。だが、そんな生徒が受験を突破できるのかは甚だ疑問が残る。





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最終更新日  2005年08月27日 01時13分13秒
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