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本日付の『日本経済新聞』朝刊で、「旅行予約サイト バスの扱い拡充 料金など一括比較」と報じられている。ネタは「じゃらんnet」が今月24日から本格的に高速ツアーバス予約サービスを開始することと、「楽天トラベル」が高速路線バスの取扱いを拡充させることだ。そのうち、後者の方は今さらご説明するまでもないだろう。記事中に具体的に社名が上がっているのが京成バスと千葉中央バスであるが、日本バス協会高速バス委員長のお立場にある京成バスやそのグループ会社が楽天で販売を始めたことは、業界内でも相当なインパクトがあるはずだ。今後、順調に取扱事業者数は増えていくことだろう。今回の大きなニュースは前者の「じゃらんnet」だ。まず、きわめて短期間に高速バスの予約サービスを構築したメンバーには敬意を表する。その上で、少し解説させていただきたい。実は現在でも「じゃらんnet」から高速ツアーバスの予約をすることができるのだ。いったい何が「本格的にサービス開始」なのか。現在、「じゃらんnet」トップページの「高速バス」タブをクリックすると空席検索のモジュールが現れるのだが、そこで検索すると検索結果ページ以降、ホワイト・ベアーファミリー社が運営する高速ツアーバス予約サイト「高速バスドットコム」に誘導される。利用者はあくまでも「高速バスドットコム」に対し予約を申し込む形になる。「アフィリエイト」と呼ばれる提携の一形態だ。なおホワイトベアー社(みな親しみを込めて「ベア」とか「くま」とか呼ぶ)はこの種の提携に非常に熱心で、MSNトラベルなどと「じゃらん」同様のアフィリエイト形式で提携しているほか、YAHOO!トラベルとの提携は、データベースはベアのものを使うがUI(ウェブ画面)はYAHOO!側がデザインしており、これはOEM(相手先ブランド供給)と呼ばれる提携だ。つまり、「じゃらんnet」のトップページを訪れた利用者が(予約申し込み先が、ホワイトベアー社なのか「じゃらん」を運営するリクルート社なのかの違いはあれ)高速ツアーバス各社の商品を比較検討しながら予約する、という流れは従来と何も変わらない。リクルート社にすれば、面倒な顧客対応やら企画実施会社とのやり取りなどをホワイトベアー社に任せ、みずからは「じゃらんnet」の集客力を活かし利用者を集めておけばホワイトベアー社から予約実績に応じてフィーが支払われているわけだから、事業としては、コストがほとんどかからない「優等生」だったはずだ。それが、なぜ内製化に向かうのか。リクルート社にとって最大の資産は、ウェブ、リアル双方における圧倒的な媒体力だ。それらのサイトや印刷媒体では広告主から相当の広告料を受け取り広告掲載するほか、同社が展開する各種サービスの告知も行なう。もちろん自社媒体だからタダみたいなものとはいえ、その広告枠は販売すれば相当な価格で売れるものであり、多様な自社サービスのうちどれを告知するか、優先順位が付けられるはずだ。貴重な告知枠ゆえ、自社サービスならなんでもかんでも紹介、というわけにはいかない。一方、アフィリエイト形式ならたしかにコストはほとんど発生しないが、手にするフィーも高くはない。今、同社は「積極的に告知すれば高速バス予約サービスは伸びる」と踏んでいるのだ。しかし、アフィリエイトフィー程度しか手にできないサービスを、自社媒体で積極的に紹介するわけにはいかない。もっと儲かっている(あるいは儲かる可能性が大きい)他のサービスを紹介することになるとは企業として当然だ。だからここは、たとえ社内でオペレーション体制を整えシステムを新規開発して相当のコストを掛けたとしても、企画実施会社から直接送客手数料を受け取るビジネスモデルに転換する、という積極策に出た。この「攻め」は成功するだろうと思う。そして、記事にある通り当面は高速ツアーバスのみ取扱うわけだが、その高速ツアーバスが「新高速」に一本化されるわけで、楽天トラベル同様「じゃらんnet」が高速路線バスの取扱いを始めるのは時間の問題だろう。いつも書いていることだが、直営店だけで売っている商品よりもヨーカドーでも売っている商品の方がたくさん売れるのは当然で、さらにイオンでも売っていた方がもっと売れるに決まっている。そして楽天と「高速バスドットコム」さらには「じゃらん」の競争が、さらに高速バス市場全体の拡大を後押しする。合わせて事業者側は、これら予約サイトをうまく「使いこなして」いかないとならない。今のところ彼らの中でトップを走るのは楽天トラベルだから、<まずは楽天さんと>という声も多いが、それだけでは不十分なのだ。複数の予約サイトと契約し、在庫の配分、価格の設定(「新高速」移行後の話だが)などで彼らを揺さぶりながら、画面上での露出量など自社に有利になるよう導いていく。もちろん、手数料率が不当に引き上げられないようプレッシャーをかけるのも、複数の予約サイトを使いこなして初めてできることだ。ちなみに、宿泊予約の分野ではビジネス出張に強い楽天トラベルに対し、「じゃらんnet」は観光旅館に強い。例えば箱根や富士五湖、白浜温泉などの温泉旅館を予約しようとする利用者にサイト上で高速バスも合わせて案内できたら……既存の高速路線バス事業者にとって、本日のニュースは将来、きわめて大きい意味を持つのかも知れない。【首都圏の皆様にお知らせ】10月18日(火)18:10ごろから、FM Nack5『夕方シャトル』に電話で生出演します。ぜひお聞きください。
2011.10.14
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本日付の『フジサンケイビジネスアイ』に「高速バス 戦国時代直行 「ツアー」「乗り合い」すみ分け崩壊」と1面トップに大きく掲載、私のコメントも採用いただいた。その記事がそのままウェブ版の『SANKEI BIZ』に転載、さらに『YAHOO!ニュース』に配信されYAHOO!JAPANトップページのトピックスで紹介されたという、きわめて今日的なパブリシティ。記事中、メインで取り上げられているのが海部観光の「マイフローラ」。合わせてウィラートラベルの「コクーン」だ。「マイフローラ」と私のコメントが合わせて掲載されるのは『日本経済新聞』(8月2日付朝刊)、『日経トレンディ』(9月号)に続いて3度目。逆に言うと、今の会社を設立して以来、(専門誌・紙は別にして)メジャーな媒体における私の露出は全て「マイフローラ」がらみということになる。あらためて関係者と「マイフローラ」に感謝。蛇足ながらこの海部観光、地元ではこの程度では済まない露出ぶりだ。地元紙ではバス以外の話題も含め掲載が続いているし、地元民放での生放送出演ももう何度目かだ。ビジネスアイの記事にある通り「マイフローラ」は大変優秀な「広告塔」であり、東京線はもちろん、6往復に増便したばかりの大阪線への波及効果も絶大。先日も書いたように地元で同社は既に「おらが街のバス会社」として認知されつつあるのだ。この感じは何かを思い出すな、と記憶を辿れば、皮肉にも1990年ごろの「高速バスブーム」と呼ばれた時代に既存路線バス事業者の高速バスが各地元で話題になったこととオーバーラップする。「フェニックス族」(そういえばこの言葉も地元紙が取り上げてから定着した)などという言葉が生まれ、地方部から高速バスに乗って都会に出かけることがまだ新しかった時代。今日、徳島県民は海部観光の高速ツアーバスにその「新しさ」を見ているのだろう。なお、徳島県におけるパブリシティの難しさを挙げれば民放局が1局しかないことだが、これとて、逆に言えば近畿広域圏と呼ばれる大阪キー局の電波が届くエリア内に事実上あることを意味しており、徳島県と京阪神の物理的、文化的距離感の近さの象徴といえ、それこそが徳島~京阪神における高速バス需要の源なのだから文句も言えまい。さてビジネスアイの記事に話題を戻すと、見出しにある通り、「新高速」制度実現が本格的に近づいてきたことを実感する。いや、それでもまだ半信半疑の関係者もいるようだから、もう一度整理しておく必要があろう。「新高速」への移行は、二段階に分けて行なわれる。まず、道路運送法における「一般乗合」のうち、「高速バス」に分類されるもの(ここでいう「高速バス」の定義はまだ公表できないのでお待ちいただきたい)について省令以下の改正を行ない、運行管理受委託の範囲を大幅に拡大(事実上の傭車容認。「企画」と「運行」の分離)するとともに運賃設定について事業者側の裁量を一気に拡大する(事実上のダイナミックプライシング導入)。それが「新高速」と呼ばれる制度だ。その上で、数年のデッドラインを設定して高速ツアーバスの原則全社を「新高速」に移行させる。建前上、高速ツアーバス(募集型企画旅行形式の二地点間輸送)は禁止されないとはいえ、最終的には事実上、高速ツアーバスはほぼ強制的に「新高速」への移行が求められる。「細々と」ツアー形式を継続することは不可能ではないが、彼らの目的は「規制の網をかいくぐる」ことではなく「自らの事業を永続、成長させる」ことなのだから、わざわざ難しい生き方を選びはしないだろう(この辺の具体的内容は時期が来ればご説明する)。ただ、「ツアー」全社が「新高速」に移行するには数年かかる。それゆえ、既存の高速路線バス事業者の中には、<「新高速」など数年後の話だろう>と鷹揚に構えている方も見受けられる。だが、第一段階に当たる制度改正自体は、「バス事業のあり方検討会」中間報告書に明記されている通り「年内を目途に」実施されるのだ。役人とて人間だから多忙な中で多少の前後はあるかも知れないが、いずれにせよここ数か月の話だ。当社が主催する「高速バス・マネジメント・フォーラム2011」においては国土交通省から新制度の説明が予定されているが、その時点(11月10日)ではおそらく制度の詳細まで解説があることだろう。つまり、中長期的に高速ツアーバスの取扱いをどうするかという議論はまだ残っている(私としては、「新高速」が高速バス市場の成長に十分寄与する制度になるなら高速ツアーバスの制度上の禁止も選択肢の一つと考えている。ただし理念上は、新しいビジネスモデル構築もイノベーションの一つであり、高速ツアーバス全面禁止はバス産業が自らの手足を縛るだけだという信念だ)ものの、高速路線バスの制度が大幅に変わることだけは間違いないのだ。そして、本音の話、規制を強化することで自らの権益を守ることができるだろうと考えていた一部の人たちは、今回の件で十分以上に懲りていることだろう。いや、そのような政治的な話では本来ないのだ。40年前、年間約100億人いた我が国の路線バス輸送人員は今や38億人。斜陽産業と言ってもいいこのバス産業が今後も社会的存在意義を保つためには、冷めていくばかりのぬるま湯に皆で浸かっている場合ではない。特に、公益事業として、より強く「公」の関与(お金も含めて)が必要な平場の路線バス分野と、収益事業として、鉄道や航空に対する「挑戦者」の立場から大きく市場拡大が見込める高速バス分野とで制度を分けることは諸先進国の事例を見るまでもなく当然の理である。その中で、圧倒的な顧客基盤、フリークエンシーを誇る「既存組」の高速路線バスが、その強みを今のうちにいかに盤石にしておけるか。「新高速」への制度改正をいかに自らの問題として認識できているかというところから、競争は既に始まっている。
2011.10.10
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ここにきて、歴史的な制度改正が目前に迫ってきたことを実感できたのか、各社とも動きがあわただしくなってきた。念のため整理しておくと、今回、「制度」に関して改正があるのは高速路線バスである。当面、「法律」は触らず「省令以下」の改正で対応することになっており、「バス事業のあり方検討会」中間報告書には「年内を目途に」実施されると書かれている。行政も多忙だろうから詳細な日程はともかくとして、近々、高速路線バス事業に関し車両調達と運賃について柔軟さが一気に増すことは間違いない。その上で、高速ツアーバス各社が高速路線バス業態(その時点では省令改正後。つまり「新高速」)に移行するに当たり必要な停留所の手当てを済ませ(中間報告書には「官民による協議の場を設置」と表現)、高速ツアーバスの原則的に全社が高速路線バスに移行する。事実上のデッドラインが定められ、それ以降、法的には高速ツアーバスは禁止されないものの事実上はその営業が困難になる。以前にも書いたが、行政から高速ツアーバス連絡協議会への指示により、協議会としては全国の「停留所候補地」のリストアップと実査を行なっているところだ。実際に動くのは協議会から委託を受けた当社(つまり私)であり、各所で地元企画実施会社の力も借りながら既に44都府県を回った。高速ツアーバスが存在しない北海道と沖縄を除くとあと1県。協議会の立場としては、まずこの「停留所問題」が最優先課題だ。そもそも2002年の改正道路運送法施行に際し理念上は需給調整が撤廃されたにもかかわらず(生活路線についてはクリームスキミング条項が作られたが)、実際の新規参入に際しては「停留所の権利」という目に見えない参入障壁が残ったことが「ツアーバス問題」の根幹なのだから当然だ。駅前など主要停留所について一定の比率で新規参入側にも停留所を配分するといった新ルールを作るか、少なくとも今日高速ツアーバス事業を営む者にだけは停留所を配分(あくまで「最低限」の処置)するか、どちらかが行なわれないとこの問題は解決しない。一方、高速ツアーバス企画実施会社、運行会社各社から相談を受ける機会も増えてきた。バスと旅行を兼営する会社の場合は、<今できることは、「新高速」移行後を見据えNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)の運輸安全マネジメントのコンサルを受け安全面での実力を上げておくこと>とご説明する。純粋な旅行会社の場合、いくばくかの車両を保有するバス事業者に生まれ変わらないと事業を事実上継続できないのでパワーもお金もかかるわけだが、既に具体的な動きに入っている会社も数社ある。運行を請け負うだけの貸切バス事業者の場合は答えが難しいが、できることは安全面での実力を「乗合の管理受託」に耐えうるレベルまで上げておくこと以外なく、きれいごとのようだがそう繰り返す。逆に「既存」の高速路線バス事業者の動きも積極的になってきた。何度も繰り返していることだが、彼らの高速バス事業の「本丸」は、片道2~4時間程度の距離を30~60分程度の間隔で運行する多頻度昼行路線であり、そういった路線にはこれまで高速ツアーバスはほとんど進出できていない。「新高速」となれば高速ツアーバスからの「移行組」がすぐにそういった路線でフリークエンシーサービスを行なうとは思えない(※)が、「本丸」でも競争が始まるリスクは従来よりも顕在化した、ということだろう。私がいただくご相談も、「レベニューマネジメントの運営体制(レベニューマネジャーはどのクラスの人材を充てるべきか)」など、より具体性を増してきた。※多頻度昼行路線に高速ツアーバスが進出できない理由として、「車内発券不可」といった制度面の不利さとともに、既存路線バス事業者の地元での分厚い顧客基盤など営業面での既存側の強みも忘れてはならない。その結果としてフリークエンシーサービスを提供できなければ商品価値に大きな差が生まれ、既存と新規の差はいつまで経っても縮まらない。私が思うに、良くも悪くも今回の制度改正で最大のポイントは、公益性の大きい平場の路線バスのみならず、収益事業として位置づけられる高速バスの分野においても、「停留所の権利」という概念を温存した点である。諸外国の例を見ても、平場の路線バスにおいては「公」がより関与を深めている(当然その裏側には、「公」がより多くのカネを投下しているという背景がある)のに対し、高速バス事業に関しては参入自由へ導かれている。今回、高速ツアーバス企画実施会社に対し(乗合事業者に生まれ変わることと引き換えに)停留所を与え「既得権組」の仲間入りをさせることは決して参入自由を実現するものではない。いやむしろ、高速ツアーバス全社が「新高速」に移行を完了した後は、高速バス事業へのさらなる新規参入はより困難になるのかも知れない。したがって理論的には理想に程遠いということになるだろう。だが、我が国の高速バス事業の成長のためには、十分以上の運用ノウハウと顧客基盤を持つ既存の高速路線バス事業者を一定程度保護したまま、一方でより柔軟な制度を手に、より積極的なマーケティング意識を持って、彼ら自身が潜在的利用者と向き合い市場を拡大することが最も近道なのだ。理想の制度論だけで言えば、平場の路線バス分野は諸先進国で見られるような公設民営型に移行し、一民間企業でしかないバス事業者の経営に左右されることなく公共交通ネットワークを維持できる形を作り上げ、逆に高速バス分野は安全面での規制のみを残しより自由な競争で市場拡大を目指すべき……ただ、我が国で今すぐそれが実現するとは思えない。かといって、高速バス分野で競争を制限することを社会が許すとも思えない。今回の制度改正は、本音を言うと「既存」「ツアー」双方からなる「業界(実は特に「既存」側)」の要請と、社会(市場)が求める理想との絶妙なバランスの上に立っているのである。その事実を客観的に冷徹に見るようにしないとならない。なぜなら、万一そのバランスが崩れたとき、失うものが大きいのは「守る側」の方なのだから。
2011.10.05
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