話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2014年01月13日
XML
カテゴリ: ワインコラム

IMG_20140111_193101.jpg
正月休みに仕込んだボジョレーの「イージーパック」の飲み比べをしてみました。
40℃のお湯の中に1週間浸しっぱなしだったパックと、セラーに保存していたパックの飲み比べ です。
外部からの酸素の供給がないこの容器で劣化が認識されないようなら、 熱劣化の主原因は外部からの酸素の侵入 と断じてよいと思います。明確な劣化が見られるようなら、 外部からの酸素の流入がなくてもワインは熱で劣化する 、ということになります。
平野さんの45℃×5日間の検証では、明確な劣化が見られた、とのことでした。今回の私の実験では40℃×7日間で実験終了後1週間寝かせています。

ロブマイヤーのバレリーナVグラスに注いでみると、色調の違いはほとんど感じられません。ちなみに左側が40℃湯煎。
IMG_20140111_194949.jpg

ということならと、カミサンに協力してもらって、グラスの脚の裏にそれぞれ「セラー」「40℃」というシールを貼って、 私自身もブラインドで飲んでみました。

*1番目のグラス(右)
フレッシュなラズベリーやイチゴ、キャンディ、バナナ。チープだがわかりやすいボジョレヌーヴォーの香り。


*2番目のグラス(左)
重心が低く香りは大人め。赤系果実に少し黒系が混じる感じ。といって雑香はない。こちらのほうが味わいにコアがあり、果実味がしっかりと厚みがある。
1杯目と比べると、華やかさでは劣るが味わいにしっとり感やミネラリーな要素が感じられる。


1番目のグラスも単体で飲めば問題はない。というか一般に想像するとおりのボジョレ・ヌーヴォーの味わい。しかし2番目と飲み比べると、後者のほうが味わいにコアがあってしっとりした感じがする。ということで、2番目がセラー保存の通常のパック。最初のほうが40度湯煎。

→正解。
(ふぅ。)
しかし正直なところ、両者の選択をこんなに迷うと思いませんでした。 危うく間違えるところでした。 繰り返しますが、 片方は1週間ぶっとおしで40℃の温度下に置かれたワイン ですよ。

味わいのベクトルは全く違います。40度保存の方は香味が良く開いていて、相応に熟成が進んだ感じです。マニア目線の優劣で比較すれば、果実味にしっかりとコアの残っているセラー保存の方が好ましいことも確かですが、では40℃湯煎のグラスが劣化しているかと問われれば、セラー保存との間に違いはあったにしても、 一般論としてこの香味を劣化ワイン扱いするのは無理がある と思いました。テクスチャーのザラつき感やギスギス感、エグミ、ジャミーな果実、構造のフラット感などの熱劣化特有の要素はほぼ全く感じられませんでした。

ちなみに、ふだんワインを嗜まないカミサンにブライドで出題して「どちらが美味しいか?」を選ばせたところ、 案の定、40度湯煎の方のグラスの方を美味しいと答えました


1.40℃か45℃かの違い
2.平野さんの実験では、毎晩平温に戻した(激しい温度変化に晒された)のに対して、私の実験は7日間ずっと40℃だった
3.平野さんの比較試飲は湯煎の直後。対して私の実験は実験の1週間後
4.熱劣化に対する平野さんと私の認識やハードルの高さの違い

といったところです。個人的には 3番目の要素が大きいのでは
4の要素もあるとは思いますが、前回の平野さんの実験結果のメールにはこう書かれていました。
>正常なものと比較すると、 香りが消失して、味覚的には、果実味の豊かさが失われてエグミが前面に出ていました。
後者は、あきらかに熱劣化といる症状でした。


今回のワインでは、香りの消失は全くなかった(むしろ逆)ので、やはり飲んだ時期の違いが大きいのかなと。
温度変化がトリガーとなって、液体内でラジカル反応が起こったとすれば、その直後は液体の組成は荒れた状態になっていることは十分想像できます。しかし、その後しばらく落ち着かせることによって内部の反応が収まれば、いったん結合が解かれたり好ましからざる結合をしてしまった分子もその多くが元の鞘に納まるのではないかと。もしこの時、外部から酸素が流入していれば、それらは酸素と結合してしまい、元には戻らず、状況はむしろ悪化していたことでしょう。そしてその違いは時間が経過すればさらに大きな爪痕になるはずです。

ということで、あと2セット残っているので、次回は1~2ヶ月後、次々回は半年後をメドに追試をしてみたいと思います。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2014年01月20日 09時44分34秒
コメント(4) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:外部からの酸素なしでワインは劣化するかの検証~1回目(01/13)  
smire さん
楽しく拝見させております。堂々巡りになりますが、この実験をコルクキャップやると、ネガティブな劣化が起るのでしょうか?? (2014年01月13日 15時24分28秒)

Re[1]:外部からの酸素なしでワインは劣化するかの検証~1回目(01/13)  
shuz1127  さん
smireさん、こんにちは。

>楽しく拝見させております。堂々巡りになりますが、この実験をコルクキャップやると、ネガティブな劣化が起るのでしょうか??
-----
確かに今回の実験はコルクとの比較ができないのが痛いです。
自分の頭の整理も含めて、今一度考えてみたいと思います。
750mlのボトルですと、10℃←→40℃の温度変化によって、
中の液体は5.7ml膨張と収縮をすることになります。(水の密度に置き換えて計算)

きた産業さんの資料によると、天然コルクは中から圧力をかけると45%は漏れてしまう(ちなみにその2/3はコルクと瓶の間から、1/3はコルク栓を通過して、だそうです)とのことなので、
5.7×0.45=2.565mlの空気が出入りすることになり、
2.565ml×0.2=0.513mlの新たな酸素の流入を許してしまうことになります。

この数字は一見少なく見えますが、ワインに含まれている酸素の量が通常1.1~1.4ml程度、通常のコルクの酸素透過量は0.2~0.5ml/月(良質なコルクはそこから桁一つ小さい場合も)なので、数か月分の酸素が一瞬にして流入してしまうことになります。

いや、その前に、そもそも5.7mlも膨張すると、かなりの確率でワインは「噴いて」しまいますね(一般的なヘッドスペースは5.95mlとのことですが、ブルなどではずっと少ない場合が多い)。その場合、噴いた分に相当する空気が流入するだけでなく、外気との流路を作ってしまうことで、さらに状況は悪くなると思われます。

そんなわけで、通常のボトルが40℃の熱に晒されれば、今回の実験結果にはない、酸素流入による影響があるのではないか、さらに平野さんの実験のように間毎晩30度の温度変化を繰り返せば、空気の流入量は何倍にもに増えるので、もっと大きな変化になるのではと想像します。


(2014年01月13日 16時28分30秒)

Re:外部からの酸素なしでワインは劣化するかの検証~1回目(01/13)  
ブルラヴァー さん
いつも大変興味深い記事をありがとうございます。

先述いたしましたが、「台風停電は毎年あって当たり前」という沖縄に住んでいる関係上、停電時の熱劣化対策は非常に悩ましい問題でした。

沖縄で名の知れたフレンチのレストラン、ワイン店等セラーを持っている業者に聞いても、「自家発電はコストがかかりすぎ現実的でなく、停電が予想されるときはあらかじめ半解凍状態の保冷剤をたくさんセラー内に入れて、扉を密封しています。丸2日停電も何度もありましたが、最悪でも30度以上になるのは避けられています。」とどこも非常に正直におっしゃいます。(他に手がない)

私も菊屋大久保さんのコラムなどを見て、酸素遮断をすれば熱劣化の程度を軽減できるのでは、という予想を立てていました。一番いいのは全てのワインのキャップシールを取って、全て蝋封してしまう事だと思ったのですが、やり方や蝋の素材等々、ダメージを与えずに上手く蝋封できる手順などの情報がなく、リスクを考えて諦めました。

苦肉の策で、現在我が家では最も酸素透過率が低い素材のサランラップを、シール部に何重にも巻いて、セラー保存しています。(何もしないよりはましになるんじゃないかと…)

今回の記事を読んで、方法論としてはあながち間違っていない期待感を頂きました。非常に感謝しています。
脱酸素パックの導入を本格検討したいと思います。 (2014年01月14日 21時50分21秒)

Re[1]:外部からの酸素なしでワインは劣化するかの検証~1回目(01/13)  
shuz1127  さん
ブルラヴァーさん

過分なお褒めの言葉をいただき、ありがとうございます。停電対策はたしかに深刻ですよね。
ただ、脱酸素パックで長期セラー保存する場合、還元のリスクや熟成の仕方に影響が出る可能性をまだ排除しきれていないので、そのあたりは自己責任でお願いできればと思います。私もひきつづき検証を続けていきたいと思います。
(2014年01月15日 12時29分47秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Comments

shuz1127 @ Re[1]:Ch.リヴェルサン2018(10/16) Henryさんへ おお、オーメドックいろいろ…
Henry@ Re:Ch.リヴェルサン2018(10/16) 私も最近、オー・メドックを愛飲してます…
shuz1127 @ Re[1]:家族でトゥールダルジャン(09/25) Henryさんへ こんにちは。グランメゾンに…
Henry@ Re:家族でトゥールダルジャン(09/25) 大変貴重な現地レポートありがとうござい…
shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…

Category

カテゴリ未分類

(7)

お知らせ・リンク集

(21)

ワイン新着情報

(467)

ワインコラム

(342)

ワインコラム2(話飲徒然草拾遺集)

(74)

ワインコラム3(RWGコラム拾遺集)

(28)

都内近郊散策

(226)

こんな店に行った

(303)

B級グルメ・カフェ

(244)

健康

(198)

エッセイ

(69)

ひとりごと・備忘録

(525)

カミサン推薦ネタ

(28)

語学・資格・学び直し

(82)

山歩き・ハイキング

(122)

アクアリウム・ガーデニング

(339)

育児・教育

(88)

PCネット時計カメラ

(122)

音楽・オーディオ

(69)

リフォーム引越し

(49)

こんなワイン買った

(128)

ボルドー

(97)

ブルゴーニュ・ジュブレシャンベルタン

(90)

ブルゴーニュ・モレサンドニ

(40)

ブルゴーニュ・シャンボールミュジニー

(45)

ブルゴーニュ・ヴォーヌロマネ・ヴジョ

(56)

ブルゴーニュ・NSG

(58)

ブルゴーニュ・その他コートドニュイ

(63)

ブルゴーニュ・コルトン・ポマール・ヴォルネイ

(30)

ブルゴーニュ・ボーヌ周辺

(56)

ブル・ピュリニー・シャサーニュ・ムルソー

(21)

ブルゴーニュ・その他コートドボーヌ

(26)

ブルゴーニュ・裾モノイッキ飲み!

(218)

ブルゴーニュ・その他地域

(34)

ボジョレー再発見プロジェクト

(32)

シャンパーニュ

(194)

ロワール・アルザス・ローヌ

(53)

その他フランス

(15)

イタリア

(76)

スペイン・ポルトガル

(36)

ニュージーランド・オーストラリア

(49)

USA

(40)

安泡道場(シャンパーニュ以外)

(37)

その他地域・甘口など

(39)

日本ワイン

(56)

ワイン会・有料試飲

(173)

Favorite Blog

ミシェル・グロ リ… New! mache2007さん

KTR New! musigny0209さん

雨に濡れた箱根『ニ… New! ささだあきらさん

キャピタン・ガニュ… hirozeauxさん

SRAMのダブルタップ… busuka-sanさん

10月のワイン yonemuさん

月一会 ミユウミリウさん

ワイン&ジョギング … Char@diaryさん
道草日記  旅・釣… 道草.さん
鴨がワインしょって… うまいーちさん

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: