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本日発売の『MAG X (ニューモデルマガジンX)』10月号で、「新制度は実現可能? 『バスのあり方検討会』の裏側」が掲載され、私のコメントも大きく採用いただいた(注:正式名称は「バス事業のあり方検討会」)。私はそんな熱心なエンスージアストではないがまあまあクルマ(速いとか大きいクルマよりコンパクトな欧州車)好きで、この雑誌も読者として存じ上げていたからご連絡をいただいた際には驚いたが、そういえば社会的な記事も多い媒体だった。全国のコンビニにも並ぶ、先日の『日経トレンディ』ほどではないが、小さな書店にも置いてある部数の多い媒体なので、この問題の理解が多くの人に広まることを期待している。さて記事中では、2002年の乗合バス事業の需給調整撤廃とインターネットの普及により高速ツアーバスが大きく成長したこととその問題点を踏まえた上で、検討会の「中間報告書」の骨子を紹介、報告書について、<ツアーバス業者は賛同の意向を示していることに対し、高速乗り合いバス業者からは反対の声が大きいという>と紹介したところから、この媒体ならではの突っ込んだ記述が始まる。関係者は、ぜひ目を通してほしい。私として苦笑したのは、<立ち位置の違いは乗り合いバス業者のなかでも大きいという。記者が取材した限りでも、「これまで規制に守られていたことに気づかず、本当の競争をしていなかった」と自己分析しながら新制度をチャンスととらえるバス会社の幹部がいる一方、「検討会に参加しているツアーバスの委員は弁が立つため信用できない」と話す路線バス会社の関係者もいる>というくだり。「弁が立つ」委員って私のこと?この「弁が立つ」件、思い当たる節がある(まあ、検討委員の名簿が発表された時点から、関係者の間で「弁が立つ」がキーワードになったことは多くの関係者から聞いているが、それはそれとして)。検討会では、まず第1回目、第2回目において、参加団体からそれぞれ20分の持ち時間で意見の表明がなされた。当然、私はパワーポイントで資料を作成し、普通のプレゼンなら最悪ぶっつけ本番で臨むけれど、今回ばかりは日本のバス産業の将来を決めるかも知れない大切なプレゼン。何度も何度も時計で時間を図りながら予行演習し、20分ぴったりになるように台本を削り、ボイスレコーダーで録音して聞きづらい点がないか確認し、本番でもぴったり19分台後半で終わらせた。パワポのプレゼン資料には、1ページごとに「テーマ」「具体的で映像的な論拠(グラフや写真)」「結論」を並べ、<●●に関しては、グラフにある通り●●という傾向があり、したがって●●と考えます>と繰り返し、最後に、<これらの事実を考え合わせますと、●●すべきであります>と断定していく。20分を起承転結4パートに分け、現状の説明、そうなった理由、現在の取組、今後の方向性について、高速ツアーバスが抱える課題も含め説明する。ビジネスの世界では常識になった手法だし、私としてもうまくいったプレゼンだった。少なくとも、お聞きになった学識経験者の先生方などには好感触だったと思う。が、既存事業者の関係者の皆様には、至って不評だった。おそらく内容的な問題ではない。パワポを使ってのプレゼンという行為自体に、なんとも居心地の悪さを皆様感じたらしい。そういえば、私が初めてパワポを使ってのプレゼンを聞いた時も、何か無性に腹が立ったものだ。全世界のホテル企業を飛び回り、先進的なマーケティング用ソフトウェアを売り歩く、アジア系の風貌の、しかしカナダ在住の、にもかかわらず日本語も見事にこなすビジネスエリート。ノートPCを開きパワポを投影しスマートに説明する様になんとも言えない敗北感を感じながら、しかし、<セールス(売り込み)としては逆効果だな>と、内心どこかで勝ち誇った気分だった。ただし、もう10年、一時代も前の話だ。プレゼンのスキルなどよりも必要な知識は山ほどある。だが、ときどき事業者の社内会議に同席させてもらうが、現状ではスピード感ある意思決定は難しいと言わざるを得ない。3代ほど前の担当者が作成して以来手を加えていなさそうな、細かい数字が並んだだけのエクセル表。すぐに横道にそれる議論、というか会話。次回までの課題と、その遂行責任者がはっきりしない結論。会議の生産性とそこから生まれる事業の成長可能性を考えれば、会議資料もパワポにし、紙の配布ではなく投影で、議題ごとに持ち時間を区切り、かつ該当議題の担当者は立って説明するというスタイルに、まずは「形から」入るのもアリかなと思う。さて記事の話題に戻って、掲載いただいた私のコメントから最も重要な部分だけを引用する。<既存のバス会社は、ユーザーが得る情報量が従来と比べ大きくなっていることを認識しないと、いくら規制で縛ったとしてもユーザーニーズがある以上、何らかのカタチで新規参入が成功してしまう。従来と販売方法が変わってきていることを認識すべきだ>。グーテンベルクが印刷術を発明したことで庶民が聖書を読めるようになり宗教改革が起こり、そのプロテスタンティズムが産業革命と資本主義を生んだ。衛星放送の普及で東欧まで電波が届いたことがベルリンの壁を崩壊させ、SNSがムバラクを倒した。情報メディアの進歩は社会さえ変えるのだ。ウェブ化の進展により大企業と新興企業との間で情報発信力がフラット化し、かつ消費者が手にする情報量も飛躍的に増加している今、老舗と新興の関係性が変化しているのはバス産業だけではない。力強い変化に抗うことよりも、その流れをうまく掴む方がいかに生産的で簡単か。そして異業種に目をやれば、それに成功した老舗企業も少なくない。今こそ、既存事業者に蓄積したその底力を見せつける時である。
2011.08.26
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先日、楽天トラベルの京成バス商品取扱開始に関して、551planningさんから「同床異夢か異口同音か」とコメントをいただいた。重要な点なので、一つ稿を立ててこの件を考えてみたい。最近、多くの既存事業者の経営者、担当者の間で、楽天トラベルに対する(当初あった)「敵意」のようなものが急速になくなってきたのを実感する。これには二つの要素がありそうだ。まず、高速ツアーバスという業態に関して、従来のまず否定から入るメンタリティから、それなりに「一目置く」感覚に変わりつつある。かつては、高速ツアーバス関係者の人格を否定する発言や、なんとかしめつけてやろうと「アラ探し」ばかりしている人(まあ、「アラ」がある方もある方だが)が多かったが、そこは客観的に見る余裕が出てきたようだ。余談だが、「高速ツアーバスの回数券」や、貸切車のLED行先表示はレギュレーション違反ではと指摘し、仮に関係当局の判断で明確に禁止されたとして、高速ツアーバス各社が多少やりづらくなる程度で、少なくとも既存事業者にとって何のメリットもない。愛好家の皆さんならともかく、事業者はそんなことに時間を費やしている場合ではない。もう一つは、楽天トラベルなどの予約サイトは高速ツアーバス各社の代売をしているだけという事実を、ようやくご理解いただけたことだ。私は楽天バスサービス勤務時代の時間の多くを既存高速路線バス取扱に向けた提案活動に使っていたからご理解いただけたことは素直に嬉しいし、既に取扱が始まっている各事業者については、あらためて感謝したい。一方、そうなったらなったで気になることもでてきた。少なくない事業者の経営者、担当者の皆さんが、<そろそろ、楽天さんに「任せよう」と思うんだ>という言葉遣いをなさるのだ。もちろん、言葉とは難しく、本当に「丸投げ」という意味ではなく、代売(手配旅行)契約を指して「(販売を)任せる」と表現するのが業界的な使い方なのかも知れない。だが、ならば余計に気になる。この表現には、あまりにも事業者の主体性が欠けている。楽天などの予約サイトに「任せる」のではない。事業者が予約サイトを「活用する」ことが必要なのだ。事業者にとって予約サイトで代売することの意味は、当然、新規客の獲得である。従来の手法ではリーチしなかったセグメントに対し自社の高速バスの存在を知らしめるのだ。特に、各予約サイトが相応の集客力を確立し、一方で彼らの商材のほとんど(楽天以外の予約サイトでは100%が)高速ツアーバスである以上、その予約サイト上に高速路線バスも並ぶことの意義は大きい。単に「ウェブ上での予約、発券代行」をしているわけではない以上、既存の大手旅行会社系サイトより手数料率が高いことは当然だ。だからこそ事業者は、ずるずると予約サイトへの依存度が上がらないよう注意しないとならない。仮に楽天トラベルのメールマガジンなどで南海バスの大阪~広島線の存在を知り楽天から予約した新規客がいたとして、事業者側は、次回は自社サイト(同社の場合は発車オーライネット)から予約してもらうよう誘導しなければならない。無駄な手数料持ち出しを防ぐとともに、予約サイト上で競合する路線への浮気も防げる。そのためには、車両や接客など商品力で満足させつつ、乗車改札時などに自社サイトの案内をする。ところが予約サイト側にすれば、新規客の開拓には相当なコストを投下しているから、<2度目からは自社サイトで予約するわ>と言われたのではモトが取れない。だから、予約画面を簡単にわかりやすく改修し、またポイント付与などのFGPを充実させリテンションを図る。逆に、従来からのリピータが、<楽天の方が使いやすいから>と次回から楽天経由で予約するようになり、事業者側からすれば手数料負担が増えるリスクもある。だから、自社サイトや時刻表、プレス発表などで、楽天からも予約できるようになった旨は原則として説明する必要はない。だが、路線環境を分析したうえで、<リピータが楽天に転移し手数料負担が増えたとしても、楽天から予約可能になったこと(ポイント付与などのメリット)をマーケットに強調することで新規客の開拓にきわめて有効だ>と判断すれば、あえて告知することも選択肢だ。ダブルトラック環境にあり競合先に対し苦戦している路線なら、地元の既存事業者が<楽天からも予約可能に>と発表し、さらに<最初の2ヶ月はポイント10倍>などと付記すれば間違いなく地元メディアには取り上げてもらえるだろう。しかしそれも、いつかは「閉め」ないと、ずるずると予約サイトへの依存度が上がり、販売力を彼らに握られてしまう。予約サイト側にとっては一見、望むところだが、必ずしもそうではない。「バス事業のあり方検討会」の貸切バスのパートの議論では、バス業界側が、<旅行会社に「搾取」されている>と主張したが、人間だれしも、そんなことを言われてまでバス事業者とお付き合いなどしたくない。旅行業界の関係者は、<そんなこと言うなら、これから旅行会社ではいっさい貸切バスの予約を受け付けないぞ。貸切バスを使ったツアーも企画しないぞ>と腹の中では思ったことだろう。予約サイトも、バス事業者側から「任された」のでそのつもりで仕事していたら後から「搾取だ」と非難され不必要に社会的悪者になっていた、というのではいったい何のために仕事しているのかわからない。商品を企画し、その席を埋めていく主体は、予約サイトではない。各バス事業者なのだ。そのために、各事業者自身でも拡販の努力をするし、予約サイトの力も借りる。例えば自社サイトと予約サイトは、●●バスの高速バスの座席を埋めるという共通の目標に向かい、競争する。その競争が、リテンションプログラムやサイトの操作性などの進歩を生む。その進歩が、鉄道など他の輸送モードから高速バスへの転移を促し、高速バスマーケット全体の成長に寄与する。事業者は、その競争をうまくマネジメントしなければならない。なぜなら、「そのバス」はほかでもない、その事業者、「あなたの会社」の商品なのだから。
2011.08.25
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昨日17日付の『トラベルジャーナル・オンライン』で、「九州産交、バスとレジャーをセット販売 着地型として旅行会社に営業拡大」と報じられている。同社は、私が楽天バスサービス勤務時代、業界に波風が立つことを承知で高速路線バスを楽天でも販売することを全国で最初にご決断下さった会社だから私としてもよく存じ上げているが、先日の『日本経済新聞』『日経トレンディ』における海部観光、弘南バスなどとともに、縁の深い会社の名をメディアで拝見できるのは素直にうれしい。それだけ前向きに事業に取り組んでおられると評価されているわけだから。バス(運輸)と旅行(観光)という二つの産業の狭間にある話なので多少の解説が必要かも知れない。旅行業界で「着地型ツアー」というキーワードが言われて久しい。旅行商品は従来、「発地」(消費地。首都圏や関西圏)側の旅行会社が造成するのが普通だった。先輩から教わるなどして旅行会社の担当者が得た観光地の知識(名所旧跡のほか、どの旅館の料理がおいしい、など)は、かつて、専門家集団としての旅行会社の最大の資産だった。例えば熊本旅行を楽しむにはどんな行程がいいか、教えてくれるのは旅行会社のみだった。だが、ウェブ化の進展などによって、消費者側が自ら持つ情報量が圧倒的に増えた。レビュー(ウェブ上のクチコミ投稿)などによって、消費者が事前に疑似体験さえできるようになったのだ。また交通機関や宿の予約行為そのものもウェブで簡単にできるようになった。それによって旅行会社の存在意義は相対的に(急激に)低下しつつある。その中で「着地」(目的地)側の旅行会社が、地元ならではの深い知識を元に造成する「着地型ツアー」こそが、これからの旅行業界を牽引していくのではないかという意見だ。その実現には二つの課題がある。一つは販路である。地方の旅行会社がどんなに地元ならではの魅力的な商品を作っても、東京や大阪で売る術がない。もう一つは安定催行だ。いわゆる「ガイドブックに載っている」有名観光地を網羅する総花的商品では「発地型」と何ら変わらず、だからこそ「着地型」には、特定の小さなエリアや、歴史、文学など明確なテーマ性を持った「とんがった」商品であることが求められる。が、とんがればとんがるほど、想定される集客数(ロット)は小さくなり、損益分岐を上回る集客が困難になる。九州産交は二つの手法でこれらの課題に挑戦した。以前、「天草ぐるっと周遊バス」の稿でご紹介したように、行政などの支援が得られた天草地区において、まずはリエッセ(小型バス)とボランティアガイド(校長先生OBのような地元の年配の方)を活用し半日コースを組み、JR系など大手旅行会社にオプショナルツアーとして採用された。合わせて、県内に張り巡らされた自社の高速バス、路線バスと、旅館での日帰り入浴や昼食など既存の観光資源を組み合わせ極めて多数の旅行コースを設定したのだ。記事で紹介されたのは後者の取り組みだ。よく見ればわかるが、従来から各路線バス事業者が取り組んできた「セット券」(企画乗車券)と内容は変わらない。熊本から県内高速バスで高速上のバス停に行き、旅館の無料送迎バスに乗り換え、旅館で昼食と入浴を楽しんだ後、同じルートで帰る……中身だけ見れば、例えば中央高速バスの乗車券と富士急ハイランドの入場券をセットにした「Qパック」などの企画乗車券と同じではないか。同社は、あえてそれを募集型企画旅行にした。販売側のリスクは実は上がる(旅行業法は消費者保護法制なので、乗合事業者にとっては「乗合の企画乗車券」の方がリスクは小さい)が、それを承知で旅行業法を適用させたのだ。それにより、従来から旅行会社同士の間で行なわれてきた「ユニット販売」のスキームに乗せ、積極的な営業活動もあって東阪の旅行会社との提携は順調に増えているようだ。「フリープラン」(往復の交通機関と宿泊だけがセットされた募集型企画旅行)のオプションとしてパンフレットに掲載。またフリープランに上記旅行を加え周遊型ツアーとして見せることも可能だ。さらに記事に「受注型」とあるように、例えば学会などの際のエクスカーションとして。仮に熊本で医学系の学会が開かれ全国から研究者や医師が熊本市に集まったとして、一足伸ばし県内の温泉へ、という案内を旅行会社が気軽にできれば、旅行会社にとっても地元にとってもプラスだ。地元を知り尽くしたガイドが隅々まで「トリビア」を案内、という着地型ツアーの理念とは若干異なるものの、高速バスなど公共交通機関利用とすることで手仕舞いをギリギリまで遅らせ、かつ1名催行。そして既存の「ユニット販売」スキームに乗せるなど、旅行会社がハンドルしやすいことに徹底的にこだわったのである。東京や大阪の旅行会社カウンターで、<阿蘇に観光に行きたいんですけど>というお客様がいたとして、従来なら催行日が限定された周遊型ツアーを案内するか、分厚い時刻表やタリフと首っ引きで面倒くさい船車券発券をするか、しかなかった。それが全日1名から催行できるフリープランと、同じく1名催行の上記現地ツアーを組み合わせれば、簡単な端末操作だけで東京から熊本までの航空と熊本空港から阿蘇までのバス、それに宿泊をまとめて販売できるのだ。私自身、ホテルやバスといったサプライヤー側の人間で、「旅行業界」の雰囲気に合わない感もあるので理解はできるが、旅行会社を「手数料を搾取している」という目で見るバス関係者は少なくない。しかし、旅行会社を利用、活用してやろうという主体的な意志があれば、また違った旅行会社像が見えてくるはずだ。システムベンダーや車両メーカーなども含め、「皆でバスを売っていく仲間たち」という意識を、まずはバス産業の中心にいるバス事業者自身が持つこと。さらに地元観光資源の知識や人脈、張り巡らされた路線網など自らの持つ「資産」を強みとして意識すること。それができれば、九州産交のように、運輸とともに観光を通しても地元に貢献する道がもう一度開けてくるはずである。
2011.08.18
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私の古巣である楽天トラベル高速バス予約に、空港線ではあるが、京成バスの路線が登場した。東京空港交通のリムジンバスは、九州産交の九州横断バスなどと並んで同サイトの乗合商品取扱い第一号だったわけだが、そこに京成の路線がまずは1路線、加わった形だ。まあ、京成の路線がいくら後から加わったとはいえ、諸般の事情を考えると、私だったらオレンジをベースにしたこのページの色合いだけは変えるだろうなあと後任たちにちょっとプレッシャーをかけてみたり。これで同サイトでの乗合商品取扱いは15社(共同運行会社を含む)か。西鉄高速バス、南海バスといった大手私鉄直系の事業者を筆頭に徐々にだが顔ぶれも充実してきた。ツアー(募集型企画旅行)形式の商品だけ取扱っている小田急箱根高速バス、小田急バス、東武バス等を合わせると、よくまあここまで来たなあと思う。始める前から覚悟していたとはいえ、全国の既存路線バス事業者への営業は最初は針のむしろのようだったのだから。また、昨年来、私も委員として参加してきた「バス事業のあり方検討会」に、日本バス協会を代表して経営者が参加なさっていた京成バスが、同じく神姫バス(こちらはまだツアー商品だけの取扱いだけど)とともに楽天のサイト上に登場したというのは、私自身は既に楽天を離れた身とはいえ大変光栄である。各事業者とも、予約サイトとしての楽天の立ち位置や、多くの人に高速バスの存在を知らしめ、かつ簡単に予約できる環境を提供したいという楽天トラベル高速バス予約(会社名では楽天バスサービス)の理念を頭ではご理解なさっていても、なかなか一歩踏み出せなかったようだ。今回、「あり方検討会」で、意見が合わない部分もあったとはいえ直接お顔を合わせて議論を重ねたことで、楽天(これはウィラートラベルについてもそうだが)は何も言葉の通じない宇宙人の集まりではないことをよくご理解いただけたはずだ。また「あり方検討会」中間報告書で、<一般的な旅行サイトの積極的な活用>という文言が盛り込まれたことも大きいだろう。ちなみに、年内をめどに省令改正が行なわれ「新高速バス」制度が始まると、高速ツアーバス各社が「新高速」制度に基づいた乗合許可の取得準備に入る。停留所の確保など別の段取りもあるから、実際に彼らが乗合許可に移行できるのは早くて来年の夏ごろだろうか。詳細はまだ決まっていないが、数年の期限が切られてほとんどの高速ツアーバス企画実施会社が「新高速」に移行するはずだ(なお、移行できなかった会社は、様々な面で事実上、同じスタイルでの事業継続は困難になるはずで拒む会社はないだろう。ただ、「腐っても鯛」ではないが、「新高速」とはいえ乗合許可取得である。必要なハードルを越えられない会社が万一にもあれば、残念ながら涙を呑んでもらうしかない)。そうなると何が起こるか? 例えば予約サイト一つとっても、楽天トラベル以外の「高速バスドットコム」「スカイゲート」「バス探」「バスサガス」などのサイトも、高速ツアーバスのみならず「乗合」の商品を取扱うことになる(多少のシステム改修が必要だが、それに対応しなければ近い将来、取扱う商品が無くなってしまう)。まずは高速ツアーバスからの「移行組」からということになろうが、既存の高速路線バス事業者にとっても、楽天トラベル以外の彼ら予約サイトを活用することも可能になるのだ。この激動のタイミングだから、さらに新しい予約サイトが生まれないとも限らない。これまで高速路線バスは「直販」が中心であったから、基幹システム(「発車オーライネット」など)がそのままウェブのインターフェースを作って自社予約エンジンとして機能してきた。大手旅行会社系のサイトもないわけではないが、本質的には「ウェブ上での(あるいはコンビニのMM端末での)代理発券」が中心であった。「バス事業者が集めた乗客」を対象に、それまでの電話予約や窓口発券の負荷を軽減するための施策としてウェブ化に取り組んできた結果である。一方でこれからは、「一人でも多くの乗客候補に自社の高速バスの存在を知ってもらう」ためのツールとしても、ウェブを活用することになる。基幹システムは、それが基幹システムである以上は1社1システム(最悪の場合でも1路線1システム)であるべきだが、販路は、多いに越したことはない。直営店でしか売っていない商品よりも、イトーヨーカドーでも売っている商品の方が売れるに決まっているし、さらにイオンでも売っていた方がもっと売れるに決まっている。もちろん、楽天や高速バスドットコムのような予約サイトを既存の高速路線バス事業者が積極的に活用できる環境が整ったとして、そこで事業者がウェブの活用を予約サイト側に「丸投げ」してしまえば、徐々に予約サイトへの依存度が上がり自社予約エンジンの乗客まで彼らに獲られることになるだろう。そして手数料負担が増し、今回の「あり方検討会」の貸切バスに関するパートで交わされた議論のように、<予約サイトに手数料を搾取されており、安全確保さえままならない>と悪者視されるのは予約サイト側の本意ではない。楽天のような予約サイトと、発車オーライネットなどの自社エンジンとの間では、当然のことながらそこに「目先の乗客の取り合い」と「価値ある(繁忙日、繁忙便の)在庫の取り合い」という競合関係が生まれる。その競合が、親しい取引先同士にも緊張感を生み、お互いを高めあうことにつながる。馴れあう関係を作ることはお互いに損なのだ。現在の私のクライアントのほとんどは既存路線バス事業者だから、その点で古巣と「やり合う」事態も発生するのかも知れないが、そのやりとりもまた、事業者、予約サイト双方をさらに強くしてくれるはずである。
2011.08.13
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チェルシージャパン社が全国で運営する「プレミアム・アウトレット」は、本国での成功に倣い都心から約100kmの郊外に立地し、自家用車のほか直行バスやバスツアーなどによる集客、「ツーリズム・マーケティング」に積極的である。例えば御殿場プレミアム・アウトレットへは、新宿、東京駅、横浜、調布、静岡から直行バスが走る。乗合形式とツアー(募集型企画旅行)形式のものがあるが、いずれも相応の路線バス事業者が企画、運行するのが特徴だ。小田急箱根高速バス、小田急バス、JRバス関東、富士急行らである。そのラインナップに、今月、京王電鉄バス(運行は京王バス中央)が加わった。聖蹟桜ヶ丘発多摩センター経由のコースだ。京王系の座席管理システムSRS(サイト名としては「ハイウェイバスドットコム」)が初めて募集型企画旅行に対応したというのは興味深いところである。チェルシー社が、直行バスの運行事業者について路線バス事業者(御殿場の上記各社のほか、神戸三田の阪急や近鉄、鳥栖の西鉄など)にこだわる理由は、一つにはもちろん地上対応(バスターミナルなど)や安全面も含めた事業者のクオリティだろう。一方、ビジネス的には、彼ら路線バス事業者が持つ沿線での影響力も無視できないだろう。今月に入ってからまだ私は京王線の電車に乗っていないので確認していないが、小田急バスが調布発新百合ヶ丘経由のコースを始めた際には、小田急バス、小田急シティバスの路線バス車内はもちろん、小田急線の電車の駅貼りなど鉄道系の露出も相当なされていた。最近は高速バスの新路線も多くなく、昨年までと同じネタを使いまわしてついついお茶を濁してしまう「業務枠」(大手私鉄系バス事業者が親会社の鉄道駅や車内でポスター掲示などを行なう広告枠)だが、媒体価値は相当高い。つまり、首都圏から、例えば青森とか例えば長野だとかに向かう都市間の高速バス商品を首都圏マーケットで拡販しようと考えれば、路線別に多数の事業者が輻輳している現状が障害となるのだが、対空港(羽田、成田)や対アウトレットといった商品では逆に狭域マーケティングが有効で、京王や小田急といった私鉄の力は絶大だ。またチェルシー社側からすれば、「直行バスの告知」を通してアウトレットモールそのものも告知できるのだから(結果として自家用車での来店となったとしても)「おいしい」のではないだろうか。もっとも、チェルシー社側が持つ集客力はそれを上回ると思われる。これらの直行バスの乗客は、ウェブ予約、それもチェルシー社のサイトからリンクを辿ってバス事業者のサイトへ飛び、さらに予約システムに入り予約する利用者が圧倒的に多いようだ。バス事業者にすれば安定した集客が見込める商品ということになり、まさにWIN-WINである。別の例だが、巨大な店舗で人気のインテリア店「IKEA」。こちらはもう少し都心に近い郊外に立地する。例えば横浜の店舗は港北ニュータウン近くにあるが、最寄りの新横浜駅から頻発する無料送迎バスはいつも大混雑。そしてこの店舗、東急東横線の田園調布駅から、なんと所要30分以上、自動車専用道路である第三京浜を使う長距離無料送迎もある。東急バスが受託していて、週末の増便など、IKEAカラーではない東急色のワンロマが「田園調布⇔IKEA」とLED表示して走ったりするからまるで短距離高速バスの雰囲気だが、これがまたよく乗っている。田園調布駅ロータリーの停留所、もとい、乗り場には「満席になったので早発しました」という案内が準備されているほどだ。ローカルな話題で恐縮だが、IKEA港北に便利なのはどう考えても新横浜であり、遠く多摩川の先で都区内に位置する田園調布から送迎とはちょっと思いつかないルートである(ただし、たしかに第三京浜を通ればさほど遠くない「コロンブスの卵」ルートだが)。また私はサラリーマン時代、通勤で田園調布駅を電車で毎日通過していたが、駅貼りも車内吊りも、東急側での告知は見たことはない。さらに田園調布という地名は有名だが、いたって静かな住宅街であり駅自体が集客力を持つ土地ではない。にもかかわらずあれだけの利用者がいるのだから、IKEAに買い物に行きたいと考える都区内在住の「IKEAの目的客」が、IKEA側のサイトやチラシでこの送迎バスを知って利用していると考えられる。強いデスティネーションがあり、彼らが積極的にバスの情報を示してくれればさえ、ちゃんとバスを使ってもらえるのだということをこの2例は示している(震災等で新幹線が不通になり高速バスが大活躍した後、新幹線が復旧しても高速バスの人気が定着した、という事例とどこか共通している)。これらの例を見るにつけ、既存の高速バス路線においても活性化の余地は十分にあると感じる。終点近くにレジャー施設を自ら作って誘客するのは小林一三翁の宝塚以来、我が国の鉄道バス事業者がみなチャレンジしてきた手法(高速バス分野で最も成功した事例は、中央道富士吉田線という「参道」のその先に鎮座まします富士急ハイランド)だが、レジャーも多様化しつつあるなか自前の施設だけでは不足だろう。そう考えたとき、各事業者は、各地域の観光協会や旅館ホテルの組合、観光施設らと有効な関係を日ごろから築いているか? 時刻表を手に、よろしくお願いしますと頭を下げに行ったことがあるか? 地方側の観光資源が、大都市側の共同運行先に伝わっているか? そしていざデスティネーション側が高速バスを、例えば自社のサイト上で紹介しようとした際、アフィリエイトなどの仕組みを提供できるか? そんなちょっとしたことに手を抜くと、新規参入者に対し余地を与えてしまうのだ。
2011.08.12
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8月2日付『日本経済新聞』朝刊消費面に「高速バス、個室でゆったり」との記事。海部観光の12人乗り超高級車「マイ・フローラ」が写真入りで紹介されており、高速バスマーケット全体の方向性について、私のコメントも掲載いただいた。3月に高速バスマーケティング研究所を設立以来、運輸や旅行の専門誌、専門紙には数多く取り上げていただき感謝しているが、やはり全国紙、それも「日経の本紙」というと反響の大きさも別格。メールや電話で「記事見たよ。これからもがんばれ」とご声援をいただいたり、フェイスブックの友達リクエストが急に増えたり。きわめて個人的な感想で恐縮だが、会社を作って5ヶ月で「日経の本紙」に登場できたのだから我ながら上出来だなあと。多くの関係者に感謝するとともに、ご期待にたがわないようこれからも懸命に各社のお世話をしなくては。その日は仕事を終えた後、某事業者の夜行路線に乗車。やはり「ふそうの中二階」もまた「別格」だなあと感心しながら、着いたその足でその事業者の営業所、予約センターやターミナルなどにご挨拶。出庫点呼や予約センターのオペレーションを拝見したうえで午後は本社で今後の改善策についてご提案と打ち合わせ。夜は当地で夏祭りの夜を堪能した。明けて本日。『日経トレンディ』の発売日。「地方発 超豪華高速バスの正体!」が掲載された。モノクロ3ページながら綿密なご取材でかなりの情報量が盛り込まれている。同じく海部観光「マイ・フローラ」を主に、弘南バス「津輕号」、イルカ交通「和(なごみ)」が多彩な写真付きで紹介された。こちらも、業界の全体感の分析や「バス事業のあり方検討会」で示された「新高速」制度について私のコメントも大きく採用いただいている。詳しい方なら、掲載されている私の写真の背後に写っている車両、ピンと来る人もいるのではないだろうか? あ、この事業者の車両がこの場所で写っているのは偶然カメラマンさんがアングルを気に入ったからで、政治的にあえて写しこんでもらったとかそういう意図はありません、念のため。こちらについてもまずはきわめて個人的な感想から先に述べると、上記のように出張先で発売日を迎えたわけで、そういうパターンは前の会社の頃も含めて初めて。見知らぬ街でコンビニに立ち寄り、買い物ついでに雑誌コーナーで立ち読みすると自分が載っていた、というのはなかなか味わえる経験ではないだろう。力のある媒体に掲載される価値というのを卑近な経験ながらあらためて実感し、多くの関係者にもう一度感謝。この『トレンディ』。楽天バスサービス時代から年一回くらいのペースでご取材のお手伝いをしているが、今回は過去の記事と比べ、掲載事業者のラインナップが極めて印象的。一つには私とご縁が深い3社が掲載されているという点なのだが、もう一つ、「地方発」という記事タイトルが象徴するように、地方の事業者ばかりが紹介されている点だ。従来は、東京~大阪など大都市間を主戦場と捉え、ウィラー・トラベルや平成エンタープライズなどを「乗り比べ」する記事だった。対抗馬としてJR「プレミアムドリーム」あたりが登場する以外、高速路線バスはほぼ登場せず、ある方の、<こうやって見ると、私鉄系のバス会社って、いったい何してるんでしょうね?>という感想が今でも忘れられない。だが今回の記事では、「地方の元気な高速バス会社」という観点で上記3社を選び出している。その中には、「路線」「ツアー」両方を運行するイルカ、純粋な(まあ、自ら「ツアー」も運行してはいるけど)既存路線バス事業者である弘南まで紹介されている。高速バス市場の「主戦場」が、既存事業者が掘り起こし忘れていたため「草刈り場」となった大都市間路線から、既に相応の開拓が済んでいる大都市~地方の長距離夜行路線に移ったことを、この記事は象徴している。既存路線バス事業者が、ただの「眠れる獅子」でないことも。ただ豪華なクルマを作ればいいというものではない。が、ウェブ化により「バスを選んで乗る時代」となり、もう一つ、パブリシティ(新聞や雑誌などでの紹介)効果がある限り、きわめて有効な戦略だ。「マイ・フローラ」など、地元民放の本社に車両を横付けしての生放送をはじめ、新聞や雑誌、テレビなどでのPR(広告費をかけないで新聞やテレビなどの媒体でニュースとして紹介されること)効果を広告費換算すれば莫大な数字になるだろう。それにより、徳島県民にとっては、海部観光もそろそろ「おらが町のバス会社」になりつつあるのだ。先般同社にお邪魔した際、飲み会帰りの地元住民が徳島駅前で海部観光の大阪からの到着便を見上げながら「マイ・フローラ」を話題にしているのを聞きそう実感した。皮肉にも、1990年頃の「高速バスブーム」、共同運行システムが定着し全国で既存事業者が雨後の筍のように高速バス路線を開設したあの頃を、どこか懐かしく思い出した。「マイ・フローラ効果」のおかげで、同車(隔日)、3列車(隔日で3列が2台口)、4列車の毎日計3台で運行する同社の東京線、ならびに先日6往復に増便した大阪線もきわめて好調という。ただ、「全国的に先を行く」クルマでないとパブリシティにはつながらないから、この手法に興味ある事業者には、そろそろラストチャンスかも知れない。もっとも、例えばこの海部観光の場合、元乗務員として現場を隅々まで知り尽くし、既存事業者も舌を巻くほど運輸安全マネジメントに真摯に取り組み、かつ顧客満足を追求する経営者の姿勢がこれだけの記事掲載を呼び込んでいることだけは、忘れてはならないが。
2011.08.04
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本日付の『東京交通新聞』第4面が、めいっぱい「新高速バス」に関する特集だ。既存事業者が多く読む媒体ゆえ、既存事業者に対し制度の全体感がつかめるようにまとめられている。日本バス協会に加え、既存事業者(JR東海バス)のコメントも紹介されているところが同紙らしい。高速ツアーバス連絡協議会総会での舩曵旅客課長さんの講話もかなり詳しく掲載されており、今後の展望については私のコメントを大きく採用いただいた。「既存側」のコメントに新制度に対する不信感が見え隠れするのも、本音だろう。「既存」「ツアー」問わず、高速ツアーバスにも関わっていない貸切専業者も含め、バスに関係する方々はぜひぜひお目通しいただきたいし、よろしければ感想や意見なども頂戴したい。上記リンク先から「電子新聞」(ブラウザ閲覧)の形で500円で購入できる。感想と言えば、いつも愛読しているブログで当ブログにコメントいただいた。ご指摘の内容に実は同感で、私としては正にそれを伝えたいと思いブログを続けていた内容そのものだったので、自分の筆力のなさを痛感しながら、大切な点なので改めてご説明したい。地方における既存の路線バス事業者は、流通や不動産、観光開発など、各地元に強く根付いて幅広く事業を展開している。保守系政治家と関係が深い会社も多い。事業間のシナジーは、目に見えるもの(例:観光開発→観光客増加→貸切バス需要増)も、目に見えないもの(例:地元住民への圧倒的ブランド認知)も含め大きく、正に地元の名士企業として、足元のビジネスに留まらない関係を地域社会、地域経済との間に築いてきた。だが、「既存事業者と言う名のビジネスモデル」の稿で書いたように、そのモデルが限界だという危機感が私には強い。「本業」である路線バス事業が青息吐息であるのに加え、「副業」でカバーすることが難しい状況だからだ。不動産のみならず流通でも、彼らの経営に占める「土地」、特に中心市街地に古くから保有する土地に紐づく事業の割合は各社とも小さくないが、我が国全体での土地の値上がり神話崩壊、わけても中心市街地の相対的地位低下が著しい。また、細かくは書かないが、地元の名士企業であるが故に手に入れることができた数々の「おいしい仕事」(一例を挙げれば、航空総代理店業)が収益源だったわけだが、その種の利権は今後、縮小することはあっても拡大することはありえない。ではせめて現状維持ではどうか? だが、既存バス事業者は特に終身雇用年功序列の要素が大きいことを考えると、現状維持では不十分だ。年功で給料が上がるということは、年々、会社の利益が増加する、という前提があって初めて成り立つ。日本型経営システムは、実は高度経済成長期においてのみ成立するモデルなのだ。一方で外部環境はますます悪化する。特に注意すべきなのが金融だ。既存事業者は地元金融機関と「長期的な」関係を維持してきたが、金融機関自身が自らの生き残りを必死で模索する状況にある。金融機関に引導を渡されるバス事業者はこれからも出てくるだろう。それに、減損会計の適用、その先には国際会計基準の導入もバス事業者の経営に小さくないインパクトを与えるだろう。しかし、ではバス事業者と言うのは特別にダメな会社なのか。私はそうではないと思う。上記をあらためて読んでいただきたい。おそらく、上記は、我が国の伝統的な産業全てに当てはまるだろう。少なくとも、私が10年間働いた老舗ホテル企業には一字一句まで当てはまる。つまり、「松山からの改革」や「1940年体制」で書いたように、既存バス事業者たちが置かれた厳しい状況は、我が国のおおよそあらゆる産業、あらゆる企業に共通のものなのである。地域ごとの経済の状況や、グループ全体の中でバス事業が占める割合、バブル期に背負った負債の大小など事業者ごとに置かれた環境は様々で今後取るべき戦略も変わってこようが、共通しているのは、右肩上がりだった時代の延長線上で事業に取り組めば、企業としての各事業者も、公共交通としてのバスも、守ることはできないという点だ。私は、まずは努力と結果が結び付きやすい高速バスの分野で、マーケティング意欲を持って事業に取り組み成功(輸送人員や利益の増加)を実現することが、企業としての各事業者にとっても、公共交通としてのバスにとっても、パラダイムを変える一つのきっかけになると信じている。また路線バスは公益的な事業だからもっと公的なお金を注ぎ込むべきだと考えてはいるが、財政が厳しい中、従来からの「補助金ちょーだい」では抜本的解決に足る金額は引き出せないし、だからこそ社会を納得させるスキームを議論しなければならない。その中では「企画(経営)と運行の分離」がキーワードになろう。そして一足先に高速バス分野では、「新高速」においてかなりの部分で「企画と運行の分離」が実現する。つまり、今回の「バス事業のあり方検討会」中間報告書は、事業者の意識と言う面でも、制度と言う面でも、バス産業変革のための大きな試金石である。そして、苦境におかれたバス産業が我が国の縮図である以上、この産業を変えることは他の産業、我が国全体の変革につなげることができるのではないかと言う思いが私にはある。ご指摘の「全体最適」を各既存事業者が本気で議論を始めるきっかけとして、多少の無理は承知で高速バス事業に揺さぶりをかけているつもりだ。少なくとも、「過去の全体最適」を疑いもなく全体最適だと信じることだけからは脱却いただきたく(客観的に議論した上で環境に変化がないと判断するならそれは否定しないが)、もう少しの間は、多少の悪役になっても揺さぶり続けたいと考えている。もっとも、自分が「いい商品」「もっと売れるべき商品」と信じた高速バスの価値を多くの人に伝え理解してもらいたい、という素直な思いも強いのだが。
2011.08.01
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