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青森から函館に渡って、北海道バス(大阪バスグループ)の「ニュースター号」で札幌へ。全国的に見ても久々の、高速路線バスへの純粋な(つまり、既存事業者の規模拡大などではない)新規参入事例だ。貸切専業者が高速バス事業に進出を考えた際、高速路線バス業態を選ぶか高速ツアーバス業態を選ぶかは難しいところだ(前者を選んだ場合、立ちはだかる「見えない壁」を乗り越えなければならないが、同社の場合、もともとそちら方面に強い会社であるので、今回は営業面だけ考える)。ざっくり言うと、大都市マーケットほど「ツアー」、地方マーケットほど「路線」が有利であり、長距離ほど「ツアー」、短距離ほど「路線」だ。「ツアー」形式を選択した際のメリットは(もちろん一つは参入の容易さであるが、それをクリアした後、実際の運用フェーズにおいては)、例えば価格変動など商品設定の柔軟さであるわけだが、実はそれを引き出すには相応のノウハウが必要である。「路線」の方は、広告上の表現や予約発券手続きという面で圧倒的に簡単で、特に当日、車内でも発券できるメリットが大きい(旅行業法は典型的な消費者保護法制であるから、契約手続きなどに制約が大きい。高単価である海外旅行などでは問題ないが、日常利用の高速バスを募集型企画旅行形式で行なう場合、その煩雑さを軽減するためウェブ予約・決済にほぼ限定せざるを得ず、顧客層の幅を狭めてしまう)。したがってこの路線の場合は、「ツアー」のメリットを引き出すノウハウを持った者に支援を求めないという判断をした限り、「路線」業態を選択したのは正しいと考えられる。印象的だったのは、スライドする(対向する)既存側の高速バスの乗務員が、皆こちらの車内を見上げること(もちろん、脇見運転にならない程度に)。既存側とすれば、経営陣はもとより現場の第一線まで、新規参入側の乗車率が気になるということだろう。さらに面白いのは、その既存側高速バスを共同運行する3社の中に、北都交通が含まれることだ。北都交通と言えば、30年近く前、会員制都市間バス形式で札幌~稚内などに参入した事業者(厳密にはグループ会社)だ。現在の高速ツアーバス業態と同じ、主催旅行(現・募集型企画旅行)形式で、貸切バスをチャーターする形で都市間輸送を行なったのだ。行政も、現場においては積極的にそれを認めたのだという。しかし既存(当時の)側の抵抗が本格化した時点で舞台は中央の本省に移り、1986年には、主催旅行形式による二地点間輸送を「乗合類似行為」として事実上禁止した、いわゆる「昭和61年通達」が発出される。多くの人たちが、今日の高速ツアーバスを「違法だ」と主張する際、この通達を根拠とする(もっとも、根拠など考えず、そう思い込んでいるだけの人も多いが)。しかし、実はその通達は2002年に廃止されている。理由は、道路運送法が改正されたからだ。同法の第1条(「目的」)から、「道路運送に関する秩序の確立」という文言が消えたのだから当然だ。「秩序の確立」から「利用者の利益の保護」という言葉に置き換わった(蛇足ながら、さらにその後「利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進」による「利用者の利便の増進」といった文言も追加されている)のである。つまり、我が国全体でのバス事業のあり方の根幹が、従来の「秩序の確立」という事業者側の視点から「利用者の利益」さらには「利便の促進」という利用者側の視点に変わったのだ。私は何も、それをもってさも綺麗ごとのように「利用者の利便」という錦の御旗を打ち立てるつもりはない。利用者の利便のためなら、事業者は苦しんでいいなどとは考えていない。ただ、なぜそのような考え方の変化が必要だったのか、を、皆で真剣に考えるべきだと思う。既存事業者の多くは、いわゆる「戦時統合」によって大枠が誕生した。その体制はほぼそのまま戦後に引き継がれたが、戦後約20年の間は、独立系事業者の買収合戦など、市場が急拡大する中で「ビジネスチャンス」を求めて事業者同士の争いも存在した。小田急による武蔵野乗合(現・小田急バス)の買収、京王と小田急による奥多摩振興(現・西東京バス)の買収合戦といった大手私鉄系沿線や、「箱根山戦争」に代表される観光地での出来事である。1965~70年ごろにはそれもおおむね落ち着くが、それでもまだ「国境線画定」への小競り合いが消えたわけではなかった。自由民主党による長期政権のもと、中選挙区制による「派閥」という我が国独特の政治秩序の中にあり、<パーティ券をいくら購入して、○○バスのエリアに楔を打ち込んだ>という武勇伝さえ聞かれる。おそらく、同一県内の隣接する事業者のエリアに貸切バスの営業所や路線バスのバス停を設置できた、ということなのだろう。そこに、高速バスという新しい事業モデルが登場する。(長くなりそうなので、続きは次回)
2011.04.30
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本日より、全国で3社の特別車両が運行を開始する。以前にお伝えした、海部観光の「マイ・フローラ」、イルカ交通の「和~なごみ~」に加え、弘南バスの「津輕号」青森~東京線の新型車両だ。前の二つが高速ツアーバス、津輕号は高速路線バスである。以前、いただいたコメントへの返信で、津輕号の新車を「3列と2列の合造車」とご紹介したが、誤りであった。訂正してお詫びする。単純な思い込みが原因であり、いろんな意味で反省だ。縁あって現車を拝見する機会があったが、ぱっと見は普通の3列独立シートである。ただし、普通なら「C席」に当たる進行右側の1列に「S席」の座席番号が振られ、シート幅が少し広い。その上、床下トイレを挟んで前後6列だから足元の広さは最大級である。一般席(といっても前後9列と広めの上に、B席も含めてほぼ個室感覚の座席カーテンつき)との価格差は1000円に抑えられる一方、座席定員は24席を確保し、利用者にも事業者にも「手が届く特別席」だ。ちなみに同社で久々のスーパーハイデッカーである。同路線は1年以上前から楽天トラベルでも販売されている。往復割引を廃止したうえで閑散期、繁忙期二本立て運賃設定によるセミ・ダイナミックプライシングは既に導入済み。当初は前後10列だった車両を9列に改造するなど試行錯誤したうえで、新車では座席グレードを多様化。エクステリアデザインを地元大学のデザイン専攻の学生さん、しかも留学生が担当するというサイドストーリーまで「現代風」だ。1年間、楽天のサイト上で「戦って」きた結果、おのずと導き出された答えだろう。私ごときが御託を並べたてるまでもなく、他の既存事業者より一足先に「第3フェーズ」の世界に自ら飛び込めば、本能的に対応できるということだ。もっとも同社の場合、「ノクターン号」によって「第2フェーズ」の本格的な幕開けを演出したわけだから、その進取の精神が社内に息づいているのだろう。その「ノクターン号」とて、ずいぶん前からスーパーシートの設置、繁忙期の往復割引廃止、さらに4列シート続行車両の(「500円引き」にこだわらない)価格設定と、早期から「第3フェーズの萌芽」が見られる。さらに「パンダ号」「スカイ号」そして「アップル号」(高速ツアーバス)と商品ラインは理想的な鶴翼(ウィング)形状で展開。今回の新車で、弘前~東京に加え青森~東京でも、夜行4グレード+昼行1グレードの計5商品体制が整うことになる。これは「マイ・フローラ」などにも言えることだが、座席グレードの多様化が済んだ事業者は、あとはソフト面での差別化が重要になる。いくばくかの金額を多めに払ってくれる特別なお客様に対し、自尊心をくすぐる一言などだ。乗車改札時に、座席番号を告げるだけでなく、乗車のお礼をお名前を添えて伝えられるかどうか、トランクで預かった荷物を手渡す際に、空いている方の片手をちょっと添えられるかどうか、といった小さなことが、該当の乗客にとって「そのバス、その座席でないといけない理由」につながっていく。特別なことではない。近所の飲み屋の親父が、<ああ、成定さん。今日もお疲れ>といって、注文しなくてもまずは生ビールを出してくれるのと、本質的には同じに過ぎない。そんなことをされなくても、「生ビール」と注文するのは客にとっては別に苦痛ではない。でも、それをされたら、次もこの店に来てしまう。各社、各座席が「そのバスでないといけない理由」を作り上げることで、全体では(鉄道や航空、自家用車に対して)「高速バスでないといけない理由」が大きくなっていくのだ。全国で、本日この瞬間もハンドルを握り、接客をする全ての乗務員は、勇気を振り絞って、乗車改札するお客様一人ひとりの目を見て欲しい。その乗客が何を望んでいるのか、瞳の中を覗き込んでほしい。自分だったら、どんな接客を望むか、ふだん自分は、買い物や外食などの際にどんな接客を受けているか、ちょっと思いを馳せてほしい。そして、自身のちょっとした工夫が乗客にとって「そのバスでないといけない理由」につながり、それが会社の収益に貢献し、最後は自分の給料に戻ってくるサイクルを、常に頭の中に描き続けてほしい。高速バス事業にたずさわる皆がそれを実現できたとき、高速バス事業はもっともっと大きく成長することがきできるはずだ。さて、今回の私の出張は、さらにさらに北へと続く。どんな人に出会えるか、(そして、どんなバスに出会えるか)楽しみも続く。
2011.04.27
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私がなぜ今、チャネルコントロールやレベニューマネジメント(なお、細かいことを言うと、チャネルコントロールもまたレベニューマネジメントを実現する手法の一つであり、私が今回「レベニューマネジメント」と呼んだ後者は「(ダイナミック)プライシング」という、レベニューマネジメントの手法の一つ、という定義になろうが)のことを書いたのかというと、現在、いくつかの会社からいただいている(あるいはいただけそうな)仕事のほとんどが、高速バス市場の「本丸」である多頻度昼行路線においてその二つを実現する、というものだからだ。もっとも、明確に上記を認識したうえでご相談いただいている会社も、なんとなく「活性化策を考えてよ」というご依頼で、突き詰めていくとそうなった、という会社もある。もちろん、夜行路線中心の会社からのお話もあるけれど。昨日も書いたように、首都圏~京阪神など事実上ホワイトスペースだった路線では、いわば、新しい「ルール」(レギュレーション、つまり法制度という意味ではなく、ビジネス上の戦い方)を作り上げさえすればよかった。紙の回数券を利用する既存客とか、予約センターの電話番号を暗記してしまっている地元客とかはほとんどおらず、ウェブでの集客、ウェブでの予約・決済をベースに全てを考えることができた。大都市と地方都市を結ぶ路線においても、長距離夜行に関しては、高速ツアーバスの参入はウェブマーケティングによる市場拡大と同時に起ったし、「買い回り要素」が強い商品だから、新しく生まれた利用者層だけを対象に新しいルール(例:100%ウェブによる予約・決済だという前提で本格的にダイナミックプライシングなどを行なうこと。その代わり回数券や往復割引はほとんどない)で運営すればよかった。既存の利用者層は、新しいルールに納得すれば高速ツアーバスに移ればいいし、従来のルール(例:全日全便同運賃、紙の回数券など)の方がよければ高速路線バスに残ればいい、と割り切ることができたのだ。もちろん、高速路線バスのやり方に慣れた既存客が、高速ツアーバスに挑戦してみて違和感を覚えるケースもあっただろうし、その中にはそれに慣れて高速ツアーバスに定着する人も、また高速路線バスに戻っていく人もいただろう。停留所のわかりやすさやスタッフの接客、車両のグレード、もちろん当該事業者の安全性への信頼感など他の要素も考慮したうえで「お客様自身が選べばいい」のが、長距離夜行路線の特徴だ。しかし、多頻度昼行路線はそうはいかない。「買い回り品」よりは「最寄品」なのだ。A社のバスとB社のバスを、価格やら車両グレードやらで選ぶというよりは、「いつものバス停」に行って「先に来た方」に乗るというイメージだ。さらに、ここが重要なのだが、長距離夜行路線、なかんずく大都市間路線に比べると、昼行路線では市場の開拓が大きく進んでいる。市場開拓の余地はまだ十分にあるとはいえ、長距離夜行路線ほど大きなホワイトスペースは残っていない。結果、利用者にも事業者にも定着してしまっている従来のルール(車内発券、紙の回数券など)に配慮しながら、さらなる販路と認知の拡大を求めてチャネルコントロールに取り組み、さらなる収益性向上に向けてダイナミックプライシングに取り組む、という難題が待ち受けることになる(なお、「完全なダイナミックプライシング」の実現のためにはレギュレーションの改正も必要だが、国内線航空で行なわれているような「制限されたダイナミックプライシング」なら現行法令で可能である)。当然そのためには、法令は別としても、基幹システム、運用、告知など実に幅広い面での挑戦が必要だ。さらにいうと、何も「既存事業者の既存高速バス路線に、新しいやり方を持ち込む」というだけとは限らない。新規参入側が(その際にレギュレーション面で「乗合」を選ぶか「ツアー」を選ぶかは別として)新しい手法を武器に、従来のやり方を融合させる形で既存路線に戦いを挑む、というパターンもまた存在するのだ。私としては、その全てをせいいっぱいお手伝いする。困難だが、不可能ではない。中央高速バス甲府線に「トクワリきっぷ」という回数券がある。正規運賃片道1950円に対し2枚つづりで2900円。ただし平日しか使えない。JRの特急が増発と割引乗車券で巻き返してきた際、値上げと減便で負のスパイラルに陥ったバス側が起死回生のために採用したアイデアだ。私がアルバイトだった頃だから、約20年も前の話。それが今日まで続いているのだ。しかし考えてみれば、この「トクワリきっぷ」によって、甲府線はかなりの精度でレベニューマネジメントが実現していると言える。日ごと便ごとのマネジメントは無理でも、曜日単位で対応すれば、感覚的には7割の精度と言えるだろう。一時のジリ貧(失礼)状態の甲府線を知っている身としては、現状は、まさに起死回生を果たしたと感じる。現行法令(2002年以降)どころか、それ以前の制度においてさえ、おおざっぱなレベニューマネジメントは実現できたし、していた会社が存在するのだ。もちろん、私が目指しているのは、何も全国の高速バス路線に「トクワリきっぷ」を導入させるということでは決してなく、もっともっと新しい挑戦ではある。しかし本件を見るにつけ「できる」か「できない」かではなく、「やる」か「やらない」かの問題だと、いつも勇気づけられるのだ。少なくとも、何社かの事業者は、新しい挑戦をすることを決断してくれた。勇気ある決断だと思う。だからこそ私も、現場をよく見て、現行システムをよく見て、そして頭がちぎれるほど考え、その期待に応えねばならない。
2011.04.22
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もう一つ、レベニューマネジメントの方。私が楽天トラベルに転職した5年前の時点では、今のようなダイナミックプライシング(価格常時変動)は行なわれていなかった。高速ツアーバス各社のシステム(企画実施会社の基幹システムや自社予約エンジンも、楽天など販売サイトのシステムも)は、常時変動に対応していなかったのだ。それは当然である。それまで、高速ツアーバスの販売はパンフレットをベースにしていた。オリオンツアーやウィラー・トラベル(当時は西日本ツアーズ)など企画実施会社は旅行業界では「ホールセラー(商品造成者)」であり、彼らがパンフレットを印刷し、「リテーラー(小売者)」に当たる街の旅行会社に配布して、リテーラーの店舗経由で予約が入ることがほとんどだった。当然、パンフレットは年に数回、先何か月かの有効期限を決めて印刷するものだから、価格は事前に決まる。あまりに複雑だとパンフレット上に表現しきれず、トラブルも怖いから、「赤丸を付けた日は500円アップ」くらいがせいぜいだった。だから各社のシステムも、ウェブも、それを踏襲していた。わずか5年前の話だ。私はホテル側で、「休前日は1泊3000円アップ」程度の運用しかできなかった「紙の時代」から、ウェブの普及によって、価格を常時変動させることでホテル(それも業界全体)の収益性が向上するというその瞬間をウェブマーケティングの担当として味あわせてもらったから、高速バスにもどうしてもそれを持ち込みたかった。当時、高速ツアーバスに参入したばかりで、企画実施会社の中で唯一、販路が楽天トラベル一本(自社サイトからウェブ予約を受け付けていない)だったMKに協力してもらい手作業で価格変動を試行したところ効果は絶大で、システム改修を行なうと同時に、企画実施会社向けにレベニューマネジメントのセミナーを行なうなどその手法をレクチャーしつつ、分析データを各社に開示して全社に積極的にレベニューマネジメントにのめりこんでもらった。繁忙日には単価が一気に上昇し(そのころ高速路線バスの値下げが続いたから価格は逆転した)、それが各社の収益性向上に大きくヒットした。ちょうど、各企画実施会社、運行会社も、それまでの様々な障害(あえて詳細は書かないが、この国の既得権益のあり方には許せないものがある)を乗り越え新車を購入できる環境も整ったこともあり、高速ツアーバスには新車、特車が一気に増加。さらにそれが新規需要を喚起するサイクルを導いた。もっとも、これらは全て、長距離の主に夜行路線での話だ。夜行の場合、習慣的利用が少ない上、ちょっとした価格差でもそれなりの金額になり、ちょっとした居住性の差も満足度に大きく影響する。だから「買い回り」要素が強い。乗客が事前に品定めしてから予約するのだ。さらに首都圏~京阪神のように両端が大都市の路線では、市場ポテンシャルが非常に大きい割には既存事業者がそれを掘り起こせていなかったから、ウェブを使ってその潜在需要にアプローチすれば一気に市場規模が拡大した。従来のやり方(電話予約、紙の乗車券など)に気兼ねせず、「ウェブ化以後」のやり方を貫くことができたので、上記のようなダイナミックプライシングも実現した。一方、多頻度運行する昼行路線ではそうはいかない。多くの乗客は習慣的に高速バスを利用している。そこに「選ぶ」という概念はない。紙の回数券の利用シェアも大きい。事前予約であっても当日(窓口または車内で)発券するケースも多く、予約済み、発券済みでも当日用件が早く終われば前の便へ変更して自宅へ帰る、などという使い方も定着している。ちょっと想像するだけでも、高速本線上バス停での乗車扱いで、乗務員が座席表とにらめっこしながら「あ、山田様は新宿まで2500円でご予約いただいています。えっと、田中様は3000円になります」などと現金収受するシーンなど、現実的ではない。しかし、レベニューマネジメントは、実は昼行便にこそ有効だ。夜行便で、今晩(木曜)の方が明晩(金曜)より価格が3割安く設定されていても、<じゃあ今日出発に変えよう>という人はなかなかいない。対鉄道において、<なんだ、金曜は高速バスは言うほど安くないな。仕方ないけど新幹線にしよう>(及びその逆)という意思決定が望める程度だ。しかし、地方都市を早朝に出て都心に朝10:00に着く便と、11:00に着く便とで500円でも価格が違えば、どうしても10:00到着にこだわる出張ビジネスマンと、午前中に着けばいい買い物客とでは行動に差が出るだろう。いつも満席で都心に到着する10:00便には、実は「他の便でもかまわない」人が混ざって乗っているのだ。それらを整理し乗車率を平準化できれば、収益が最大化する事業者のみならず、ビジネスマンは多少高いが直近予約でも10:00着便の席が取れ、買い物客は安く利用できると、実は皆が得をする(皮肉を言うわけではないが、既存事業者が「内部補助理論」にこだわるなら、高速バス事業から1円でも多くの収益を稼ぐ方法を真剣に考えるべきだ。地域公共交通維持が高速バスの収益とリンクしていると主張を続ける限り、高速バス事業の改革の遅れが公共交通を危機に追いやっていると、社会から非難されるリスクさえある)。話は横道にそれたが、上記に挙げたレベニューマネジメントは、既存の多頻度昼行路線の、改革候補の一つでしかない。ウェブ普及に代表される市場環境の変化が、このような昼行路線の改革を多くの側面で促しているのだ。車両(シート)、停留所(ルート)などそれは多岐にわたる。高速バスの「本丸」である多頻度昼行路線にも高速ツアーバスなど新規参入が増えお尻に火がついてから初めて改革に動くのか、それとも先手必勝で自らが先に動くのか。経営者の情勢判断能力が今、問われている。
2011.04.21
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高速ツアーバスの販売手法の特徴として、レベニューマネジメント概念に基づいたダイナミックプライシング(需給の状況を見ながら、常時、価格を変動させること)と、複数の販路(主に予約サイト)を操るチャネルコントロールがある。高速ツアーバスの企画実施会社の多くは、専任の担当者を置き、常時、自社サイトや、楽天トラベルをはじめとした他社サイトの「価格」や「在庫」をコントロールしているのだ。前者は、閑散が予測される便においては単価を下げることで乗車率を確保し、逆に繁忙が予測される便においては単価を上げて収益性を確保する手法である。そのためには「フォーキャスト(需要予測)」が何よりも重要であって、大規模な企画実施会社なら自らフォーキャスト機能を持ち、そうでないなら、定期的に楽天トラベルから送られるフォーキャストデータを参考にし、さらに他の企画実施会社の価格変動などもウォッチしながら価格をコントロールしている。後者は、複数の販路への在庫(座席)配分を最適化する手法である。当然のことながら、販路が広い方が多く売れるに決まっている。イトーヨーカドーでしか売っていない牛乳と、それに加えイオンでも売っている牛乳とで、後者の方が販売数が多いのは当然だ。一方、バスの座席(在庫)は有限だ。数多くのサイトに座席を分割して提供した結果、あるサイトでは満席で他のサイトでは空席、という状況が発生すれば販売機会をロストすることになる。だから、Aサイトの売れ行きがよければBサイトから在庫を抜いてAサイトに追加投入する、というようなオペレーションを、(自動の会社も、手作業の会社もあるが)常時行なっているのだ。チャネルコントロールの手法は、チャネル支配の手法でもある。今のところ、高速バスについて最も販売力が強いのが楽天トラベルであることは客観的に見て確かであり、全座席を楽天トラベルに預けてしまえば担当者は楽かもしれないが、それはすなわち、外部のサイトに販売力を握らせてしまうことを意味する。だから、繁忙が予測される便については、あえて自社サイト中心に在庫を配分する、というのは企画実施会社としては当然だ。もちろん、そんなことをされたら他社サイト側は売り物がなくなるから、営業担当者が当該企画実施会社に対し在庫投入をお願いするとともに、それが叶わないなら他の企画実施会社に続行便や臨時便の設定を声掛けする。手前みそだが、高速ツアーバス業態が(少なくとも数字の上で)大きく成長した要因の一つが、この「販路ごとの競合関係」を作りあげられたことだと感じている。上記に挙げたのは「在庫」サイドでの競合関係だが、当然、「集客」サイドなどにおいても、各企画実施会社の自社サイトと、複数の他社サイトとの間で常に競合関係が発生する。○○トラベルのバスの座席を埋めるという共通の目的に向かって、○○トラベルの自社サイト(当然、自社サイトから予約が入れば企画実施会社は送客手数料が不要なのでそれが理想だ)と、楽天、高速バスドットコム、スカイゲート、バス探といった予約サイトがお互いに切磋琢磨するのだ(もちろん、各サイト上では、逆にウィラーと平成、オリオン、キラキラといった企画実施会社同士が切磋琢磨している)。私自身の怠惰な性格を考えても、常に競合関係が存在しなければ、自分の会社の成長に手を抜いたであろう。あえて競合関係を「仕組み」として作り上げることが、常に自らを追い込み、それが結果として業界全体の成長を促すのである。既存のバス事業者の方々とお話をしていると、時々、この、チャネルコントロールを通して行なうチャネル「支配」の重要性に気づいていないと感じることがある。<こうなったら、インターネットは楽天さんに任せるしかなさそうだね>とおっしゃっていただけるのは(もうその会社を離れた身であっても)私個人としては光栄だが、そこで「任せ」てしまっては、販売サイドが主導権を握ってしまうことになる。それはバス事業者のためには絶対にならない。それどころか、数年後には、<安全確保の原資をピンハネされている>などと、予約サイトの側も非難を受けることが確実である。高速路線バス事業者は、楽天トラベルのような他社サイトの販売力を利用しながらも、自社サイトや、ウェブ以外の各種販路の強化にも努めなければならない。例えば「自社サイトの販売力」という切り口だけとっても、静的ページ(いわゆる「バス会社のホームページ」)、動的ページ(「発車オーライネット」などの予約システム)双方の改善が必要だし、「集客力」(いかに多くの人をサイトに集めるか)、「ユーザビリティ」(いかにわかりやすく情報を見せ簡単に予約へ結び付けるか)、「リテンション」(いかに何度も繰り返し利用してもらえるか)といったステップごとの改善も必要だ。もちろん、ウェブ以外の販路も多数存在するし、販売手法が変われば、今日的な商品作りに対応することも必要となってくる。既存の高速路線バス各事業者は、安全・安定輸送といった側面では十分な実績がある。だからこそ、販売サイドについてもう少しだけ真剣に取り組めば、新規参入者に負けることなく、むしろマーケット全体をより拡大させるだけのポテンシャルがある。なぜ、販売に真剣に取り組まねばならないか、もう一度だけ考えてほしい。まるで税金を払わされるような気分で、イヤイヤ、販路拡大やウェブ活用に取り組んでほしくない。販売をがんばるのは、他でもない、御社の高速バスを1席でも多く予約で埋めるためなのである。
2011.04.20
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昨日、徳島県の海部観光から、「マイ・フローラ」について正式発表があった。富山県のイルカ交通の「和(なごみ)」と合わせ、4月27日に二つの「2列シート」高速ツアーバスが運行を開始する。片や、エアロクイーン。片や、ガーラ。片や、徹底的に居住性にこだわった12人乗り。片や、定員とのバランスを考慮した20人乗り。片や、まずは1台のみ導入し既存の3列車と隔日運行し乗客アンケートなどで改善点を洗い出したうえでもう1台を完成。片や、スタート時から一気に毎日運行の2台体制。対照的な面もあるが、この時期に、東京と地方都市を結ぶ夜行路線に、現地側の事業者(どちらも自社の旅行部門で企画実施)が2列シート車を導入するというニュースは偶然とはいえ興味深い。両社とも、オリジナルで作り上げた座席周りの造作が、保安基準等をクリアするようギリギリまで調整を繰り返したという点も共通している。共通していると言えば、両社の経営者のバスへの熱い思い、もだ。一見、片や温厚で片やエネルギッシュなお人柄に見えるが、乗務員や車両などバス事業への強い思い入れは共通している(余談だが、ともに貨物運送ご出身という点も共通だ)。両社を訪問して打ち合わせを済ませ辞するとき、私はいつも、この経営者の思い入れを自分が十分に受け止め、力になれているだろうか自問する。「わざわざ東京から足を運んでもらって」という一言で、大目に見てもらっているのではないかと不安になるくらい、どちらもバスへの思いが強い。大げさではない。大手私鉄系事業者のアルバイトとしてバスと出会い、数年前まで、「ぽっと出」の独立系事業者などバカにしていた私が自省を込めて言うのだから理解してほしい。同じ時期に、同じような事業者が同じような車両を導入するのは、もちろん、それ自体は偶然に過ぎない。だが、その背景にある環境変化を考えることは重要である。ウィラートラベルや平成エンタープライズも含めた高速ツアーバスの高級車両ラッシュには、たしかに、デジャ・ヴ(既視感)を感じる。1980年代後半から90年代前半、高速バス(当時は「高速路線バス」のみ)は右肩上がりだった。田中角栄の列島改造論の結果として高速道路は全地方都市へ延伸され、共同運行クローズドドア制度定着で各地元の路線バス事業者が自ら高速バス事業に参入。地方都市側で最大限に需要を喚起した。我が国は空前の好景気(後から思えばバブル)の中にあり、各社とも車両の高級化を競った。その頃を知る人にとっては、「いつか来た道」であり、高速ツアーバスを快く思わない人なら「二番煎じを、さも“一番煎じ”のようにメディアが取り上げるのが許せない」ことだろう。だが、「車両の高級化」という表面的な事象だけを取り上げるなら、木を見て森を見ず、である。あの頃の高級化とは何が違うのか。当時は、高速バス事業は独占免許(平場の路線バスの「地域独占免許」に対して、1組の共同運行ペアに対して独占的に認可が与えられる、いわば「路線独占免許」)であった。また運賃についても認可制であり、同一区間同一運賃の原則が貫かれていた。だから、車両の高級化は、路線単位で行なわれた。所要時間が2時間を超えるとトイレが付き、3時間を超えるとシートピッチが広め、6時間を超えるあたりから3列シート、というのがおおむねのパターンで、これに各事業者や地域の特性により変化が加わる。すなわち、乗客が実際にどの車両に乗るかは、路線単位で、事業者側が決めていたことになる。それに対し、今日(私の定義でいう「第3フェーズ」)においては、同一区間を複数の事業者(高速ツアーバスを含む)が運行する。車両タイプや事業者のブランド力などにより複数の価格が並ぶ。その中から、乗客自身が乗りたいバスを選ぶ。一見は同じに見える車両の高級化だが、主導権が、乗客側に移っている点が特徴だ。なぜそう変わったのか。もちろん規制サイドの変化もあるが、実はそれ以上に重要なのが、ウェブ予約の普及である。多様な車両、多様な価格を電話予約で取扱うのは難しいが、今日では、乗客自身が、画面上で画像やスペック、他の乗客の感想まで比較しながら自ら予約入力操作をするようになったのだ。それゆえ、既存の3列シートやスタンダードの存在を前提とした上での、「マイ・フローラ」「和」であることが、以前と大きく異なる。その流れは、まず、潜在需要の大きさに比べて高速バスの認知が著しく低く大きなホワイトスペースが残っていた首都圏~京阪神などの大都市間路線において花開いた。既存路線の存在感が相対的に小さかったから、「ウェブ化以後」を前提とした市場展開ができたのだ。ウィラーの「ビジネスクラス」、平成の「ロイヤルブルー」はその象徴だろう。それが今、既存路線も相応の存在感を持つ、首都圏~地方都市の夜行路線に展開が始まった。当然、その先には、高速バス市場の「本丸」である、多頻度昼行路線がある。もちろん、習慣的利用が多くフリークエンシーこそ最大のサービスとなる点で、夜行路線とは大きく事情が異なる。しかし、ウェブ化の進展により「情報の非対称性」が解消されたことは、路線の長短に関係なく共通だ。新宿~松本線の「Sクラス」、福岡~宮崎線の(まずは「皆割」その後の)「席割」用の「セレクトシート車」は、その萌芽とも言える。習慣的利用が多く、回数券比率が高く、さらにウェブ予約比率が低い多頻度昼行路線において、多様なニーズにいかに万遍なく答えるか。困難は多い。もっとも、各社に対しそれをお手伝いすることこそが、今回の私の最大の挑戦であり、同時にメシの種でもあるのだが。
2011.04.14
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事業開始のご挨拶を皆様に申し上げたところ、多くの方々から心のこもったご返信を頂戴し心から感謝。期待にたがわぬよう気を引き締めて業務にあたらないと、とあらためて背筋が伸びる。またさっそく『トラベルジャーナル・ゲートウェイ』で<高速バスのコンサルティング会社発足 ~都市から地方への需要拡大見込み~>とご紹介いただいた。以前にも書いたが、このように旅行業界、そしてハイ・タクやトラック業界であれば業界メディアが発達しているのに対し、バスにおける業界メディアの不足をあらためて実感。例えばハイ・タクなら、先般の「新潟市におけるタクシー運賃カルテル(公取委一斉立ち入り)問題」に際しても複数の媒体がリアルタイムで情報を発信し続けており、全国のハイ・タク事業者は固唾を飲んでその報道を読み続けていたに違いない。一方でバスに関しては、募集型企画旅行(当時は「主催旅行」)形式で二地点間輸送を行なうこと(今でいう「高速ツアーバス」業態)を「乗合類似行為」と規定し禁止した、いわゆる「昭和61年通達」が2002(平成14)年に廃止されていたことさえ、多くの関係者が知らなかったわけだ。もちろん、その廃止を受けて高速ツアーバス事業に参入(または乗合形式から移行)するかどうかの判断は各事業者の経営の問題であるが、少なくとも、法令がそのように変わったという事実を知らずして、正しい経営判断ができるはずもない。法令の変更、消費環境の変化、他地域での成功事例などは日々の業務の中で事業者自身が知る機会は少なく、事業経営および運営に必要な外部情報を伝えてくれる存在は必要だろう。需給調整撤廃前は事業者数(=読者数)が限られていてバス業界メディアはビジネスとして成り立たず、事業者数が急増した今日では印刷メディアそのものが成り立たない状況、ということか。微力ながら、私の会社や本ブログがその穴を少しでも埋めることができれば、と思う。今日、各バス事業者は、それぞれに多くの問題を抱えている。既存大手(高速路線バス事業者)と新興中小(高速ツアーバス企画実施会社や運行事業者)では、その課題はおおむね対照的だ。運営面では、前者はウェブを中心とした新しいプロモーション手法や、それを前提とした今日的な商品作りの手法に対応できていない。後者は、それは十分なものの、本来的な安全安定輸送のノウハウに不足がある。経営面では、前者は大掛かりで安定した組織が既に存在するものの、それが逆に大きな歴史の変化(バス事業に吹く風が、順風から逆風に変わったこと)への対応を阻害している。後者は、例えば創業者社長の熱意と才覚で独り立ちを果たしたとしても、より安定した企業経営に向けて、組織作りと権限移譲に取り組まねばならない。私はまず各事業者について、具体的な問題点を洗い出すところから始める。そしてその治癒を、時には外科手術を伴いながらお手伝いする。ただし、私自身が病を治すことはできない。それができるのは、各事業者の経営者や従業員一人ひとりである。さて先週末は地方のある事業者からご依頼をいただき、その会社の夜行便で往復。往復ともふそうの3列車だが、往路は純正ボディ、復路は西工ボディ。いろいろと楽しませていただいた。現地でまるまる2日間、新型車両のプロモーションのお手伝いをしたり、企業としてのその事業者の経営上の問題点を洗い出すため情報をお聞きしたり。土曜日の夜は、車両のディーラーさん、車内電気機器の業者さん、車両内装関係の業者さんなどとおいしい食事を囲んで、ふだん聞けないお話をたくさん聞かせていただいた。バスを1台作り上げるには、もちろん車両メーカーが一番の要ではあるものの、地元側でもこれほど多くの人たちの総力戦なんだとあらためて実感した。そして皆さんの、バスへの強い思いにも感銘を受け、元気づけられる思いで復路の便に乗車した。次の出張は、別の地域の事業者に出向く予定だ。どんな出会いがあるか、今から楽しみだ。
2011.04.11
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本日より、「高速バスマーケティング研究所株式会社」としての活動を本格開始した。2月末に前の会社を退職し、書面上は3月1日に会社設立し準備を進めていたのだが、その間に大きな災害が発生してしまった。私自身は特に被害はなかったものの、バス関係の皆様が大変お忙しい状況となり、私としてもお手伝いをしたかったものだから会社としての段取りを後回しにし、ご挨拶が遅れた点、ご理解いただきたい。根があまのじゃくな性格で、世間でいう「新年度」に事業スタートというのが嫌で1ヶ月ずらしたつもりだったのだが、結果として4月にこのようなご挨拶を申し上げることになったのだから、まあ、世の中そんなものというか、独りよがりなこだわりに汲々しても仕方がないということだろう。正式なご挨拶前なのに業務で連絡を取りあったりお仕事を頂戴したりした皆様、非礼をお許しいただければ。そのうえで、無事に会社としてスタートできるまで助けてくださった皆様(既にご契約済み、あるいはご契約見込みのクライアントの皆様、サイトを制作してくれたりクライアントを紹介してくれたりと様々な支援をいただいた友人知人、その他多くの皆様)に、心から、お礼を申し上げる。前の仕事では、総合旅行予約サイトの高速バス予約事業責任者として、高速バスの「販路拡大」を促してきた。特に大都市部において高速バスの認知拡大が遅れており、ウェブを使えば効率的にそれを覆すことができるという仮説の元、ずばり、「販路」の中に自らの身を置いた。さらに、リアルタイムな情報更新の容易さや「紙の時代」に比べ消費者側が持つ情報量の飛躍的増大というウェブの特性が、レベニューマネジメントのような新しい手法と、「高級志向」「女性向け」など細かくセグメント化された多様な商品群を導き、「お客様自身が、バスを選んで乗る時代」を生み出す瞬間に正に立ち会うことができた。そして事業者同士の競争が「磁場」を生み、より多くの利用者を集めるダイナミズムも味わった。販路という「ボタン」を押したことで、予期せぬ効果も相乗的に押し寄せてきたのだ。そのダイナミズムが、まずは新興業態である高速ツアーバスに限って押し寄せたものだから、既存業態である高速路線バス各社とは、会うことさえままならない状態にまで一時はなった。しかし、上記、販路という「ボタン」は実は既存各社の前にも示されていて自らが押すことをためらっただけだということを粘り強くご説明した結果、複雑な感情はあれどそれを理性的に押しとどめ、あらためて今「ボタンを押す」ことを決意してくれる既存事業者も現われ始めた。私にとって幸運だったのは、高速路線バスをサイトで取扱うための提案営業の過程で、全国の高速路線バス事業者の経営者、担当者の皆様と知り合えたことだ。難しい営業だった分、結果は出せておらずとも、むしろ個人的な信頼関係を構築できた相手も多い。ある既存事業者の部長さんがおっしゃるには、今、全国各社の高速バス担当者の顔を知っているというのは私くらいらしい。たしかに、バス車両や基幹(座席管理)システムの営業は地域別に担当者が分かれているから、私のように全国を回ることはないようだ。同時に、高速ツアーバス各社の顔ぶれは、当然よくよく知っている。私のことを煙たく感じている高速ツアーバス関係者は少なくないだろうが(苦笑)、私としてはせいいっぱい高速ツアーバス業態全体の成長のために動いてきたつもりだ。おかげさまで、今のところ、既存の高速路線バス事業者からも、高速ツアーバス企画実施会社からもお仕事をいただけている。自社サイト(ホームページ)の制作や改修、新型車両のプロモーション一式、路線ごとの環境分析や活性化策のご提案(これを私は「路線カルテ」と呼んでいる)といった内容だ。これから進んでいく案件の中には、想像するだけでもワクワクするようなものもある。いったい何の会社なんだと尋ねられれば、登記簿など形の上では「コンサルティング会社」ということにはなるが、筋金入りのコンサルティングファームとは異なるから、「マーケティング支援の会社」と答えるようにしている。バス産業に携わる全ての関係者にとって大切なことは、今、バス産業そして高速バス事業が、歴史の中で大きな転換点にあるということを理解することだ。人口も経済も右肩上がりではない。皆で仲よく事業領域を分け合っていれば自ずと事業が成長するフェーズでは既にないのだ(さらに不幸なことに、年功序列、終身雇用に象徴される日本型企業経営は、縮小フェーズでの撤退戦を想定していない)。またウェブという新しいツールの普及が、先発大手企業のアドバンテージを極小化し後発中小企業の参入を容易にするとともに、消費者自身がサイト上の豊富な情報を参考に価格や品質を比較検討するという消費行動を定着させたのは、高速バスに限らずあらゆる商材に共通の現象だ。それら外部環境の大きな変化をよく理解すれば、具体的にどのように対応すべきか、絵が描けるはずだ。とはいえ、各事業者の経営者、担当者の皆様は、日々の業務で忙しい。それに、社内の人が会社を変えようとすることの難しさは、老舗ホテル企業でそれに挑戦した私はよく知っている。「変わらないといけないんだけど」「何かしないといけないのはわかってるんだが」。全国の事業者から聞こえてくるのはそんな声だ。社外にいる私なら、しがらみもなく、時には冷徹に、その変革のお手伝いをすることができるとそう信じている。業務の性格柄、全ての情報を公開できるわけではないが、本ブログでは、引き続き、私の考えや各社の変化をご紹介し続けたい。バス産業に直接携わる方々も、バスとは直接関係ない方々も、今後ともお付き合いいただければ幸いである。
2011.04.08
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