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伝奇モノは殆ど推敲しないのにコチラは酷い有様です(汗書いている時は試行錯誤しているつもりなのですがどうしても納得できる文章が書けません。う~む…もう少し思い切って書きたいように書くのもありなのかもしれません。============================================================月ノ章_00-01【双子】【改稿・追加/闇商店を雑貨屋に偽装描写】 小ぢんまりとした店構えでこれといった特徴はない。 しかし、ここが貧民街であることを考慮すれば随分と場違いな佇まいだともいえた。 店内の壁一面に並べられた陳列棚には小麦や豆類、玉蜀黍、埃を被った雑貨の類が所狭しと陳列されていた。 物々交換が取引の中心である貧民街で雑貨屋に訪れる客は稀だ。 それは陳列棚に降り積もった塵埃からも判断出来る。 しかし、不思議なことにこの店『ダスト・ウィズ』は20年もの長きに渡り営業を続けている。 帳場台の奥にはまるまると肥えた怠惰な容姿の男が陰鬱な面持ちでひとり腰掛けていた。 店主のゴルダである。※それに伴う細部改稿【改稿/レムリアに対するゴルダの印象】 だが、ゴルダの驚きはその比ではなかった。 彼の視線をなによりも惹き付けたのは、少年の青白い肌。 それは屍族の特徴としては最も顕著な例として挙げられるものだ。 一見して判断するには早計過ぎるが、ゴルダには直感めいたものがあった。【改稿/ルムファムが壊した品物を鋼玉の結晶体→木器に変更】※変更に伴う細部描写の改稿【追加/レムリアとゴルダの駆け引き描写】 ゴルダの喉がゴクリと大きな音をたてる。 「お客様……プリウスの実は公には取引をされていない希少品です。 とても当店でご提供できる品ではございませんが?」 「あれ、可笑しいな。 ミュークさまがここでなら手に入ると仰っていたのに……」 ゴルダは少年が度々口にする“ミューク”という名の人物に多少の興味をそそられていた。 しかし、深く詮索する気にはなれないようだった。 「きっと何かの間違いでしょう。 私はしがない雑貨屋の店主でしかない」 「ですが、お店のほうは随分と繁盛しているみたいですね」 少年は店内を見渡し幾分場違いな感想を述べた。 店内の淀んだ空気、陳列棚や床に堆く積もった粉塵、それらはお世辞にも繁盛しているとは言い難い光景である。 「な、なにを根拠にそのような…。 い、いや…誠にお恥ずかしい限りですが…ここ数年は客足も遠のくばかりで閑古鳥が鳴く侘しさです」 だが、当のゴルダはレムリアの皮肉ともとれる物言いに露骨に焦りだした。 その尋常ならざる発汗からも彼が何かを隠していることは明白だった。 「確かにここにある商品、雑貨の類はまったく売れていないようですが……。 それでも長年間口を広げておけるにはそれなりの理由があるとお見受け致しました」 明快に断言してのけるレムリア。 少年の様子から何かを感じ取ったのかゴルダは諦めたような溜息をついた。 「ふぅ…これはお人が悪い。 すべてご存知の上で申されているようですな。 お察しの通りこの店は表立っては雑貨店などを営んでおりますが、裏では好事家相手の闇商品を扱っております」 ゴルダはそこでひとつ咳払いをすると、 「ようこそ『ダスト・ウィズ』へ。 ご希望の商品はなんなりと取り揃えますぞ」 ゴルダは闇商人の顔で改めて双子を客として迎え入れる覚悟を決めたようだった。============================================================月ノ章_00-01【双子】【改稿/前項変更に伴う描写】 ゴルダは大きな図体を揺らしながら世話しなく店内を歩き回る。 驚いたことに陳列棚に並ぶ麻袋をどかすと、裏側には壁際には大量の武具が立てかけられていた。 暫くするとゴルダはその肉厚な両手に大きな荷物を抱えて戻ってきた。【改稿/細部取引描写の変更】 「それと、店主さんが最初にセナートル金貨を受け取ってくださる点も予想通りでした。 その金貨の真価を知る者なら、是が比にでも入手を試みることは計算済みです」
2009/05/31
推敲する度に展開を変えたくなる今日この頃です(汗============================================================光ノ章_01-01【神都】【追加/聖剣戦争の描写】 それは人間と屍族、忌まわしき宿命に終止符を打った聖剣戦争を描いた壁画にもある光景でもある。【追加/式典の描写】 列席者の位置からでは教皇の体躯が影となりその様子は見えない。【改稿・追加/宴の邂逅(教皇)】 「あら、ちゃんと要用はありますのよ。 でも、それは私ではなく―――」 突然、周囲が騒然とした空気に包まれる。 ファティマ・イスの言葉に呼応するように そこにもうひとりの人物が姿を現したからだ。 「フォン=バレル3世聖下……」 アルストファー・ファージの顔が苦虫を噛み潰したように醜く歪む。 シャルロットが慌てたように聖印を切ると、ミルフィーナは少女の傍らで片膝をつき頭を垂れる。 「それとも、カザロフオード公はこれ以上騒ぎを大きくすることをお望みなのかしら?」 ファティマ・イスがこの状況を面白がるような口調で毒舌を振るう。 「くっ……わかりました。 ここは聖下のお顔を立てておきましょう」 アルストファー・ファージはフォン=バレル3世へと深々と一礼をすると、ファティマ・イスを忌々しげな視線で一瞥し足早にその場を立ち去った。※その後の会話部分の細部変更============================================================光ノ章_01-02【古怪】【改稿・追加/ファティマの言伝→教皇直接の歓待】 淡い期待が焦燥と落胆へと変わり、シャルロットは舌を噛みそうな心持でうな垂れる。 「聖女殿の母君のことならば余も僅かだが記憶しておる。 だが、この場では何かと話しづらいことも多かろう。 そこでだ、貴女を“水晶の塔”へと招待したいのだが…如何かな? もし宜しければそこで余の知る限りのことはお話しよう」 シャルロットが断腸の想いで諦めかけた時、思わぬ方向から助け舟が出された。 「本当ですか!?」 一瞬、シャルロットの顔が期待に明るく輝くが、それはすぐに仄かな動揺に変わる。 水晶の塔はこのアレシャイムで最も天に近い場所。 教皇が女神メナディエルの信託を授かる聖域である。 そこは古より教皇位を世襲するフォン家の人間以外の立ち入りを禁じられていた。 例えそれが教皇直々の招待であっても、おいそれと受け入れるのは軽率かと思われた。 「貴女お一人ならば問題はありますまい。 なにしろシャルロット殿は聖女の生まれ変わりであらせられるのだから」 シャルロットの左手に穿たれた傷口が熱をもったように疼いていた。 それはフォン=バレル3世が言葉を重ねるたびに少女の思考に靄をかけ正常な判断力を奪っていくようだった。 「はい……確かにお話を承りました」 「宜しい、ではさっそく水晶の塔へとご案内致しましょう」 「お待ちください!!」 それまで押し黙っていたミルフィーナが驚いたように頭を跳ね上げる。 「聖下、シャルロット様は先程からお体のご様子が優れません。 どうか私奴の同行をご許可ください」 ミルフィーナの行動はシャルロットの身を案じての心遣いである。 聖アルジャベータ騎士団はメナデェルの信義を旨とする。 だがその忠誠は全て聖女の血縁者へと向けられていた。 ミルフィーナは教皇の思惑に顧慮するつもりはないようだった。 「ミルフィーナ、言葉を慎みなさい。 一介の騎士風情が聖下のご意思に背反するなどあってはなりませんわ」 シャルロットはきつい口調でミルフィーナを嗜める。 それはミルフィーナの行き過ぎた発言を庇う意味でもあったのだろう。 「シャルロットさま……」 ミルフィーナもシャルロットの言葉に含まれる真意を理解していたが、守護役としての義務感、いや、彼女自身の衷心がそれを嚥下させなかった。 「それに私自身も聖下にお伺いしたいことがあります。 だからフィーナはなにも心配せずに待っていてください」 少女も姉のように慕うこの女騎士の性格は良く心得ているようで、 少しずつ言葉を重ねることで説得しようと試みているようだった。 「それは罷りなりません。 私奴もお供させて頂きます。 我ら守護騎士団にとって聖女の血脈をお守りすることは唯一無二の聖務故」 だが、シャルロットの予想を上回る程にミルフィーナは武人特有の石頭であった。 「ミルフィーナ卿、水晶の塔は聖下ご自身でさえ護衛を伴うことを許されてはいません。 それは裏を返せばそこに危険がないことの証明でもありますわ」 二人のやりとりを見かねたようにファティマ・イスが言葉を挟む。 「それとこれとは関係ありません」 こうなってはミルフィーナは一歩も退かない。 頑固なのか実直なのか自らの意見を決して曲げようとはしなかった。 融通の利かない護衛役を前にして、シャルロットは大きなため息をつく。 そして、少女は最終手段を講じた。 「フィーナは私が礼節を心得ない恥知らずだと陰口をたたかれてもよいのですか?」 そう言われては流石に反論する術を失うミルフィーナ。 「で、ですが……」 「フィーナ」 シャルロットの真っ直ぐな視線を受け止めきれなくなったのか、ミルフィーナは如何にも口惜しそうに瞑目すると、 「……わかりました。 ですが、どのような状況においても、常にご自分の身の安全を第一に考えてくださるようお願い致します」 「心配は要りません。 聖下にお話を伺ったらすぐに帰ってきます」 (そう、心配はない―――) シャルロットは自分自身で言葉を反芻すると、迷いを振り払うようにミルフィーナにそう告げた。【追加/水晶の塔への案内&吸血の後遺症】 シャルロットは好事家垂涎の光景に心を奪われることも無く、前を行くフォン=バレル3世の大きな背中を見つめ思考する。 シャルロットもフォン・バレルの温厚な人柄には少なからず好感を持っていた。 だが左手の傷口から伝わる鈍痛が彼に対する警戒と同時に、この人物には逆らってはならないという根源的な恐怖を少女の心に植えつけていた。 「なにかご心配がお有りですかな?」 前を向いたままフォン=バレル3世がシャルロットに語りかけてきた。 その声には少女の心裡を覗き込もうとする意思が感じられた。 「い、いえ……」 シャルロットが言いよどむとフォン=バレル3世はそれ以上の追及はしなかった。============================================================光ノ章_01-03【呪夜】【改稿・追加/水晶の塔への描写】 ファン=バレル3世は跳開橋の向かい側で立ち竦んだシャルロットを待つ。 少女は意を決すると足早に水晶の塔の鉄門へと至る。※その他細部描写の改稿【改稿・追加/執務室を祭壇へと変更】※変更に伴う細部描写の改稿。【改稿・追加/人間の血肉→獣(家畜)の血肉】 「人間の血にはまだ抵抗がありましてな。 こうして食用として飼われている家畜の血で渇きを癒しているのです」 教皇は室内の中央に座す石造りの祭壇に歩み寄ると、置かれた玉杯に手を伸ばす。 そこには赤黒い液体がなみなみと注がれていた。 その時――― シャルロットの視界は小さな影を捉えた。 紅い波紋が生じる。 少女は弾かれたように天井を見上げる。 「―――ヒッ」 声にならない悲鳴を上げるシャルロット。 そこには四肢をもぎ取られた様々な獣の生首が奇妙な調度品のように吊るされていた。 頭部の切断面から流れ落ちた血液が円卓の上の杯に零れ落ちる。 「…酷い……どうしてこんな惨いことを」 シャルロットの視線を追い、フォン=バレル3世は苦笑する。 少女の瞳から涙が溢れ出す。 シャルロットはそれを拭おうともせずに震える声で訴えかける。 「これは異なことを。 生きる為に糧を必要とするのは“貴女たち人間”も同じ筈ですぞ」【改稿・追加/半屍族の吸血行為の後遺症に関する変更】 シャルロットの動揺を見透かしたようにフォン=バレル3世が更に続ける。 「其方の抱く不安は杞憂に終わろう。 生来の屍族ではない予に他者を服従させる力はない。 だが、僅かなら強制力を発揮するようだ。 貴女がここにいるのもそういった“力”の賜物であるのだろうな。 聖女とされる貴女に近づく機会はそうそうあるものではないから有効利用させて頂いたわけだ」============================================================1-04【蠱毒】&1-05【残光】※変更に伴う細部改稿
2009/05/28

好奇心旺盛です♪(すっぽり入りました)(はむはむチュウ)昔は横浜を応援していたうーたんです(*´ω`*)ナツカシイ…
2009/05/26

『†Princesse du sang†』の世界ロード・ムアの地図を製作中です。大まかな部分しか決定していないのでここにはどんな秘境を設置しようかなと楽しみながら作っています。注意した点は―――大地を際立たせる為、海の色を薄めにした。陸地部分の高低差に沿ったフィルタ処理。(↑巧く出来ませんでした)山脈や森・平原などは地図という性質上敢えて目立つ色合いで揃えました。などなどです。ちなみに、東大陸は古き支配の大地、ちょっぴり見えてる南大陸(※Ancient great forest周辺)は古来主の巨人族の大地となっております。
2009/05/25

ヌッコヌコで創作に身が入らない今日この頃。2,3時間置きにミルクを欲しがるので夜担当のうーたんは寝不足で死に掛けています(*´ω`*)ヒンシ(スローテンポなトランペット演奏の曲が好きみたい♪)あと、最初に仔猫用の餌をやってしまったせいで離乳食はお気に召さないらしい(´;ω;`)ウッ…食べるというより舐めているので食事に掛かる時間が尋常じゃないです。
2009/05/21

(手順1:これ見よがしに鍋を用意する)(手順2:恐る恐る進入)(手順3:すかさず寝る)次回からは盛り付けにも注意するように(`・ω・´)
2009/05/19

昨日からうーたんの支配下に入った仔猫さんですが、乳歯を調べてみたところ生後2週間~3週間程度だと判明致しました。今日からご贔屓のペットショップで購入した仔猫用のミルクや離乳食など与えています食欲は旺盛なので一安心です♪カメラを向けたら後ずさりました(*´ω`*)ムフン
2009/05/18

上のイラストは前回のラクガキを彩色したものです。ペン入れも線の補正も致しておりませんので今回もなんとな~くな感じでヌリヌリです。先日UPしたラフ時に頭の裏で捻った手の向きが逆という致命的なミスをしていたので流石に修正致しました(汗手の向きが逆とか―――何年振りのミスでしょうか……
2009/05/17

今朝、起床するとガレージに子猫が一匹全身ずぶ濡れ、瞳は目ヤニで開かない状態でかなり震えていました。とりあえず、家の中に保護して、子猫用の哺乳瓶でミルクをあげようとしたのですが親を探しているらしく落ち着かない感じです。擦り寄ってきます(*´ω`*)暫く膝の上で温めていると大分落ち着いたらしく少しですがミルクも飲んでくれて一安心。ただ、まだ親猫がいないと育てるには難しい時期なのでどうにかしないと…う~む…
2009/05/17

※更に続きです『†Princesse du sang†』 月ノ章 0-02【双子】d月ノ章 0-02【双子】d―双子SIDE― 「足りないものと申しますと―――」 成り行きから金銭ではないだろう。 だが、いくら考えてもゴルダには“それ”の見当がつかなかった。 暫くゴルダの反応を伺っていたレムリアが穏やかな口調で答えを導く。 「“信用”ですよ」 「し、信用?」 狐につままれたような顔で間の抜けた声をだすゴルダ。 「なに、簡単なことです。 ボク達がここを訪れた際に貴方が常に有意義な取引相手であってくれれば良いだけです。 尚、この契約は両者のどちらかが死ぬまで継続すること、以上です」 「そ、そんな簡単なことでいいのか?」 もっと無理難題を突きつけられると思っていたのか幾分拍子抜けした感のあるゴルダ。 「ボク達屍族にとってそれはとても重要なことなんですよ」 屍族が異端視されるメナディエル教圏の街で、そこに住む人間―――ゴルダのように内外様々な情報に精通している人間を味方にすることは、己の身の安全を計る上でもレムリアにとって重要な問題であった。 「だが、こういってはなんだが…。 こちらが裏切らないという保障はないのでは?」 敢えてゴルダはそう聞かずにはいられなかった。 「そうはなりません」 レムリアは首を横に数回振ると得意気に続ける。 「仮に店主さんが屍族を異端視する勢力、例えば公国や教会にボク達を売るような真似をしたとします。 その結果、通常なら報奨金を得られる上に身の危険もなくなりますが―――この場合、ボクと店主さんを取り巻く環境を考えれば、得るものより失うものの方が遥かに多い。 違いますか?」 聖女の末裔を王族として頂くアダマストル公国は聖アルジャベータ公会の総本山である。 屍族は異端視され、その存在が知れればメナディルの教義の下に正義の鉄槌が降ることになるだろう。 だがゴルダ自身も違法な商売に身を窶している以上なんらかの処罰は避けられない。 いや、これ幸いと財産を没収された挙句、罪人として投獄される憂き目に遭うのがオチであった。 「た、確かに」 ゴルダは額に滲み出た汗を矢継ぎ早に拭う。 「ご理解頂けたのならば幸いです。 それとコレをどうぞ」 レムリアは満面の笑みで一枚の金貨をゴルダに手渡す。 「コレはっ!?」 見紛う筈もない。 それはセナートル金貨だった。 「先ほど床に落ちていたものを拾いました」 「まさか―――」 ゴルダは驚いたようにレムリアの顔を凝視する。 その両眼には疑いと非難の色が強い。 「あはは……、そんな目で見ないでくださいよ。 それに、金貨を拾ったかどうかボクに尋ねない店主さんにも非はあります。 勿論、店内での拾得物です。 お話が済めばお返しするつもりでしたよ♪」 いけしゃあしゃあと言ってのけるレムリア。 そもそも、その金貨自体、拾ったのではなくルムファムがゴルダの懐から掠め取ったものだ。 ゴルダは大きく肩を落とし茫然自失だ。 己が少年の手の平の上で踊らされていた事実はゴルダの自尊心を酷く傷つけていた。 流石に居た堪れなくなったのか、レムリアはばつが悪そうに頭を掻く。 「騙すような真似をして申し訳ありません。 ですが、こうでもしないと店主さんは屍族と無用な関係を持とうとはしなかったでしょう……。 う~ん、やっぱり怒っていますか?」 上目遣いにゴルダを見つめるレムリア。 その聡明そうな碧眼はウルウルと滲んでいた。 子供相手にこれ以上の醜態を晒すのも情けないと感じたのか、ゴルダはレムリアから目を背けひとつ咳払いをする。 「い、いや…商談に駆け引きはつきものだ。 それと気づけなかったコチラにこそ落ち度がある。 なに、こちとらお天道様の真下で商売できるような真っ当な人間じゃない。 取引相手が脳足りんだと余計な心配も増すが、アンタのように賢い人間―――いや屍族ならば大歓迎だ」 それに適度な緊張感を保てる点が特にいい―――ゴルダは内心でそう付け加えると晴れ晴れとした心からの笑顔をみせた。 「そういえば、この店に十分な金銭、差額のガープ金貨が常備してあったらどうするつもりだったんだい?」 ゴルダがふと感じた疑問を口にする。 「その時は―――」 レムリアが勿体振るように言葉を切る。 「その時は?」 ゴルダは鑑定台に身を乗り出すように少年の言葉に聞き入っている。 「おつりは全部“ガープ銀貨”でお願いしますと―――仮にそれも満たしているようなら、全て“銅貨”でと言います。 条件を満たさなくなるまで貨幣換算価値の低い硬貨に切り替えるつもりでした♪」 レムリアは事も無げに言ってのけた。 かなり乱暴な手段に思えるが、確かにガープ金貨43,000枚は銀貨で430,000枚、銅貨に換算すると4,300,000枚になる。 そんな大量の硬貨を常備している場所など政府直下の両替機関以外に見当がつかない。 「それと、店主さんが最初にセナートル金貨を受け取ってくださる点も予想通りでした。 貴方の密売人としての本能が熟練の商人としての判断力を上回ると想定していましたしね」 「大したボウヤだ」 感心するようのゴルダは呟いた。 これが双子の屍族と一人の闇商人との最初の出会いだった。==============================================※推敲はフリーページ内で行います。
2009/05/12

※前回からの続きですこのC&Dパートは推敲ではなく追加部分です。『†Princesse du sang†』 月ノ章 0-02【双子】c月ノ章 0-02【双子】c―双子SIDE― 「ルム、店主さんに預けたものを返して貰ったらどうかな?」 レムリアの含みを持った物言いにルムファムが動く。 少女の白い手がゴルダの左手を貫通した短剣の柄を無造作に掴む。 ゴルダはきつく瞼を閉じ激痛に備えて身を硬くした。 その瞬間を見計らったようにルムファムが動く――― 「もう終わりましたよ」 レムリアの声に緊張の糸を解くゴルダ。 刃で貫かれた瞬間と同様に微塵の苦痛も感じさせることなく短剣は抜取られていた。 ゴルダは左手を胸元に手繰り寄せるとほっと安堵のため息をつく。 「それでは頼んだ商品をお願いできますか?」 「は、はい…只今ご用意致します」 ゴルダは大きな図体を揺らしながら世話しなく店内を歩き回る。 暫くするとその肉厚な両手に大きな荷物を抱えて戻ってきた。 「どれも信頼できる武器商人から仕入れた自信の業物です」 鑑定台の上には双子の身の丈はありそうな大剣や大型斧、特殊な形状を持つ大槌などが所狭しと並べられている。 レムリアの注文に則した通り、切れ味というよりも頑丈さを優先した武器が目立つ。 「それと、こちらがプリウスの実になります」 ゴルダは大きく膨れた拳大の布袋を3つ用意する。 レムリアはそれらを受け取ると、革紐で縛られた布袋の封を解き中身を確認する。 鮮やかな紅色―――赤い果実から漂う甘酸っぱい香りが少年の鼻腔をくすぐる。 「(……ゴクリ)」 少年は陶酔したような眼差しで小さく喉を鳴らす。 濃縮された香りのなかに僅かに混じる上質な鉄の匂いに屍族の本能が刺激されたようだ。 「ご満足頂けましたか?」 ゴルダが揉み手をしながら問い掛ける。 これは卓上に積み重なった武具を黙々と物色しているルムファムに向けられた言葉だ。 少女は自分の身長ほどもある大剣を軽々と持ち上げると、握り具合を確かめるように刀身を軽く振る。 使い込まれた凄みはないが、その重厚な風格は熟練の職人が鍛えたに違いないと思わせる大剣だった。 「これはお目が高い。 その大剣は聖剣戦争以前、嘗ての空中都市で用いられた玉鋼を原材料に鍛えられた名刀です」 すると、ルムファムが唐突にきょろきょろと左右を見渡す。 暫くの間、その視線はなにかを求めるように宙を彷徨っていたが、目前の肉の塊―――脂肪の詰まったゴルダの土手っ腹の上でぴたりと留まる。 少女は僅かに逡巡すると確認をとる為かレムリアを振り返る。 「ぜ、ぜったい駄目」 プリウスの香りに陶酔状態のレムリアであったが、はたと我に返ると拒絶の声をあげる。 少女はその碧眼に不満の色を滲ませるが少年の意見に逆らうつもりはないらしい。 こくりと頷くと大剣を鑑定台の上に戻す。 「そ、それで如何致しますか? どれも甲乙つけがたい業物ですが」 双子の不吉な遣り取りに眉根を寄せながらも訊ねるゴルダ。 「斬れ味を試せないから全部」 一体“ナニ”で試し斬りをしようとしたのか―――ゴルダはその額に大量の冷や汗を滲ませながら真っ青になる。 「だ、そうです」 一息遅れて諦めたようにレムリアが続ける。 「全てとなると多少値は張りますが宜しいですか?」 「構いません、先ほどのセナートル金貨で清算してください」 「わかりました。 プリウスの実と合わせてガープ金貨七百枚といったところに―――」 不意に言葉を濁したまま硬直するゴルダ。 無論、既に預かったセナートル金貨の付加価値を考えれば十分過ぎるほどに事足りる金額だ。 ゴルダも双子の支払い能力に関しての心配はない。 「どうしました?」 レムリアが心配そうに訊ねる。 「……い、いえ、誠に申し上げ難いことなのですが、差額分の金銭が幾分不足しておりまして……」 随分と間を空けてゴルダは答える。 その声は多少上擦っていた。 「不足ですか?」 「はい、一般的な取引に差し支えない硬貨・宝石は常備しておりますが、その…なんと申しますか…まさか、セナートル金貨でお支払いを求めるお客様が訪れるとは想定外の出来事でして。 商品のお取引は後日改めてというカタチでお願いできませんでしょうか?」 ゴルダ自身かなり用心深い性格ではある。 だが、それを差し引いても、多額の金銭を店内に常備している闇商店など防犯上の観点からもある筈がない。 「それは困ります。 ボク達には時間がありません」 「も、勿論、“金貨”はお返し致します」 狼狽したゴルダは懐から中身のたっぷり詰った金嚢を取り出す。 慌てた手つきで巾着口を緩めると金貨や宝石の類が鑑定台の上にこぼれ落ちた。 ゴルダは大量の硬貨を膨れた指先で器用に掻き分ける。 鮮やかな手並みだが段々と焦りの色が濃くなっていく。 「そ、そんな、確かにここに入れた…」 他の一般硬貨はそのままに、そこにある筈のセナートル金貨だけが影も形もなくなっていたのだ。 ゴルダは樽状に膨れた上半身から纏った衣服を引き剥がすと、直ちにそれを裏返しバサバサと乱暴に振り回す。 だが、そこに硬質な音は混じらない。 そんなゴルダを尻目にレムリアは多少意地悪く口調を荒げた。 「現実の金貨が消えてなくなるわけもありません。 ボク達が子供だと高を括って欺くおつもりですか?」 レムリアの詰問に呼応するようにルムファムの冥い碧眼がゴルダを睨め付ける。 僅かでも少女を抑制する箍が緩まればゴルダの命は消し飛ぶと思われた。 「ま、待ってくれ、何かの間違いだっ!!」 しどろもどろに弁明するゴルダ。 その表情を情けなさそうに歪ませると、ついには鑑定台の下に這い蹲りセナートル金貨を探し出す。 「ない、ない…ない」 うわ言のように何度も呟くゴルダ。 「代金の差額どころか、受け取った筈の金貨まで返却できないとなると……。 ボクにも店主さんに悪意がないと信じることは到底無理です。 もし一方的に取引を違えられた場合、闇商人の貴方なら一体どうしますか?」 床に伏したままのゴルダの喉がゴクリと音をたてる。 商人組合に所属する者同士なら程度に応じた損害賠償を求めるのが通例だが…。 危険と常に隣り合わせな人間、市場の裏側に存在する闇商たちはもっと端的な解決法を採る。 見せしめとして耳や鼻、特に性質が悪い者は腕など―――身体の一部を切り落とし制裁とするのだ。 「そ、そうだっ! 少し待ってくれないか。 確かな場所は明かせないが、この街のある場所に隠し金庫がある。 そこにいけばセナートル金貨そのものは無理でも十分な補償が出来る。 だから―――」 なにしろ、ルムファムがこれ見よがしに鈍く光る短剣をチラつかせている為に、ゴルダは生きた心地がしなかった。 「もしも、逆の立場であったのなら、店主さんはその言葉を信じますか?」 ゴルダは言葉に詰る。 軽々しく嘘をつけない辺り彼は正直者なのだろう。 「ボクもことを大袈裟にしたいとは考えていません。 むしろ貴方のように有能な人間とは有意義な関係を築きたいと考えています」 泥沼にはまり込んでいくゴルダに対してレムリアの対応は努めて冷静だ。 「と、当方に一体どうしろと?」 「今のボクと店主さんに“足りないもの”で差額分を補って貰えれば結構です」==============================================※推敲はフリーページ内で行います。無理やり書き上げたらこんな時間に(汗
2009/05/12

昨日のラフ絵に軽く色をアテてみました。ハイ、手抜きですスイマセンそういえば、久しぶりにデリーターの漫画用原稿用紙を使用した気がします(笑
2009/05/05

『今年の隠しテーマ』はおっさんキャラを描きまくることです。・・・・・と言えと脅迫されたうーたんです(´;ω;`)ウッ…この人設定の時とは違って髭面になりました(*゜∀゜*)y-~~~描いているといつの間にか足が大きくなってしまうという奇病にかかっています(汗
2009/05/04

※続きです『†Princesse du sang†』 月ノ章 0-01【双子】b月ノ章 0-01【双子】b―双子SIDE― 「い、いきなり…ナ、ナニをするんだよっ!」 尻餅をついてへたり込んだレムリアが抗議の声をあげる。 「ワタシがおねーさん」 ぞっとするような冷たい声には反論を許さない不気味な力強さがあった。 レムリアは気圧されたようにルムファムから視線を外す。 「と、とりあえず…そ、その問題は後でゆっくり話し合うとして……。 店主さん、壊れた品物はこちらで弁償させて頂きます」 少年はゴルダへ向かい申し訳なさそうにペコペコと頭を下げる。 「い、いや―――気にしなくていい。 考えてみれば鋼玉の結晶体がこんなに易々と砕かれるわけもない。 きっと紛い物を掴まされたのだろう」 額に大粒の汗を滲ませゴルダが答える。 真実よりもそうであると信じたいといった顔色だ。 レムリアは非難するようにルムファムを睨みつける。 だが、なにを思ったか少女は懲りた様子もなく外套の内側から再び短剣を取り出した。 「ぎゃ!!」 一瞬身構えたレムリアだったが悲鳴は予期しない方向から聞こえてくる。 「ヒィ――ひぃぃぃ……」 ゴルダのぶよぶよとした油手が、奇妙なカタチをした短剣によって帳場を兼ねた鑑定台に縫いつけられていた。 驚嘆すべきはその投擲の正確性ではなく、どのような業を用いたのか短剣で貫かれた傷口から一滴の血も流れ落ちていないことだった。 「ルム……?」 三白眼で理由を尋ねる少年。 「逃げた」 ルムファムの返答は短い。 レムリアは大きくため息をつくと、隙をついて店の奥に逃れようと画策したらしいゴルダに声を掛ける。 「品物を売って貰えないとボクも店主さんも不幸になりそうです。 ここはお互いのために賢く行動しましょう」 「…わ、わかった。 そ、それで今日の御用向きはなんだい?」 顔中に油汗を浮かべたまま引き攣った愛想笑いを浮かべるゴルダ。 「プリウスの実を3袋。 それと材質は特に問いません――この店で最も頑丈な武器を数個、適当に見繕って貰えますか?」 公には取引されていないプリウスの実を得る為にこの闇市を訪れたわけか、ゴルダはそう得心すると俄かに余裕を取り戻していた。 「プリウスの栽培や流通は公国の法律で厳しく規制されている。 入手に危険を伴う分それなりの額になるわけだが―――」 ゴルダもその筋では名を馳せた闇商人である。 商売の話となれば気後れはしていなかった。 「相場はどの程度なのですか?」 少年の純粋な反応にゴルダは少し気が咎めたが、双子の屍族をつま先から頭の先まで値踏みするように観察する。 「そうですな…ガープ金貨500枚。 いや、大負けに負けて金貨400枚といったところが妥当でしょうな」 明らかにふっかけであるのだが、レムリアに気づいた様子は無い。 西大陸で最も広く流通するガープ金貨1枚は、同銀貨10枚に匹敵し、銅貨なら100枚分の価値がある。 ちなみにガープ銀貨1枚あれば、7日間は衣食住に困らない。 これだけでもゴルダの提示した金額が如何に法外なものであるかがわかる。 屍族が人間の市場、しかもその裏側に精通しているわけもない。 そう考えたゴルダが講じた一計であったのだが、 「わかりました。 その金額でお願いします」 いともあっさりと返されて驚いたのはゴルダのほうであった。 「なっ…。 し、失礼ですが……ガープ金貨400枚となりますが。 本当にわかっておいでですか?」 金貨400枚となれば、持ち歩くにはかなりの重量になる。 なにより見た目にもかなり嵩張る筈である。 この双子がそれを所持していないことはゴルダにもわかっていた。 体よく追い返そうと考えていたゴルダにとって、それは想定外の事態であった。 「当店は信用貸しなどは一切おこなっておりませんが……」 「わかっています」 そういって、レムリアは帳場台の上に一枚の古ぼけた金貨を置く。 「こ、これは・・・セナートル金貨!?」 ゴルダの眼が剥きだされた。 本来それが持つ貨幣価値は金の含有量に依存する。 セナートル金貨は西大陸で広く流通するガープ金貨やウリクス金貨より僅かに落ちる。 だが、セナトール金貨は一夜のうちに滅び去ったといわれる古代王国ニクネベェンの空中都市でのみ鋳造・使用されていた幻の貨幣である。 とある国の好事家が、それ欲しさに全ての財産を投げ打ったという逸話があるほどだ。 「それでは、足りませんか?」 「な、何を馬鹿なことを!! これ一枚でガープ金貨5000枚の価値はありますぞ」 ゴルダは自由になる右手でセナートル金貨を引っ手繰るように掴むと、二度と離さないとばかりに懐に仕舞い込んでしまった。 この男は生来の業突く張りのようだった。 先程までの慎重さはどこ吹く風、ほくほく顔で愛想笑いを見せている。 「受け取りましたね。 これで取引は成立しました」 満面の笑みを浮かべるレムリア。 ゴルダが闇商人として培った長年の勘は、この少年がオール・ウィズを訪れて最初に警鐘を鳴らしていた。 彼はそれに従うべきだったのだが―――ゴルダの背負うこととなる長年の不幸は今まさに幕をあけたのだった。
2009/05/01

※双子の紹介も兼ねて、【闇商】を改編させて頂きました。この場面はミューク・ウィズイッドが主体で話が展開していたのですが、双子を中心に書き直しております。『†Princesse du sang†』 月ノ章 0-01【双子】a月ノ章 0-01【双子】a―双子SIDE― リザロス湾の西側に広がる歓楽街。 表通りから隔たれた裏路地の先には堕ちた街(ダストシティー)と呼ばれる貧民街がある。 そこに住む人間に市民権は無く、公国の行政の対象から完全に切り離された無法地帯でもあった。 アダマストルは比較的裕福な層が住む国家であるのだが、首都ナイトクランに集束される冨と名声は、同時にこういった深い闇をも生じさせていた。 市民権を持たない人間がナイトクランで暮らすには、奴隷となり支配者階級の所有物となるしか方法はない。 ダストシティーは自由を求める逃亡奴隷達の逃げ込み場であり、公国の制度に反発する反乱分子の根城が多く構えられている。 更に人身売買や不法な取引の温床、そういった裏社会の闇商人や奴隷商人等の巣窟でもあった。 ここ『オール・ウィズ』もそんな闇商店のひとつだ。 注意しなければ、廃屋と見紛うばかりの廃れた石造りの一軒家。 貧民街で最も治安が悪い3番区画にそれは存在していた。 店内には古今東西から集められた『毒薬』・『禁魔法薬』の類から、古種・巨人族の失われた技術『カラクリ』らしき珍品、果てはロストワードの彫り込まれた石版まで、公での取引を禁止されている品物が所狭しと陳列されている。 店主のゴルダはまるまると肥えた怠惰な容姿とは裏腹に、その筋では屈指の密売人である。 「ん?」 それは、そろそろ店仕舞を始めようとゴルダが考えた矢先の出来事であった。 不意に肌寒さ感じたゴルダは不審気にその眉根に皺を寄せた。 彼は店の入り口に目を向け小さく舌打ちする。 店口の木扉が僅かに開いていた。 最近になって建てつけが悪くなってきた扉が何かの拍子に開いたのか? そう納得すると、重い腰を上げる為にゴルダは両膝に力を籠めた。 「なっ!?」 ―――それは居た 目の前に立つ小さな人影。 漆黒の外套を纏い同系色の面紗で目元以外を覆い隠している。 衣の内側から黒地に赤と金の糸でメナディエルの紋章が刺繍された胸掛けが見える。 それはこの大陸では珍しくないメナディエル教の修道女の格好であった。 小柄な修道女は、明らかにその体型とは不釣合いな外套をずりずりと引きずりながら物珍しげに店内を見渡していた。 既に外套の裾先は白っぽく埃に塗れていた。 「ここはアンタのような人間が来る場所じゃない」 最初は驚いたゴルダであったが相手が修道女だとわかると、早く出て行けと言わんばかりに手を振る。 だが、人影はゴルダの声が聞こえていないのか、薄暗い店内の陰影に溶け込むように佇んでいる。 一向に帰る気配をみせないその姿に、ゴルダは苛立ったように声を荒げ、 「教会への寄付なら十二分に進呈している筈だ」 真っ当な商売なら国の許可状を得た上で、その土地のギルド(同業組合組織)へと定期上納金を納めるだけで事は済む。 だが、ゴルダのように裏で取引を行う人間は、国境役人である税関吏への袖の下、多方面に影響力が強い教会への寄進など、一見悪習にも思える慣例が当たり前に罷り通っている。 無論、二重三重に上前を撥ねられるわけだから気分が良いわけもない。 「どちらにしても、もう店仕舞いだ。 悪いが帰ってくれ」 我慢できなくなったゴルダは大股で修道女に詰め寄る。 彼の商人として培った長年の勘は不気味に警鐘を鳴らしていたのだが、教会に対する不信感がそれを上回っていた。 「おい、アンタ」 ゴルダが修道女と思しき人物の細肩に手を置くと、驚いたようにその身が退かれた。 弾みでだぶついた外套が床の上に滑り落ちる。 「わっ、ボ、ボクのことを言っているのですか?」 驚いたようにゴルダを見上げる視線。 僅かに癖のある銀髪、深い蒼色の瞳が印象的な少女―――いや少年である。 歳の頃十歳前後、壊れやすくて脆いこの年頃独特の中性的な魅力がそこにはあった。 だが、ゴルダの驚きはその比ではなかった。 ゴルダの視線をなによりも惹き付けたのは、少年の青白い肌―――彼自身は人身売買に手を染めてはいない。 だが商売柄、好事家相手に愛玩奴隷として取引される屍族の姿を目にした機会は数度あった。 彼の卓越した観察眼は少年が屍族であることを見抜いていた。 「え~と、頼まれた品を買えないとミュークさまに怒られてしまいます」 蚊の鳴くような声で困り顔な屍族の少年。 恐怖がゴルダの精神を束縛していた。 金縛りにあったかのように身体が硬直して動かない。 自然と呼吸が荒くなっていた。 彼の見知る屍族は拘束され無力化された屍族であり、それ以外のカタチで屍族と遭遇することはこの西大陸では稀有なことである。 「屍族なのか……?」 そこで突然、ゴルダは慌てたように自らの首筋を確認する。 「心配いりません。 ボクは無断で他人の血を吸ったりしませんから」 ゴルダの心を読み取り明るく応対する少年。 だがその顔は何処か哀し気に見えた。 もっとも、当事者であるゴルダは身の安全を口約束で保障されても落ち着けるわけがない。 「レム・・・コレ殺さないの?」 「―――!?」 感情を伴わない少女の声。 それは唐突に背後から聞こえた。 不意に現れた二つ目の気配に驚いたのも束の間、言葉の意味するところを察したゴルダは総毛立った。 「ひっ!!」 ゴルダの首筋に引き攣ったような痛みが走る。 首筋を伝う生温かい感触・・・ その時になってはじめてゴルダは気がついた。 手を添えたままの首回り―――だぶついた顎の肉の間に冷たい感触があることに。 ゴルダの全身からじっとりと冷たい汗が噴き出してくる。 「ちょ、ちょっと待ってルム。 そんなことをしたら、またミュークさまに怒られるよ」 レムと呼ばれた少年は慌てたようにゴルダの背後で刃を突きつける少女の行動を制止する。 少年は恐怖に硬直するゴルダへと視線を戻し、 「先ほども言いましたがボクたちは買い物に来ただけです。 用が済めばすぐに帰るのでご安心ください」 屍族の少年は破顔して微笑む。 それは見る者を安心させ警戒心を和らげる純真な笑顔だった。 「ああ…だが、その前に後ろのお嬢ちゃんをどうにかしてくれないか? このままでは首元が冷えて敵わない」 「あっ、すいません。 ルム、いい加減に解放してあげなよ 少年が目配せをすると、ゴルダにも背後の少女が動く気配が伝わってきた。 首筋から刃物の感触が消えたのを察知すると、ゴルダは恐怖の源を確認するべく背後を振り返る。 「これは・・・」 そこに居たのは少年と瓜二つの屍族の少女 ゴルダは視界におさまった少女の愛らしい容姿に感嘆の息を洩らしていた。 癖のないサラサラとした銀髪を腰の辺りまで伸ばし、淡い碧眼には危うげな色を宿している。 そこには物言わぬ人形のような儚さを伴った美しさがあった。 少女はふらふらと夢遊病者のような足取りで少年の傍らにちょこんと納まる。 僅かな差異はあるものの並んでみるとまさに生き写しであった。 「そういえば自己紹介がまだでしたね。 ボクはレムリア・グリンハルト。 こっちは双子の妹のルムフォムです」 レムリアはまずは自分を、続けてちょっこんと横に並んだ双子の片割れを紹介すると、礼節に習い短躯を折って一礼する。 だが、少年の言葉にそれまで無表情だったルムファムの柳眉がぴくりと吊上がる。 不意に膨れ上がる少女の殺気――― 「ひわっ」 少年の間の抜けた悲鳴と、一瞬の間をおいての店内の陳列棚から甲高い破砕音。 慌てて陳列棚に視線を移したゴルダが目を剥く。 そこに載置されていた鋼玉の結晶球が真っ二つに割れ、奥の壁にひしゃげたように短剣がめり込んでいた。==============================================※半角一万文字を超えてしまったので分けます
2009/05/01
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