全10件 (10件中 1-10件目)
1
先日、私の古巣である楽天トラベル高速バス予約に、神姫バスの富士山ツアーが登場とご紹介したばかりだが、名鉄観光バスの名古屋~東京線も取扱いも開始したようだ。名鉄観光バスと言えば、旧社名である名古屋観光自動車の頃から、「ドラゴンズパック」ブランドで自社ツアーを積極的に展開、特に東京ディズニーリゾート(当時は「ランド」のみ)へのバスツアー専用車両として夜行運行用の高級車両、その名も「メルヘン」を大量に揃えていたのが印象的だ。今回の商品が、TDRツアーの一部を切り売りするものなのか、都市間の高速ツアーバス用に専用の運用を組むのかは承知していないが、震災以降、TDR関係の集客に各社とも苦戦していることは間違いなく、その落ち込み分の穴埋め対策であることには変わりないだろう。各社の情報を総合すると、震災後、高速ツアーバスの集客は瞬間的に落ち込み、創業以来初めてとなる前年割れを記録した会社もあったようだが(現在ではおおむね従来の成長率近くまで持ち直しているようだ)、その中でも特に落ち込みが激しかったのが名古屋~東京線だ。しかも同路線に限ってみても、昼行便に比べ夜行便の落ち込みは極端だった。ひとえに、それはTDR関係の集客が苦戦したことによる。正確な統計データはないが、いわゆる高速ツアーバスとして運行する車両(※)のうち、TDR関係のお客様が占める比率は、名古屋~東京線が圧倒的だ。※「いわゆる高速ツアーバスとして運行する車両」とあえて書いたのは、実はそれらに乗車しているお客様の中には、大手の一般的な旅行会社が企画実施するTDRバスツアーのお客様が多く含まれているからだ。大手旅行会社で沖縄ツアーを申し込んだら往復の足にANAやJALの飛行機を利用するように、大手旅行会社でTDRツアーを申し込んだら往復の足に高速ツアーバスを利用する、というものだ。逆に言えば、既存の高速路線バスも大手旅行会社ともっとうまく関係を築けば乗客数を増やせるということではある(もっとも、運用面などで先方のペースに合わせざるを得ず、現実には難しいだろう)。それだけ、中京地区の、特に若年層の間では、「TDRへはバスで行く」という文化が定着しているということだ。そして、それを文化にまで育て上げたのは、他でもないこの名鉄観光バス(というより、名古屋観光自動車ドラゴンズパック)なのである。その背景には、地域一円に根を張る名鉄グループの存在感、販売力があったことは間違いない。JTBや日本旅行といった大手旅行会社が、例えば関西地区で掘り起こした「バスで行くTDR」という市場の、おそらく何倍もの市場を、彼らは中京地区で作り出したのだ。とすれば、だ。もし名鉄グループがその頃から東京線の高速バス事業にも積極的だったら、と考えると少し残念な気もする。名古屋~東京線の高速バスは、東名高速開通とともに国鉄バスと東名急行バスによって運行が開始された。名鉄は、東急、静岡鉄道、遠州鉄道など沿線のバス事業者とともに東名急行バス設立に参加したわけだが、いくら大株主とて、「自らの商品」として中京地区における名鉄グループの販売力を総動員して東名急行バスの販売強化を行なったわけではないであろう。私が言う「第1フェーズ」時代の話だ。その後「第2フェーズ」時代に入って、名鉄自身が大都市側事業者として中央道、北陸道方面や夜行便の運行に自ら参入した。共同運行事業者の現地側の販売力に頼る部分が大きかったが、それでも名古屋側でも相応の需要を喚起しただろう。一方、「第1フェーズ」の象徴だった東名急行バスという会社は早々に解散に追い込まれた反面、国鉄バスは路線を維持し続けたから、認可制の時代において名鉄グループが自身が東京線に進出することは難しかった。ダブルトラック容認、需給調整撤廃など規制緩和の流れを受け、名鉄バスとして京王と共同運行の形で自ら東京(新宿)線を2002年に運行開始した際、既に民営化されていたJRバスは積極策に転じており、さらにウェブ時代が到来し高速ツアーバスが急成長したため、東京(新宿)線において名鉄グループの底力を発揮できる環境ではなかった。多数の事業者が方面別に高速バスを運行し、人口規模も著しく大きい首都圏、京阪神で高速バスの認知が難しいのは致し方ない。しかし名古屋と仙台においては、名鉄、宮城交通という(奇しくもグループ会社だが)圧倒的存在感を持つ事業者が存在し、名古屋から地方都市、仙台から東北各都市といった路線では彼らが十分に力を発揮しているのにかかわらず、名古屋~東京、仙台~東京において高速路線バスが成長しなかったのは、認可制の元でこれらの路線が「第1フェーズ」時代の「生きた化石」となってしまったからだ。もし名鉄、宮交自身が早くから自らの商品として東京線にノウハウを注入し積極的に販売する環境が整っていたら、これらの路線での高速ツアーバスの台頭はなかっただろう。ただ、外的環境は変化する。いったん成功をおさめた「第2フェーズ」型モデルも、いつまでも圧倒的勝ちパターンではない。もしそれらの路線が、マーケティング意欲の不足や共同運行のしがらみの中で外的環境変化にうまく対応できなければ、「第2フェーズの生きた化石」として、新規参入事業者の草刈り場となってしまうに違いない。そうなる前に自らの体にメスを入れる勇気が、いま試されている。
2011.06.30
コメント(0)
勤め人を辞めて高速バスマーケティング研究所を設立してから、とにかく時間が過ぎるのが速い。震災対応のお手伝い、そして「バス事業のあり方検討会」で決まった新制度。楽天という会社もかなり時間が速い会社であったけれど、事業のほぼ立ち上げから携わり5年も経ち事業の幹が出来上がってしまうと、気づかないうちに時間の流れがゆっくりとなっていたんだなあと反省する。そんなことを考えたのは、昨日の夜、F1の予選中継をCSで見ながら。明け方までカナダGPの中継に付き合ったのがまるで一昨日くらいの印象だが、あれからもう2週間も経つのかと。いつまでも、この時間の速さを大切にしたい。さて、「バス事業のあり方検討会」報告書に書かれた新制度、通称「新高速」には、私は二つの立場からかかわっている。一つは高速ツアーバス連絡協議会の立場。協議会設立準備の段階から楽天バスサービスが協議会の事務局を担当していたから私は事務局長であったわけだが、私自身が楽天を辞し、その後会員の震災対応への支援や延期されていた「検討会」もいったん終わり、先日の会合をもって事務局長の呼称は返上した。本当は、新しいクライアントのほとんどが既存の高速路線バス事業者だということもあり協議会との関係自体をゼロにしようかとも考えたが、様々な事情を考え、「顧問」という立場でお手伝いを継続することにし、先日の理事会でお認めいただいた。なお事務局は引き続き(手弁当で)楽天バスサービスが担当しているので変わらぬご協力をお願いしたい。「新制度を作る」と報告書に書くことは簡単(もっとも、行政が報告書にそう書く時点で、実効性など十分に摺合せを終えてはいるが。多くの方からご心配を聞くけれど、ここに書けないことも含め様々な点を考慮済みではある)でも、いざ制度を変えるとなると対応すべきことは山ほどある。私としては、高速ツアーバスの実態を(安全性担保のために変えないといけない部分は除いて)なるだけ多く「新高速」に反映させつつ、決まりつつある制度を噛み砕いて会員各社に伝え必要な対応を促していくという仕事を進めていく。貸切専業者や旅行会社が乗合事業者に変わるわけだから(建前上「乗合」と「貸切」に求められるレベルは同じとはいえ、実態として)相応のハードルがあることは間違いなく、それは何としてでも越えてもらわねばならぬ。ハードルを越えられなくて高速バス事業から撤退するのは仕方ない。ただ、安全性担保以外の側面で制度対応に苦慮したり撤退を余儀なくされたりという例は出したくない。細心の注意を払い関係者と協議を続けている。全く手弁当で動いてきたわけだが、自分で高速ツアーバス事業を営んでいるわけではない点が会員の皆さんとは異なるので、形ばかりは協議会から委託費を頂こうと考えている(来月の総会の議案の一つに入っているので、会員の皆さん、ご理解をお願いします)。いずれにせよ、今回の制度改正を導けたことで、この協議会を作って本当によかったとあらためて実感している。もちろん、「高速ツアーバス」という業態自体があと数年で無くなる予定なのだから、本協議会もそれに合わせて消滅するのが当然だ。「移行組」の利害を守る仕組みを維持しつつ解散するまでの段取りも様々な関係者とご相談を重ねないとならない。このように協議会を通して広く浅くお手伝いする高速ツアーバス各社とは異なり、既存の高速路線バス各社とは、高速バスマーケティング研究所としてご依頼をお受けした事業者さんに対し、個別により深く具体的にお手伝いをしている。もっとも、<「新高速」対応を手伝ってほしい>などというご依頼を受けた会社は1社もない。私がずっとご提案してきた<既存の高速路線バスも今日的なマーケティング手法を積極的に活用し事業拡大に邁進すべきだ>という主張に共感いただきコンサルテーションのご依頼を(直接的に、または間接的に。「間接的」というのは、共同運行会社など取引先のコスト負担でという意味だ)いただいている事業者が全国にいくつかある。楽天時代からお付き合いがありトップから現場まで私の考えをよくご理解いただいている事業者も、また一部の役員や担当者が共感して下さりまずは社内で講演や勉強会を催し会社全体をこれから巻き込んでいかないといけない事業者もあるが、いずれにせよシステム改修や商品再設計、社内体制再構築など処方箋を正に組み上げようとしている段階だった。そこにこの「新高速」の話である。共同運行先との関係など事業者により若干の環境の差はあるが、既存の高速路線バス事業者の立場から見ると、この新制度は極めて「活用しがい」が大きい。ある既存大手事業者の課長さんが「ビジネスチャンス」という表現を使っていたが、高速ツアーバス各社とは別の意味で、既存の高速路線バス事業者にとってこの制度変更がもたらす未来は非常に大きいのだ。ただ残念ながら、そのことへの感度は鈍い。そもそも既存各社にすれば、制度が変わるとはいえ一切何の対応をせずとも事業を継続できる。それに具体的な情報が不足している(報告書の文面を読んだだけでは伝わらないのは仕方なく、だからこそ高速ツアーバス各社に対しては協議会から委託を受け私が「通訳」していくのだが)。さらには<高速ツアーバス各社にだけ有利な内容だ>と決めつけ、その報告書さえ子細に目を通さない人がいるのは心から残念だ。それだけに、コンサルテーションのご依頼を受けている各既存事業者の皆さんに、制度を噛み砕き「新高速」では御社もこんな新しい取組が可能なんですよ、と具体的にお話しすると喜んでいただけるのだ。ただ一つだけ、全ての既存事業者に忘れてほしくないことがある。この「新高速」は「利用者が求める高速バスサービスのあり方」を制度として形にしたものだ。なぜ今、この制度変更なのか、その先にある「利用者が求める」ものは何なのか、自らの頭で考え腹に落とし込めて初めて、この制度改正を活かせるのである。<規制がユルくなるからあれもしたい、これもしたい>では、どのような結果をもたらすか、今から目に見えるようだ。
2011.06.26
コメント(0)
私の古巣である楽天トラベル高速バス予約の「富士登山ツアー特集」(本来は高速バス各社の予約受付が事業領域なのだが、TDRや東京スカイツリーなどのバスツアー、定期観光バスなどとともに派生的に扱っている)に、とうとうこんな会社の商品が新登場した。私にとっては、生まれ育った実家の目と鼻の先にバス停が立つ愛着ある路線バス事業者である。中学、高校と、私は神姫バス本社の前を通って通学した。今でも同社にお邪魔する際には、30分ほど早く着いて懐かしい街をうろうろする。通学経路上の商店街にあって毎日のように立ち読みをしていた2軒の老舗書店は、ドラッグストアと100円ショップに姿を変えて久しい。先日は、重厚な石造りが印象的な都銀の支店で現金を引き出そうと思い向かったら、そのレトロな外観内装を活かした結婚式場に生まれ変わっていた。仕方なく周囲を見渡すと、道路の向かい側に合併相手の銀行の支店があり、支店機能はそちらに統合されていた。巨大なメガバンクの経営にどれだけインパクトがあるのかはともかく、少なくとも物理的に支店を統合した限り経費は下がっていることだろう。ピーク時の4割にまで市場がシュリンクしてしまった路線バス事業において、当時と同じ数の事業者が変わらず存在することの異常さを少し思った。さて同社の上杉社長さんは、「バス事業のあり方検討会」において激論?を戦わせた相手でもある。私としては、地元紙『神戸新聞』などで何度もお顔やお名前を拝見してきた上杉社長さんと同じ会議に出席できるというので、胸を借りるつもりで臨んだ。私が単に高速ツアーバス各社の利害だけに固執しているのではなく、バス産業全体のあるべき姿を考える中で高速バス事業のあり方の変化を主張している旨はご理解いただけたと思う。会議では意見がかみ合わなかった部分も正直ある中で、自社商品の販路拡大に楽天トラベルを活用しようとご決断いただけたことは大変光栄である。私は既に楽天を離れた身であり、富士山以外の同社商品が今後楽天トラベル上に次々と登場するのか、また上杉社長さん以外の「検討会」委員の皆さんの会社の商品も楽天トラベルに並ぶのか、までは承知していない。ただ一般論としては、同検討会の報告書において、高速路線バス各社は「一般的な旅行系予約サイトの積極的活用」を求められていることも考えると、各社がなだれを打って契約することが予想される。既存路線バス事業者の商品の楽天トラベルでの取扱が、まずは定期観光バスやバスツアーからスタートするのは、一つには各社ともその種の商品については集客のためにコストを使うことに抵抗がないという理由がある。同時に、これはうがった見方かも知れないが、高速バスについては「共同運行」という事業モデルが障壁を作っているという要素もあろう。実は私が知る限り、A社では楽天トラベルの活用に前向きで、B社もまた前向きで、かつA社とB社は高速バス路線を共同運行している、という例がいくつかある。ところがA社とB社は、路線開設した当初は経営者同士、担当者同士の交流もあったものの、今日ではお互い電話で時々話すだけで顔も知らない、という関係だったりする。事業の戦略について腹を割って話せない相手など、事業パートナーとは呼べないはずである。ましてや、これから「新高速」の制度が導入されると、過去数年と本年の予約受注データを分析しながら、リアルタイムに便ごとに運賃を変動させ、多数のチャネル(販路)を1席単位でコントロールし、予測される需要量を元に他社(貸切専業者)の車両と乗務員を1台単位で調達していかなければならないのである。いや、厳密にいうと「していかなければならない」わけではない。今までと同じやり方を貫くことは不可能ではない。ただ、新制度の柔軟さを最大限に活用せねば、何が起こるかは想像できるはずである。逆に、先手必勝で自ら新制度を活用しきることでどのような成長が既存事業者の高速路線バスにもたらされるか、という観点でみると、きわめて大きな未来がそこに存在する。まずは今、定期観光バスやバスツアーから、という選択が間違っているとは言わない。しかし、中学生の初恋のように、共同運行先同士でお互い言葉に出すきっかけを探っているような時間はもうない。仮に今年中に「新高速」の詳細が決定し省令などの改正が実施されるとして、そこから逆算して新制度下での商品設計、基幹システムの改修、レベニューマネジメントのノウハウ習得、それを実行する体制づくり……私なら、今日一日が無駄に過ぎるのさえ惜しく、上司のデスクの上に這い上がり胡坐をかいて座り込んででも、「新高速」への対応準備を急ぐよう会社を説得するのだが。既存の路線バス事業者でも、第一線のミドル(本社の課長クラスなど)の中には、この報告書がもたらす環境変化の意味に気付いている人が多い。彼らが、ミドルの立場からマネジメントに働きかけ会社を導いていくことができるか。その意味で、将来のマネジメント候補としての彼らの実力が、これを機に試されているのかも知れない。
2011.06.23
コメント(0)
先週15日(水)、東京・大手町の経団連会館で、日本バス協会の定時会員総会・全国バス事業者大会が開催された。私自身は参加する立場にはないが、何人かの関係者から、なかなか印象深い大会だったとお聞きしたりコメントを求められたりしたので、本日は、20日付『東京交通新聞』記事を引用しながら感想を書いてみたい。同紙には、本大会では<震災後のバス事業の役割や今後のバスのあり方についてA氏やB氏が見解を述べた>とある。紙面では「A氏」「B氏」」は実名である。参加しておらず、記事も読んでいない方は、以下、A氏、B氏がどなたか、想像しながらお読みいただきたい。<A氏が規制強化や国の支援の必要性を強調したのに対し、B氏はこれまでの「安全、公平、確実」という行政課題に基づいた制度から、柔軟に時代に対応できるような対応に取り組んでいく必要性を強調>。<A氏は貸切バスやツアーバスについて「安心安全で利用しやすいサービスを維持するには規制が必要だ。行き過ぎた規制緩和の見直しを求めていく」と述べた。特に14日にまとめられた国交省の「バス事業のあり方検討会」中間報告の「新高速バス」移行について(中略)「新高速への移行の明記は、野放しだったツアーバスに大きなくさびを打ち込んだ。ツアーバス全面禁止の第一歩になる」と評価した><一方、B氏は「規制についての考え方を述べたい」と前置きし(成定注:ウワサでは、さらにその前に「Aさんとは考え方が違うかも知れないが」とも付け加えたという)、「厳しい日本の状況でバス事業が生き残るには大きな障壁(規制)の中で小さく生き残るのではなく、新たなイノベーションを考えていかなければならない」との考え方を打ち出した>皆さんは、A氏、B氏、それぞれどなたか、おわかりになっただろうか。もちろん、上記はその場に同席したとはいえ一メディアの記者さんのバイアスがかかった記事だし、お立場として言わねばならぬ意見と個人としての意見が一致するとは限らない。また、どちらかが間違った意見をおっしゃっているわけではなく、それぞれのお立場としてそれぞれに正しいことをおっしゃっているに違いない。どちらが正解という気はない。あえてここでご紹介したのは、どの組織が、どのような考え方を持っているか、バスに携わる者は皆、理解しておくべきだと考えるからだ。答えを言うと、「A氏:日本バス協会 堀内会長」、「B氏:国土交通省 中田自動車交通局長」である。ちなみにB氏、もとい中田局長さんの見解をもう少し詳しくご紹介すれば、<伝統的に公共交通は安全、確実、公平にサービスを提供することが至上命題だった。それを行政の最大課題としてやってきた。その結果、体に背広を合わせるのではなく。背広に体を合わせるような場面もなかったわけではないと反省もある。ニーズは多様化し流動化している。弾力的、積極的に取り組んでいくという転換が十分ではないと反省している>とある。<現場を見ず霞ヶ関でもっともらしいことを言っている>という指摘もできよう。一方で、そのような外部の目だからこそ、長いスパンで本質的に物事を考えられる、という側面もあろう。<大きな障壁の中で小さく生き残る>ことを目指したら我が国のバス産業がどういう行く末を辿るか、目を背けず直視してほしい、という行政の「親心」が最大限に盛り込まれた、心の籠ったメッセージだと私は思う。ストレートに物をおっしゃる中田局長さんならではの、実は優しさ溢れたスピーチではなかろうか。考えてほしい。今春、「安定した地元の名士企業」という理解でバス事業者に就職した若者たちが今から約40年して定年を迎えるとき、バス事業者は「安定した名士企業」であり続けているだろうか。間もなく40歳になる私が、あと40年して白髪の老人になったとき、病院や買い物の足としてバスは役に立ち続けてくれているだろうか。堀内会長さんのスピーチを非難しているのではない。むしろ、もし上記スピーチのうち「ツアーバス全面禁止の第一歩」という部分を、例えば以下のように入れ替えたらどうだろう。「発送電分離阻止の第一歩」。「TPP参加阻止の第一歩」。「(新聞や書籍の)再販制度撤廃阻止の第一歩」。個別の政策についてうんぬんではなく、この国、およびこの国の産業全体が、同じような問題を抱えているという事実……もちろん、上記各主張の裏側には、それぞれに大切な「大義名分」があることは間違いない。「電力の安定供給」「食糧自給率向上」「国民の文化水準の維持」、そして「公共交通ネットワークの維持」。重要なことは、間違いなくこれから市場がシュリンクを続ける、ということだ。もう、右肩上がりの環境ではない。それでも、私はバスに社会の役に立ち続けてほしい。そのような前提に立つと、ここでかじ取りを間違うと、それは皆で座して死を待つようなものだ。公益性が大きい平場の路線バス分野で単純な規制緩和がいいかどうか、別の議論はあろう。また逆に規制緩和さえすればバラ色とも思えない。ただ一つ、従来のやり方やその延長線上にある考え方ではバスという産業と輸送モードを守ることはできない、ということだ。さて、上記大会の前日、高速ツアーバス連絡協議会は東京に85人の会員を集め、国土交通省の皆さんから「新高速」について2時間みっちりレクチャーを受けた。私の所には会員からの質問も続く。一方、この大会で説明があるはずだった既存の高速路線バス各社は、「新高速」の情報を具体的にどれだけ聞けたのか。既存事業者も基幹システム改修など大きな対応を迫られる新制度だ。歴史的な制度改正へのカウントダウンは実は既に始まっている。
2011.06.22
コメント(0)
「バス事業のあり方研究会」中間報告書の第5回。昨日までの補足だが、高速ツアーバス企画実施会社が「新高速」に移行するためには、制度上は「一般乗合」の事業許可が必要になる。企画実施会社がバス部門を持っている場合はその部門が取得するが、旅行会社とバス会社が親子関係の場合は多少の整理が必要だ。さらにバス事業を一切行っていない旅行会社の場合は……新規にバス事業部門を作るか、他の事業者を買収するか(企画業務から撤退し販売事業に徹するという道もなくはないが)。<そんな会社が乗合許可を取得できるの?>という疑問も出そうだが、実は法的な要件に限ってみると乗合も貸切もほとんど変わらない。乗合事業参入のハードルは高いという「常識」は、ほぼ「バス停の権利」に起因すると言っていい。現にコミバスではタクシー会社などでも乗合許可を取得できている。ただ、実際の運用面で求められるレベルは上がるだろうから、そこは死に物狂いでついて行ってほしい。合わせて、運行会社(貸切バス事業者)も「管理受託」に関する許可を新たに受け、かつ委託者から安心して委託してもらうためには努力が必要だ。むしろ大変なのは運行会社の方かも知れない。さて本日は報告書解説の最終回。今回の報告書をよく読むと、「あえて書いた」と思われる部分と「あえて書かれなかった」部分がある。まず、「あえて書いた」方から。高速バスのパートの最終章は、「事業者横断的な情報提供・販売」というテーマが振られている。高速バスという輸送モードは鉄道や航空からの転換を目指す挑戦者であり、また地方部では既存高速路線バスの認知度が大きい一方で大都市部では認知されていない現状を把握した上で、<新規利用者獲得のためにはウェブサイトの活用が有効>とし、具体的には<潜在需要の取り込みのためには、様々な交通機関をカバーしている一般的な旅行サイトの積極的活用>が求められている。「一般的な旅行サイト」が具体的にどこを指すかはご想像にお任せする。大震災で新幹線の代役を高速バスが求められた際、ふだん高速バスを使わない層まで高速バスの情報を求め、ウェブで予約を試みた。それら「新規客」が初めて高速バス関連の各サイト(各事業者の静的な公式サイトと高速路線バスの基幹システム系予約エンジンも、高速ツアーバスの各企画実施会社の自社サイトも、それから楽天トラベルのような総合予約サイトも)を使ったとき、サイトへの辿りつきやすさにおいても、サイト上での予約動線も、提供される情報量もサイトによって大きな差があり、「ウェブサイトの実力、総合力」とは何なのか、実感できたそうだ。それら利用者の実感はこのたび関係者に集約され、主に既存高速路線バスの基幹システム系予約エンジンのユーザビリティに若干の苦言が呈されるなど、私の予想さえ上回る強い論調で文言が確定した。一方で「あえて書かれなかった」内容とは何だろう。議事の初期において、「既存側」からは、何度も「内部補助理論」に基づく説明がなされた。高速バスの競合激化が結果として過疎地の路線バスを危機に追いやっている、という内容だ。だが、報告書を読めば分かるように、結果として一行たりともそのような文言は見受けられない。繰り返すが、今日の法の理念では内部補助は求められていない。むしろ、それに頼ることはどの事業者にとってもプラスではない。まあ余談だが<地方の事業者の経営を守るため、競争を制限し既存高速バスを保護しろ>という論理を展開すれば、JRバスなど高速バス(ほぼ)専業の事業者はもとより、親会社の鉄道事業やグループ各社、平場の路線バス事業でも利益を出す大手私鉄系バス事業者の高速バス事業にも制約を求める結果になる。JRバス関東や京王など一流事業者が高速バス事業から泣く泣く撤退することを誰も喜ぶまい。ただ、車両調達と運賃の柔軟化により、彼ら超大手事業者の生き様も変化するかもしれない。従来の高速路線バス事業のあり方では、「頭脳」の役割を誰がどう負うのかという観点が欠如していた。採るべき戦略を考えそれを現場に落とし込む役割が、無競争とその一方での複雑な共同運行関係の中で全く抜け落ちていた。レベニューマネジメント、多様化する販売チャネルなど変化する環境を思えば、「考える」機能をより強化せねば生き残れまい。そして彼らの戦略機能の実力を見比べながら、地方の既存事業者が主体的に大都市側の共同運行相手を選びなおす……大都市側事業者どうしに競争が生まれると同時に、本当の意味で共同運行関係は対等となる。パートナーとは、馴れあうための相手ではない。当面、高速ツアーバス各社は、「新高速」移行にリソースの多くを投入せざるをえない。足元では高速ツアーバスどうしの激しい競争を戦いながら、だ。一方、高速路線バス各社は、「何も変えない」ことさえ可能である。だがその先に何が待っているのか、想像できる事業者は既に動き出している。未だ高速バス利用者の95%は高速路線バスのそれであり、特に多頻度昼行路線では圧倒的強みを持つ。「新高速」には、よく読むとその強みをさらに強くするためのツールが、そこかしこに散りばめられている。それを活用し、まだ掘り起こせていなかった潜在市場を自らの手で「先に」掘り起こしてしまうことこそ、実は最強の守り固めなのである。そして繰り返すように、その潜在市場はまだまだ大きい。今回、「企画と運行の分離」がまず高速バスにおいて実現する。平場の路線バスの今後のあり方を占う意味でも大きな一歩となるだろう。そして何より、高速バス事業の成長のためには、現状で考えられうる最高の制度ができると確信している。しかし、新業態の開発もまた重要なイノベーションだ。数年後、次に台頭した新業態新勢力をどう扱うか、同じ様な会議が再び開催されることこそ、この検討会の本当のゴールかも知れない。
2011.06.18
コメント(0)
「バス事業のあり方検討会」中間報告についての第4回。では、「新高速」に『移行しなければならない』のだろうか? 今回、法的には高速ツアーバスは禁止されなかった。理由はいくつかある。まず、そのためには法改正が必要で省令以下のようにすぐ改正できないので、アクション優先という考え。次に禁止対象の定義が技術的に難しい点。スキー場、上高地や尾瀬、テーマパークや温泉。どこまで禁止か。まさか<既存事業者の高速バスと競合しなければ、あるいは既存事業者の貸切車を使えばシロ>などと法には書けまい。報告書にある通り、2002年の道路運送法改正以前は、路線バス事業者の経営保護のため高速ツアーバスは禁止されてきた。今はそうでなくなった代わり、「平場」の路線のうち赤字のものについて系統単位で公的補助が行なわれている。再び路線バス事業者の経営を保護するため競争を制限するよう法律を再改正すれば、今度は公的補助が受けづらくなってしまう(今日の欠損補助という手法が正しいかは別として)。それでも、高速ツアーバス各社には「集中移行期間」(おそらく3~4年)が設けられ、事実上「移行」を求められる。キーの一つは、やはり「乗降場所」である。高速ツアーバス集合場所の現状が胸を張れる状況でないことは確かだが、既存事業者が集合場所の件を問題にすればするほど、<バス停の再配分機能がないのはおかしい>とおうむ返しされるのもまた事実。たしかに、道路運送法と同時期に同趣旨で法改正があった航空では、羽田などの発着枠について調整会議が設置されスカイマークなどに優先配分される「アファーマティブ・アクション」が導入されている。今回、一部関係者は、本当に新宿などターミナル周辺の既存事業者のバス停が一律20%返上させられ新規側に配分されるとか、数年に一度、定期的に「●●地区バス停留所調整会議」が開かれ新規参入希望者にバス停が自動的に配分されことが制度化されるといった「悪夢」を一度は見たことだろう。たしかに、一度設置されたバス停が強制的に返上させられない現状では、明らかに使用効率が低いものも存在する。それらについては返上、または早朝深夜のみ高速ツアーバスからの「移行組の新高速」との共用を受け入れざるを得ないかも知れない。一方、駅前ロータリー内に多くのバス停があって、例えば新宿のモード学園前やセンタービル前にバス停が立っていないのは、もともとバス停とは「平場」の路線バス用であり、10分の乗車時間のために駅から5分も歩かされてはニーズに合致しないからに過ぎない。これから大阪へ、福岡へ向かう利用者にとっては、その5分など、羽田空港で歩かされる距離を考えれば知れたものだ。高速ツアーバス各社が現状において集合場所として使用しているエリアは、実は高速バスのバス停としては適地なのだ(詳細に見ると要件はいろいろあるが)。本当に物理的限界にある羽田の発着枠と違い、バス停についてはもう少し新設の余裕がある。しかし配分のルールが決まっておらず、設置権限者も、誰に与え、誰に与えてはならないのかわからず、新規設置は一律で認めず、という暗黙のルールが定着していただけである。<お宅の会社にバス停をあげたら、他の会社にもあげないと。そんなことしてたら道路が全部バス停になっちゃうからさ、わかるよね>。これが決まり文句だ。2002年、法律は需給調整撤廃を目的に改正されたが、バス停という重要なファクターについては(意図したかどうか別として)新規参入を導く運用改正を行なわなかったのである。高速ツアーバスを運行する事業者の相当数が高速路線バス化を目指し、バス停の確保でいわゆる「前さばき」(正式な書類を受ける前に根回し時点で断られること)に会って断念せざるを得なかったのは、これが原因である。一方、今回「誰に与えるべきか」は明確だ。もしも、の話だが、高速ツアーバスがこれまで集合場所として使用していた地区に、移行した会社数に合わせ徐々にバス停が増えていくとすればどうなるだろう。バス停ということは、ご存じのとおり、路線バス以外は駐車も停車も禁止である。そして報告書には<公道上の駐停車問題についてメリハリを効かせて対応するべき>と明記されているのである。もちろん、今日の高速ツアーバスの会社数、台数を発着させるには何本のバス停が必要でどんな運用が適切なのか、あるいは駅前ロータリーの貸切バス乗降スペースを集合場所として利用している地方都市においてどうするか(蛇足ながら、国鉄時代からの流れでJRが管理している駅前広場が多く、私鉄系事業者の高速路線バスが駅広にバス停を設置できない都市も多い中、「移行組」だけが堂々と駅広に入るのは現実的ではないだろう)、など考えないとならない点は少なくないが、そこは事務方どうしで粛々と進んでいくことだろう。「乗降場所」は、高速ツアーバス各社に「新高速」移行を促す最大の要素であるが、報告書をよく読むと、それ以外にも多くの要素が散りばめられ、高速ツアーバス(どう定義するかにもよるが)をその業態のまま継続することは事実上困難になることが予想される。もちろん、身を隠し細々と事業継続することは不可能ではないが、「細々」程度のバスサービスの手法ならいくら でもあるのだ。既存側も、モグラたたきよりずっと重要で前向きな仕事があるはずだ。今回は「実質一本化」に私も協力するが、本来なら、新業態の開発もまた重要なイノベーションのはずだ。今回の件から、双方が学ぶことは多いはずである。さて明日は「中間報告書」解説の、いったん最終回。
2011.06.17
コメント(0)
「バス事業のあり方検討会」中間報告についての第3回。業界メディア以外で書いてくれたのは、今のところ『朝日』のみのようだ。この記事、大枠は正しい内容なのだが、なぜか見出しが「高速ツアーバスに下限運賃制検討」となっている。議事録や報告書を読めばわかるが、そんな議論をしたことは一度もない。しいて言えば、一般論として<極端な安売りはよくない>という話が出た記憶があるのと、<高速ツアーバスの価格の柔軟性を「乗合」の制度で実現するとすれば、例えば上限認可、下限届出とした上でその範囲であれば事業者の裁量を認める、というのはどうかなあ>という案が非公式に出た程度だ。おそらく、後半の「貸切バス」のパートと混同して記者さんが1行だけ「下限運賃検討」と付け加えたものを、今度は整理部が見出しとして切り出した、というのが真相だろう。報道に接する際の難しさをあらためて実感する。同じことは先日の「高速ツアーバス回数券」のときもあった。関係書類をよく読むとわかるが、<高速ツアーバスの回数券を販売することそのものは直接的には旅行業法上の問題はない。ただそうすると、資金決済法など配慮すべき他の要素があるので、そこはちゃんとやりなさい>という方向性が明確に示されたという話が、<ツアーバス回数券は法律違反>と全く正反対の見出しがついてしまったのだ。私自身はこの回数券の販売にかかわっておらずまあどっちでもいいのだが、何社かの路線バス事業者に上記の話をしたら<ぬか喜びだった>と苦笑しておられたので、別に高速ツアーバスの回数券が無くなるわけでない点は、お伝えしておきたい。もっとも、今回の制度改正でそもそも高速ツアーバスというものそのものが無くなる予定なのだから(そもそも回数券のシェアなど微々たるものだし)、この問題も霞んでしまっただろう。本日は、高速ツアーバス側から見た「新高速」について見てみよう。昨日書いたように1日単位、1台単位で事実上「車両の手配」が可能で、運賃もほぼ事業者の裁量でコントロールできるようになるので、高速ツアーバス企画実施会社が育て上げてきたノウハウはそのまま活用できる点は有利だ。だが考えないといけない点もある。まず、「新高速」では、現在の企画実施会社の役割は「委託者」としてのバス事業者に変わる。つまり、純粋な旅行会社として(同一法人、グループ内にバス事業を持たずに)高速ツアーバス事業を営む企画実施会社は、自らバス事業に参入することがほぼ要求される(または「リテーラー」に移行し他社の代売に徹するか)。これには二つの意義がある。一つは、バス商品の企画、運営する企業は、実際にバス事業そのものを営んでいた方が、知識の面でも意識の面でも感覚の面でもプラスだろう、という判断だ。バス事業者に求められる制度の知識や安全意識くらいは、企画側も持っておけ、ということだ。そして二つ目の方が重要で、受託者の選定、管理を委託者が責任持って行なうようにする意義だ。旅行業法は、<旅行に使う交通機関や宿泊施設などは、彼ら自身がちゃんと法令遵守しており安全だ>という原則に立っている。文字で読むと何か無責任に見えるかも知れないが、交通機関にも宿泊施設にもちゃんとした業法がある以上、当然のことだ。旅行会社がツアーを企画する際、ANAやJRに法令違反がないかとか、ホテルが旅館業法はもちろん食品衛生法、消防法(非常階段を荷物置き場として使っていないか、など)に抵触していないかいちいちチェックしていたら仕事にならない。別に旅行業に限らず、<取引先に法令違反があったからお前にも罰則だ>などと言われたのでは世の中成り立たない。だから今日の高速ツアーバスのモデルでは、運行を委託した貸切バス事業者が大きな事故でも起こせば利用者への補償など旅行業法に厳しい縛りがあるものの、その事業者に違反が判明したとしても罰則は受けない。しかし、委託者として「バス事業者」の立場になることで、道路運送法の対象として、受託者に違反が判明した場合にも罰則の対象となるのだ。当然、受託者の選定、管理は以前より慎重にならざるをえないだろう。それらの意味で「新高速」は高速ツアーバスのモデルより安全性が担保される、という考えだ。そうなると、貸切バス事業者のあり方にも変化がもたらされるかも知れない。貸切バス事業者が「新高速」の運行を受託するためには、委託者に対し、積極的に、コンプライアンス体制や具体的な安全確保策をわかるように伝えないと、委託者は怖くて委託できない。一方、同一路線に複数の事業者が高速バスを運行するとともに、ウェブ時代に入って消費者側が手にする情報量が一気に増加した今日、営業主体(すなわち委託者)から利用者に対し「具体的に、わかりやすく」情報を提供することで他社との差別化を図ることが求められている。受託者から委託者へのセールス活動の目玉として提供されるコンプライアンスと安全に関する情報は、そのまま、委託者から利用者に提供される情報の最大のコンテンツになりうる。「お客様自身が、バスを選んで乗る時代」が、ここでも実現するのである。「新免」の貸切バス事業者にとって「移行組の新高速」受託が一つの目標に、そして中堅以上の貸切バス事業者にとっては「既存組の新高速」を受託することが経営者から従業員まで共通のゴールになるようなら、需給調整撤廃後の貸切バス事業において初めて「企業としての成長の姿」が目に見えるようになる。では次に、「新高速」に『移行しなくてはならないのかどうか』だ。明日以降、その点をご説明する。
2011.06.16
コメント(2)
「あり方検討会」中間報告についての第2回。まず報道であるが、新聞のベタ記事については後日触れるとして、『トラベルジャーナル』(会員制だが無料で会員登録できる)の記事が今のところもっともまとまっている。14日付詳報の前に13日付で先行記事も出ており、両記事を合わせるとおおむね今回の報告書の概観を把握できる。14日付の方には私のコメントも採用していただいた。なお、用語については若干の誤用も見受けられ、あらためて外部(それが、いわば「お隣」の業界である旅行の専門誌の記者さんであっても)から見た場合のこの問題のわかりづらさを象徴しているようだ。さて、「新高速バス制度」の特徴とは、言うまでもなく「車両調達」と「運賃」、二つの面での自由度の高さである。生活交通であり公益性の大きい「平場」の路線バスとは異なり、高速バスは鉄道や航空から需要の転換を目指す収益事業であり、また曜日や季節によって需要量の波動が存在する事業環境を考えれば、現行の高速路線バスの制度が市場の現状に「うまく適合していない可能性が指摘」されており、それに対応したのである。では、高速路線バスの制度は具体的にどのように変化するのであろうか。まずは「柔軟な車両調達」である。これは、現行法制度のうち「管理受委託」の仕組みを最大限に活用することで実現される。従来でも、車両と乗務員の運用を効率的に行なうため、路線の事業許可を持つバス事業者(委託者)から他のバス事業者(受託者)に対し委託料を支払い、実際の運行を受託者が行なうことが認められてきた。高速バス事業においては、親会社が事業許可を受け、実際の運行はコストが低い子会社が行なうケース(例:小田急バスの路線を小田急シティバスが運行)と、遠隔地での運行を共同運行会社に委託するケース(例:伊予鉄道との共同運行路線である西東京バスの新宿~松山・八幡浜線の松山~八幡浜のみ、伊予鉄南予バスの乗務員が運転を担当)がある。いずれも、受託者は、委託者と資本関係あるいは共同運行関係などがあり、受託者自身も路線バス事業者であるケースに限定されてきた。委託できる車両数、距離についても厳しい制約があった。そこで「新高速」においては、受託者について、委託者との資本関係等の制約を廃し、また路線バス事業者ではない貸切バス事業者にも認められるようになっている(貸切バス事業者ならどこでもOKということではなく、何らかのハードルが設けられるようではある)。委託できる車両数についても、「委託者の高速バス用常備車両の●%まで」というような規程に変わる予定である。委託の範囲も1台単位、1日単位から可能となる。繁忙日には、他社の輸送力を用いて何台もの続行便を設定できるようになるのだ。つまり、上記の西東京バスの事例で考えれば、仮に八幡浜線と金沢線を自社の車両、乗務員で運行するとすれば、大阪線と高松線は所定便を●●観光バスに委託することも可能である。また続行便については、所定便を自社運行する八幡浜線、金沢線も含め、▲▲観光バスや■■観光バスにも委託することができる。将来、小田急カラーに塗られた帝産観光バスの3列夜行車両が秋田線の所定便を運行するとか、KM観光バスの一般貸切車が夏休みの週末、富士五湖線で京王便の続行を担当する、というシーンが実現するかも知れない。年末やお盆の繁忙日など、乗合事業者のブランドに耐えうる一流貸切専業者の車両を確保するため、西武バスと国際興業の担当者が需要予測表を手に先を競って東都観光や日の丸自動車に電話する、というような「バトル」が起こるかもしれない。 他方、「柔軟な運賃制度」については、制度案の詳細は本報告書には書かれていない。一つの目安は国内線航空の運賃制度であろう。現在の航空運賃制度は2000年の航空法改正(需給調整撤廃)によって誕生した。その改正と2002年の道路運送法改正は同一の理念の元にある上に、高速バスは一部路線でその航空と競合する点、また普通運賃などの固定運賃と、レベニューマネジメント概念に基づく「特割」など変動運賃を併用する航空の運賃制度は、おおむね国民に受け入れられている点などがその理由である。高速ツアーバス各社が2007年にレベニューマネジメント概念を導入した結果、業態全体で収益性が大きく向上し、それが新型座席の開発、新車の導入や積極的なプロモーションに再投資され各社の成長とクオリティの向上に導いた経験は、これから制度の詳細を詰める上で大きな参考になろう。今般の制度改正を考えるに当たり、高速ツアーバス各社の「新高速」移行も重要な課題ではある(明日以降、その観点でも書いてみたい)。だが、年間1億1千万人の高速バス輸送人員のうち95%は高速路線バスなのである。圧倒的存在感を持つ高速路線バスにおいて営業面で柔軟性が得られることの意味は、我が国の高速バスの歴史の中で極めて大きい。もちろん、柔軟性を活用するかどうかは各社の判断であり、従来と何ら変わらぬ事業のやり方を貫くことは可能である。品質を担保するために自社運行にこだわることも、路線ごとの市場環境を鑑み固定運賃にこだわることも、それ自体は否定しない。ただし、そうでない選択肢が目の前に生まれたことだけは、既存の高速路線バス事業者は強く認識しないといけない。そして繰り返すが、なぜそのような制度改正がいま行なわれるのか、強く考えないとならない。それを考えるきっかけを与えたという点こそ、この報告書の持つ最大の意義かもしれないそこまで実現して初めて、本当の意味で、既存事業者にとっても新規参入者と「同じ大きさの未来」が目の前に開かれるのである。
2011.06.15
コメント(2)
私自身も委員として参加させていただいていた「バス事業のあり方検討会」の中間報告が、国土交通省から発表された。なお、「中間」ということは、また続くということである。報告書は、大きく、高速バスと貸切バスにパート分けされているが、取り急ぎ前者について見てみよう。ざっくり言うと、道路運送法による「一般乗合」のうち「高速バス」について制度を切り出し、「車両調達」と「運賃設定」を筆頭に柔軟な営業を可能にした新制度、通称「新高速」を作る(法改正まで必要かの判断は、まず省令以下の改正を行なってから)。そのうえで高速ツアーバス各社を「新高速」に誘導する。事実上、二制度の一本化である。なお、制度の詳細や、高速ツアーバスから「新高速」への移行(「移行しない」と言い張った場合はどうなるのか、など)について、いろいろ疑問や、<無理じゃないの?>というご指摘もあろうが、様々な検討を行なっているところなのでもう少しお待ちいただきたい。念のため繰り返しておくと、私自身は決して「一本化論者」ではない。同一市場に対し別々の規制に基づき商品が提供されることを「一国二制度」で「不公平」という人はいるが、一般消費者として私たち自身が買い物をするうえで、そのような例はいくらである。最もわかりやすい例として、よく教科書に出てくる「リポビタンD(医薬品)とオロナミンC(炭酸飲料)」の話や、ビールと発泡酒の話をよく出すが、決して珍しくない。もし特定の事業者(例えば既存の高速路線バス事業者)が高速ツアーバス業態に転向しようとする際に障壁があるようなら、それで初めて不公平だというのが私の考えだ。しかし、今回の検討会では、早々にその主張は引っ込めた。事務局(行政)から<「利用者が求める高速バスサービスのあり方」をまずは考え、それに合わせた制度を構築するべき>という叩き台が明確に示されたからだ。また、本来的には「高速ツアーバス側」の立場であの会議に毎回出席しているにもかかわらず、発言のたびに<既存の高速路線バス各社に、より柔軟な制度を与え、より積極的なマーケティング意欲を持つよう変わってもらいたい>という思いでいる自分自身をあらためて何度も実感したからだ。<既存事業者にも高速ツアーバス転向の自由は担保されている以上は不公平ではない>などという「理屈」では何も変わらないことは、私自身がよく知っているのだ。「利用者が求める高速バスサービスのあり方」を考えようという事務局の呼びかけは、既存高速路線バスへの私自身の思いを実現するうえでも、大きなチャンスである。なお、上記は私個人の考えであって、高速ツアーバス連絡協議会の立場としては、当初から<安全性・公平性を担保しつつ、柔軟な営業を可能とし、高速バス市場の最大化を支援する「新制度」を時間をかけてでも構築する>べきだと主張してきた。議事録でご確認いただきたい。さて今回の報告書では、「はじめに」の部分で、本件の背景が十分な文字数で語られている。特に、高速ツアーバス業態を巡る制度的変遷も辿ってある。一言でいえば、2002年の法改正までは、高速ツアーバス(当時はその名称はなかったが)の通年運行は制限されていたが、法改正以降、需給調整という概念がなくなったため、高速ツアーバス業態の通年運行も認められるようになった、ということだ。この部分は決して私たちから要望して報告書に入れてもらったわけではない。事務局による案文に、最初から入っていた。そのことの意味を、関係者はよく理解する必要がある。未だに高速ツアーバスを違法、あるいは脱法行為だと思い込んでいる人は多いが、2002年の法改正以降、事業モデルとして認められてきたものである点は、きちんと理解してほしい(事業モデルとして合法だと言っているのであって、改善基準告示など各種法令違反が一切なかったと主張しているのではない)。その背景には、道路運送法の理念の変化(需給調整と内部補助による路線バス事業者の経営維持からの脱却)がある。一体なぜ、道路運送法の理念はそのように変わったのか? そこを真剣に考えるべきである。需給調整と内部補助を続ければ、我が国のバス産業がどのような結末を迎えるか、想像すべきである。だからこそ、高速ツアーバス問題はバス産業全体にとって象徴的なのである。全国の既存高速路線バス事業者は、この報告書とそこに示された新制度を、「不当判決」とばかりに、受け入れることを拒否してはならない。もしかしたら既存事業者には納得したくない内容も含まれているかもしれない。しかし、その時には、なぜこの結論に至ったのか、その理由に考えをめぐらせてほしい。むしろ、自らが変わる好機だと前向きに捉えてほしい。輸送人員ベースで比較すると、高速ツアーバスは高速路線バスのわずか5%強でしかない。高速ツアーバス業態がまだその規模でしかないうちに、自らの変化の好機が現われたことを、この結論を導いた関係者に感謝すべきだ。同じことは、高速ツアーバス各社(企画実施会社、運行会社)にも言える。「規制強化」と反発することは、自らの事業を成長、永続させるチャンスと権利を放棄するに等しい。一部には、ハードルは低くないかもしれないが、それは、永続的に事業を行なうために絶対に越えねばならぬハードルなのだ。そして、そのことを各社に伝える責任が、私にはある。明日以降、本ブログでは、各社の報道なども見ながら、報告の具体的な中身についてもう少し細かい点まで順次ご説明したい。名神高速開通による高速バス誕生、共同運行クローズドドアシステム制度誕生に次ぐ、我が国の高速バス事業の歴史の第三の転機を生み出すことができた点、それに自身が携わることができた点、多くの方々に心から感謝している。
2011.06.14
コメント(2)
会社勤めから自由業(いちおう形の上では会社組織にしているので経営者だが、実態としては好きなことをやっている自由業だ)に変わったことに伴い変化したことの一つが、出張の組み方だ。一言でいうと、以前より多く高速バスを使うようになった。<それは趣味だろう>という指摘はともかく、何よりもコストの面が大きい。前職ではそうは言っても一つの会社のP/Lを見ていたからコスト管理も重要だったとはいえ、出張旅費をセーブすることは今ではいわば自分の小遣いに直結する。本当を言うと、一人の部下もいないわけで業務量自体は前職の頃より増えているから、移動時間は30分でも短くする方が結果として「安上がり」なのは頭ではわかっているのだが、(見た目の運賃の安さと、趣味とが合わさって)ついバスを選んでしまう。<せっかくだから○○ライナーに乗るとして、じゃあアポイントは少し遅めにしてもらおう>などと調整していたら、結局1泊分、出張日程が延びていたりするのだから、本当にコスト削減になっているかさえ怪しいが。ただ、自分が出張で高速バスを使うと、なるほど、と感じることがいくつかある。レベニューマネジメントを考えるうえで、利用者セグメントごとのバジェット(予算。支払意思)をいくらで読むかというのは非常に重要な要素だ。一般的に言うと、観光客のバジェットは小さくビジネス客は大きい。ちなみに観光客はリードタイムが大きく(前もって予約する)、ビジネス客のリードタイムは小さい(直近に予約する)から、バジェットの大小とリードタイムの大小を考慮すると、「早期予約(購入)割引」という戦術が有効だとされている。まずは早期割引で観光客を誘引し稼働率を上げておき、直近に予約するビジネス客からは高い単価で予約を受けることで収益を最大化させる、というわけだ。もっとも、それは米国のホテルや航空業界での話だ。少なくとも日本のホテル業界ではビジネスマンのバジェットが大きいとは言えず早期割引は有効とは言い難いというのが私の持論だし、航空会社とて、「早割」という商標登録を持つANAさえ、既に「早割」はなく「特割」に移行している。一口に「ビジネス客」と区切っても内実は多様だということだろう。そこがまた、レベニューマネジメントの奥深さであり面白さであり、ぜひバス業界に定着させたい。もう一つ、趣味としてではなく業務出張で高速バスに乗ると困るのが、電話の着信への対応だ。特に私の場合、個人で仕事をしていることを取引先はよく知っているので、事務所の番号ではなく携帯に仕事の電話が直接来る。しかし、よほどガラガラの便の最後部座席でもない限り、車内で電話に出るわけにはいかずイライラする。これが鉄道だと、デッキに立って会話ができる。電話以外でも、鉄道や飛行機なら座席でPCを開いて、細かいデータ分析は無理でもこのブログの原稿くらいは書ける。しかし、さすがにバスの車内では難しい。結局、所要時間の差以上に時間を無駄にしている気がする。もちろん、では携帯電話を使いやすい車内環境をどのように(ハード面、ソフト面で)作り上げるか、と尋ねられたら今は名案はないのだが、<高速バスには無理だよ>というように最初からあきらめる気はない。何年後かには、何社かに採用してもらえるアイデアを自ら実現し、このブログでもご報告できれば最高だ。先ほどまで西の方に出張に出ていたのだが、そのような経験を通して、自分自身で商品を使ってみることこそ重要だとあらためて感じた。ホテル勤務時代、仕事が深夜まで及び空室に泊まらせてもらった時、例えばバスタブに浸かって初めて洗面台の裏側が汚れているのが見えたり、排水の状況が思わしくなかったりしたことに気付いたことなどを思い出す。高速バス事業に携わる全ての人は、ぜひ意識して高速バスを一乗客の目で利用してほしい。さて出張から帰ると、『旅行新聞』の記者さんから、インタビューを紙面に掲載できたとご連絡が届いていた。第一面の、H.I.Sの澤田社長さんのインタビューにはさすがにかなわないが、予想以上に大きな分量で掲載いただき感謝である。「高速バスも商品多様化を」と題し、高速バス事業の現状や課題、それに対し私の会社がどのような支援を行なっていくのか、丁寧に記事に起こしてくださっている。この掲載紙一部あれば、会社概要の代わりになるくらいである。さらに話は変わるが、私自身も委員として参加させていただいた、国土交通省主催「バス事業のあり方検討会」が、先週をもって、半年間で7回の審議を終えた。報告書については来週くらいに発表になるであろうから、本日は詳細な内容を書くことはできない。数多くの方々から報告書の内容についてのご質問をいただいたり意見を求められたりしている(実は、高速ツアーバス関係者より高速路線バス関係者からのご連絡の方が多いのがなんとも言えず面白い)が、それはもう少しお待ちいただきたい。ただ、既に公表されている情報の範囲内で申し上げれば、<利用者が求める高速バスサービスのあり方>を何よりもまず目指し、そのために必要な制度を整えていくという事務局(行政)の考え方には大いに賛同するし、できあがる報告書にも大きな大きな期待を持っていただいてかまわない、というあたりだろうか。まさに今、高速バスの新しい時代が始まるその前夜を、我々は迎えているのである。
2011.06.02
コメント(0)
全10件 (10件中 1-10件目)
1