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皆様お元気ですか・・・?
今日お話ししたいとおもっているのは、「ハワイのグルメ」についてです。
リム
海藻を、ハワイ語で「リム」と云います。海岸近くの岩場に多く見かけますが、ハワイの海岸で「磯の香り」を感じたことは、めったにありません。冷たい海に繁茂する昆布のような海藻が波打ち際に流れ着き、香りを発することが無いからなのでしょうか。
ハワイの島々で良く見かける海藻は、日本で「オゴ」とか「ウゴ」と呼ばれる種類に似ていて、色は鮮やかな紅色や赤茶色、薄緑で、生のまま食卓に出されます。少し塩分を含んだその味は、日本のものにも似て、美味しく感じます。小魚や貝類、蛸、ナマコ等と共に、昔は海辺の岩場で簡単に取れたのでしょう。引き潮になると、子供達も海に潜ってリムや雲丹(ウニ)を取ったそうです。ハワイアンの人々にとって、常に食卓に並ぶ食物の一つでした。
ホノルルのダウンタウンの鮮魚店などに行くと、「リム コフ」と呼ばれる比較的高価な海藻が売られています。最近はカウアイ島で取れる物が好まれて店に並んでいます。リム コフは、小さな「とこぶし」に似た「オピヒ」と呼ばれる一枚貝と同じように、太平洋の荒波が容赦なく打ち付け、白い波吹雪となってはじけ飛ぶ、素人には近づき難い岩場に生えています。
あるハワイ文化を紹介している本に、西欧風の食卓が一般的になる前の、ハワイの高貴な女性の食事の情景を見つけました。屋外に「ハラ」=パンダナスの葉を編んで作った横長の大きな敷物「ラウハラ」を敷き、新鮮なバナナの葉を食卓代わりにして、大小の木の器に盛られた、イムで蒸し焼きにした魚や「ウル」=スイート ポテト、「ニウ」=ココナツの汁と共に、味付けされたリムが丸い木の器に入れて置かれています。女性は、正座ではなく、足を崩して横座りでラウハラの上に座り、一口づつ指で摘まんで、ゆっくりと食事を楽しんでいます。
この食事の情景に男性の同席は見られません。「アイ カプ」と呼ばれるポリネシアの社会規範で、男女が共に食事をしなかった事が分かります。男性は、別の場所に集まり胡坐をかいて座り、イムで蒸した豚や魚と共に、ポイを人差し指と中指を使ってすくい、口に運びます。そして、男女を問わず、食べ物を入れた皿の他に、木製のフィンガーボールが置かれていて、食べ物やポイが付いた指を清めています。食事中にボールに入れた水で指を洗うのは、ポリネシアの中でもハワイだけの独特な習慣であったと聞いています。
因みに、アイ カプの制度は、カメハメハ大王が亡くなってすぐ、長男のカメハメハ二世が王家の女性と食事を共にした事が切っ掛けで崩れ去ります。その後のハワイは、男女が共に食事をする社会に変化していきました。この出来事は、西欧化の波が大きく押し寄せる事を予告するかのように、1822年春にキリスト教の宣教師が来島する直前、ハワイ島カイルア コナの町で起きました。
リムは、その素朴な味わいが人々に好まれて、現在のハワイの食卓にも並びます。生の鮪や蛸の切り身とリムを混ぜ合わせて塩や醤油で味付けした新鮮な「ポケ」は、海外からハワイを訪れる方々にも人気の料理の一つでしょう。ポケは元々ハワイ語で「切り身」を意味します。最近は採るのが難しくなったオピヒも、お酒を好まれる方にはお勧めの品です。
日本から移民としてハワイに渡った人々の中に、沖縄の方が多く居られます。沖縄料理の汁物に使われる昆布や、都会では最近あまり見かけなくなった煮しめ等、ハワイには日本の家庭の味が今でも残されています。
健康を保つのに不可欠な食べ物「リム」は、ハワイアン料理にも日本料理にも欠かせない食材です。ハワイは、米国の五十番目の州ですが、米本土とは別の文化と歴史を今も残す島々です。ハワイの食文化は、ハワイアンの伝統を守りつつも移民の歴史と共に新しい形を生み出してきました。そして、日本の海苔なども盛んに使われるパシフィックリム料理は、その一番新しい型なのでしょう。
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