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昨日の日記はちょっぴり反省しています(*^~^*)流石にちょっとマナーに欠ける行為でした。とりあえず、記事を一段下げる為だけに今日は日記を書きます。=======================================――イラスト関連について――「絵に特徴を持たせたほうが良いかも」とアドバイスを戴きました。それについては、ぷるみえーる以外の人物の瞳の描き方にも特徴を持たせようかと試行錯誤中です。=======================================――†Princesse du sang†に関して――ミューク編の推敲は後回しにしてこのまま本編部分へと入ったシャルロット編を続けてみようと思います。=======================================無理矢理感が否めない日記でしたがまぁそういうことです┃壁┃∀`)
2009/02/24

楽天のアクセス解析はオマケ程度の機能しかないので週明けに一度チェックする程度なのですが・・・2月の月曜日は見慣れないドメインが結構ありました。先日、SO4にちょっぴり触れたせいか、スクウェアエニックス様(?)からアクセスが!!いくらなんでも目敏過ぎるだろというツッコミは\(▽`\)...(/▽`)/コッチニオイトイテ2週目の月曜日にはなぜかチュンソフト様(?)のドメイン!?TVキー局関連のドメインも結構ありました┃壁┃∀`)ナンデ?所謂、仕事場からこんなブログを見てはいけないという警鐘を促される顕著な例です(*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!でも、日記でこういう事を書くと得てしてその後二度と同じドメインを見なくなったりするのですがうーたんドMだから大丈夫なの♪月曜日はうーたんに要ちぇっくされるので注意が必要です(*゜∀゜*)丿
2009/02/23
だ~くSIDEに堕ちたう~たんは今日もSO4に忙しく寝る暇もありま…(*゚□゚)ノ☆)`ν゚)・;'.、クハッ!!そんな今日この頃、楽天ブログ用の記事テンプレを作ってみました。左メイン型/右メイン型に合わせた黒色背景専用の記事固定型テンプレです。今回はfirefoxも意識して作成したので位置表示も大丈夫だと思います。ただ、スクロールバーの色指定は、IEの独自拡張らしくその他のブラウザでは認識されないらしいです。TOPも直さないといけないのですが、自分から普通に見えているとなんとなく億劫ですよねヾ(▼ヘ▼;)・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、恥ずかしいから共有テンプレ的に公開するつもりはないの…キャッ(/ω\*))((*/ωヽ)キャッ
2009/02/21

『†Princesse du sang†』 光ノ章 1-00【世界】光ノ章 1-00【世界】―シャルロットSIDE― アダマストル北東部―――タブリス森林を走る旧街道。 砂子に埋もれた往来を複数の騎影が、一台の箱馬車を先導するように駆ける。 騎乗の騎士達は皆、白銀の甲冑を纏い、その胸元にはメナディエルの十字が刻まれていた。 大陸最強の娘子軍―――勇猛・美麗・高潔と名高い守護騎士団(ガーディアン)である。 後ろを走る箱馬車の御者台で鞭を打つ操者も同様に、守護騎士団の鎧で身を固めていた。 紅い天蓋から美しく弧を描く金の縁取りが施された箱馬車は4頭立ての4輪馬となっており、全ての乗馬が頭部から頸部、胴体に至るまでを装甲化された軍用馬であった。 傍目にも物々しいその様相は、そこに搭乗する人間の身分の高さを示している。 それはシャルロット・アルジャベータ・リュズレイを護衛したガーディアンの一行であった。 彼女達は比較的に安全性を確保出来る海路ではなく、敢えて危険を伴う陸路を選び教皇庁を目指していた。 これらは全て守護騎士団の団長であるミルフィーナの一存で決められたことである。 海路は外敵に襲われる可能性こそ減るが、襲撃を受けた際に生じる危険性(リスク)が高く、なにより海の上ではまもとに戦うことも出来ない。 相対的にみればどちらも危険度はさして変わらないのである。 ならば、常道である海路を選ぶよりも、選択肢として稀な陸路を選んだほうが敵の目を欺けるとミルフィーナは考えたのであろう。 なにより目するところの“敵”とされる存在がなによりも厄介であったのだ。 一見、大部分がメナディエル教圏であるバールペオル大陸において、聖女を害しようとする存在など皆無のように思われるかもしれないが内情は違っていた。 現メナディエル正教は大きく2つの宗派にわかれている。 ひとつは光の女神メナディルを崇め、原理主義を根底とする白十字教。 もうひとつは女神の器でもあった神の子アルジェベータ。 聖女の血を受け継ぐ一族を神格化し崇敬の対象とした聖(アルジャベータ)公会。 大陸でも最大の勢力を誇る白十字教は、教会の実権をほぼ掌握しつつあった。 そしてそれを示すように世界を神の恩名の下、その神託によって導かれるものとし、女神メナディル以外の崇拝を禁止した。 しかし、それと対立する聖公会は女神を超越的存在としながらも、あくまでその加護はアルジャベータの血族である聖女を通してこそ世界に齎されるものだと主張していた。 大陸最大のメナディエル正教もまた他の神聖宗教と同じく一枚岩ではなかったのである。 傍から見ればとても滑稽で愚かしい話である。 白十字教、聖公会共に、女神と聖女の名を傘にきた高位聖職者達が己が利権を貪る為に聖なる御名を利用しているだけなのだから。 当のシャルロット自身、今まで一度も神の声を聞いたこともなかったし、なにより彼女にとって神の存在など、どうでもよい事だったからだ。 だが白十字教の聖職者からすればシャルロットの本心が何処にあろうと、その存在が教義を守る上で最も疎ましく邪魔な存在である事は確かであった。 神の神託を授かるはずの教皇と同格、いやそれ以上、半神とされた存在が同じ世界に存在していることになるのだから。 それが異教であるならば邪教とし異端視することも出来ようが、同じメナディルを崇拝する教義が宗派となり枝分かれし今日に至るのだから、下手に手を下すことも出来ずに両者は奇妙なバランスで世界に共存していた。 ・ ・ ・ 「フィーナ! あの綺麗な鳥はなんていいますの?」 守護騎士団(ガーディアン)の面々が抱く緊張とは裏腹に幾分緊迫感に欠けた少女の声が響く。 箱馬車の小窓から身を乗り出すように高い木の上を指差すのはシャルロットであった。 籠姫として育てられたシャルロットにとって見知らぬ外の世界は常に驚きと感動の連続であり、此度は一年に一度のアルジャベータ聖誕祭に列席する為の行軍。 国内で執り行われる祭事を除けば、普段は奥宮殿から出ることさえ許されていないシャルロットである。 草原を走る風に棚引く草花、見知らぬ街、そこに住む人々の表情―――全てが新鮮なのであろう。 紙上の文字や他人の言葉ではなく自らが直接触れえる世界は確かに息づき、その瞳に飛び込む全てのものが少女の興味を惹いていた。 「シャルロット様、聖女とは慎ましい気品と淑やかさを兼ね備えた教会の手本となるべき存在であらなければなりません」 「あっ……」 ミルフィーナの忠言にシャルロットは口元に手をやり口を塞ぐような仕草を見せると、慌てて座席に腰を降ろした。 柔らかな物腰で乱れたドレスの裾を整えると、そのまま悪戯を見咎められた子供のように下を向いてしまう。 暫くするとミルフィーナの機嫌を伺うように向かい側の席に伏せ目がちな視線を送るシャルロット。 ナイトクランを出立してから幾度となく繰り返された光景だ。 フィーナはひとつ咳払いをすると、呆れたようにその相貌を崩し微笑を洩らす。 「ですが、それを心に留めておいてくださるのならば今は不問と致しましょう。 姫様にとって外の世界は特別なもの。 感情を抑えろと言う方が酷というものでしょうから……。 それに、私奴もそのほうが……」 臣下としての領分がミルフィーナの私心を封じる。 だが、シャルロットの生い立ちに想いを馳せると心が痛んだ。 聖女としての宿命をただ享受するだけの人生。 それがアルジャベータの名を継いだ人間に与えられた唯一の選択肢だ。 今までなんの疑問も抱かずに―――いや、きっとそう仕向けられるように育てられてきたシャルロットに対する様々な感情がそこには含まれていた。 「……そのほうが?」 語尾を濁したミルフィーナにシャルロットが不思議そうに問いかける。 「い、いえ…私奴の愚意など、どうでも良いことです」 そう言うと、己の心裡を悟られまいと横を向いてしまう。 その横顔が赤らんで見えるのは夕陽のせいだけではないだろう。 「あれは雪瑠璃といって紫色を帯びた濃い青色の背中に白い胸、橙色の脇腹の色彩が美しい小型の野鳥です。 大陸北東部の低山帯や亜高山帯にかけての山地や丘陵で繁殖しますが、この時期は越冬する為に大陸を南下しアダマストル周辺でも多く観察されます」 気まずさに耐え切れなくなったのか、シャルロットの質問に生真面目に応答するミルフィーナ。 「ありがとう、フィーナ……。 そう、あの美しい鳥は渡り鳥なのね。 自由に空を飛びまわり移り往く季節を感じ自分の在り処さえ変えてしまう―――籠の中に閉じ込められた私とは真逆ですわね」 「シャルロット様……」 常に前向きなシャルロットらしからぬ自虐的な物言いに窮するミルフィーナ。 シャルロットは再び陽も落ちかけ黄昏色に染まりつつある遠景に視線を預けている。 真っ赤な夕焼けが箱馬車の窓越しに、柔らかく少女の横顔に降り注いでいた。 先ほどまでの生気溢れる様子はそこにはなかった。 人形のように表情のない能面。 ミルフィーナの知らないシャルロットがそこには居た。 「フィーナは自分が自由であると思いますか?」 まるで夢の中にいるような抑揚のない声がシャルロットの口から洩れる。 「私奴は守護騎士団の聖務に誇りを持っております。 思うままに生きるという意味であるのならば、シャルロット様をお守りすることがこのミルフィーナ・ド・グラドユニオンの本懐であります」 なにものにも帰属しないミルフィーナ。 その言葉には彼女なりの自負と矜持があった。 「私は……」 だが、当のシャルロットは言葉では理解していても“自由”と呼ばれる概念が本来どういったものであるのか実感はなかった。 人間は誰しも人種や貧富の差など不自由な自由を生まれ持つ。 少なくともシャルロットは与えられた世界の中でなんの不自由もなく育てられた。 それはどれぐらい幸せなものだったのだろうか?―――シャルロットの抱く疑念は常にそこに行き着く。 自由や幸せといった不可視の価値を、他と比べるべくもなく確かな存在として見出す術を今のシャルロットは知らなかった。 「……私は、本当の私を知らないから」 息苦しい沈黙のなかそっと呟くシャルロット。 外の世界に対する強い憧れと、ともすればそれと引き換えにして、自分という存在を象る全てを失ってしまう恐怖。 相反する感情の狭間でシャルロットの心は揺れ動いていた。==============================================相変わらず心理描写部分は書き出すと止まらないので削るのに苦労します……
2009/02/19
タイトルでサクリと万物を統べてみた曲解兎です┃壁┃∀`)最近、御身【おんみ】という二人称の間違った使い方を注意されました。コレって-対等またはそれに近い下位者-に用いる言葉なんですね。どちらかと云えば上位の人間に使う代名詞だと勘違いしていた自分。貴様【きさま】や役不足【やくぶそく】など間違った使用例として有名なものもありますが自分としては当たり前だと思っていたことが実は真逆だったりすると、結構驚きますね。
2009/02/15

『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-03【聖船】下光ノ章 0-03【聖船】下―プルミエールSIDE― 「うにゅ~…プルはとってもゆーうつですぅ……」 かわいい呻き声を洩らしながら蒸し大海老にかぶりつくプルミエール。 明らかに言動が一致していない。 「んぐぅ~…う~ん……がぐぅ~」 プルミエールは咥えた大海老を殻ごと食いちぎろうと呻き声のような不気味な声を上げている。 見目も美しく食べてしまうのが勿体ないぐらいな料理の数々。 それらを食事作法というより、肉食獣が獲物を喰らう感じで次々と胃袋に収めていく。 それにひきかえアリエッタは、中央から睨んでいる子豚の恨めしげな姿に完全に腰が退けている。 子豚の暗い瞳孔と出来るだけ視線を合わせないようにと必死である。 今回の航海には、大教皇に次ぐ聖位を与えられた7枢機卿の中でも、美食家として名高いハンス卿お抱え料理人が数名同行しているとアリエッタは聞いていた。 おそらく彼等が惜しみなくその腕を振るったのであろう。 だが、寄航することのない長期の航海は物資を調達する術が皆無に等しく、水や糧食などは必要最低限度に節約するのが常道である。 供された料理を大量に残せば少しは調節されるのだが、底抜けの大食漢でもあるプルミエールが毎食きれいに平らげてしまうので、その都度料理の量が増えてしまい現状に至るのかもしれない。 この分では何処かの港に寄港しなければ、糧食が尽きるのも時間の問題かもしれない。 「んっ、がっぐぅ……アリアリ~なにか楽しいことはありませんかぁ?」 目前で大海老を丸呑みしたプルミエールに怯えるアリエッタ。 とりあえず、今までのプルミエールの発言を総合的に咀嚼し、要約したところ――― 「もうしかして、飽きてしまわれたのですか?」 「うに、よきにはからいなさいですぅ……」 プルミエールの声からいつもの力強さが感じられない。 どうやらこのアメナディル号で一通りの興味を満喫してしまい、倦怠感に苛まれているようだった。 このまま大人しくしていてくれればアリエッタにとっても好都合なのだが、放置しておくと碌でもないことになるのは明白だった。 「それでしたら……あ、あの……おっ、怒らないで聞いてくださいますかぁ?」 まるで捨て猫のようにプルミエールの反応を窺いながら声をだすアリエッタ。 「うにゅ、プルとアリアリの間にぶすいはむよーです」 幼馴染を“下僕”扱いするのは不粋ではないのかと一瞬考えたアリエッタであったが、とりあえず主人の了解を得たので言葉続ける。 「今回もまた、むだんで外出してしまわれたので、あとあとのことを考えれば……え、え~とワタシにも立場というものがあり……」 アリエッタはちょうど一握りぐらいの勇気を振り絞ると、ちょっぴり私情の入り混じった提言を試みようとした―――が、そこで何かドス黒っぽいものを含む視線を感じ息を呑みこむ。 「だ・か・ら?」 プルミエールは引き攣った笑顔でアリエッタに先を促す。 よく見ると、こめかみの辺りで青筋がぴくぴくとしていた。 どうやら彼女の我慢の臨界点はとても低い位置に設定されているようだ。 「お、おひまなら、少し…おべんきょうなどを……」 実のところ、ここまでアリエッタがプルミエールの行動を制止しなかったのには訳があった。 この難局をどうにかやり過ごせば、アレシャイム教皇領到着後に聖女の一団と合流することも可能だと考えていたからだ。 プルミエールの傍若無人振りは周知の事実であるから、少し気転を利かせば全てを有耶無耶に出来るかもしれないと思索していた。 「……だって(私だけ不幸になるのはイヤですぅ~グス)」 意外にも冷静に事の成り行きを推察していたアリエッタであった。 しかし、騒動だけを引き起こしたままでは敬愛するミルフィーナに会わせる顔がなかったのである。 守護騎士団の一員としての僅かばかりの矜持が何か手柄のようなものを求めていた。 そこでお馬鹿のプルミエールに勉強をさせるという快挙を達成させ、それを手土産にするつもりであった。 無論それはそれで命がけである。 「い、いえ……事情をお話しましたら、司教さまも喜んでプルミエールさまのおべんきょうをみて下さると……」 「そ・れ・で?」 子羊の骨付きローストを右手に掴んだままのプルミエールが威嚇するように、アリエッタとの間合いを詰める。 ここまできて「それで」もないのだが、主人の怒気を敏感に察知したアリエッタが食卓を挟んだまま数歩後ずさりする。 そんなやりとりが、数秒続いたが――― 「も、もちろん冗談ですよ!!」 力いっぱい前言を撤回するアリエッタ。 「そうですよね。 教皇庁にはヴィルヘルムさまもおられますし、わざわざこんなところでおべんきょうする必要なんて……」 ご機嫌取りのつもりで何気なく放ったアリエッタの一言。 食欲に対して謹厳実直だったプルミエールの動きが不自然に、はた―――と固まっていた。 少女は色彩の異なる団栗眼を大きく見開いたまま硬直している。 が、次第にその小さな体がぷるぷると震えだす。 「あ、あの、プルミエールさま・・・どうかしましたですか…?」 常人の食する限界を明らかに越えた大量の料理を、その胃袋に詰め込んだプルミエール。 食あたりか何かかと心配になったアリエッタが恐る恐る尋ねる。 出来れば航海中ずっと寝込んでいてくれればいいな―――などと不謹慎に思ったりもしたが、ちょっぴり生まれた下克上の心意気をアリエッタはそっと飲み込む。 バレたらことである。 恨まれるというより、きっと呪われるだろう。 「アリアリ!! “きょこうちょう”にはヤツがいるのですか!?」 プルミエールは軌道上に存在する全て蹴散らしながらアリエッタに詰め寄る。 それにしても、メナディエルの現状を考えれば“―虚構(きょこう)―庁”とは上手く揶揄したものである。 ただ残念なことに、今回は発信者がただお馬鹿なだけだったので例には洩れていた。 「あわわわわわ……ヴィルヘルムさまは主席枢機卿であれせられますれば、ふだんは教皇庁にいらっしゃるとおもわれますぅ~」 甲高い音を響かせながら跳ね回る食器や盃がアリエッタの周囲に散乱する。 どうやらアリエッタはヴィルヘルムがプルミエールの教育係でもあり“天敵”とも云える存在であったことを喪失していたようだ。 「アリアリ! いますぐお城にかえりますよ!!」 「い、いくらなんでも…それは無理かとぉ~」 既にナイトクランを出港してから4日目になる。 今更引き返せもないものである。 「いいから船をもどしなさいですぅ~」 「む、むりですよぉ……んぎゅっ!?」 みなまで言わせずプルミエールの手がアリエッタの喉をむんずと掴む。 そのまま両手で細首を締め上げながら、ガクガクとアリエッタの身体を前後左右に揺すっている。 「ア~リィ~ア~リィ~! プルはおしおきなんてイヤです!!」 「ヴィルヘルムさまはとてもお優しい御仁ですので……わ、わけをお話すれば―――」 精神と肉体、両方の逃げ場を失ったアリエッタは、残酷な現実の前に茫然としながらも、捨てられた子犬のような眼で訴えかける。 でも、途中で理由(わけ)のほうに無理がることに気づいた。 「む~り~ですぅ~! あのへんくつ石アタマは、なぜかプルにだけはやさしくないですぅ!!」 「……(それはプルミエールさまが、いつもおべんきょうをサボろうとするから…)」 胸中でツッコミを入れてみたアリエッタ。 しかし、今はそれどころではない。 既にアリエッタの顔色は青から白色に変わっていた。 「ぐ、ぐぐ…ぐるぢぃぃ……れふぅ~」 ぱしぱしと必死にプルミエールの手を必死に叩くアリエッタ。 「(まじゅい…死んじゃいますぅ……)」 アリエッタが下僕的に2階級特進を覚悟した時――― ―――ギィィィィ ふたりの背後で扉の開く音が響いた。 そこには、見慣れないふたつの小さな人影。 「わちきはミューク・ウィズイッド。 以後、お見知りおきをお願いするのじゃ」 短めの茶髪を綺麗に肩上で揃えた娘が優雅な所作で腰を折ると、プルミエールに向けて深々と一礼した。 それにしても胸が大きい。身を屈めたことにより更に強調されている。 あのアリエッタよりも一回り、いやふた回りは大きいだろう。まさに“巨大”と形容するのが相応しい胸の持ち主だった。 プルミエールの瞳が殺気を帯びた三白眼になっていることからもそれが知れる。 「お主がシャルロット姫じゃな? 誠に不躾で申し訳ないのじゃが…わちきに拐かされてくれんかの?」 とても言い難い事である筈の言葉をさらりと云ってのけたミューク・ウィズイッドと名乗る娘。 「(日記に書くことがおおすぎですぅ…)」 薄れゆく意識の中、アリエッタは完全に現実逃避を始めていた。 溜息を一回つくごとに、寿命が一年縮むという風説が真実ならば、この珍道中の間に、アリエッタの寿命は完全に尽きてしまうことだろう。
2009/02/13

後編部分が半角13958文字だったので更に分けますヾ(▼ヘ▼;)『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-03【聖船】中光ノ章 0-03【聖船】中―プルミエールSIDE― ---------------------------------------------------- こうかい日記 ~1日目~(晴れ) わたしは今日、気づいたら船に乗っていました。 船に乗るのは生まれてはじめてです。 グラグラと揺れてとても怖いです。 きっと、とっても不幸なのですが負けずにがんばろうと思います。 ---------------------------------------------------- こうかい日記 ~2日目~(くもりのち晴れ) わたしとプルミエールさまが乗り込んだ船、アメナディル号は首都ナイトクランを出航してからとても順調なこうかいを続けているようです。 お日様がたかくなる頃には、プルミエールさまも本格的な活動期に入り、ちょこまかとはしりまわっておられました・・・ どうやら船員さん達の作業に興味をお持ちになったらしく、“帆布の手入れ”、“風や波の読み方”などをはじめ、細かい雑用にまで首を突っ込んでいらっしゃいます。 いろいろと無理難題をおしつけられ、怪我をされた船員さんが数名でてしまい少し心配です・・・ 幸か不幸か、プルミエールさまはバルバロト船長や船員さんたちとはとても仲良しなので、わたしとしてはありがたいです。 あらくれ者どうし気があうのかもしれません。 ---------------------------------------------------- こうかい日記 ~3日目~(晴れ) いくら待ってもプルミエールさまが教会船の礼拝堂にあらわれません。 ザゼル司祭も、世話係りのアリエルさんも血相を変えて船内を探し回っていました。 いちど眠るとご自分がまんぞくされるまで何度ケリとばしてもユスッても爆睡している図太い神経、頑強な意思をおもちなプルミエールさま。 今朝も“とくべつきひん室”までこっそりケリ…ごあいさつに向かいました。 でも、残念ながら寝台がからっぽでふしぎに思っていました。 どうやら、早朝礼拝がイヤだったらしく、トンズラしたようです。 日も暮れかけたころ、厨房の大なべの中で発見されました。 隠れ疲れて眠りこけていたようです。 できるだけ、教会の方たちとも仲良しになってほしいです。 ---------------------------------------------------- こうかい日記 ~4日目~(快晴) いつの間にか、バルバロト船長の片腕にまでのし上がったプルミエールさま。 短い時間なら舵を任されるようになっていました。 怖いのではやく船を降りたいです。誰か助けてください・・・ ・ ・ ・ 「アリアリ・・・ナニしているのですか?」 アリアリ・・・ナニをしているの――― そこまで書いてしまって、アリエッタは羊皮紙の束から顔を上げ周囲を見渡す。 ここは、アリエッタに宛がわれた“ちょっと小奇麗なだけ”の船室とは違い装飾の趣・居住性の良さとも最上級の特等船室だった。 金満家の好むような絢爛豪華な宝飾とは大分異なるが、赴きのある繊細な意匠が凝らされた装飾は見るものの心を奪うのに十分に思える。 部屋の主人―――プルミエールと目が合うとアリエッタは慌てて開いていた冊子を閉じる。 「なんですかソレは~?」 プルミエールが怪訝そうな目を向けてくる。 その視線の先にはアリエッタが後生大事に抱えている手記らしきもの。 表紙の原皮には『アリアリのこうかい日記』と表記されていた。 そのままだと、“航海”ではなく“後悔”ともとれる表題だ。 「あぅ…な、なんでもありませんですぅ」 まるで悪戯が見つかってしまった子供のように、慌てて日記を後ろに隠すアリエッタ。 見られて困るようなものなら目の前で書かなければ良いのだが、アリエッタにとっては幼い頃から続けてきた習慣であるから仕方が無い。 「そ、それにしてもすごいご馳走ですぅ」 アリエッタが話題を逸らそうと卓上に視線を移す。 綺麗なレースのあしらわれた純白の机掛けの上には、アリエッタが見たこともないような豪勢な料理が所狭しと並んでいた。 蒸し大海老のステパノ風 竜鳥と自家製ハーブの腸詰 牛肉と天霧茸のパイ包み 子豚の丸ごと石窯焼き 子羊の骨付きロースト ジャガイモとポロネギの冷製ポタージュ ・ ・ ・ 今は丁度夕食の時間。 室内には食欲をそそる香ばしい匂いにが充満していた。 ひとりで食べるのは味気ないというプルミエールの一言で、豪勢な夕食にご相伴預かるアリエッタであった。 「うにぃ…アリアリはお気楽でイイですねぇ~」 頭痛の種の発生源が聞き捨てならない事を宣まったようだが、アリエッタにしてみれば日記の事を追求されるよりは遥かにましであった。 だが、一度興味を抱いたら骨までむしゃぶり尽くす勢いで喰いついて放さない性分のプルミエールである。 特に他人の秘密や醜聞は大好物であり、食指を伸ばそうとしないのはとても珍しい。
2009/02/13

半角どころか全角で10000文字越えそうでした。いろいろ削って前後編に収まった感じであります。ここら辺は前回からの続きで、会話内容が殆ど変わっているので推敲というより書き直しに近いです(汗こういう元気なノリが一番好きなのですが収集がつかなくなってしまいダメダメですね…『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-03【聖船】上光ノ章 0-03【聖船】上―プルミエールSIDE― ―――ジャーーン、ジャーーン、ジャーーン…… 甲高く鳴り響いた銅鑼の音が海と空の蒼に溶け込んでいく。 船の出港を告げる硬質な打撃音に、二人の少女に奇異と好奇の視線を無遠慮に投げかけていた神官・船員達も慌ただしくそれぞれの持ち場へと帰っていく。 「俺様はバルバロト。 この教会船アメナディル号の船長を17年…いや、16年か?…確かアレは……あ~っ、駄目だ…細かいことは覚えられねぇ。 まぁ、お嬢ちゃん達が生まれる前からやっているのは確かだ。 大船に乗ったつもりでくつろいでくれ」 バルバロトはそう言うと熊のような大きな手をプルミエールに差し出してくる。 「うにゅ、よきにはからいなさいですぅ♪」 漢と漢の友情を誓い合うようにガッチリと力強い握手をするプルミエールとバルバロト。 その様子にアリエッタの胸中で不幸を司る警鐘が鳴り響く。 「……(でも、バルバロトって名前)」 同時にアリエッタは僅かな引っ掛かりを感じていた。 しかし、幾ら思い出そうとしても途切れた記憶は甦らなかった。 頭の中に靄がかかったように釈然としなかったが、今はどうでもよい問題だと自分を納得させる。 バルバロトはその見た目通りに中身の方も大雑把な性格な男であった。 そこに王族や聖位に対する畏敬の念など微塵も感じられない。 隣でザゼル司祭があからさまに顔を顰めているが、それにも気にした素振りは全くみせない。 ザゼル司祭の方もバルバロトの性格には諦めているようで、プルミエールが不快にさえ感じていないようなら取り立てて咎め立てるつもりはないらしい。 老司祭は息をひとつ吐くと、傍で控えていた数人の女神官に目で合図を送る。 聖女の姿を見たことが無い女神官達も、目の前の少女が聖女本人でないことにはすでに気がついていたようで、先ほどから戸惑いの表情ををみせていた。 「わけあって聖女様はこの船にご乗船なさらぬ。 この船旅の間、お前達には聖女様の妹君であらせられるプルミエール様がご不便なきよう身の回りのお世話を申し渡す」 女神官達はザゼル司祭の言葉に驚きを隠せないようだったが、黙って立っていればそれなりに愛らしいプルミエール。 その可愛らしい容姿か、はたまた相手が聖女本人ではない事に対する安堵の感情なのか、張り詰めていた緊張の糸が解けたようにその相好を崩していた。 「プルミエール様、身の回りのお世話をさせて頂くアリエルと申します。 アレシャイムへの船旅の間、私達奴(わたくしたちめ)になんなりとお申しつけください」 女神官の中でも年長者とみられる女性が一歩前にでると淑やかな口調でそう述べた。 「うにゅ、よきにはからいなさいですぅ♪」 語呂が気に入っているのかそれが口癖になりつつあるプルミエール。 「まぁ、それでだ。 このアメナディル号は、イプス岬を抜けサリナハーム東岸を北上した後、ソウルガイス諸島群ルブリス島を目指す予定だ」 バルバロトは鈍った肩の筋肉を解すように腕を回しながら、プルミエールとアリエッタに向けて目的地までの進路を簡潔に説明する。 この時期に南西から吹き込む季節風を捉えるには最適の進路である。 だが、南方から吹く暖かな季節風とリザロス湾沿岸の寒流がぶつかる海上は局地的な濃霧地帯で、イプス岬方面にかけては、視界を閉ざす濃い霧が帯状となって常に発生している。 その周辺は荒々しい岩礁帯でもあり、座礁した船の残骸が数多く横たわり、この界隈の船乗りの間では“船の墓場”とも呼ばれていた。 通常の航行ならば、イプス岬は大きく迂回する進路をとるのが通例であった。 「まっ、心配しなさんな……この大海原はガキの頃から俺様の庭のようなもんだ。 何を隠そう以前は世界中の海を股にかけて暴れまわっていたしな。 死の海域だかなんだか知らねえが、俺様にかかればお茶の子さいさい、赤子の手を捻るようなもんだ……がっははははっ!」 バルバロト船長の本気とも冗談ともとれる大言に、周囲の船員から感嘆と冷やかしの混じりあった口笛が一斉に響いた。 「おいおい、また船長が“馬鹿話”をはじめたぞ!」 風向きに合わせ帆の角度を調節していた船員が、殊更周囲に聞こえるような大声で冗談めかと、甲板が笑い声に包まれる。 「てめえっ何言ってやがる!? それと、いま笑った奴らぁ全員出て来い! 残らず海に叩き込んでやるっ!!」 「ア、ハ・・ハハ・・・」 アリエッタが乾いた笑いを洩らす。 ―――間違いない。 このバルバロトという男はプルミエールと同質同類の人間だ。 アリエッタはそう確信した。 逃げ惑う船員達を追い掛け回すバルバロト船長。 だが、その体格が災いしてか、まるで小回りが利いていない。 どうやらこの余興は暫くの間続きそうだった。 「ヤレヤレ・・・まったく、ひとさわがせですねー」 呆れたように溜息混じりの吐息をつくプルミエール。 アリエッタも彼女に同意しかけ―――やっぱり、やめた。 「(プルミエール様がソレを言いますか・・・?)」 無論、忠実なる下僕なので口にだしては言わなかった。 落胆する者、ほっと胸を撫で下ろす者と三者三様での出港であった。
2009/02/13

最近、下記の2商品を購入致しました。「ねこきゅうマウスパッド」「外国製のちょっとお洒落な紅茶濾し」触れざる得ないにくきゅうパッドに関しては、猫自身の個体差もありますが、かなり本物に近い感触です。なによりこんなに大きなにくきゅうは初体験♪手のひらでクリクリすると、すごく気持ちいいです(*´ω`*)最初は僅かな違和感もありましたが本当に手首への負担が減る感じなので長時間PC操作をする猫好きな方にはオススメです。
2009/02/10

『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-02【夜冠】下光ノ章 0-02【夜冠】下―プルミエールSIDE― 逆光の中、プルミエール達が船縁を見上げると、酒瓶を抱えた巨大な影がヌッと山のように聳えていた。 影になって表情は見えないが、声が笑っている。 どうやらプルミエールと老司祭の問答を酒の肴に楽しんでいたらしい。 「ムカー! そこの毛むくじゃら!! シャル姉様の悪口は・・・むがっ」 これ以上事態をややこしくしたくないアリエッタが慌ててプルミエールの口に手を当て蓋をする。 「バルバロト船長……出港前の飲酒はあれほど控えるようにと……い、いや、それよりも聖女様がご乗船なさらないとはどういうことなのだ? 如何なる理由があろうとも神聖なる教会船内で嘘偽りは許されませんぞ」 バルバロトは渡し板を伝い桟橋の上まで来ると、その髭面をニタリと歪めて人懐っこそうに笑う。 巨人族と見紛うばかりの巨躯に真っ黒な長衣を纏い、無造作に垂らされた長髪の先を幾本もの三つ編みにしている。 左目には頭部から被るようなカタチの特異な眼帯をしていた。 バルバロトから漂う気配は野獣のソレだった。 きっと海賊を抽象化して絵に描いたらこのようになるのだろう。 爪先立ちをしたプルミエールが無意味に大きさを張り合っているが気にした風もない。 「嘘はついちゃいねぇよ。 司祭殿(ザゼル)は知らないだろうが、いざという時はこいつを急の連絡用に使うと先方と内密の決め事があったのさ」 バルバロトがその太い左腕を差し出すと、それを待っていたかのように巨大な白鷹が大きな羽音と共に舞い降りてくる。 鷹の脚には通信文を入れるための小さな筒が皮紐で巻きつけられていた。 「私は聞いておらぬっ!?」 「だから内密の決め事だといっているだろう。 このアメナディル号がナイトクランに入港してすぐの事だ。 俺様が酒場で酒をかっくらっていたら豪くべっぴんな姉ちゃんが接触してきたのさ。 それが噂に聞く守護騎士団の団長さんだというじゃねか。 俺様としては朝までしっぽりとおつきあいをしたかったが、用件だけ伝えるとすぐに帰っちまった。 見た目はいいがあの女は駄目だ、愛想ってものが足りなすぎる」 話の途中から問題の論点がずれてきているが、バルバロトは気にした風もなく豪快に笑っている。 「そ、そんなことは聞いておらぬわっ! なぜ、私ではなくお前などに……」 顔を真っ赤に紅潮させて喚き散らすザゼル老司祭。 頭に血が上りすぎて今にも卒倒しそうである。 「ん~あぁ…あれじゃないか? 司祭殿は口は堅いがすぐ顔にでる。 向こうさんもそれを見越して俺に直接話を持ってきたのだろうさ」 フォローになっているのかいないのか微妙なことを言うバルバロト。 「それに、こっちはどうも最初から囮扱いらしい。 俺様の感だと聖女の一行は陸路を選んだと思うぜ」 「まさか…そんな……」 聖女の護衛という栄えある大務を任されたと信じ込んでいたザゼルは茫然自失だ。 「俺様もこのアメナディル号を囮に利用する賢しい魂胆が気に食わない。 なんなら暫くナイトクランに留まってもいいが……どうする? 司祭殿」 「いや、我々は教皇庁に帰港し次の指示を仰がねばならぬ。 それに囮ならばその役割を務め徹すことがメナディルの為にもなろう」 バルバロトは老司祭の言葉に「信仰深いことで」と呆れたように小さく呟く。 「まっ、この船の最高責任者はアンタだ。 こっちはそれに従うまでさ」 そこでバルバロトは何か名案を思いついたように大きく手を打つ。 「それなら、そこのお嬢ちゃん達を乗せてやっても差し支えないな。 囮なら囮らしくそれらしいお方を乗せておいたほうが、あんたらも張りがでるだろう?」 「い、いや…それは……」 話が思わぬほうに飛び火して鼻白むザゼル司祭―――と、アリエッタ。 「なかなかおはなしのわかる“毛むくじゃら”ですね♪ よきにはからえです」 プルミエールは勝ち誇ったように八重歯を剥き出しにすると、にっこり微笑む。 背後で千切れてしまうのではないかと思うぐらい、首を左右にブンブンと振っているアリエッタには気づいていない。 ザゼル司祭は口をポカンと空けたまま唖然としていたが、咳払いをすると、 「致し方ありません…お若いが守護騎士殿もご一緒らしい。 我が懸念もきっと杞憂となることでしょう」 ザゼル老司祭はアリエッタの上衣に縫いこまれた刺繍が、娘子軍として名高い“ガーディアン”の紋章である事にも気づいていたようだ。 正規の守護騎士と間違われ、アリエッタの顔が一瞬うれしそうに綻びるが、直ぐに事態の深刻さに気づき汗だくになる。 「先ほどまでの非礼の数々、弁解の余地もございませぬ。 ご無礼の段は平にご容赦下され」 どうやらザゼル老司祭の腹も決まったようで、プルミエールを王族として教皇庁まで送り届けるつもりらしい。 「何をしておる、早く此方のお二人を教会船へとお通しするのだ」 事態を飲み込めず唖然としている神官兵を叱責するザゼル老司祭。 「どうぞ、こちらへ」 神官兵が脇へ退くと、老司祭はプルミエールを甲板へと丁重に先導する。 残されたアリエッタは、あたふたと周囲を見回して思わぬ展開にとり乱していた。 「ん?・・・守護者の騎士様もどうぞこちらへ」 「あ、あの……考えなおしたほうが……」 アリエッタはそこまで言いかけてはたと気づく。 ここで船に乗れなくなれば、まず間違いなくプルミエールは暴れだすだろう。 その理不尽な怒りの矛先が果たして何処に向けられるか? 考えるまでもない。 ガクガクと膝が笑うほどの身震いがアリエッタを襲う。 「ど、どうされました……?」 顔面蒼白で今にも海に身投げでもしそうなアリエッタの様子に、老司祭も言葉を詰まらせる。 「い、いえー。 …えへへ」 アリエッタは不自然な作り笑いを浮かべる。 もう悪魔に売るものは何も残っていない。これ以上、何も失うものはないと自分を納得させる―――そうしないと、心が折れそうであった。 当の“悪魔”は甲板へと掛かる渡し板の上から、いつも通りに無い胸を張っていた。 相変わらず偉そうである。 勿論、下僕なので口にだしてそんなことは言わないし、言えない。 「申し遅れました。私はこの教会船の司祭を努めるザゼルと申します」 アリエッタの不自然な態度に老司祭は一瞬眉を顰めて訝しんだが、彼の興味はもう一人の少女に集中しているようだ。 「それでは、参りましょう」 ザゼル老司祭はプルミエールの手をとると畏まって低頭する。 そのまま少女の小さな手の甲に恭しく口づけをする。 流石のプルミエールもきょとんとしていた。 それは“メナディエルの祝福”と呼ばれる行為だ。 自らより高い聖位を持つ者の手の甲に接吻する所作は神聖で儀礼的な意味がある。 プルミエールは王族ではあるが、宗教的に高い地位にいるわけではない。 だが信心深いこの老司祭にとってプルミエールは聖女の血統を受け継ぐ神聖なる存在であることに変わりはないようだった。 4人の姿が甲板に消えると、一人残された神官兵は、空を見上げる。 ―――今日もリザロス湾から眺める空は青く高かった。
2009/02/08

ここはプルミエールとアリエッタが教会船に乗り込むまでの過程部分です。プルミエールがシャルロットと人違いされる展開が無くなったので会話内容が変更され9割方新しく書き直しています。タイトルはナイトクランでお話が展開中なのでそのまま【夜冠】と致しました。今回、本文はギリギリ半角10000文字以内に収まったのですがタグで超えてしまったのでやっぱり前後編になってます(汗読むときは南国ムード漂う楽しげなBGM付で文章の拙さをカバーして頂けると(ry『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-02【夜冠】上光ノ章 0-02【夜冠】上―プルミエールSIDE― アダマストル公国はバールペオル大陸南西部、デュミナスカ半島のつけね、サーリュクルト大河の河口に位置する。 この広大なデルタ地帯は大陸有数の穀倉地帯となっていた。 首都のナイトクランはリザロス湾に面する大陸最大の貿易港を有し、異国情緒溢れる美しい街並みを誇っている。 大陸行路の終始点、即ち南部の制海権を一手に握るアダマストルは、それらが齎す莫大な富を背景に、一公国でありながら様々な影響力を大陸全土に誇っていた。 大陸各地、数多に点在するどの都市も、このナイトクランが生み出す財の前では霞のようなものであろう。 市街地を走る街路は広く、整頓された石畳が敷き詰められていた。 轍が刻まれた中央街路の両側には一段高くなっている側道があり、十字路ごとに常夜灯が整備されている。 中央の広場には大陸教でもあるメナディエルの大聖堂が座し、巡拝の名所となっていた。 都市の南部を占める産業地区には、大陸の玄関口でもあるリザロス湾を取り囲むように、数多の屋台や露店がひしめき合っている。 市場は熱気に包まれ、生鮮品の類から製材、打刃物、家具、建具に到るまでところ狭しと陳列されていた。 西大陸では珍しい南部原産の香辛料や東方産の天然香水などの稀少品まで商いされている。 そんな活気溢れる市場の様相も貿易船や軍艦の停泊する大港に近づくにつれて、船乗り達の多事多端溢れる怒号へと変わっていく。 そして、公室専用港は大港の最深部にあった。 白大理石を貴重に様々な貴石で模様を施された小さな停泊港。 そこは周囲の喧騒から隔離された閑寂な空間であった。 ―――が、そんな平穏な朝は早々に終わりを告げようとしていた。 「むかー! “平民”のぶんざいでナマイキですねっ!!」 舌足らずな子供っぽい声が、周囲の静観をぶち壊すように響き渡る。 「ここを通すわけには参りません。 どうかおひきとり下さるよう……」 教会船の停泊した桟橋の上で繰り返される押し問答。 騒動の源はアリエッタから事の詳細(あらまし)を聞きだしたプルミエールであった。 「そんなお祭はプルがぶっこわしてあげますです!!」 開口一番プルミエールの発した言葉がそんな物騒極まりない発言であったからアリエッッタは堪らない。 大好きな姉姫に会えない鬱憤を、大まかな理解と盛大な誤解に変貌させて、プルミエールは鼻息も荒く目的の場所に辿り着いていたのだ。 その背後には、まるでこの世の終わりだとでもいうように、がっくりと肩を落としたアリエッタの姿。 相手が王族とはいえ機密事項を漏洩したことがバレれば、ガーディアンの正式叙勲は暫くの間、見送られそうである。 ―――ガルルルル・・・ 「おっ、おひきとりを・・・」 プルミエールに対応するのは白髪混じりの老人だった。 季節外れの暴走台風(プルミエール)の突然の来訪に困り果てた警備の神官兵が、教会船の船上司祭に連絡をとったのだ。 ちなみに、船上司祭とは教会船に乗り込む聖職者のうち、最も位が高い者に贈られる称号である。 司祭不在の孤島や小教区に司牧訪問する目的で造られた教会船には、本格的な礼拝堂が設けてあることが通例であった。 ようするに、船上司祭とは、海上でのミサをはじめとする秘跡を執り行う最高責任者である。 老司祭は高位聖職者の証である金糸銀糸で縁取りされた聖職衣を纏ってはいるが、忙しなく動くその所作のせいか威厳は微塵も感じられない。 今にも噛みつかんばかりに身を乗り出してくるプルミエールに対し、明らかに気後れしてしまっている。 アリエッタが抱きつくように背後から身動きを封じていなければ、本当に噛みつかれていただろう。 「いくら聖女様の妹君のお言葉でもこればかりは罷り通りません。 ルバドス副宰相様から如何なる理由があってもプルミエール様だけは乗船させてはならぬときつく言いつかっております」 「むぅ…あのシロヒゲだるまめぇ~。 こしゃくにも先手をうっていたようですね……帰ったら時計台から逆さヒゲ吊りの刑にしてやるですぅ」 聞いてるだけで痛そうな刑罰内容(おしおき)を口走ると、しかめ面で歯軋りをするプルミエール。 「それにまだ、聖女様もご到着になっておりませぬ故。 直接ご交渉なさったほうが確かかと存じますれば……」 「むっ!? シャル姉様が!!」 聖誕祭や成人の儀など枢要な儀式の準備を兼ねて、ここ数日面会が叶わなかった姉姫に会えると聞いてプルミエールは嬉しそうに微笑む。 老司祭も唐突に現れ、船に乗せろと一点張りの少女にほとほと困り果てていたのだろう。 後から訪れるであろうシャルロットに問題を丸投げしてしまった。 「ザゼル司祭殿には残念だが、聖女様はこないぜ。 やんごとなきご身分の御方はこんなむさ苦しい船には乗りたくないそうだ」 頭上から野太い声―――瞬間、ふっと周囲が陰る。
2009/02/08

※タイトルが間違っていたので訂正致しました(汗『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-01【妹姫】下光ノ章 0-01【妹姫】下―プルミエールSIDE― 「それにしても…ムカムカするカタマリですね」 引き攣った顔で不愉快の権化を足蹴にするプルミエール。 「はぅ!?」 胸元に得体の知れぬむず痒さを覚えたアリエッタは唐突に意識を取り戻した。 驚いたアリエッタが視線を違和感の発生源に移すと、プルミエールの足の動きにあわせてユサユサと跳ね躍る量感のある大きな胸。 「わっ、んひゃう・・・あうぅ・・・」 たまらず、鼻にかかった可愛い呻き声を漏らすアリエッタ。 アリエッタの甘い声に感化されたのか、プルミエールの頬にも僅かに朱が差してくる。 「へんな声だすなーっ!!」 「んぎゅ!?」 限りなく理不尽に、本日2回目の鉄拳制裁。 アリエッタは薄れゆく意識の中、プルミエールの両手に荒縄のようなものを確認してしまい出来れば今日はもう目覚めたくないと漠然と考えていた。 「あ、あの……それで…これはなんの冗談ですかぁ?」 心ならずも再度の失神から回復してしまったアリエッタは、まるで腫れ物に触るようにおずおずと口を開く。 その身体は荒縄で縛り上げられた挙句、床に転がされていた。 「ゆーずーのきかない“お友達”への愛のムチ(おしおき)です。 なにか不満があるのですか?」 壊れた首振り人形のように首を横に振るアリエッタ。 いつの間にか例えが「親友」から「友達」に格下げされているようだが、今は些細な事であった。 「そ・れ・で♪ お友達は隠し事などしないものですよねぇ~?」 「そ、それは時と場合に……い、いえ、きっとしないものだと思いますぅ~…」 一瞬、否定しかけたがプルミエールに三白眼で睨まれて、滝のように冷汗を流すアリエッタ。 なにより珍しく回りくどい言い回しが更にアリエッタの不安を誘う。 「では、“アルジャベータ聖誕祭”なるもののしょーさいを教えなさいです♪」 既に友達ですらないような命令口調でプルミエールが告げる。 「……え」 プルミエールが尋ねてきた内容は、よりにもよって守護騎士団(ガーディアン)の機密事項にあたるものだった。 国内外の式典や祭典で度々問題行動を起こしては大陸中にその名を知らしめているプルミエール。 彼女の扱いに関しては、公会議で議題に挙がるほど公国にとって頭痛の種であった。 公国内でプルミエールを制御出来る人物は数少ない。 姉であるシャルロットを除けば、その後見人として国を治めている祖父のウィルホードと、姫君達の教育係として招かれているヴィルヘルム老だけだった。 無論、常にその3人が傍にいるわけにもいかない。 困り果てた家臣と教会関係者が導き出した結論は、このお転婆姫(プルミエール)に対し、触らぬ神に祟りなし天機洩らすべからずであった。 特にアルジャベータ聖誕祭に関してはメナディエル3大祭祀の中でもシャルロットに縁深いものであるが故に慎重に事が運ばれている。 まだ、騎士見習いでしかないアリエッタにしてみれば、自分のせいでプルミエールが教皇庁に乗り込むような事態になっては一大事である。 なによりこの事は敬愛するミルフィーナ団長からきつく口止めをされていた。 アリエッタの苦渋に満ちた心中を知ってか知らずか、プルミエールは可愛らしい唇を不満気につきだしたまま更に続ける。 「さいきん、どうもシャル姉様のご様子がよそよそしかったのですぅ……心配したプルが手下数人(※お付の侍女)にわけをたずねた(※しめあげた)ところ。 どうやらそのお祭にカンケーがあるらしいとわかりました」 小さな腰に手をあてて偉そうに踏ん反りかえるプルミエール。 だがすぐに可愛らしい唇をつきだすとその場で地団駄を踏む。 「きっと、またあの冷血女(ミルフィーナ)がカンケーしているはずですぅ!!」 下から見上げるアリエッタには、少女が地団駄を踏む度に膝上で可愛らしく広がる紅と黒のコルセット風ドレスの裾が捲くれ上がり白い下着が丸見えである。 しかし、プルミエール本人はそういったことに到って無頓着であるようだ。 どちらにしても、今にも踏みつけられそうなアリエッタは顔面蒼白で身を捩っていた。 「む~、もちろんアリアリも同意見ですね?」 「き、きっとフィーナ団長にもいろいろとお考えが……」 事実を伝えるわけにもいかずしどろもどろになるアリエッタ。 「ふみゅ、よーするにアリアリはワケを知っているのですね?」 既に状況は危険水域にまで達していたようで、お馬鹿にも状況が理解できる位置まで水嵩は増していたようだ。 「お・し・え・ろ♪」 否定すれば、とてつもなく不幸になりそうだった。 しかし、肯定しても同じくらい不幸になりそうなので困る。 そんな究極の選択にごくりと唾を飲み込むアリエッタ。 「そ、それはフィーナ団長に堅く口止めを…」 「ほほ~う、アリアリはあの女のみかたですかぁ・・・」 首を上げたままの姿勢で凍りつくアリエッタ。 視線で人を殺せるとしたら、きっと今の状況を指すのだと思う。 アリエッタは顔面蒼白で全身の血の気が退いていくのを感じていた。 しかし、プルミエールはそんな鬼気迫るアリエッタを他所に、広い詰め所の壁際の方へとつかつかと歩いていく。 ―――ダン!! 唐突に何か堅いモノ―――鈍い輝きを放つ硬質な物体がアリエッタの鼻先を掠めて石床に突き刺さっていた。 「ひわっ!?」 アリエッタは不自由な姿勢のまま恐る恐る目線だけを上下させ目前に突き立つ何かを確認すると、再度小さな悲鳴をあげた。 「ひぃぃぃ・・・」 慌てて唯一自由に動く首を不自然なまでに傾けると、プルミエールの姿を確認する。 目が合うとにっこり微笑みながら壁際に手を伸ばすプルミエール。 そこには剣術の模擬戦に使用される数多の武器が整然と立てかけられていた。 修練用に刀身を丸めてはあるが鍛錬の為に幾分重く設計されているので、当たれば怪我どころではすまない。 どうやら、目前の白刃は、その内のひとつをプルミエールが投擲したらしい。 「いいのこすコトはありますか?」 「あ、あわわわ…全部丸ごと隠すことなくお話させて頂きますですぅ~」 悪魔に魂を売る。 人としての尊厳とか自尊心などは、目先の安全の前ではとても儚く脆いものだった。 「うみゅ、ちゅーじつなる“げぼく”アリアリ。 よきこたえです♪」 プルミエールは人差し指をぴっと立てて微笑む。 短時間に「親友」から「友達」、「友達」から「下僕」と急下降した自身の立場にアリエッタは涙の粒を滲ませる。 だが、そもそも最初から下僕扱いだった気がしないでもない。 「それじゃあ、しゅっぱつです! アリアリ案内しなさいです!!」 アリエッタは「何処に?」―――と聞き返そうとしたが、胸元で括られた荒縄が唐突に引かれ息を飲み込む。 本日一番の不幸を背負った少女はそのまま不自然な海老反り状態で引きずられていった。 「ふええぇぇ~せめて縄をほどいてくださいぃ~」 「にげるからダメですぅ♪」 ほんの僅かな願いもあえなく却下されアリエッタは垂れ目気味の大きな瞳から滝のような涙を流す。 この時までは、二人にとっていつも通りに平穏な日常だった。
2009/02/04

漸く【妹姫】の推敲が完了?以前の【妹姫】3話分をひとつに纏めています。プルミエールがシャルロットに会う描写が省かれているためにいろいろと細かい変更がありました。何よりここら辺は話の流れも描写も雑だったので一番直したいところでもありました。今回も半角10000文字を越えているので前後編に分けさせて頂きました。出来るだけ推敲しなくても済むような洗練された文章を書けるようになりたいです。『†Princesse du sang†』 光ノ章 0-01【妹姫】上光ノ章 0-01【妹姫】上―プルミエールSIDE― 「アリエッタ~~~っ!!」 澄んだ早朝の空気に包まれた堅牢たる城砦に、周囲の閑静など一切はばからない元気な声が木霊する。 ―――ビクン アリエッタは自らを名指しで呼ぶ声に気づくと、あたふたと周囲を窺いだす。 首都ナイトクランの東、小高く隔たれた丘の上、見上げれば天に達するかと思われるほど高く壮麗な造りである本宮殿。それを取り囲む城砦の一部がリュズレイ守護騎士団、通称“ガーディアン”の居館として改修されていた。 “守護騎士団(ガーディアン)”とは、若い娘だけで構成される、大陸最強の娘子軍である。 彼女たちにはアダマストル正規軍とは違い、国家の威信にすら優先するべき血務が与えられている。 それは、聖アルジャベータ公会の精神的象徴であり、殉ずるべき存在でもある“聖女”の血を守護する事。 その特務は全ての事項に優先されるものである。 高潔優美、才知と武勇共に優れたガーディアンの存在は、アダマストル公国のみならず、近隣諸国の娘達にとっても憧れであり、その一員となることは大変な名誉だった。 公国各地から集められた団員候補生達は、幼き時より公国と教会が共同で設けた養成学校に入り、騎士として必要な技術、神官として学ぶべき知識を叩き込まれる。 そして、中でも心身共に優れた成績を修学したものだけが、ガーディアンの一員となることが許されていた。 「ふえ?」 寝ぼけているのか、アリエッタの瞳は焦点が定まっていないようにみえる。 澄んだ碧色の団栗眼に軽くウェーブのかかった栗色の髪を揺らす。 少女特有のふっくらとした曲線を描く身体は、その胸元だけが幼げな外見からは不釣合いなほど大きく発達していた。 未だ、見習い騎士の身分であるアリエッタは、正式な任務と与えられるわけでもなく、周囲の喧騒から一人取り残され、詰め所の中で待機していたのだった。 普段は、団長であるミルフィーナの小間使いとして彼女につき従っているのだが、現在、ガーディアンの面々は緊急の特務に召集され、誰もアリエッタに構っている余裕がなかったのである。 本来、守護騎士団には未熟な騎士見習いを置く制度はない。 だが、この娘―――アリエッタが“ガーディアン”に推薦された経緯はかなり異質なものであった。 彼女はアダマストルでも有数の良家の末娘として生を享け、物心ついてすぐに聖女の妹君であったプルミエールの同年代の相談役として公家に仕えることになった。 それは公国への忠誠の証として、悪く言えば人質のようなものであったのだが、有力貴族の庶子が公家の女官となることはこの時代珍しくはなかった。 「アリエッタ~~~っ!!」 再度、自分を呼ぶ聞きなれた声。 今度は小気味よく石畳を打つ足音が徐々に近づいてくるのがわかった。 アリエッタも自らを呼ぶ声の主にようやく合点がいったようだ。 慌てたようにその小さな腰をあげる。 そのまま机の上に無造作に置かれた鉄製の閂を引っ掴むと足早に両開きの大扉に駆け寄る。 どうやらアリエッタにとって事は急を要する事態らしい。 アリエッタは迷うことなく扉に架かった頑丈そうな蝦錠(えびじょう)に手を伸ばすと、震える手で携えた閂を錠本体に差し込もうとして――― 「グガッ―――んぎゅ!?」 とてつもなく固いものに柔らかな何かが衝突したような擬音と潰れた悲鳴。 遅れて石床の上に重たいものが落ちる音が響く。 「むっ!? この“きんきゅーじたい”にノンキにねているとわー! しょくむたいまんです!!」 アリエッタの施錠工作を嘲笑うかのように一瞬早く蹴破られた扉。 そこには小さな人影がひとつ。 金色の髪を頭の左右で結いだ少女が、その両頬をぷくぷくと膨らませながら冷たい石床の上で目を回しているアリエッタを見下ろしていた。 少女の大きな瞳は特に人目を惹く特徴的なものだった。 右眼は深い紅色、左眼は綺麗な紫色をしている。 人間では珍しい魔力の象徴とも不吉の前触れとも謂われるオッドアイがその双眸に宿っていた。 「ぷっ、プルミエール様。 な、何か御用ですかぁ?」 アリエッタは仕えるべき主人の姿を確認すると、驚くべき回復力で身を起こす。 彼女の小さな身体は見た目よりかなり頑丈なようだ。 「うにぃ~、そうでした! そこになおりなさいですっ!!」 プルミエールの興奮した口調にあわせ、まるで意思を持っているかのようにぴょこんと跳ねるツインテール。 本人はカッコつけているようだが、子供っぽさばかりが強調されている。 王族としての威厳を間違ったカタチで体現しているプルミエールだったが、其々の所作が愛らしく嫌味にはなっていなかった。 アリエッタはプルミエールの学友でもあり護衛でもあったから、彼女のそういった行動には慣れていたし、本人に悪気が無い事も十二分に心得ていた。 それでも咄嗟に扉に鍵を掛けようとしたのは彼女の自己防衛本能が働いたからであろう。 「な、なななっ・・・なにがあったのですか!?」 アリエッタは目を白黒させると、年の割に大きく発達した胸元を両腕で挟み込むようなポーズをとる。 途端に内側からの強い圧迫に耐え切れなくなった白い上衣の胸元から真鍮製の留金が弾け落ちる。 「あっ…」 ―――ぴくっ プルミエールは、同い年の娘の殊更に強調された豊かな双球と、自らの発育不良な胸の盛り上がりとを見比べる。 「うに…ま、まぁ…それはいいです」 一瞬、こめかみに青筋をたてたプルミエールであったが、不自然な笑顔を見せるとアリエッタににじり寄る。 「プルとアリアリはふか~いふか~い絆で結ばれた“しんゆー”同士ですよねぇ?」 尻餅をついたまま腕だけで後ずさるアリエッタ。 過去の経験からそれが不吉な予兆であることを敏感に察していたのだろう。 プルミエールの我侭に振り回され続けた苦渋の日々が走馬灯のようにアリエッタの脳裏を掠める。 「と、とっても勿体無いお言葉ですが……どちらかと言えばぁ…今までずっと奴隷扱いをされてぇ……んぎゅ!?」 頭上から迫る何かがプルミエールの踵だと気づいた時には、アリエッタの小さな視界は強い衝撃と白光に包まれていた。
2009/02/04
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