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イラン核合意(22)米露会談をフォローしている間に、イランで出来レースになっていた大統領選が終わりました。候補者推薦委員会が、立候補者300名強の内、殆どを資格なしと認定し、僅か7名の候補だけを有資格者と認定しました。司法府畑をずっと歩き、現職は司法府長官のライシ師以外の6名は、泡まつ候補と呼ぶのが相応しい、知名度の低い候補ばかりでした。ライシ師以外の保守系有力候補も、軒並み立候補資格を認められず、穏健派や改革派の有力候補も軒並み排除されたのです。これは、今回の大統領選では、何が何でもライシ師を大統領にするんだという、ハメネイ最高指導者のi意向を強く反映した結果でした。ライシ師を除く6名の候補には、改革派と中道派と目される候補が各1名づつ入っていますが、いずれも知名度の低い無名の人物に過ぎません。保守派と目される他の4名の候補も、まったく無名の候補ですから、完全にライシ師を当選させるための手続きに過ぎません。そのため、今回の選挙は、盛り上がりのないつまらない選挙になるだろう。焦点は誰が当選するかではなく、投票率がどのくらいになるかにありました。若者はしらけて投票に行かないだろう。投票率が50%を切れば、ライシ師信任投票と言える今回の選挙で、ライシ師は信任されなかったと主張する根拠を与えてしまうことにんるからです。選挙が不人気になり、棄権票が大幅に増えることを予測しながら、最高指導者のハメネイ師は、何故露骨な出来レースを選択したのでしょうか。それは、ライシ師は国民的人気に乏しく選挙に弱いことを、熟知していたからです。ライシ師は、4年前の大統領選挙に保守派の統一候補として出馬、保守穏健派のロウハニ候補に大差で敗れています。その時のライシ師の得票率は15%に満たない大敗だったのです。高齢のハメネイ師は、今回の選挙後、2年ぐらいしたところで、最高指導者の冠をライシ師に譲渡することを考えており、自分も大統領在籍中に、ホメイニ師の指名で、後継者となったことを思い出し、ライシ師の統治者としての能力をテストするために、ライシ師が確実に大統領に当選出来るようにすることにしたのです。 続く
2021.06.30
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米露会談(5)バイデン大統領は、会談後の記者会見で、次のように述べています。「私はプーチン大統領に、私のアジェンダはロシアやその他の国と敵対することではなく、アメリカ人を守ることなのだと伝えた。新型コロナと戦い、我々の経済を再建し、世界中の同盟国や友好国との関係を再構築し、我々の国民を守る事。それが大統領としての私の責務だからだと伝えた。」「人権問題は常に議題にしていくが、それは」人権侵害の問題でロシアを非難するためではなく、そうすることが米国人たる所以だからだ。人権侵害に対して声をあげないでいて、どうやって米国の大統領でいられるのか?」こう述べることでバイデン大統領は、今後も人権や民主主義の問題で、ロシアを非難することがあるけれど、それはロシアに敵対しようとか、ロシア政府を転覆させようとしているわけではないということを、明確にしたのです。プーチン大統領も、米国がロシアを敵視する姿勢を取り続ける事情は心得ています。それは米国内にロシアを敵視する有力な支配層が存在する為、米国の政治家は、時折反ロシア的な発言をせざるをえないこと、また米マスコミが時折プーチン大統領を個人攻撃したりする背景をしっかり理解していると述べました。ロシアにとって、大きいのは冷戦崩壊度、西側との防波堤役だった、チェコスロバキアやハンガリーなどに加え、ポーランドやバルト3国までもが、旧ソ連権を脱して、NATOの前戦基地に姿を変えたのです。その上ウクライナまで西側に取り込まれてはたまらないし、ベラルーシはルカシェンコにいてもらった方が好都合なので、ここには手を出してほしくない。こう考えています。EUやイギリスは、直接ロシアを攻撃する力はないから、やれ民主主義だ人権だと騒いでも、言わせておけばよいけれど、アメリカは違う。ロシアを攻撃する力があるから…そこで、プーチンとしても、アメリカとことは構えたくない。いつの間にか経済的力量では遥か上に怒れてしまった中国に、上から目線で見られるのも業腹だ。こう考えていたところへ、バイデン新大統領から、完全に対等扱いでの会談が持ち掛けられた。これは乗らねば損だったのです。アメリカにとって、対中国との真剣勝負に臨むときに、ロシアが中国側に就くのは悪夢です。その憂いは取り除いて起きたい。こういうことでした。ですから、ここに触れたら、本気で怒りますよという、16項目を渡して、ここには手を付けるなよと、宣言したのです。共に国内に良い顔をしたいですから、あえて言い話して、返事を求めなかったのです。相手に本気度が伝わったで良かったのです。従来のアメリカ外交は、対ヨーロッパが主で、アジアが従でした。それはここ10年の中国の急速な大国化で、はっきりと変わりました。今やアジアが主で、欧州は従なのです。温暖化対策で化石燃料の比重も大きく下がりますから、中東情勢も重要度は大きく下がりました。それだけに対中政策の重要度は大きく上がっているのです。お付き合いせざるを得ない日本の大変です。いずれにしても、コロナ問題が一段落すると、そのあとは非常に大変だと思われます。
2021.06.26
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米露会談(4)米国のシンクタンクは、「ロシアと中国は固い絆で結ばれているわけではなく、利益が衝突したり競合する領域もあり、当然両国間の摩擦もある。だから米国は両国を一体として敵視するのでなく、両国間に小さくても良いので楔を打ち込み、協力の範囲を制限するようにすべきである。」と提言していました。バイデン政権は、この提言を受け入れたようで、米露の2国間協議で、協力できる領域を増やすことと、敵対する事項を減らすことに協議を集中したのです。つまり対立する問題は脇へ置いたのです。米露両国は、今回の会談で、アフガン、シリア、イラン核問題、国際テロなどの問題についても協議し、サイバー安全保障問題についても、多くの時間を割いて討議したと伝えられています。こうした様々な問題について、協議できる関係に戻せたのは、ロシアにとってもですが、バイデン政権にとっても大きなプラスと言えます。バイデン大統領は、エネルギーや水道など、攻撃を許容できない重要インフラ16項目のリストをロシア側に渡し、こうした重要インフラに対する攻撃が仕掛けられた場合には、対抗措置を取る旨を伝えています。いわば、国家の重要インフラですから、ここが攻撃された場合、対抗措置を取るのは当然です。こんなことは伝えなくても分かるはずの事です。それなのにあえて発言したということは、当然その裏が問題なのです。つまり「リストにした16の重要インフラへの攻撃さえなければ、米国はロシアを攻撃することはない」と、ロシア側に伝えたということなのです。これまでの2国間の歴史を振り返れば明らかですが、これまでは圧倒的に米国側が仕掛けたロシアへの敵対的な攻撃の方が、多かったのです。西側のマスコミは、あまり積極的に報じてこなかったのですが…米国の世論を背景にしているので、「これからも人権や民主主義の問題で、ロシアを非難することがあるだろうが、これはロシア政府を転覆させようとしているわけではない」と明確にロシア側にシグナルを送ったのです。つまり、バイデン大統領はロシアを対等な国家として扱い、オバマ大統領やトランプ大統領のように、ロシアを格下扱いすることを慎重に避けたのです。この配慮は、大変心地よいものとして、プーチン大統領に届いたのでしょう。効果は大きかったように思えます。 続く
2021.06.23
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米露会談(3)プーチン大統領は、記者会見で次のように語りました。「米国とロシアはグローバルな戦略的安定に対して、特別な責任を負っている。少なくとも一つの理由は、保有する弾薬、弾頭の量、それらの運搬手段の数、核兵器の洗練さのレベルや質と言った観点から、我々が世界の二大国であるという点である。我々は共にこの責任を認識している。」「バイデン大統領が責任のある、またタイムリーな決断を下し、親START条約を2024年まで5年間延長したことは、誰の眼にも明らかな通り、この責任を認識していることの表れだと思う。勿論次のステップをどうするのかについて議論するのは自然な流れである。我々は米国務省と露外務省の背金の下で、省庁横断的な協議を開始することで合意した。」米国と対等に渡り合い、ロシアの主張を認めさせたと、実に気分よさそうに語るプーチンに対し、バイデンはあっさりと語るだけで、会見を切り上げています。ともかく米露両国は、世界の核大国同士として、グローバルな安全保障に責任を持ち、武力衝突の危険性や核戦争の脅威を低減させるために、外交官だけでなく、軍の専門家も交えた戦略的安定対話を立ち上げることで合意し、継続的に軍備管理のための協議を行うことにしたのです。この発表に対し、あちこちから「中国の入らない軍備管理の枠組みは無意味」との主張がなされましたが、バイデン政権にとって、ロシアとこうした合意が出来たことは、大きな成果と見てよいと、私は考えています。何故か。それは国際秩序を巡る中国との長期的な競争を戦う上で、バイデン政権は民主主義陣営の結束を強化して、権威主義国家である中国に対する圧力を強めようとしてきました。この大きな流れの中で、中国とロシアが同じ権威主義勢力として、対米共闘体制を進めるとなると、対抗上非常に厄介なことになります。出来うれば可能な限りそうした流れになることを遮断したい。こう考えて不思議はないのです。出来うれば、中露二国を同時に敵とする愚は、避けたい。二国を同時に敵とすることは、絶対に避けるべき課題である。バイデン政権はこのように考えているのです。 続く
2021.06.23
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米露会談(2)2日間空いてしまいましたが続きを記します。米露会談で、得をしたのは明らかにロシアであり、プーチンでした。それは日本のマスコミが特に大きく報じていたことですが、首脳会談にわざと遅刻して相手をイラつかせる常習犯のプーチンが、米露会談にあっては、会談場に先着してにこやかにバイデンを迎えたことが、見事に証明してくれています。トランプとの確執で、バイデンは今や「時の人」としてスポットライトを浴びています。そのバイデンと地等の立場で話し合い、一方的な譲歩などせずに、まさに対等であることを国民に示すことが出来たのです。今のロシアは、核兵器こそ数多く所持していますが、ソ連邦崩壊の折に、大量の格関係の科学者や技術者を解雇しています。彼らが、パキスタンや「北朝鮮」に三顧の礼をもって迎えられ、パキスタンや「北朝鮮」を核保有国に押し上げたのです。そんな状態ですから、ロシアの保有する核兵器の数が多くても、性能の点では疑問符がつくのです。しかし、ロシア国民にはそんなことは分かりませんから、「米露核二大国は…」と記す共同声明は、短くて簡単な内容であっても、ロシア国民にとっては、プーチン大統領は良く頑張ったそして、米露二国で世界平和に貢献するんだと、ソ連時代のような大国意識に浸れるのです。アメリカにとって、そんな二流国のロシアを持ち上げてまで、会談に持ち込み、ロシアとプーチン大統領を喜ばせる声明を出す意味は何かというと、今や同盟国を巻き込んでの真剣勝負をしなければならない羽目になっている対中国との戦い、中国封じ込めに成功するか否かの真剣勝負のための布石の一つなのです。米露会談終了後に、同行記者団を相手にブリーフィング(仲間内での情報提供)を行った、米政府のスポークスマンは、今回の会談の目的を次のように説明しました。1,米国や米露両国の利益を促進するために、実際にロシアと協力できる領域を特定する事。2,これらの利益が危険に晒されたり挑戦を受けた場合、米国は対抗措置を取ることをためらわないだろ うといことを、直接明確にロシア側に伝えること。3,我々の技巧政策の基本となる価値、バイデン大統領のアプローチについて、直接的にプーチン大統領 に伝え、少なくとも我々が特定の発言を繰り返す理由、特定の行動にフォーカスする理由をプーチン 大統領に明確に伝えることだった。これらの内、2と3については、ある程度ロシア側も承知していたと考えられますので、米国チームの国内向けのメッセージの側面も持っていたように思われます。ですから、最も重要なのは、1の協力できる領域について、米露間の認識を共有し、一定の合意に至ることが出来た点でしょう。共同声明に触れられた戦略的安定の問題です。 明日に続きます
2021.06.21
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米露会談 (1)今月16日にジュネーブで行われた米露会談、バイデンープーチン会談は、休息を挟んで3時間半に及んで終了した旨、発表されました。会談後米露の首脳は、別々に記者会見を行い、ほぼ同じように「会談は、敵対的でなく建設的だった。多くの問題で立場は異なるものの、互いを理解し接点を見つけようと話し合った。」(プーチンロシア大統領)、「会談は、グッド、アンド、ポジティブだった。」(バイデン米大統領)と述べました。しかし、会談後発表された共同声明は、極めて短く、その全文は以下のようになっています。「バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は、米露両国は緊張関係にある時期においても、戦略的分野における予測可能性を確保し、武力衝突の危険性や核戦争の脅威を低減させるという、共通の目標に向けて前進することが出来ると示したことに留意する。」続けて「最近の新戦略兵器削減条約(新START)の延長は、核軍縮管理に向けたわれわれの責務を示したものだ。核戦争に勝者はなく、決して行われてはならないという原則を、今日われわれは再確認する。これらの目標に合致するように、米露両国は近い将来、周到で確固とした、総合的な『戦略的安定対話』に着手する。この対話を通じて、われわれは将来の軍備管理とリスク軽減措置に向けた基礎作りをする。」(6月17日『共同通信』訳) これだけなんです。両首脳による共同記者会見もなく、共同声明もあっさりと短いため、華々しい成果をあげられなかったように見えるとして、会談の成果を否定的に見るマスコミが多かったようですが、私の見方は真逆です。明日からその点を少し記したいと思います。 続きます。
2021.06.18
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イラン核合意(21)イスラエル国会は、50:49:1というスレスレの採決で、ベネット首相、ラビト外相を柱とする新内閣の誕生(閣僚の発表はまだこれからです)を承認しました。連続12年、通算15年のネタニヤフ政権にやっと終止符が打たれたわけです。しかし、この内閣、右から左まで、極左と極右を除いた8党の連立内閣で、中には閣外協力ですが、アラブ人の民族政党も加わっているのです。政治的にも、イデオロギー面でも立場が大きく異なる政党の連立内閣ですから、彼らの新政権は、政治的に意見の合わない問題には取り組まず、国内経済や社会問題の解決に集中する方針だt発表しました。取り組む課題は、1、新たな病院や大学、空港などのインフラプロジェクトの推進2,国の財政を安定させるための予算の編成と成立3,宗教・国家については現状維持4,占領地における輸送計画の策定5,160億ドル以上をアラブ人地区のインフラや福祉改善のために配分し、暴力的な犯罪を削減する。6,マリファナを合法化してマリファナ市場をコントロール下に置く。ということだというのです。こうした経済・社会問題を優先させるとはいえ、新政権が政治的に意見の合わない問題を全く取り上げないで、ずっと政権運営を維持できるとは思えません。野党は当然議論が紛糾しそうな政治問題を取り上げて政権を攻撃するに違いありません。さて、イスラエルの新政権、どのくらい持つのでしょうか。そして訴追されているネタニヤフはどうするのでしょうか。ここにも波乱の芽が残っています。
2021.06.16
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ワクチン昨晩、午前0時を回った頃から、雷が鳴りはじめてやまず、次第に近づいてくるにつれて、豪雨を伴いましたので、あきらめて、1時過ぎに寝てしまいました。そのためご訪問も出来ず失礼しました。実は昨日、近所のクリニックで2回目のワクチン接種を済ませてきました。1回目の接種では、夜から翌日午前中にかけて、左肩に軽い痛みがあったのですが、副反応は今回の方が軽かった印象です。ただ、催眠作用があったようで、2時半の接種後、5時ごろから2時間近くの昼寝となりました。30分程度で起きるつもりで横になったのが、気づいたら暮れなずんでいました。睡眠後、夜中の3時半ごろ、身体がほてって目覚め、これは発熱の症状が出たかと、体温を測った所、36.7度。朝起きる頃には平熱の36.3度に戻っていました。高齢者の副反応はたいしたことはないからという、ホームドクターの説明の通りでした。これからお受けになる皆様、どうぞ気軽に受けにいらしてください。
2021.06.16
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イラン核合意(20)本日12日から、米国とイランのEUを仲立ちとした各競技の第6ラウンドが始まりました。この協議に向けた小さなシグナルですが、米政府がごくごく小さな内容ですが、米政府がイランに対する制裁をわずかに緩和しました。昨日11日、国連は、イランが国連分担金の未納分に当たる1,600万米ドルを、韓国に凍結されていた資金を充てる形で支払ったことを明らかにしました。この措置で、イランは、分担金の未払いで取り上げられていた国連総会での投票権を回復しました。米国の対イラン制裁は、貿易制限と各国に分散してイランが保持しているドル資産を凍結して、使用できない状態に追い込むことにありました。世界通貨であるドルの特徴を生かして、イランのドル資産を預かっている金融機関に対し、対イラン政府やイラン企業との取引を中断しない限り、米国の敵とみなして米国の金融機関や証券各社との取引を禁じるぞと、圧力をかけたのです。結果は効果絶大で、韓国もまた、イランが北朝鮮や中国に原油を買ってもらって得た虎の子のドルを、韓国の銀行に開設したイランの預金通帳に振り込んでもらって、韓国政府に事実上預けていたイランの国家預金を、米国の指示に従って凍結していたのです。この韓国にあるイラン政府の口座には、1,600万ドルを何倍も上回る額の米ドルが預金されています。従って凍結解除となったのは、全部ではなく一部のみで、未だに凍結分は残っているのです。それだけに、この僅かな譲歩をイランが評価するか、譲歩というにはあまりに小さいだけに、こんな些細な譲歩が、真剣に合意をまとめたい熱意の表れと評価するか、話にならないと切り捨てるか、なお見定める必要があります。行方を見守りましょう。
2021.06.13
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イラン核合意(19)バイデン政権が、イラン核合意への復帰とイランとの関係改善を本気で進めていること、そさらにその先に、アフガンからの撤兵と同じように、イラクとシリアからも手を引き、米国の軍事資源を、東アジア、特に中国の進出に、本気で向き合うことに集中する強い意志があることを感じ取ったのでしょう。サウジアラビアの対イランの姿勢が大きく変化してきました。米国は、中東の原油を既に必要としなくなっています。ですから、イランとの関係させ安定すれば、もはや中東に関わることは、ヤンチャなイスラエルの安全確保に関する事しかなくなります。イランの核武装さえ阻止できれば、中東にイスラエルの安全を脅かす勢力は存在しません。この事情をサウジ国王から伝えられたムハンマド皇太子も、イランとの関係改善に急旋回を見せ始めました。イエメンのフーシ派やイラク駐留のシーア派民兵の予告なしの攻撃にさらされる危険を避けて、国内の安全を確保するには、イランとの関係改善が必要だと思い定めたのでしょう。周辺の国々を誘って、イラン寄りだったカタールを締め上げようとして失敗した事も、国内で批判されたのでしょう。まずカタール封鎖をやめて、同国との関係を改善、「イランはお隣の国だ。我々はイランとの良好で気品のある関係を持ちたいということだ。我々はイランとの関係が困難なものになることを望んでいない。我々はイランとの関係が、お互いの利益に繋がることを望んでおり、それが世界の繁栄と成長に繋がることを望んでいる。」「現在、世界の国々がイランとの間の特定のネガティブな問題に対する解決策を模索しており、こうした問題を克服して、イランと良好でポジティブな関係を築き、それが双方の利益になることを心から望んでいる」これが、ムハンマド皇太子の肉声で語られたことなのです。従来のイランに対する敵意に満ちた強硬な発言と比べると、同一人物の発言とは思えないほど、180度の方針建艦であることが分かります。これに対して、イラン政府もポジティブに対応し、サウジとの対話に前向きの反応を示しています。両国は互いの隣国であるイラクで、局長級の協議を複数回にわたって行っており、地域の緊張緩和、イエメン紛争、イラクとシリアにおける代理勢力に対する支援問題などを、協議したことが明らかにされています。次回は、イランとサウジの大使同士の会合が計画されており、中東情勢が大きな転換点に差し掛かりつつあることを予感させる動きとなったいます。この動き、このまま順調に進んでくれると良いですね。
2021.06.11
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イラン核合意(18)イスラエル、野党連合による新政府、成立しそうですね。第1党のルクード、一応ネタニヤフが党首になっていますが、彼の首相在任が2年を過ぎ、お山の大将になりすぎて、金に来た亡くなったようで、最近は汚職まみれで、検察に訴追されています。首相在任中は裁判を免れるというルールによって、現在は守られているのです。どうやらリクードの中でも、ネタニヤフの強引なやり方と、金権体質を嫌う勢力が、育っており、これを機会にネタニヤフを引退に追い込もうとする人たちが、勢いを増しているそうです。そんなこともあって、議会で新首相の指名は、妨害工作があっても、長くは続かず、新首相の指名が出来なくなることはなさそうだというのが、欧米各国の見方になっているようです。
2021.06.08
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イラン核合意(17)イランの大統領選挙が18日の金曜日に行われます。護憲評議会の資格審査で、候補者は7名に絞られました。保守強硬派の有力メンバーも、ライシ司法府長官1名を残して、皆立候補を拒否されました。保守派でさえこうなのですから、改革派や保守穏健派の有力者は軒並み排除されました。ライシ氏に対抗できそうな有力候補は、全員事前の資格検査で失格とされました、その中には革命防衛隊の推す候補も失格、アフマディネジャド前大統領も失格。保守穏健派のラリジャニ元国会議長も失格、立候補を認められた候補は7人、ライシ氏以外の6人は、4名が保守強硬派、1名が保守穏健派(中道系)、1名が改革派ですが、6名は全員知名度の低いローカルな候補に過ぎず、ライシ氏を脅かすような知名度はありません。最高指導者のハメネイ師が、何が何でもライシ氏を大統領にすべく、国民に批判されるのも厭わず安全策をとったのですね。18日の選挙の興味は、ライシ氏の当選云々ではなく、投票率がどの程度になるかです。イランの大統領選はおおむね60数%で安定しているのですが、今回ばかりは護憲評議会や保守派に対する抗議のため、危険が大量に増え、結果焚きに投票率が大きく下がることが予測されています。これはロウハニ体制批判票ですから、投票率が50%を切ってくると、要注意です。さて、このライシ新大統領が登場するとどうなるのか。これが核合意の将来を決めます。6月2日にウィーンでの第5次ラウンドが終了し、6月10日から、第6次のラウンドが開かれることになりました。各国代表は国に帰り、次の協議に向けた意思決定と調整を図っているのでしょう。種々の情報を総合すると、こんな発言が拾えます、「我々は協議を継続し、次のラウンドで最終合意を達成し、米国が核合意へ復帰し、イランが合意事項の完全履行に戻ることを確信している。」(EU側代表の発言)とか、「普通に考えても次のラウンドが最後になるだろう。ただ、外交交渉は常に予測不能なところがあるが…」(イラン外務次官)と合意の近いことが匂わされています。一方ロウハニ大統領自身は、2日に次のようにかたりました。「今日、米国との間の主要な問題は解決された。イラン政府の条件に関して何とかする意志さえあれば、現政府の下で問題を解決することが出来た。そうすれば、制裁解除という国民への約束を果たすことができていた。」と、とても残念そうに語りました。ハメネイ最高指導者が、ロウハニ政権下での合意にゴーサインを出していないことが透けて見える発言です。米国とイランの交渉は、大詰めを迎えており、イラン側の政治決断次第というところに来ていることが読み取れます。そんな中、ハメネイ最高指導者は、何故ゴーサインを出さないのか。ハメネイ氏は米国の制裁解除に熱心です。そのために核合意復帰にはゴーサインを出しています。しかし、その合意を保守穏健派のロウハニ大統領の下で締結することには問題があると考えているようです。それでは、国内の強硬派が収まらず、国内政局が不安定化すると考えたのでしょう。保守強硬派のライシ政権が誕生してから、ライシ氏の下で合意すれば、保守強硬派の反発はグッと小さく抑え込むことが出来るはずと考えているようです。というわけで、核合意への復帰は、イランで新大統領が決まった後になりそうです。
2021.06.06
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イラン核合意(16)昨日記した反ネタニヤフ連合の同床異夢の組閣。まだ議会の審議に入る前に、早速もめていますね。アラブ人の政党を加えるとは何事だと、ゴテル政党が2,3出てきているとか。そこをネタニヤフ支持組がつっつくと、どうなりますかね。保守強硬派の右翼支持のユダヤ人市民が騒ぎ出すと、右派は連立に留まりにくくなります。無事新内閣が発足できるかどうか、早速分からなくなってきているようです。核合意の行方も書きたかったのですが、もうしばしお待ちください。本日は簡単で失礼します。
2021.06.05
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イラン核合意(15)1週間近くご無沙汰しました。2本抱えていた雑誌原稿がなかなか出来上がらず、時間が取れなかったからです。そうしているうちに、イスラエルから驚きの情報が届きました。ハマスとの9日間の戦闘の指揮で、落ち込んでいた国民の支持を取り戻したネタニヤフ優位の形勢になったと記したのですが、まさに事が反ネタニヤフ陣営の大同団結を産むことになったのです。これは予想外の動きでした。ネタニヤフの支持回復を見て、右派政党ヤミナの党首ベネット氏は、大統領から6月2日期限の組閣を任されている国会第2党イェシェ・アティドの党首ラビト氏との連立協議を一度ご破算にしました。戦闘と勝利、そして短期間に和平を実現したネタニヤフと組むことを考えての動きでした。ところが、イスラエル憲法は、議会選後第1党の党首も、第2党の党首も、共に与えられた1か月の期間内に組閣に成功しなかった場合、大統領は再び議会を解散して総選挙を実施するとなっています。今回まで3回選挙が行われたのですが、未だに組閣に成功した政党が現れず、6月2日までにラビト氏が組閣に施行しなかった場合、4度目の総選挙になります。そうなると、人気を回復したネタニヤフ党首のリクードが議席を伸ばすのが確実です。野党は大きく議席を減らす可能性が高い。ラビト氏は、こう考えて再度ベネット氏に連立協議を持ちかけたのです。この賭けは試行しました。こうして6月2日深夜12時の2時間前、夜10時ごろにラビド氏は大統領に組閣名簿を提出したのです。ともかく、内閣を組織して、総選挙を回避するそれが一番の目標でした。多くの少数政党が参加する寄り合い世帯ですから、何時壊れるか分からないのですが、イスラエル政界にとって画期的なのは、史上初めて国内のアラブ人の政党まで加わった連立政権が初めて誕生し、アラブ人の大臣が登場することです。諸省となるベネット氏とラビド氏の目標は、ネタニヤフの収賄疑惑に関する裁判を加速し、彼の有罪と服役の可能性を喧伝することで、リクードを分裂に追い込み、ネタニヤフ支配を最終的に終わらせることにあります。そこまでできれば、連立が壊れても構わない。こういう絵が見えてきます。しかしネタニヤフも大人しくは引き下がらないでしょう。両派の攻防はまだ続くように思われます。何しろ一寸先は闇の世界ですから…
2021.06.04
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