成定 竜一~高速バス新時代~
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以下の記事を読んで、もしかしたら驚く方がいらっしゃるかも知れない。さきほど、私は、楽天のオフィスに最後の出社を終えてきた。数ヶ月前から、楽天バスサービスの仕事を辞することを考え、私なりにその段取りも終え、本日(書面上は2月末日付け)をもって退職を済ますことができたのだ。近い立場の(例えば業務上で関係があるなどの)方ならご理解くださっていると思うが、業務内容や会社に対し不満があっての退職では一切ない。もし体が二つあれば、間違いなく楽天トラベル高速バス予約事業の事業責任者の立場を続けることだろう。サイトとしての成績はおおむね順調だ。取扱高は依然として前年比30%以上の成長率を維持しているし、高速路線バスの取扱も、開始以来13ヶ月で13社にまで増えたから、平均すると毎月1社のペースで増加している。なによりも、<我が国の高速バスには「商品力」はあるが「販売力」が不足している。特に地元名士企業である地方の既存事業者の「威光」が届かない、首都圏や京阪神など大都市圏で潜在需要が大きく残っている。それを補うのはウェブマーケティングしかない>という信念は変わらないし、その「販売力」の先頭に立ち、常に自らその数字を追いかけることの意義や充実感は、他では味わうことができない。いや本当なら、ようやくサイト上に13社の高速路線バスが並び、これからも増えていくわけだから、それらをどう売っていくのか、事業者と一緒に考えて伸ばしていかないといけない責任が、きっと私にはあるはずだ。本来なら、やっとスタートラインに立ったに過ぎない。とはいえ、ずっと一つところに留まっているわけにもいかない。ガチガチの「アンチ・ツアーバス」論者でありながら楽天バスサービスに転職を決めた際、強い思いとしてあったことは、<まずは、ウェブという効率的なマーケティングツールを活用すれば高速バスの乗客数を抜本的に増やすことができる、という実績を作り上げたい。そうすれば、「パイの大きさは不変」という感覚から抜け出せない既存事業者の皆さんも、マーケティング活動により積極的になるはずだ>というストーリーだ。その後、内心ではそれまで軽蔑していた高速ツアーバス各社の経営者や担当者と実際に一緒に仕事を重ねていく上で、彼らは彼らなりに真摯に業務に取り組み、かつ多くの壁にぶちあたっているのを知り、高速ツアーバスを育て上げるという目標も、後から加わった。後者の目標の方は、「質」という意味で心もとない部分はあり、「数字」という面ではそれなりの達成感を感じている。だがやはり私にとって真の目標は前者である。そして、この<既存事業者がより積極的にマーケティング活動に取り組むようになる>という目標について、最低限のハードルをクリアしたという意識が、今回の決断の背景にある。全国の既存事業者にお邪魔していると、行く先々で、<成定さん、ウチの会社も何かしないといけないんだよね。でも、それが何なのか、どうやって実現するのか、ぜんぜんわからなくて困ってるんだ>というお声を聞くようになったのだ。大学に入学して初めてのマーケティングの授業の冒頭で、その世界ではけっこう有名な教授は、黒板に二つの円を書き、円と円に挟まれたスペースをゼブラ(斜線)で埋めた。そしてこうおっしゃった。<マーケティングとは、「企業(提供者)」と「市場(消費者)」をつなぐ、全ての物事の総称である>。マーケティングとは、決して市場調査だけのことではないし、決して広告だけのことでもない。消費者のニーズを把握し(またはそれを新規に作り上げ)、それに見合った商品を作り、消費者に商品の存在を知らしめ、実際にそれを購入して使ってもらうための、全ての段取りをよりよくする取り組み全体を指す。予約サイトの事業責任者としては、当然、そのうちの「商品の存在を知らしめ」ることが役割の中心であった(もっとも、事業に踏み込むという会社のポリシーと、おせっかいな私の性格柄、それ以外のことにもかなり口出しはしてきたが)のに対し、これからは、より上流から下流まで、各事業者のお手伝いをすることを求められていると思うのだ。3月以降、どのような形で高速バスのお手伝いをしていくかについては準備が整ってからあらためてお知らせするが、どこか特定のバス事業者(あるいは高速ツアーバス企画実施会社)の社員になるとか、自分で楽天のような予約サイトを始めるとかではなく、前向きな事業者(あるいは企画実施会社)であれば全ての会社のお手伝いをできる立ち位置となることを考えている。今まで以上に、業界全体の「黒子」としての役割を追及していくつもりである。いつまでも、バス産業、わけても高速バス事業のどの部分をお手伝いするのが最適か先へ先へ読み、常にその守備位置に待ち構える遊軍、遊撃手であり続けたい。取り急ぎ、5年間にわたり拙い私を支えてくれたスタッフ全員と、お取引先各社、さらにはまだお取引につながっていない各社の皆様、そして本ブログを読み続けてくださった皆様に、あらためて深く感謝を申し上げる。最後にもう一度、私の思いを。<高速バスは、十分な「商品力」はあるし、「地方部」においては十分な認知があるが、特に「大都市部での販売力」が不足している。高速バスとは鉄道や航空といった既存の輸送モードに対する「挑戦者」にほかならず、「商品力」「販売力」双方において、ひと時たりとも現状に満足することは許されない。既存事業者にすれば環境変化を恨みたくなる理由はわからなくはないが、(広義での)規制緩和やウェブ普及といった変化は、実際には、新興の貸切専業者や企画実施会社にも、既存の乗合バス事業者にも「同じ大きさの未来」をもたらしてくれているのである>
2011.02.15
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