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※推敲ではなく別展開です(続きです)『†Princesse du sang†』 月ノ章 1-05【脱出】b月ノ章 1-05【脱出】b―ミュークSIDE― その時、ミュークの視界に見慣れた小さな影が映りこむ。 ふたりの視線が絡む。 「レム!?」 「ミュークさま!!」 一目散にミュークの下へと駆け寄ってくるレムリア。 「うっ、うぅ…ぅ、申し訳ありません……」 澄んだ碧眼に涙をいっぱいに湛えたレムリアは、ミュークの胸元に顔を埋めるように抱きつく。 「泣き虫」 いつの間にか現れたルムファムがぼそりと一言。 此方は気配を殺していたのだろう。 ミュークにも全く感知出来なかった。 「何処も彼処もびしょぬれで…うっ…う、計画通りに火を…つけられ、ぐすっ…なくて。 そ、それに変な鳥が…、飛んできて大騒ぎに…なって」 「(しまった…、霧の影響を考慮しておらなんだ)」 間の抜けた話だが、それを命じたミューク自身が霧のことを計算に入れてなかった。 無論、そんなこととは露知らず、レムリアは肩を震わせながらしゃくりあげている。 居た堪れなくなったミュークは誤魔化すように頬をポリポリと掻くと、 「い、いや…気にするなや。 誰にでも失敗はあるのじゃ」 優しく自分を労わるミュークの声に、レムリアは頭を跳ね上げ驚いたように目を丸くする。 「ミュークさま…、今日はなんでそんなにお優しいのですか?」 「ワチキが優しいといけないのかや」 少し憮然とした口調で返すミューク。 「だ、だって…、普段なら、問答無用でど突き回した挙句、海に投げ捨てるぐらい日常茶飯事なのに……」 そこまで言ってはっと何かに気づくと、再度、顔をしわくちゃにして泣き崩れるレムリア。 「ま、まさか、ボクに愛想を尽かされてポイ捨てするおつもり―――むがっ」 とりあえず、鉄拳でレムリアの口を封じた後、失礼極まりないこの少年を海に投げ込もうとしたところで―――ふと、思いとどまる。 「人聞きの悪いことを申すな。 ワチキがそんなことするわけないじゃろう。 それに、優しいのは生まれつきじゃ」 些か説得力に欠ける言葉だったが、当のミュークは至極当然といった風にすまし顔だ。 「そ、それで、ミュークさま。 そちらの方は…、もしかして聖女さまですか?」 これ以上この話題を長引かせても損をするだけと判断したのだろう。 レムリアはミュークの後ろで偉そうに無い胸を張っている少女について尋ねる。 「むっ!? シャル姉さまはプルのだからあげませんよっ!」 聖女という単語が琴線に触れる仕組みらしく、プルミエールが肩を怒らせて反応する。 ミュークは再び無益な問答を繰り返そうとする少女を手で制すると、 「いや、この娘はアダマストル公国の第二王女プルミエール・リュズレイじゃ」 「うみゅ、よきにはからうです♪」 ミュークの紹介を受けたプルミエ-ルが口調だけ王族の風格で続ける。 「えっ…、え~と、その…宜しくお願いします」 レムリアは頭に疑問符を浮かべながらもペコリとお辞儀をする。 その後、プルミエールに愛想を振り撒きつつミュークの耳元に口を近づけて、 「なぜアルジャベータの聖女ではなく、その妹君を?」 小声で尋ねてくる。 「そういえば、忘れておったわ」 ミュークは何かを思い出したらしく、固く握った拳を振り上げると、 「へっ…、―――ぐえっ」 それを呆けた顔で見上げているレムリアの頭上に勢いよく振り落とした。 「うぅ…、いきなり酷いです…よぉ」 たんこぶができた頭を抑えながら抗議の声をあげるレムリア。 「当然の報いじゃ。 聖女はこの船には乗っておらなんだぞ。 まったく、とんだ誤情報を掴ませおってからに」 「で、でも、さっき、誰にでも間違いはあるから仕方ないって…」 「それを真に受けたワチキの浅はかさに腹が立つから殴ったまでじゃ。 ワチキは自分自身には厳しいのでな」 無茶苦茶な自己理論を展開するミュークに、レムリアは「それならご自分を殴ればいいのに」などと心の中で思ったが、勿論口にはしない。 というか、出来ない。 「それに、その様子では脱出手段も確保できてはおるまい」 「うっ…」 図星を指されてうろたえるレムリア。 「まっ、仕方なかろう…」 ミュークは人の悪い笑みを浮かべるとレムリアの身体を無造作に抱えあげる。 「わっ、わわ…。 な、なにをするんですか!?」 少年の抗議も素知らぬふりで船縁に近づくと、 「レムも失態が原因なのだから、死んでも文句を言われる筋合いはないぞよ」 「ま、まさか…」 ぞくりと身震いするレムリア。 屍族特有の色白の肌から血の気が引いて、輪を掛けて青白くなる。 「心配するなや。 イプス岬近海は船の墓場と呼ばれる岩礁地帯じゃ。 少しばかり水に浮かなくとも、どうにかなる筈じゃ」 暴れるレムリアを問答無用で船の上から投げ落とす。 「ひぅわぁぁぁぁぁぁぁぁ…わぁぁぁああ……」 レムリアの悲鳴が岸壁を削る波の音に混じって消えた。 「さて、レムだけでは可哀想だ。 ワチキたちも覚悟を決めるとしようかの。 娘、お主は泳げるのかや?」 一息ついたミュークはプルミエールに確認をとる。 この少女は殺しても死ななそうな感じではあるのだが、偶々泳げなかったという理由で海の藻屑になって貰っては困るからだ。 「むふふ♪ プルはすいじょーとしアルル=モアのお城から泳いで逃げきったことがあります!! その時、げきたいした“かいりゅー船”が……」 法衣の長い袖をぐるぐると振り回しながら、興奮した口調で武勇伝らしき事柄を語るプルミエール。 「いや、もういい」 ミュークの記憶ではその“かいりゅう船(海竜船)”とやらは水上都市アルル=モアの名物、都市観光用の遊覧船であった気もするが、深くは考えないことにした。 その後、ルムファムとプルミエール、ふたりの少女が海に飛び込むのを見届けると自らも船縁に手を掛けるミューク。 「はて、なにか大事なことを忘れている気がするの…」 暗い海に身を投げ出してから、そう自問したが、結局答えは得られなかった。==============================================※推敲はフリーページ内で行いますう~む、無理矢理感が否めない(汗
2009/08/31

※推敲ではなく別展開です(半角1万文字を超えたので分けます)『†Princesse du sang†』 月ノ章 1-05【脱出】a月ノ章 1-05【脱出】a―ミュークSIDE― プルミエールに旅支度をさせていると、物見台の銅鑼が撃ち鳴らされる音が聞こえた。 「レムは一体何をやらかしたのじゃ」 ミュークはしかめっ面で舌打ちをする。 注意を惹きつけろと命じはしたが度を越せば意味が無い。 早々に脱出を計らねば手遅れになるかもしれない。 彼女は窓辺に近づくと垂れ布の隙間から外の様子を伺う。 深い霧越しに黒雲が臨まれ、その漆黒を切り取るように淡い黄昏色の灯火が見えた。 「テトラモルフ大灯台か……」 夜闇と霧に閉ざされてその外形を視認することは出来ない。 有史以前、黒歴史と呼ばれる時代に、この巨大な塔を築き上げた文明の主には複数の説があった。 なかには神代にまで遡ると唱える学者もいる。 しかし、この大灯台に関する知識は、その監視者であった大屍族グリムデンの血統と共に断たれてしまっている。 一部の秘蔵書が、今でも教皇庁アレシャイムの大図書館に保管されているというがそれも定かでない。 「一度、訪れてみたいとは思っておったが、聞きしに勝るとはこのことじゃな」 天に届くとも思える遥か高みに灯光が輝く姿は、テトラモルフ大灯台の巨大な様相を伺い知るに充分な要素であった。 大灯台が頂く灯台光の正体は巨大な蛍輝石であると伝えられているが、恐らく、その通りなのだろうとミュークは考えている。 蛍輝石は脈動するその瞬間、強烈な単一色の光を放つ。 それは純粋で波長が長い分、陽の光よりも視程の短い霧の中では通り易いからだ。 「ん?」 その時、黒い靄に包まれた視界の端を夜色の影が動いた。 それはゆっくりと両翼をうねらせながら船央楼の上空を旋回していた。 「グリムデンの竜鳥…」 “グリムデンの竜鳥”は貪欲そうな狂眼と鋭く長い嘴、暗紫色の羽毛に覆われた巨大な翼と体躯を誇る夜行性猛禽類で、グリムデン家最後の当主ベルムード三世がこの地に放った怪鳥である。 常に群れで行動する習性を持ち、大型の肉食獣、時には人間をも捕食する危険な古来種であった。 「なるほど騒ぎの原因はこれじゃったか…」 ミュークはそう得心すると、窓辺に吊るされた垂れ絹に手を伸ばし、それらを次々に引き抜く。 そして、其々の布端を固く結びつけて綱状にすると、硝子細工の扉を開き備え付けの露台へと移動する。 ミュークの動きが止まる。 ―――血の匂いを嗅いだからである。 「(…どうやら急がねばならぬようだ)」 更なる状況を窺い知ろうと上甲板に目を凝らすが、夜の闇をも見通せる屍族の暗視能力も、陰鬱な霧に閉ざされた空間では大して役には立たなかった。 わかるのは、淡い光を放つ角灯が踊る様と、耳障りな慌ただしい喧騒だけだ。 「(そういえば、レムはどうしたのじゃ)」 帆に火を放ち小火騒ぎを起こせと命じておいた筈である。 レムリアの役割は重要で、アメナディル号の航行を遅らせると共に、船員の注意を惹きつけることが目的だったのだが、既にそれどころではないだろう。 「(しかし、こう次々と想定外の問題が発生すると流石に気が滅入るの…)」 聡い少年であるから人間に捕まるようなドジは踏まないだろうが、一方で不幸を呼び寄せる妙な資質がある為に、突如現れた怪鳥の胃袋に収まっている可能性も拭いきれない。 ミュークは船室でプルミエールを見張らせていたルムファムを呼び寄せると、 「ルム、先に降りて様子をみてくるのじゃ」 ルムファムはこくりと頷くと、幅広の手すりにふわりと飛び乗る。 次の瞬間、ルムファムの姿は夜の闇の中に忽然と消えていた。 「(ルムの前世は軽業師じゃろうか…)」 ミュークがそんな感慨を抱きひとりで納得していると、 「まったく、なんでプルが…ブツブツ」 背後から如何にも不機嫌そうな少女の声が聞こえた。 ミュークが後ろを振り返ると、そこには、メナディエル正教の十字が刺繍された黒い法衣に着替えを済ませたプルミエールの姿。 目元の特徴的な化粧は落とされ、頭の左右で結われた長い金髪も今は解いている。 「プルは赤いほうがカッコいいから良かったです」 「この船を降りたいのならば、我慢するのじゃ」 「ぶぅ~」 現状把握能力に欠陥がある少女に手を焼きつつどうにか説き伏せるミューク。 アダマストルの王族という点が配慮され、プルミエールには上位聖職者が纏う紅い法衣が給されていたようだが、出来るだけ人目につかぬようにと考慮したミュークが、アリエッタに配給された黒地の下位法衣に着替えさせたのだ。 本来、聖職位階とは身分や血統に左右されない、神聖で冒すべからざるものである筈だが、大部分の高位聖職者は世俗権力と結びつき、腐敗しきっていた。 プルミエールに対しての必要以上の厚遇もそういった背景が少なからずあるのだろう。 「それに、こそこそするのはもっとキライです」 不服そうに頬を膨らませるプルミエール。 ミュークは苦笑すると、今し方用意した布束の片端を露台の手すりに結びつける。 「今しばらくの辛抱じゃよ。 それで、娘よ、お主はこれを使い下に降りのじゃ」 ミュークが縛りつけた垂れ布の結び目を強く引き、その安全を確かめていると、 「とうっ!!」 軽い気合声が夜空に響いた。 何気なく声の聞こえた方向に視線を移すミューク―――その目が点になる。 手すりによじ登ったプルミエールが宙に身を躍らせていた。 この特等船室は船央楼の最上階、上甲板から数えれば3階の高さに位置する。 そのような高みから、生身の人間が飛び降りて無事で済むわけがない。 「だぁ~、待つのじゃ!?」 重々しい音が上甲板から響き、慌てて下を覗き込むミューク。 どうやら着地には成功したらしいが、夜闇の中でそれ以上のことは確認できなかった。 「一体、なにを考えておるのじゃ!?」 狼狽したミュークは垂れ布を投げ捨てると、急ぎその後を追う。 「うぐ…ぐぅぅ」 ミュークが上甲板に降り立つと、すぐそこにプルミエールがいた。 少女は痺れた両脚をガクガクと痙攣させつつ苦しげに呻いていたが、表立った怪我はしていないようだ。 少女の人間離れした身体能力に唖然としながらも、ほっと胸を撫で下ろすミューク。 「いったい、なにを考えておるのじゃ、一歩間違えれば死んで―――」 そこまで言って、ふっとミュークの顔から表情が消える。 闇の向こうからひたひたと近寄ってくる足音に気づいたからだ。 彼女はプルミエールを物陰に引っ張り込むと、 「なっ、にゃにお…むぶ」 抗議の声をあげるプルミエールの口を押さえつけ、注意深く周囲の気配を探る。 「(足音はひとつか…)」 所々に設置された角灯や篝火の明かりも霧の影響で弱々しい。 光源から数歩離れれば暗がりになっている為、夜目が利かない人間相手ならば見つかる心配はないだろう。 「(このままやり過ごすか、それとも―――)」==============================================※推敲はフリーページ内で行います
2009/08/31
月ノ章_01-04【取引】【加筆/アリエットに関する考察】 「……(この娘、ガーディアンではなかったのか?)」 ルムファムの手並が如何に優れているとはいえ、まるで抵抗らしい抵抗を見せずに打ち倒されたアリエッタにミュークは拍子抜けしているようだった。============================================================【改稿・加筆/プルミエールの激昂描写】 その光景を目の当たりにした金髪の少女が抗議の声をあげる。↓ その光景を目の当たりにした金髪の少女が、頭の左右で結われた髪束を逆立てながら抗議の声をあげる。============================================================【改稿・加筆/戦闘・浮身に関する説明】 彼女の目にはルムファムの寸打が放たれた瞬間、金髪の少女が後方に飛び退いて威力を和らげていたように見えたからだ。 勢い余って円卓の角に後頭部を強か打ちつけたのは誤算であろうが…。↓ 彼女の目にはルムファムの寸打が放たれた瞬間、金髪の少女が後方に飛び退いて威力を和らげていたように見えたからだ。 東方に伝わる格闘術に「浮身」と呼ばれる武術の極意があるというが、恐らく、それに近い重心制御を行ったのだろう。 勢い余って円卓の角に後頭部を強か打ちつけたのは誤算であろうが…。============================================================【改稿/戦闘・ミュークの考察】 ミュークの目にも、ルムファムが手加減していることは明らかだが、それでも身体能力に勝る屍族とここまで渡り合える人間はそうそういるものではない。 それが年端もいかぬ少女であるなら尚更だ。↓ ミュークの言付けを守る為に、ルムファムが手加減していることは明らかだ。 しかし、それでも身体能力に勝る屍族とここまで渡り合える人間など、そうそういるものではない。 それが年端もいかぬ少女であるなら尚更だ。============================================================【改稿・加筆/ミュークの行動指針】 自身の抱いた思惟にどこか引っ掛かりのようなものを感じるミューク。 ひと目見て、あまりにも己の嗜好に合致した様相であった為に喪失していたが、聖女シャルロットは当年、成人の儀を迎える妙齢の娘である筈だ。 冷静になれば聖女だと憶測したこの金髪の少女は噂に聞くシャルロット・リュズレイの姿とはかけ離れていた。 「(だが、あくまで噂は噂…)」 籠姫として育てられたシャルロット・リュズレイを、その容姿だけで本人だと判別するつもりはミュークにも端からない。 もっと別の、高い確率で確証を得られる術をミュークは心得ていた。↓ 自身の抱いた思惟にどこか引っ掛かりのようなものを感じるミューク。 聖女シャルロットは当年、成人の儀を迎える妙齢の娘である筈だ。 冷静になれば聖女だと憶測したこの金髪の少女は、噂に聞くシャルロット・リュズレイの様相とはかけ離れていた。 「(霊環アシュタリータならば見紛うことはないのじゃがな……)」 金髪の少女の纏うドレスは胸元から首回りを多重のフリルが覆っていて、そこに霊環の存在を確認することは出来なかった。 無論、他にも聖女をそれと確かめる術が無いこともないのだが―――============================================================【改稿/霊環アシュタリータに関する描写】 ミュークの声は明らかに上擦っていた。 彼女が狼狽するのも当然で、聖女がその首に霊環アシュタリータを聖装することは聖女が聖女足りうる証のようなものであった。 そもそも、霊環アシュタリータはアダマストル王家に代々受け継がれてきた三神具のひとつで、聖女アルジャベータの血と力を最も色濃く宿す王家の嫡女にのみ装着を許された聖女の御璽(みしるし)である。 しかし、それは一方で聖女足り得る資質を持つ者が身に付けると、一定の因果を踏まねば外せない呪具でもあった。↓ ミュークの声は明らかに上擦っていた。 彼女が狼狽するのも当然で、聖女と霊環は対なるものであり、一見してそれとわかる聖女の御璽(みしるし)であった。 聖女アルジャベータの血と力を最も色濃く宿すリュズレイの一族に誕生した嫡女は、赤子の砌から成人の儀を行う十六歳の誕生日を迎えるまで霊環を外すことを許されない。 いや、外すことが出来ないというべきか。 霊環は聖女足り得る資質を持つ者が身に付けると、一定の因果を踏まねば外せない呪具でもあったからだ。============================================================【改稿/ミュークの喋り】 「アダマストル王家の秘宝のことじゃ。 お主が聖女であるなら必ず身に付けておろう」↓ 「アダマストル王家に伝わる秘宝のことじゃ。 お主が聖女であるなら必ず身に付けておろう」============================================================【改稿/プルミエールの思考描写】 プルミエールは瞳を閉じて沈黙すると考えるような仕草を見せる。 それから出し抜けに笑顔になると、思いもよらぬことを言いだした。↓ プルミエールは瞳を閉じて沈黙すると考えるような仕草を見せる。 それから出し抜けにぽんと手を打つと、思いもよらぬことを言いだした。============================================================【改稿/プルミエールの思考描写】 だが、内心で抱く苦慮とは裏腹にミュークは別のことも同時に考えていた。 この少女の別の利用価値である。 巧く立ち回れば聖女を誘きだす餌となりえる存在だ。↓ だが、内心で抱く苦慮とは裏腹にミュークは別のことも同時に考えていた。 この少女自身の利用価値である。 巧く立ち回れば聖女を誘きだす餌となりえる存在だ。============================================================※先に進みたいので大まかに推敲致しました。
2009/08/27

※ネコバレ有り最近、毎朝やってくるお友達のフクベぇ…(*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!・・・スイマセン出来心です(´;ω;`)ウッ…
2009/08/26

※推敲ではなく別展開です『†Princesse du sang†』 月ノ章 1-04【取引】月ノ章 1-04【取引】―ミュークSIDE― 「むむっ、アレはなんですか? アリアリ」 紅と黒のコルセット風ドレスを纏った金髪の少女が剣呑な様子でミュークを指差す。 「え~と…はい、聞いてきますです」 アリアリと名指しされた栗髪の少女はおどおどした様子で頷くと、手足をドタバタとせわしなく動かしながら危なっかしく走りだす。 「はわっ!!―――ンガっ」 そして案の定、ミュークの見守る目前で、毛足の長い絨毯の切れ目に足をとられ器用に蹴躓いた。 「だ、大丈夫かや?」 床に伏したままひくひくと痙攣する栗髪の少女に対し、冷や汗を一筋、二筋とこめかみに伝わせながら声をかけるミューク。 「だ、だいじょうぶ…です」 栗髪の少女はよろよろと立ち上がると、震えた声で返答する。 額から戸柱に激突したらしく広いおでこが真っ赤に腫れあがっていた。 こうして間近で見ると、眠たげに垂れる目元と寝癖のように跳ねた癖毛が印象的な少女だ。 潤んだ碧眼が捨てられた子犬のようである。 「あ、あの…、わたしはアリエッタ・ルーンフォルテと申しますぅ~」 自称アリエッタ・ルーンフォルテは深々と頭を垂れた後、威儀を正して名乗る。 この丁寧な返礼は先程、名を示したミュークに対したものだろう。 頼りなさそうな外見とは裏腹にしっかりとした礼節をわきまえているようだ。 「(…ん?)」 そんなアリエッタを興味深く観察していたミュークの視線が少女の纏う上衣に留まる。 ―――聖剣に身を絡ませる飛竜の紋章 「(この紋章は…確か、聖アルジャベータ守護騎士団の……。 なるほど、見掛けで判断すべきではないということかの)」 ミュークが顎をしゃくって合図すると、背後に控えたルムファムの碧眼が淡い燐光を発する。 「へっ?―――むがっ」 転瞬―――アリエッタの視界は天地が逆転する光景と共に闇に閉ざされていた。 跳躍したルムファムの両脚が蛇のようにアリエッタの細首に巻きつき、ふたり分の体重を乗せて床に捻り倒したのだ。 哀れ、ろくな受身もとれなかったアリエッタは冷たい床の上で目を回している。 「なっ!? アリアリになんてことを!!」 その光景を目の当たりにした金髪の少女が抗議の声をあげる。 「ルム、先ほども申したが、出来る限り手荒な真似は―――」 しかし、ミュークの言葉を皆まで聞かず、ひと呼吸で金髪の少女に肉薄するルムファム。 目前で無防備に晒されたわき腹に軽く左手を添えると、物言わぬ唇が鋭い呼気を放つ。 「にゅっ!!」 次の瞬間、金髪の少女が大きく後ろに吹き飛ぶ。 ルムファムは突きだした左手をそのままに、無機質な碧眼を僅かに細め前方を見やる。 「う~、うぅ…ん」 その視線の先では呻き声を洩らしながら頭を抱えて床に蹲る金髪の少女。 大股を広げた状態で尻餅をついている為に、捲くれ上がったドレスの隙間から可愛いショーツが丸見えであった。 「ほう…、ルムの攻撃を躱すとはなかなかやるのう」 ミュークが関心したように呟く。 彼女の目にはルムファムの寸打が放たれた瞬間、金髪の少女が後方に飛び退いて威力を和らげていたように見えたからだ。 勢い余って円卓の角に後頭部を強か打ちつけたのは誤算であろうが…。 「いきなりコブシで語りあおうとは…。 “じょーしき”というものがないのですかっ!!」 怒気を孕む声と共に金髪の少女の足蹴りがルムファムの足元を薙ぎ払う。 猪突猛進、退くことを知らないルムファムが珍しく後方に下がる。 ミュークが見守る中、金髪の少女とルムファムの攻防が更に続く―――両者とも、まるで舞を舞うようなしなやかな動きだ。 野生動物が本能のままに戦えばこのように見えるのかもしれない。 「大したものじゃな」 ミュークの目にも、ルムファムが手加減していることは明らかだが、それでも身体能力に勝る屍族とここまで渡り合える人間はそうそういるものではない。 それが年端もいかぬ少女であるなら尚更だ。 「(んっ、年端もいかぬ?)」 自身の抱いた思惟にどこか引っ掛かりのようなものを感じるミューク。 ひと目見て、あまりにも己の嗜好に合致した様相であった為に喪失していたが、聖女シャルロットは当年、成人の儀を迎える妙齢の娘である筈だ。 冷静になれば聖女だと憶測したこの金髪の少女は噂に聞くシャルロット・リュズレイの姿とはかけ離れていた。 「(だが、あくまで噂は噂…)」 籠姫として育てられたシャルロット・リュズレイを、その容姿だけで本人だと判別するつもりはミュークにも端からない。 もっと別の、高い確率で確証を得られる術をミュークは心得ていた。 「うにゃ!!」 緊張感の欠如した声がミュークを現実に引き戻す。 見ると、ルムファムの手刀が首筋を掠め、裂けた布地の隙間から少女の白く幼い肌が露になっていた。 「なっ!?」 思わず驚きが声となって漏れるミューク。 ミュークの視線は金髪の少女の露になった首元へと釘付けになっていた。 「ちょ、ちょっと待つのじゃ。 娘よ、霊環はどこにやったのじゃ!?」 ミュークの声は明らかに上擦っていた。 彼女が狼狽するのも当然で、聖女がその首に霊環アシュタリータを聖装することは聖女が聖女足りうる証のようなものであった。 そもそも、霊環アシュタリータはアダマストル王家に代々受け継がれてきた三神具のひとつで、聖女アルジャベータの血と力を最も色濃く宿す王家の嫡女にのみ装着を許された聖女の御璽(みしるし)である。 しかし、それは一方で聖女足り得る資質を持つ者が身に付けると、一定の因果を踏まねば外せない呪具でもあった。 どちらにしても、ここまで用意周到に準備を重ねた計画が最終段階になって、「実は人違いでした」などといった理由で納得できるわけもない。 「れいかん? そんなの知りませんです」 いい迷惑だと言わんばかりに、(実際その通りなのだが)、さも物臭そうに答える金髪の少女。 「アダマストル王家の秘宝のことじゃ。 お主が聖女であるなら必ず身に付けておろう」 聖女という言葉に耳をぴくりと聳せる金髪の少女。 すぃ、と団栗眼を細めると警戒するようにミュークを睨みつける。 「シャル姉さまはプルのですから欲しくてもあげませんよ」 「……」 今度こそ絶句するミューク。 疑念を抱いた段階である程度覚悟はしていたようだが、おぼろげな動揺を色彩に滲ませていた。 「(聖女シャルロットには確か2人の妹がおったが……)」 ミュークの優れた頭脳は瞬時にその名に合致する人間を導き出していた。 認めたくは無い事実であったが、どうやら目の前の頭の悪そうな少女はアダマストルの第二王女プルミエール・リュズレイに他ならないようだった。 「(よもや・・・王族である聖女の妹を囮役に使うとは……。 存外食えぬ輩が人間にも居るようじゃな)」 などと変なところで関心していると、金髪の少女―――プルミエール・リュズレイが鼻息も荒く殺気全開で身構えていた。 「ムカー。 無視するなー!!」 「まぁ、待つのじゃ。 ワチキたちは霊環アシュタリータさえ手に入れば、お主の姉君に危害を加えるつもりはない」 差し当たり実害はないと判断したのだろう。 本来の目的をあっさりと口外してしまうミューク。 霊環を外す術は教会によって秘匿されている。 それを知らないミュークは、シャルロット・リュズレイが真の聖女足る資質を持ち合わせていた場合、その身柄ごと拘束するしか霊環を得る方法はないのだから半分は嘘である。 「アシュたーにゃ…にゃ。 うみゅ、もしかしてシャル姉さまがつけている首輪のことですか?」 「そうじゃ」 プルミエールは瞳を閉じて沈黙すると考えるような仕草を見せる。 それから出し抜けに笑顔をつくると思いもよらぬことを言いだした。 「プルをこの船から降ろしてくれれば、その首輪をあげてもいいですよ」 「…ああ、そうか―――って、なんじゃと!?」 ミュークは口を開いたまま唖然とする。 「(どういうことじゃ? このような無益な取引になんの意味がある。 あきらかに得をするのはこちらだけではないか……)」< ミュークはプルミエールの真意を計り損ねていた。 冗談と解釈するのが妥当ではあるのだが、目が本気なのである。 仮に、この少女が本心からそう考えていても、国宝でもある霊環アシュタリータを王族とはいえ個人の一存でどうにかできるとは到底思えない。 加えて問題はそれだけではない、取引が成立するまでプルミエールはついて来るつもりだろう。 本人の意思で同行する以上、内から生じる問題は少ないだろうが、周囲の人間はそうもいかない。 一国の王女が忽然と姿を消すのだ、国内のみならず大陸全土に厳重な検問体制が敷かれる筈だ。 どの程度行動が制限されるかわかったものではない。 「(まぁ、霊環を入手する際の人質ぐらいにはなるかの…)」 だが、内心で抱く苦慮とは裏腹にミュークは別のことも同時に考えていた。 この少女の別の利用価値である。 巧く立ち回れば聖女を誘きだす餌となりえる存在だ。 「いいじゃろう。 それで手を打つとしよう」 「うみゅ。 アレもついでに持っていくので良きに計らいなさいです」 そう言うと、未だ意識を失ったままのアリエッタを指差すプルミエール。 自分の判断が正しかったのかどうか、早々と不安になるミュークであった。==============================================※推敲はフリーページ内で行いますあまりにも誤字が多かったので少し訂正
2009/08/24

一昨日、ペンタブ購入検討中と書きましたが、この手の商品は家電量販店でもあまり安くならないみたいですね。案の定な結果でしたので昨日、アマゾン様に注文させて頂きました。設置してみました。最期までMとLで迷ったのですが…山下スカウト部長の、「小さくまとまらず大きく育ってほしい。先発完投型の投手だと思っている(`・ω・´)キリッ」という有り難いお言葉を思い出し、大きい方を…(*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!初ペンタブなので他と比べることは出来ませんが、描き心地はとても良い感じで世界が変わりますね♪
2009/08/20

以前、UNN NEWSでも採り上げた『古代文明ビジュアルファイル』が先日届いた131号で無事、刊行終了致しました。100号で終わると思いきや、好評だったらしく、かなり上乗せになりましたね。本誌131冊(73090円)+バインダー6セット(3540円)最終的に総額、76630円(バインダー送料除く)となりました。興味のある方はバックナンバーが残存する内に揃えてみては如何でしょうか?結構興味深い内容が多いので損にはならないと思います。
2009/08/19
別ネーム活動で臨時収入があったので、私的に禁忌な領域、ペンタブを購入しようか検討中です。現在、イラストに関しては、原画(アナログ)↓ペン入れ(アナログ)スキャナ(取り込み)↓スキャナ(取り込み)線の均等化(デジタル)↓彩色(デジタル)↓完成という作業工程です。最近は原画(アナログ)の線をそのまま使って彩色しているのですが、昨年までは、アナログ主線をPCに取り込んだ際にペジェなどでトレースして主線の均等化を図っていました。ここら辺は個人の好みなのでしょうが、均等化された綺麗な線が好きで、そこにデジタルなりの特性を感じていた部分があります。話は戻って、知り合いの話によるとどうせ買うならBambooよりも少し(?)奮発してIntuosにした方が良いとのこと==================================================Intuos4シリーズ(ワコム公式)Wacom Intuos4 PTK-440/K1(Wacom Intuos4 PTK-440/K0)S(K1 \20,980/K0 \17,980) 約W309×D208×H12mmWacom Intuos4 PTK-640/K1(Wacom Intuos4 PTK-640/K0)M(K1 \29,600/K0 \27,195) 約W370×D254×H12mmWacom Intuos4 Large PTK-840/K0 L(K0 \35,199) 約W474×D320×H14mm※あと、Extra Largeなるものがあるそうですが、値段が8万超えるので流石に除外==================================================自分なりに調べてみた問題点を並べてみました。問題1(値段)今後使い続けるか不明な初心者にはどれも物入りなお値段(汗最低限欲しいオプション品だけでも結構な額いきますよね。Mサイズに27000~29000円だすならLを買うほうが良さそう…問題2(読取可能範囲と作業効率)線画からならL、彩色からならM、ノートPCならSといった感じらしいです。でも、Mで十分という方が多いみたいです。問題3(読取可能範囲とモニタ)Mの適正サイズが19インチ以下Lの適正サイズが19インチ~24インチ(※個人によって捉え方が若干ことなりますので悪しからず)私が使用しているPCはノート型を除けば3台とも19型ワイド↑なので、この場合、Lが妥当かな…問題4(外形寸法と置き場所)読取可能範囲にしか注目していなかったのですがかなり場所をとるのですね。身内がWACOM Bamboo Fun CTE-650を使用していて、結構小さめに見えたので油断していました。Lデカイ…置けないこともないけど(汗==================================================総合すると、フルデジタルならLが無難、でも、Mでもどうにかなる感じですね。結局、置き場所とお金があるならLを買えという身も蓋もない結論に到りました(笑明日、時間を貰って販売店で実物を見てきます。なんとなく、アマゾンが一番安そうですけど…
2009/08/18

最近B/Wに凝ってるので敢えて白黒で―――(※全体像)下にHD×2、外付け×2が置いてあります。(※左の机)左側の机には創作用のPCが乗っています。右のディスプレイは壊れた詐欺の前機(XP)と下で繋がってます。左のディスプレイに映っているのは、このブログのTOP絵のはだけ過ぎver.で(ryちなみに、以前、ここにあったメインPCは別の机に退避させました。(※右の机)使っているようで物置状態の右側の机。アナログ絵は、この机の下側に収納されている作業台で描いています。(映ってませんけど…)何の脈絡もない日記ですが、忙しくなると無性に掃除とかしたくなりませんか?
2009/08/11
月ノ章_01-02【聖船】aと月ノ章_01-02【聖船】bを結合→月ノ章_01-02【聖船】上月ノ章_01-02【聖船】c→月ノ章_01-03【聖船】下に其々名称変更致しました。============================================================月ノ章_01-03【聖船】下【改稿・加筆/教会船の近況描写】 教会関係者の居住区が並ぶ船央楼中層、洋燈の僅かな明かりに照らし出された通路の両側には同じような船室が続いている。 長い廊下の先は丁字形となっており、その基点となる突き当りに教会船アメナディル号の長たる船上司祭の私室があった。↓ 教会船アメナディル号に所属する聖職者にとって毎日は平穏で退屈なものだった。 それは、メナディエル正教でも特に規律の厳しい布教船では至極当然のことであった。 ・ ・ ・ ―――しかしながら驚天動地、 ここ数日というもの、聖職者たちは平穏とは程遠い日々を味わっていた。 賓客であるリュズレイの姫君が戯れに引き起こす騒動に巻き込まれ、頭痛の種が絶えないのだった。 そして、ここは不幸な聖職者たちの居住区が並ぶ船央楼中層でも、ひと際豪奢な内装を施された一室。 部屋の主であるザゼル船上司祭は、心労が重なり昨夜から寝込んでしまっていたのだが―――============================================================【加筆/ミューク登場時の行動描写】 それはレムリアと別れた後、聖女が居そうな部屋を手当たり次第に無断往訪していたミュークであった。============================================================【加筆/名乗り後のミュークの心理描写】 流石に迷子となって途方に暮れていたとは口にしない。============================================================【改稿・加筆/部屋に近づく足音の描写】 潰れた苦鳴が老人の喉から漏れた丁度その時―――部屋の前を通る通路から足音が近づいてくるのがわかった。↓ 潰れた苦鳴が老人の喉から漏れたのと時を同じくして―――部屋の前を通る船内通路から足音が近づいてくるのがわかった。============================================================【加筆/足音が去った時のミュークの心理描写】 じっと息をひそめ、扉を見つめていたミュークが安堵の表情を浮かべる。============================================================【改稿・加筆/プルミエールに関するミュークの心理描写】 ミュークはごくりと大きく喉を鳴らすと、↓ 聖女と思しきこの少女と戯れる甘やかな夜を想像して、ミュークはごくりと大きく喉を鳴らす。============================================================【改稿・加筆/慌てるミュークに対するルムファムの心理描写】 ルムファムはいつも通り無表情であったが、何か言いたげにミュークを見上げている。↓ ルムファムはいつも通りの無表情であったが、ミュークを見上げる姿は何か言いたげでもある。
2009/08/09

※続き(推敲ではなく別展開です)『†Princesse du sang†』 月ノ章 1-02【聖船】c月ノ章 1-02【聖船】c―ミュークSIDE― 教会関係者の居住区が並ぶ船央楼中層、洋燈の僅かな明かりに照らし出された通路の両側には同じような船室が続いている。 長い廊下の先は丁字形となっており、その基点となる突き当りに教会船アメナディル号の長たる船上司祭の私室があった。 「なっ!?」 老司祭が目を開けると、その眼前に見知らぬ娘の顔があった。 「無駄な抵抗はしないほうが身の為じゃぞ」 娘は寝台に横たわる老司祭に覆いかぶさるような体勢で警告する。 「そっ、其方何者だ!?」 「ワチキはミューク・ウィズッド。 お主に尋ねたいことがあって罷り越した」 慇懃に名乗りを挙げて微笑むミューク。 老司祭は状況が飲み込めず目を白黒させていたが、すぐに目の前の侵入者が賊の類であることに勘付くと力任せにミュークの腕を振りほどこうとしたが、 「ぐっ…っ……」 横合いから小さな手が伸びて老司祭の身体を寝台に押し戻す。 老人が驚いて視線を横に向けると流れるような銀髪の少女が枕元に佇んでいた。 ミュークは老司祭の軽率な行動に肩を竦めると、 「主自身の命を主がどう扱おうと自由じゃが…」 ミュークの言葉に老司祭は動揺を隠しきれず虹彩を滲ませる。 更に少女の尋常ならざる膂力で喉を圧迫され、老体を硬直させる。 「な、なにが聞きたい?」 喉奥から絞り出されたような声。 「ナイトクランで招き入れた客人は何処におる?」 ミュークの質問に老司祭の顔に警戒の念が浮き出る。 「……知らぬ」 老司祭は多大な時間をかけて一言そう呟いた。 ミュークは苦笑すると、 「答えずとも良い。 ワチキの目を見るのじゃ」 寝台に横たわる老司祭を覗き込むミュークの双眸に深い紅色の輝きが宿る。 「―――!?」 ミュークと視線を合わせた瞬間、老司祭の意識は魅入られたように混濁する。 まるで心の奥底を覗かれているような不安定な感覚が老司祭の精神を蝕んでいた。 暫くしてミュークは満足したように頷き、 「船央楼上層の特等船室―――そこにおるわけか…」 「なっ…」 老司祭の両眼が驚愕に見開かれる。 ミュークの継承した血統アルカナ【女教皇】は『精神操作・記憶探知・意志伝達』の三柱からなり、それぞれが一定の条件を満たすことで発動する。 たった今行使した“力”はその中のひとつ『記憶探知』である。 「まぁ、こんなものじゃろう」 ミュークが質問の内容で相手を聖女と特定しなかったのには二通りの理由があった。 この老司祭が聖女に関しての詳細を聞かされていない場合と、聖女自身が身分を隠してこの船に乗り込んでいる事態に対応する為である。 無理をすれば意識の深層に沈む失われた記憶すら呼び起こせたが、副作用も強く対象が強く拒絶する記憶を探ることをミュークは避けていた。 ともすれば相手を精神薄弱の状態にまで退行させてしまう危険があったからだ。 ミュークが目で合図をすると、ルムファムの拳が老司祭の鳩尾に突き刺さる。 「がぁっ…」 潰れた苦鳴が老人の喉から漏れた丁度その時―――部屋の前を通る通路から足音が近づいてくるのがわかった。 コンコン――― 扉を叩く音が室内に響く。 「ザゼルさま、いらっしゃいますか? 少々、問題が起こりまして……」 部屋の外から若い男の声。 「(問題…? レムの仕業かの……どちらにしても―――)」 寝台の上で昏倒している老司祭を見下ろし溜息をつくミューク。 「(この老人…かなり責任ある立場にあった人間だったようじゃな)」 ミュークはもう少し具体的な記憶を探るべきだったと内心で舌打ちをしていた。 暫しの沈黙の後、室内からの応答がないことに諦めたのか、足音が遠ざかっていくのがわかった。 「さて、レムを待たせすぎるのも可哀想じゃ。 ワチキたちも先に進むとしようぞ」 長く同じ場所に留まれば見つかる危険性が高まる。 修道衣を纏っているとはいえ船内を無闇矢鱈と動き回るわけにもいかず、迅速に事を運ぶ必要があったのだ。 ザゼル老司祭の部屋を後にしたミュークとルムファムは、取得した記憶を頼りに迷うことなく目的地である上層階に辿りついていた。 通路は他の階層より幾分広めにとられており、最奥に目的地である重厚な扉が見える。 「教会の運命を左右するような貴賓を乗せている割に無用心じゃな」 口ではそう言ったが、死海と呼ばれるこの危険地帯で外敵への警戒が緩む事はミュークの思惑通りだった。 船の航行すらままならないこの海域で、海賊や私掠船の襲撃があると通常は考えない。 乗組員の注意は外敵の侵入ではなく自然の脅威へと向けられている筈だった。 「ん?」 綺麗な金刺繍の施された赤絨毯の上を大股で進み、特等船室が目と鼻の先に迫った時、ミュークは唐突に歩みを止める。 室内から言い争うような声が聞こえたのだ。 ミュークは音もなく扉に近づくとそっと聞き耳を立てる。 『―――船を……さいですぅ~』 確かな内容は聞き取れなかったが、それはまだ幼い舌足らずな少女の声だった。 興味をそそられたミュークが両開きの扉を僅かに開き室内を覗き込む。 「(ほぅ……これはっ)」 室内には、腰に手をあて偉そうに踏ん反り返っている金髪の少女と、その姿に萎縮するように縮こまる茶髪の少女が居た。 どちらも年の頃十二、三歳程度であるだろう。 特にミュークの目を惹きつけたのは金髪の少女の双眼であった。 左右非対称な眼色は少女に何処か普遍的な神秘性を与えていた。 「(まさか魔力の象徴たるオッドアイの持ち主にお目にかかれるとは……)」 何処か恍惚とした表情のミューク。 まるで少女の金銀妖眼に魅了されてしまったようである。 ミュークはごくりと大きく喉を鳴らすと、 「よ、よいか、聖女はあの金色の髪の少女に違いない。 間違っても手荒に扱ってはならぬぞ。 アレはワチキのじゃからな」 ミュークはルムファムを手招きすると、その耳元で興奮したように呟く。 「……」 ルムファムはいつも通り無表情であったが、何か言いたげにミュークを見上げている。 ミュークはそんな少女の様子に、ひとつ咳払いをすると、 「し、下心などないぞ…。 やっ、やましい気持ちなどこれっぽっちも……」 しどろもどろに言い訳する辺りが余計に怪しいのだが、相手がルムファムで幸いしたようだ。 ミュークの苦しい弁明にもコクリと頷くルムファム。 これがレムリアなら一悶着あったことは間違いない。 ミュークは嬉しそうに頬を緩めると、何を思ったか後先考えずに勢い良く扉を開け放つ。 「ワチキはミューク・ウィズイッド。 以後、お見知りおきをお願いするのじゃ」 欲望とは人間屍族問わず正常な判断を狂わせるらしい。==============================================※推敲はフリーページ内で行いますこの部分は訂正が多そうです(汗
2009/08/07

※続き(推敲ではなく別展開です)『†Princesse du sang†』 月ノ章 1-02【聖船】b月ノ章 1-02【聖船】b―ミュークSIDE― 「ゼェ、ゼェ……なんでこんなことに…うぅぅ」 ギシギシと耳障りな音を響かせる船板を不安そうに見下ろすレムリア。 少年は積み上げられた酒樽の上に登ったまま一向に降りてくる気配はない。 「まったく……。 雨風も防げ食料の心配もない、おまけに酒は旨いときた。 レムは何が不満なのじゃ?」 黄金色に輝く蜂蜜酒を並々と満たした銀杯を掲げて大きな溜息をつくミューク。 ミュークと双子が教会船アメナディル号の船倉に潜りこんで既に数日が過ぎていた。 しかし、まるで順応する兆しを見せないレムリアの様子にミュークも辟易としていたところだった。 「だって…う、海。 この下、海なんですよ。 もし、底が抜けたら…あわわ」 「そのように要らぬ心配ばかりしておったら、この先身が持たぬぞ。 少しはルムを見習ったらどうじゃ?」 ミュークは背後で寝息をたてている少女に向い顎をしゃくる。 「で、でも……」 「(水嫌いは仕方ないにしても…、ここまでくると病気じゃな……」 ミュークは内心で苦笑すると、懐から取り出したプリウスの実を少年に向けて放る。 「それを食せば少しは落ち着くじゃろう」 レムリアは言われるままにうろこ状の赤い表皮に歯を立てる。 プリウスの実には血の渇きを抑制すると共に、精神を安定させる効能がる。 屍族の長旅には欠かすことのできない必需品であった。 「ミュークさまも、あんまり飲み過ぎると流石にまずいと思いますが……」 ふらふらと覚束ない足取りで酒樽のひとつに近づくミュークを見咎めて反撃を試みるレムリア。 「酒の味もわからぬお子様が―――んっ?」 ミュークがレムリアを酒の肴に新たなる暇つぶしを考えていると―――不意に長衣の裾をひかれる感触。 不審気に彼女がそちらを見向くと、寝惚け眼で見上げてくるルムファムの姿。 「ルムも欲しいのかや?」 ミュークがプリウスの実を手渡そうとするが、少女は首を左右に振る。 「大母(アルフォンヌ)さま」 「母上がどうしたのじゃ?」 不意に母親の名前をだされて当惑するミューク。 ルムファムはまるで子犬のようにスンスンと鼻を鳴らしながら何かを探している。 「ルム?」 ルムファムの突飛な行動に眉を顰めたミュークであったが、少女に倣うように鼻から大きく息を吸い込むと、 「……これは、何処かで……? はて、なんの匂いじゃったかの」 船倉の雑多な臭気に混じり、僅かだが芳しく甘い香りがミュークの鼻腔をくすぐっていた。 「ルルワインですね。 アルフォンヌさまがお好きだったアルナ科に属する植物です」 レムリアがミュークの言葉を継いでその答えを明らかにする。 ルルワインは美しい花を咲かせることで有名な多年草だ。 その実は観賞用よりも、寧ろ食用に重宝されている。 球根などは都に持っていけばひと山で金貨1枚程度の価値があった。 「なるほど、それならワチキにも覚えがある筈じゃな。 母上と共に暮らしておったお主たちふたりには尚更かの」 ようやく合点がいったのか、満足そうに頷くミューク。 「ルルワインはヤガ=カルプフェルト王国では滅多に手に入らないとても高価な花なんですよ。 西大陸ではイプス岬周辺の塩湿地帯にのみ群棲する植物なので仕方ないとも言えますけどね」 最近、醜態ばかり晒し続けていたレムリアが、汚名返上とばかりに持てる限りの知識を披露する。 「ふむ、どうやらこの船はイプス岬を迂回せず船の墓場を突っ切るつもりらしいの……」 そう言うと細顎に指をあて双眼を閉じるミューク。 「(作戦の決行はルブリス島に下船した直後と考えておったが、これは好都合かもしれぬ……)」 ミュークがレムリアに向け手招きをすると、少年は船板の軋みに怯えながらも近づいてくる。 「レム、お主にやって貰いたいことがある」 「な、なんですか…?」 ミュークの唐突な物言いに腰が引け気味のレムリア。 「予定とは異なるが、聖女の身柄をここで掌中に収める。 今からひと働きして貰うぞ」 ミュークは天井から吊るされた洋灯から油壷を取り外すと、掛け金に括り付けられた発火石と共にレムリアに手渡す。 「レム、お主は急ぎ上甲板に向い。 逃走手段を確保したのち帆に火を放つのじゃ」 言葉の意味を理解できずにキョトンとするレムリア。 だが、次第にその内容が浸透すると、少年はどっと冷や汗を溢れさせる。 「ええぇ~。 絶対に見つかっちゃいますよ……」 「イプス岬近海は濃霧と岩礁に閉ざされた名にし負う魔の海域じゃ。 船員の注意は外に向いてる上に闇夜に乗じて行動すればそう簡単には見つからんよ」 「で、でも…仮に成功しても船が火事になったら沈没しちゃいますよぉ……」 レムリアの口調は非難がましい。 「この船の乗組員たちもそこまで愚鈍ではないじゃろう。 心配しなくともレムが海の藻屑となることはあるまい」 ミュークは一瞬言葉に詰るが、すぐににんまりすると余裕の態度で返す。 少年はまだ何か言いたそうだったが渋々ながら引き下がった。 それが無駄な労力だと悟ったのだろう。 「ルムはワチキと共に聖女の身柄を奪取する」 ミュークはゆっくりとルムファムの方へと向き直ると、まだ何処か眠たそうな少女の頭をポンと叩く。 ルムファムはまるで機械仕掛けの人形のようにコクリと頷いた。==============================================※推敲はフリーページ内で行います
2009/08/04

※推敲ではなく別展開です『†Princesse du sang†』 月ノ章 1-02【聖船】a月ノ章 1-02【聖船】a―ミュークSIDE― 「これが教会船アメナディル号に関する資料になります」 満面の笑みでに数枚の羊皮紙を差し出すレムリア。 少年はここ数日、聖女の動向に関する情報収集を任されていた。 ミューク本人がレムリアの才覚を認めていたこともあるが、子供相手なら人間の警戒心も薄れるだろうとの判断もあった。 「ふむ、確かに胡散くさい動きじゃな」< ミュークは少年が調べ上げたリザロス湾に入出航する船舶情報に目を通し独りごちる。 「はい、西大陸最大の港を有するナイトクランに教会船が訪れることは珍しくもありません。 ですが、王室専用港に入港する船舶となると話は別です。 船員の動きにも幾つか不審な点が見られますし、アルジャベータの聖女はこの船で教皇庁に向うと考えて間違いないと思われます」 自身が挙げた成果を認めて貰いたくて仕方がないのだろう。 矢継ぎ早に確証たる根拠を述べるレムリア。 ミュークに向けられたその表情は自信に満ちていた。 「ふむ」 しかし、当のミュークは怪訝に眉根を寄せると再度、資料に目を落とす。 アルジャベータ聖誕祭の斎行に合わせ、アダマストルの第一王女でもある聖女が警備の厳重な同公国を離れるこの時節。 それが聖女を拐かす最大の好機だとミュークは考えていた。 なにより籠姫として正体の知れぬ相手を特定するにも好都合な状況である。 差し当っての問題は、聖女の一行が教皇庁へと向う道程に陸路と海路、そのどちらを選ぶかという点であったのだが――― 「あ、あの…何処か不審な点でも?」 ミュークが黙ったままでいることに不安を覚えたのか、レムリアが恐る恐る問いかけてくる。 「いや、この資料だけを見ればレムの推測は正しいとワチキも思う」 ミュークの反応は煮え切らない。 確かにレムリアの持ち込んだ情報が確かなら聖女の一行は海路で教皇庁へ向う可能性が高いだろう。 加えて最近になって国内の街道整備や盗賊の取り締まりなどが積極的に実施された形跡もなく陸路を選ぶとは考えづらい。 しかし、これを鵜呑みにするには情報が一方に偏りすぎていた。 多少気の利く知恵者がいれば、そういった偽装工作を行う可能性もある。 長期間、王室専用港に教会船を停泊させている点は明らかに無用心であるからだ。 「うぅ…、もう一度調べなおしてきます……」 ミュークの疑念と当惑がレムリアにも伝わったようで、その声からは最初の力強さが失せていた。 「待つのじゃ。 幾分拍子抜けした感もあるが…。 想像以上の成果じゃぞ、良くやったのレム」 ミュークはレムリアを呼び止めると、その頭を胸元に引き寄せ愛おし気に撫で回す。 柔らかな双丘に顔を埋め少年の頬がみるみる紅潮していった。 「(確証に近い情報が得られたことに、ワチキ自身戸惑っておったのかもしれぬな)」 擁立する論拠も無しにこれ以上の答えがでるわけもない。 それに、教皇庁までの行程を考えれば外敵に襲われる危険性の低い海路を選ぶのが常道でもある。 過去の事例もそれを物語っているように陸路で教皇庁に向ったは数少ない。 今は手遅れにならないように行動することが先決だとミュークは決断した。 「レム、ルムを起こしてくるのじゃ」 「はい」 レムリアが隣室に消えると水を打ったような沈黙がその場を支配する。 「(歴史は繰り返されるか…いや業とでもいうべきなのかもしれぬな。 ウィズイッドの屍族と巫女の血脈が時を経て再び見(まみ)えることになるとわの……)」==============================================※推敲はフリーページ内で行います短いですが区切りの良いところまで……
2009/08/02
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