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「すし匠」の中澤圭二がマンハッタンに出店して、キャビアやトリュフが高級食材をどしどし足していく「足し算の鮨」をやる現地の寿司屋に対して、「引き算の鮨」でシャリを主役にして魚のうまみを引き出してシャリに合わせる江戸前鮨で勝負するというような話を最近見かけた。こういう感覚は料理だけでなくて芸術にも重要なので、徒然なるままに算数について考えることにした。●料理の算数味を形容する言葉に甘酸っぱいや塩辛いとかがあるように、味の足し算をするにしてもたいてい二つの味が中心になるので、何でも足せばよいわけではない。鍋料理は足し算の傾向が強くて、汁のベースになる味があるにしてもいろいろな食材からだしが出るほど汁が濃くなって美味しくなる。スターバックスのコーヒーはキャラメルやらクリームやらをマシマシにする足し算のコーヒーで、喫茶店のコーヒーはミルクか砂糖を最低限入れるだけでコーヒー本来の味を楽しむ引き算のコーヒーといえる。酒は割り算で、アルコール濃度が高い酒を氷や炭酸とかで割って薄めて、そこに果物とかのフレーバーを足して好みの味に仕上げる。酒と食べ物のマリアージュはおいしさを引き上げる掛け算といえるかもしれない。デザートは足し算になりがちで、洋菓子のケーキやクレープはごてごてと果物を盛っているほうがインスタ映えして美味しそうに見えるけれど、飽きるのも早くてたまに食べるにはいいけれど毎日は食べたくない。和菓子は餡をメインにして餅や最中を合わせて素材のおいしさを引き出す引き算のお菓子で、地味だけれど毎日食べても飽きにくい。湖池屋がカルビーの真似をしてごてごてと味を足したポテチを出すのを見直してジャガイモのおいしさを追求したプライドポテトを出したらヒットしたように、普段食べるおやつは引き算の考え方で本質的なおいしさを追求するほうがよさそうである。パンはハード系パンは小麦のおいしさを追求した引き算のパンといえる。サンドイッチやホットドッグやハンバーガーや総菜パンは足し算のパンである。焼きそばパンとかの日本特有の総菜パンはパンと具のどっちがメインなのか不明で具が甘めのパンに合わなかったりするので、私は総菜パンをあまりおいしいとは思わない。●製品の算数平成の日本の家電は機能を足し算するのが付加価値だとばかりにいらない機能をてんこ盛りにして、テレビのリモコンがボタンだらけになったりパソコンやアプリがプリインストールされたいらないソフトだらけになったりして迷走して、Appleとかのデザインに凝ったシンプルでスマートな家電に取って代わられた。バルミューダもトースターとかの単機能の引き算の家電で成長したのに、スマホに独自の電卓アプリを足すことにこだわった足し算病にかかって、自己満足のこだわりが消費者のニーズに合っていなくて失敗した。電卓にこだわりたいならスマホでなくて意識高い事務職用の卓上電卓を開発して引き算の製品にするべきだった。●建築の算数家を建てる時は家族の人数や必要な用途に応じて寝室や書斎やウォークインクローゼットとかの部屋を足していって、大は小を兼ねるということで大きな家になりがちである。昭和は大きな家で3世帯同居して、ジジババが死ぬ頃にひ孫が生まれて家族構成が入れ替わるので、家の構造自体はあまり変わらなかった。核家族化してからは子供が生まれたり子供が家を出たりしてライフステージが変わるごとに引っ越すのが普通になって、単身用の最低限寝起きできるだけの超狭いアパートや月極のロッカーみたいな用途を限定した引き算の部屋が出てきた。●ファッションの算数化粧は素顔に対する足し算で、まつ毛の長さや唇の厚さとかを盛って誇張するのが標準になっている。そのうえ写真アプリやプリクラとかでさらに加工して盛る。女性らしさを足していくとドラァグクイーンのド派手な化粧にいきつく。昔の服は身分を表していたので、偉い人ほど足し算のファッションで装飾が増えていって、冠をかぶったり勲章をつけたり凝った刺繍を入れたりフリルをフリフリしたりする。現代の服はコーディネートが難しくて、服のブランドも靴のブランドも鞄のブランドもアクセサリーのブランドも個性を出そうとして派手になりがちで、重ね着でも動きづらくなって、足し算をするとゴテゴテした感じになるので足しすぎないようにする必要がある。モノトーンのモード系ファッションは服から色の要素を減らしてそのぶんスタイルに特徴をつけた引き算のファッションといえる。女性は性の解放で好きな服を着られるようになると、スカートの丈が短くなったりへそを出したりして服の面積を引き算して露出を増やすようになった。服で隠さずに直接性的魅力をアピールするようになったら豊胸手術で胸を足し算する人も出てきた。●スポーツの算数ボディービルダーは筋肉を足していくけれど、筋肉ムキムキのマッチョマンがあらゆるスポーツに強いわけではない。身長や骨格に最適な筋肉量があるし、格闘技は体重制限もあるので、スポーツマンは無駄な筋肉や脂肪をつけないように引き算で体を鍛えて機能を絞る必要がある。スポーツのスコアは基本的に足し算で、相手のスコアを減らせるスポーツはないような気がする。●音楽の算数音楽は演奏者の人数や楽器の種類が増えるほど音が豪奢になるので足し算になりがちだけれど、そのぶん作曲や合同練習が難しくなる。西洋では大人数のオーケストラが隆盛して、アメリカのポップミュージックではジャズの後に大所帯のファンクが出てきて、日本では大所帯のアイドルが出てきたけれど、大人数だとそのぶん維持費がかかるのでジャンル自体の人気がなくなると運営できなくなる。楽器が電子化してからはシンセサイザーがあればいろいろな楽器の音が出せるようになったうえに楽器ごとのズレがない正確な音が出るので、オーケストラやマーチングバンドやアイドルみたいに生演奏のパフォーマンスに価値があるグループ以外は大所帯のグループはいなくなった。その一方でジャズはロックは3-4人が専門の楽器を担当するので、個性の掛け算的なところがある。音楽の方向性の違いでメンバーが抜けて別のメンバーを入れるとソロパートの部分が違う雰囲気になって人気が変わったりする。ラップバトルも掛け算で、一人だけうまくてもだめで、相手もうまい返しをしないと盛り上がらない。アカペラのバラードは引き算の音楽で、伴奏がないぶん歌唱力が要求される。ボイスパーカッションは音を足していって一人でいろいろな音を出すのが面白さになる。●文学の算数文体面ではヘミングウェイのハードボイルドの文体は描写を必要最小限にした引き算の文学といえる。日本文学にあるような句点で文章を長くしてつらつらと書いて独特のリズムを出す文体は足し算の文学といえる。物語の内容は登場人物同士の足し算でなくて掛け算になるようにしないと登場人物を増やす意味があまりない。足し算の登場人物はいてもいなくてもたいして変わらないけれど、掛け算の登場人物はいなくなったらプロットが成立しなくなったり物語の魅力がなくなったりする。テーマとしては甘酸っぱい恋とかほろ苦い恋みたいに味に例えることもできるので、料理の算数も応用できるだろう。ミステリに恋愛要素を足した甘辛い殺人事件とか、自意識の探究に文明批判を足した塩辛い純文学とか、ポストアポカリプス世界で死闘を繰り広げる苦辛いSFとか、二つの要素なら足し算ができそうである。●ゲームの算数ゲームは足し算の傾向が強くて、オンラインゲームやソーシャルゲームは経験値を貯めてレベルを上げてアイテムやスキンを集めさせることでユーザーが成長して強くなった感じを出したり、ログインボーナスでゲーム内資産が溜まった感じを出してユーザーをつなぎとめている。その一方でローグライク系は良いアイテムを集めても死んだらアイテムがなくなって初めからやり直しという緊張感があるのがウケていて、これは引き算のゲームである。『桃太郎電鉄』は基本的に足し算で資産を増やしていくゲームだけれど、貧乏神が強制的に引き算をすることをイベント要素にしてゲームバランスを調整している。引き算もやり方によっては面白いイベントになるわけである。●番組の算数ラジオは人数が増えると声だけ聴いても誰が喋っているかわかりにくくて足し算はできないので、キャストの人数を最低限にして企画を掘り下げる引き算の番組作りといえる。ラジオはメインパーソナリティーとアシスタントやゲストがいれば一時間くらい会話を途切れさせずにつなげることができるので、キャストは1-2人で十分である。バラエティ番組はキャストが多いほど賑やかな感じになるので足し算の番組作りといえる。企画がしょぼくてもひな段に芸能人を並べて何かコメントをさせて良さそうなものをピックアップして編集すれば尺を稼げるので、企画力がないテレビ番組はたいていひな壇に頼っている。YouTuberも似たようなもので、1人でやるとくだらなくて盛り上がらないような事でもグループ系YouTuberが5-6人でわちゃわちゃやるとリアクションの引き出しが増えて楽しそうに見える。●宗教の算数宗教を広めるにしても、一人づつ説得して教化するのには時間がかかる。そこで避妊を禁止して子供を増やして親と同じ宗教にすれば信徒が増えるし、あるいは異教徒を征服して改宗させれば信徒が急増する。そのやり方で中世のキリスト教やイスラム教は掛け算で世界中に増えていった。現代は人権が重視されて信教の自由があるので宗教戦争で征服した相手を改宗させることはなくなったけれど、それでも結婚と出生への宗教的な干渉は残っていて、統一教会は合同結婚式と避妊禁止で二世三世を信者にすることで信者を増やしたし、モルモン教は一夫多妻制と避妊禁止で信者を増やしている。その一方で原始仏教は引き算の宗教で、個人的な欲や執着を捨てることを目指していて出家した僧侶は子供を持たないし、布教して権力や資産を持つことも目的にしていない。それゆえに出家者は尊敬の対象となって、在家の仏教徒に説法をして悟りに導く代わりに布施を集めて生計を立てられるようになる。●人生の算数人生は学習の連続で、知識や技術の足し算で成長して仕事で生計を立てられるようになる。人脈も足し算で、友人や知人が増えていくほど仕事に有利になる。しかし過去の成功パターンにはまって認知バイアスができたり、人間関係のしがらみにとらわれて身動きできなくなることもあるので、時折アンラーンしたり、悪人との縁を切ったりする引き算も必要になる。艱難辛苦を乗り越えて頑張って生きても死なない人はいないので、最終的には積み上げてきた知識やキャリアや資産とかがリセットされてゼロになる。あるいは人生に何も足すことができなくて生きがいがなくて自殺したり、やけになって他人が積み上げたものを壊そうと無差別殺人をする人もいる。その虚しさにどう対処すればよいのか。ノーベル文学賞を受賞したメキシコの詩人のオクタビオ・パスが『弓と竪琴』で愛は存在の投影であるというようなことを言っていたような気がするけれど、何か他の物に自分の存在を投影して、知識、技術、愛情、人脈、金、志とかの自分が築いた価値を子供や弟子や部下とかに譲渡すれば、価値が一代限りで消えずに受け継がれて文明が発展していく。一度はヨーロッパから消えた古代ギリシアや古代ローマの芸術の技法もルネサンスで再発見されて芸術が再び隆盛したように、直接価値を継承できなくても間接的に継承されることもある。いくら世界の真理を知っていても誰にも伝えずに死んだら文明の発展に寄与しないので、知識を積み上げてきた人は本に書き残して他人に伝えればよいし、いくら金持ちでも使わない金を残したまま巨大な墓を建てるのは無意味なので、金を積み上げてきた人は事業をするなり寄付をするなりして他人に金を渡せばよい。使い道がないお金が余っている人は私にくれるといいよ。ちょっとでもいいよ。●まとめ足し算でマシマシにすると強くなる感じがするけれど、それだとバランスが悪くなりがちで食品や製品や芸術だとかえって欠点になりかねない。引いてみることを選択肢にいれるのも良いと思う。
2024.11.25
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最近は修正なんとか主義とかいろいろ言われているので、徒然なるままに修正について考えることにした。●修正とは何か修正とは、不十分・不適当と思われるところを改め直すことである。どんな計画でも細部まで完璧に想定通りに行うことはできないので、何か間違ったりうまくいかなかったりしたら計画を修正する必要がある。●生物の進化と適応と修正生物は巨大隕石の衝突や大噴火とかで地球の環境が大幅に変わった時に適応できなかった遺伝子を持つ生物は淘汰されて、環境に適応した遺伝子を持つ生物が生き残ってきた。無性生殖で同じ遺伝子をコピーして増える単細胞生物は変化に弱くて全滅しやすいけれど、有性生殖で雌雄で遺伝子を交換する生物はより多様な遺伝子を残せるようになって、環境が変わっても適応して生き延びる個体が出てきて、体が大きく強くなって獲物を捕食しやすいように体の特徴が変化したり、皮膚の色を変えたり毒を蓄えたりして外敵から逃げやすいように変化したり、気温の変化に対応したり、他の種との棲み分けや共生とかができるように変化したり、海から出て陸上で暮らせるようになったりして、遺伝子が徐々に変わっていくことで多種多様な生物へと進化してきた。人間以外の動物は本能によって生きているので自分の意思で変わることはないけれど、人間は自分の体を修正したり環境を修正したり子孫の遺伝子を修正したりできる点に大きな違いがある。現代人は寒ければ厚着をしたり暖房をつけたりするし、灌漑工事をして川の流れを変えて飲用水や農業用水を確保したりするし、婚期の若者は異性にもてるために流行に敏感になって服装や化粧を頻繁に変えたり、顔を整形したりする。他の生物も修正して、時間をかけて動物を交配して遺伝子を変えて家畜やペットとして利用価値が高い品種を作ったり、EMS処理で人工的に突然変異を起こして種子の品種改良をしたりする。・遺伝子の修正の倫理的問題遺伝子治療は病気の治療に役立つ半面で、アスリートの遺伝子研究は遺伝子データで競技の向き不向きが判断されてしまうと差別につながりかねないと問題提起されて研究が停止されたそうな。デザイナーベビーも今は禁止されているけれど、いずれ金持ちが子孫の知能を強化して権力基盤を固めるために遺伝子操作をやると思う。そこから先がどうなるのかはSF的で予想しにくいけれど、安直に考えれば超人的な知能と身体能力を持つ金持ち権力者集団が世界を牛耳るようになって、遺伝子ガチャ頼みの庶民が成り上がって権力構造を覆す機会はなくなるかもしれない。・少子化は修正できるのか植物は自分で移動できないので環境の影響をうけやすくて、標高が高くなると水が凍って水分不足で森が形成されなくなる森林限界があるし、密度が高くなると相変異が起きて小さくなる。昆虫だと密度が高くなると産卵数が減少する密度効果がある。じゃあ人間はどうなのかというと、環境を修正して寒い所に住むことはできても、先進国では出生率が減っていて長期的に見たら種の存続ができなくなりつつある。フランスでは移民2世や3世の女性は1世よりも子供を産まない傾向だそうで、これは単に宗教で避妊を禁止しているとかの個人的な思想だけで出生数が決まるというより、年収や部屋の広さや家賃や電車の混雑具合や治安や福祉とかの社会的な出生限界とでもいうような子供を産みたくなくなる諸条件があるのかもしれない。都市部では仕事はあって教育水準も高いけれど、部屋が狭くて家賃が高くて治安が悪くて子育てに向いていない。都市部の混雑が嫌な人は田舎に引っ越せば広い家に安い家賃で住めるけれど、仕事があまりなくて低い収入になって教育水準も低いので子供を産みたくなくなる。都市部に賃料が格安で家族で住める国営アパートを作ったら子供を産みやすくなるだろうけれど、それだと資本主義国家では民業圧迫になるので現実にはやれないだろう。庶民の収入を増やして少子化を改善することと金持ちの資産を増やすことのどっちが大事かと言うと、資本主義だと後者のほうが大事なので、資本主義を修正しない限り必然的に少子化になるのだろう。●脳の修正・認知や行動の修正脳はエネルギーを消費するので、なるべく省エネにしようとしてどうでもいい情報を無視しようとする。アナログ時計の針の音や雨音のように危険がないと判断した刺激に慣れて徐々に反応しなくなるのを馴化(じゅんか)という。子供が親に何度も遊んでないで勉強しろと叱られても聞き流すようになるのも馴化である。同じ行動に慣れて意識しなくてもタスクをこなせるようになることを自動化という。何かに興味を持つとその情報を認識しやすくなるのをカラーバス効果と言って、逆に興味がないことを認識しなくなるのはスコトーマ(心理的盲点)という。養老孟子が『バカの壁』で指摘したのもスコトーマと似ていて、知りたくないことの情報を自主的に遮断して、わかったつもりになってそれ以上知ろうとしなくなる。このように脳が無意識に認知や行動を修正することでいろいろな問題が起きているので、無意識の認知バイアスを自覚して意識的に認知を修正して、自動化された行動や思考パターンを変える必要がある。ただし自分で自分の認知バイアスに気付くためにはメタ認知能力が必要で難しいので、教師やメンターとかの他人に指摘してもらって修正するのがよい。例えば工場の労働者は最初は慎重にマニュアルを確認しながら作業していても慣れてくると作業を自動化するようになって注意が散漫になって雑談やよそ見をしながら作業して事故を起こすけれど、本人は危ないことをしている自覚がないので、安全管理者が客観的な視点から指導したり、人間の認知に頼らずにセンサーで異常を感知して知らせたりする。自動化は注意を促せば修正できるけれど、バカの壁は修正しにくい。そもそも相手があまり興味をもっていない話題に対して間違いを指摘したところで、バカの壁に阻まれて無視されてしまうと意味がないのである。財政破綻論がバカの壁の典型で、個人の銀行預金を集めて国債を買っていると信じて国債発行額が増えるといずれ銀行が国債を買えなくなるんだという論法で財政破綻論を唱えているザイム真理教信者が未だにいるけれど、2022年3月15日の参議院財政金融員会で西田昌司議員の質問で日銀の担当者が銀行の新規国債は日銀当座預金で買っていると答弁しているので、国民から銀行預金を集めて国債を買っているわけではなくて信用創造で国債を買っていることが既に明確になっている。2023年1月24日の参議院本会議の大島九州男議員の質問で岸田文雄は「国債は政府の負債であり、国民の借金ではありません」と答弁しているので、国債が国民の借金ではないことが明確になっている。経済を知らない人は赤字だと破綻すると誤解している人もいるけれど、赤字続きの企業でも株を売ったり融資を受けたりしてキャッシュフローがあれば倒産しないし、帳簿上は黒字の企業でも売掛金を回収できなかったりしてキャッシュフローがなくて買掛金の支払いや従業員の賃金の支払いが不能になれば取引を続ける企業や従業員がいなくなって事業を続けることができなくなって倒産する。このように破綻は資金繰りができなくて債務を返済できなくて組織を運営できなくなることを言うけれど、通貨発行権がある国が自国通貨建て国債の償還ができなくなることは論理的にありえない。それでも国債発行の仕組みに興味がない人たちは知識をアップデートしないので、相変わらず膨大な借金で大変だー財政赤字で大変だーと財政破綻論を言っている。最近JNPC(日本記者クラブ)の「巨大地震を考える」(1)という動画を見ていたら、1:16:35ころに千数百兆も借金している国でみんなで頑張るしかないのだから行政は頑張っている人は助けるけど頑張らなかった人は助けられないと言うべきだというような財政破綻論に基づく自己責任論の選民思想を言っていたのであきれてしまった。教授の肩書を持っていて人を助ける学問を研究しているはずの人でさえ公的な場で選民思想を言えてしまうところにバカの壁の危険性がある。この考えで小さな政府を目指すと日本は滅亡に向かう。犯罪が多発しても予算がないから防犯意識が低い人は助けなくていい、伝染病が蔓延しても予算がないから健康管理ができない人は助けなくていい、不景気でも頑張っている企業は利益を出しているのだから頑張らない企業は補助金で助けなくていい、スキルがなくて転職できない労働者は努力不足だから助けなくていい、能登みたいな田舎に住んで古い家で耐震工事もしていない被災者は自己責任だから助けなくていい、とあらゆる分野で予算を盾にして国民を切り捨てていけば、貧困層は福祉がない中で生きるために犯罪をするようになって、中間層もどうせ政府が助けてくれないなら税を払う意味がないじゃんかと脱税をするようになって、金持ちの財産を守るために薄給で命を賭けるのはばからしいと警察官や自衛官のなり手がいなくなって、金持ちはこんな危ない国には住んでられねえやとタックスヘイブンに移住して、国民同士が助け合わなくなって次第に国が統治できなくなるだろう。財政破綻論の間違いは単なるマニアックな経済学の話題として扱うのでなくて、国の未来のために間違った貨幣観を修正する必要がある。・修正が難しい問題もある知識が間違っている場合は間違いを修正しやすい。しかしギャンブルや犯罪で成功体験を得てうれしくなったり、薬物で無理やり脳内物質を分泌させたりして報酬系の異常が起きると、社会的に好ましくない行為に依存する問題が起きる。あるいは強迫性障害で確認や手洗いとかを繰り返したり、発達障害で思い込みや固執が激しかったりして生活に支障が出る人もいる。理屈では悪い事や間違っている事に対する認識や行動を修正する方がよいとわかっていても、脳内の異常が原因のばあいは修正が難しい。前科者の社会復帰を支援する団体で共同生活したり、精神科に通院して投薬や認知行動療法の治療を受けたりして、数か月から数年の時間をかけて認知や行動を修正していく必要がある。●なんとか主義の修正初期の資本主義は問題だらけで、児童労働や長時間の重労働による労働力の搾取が行われて、工業化で効率がよくなったぶん失業者も大量に生まれて、ロンドンでは4ペニーの棺桶や2ペニーのすわり宿とかの劣悪なホームレス用の宿屋があったほどだった。それで労働組合や労働者を支持基盤にする政党が生まれて、徐々に法律が整備されて解雇規制や最低賃金や失業保険や有休や育児休暇の制度ができて労働環境が改善されていって資本主義が修正されてきた。修正資本主義のように修正なんとか主義と名乗らなくても、いろいろな主義は徐々に修正されている。例えば中国共産党がソ連と同じ計画経済をやろうとしたら同じ失敗をしただろうし、実際に毛沢東はいろいろ失敗したけれど、経済政策に対しては1978年に鄧小平が改革開放をして資本主義を取り入れて一部の経済特区で外資を受け入れて、中央集権と言論弾圧は共産主義のままで反乱分子を粛清して、ある程度共産主義を修正したからこそソ連とは違って中国は世界の工場として経済成長して豊かになった。需要や在庫や原料費は国外の要因でも変動するので、自国で計画した通りに淡々とやるのではだめで状況に応じて経済政策を軌道修正する必要があるけれど、経済に疎い習近平が強権を持ってからは修正が効かなくなって、不動産バブルがはじけて外資もスパイ容疑での逮捕を恐れて中国から引き揚げて不景気に突入して自滅している。●宗教の修正戒律や経典がある宗教は後世の人が勝手に書き換えるわけにはいかないので修正しにくい。そこで教義に忠実な原理主義を貫くか、解釈を変えて分派するか、世俗化するかでその後の発展性が違ってくる。中世のキリスト教ではジョルダーノ・ブルーノとかの聖書と異なる説を言う優秀な学者は異端者として処刑されて仮説を言うことさえできなくて科学の発展が阻害されてきたけれど、カトリックが腐敗して新教に分派してカトリック教会の権力がなくなって世俗化していくにつれて自由に仮説を言って検証できる啓蒙主義に移行して、プロテスタントと産業主義は相性がよくて科学が発展するほど工場が儲かったので科学が急速に発展して欧米が近代化して白人が世界を席巻した。イスラム教もキリスト教と同様に原理主義が発展を阻害しているけれど、トルコのように政教分離して世俗化した国もある。第一次世界大戦の敗戦後にトルコ革命を起こしてオスマン帝国を打倒してトルコ共和国を建国した初代大統領のムスタファ・ケマル・アタテュルクが宗教と政治を分離しなければトルコの発展はないと考えたのは正しかったわけで、世界のネタ帳の「中東の名目GDP(USドル)ランキング」によると中東ではGDPが一番高い。トルコは石油資源がなくても自動車部品とかの製造業や農業や観光業とかで繁栄している。サウジアラビアも石油に頼りっぱなしではだめだと言うことで産業を育成していて世俗化しつつあって、女性が男性と同じ職場で働けるようになりつつあるようである。サウジアラビアで日本のアニメが人気なのも世俗化と無関係ではないだろうし、偶像崇拝の禁止で視覚的面白さを追求したコンテンツが乏しかった状態でアニメを見たらはまったのだろう。アゼルバイジャンもシーア派ムスリムが多いけれどソ連時代に世俗主義になったようで戒律が緩くて飲酒の制限がないようだし、2003年にイルハム・アリエフが大統領になったのを境に経済成長し始めて、最近はトルコと天然ガスの供給契約をして天然ガスのハブになることを目指していて、ロシアを介さないヨーロッパへの天然ガスの供給ルートなのでヨーロッパの投資も集めている。トルコと対照的にイランは1978年のイラン革命でイスラム法に基づく宗教国家になって、道徳警察がヘジャブを適切につけていない女性を殴り殺したことでデモが起きて国際的に批判されている。ナイジェリアは人口が多くて経済成長を期待されている一方で、イスラム原理主義のボコ=ハラムが女性を教育する学校を襲撃して発展を阻害している。パキスタンもインドと明暗が分かれて、日本の倍の2億3580万の人口がいてもアフガニスタンと接しているだけあってイスラム原理主義の影響が大きくてテロがたびたび起きて外国人が狙われるのであまり発展しない。パキスタンで音楽が弾圧されて衰退して音楽家の仕事がなくなって、シタールやタブラとかの古典楽器を使う伝統音楽家がジャズに転身して海外進出しようとする様子は『ソング・オブ・ラホール』というドキュメンタリー映画になっているけれど、これはサクセスストーリーの美談というよりは苦肉の策で本来の音楽のスタイルを修正しなければ仕事ができなかったわけで、音楽家がみんな海外進出できるわけではないので自国で音楽が迫害されずに栄えるにこしたことはない。このようなイスラム原理主義者が多い国は排他的で異教徒の外国人を迫害していて外資が進出しないし、女性の教育や就労も制限されて人口が多い割には高度な知識や技術がある人が少ないので、経済、技術、文化などのあらゆる点で発展が遅れる。日本は神道と仏教が主な宗教で、神道は境内で殺生を禁じるとか以外には特に戒律がないし、仏教は口伝で広まって経典がいろいろあって経典同士が矛盾したり宗派によって解釈が違ったりするせいか原理主義になりにくくい。それが幸いして特に宗教的価値観を修正する必要がなかったので、学問への宗教的な弾圧がなくて中国やヨーロッパの優れたところを取り入れてすんなりと近代化して文化や科学や経済が発展した。●製品の修正家電とかはいったん売ってしまったら修正ができないので、発売前にいろいろテストしたりして開発に時間がかかるし内部失敗コストもかかる。開発している間に同業他社に先に特許を取られたり、あるいは申請中の特許を真似されて類似製品を作られたりする問題もある。その一方でソフトは後で修正がきくので開発からリリースまでの期間が短くなって稼ぎやすいので、パソコンやスマホとかの家電を作る日本や中国の製造業よりもアプリやクラウドサービスとかを売るアメリカのIT企業が儲かっている。バグやセキュリティリスクが判明したりした場合はその都度アップデートしてパッチを当てて不具合を修正するやり方なので、製品が壊れていなくて動作してもサポートが終了して不具合の修正ができなくなった時が製品の実用面での寿命で、サポートが切れたパソコンやスマホはオフラインでは使えるもののあまり使い道がないし、セキュリティリスクがあるままインターネットに接続するとハッキングされる可能性があるので買い替えるほうがよい。●芸術作品の修正芸術ではどの時点を作品の完成とみなすのかは曖昧である。顧客がいる作品は顧客が満足するまで修正するし、顧客がいない作品は作者が満足するまで修正する。例えばレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」は何度も修正されてきて、最初は眉毛とまつ毛があったのに修正されている。作者は自分で満足するところがわかるけれど、素人の顧客がどの程度で満足するのかはわからないのが問題で、最近はホロライブというVtuberを運営しているカバーという会社がイラストや3Dモデル製作などを委託している23人の下請け事業者に計243回の無償やり直しを要求して公取委が下請法違反で勧告した。こういうのはやりがい搾取の労働力ダンピングになって業界ごと潰しかねないので、無料で修正する回数を決めて、無理な要求は断るべきである。エログロとかの過激なコンテンツは社会的な倫理観に基づいて適正な範囲に収まるように黒塗りしたりモザイクを入れたりして修正されることもある。ポリコレも芸術の倫理観を修正しようとする試みだけれど、クリエイターが何かを表現したくて作品を作っていない場合は共感を得られないのでたいてい失敗する。開発期間8年で100億円かけたConcordというゲームはポリコレ基準の不細工でもっさりしたエイリアンみたいなキャラクターだらけで魅力がなくて売れなくて11日でサービスを停止して明らかな失敗例になった。ディズニー映画もポリコレ色が強くなって世界中でディズニー離れが起きているそうな。フィクションでの美化を否定して不細工をありのままに描くという創作姿勢は芸術だとロマン主義からリアリズムに移行するときに起きたけれど、大衆向けの商業作品でそこにこだわってもそれは大衆が求めているものとは違うので売れなくて当然である。もし『タイタニック』が美男美女のラブロマンスでなくて太った不細工なおっさん同士のブロマンスだったらプロットが同じでもヒットしないだろうし、ポリコレ作品を作るのは自由だけれどそれを受け入れることを視聴者に強制することはできない。●選挙と政策の修正科学的な真実は独裁者や宗教の権威が決めるものではないし、民主主義で多数決で決めるものでもない。民主主義でも間違うことはあるし完璧なシステムではないけれど、民主主義国家で定期的に選挙があるのは政策の修正の機会といえるし、そこが権威主義国よりも良い点といえる。こないだ石破総理が国民の信を問うと衆議院を解散した結果、自民党が比例票を500万票減らして大敗してそのぶん現実的な経済政策を掲げる国民民主党が20-40代の若者の支持を受けて躍進して、積極財政策を支持するれいわや参政党や保守党も議席を獲得した。自民党と公明党は過半数を維持できなくなって強行採決ができなくなって、法案を通すには野党を支持する国民の声も聴かざるを得なくなった。国民民主党の政策は正論で、ガソリン税にさらに消費税をかける二重課税はおかしいし、ガソリンの元売りへの累計6兆円の補助金は出してきたのにトリガー条項で年5000億円の減税するのを財源がないといって拒むのもおかしい。いきなり消費税減税を言っても与党の反発が大きいので、まず明らかにおかしい所から改善していくのはよいやり方である。マスコミの財政破綻論に洗脳されなかった若者が積極財政策を掲げる政党を支持してようやく積極財政への転換の兆しが出てきて、次の参院選でも積極財政派が支持を伸ばすようならいずれ消費税の減税や廃止にもつながると思う。こないだのアメリカの大統領でトランプが大差で勝利したのも民主党政権の答え合わせ的な側面があって、民主党の政策ではインフレで庶民の生活が苦しくなったので、自分の生活を守るためには嫌いなトランプに投票してでも政策を修正しなきゃいけないと思ったアメリカ人が多かったのだろう。不法移民は厚遇して高級ホテルで無料で暮らせて1万5千ドルの給付金ももらえるのに、アメリカ国籍がある貧困層はインフレで学費が払えなくて低学歴で仕事を見つけにくくて不法移民が増えたのに住宅建築が追い付かなくて家賃が高騰してホームレスになっても補助を貰えなくて、病院に行けない若者がフェンタニルとかの鎮痛剤や麻薬に依存して年間で10万人くらい死亡しているのは国の対応としておかしい。苦しんでいるアメリカ人の同胞は助けないのに遠くにいる不法移民やウクライナ人やイスラエル人は助けたがって善人ぶるところにリベラルの欺瞞があるので、格差の頂点にいる大富豪の意識高い系セレブたちがハリスの支持を表明しようが庶民には響かなかったようである。日本で間違った政策をやってもアメリカのようにすぐに選挙で修正されなくて何十年も失われっぱなしなのは、言葉の仕組み自体が違うからかもしれない。英語のようなスル的言語では、誰かが何かをするからそういう結果になったのだと動作する個体を認識する。バイデンが不法移民を歓迎するから不法移民が増えて家賃が上がった、バイデンが不法移民に給付金をあげるからインフレになった、と動作主の行為と結果がセットになっている。ところが日本語はナル的言語なので、不景気になる、生活が苦しくなる、という言い方をして動作主をとらえずに全体の出来事をとらえようとして、その結果に至るまで誰が何をしてきたのかという因果関係が不明である。増税による不景気や生活苦は自然災害じゃないのだから辛抱していればいつか災いが過ぎ去って景気が良くなるわけではないし、誰が何をやってきたのかを明確にして、財政破綻論に基づいて不景気なのに増税するような科学的に間違った政策をしてきた政治家は批判して選挙で落として政策を修正しないといけない。間違った経済政策を主導してきた自民党が大敗して経済に疎い石破政権が短期で終わりそうなのは良いことだと思う。
2024.11.12
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