全337件 (337件中 101-150件目)
今月の「県労会議」という機関紙に投稿した映画評です。 「1987、ある闘いの真実」 今年1月号で光州事件を扱った映画「タクシー運転手」を紹介しました。今回はそれから7年後の1987年ソウル市内が作品の舞台です。全斗煥大統領の独裁は頂点に達していました。あの外国人記者が撮影したと思われる軍隊の市民殺戮映像が、作品の中盤、大学の新入生歓迎企画で流れます。新入生のヨニ(キム・テリ)は普通の若者として登場し「デモなんかしても世界は変わらない」とうそぶきます。それに対してイケメンの大学生(カン・ドンウォン)は「僕も初めは逃げた」「でも(反対運動を止めることは)出来ないんだ。胸が痛くて」と答えるのです。 この若者の名前は、最後まで巧妙に伏せられていました。なぜならば、日本人は先ず知らないけれども、韓国ではかなり有名な人物で、名前がわかればその時点で後半部分のネタバレになるからです。 冒頭では1987年1月に、これも韓国では有名なソウル大学生パク・ジョンチョルが、対共分室刑事(アカ狩を専門にする集団)によって拷問死される事件が起きます。無法に市民が殺され、人権が犯されている。活動家は言います。「我々に残された武器は真実だけです。それが政権を倒すのです」検事(ハ・ジョンウ)、医師、新聞記者、刑務所看守(ユ・ヘジン)、刑事、活動家(ソル・ギョング)、神父へと次々と真実のバトンが手渡されて行きます。決定的な真実が明るみになり、最後にはあの延生大学生が催涙弾に倒れたところで、闘いは大きな転換を迎えるのです。 去年の秋に、私は韓国に行きました。そしてパク・ジョンチョル記念館で当時のままに残された対共分室拷問部屋を見学、あの延生大学生の遺物を展示しているイ・ハニョル記念館に行き、遺された運動靴を確認してきました。その記念館で、繰り返し「30年経ったいま」とテロップが入ったビデオが流されているのです。2017年朴槿恵大統領を平和裡に失脚させたろうそくデモの映像です。時の政権が間違った事をすれば、市民が倒す。それを実現させたのは、正にこの1987年の血で勝ち取った成功体験があったからだという事を、私はひしひしと感じました。勇気をもらいました。 主要登場人物で唯一の架空の女学生ヨニは、最後には政権打倒のために拳をふります。イ・ハニョルのために集まった100万人以上の集会の映像も映されました。見事な社会派、見事なエンタメ。韓国映画の真骨頂でした。(20189年チャン・ジュナン監督作品レンタル可能)
2019年07月19日
コメント(1)
後半の三作品を紹介します。「空母いぶき」佐藤浩市アベ揶揄表現は、むしろ反対だった。でも、9条改憲論にも水を差す内容にもなっていた。と、私の書いていること読んでも意味わからんとは思いますが、結論から言えば駄作です。そもそも冒頭で、突然の侵略国家の正体が明らかになるのですが、北とか中国とか描けないのはわかるけれども、あの国はあまりにも非現実的であり、前提条件からして、この作品が左翼からも右翼からも非現実的と言われるのは明らかな作品になっています。速やかに作品自体を忘れ去るのが正しい日本国民の対応だと思う。自衛隊の装備と技術は、素晴らしいものがあって、ホントかなとも思うのですが、もしホントだとしても、これは基本急襲であり、敵があんな間抜けな攻撃しか出来ないのならば、そもそも攻撃しない方がいいでしょう。そういうこともあり、中国の尖閣諸島攻撃を描いていると言われる原作も、私は読むまでもなく絵空事だと思う。(ストーリー)20XX年。日本最南端沖で国籍不明の漁船20隻が発砲を開始し、波留間群島の一部を占領して海上保安庁の隊員を捕らえる。日本政府は、航空機搭載護衛艦いぶきをメインにした艦隊を派遣。お互いをライバルとして意識してきた航空自衛隊出身のいぶきの艦長・秋津竜太(西島秀俊)と海上自衛隊出身の副長・新波歳也(佐々木蔵之介)は、この未曽有の事態を収束しようとする。(キャスト)西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、高嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、石田法嗣、平埜生成、土村芳、深川麻衣、山内圭哉、中井貴一、村上淳、吉田栄作、工藤俊作、金井勇太、中村育二、益岡徹、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市(スタッフ)監督:若松節朗原作・監修:かわぐちかいじ企画:福井晴敏脚本:伊藤和典、長谷川康夫音楽:岩代太郎2019年5月27日ムービックス倉敷★★「居眠り磐音 」豊後藩国許家老奥田瑛二の(ピエール瀧との)代替シーンに、松坂桃李は出演していないが、芳根京子との重要なシーンがある。芳根京子一世一代の迫真の演技と言ってよく、元の映像はどうだったのか、気になって仕方ない。動の木村文乃、静の芳根京子。続編があるとすれば、2人の演技に期待ができる。平成の時代劇ではなく、まるで「キングダム」のような歌舞伎漫画だ。登場人物全員が見栄を切って、見せ場を作る。結果、主人公の磐音は、一度や二度ならずも、5ー6回も立ち会いをする。時代劇としては異常と言って良い。ただし、全員が、それをわきまえた上で節制を持って演技する大人の役者、いわば歌舞伎俳優だった。時代劇ということもあり、こちらは魅せる。また、テーマもいい。全く磐音の本心を知らぬはずの有楽斎が今際の際で「あんたはこの先も人を斬る。そのたびに思い出すんや、竹馬の友を斬った手触りを。地獄やで」といかにも歌舞伎の悪人化粧で言う。磐音は答える。「地獄であることなど、もとより承知じゃ。友のおらぬ世で。愛おしい女に二度と会えぬ世で。生きてゆくなど、死ぬよりも酷ぞ。だが、それがしは選んだのだ。生きることを」さて、決定版ではその後の重要な台詞をカットしている。幸いにも、劇場特典で脚本が付いていた。それで確認してもらいたい。なぜカットしたのか、謎である。(解説)坂崎磐音は、故郷・豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件により、2人の幼馴染を失い、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒を残して脱藩。すべてを失い、浪人の身となった―。江戸で長屋暮らしを始めた磐音は、長屋の大家・金兵衛の紹介もあり、昼間はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働き始める。春風のように穏やかで、誰に対しても礼節を重んじる優しい人柄に加え、剣も立つ磐音は次第に周囲から信頼され、金兵衛の娘・おこんからも好意を持たれるように。そんな折、幕府が流通させた新貨幣をめぐる陰謀に巻き込まれ、磐音は江戸で出会った大切な人たちを守るため、哀しみを胸に悪に立ち向かう―。監督 本木克英出演 松坂桃李、木村文乃、芳根京子、柄本佑、杉野遥亮、佐々木蔵之介、陣内孝則、谷原章介、中村梅雀、柄本明、奥田瑛二[上映時間:121分 ]2019年5月21日TOHOシネマズ岡南★★★★「ゴッドファーザー」1972年作品。パート1の終わりは、1955年くらいだろうか。パート3の終わりは、79年くらいだとすると、マイケルの息子は、最後はかなりいい歳になっていたはず。この作品は、観客すらもアメリカの歴史の中で翻弄された稀有な作品ということになるだろう。どうもおかしいと思っていたら、パート1だけが未見だった。どうりで今まで登場人物たちが頭に入らなかったはずだ。今回かなりスッキリした。これはアメリカマフィアの歴史は、表面上だけで、ほんとは家族の歴史であり、イタリア移民アメリカンの歴史でもあるのだ。(解説)1282年、当時フランスに支配されていたシシリー島の住民が秘密組織をつくって反乱した時の合い言葉だったといわれる“MAFIA”は、19世紀に入り、“犯罪組織”としてイタリアの暗黒街に君臨するようになった。そしてイタリア系の移民として、この組織もアメリカに渡りアメリカ・マフィアが誕生した。その組織はシシリーやナポリ出身者またはその子弟で構成されており、組織の頂点にファミリー(家族)がありボスがいる。アメリカ・マフィアの年収は200億ドルといわれ、ギャンブル、合法企業の金融、運輸、スーパーなどを経営している。「ゴッドファーザー」はそうした巨大なマフィアの内幕を描いたマリオ・プーゾのベストセラーの映画化である。製作はアルバート・S・ラディ、監督は「雨のなかの女」のフランシス・フォード・コッポラ、脚本はコッポラと原作者のマリオ・プーヅォ、撮影はゴードン・ウィリス、音楽はニーノ・ロータが各々担当。出演はマーロン・ブランド、アル・パシーノ、ジェームズ・カーン、リチャード・カステラーノ、ロバート・デュヴァル、スターリング・ヘイドン、ジョン・マーレイ、アル・マルティーノ、モーガナ・キングなど。(ストーリー )コルレオーネ(マーロン・ブランド)の屋敷では、彼の娘コニー(タリア・シャイア)の結婚式が行なわれていた。一族の者を始め、友人やファミリーの部下たち数百名が集まった。ボスのドン・ビトー・コルレオーネは、書斎で友人たちの訴えを聞いている。彼は、相手が貧しく微力でも、助けを求めてくれば親身になってどんな困難な問題でも解決してやった。彼への報酬といえば、友情の証と“ドン”あるいは“ゴッドファーザー”という愛情のこもった尊称だけだった。そして彼の呼び出しにいつなりとも応じればよいのだ。これが彼らの世界であり、その掟だった。ドンのお気に入りの名付け子で、歌手として成功したが今は落ち目になっているジョニー・フォンテーン(アル・マルティーノ)もその1人だった。新作映画で彼にきわめつけの役があり、俳優として華々しくカムバックできるに違いないのだが、ハリウッドで絶大な権力を持つプロデューサー、ウォルツ(ジョン・マーレイ)からその主役をもらえずにいた。フォンテーンの窮地を知ったドンは静かにうなずいた。ある朝、目を覚ましたウォルツはあまりの光景に嘔吐した。60万ドルで買い入れた自慢の競走馬の首が、ベッドの上に転がっていたのだ。それからしばらくしてフォンテーンの許に、その新作の大役があたえられた。ある日、麻薬を商売にしている危険な男ソロッツォ(アル・レッティエーリ)が仕事を持ちかけてきた。政界や警察に顔のきくドンのコネに期待したのだが、彼は断った。だがソロッツォは、ドンさえ殺せば取引は成立すると思い、彼を狙った。早い冬の夕暮れ、ドンは街頭でソロッツォの部下に数発の銃弾を浴びせられたが一命はとりとめた。これはドン・ビトー・コルレオーネに対する挑戦だった。ソロッツォの後にはタッタリア・ファミリーがあり、ニューヨークの五大ファミリーが動いている。こうして1947年の戦いが始まった。末の息子マイケル(アル・パシーノ)は、一族の仕事には加わらず正業につくことを望んでいたが、父の狙撃が伝えられるや、病院に駈けつけ、咄嗟の策で2度目の襲撃からドンの命を救った。ドンの家では長男のソニー(ジェームズ・カーン)が部下を指揮し、ドンの復讐を誓ったが、一家の養子で顧問役のトム・ハーゲン(ロバート・デュヴァル)は、五大ファミリーとの全面戦争を避けようと工作していた。やがてソロッツォが一時的な停戦を申し入れてきた。だがソロッツォを殺さなければドンの命はあやうい。マイケルがその役目を買ってでた。ソロッツォ殺しは危険だが失敗は許されない。彼はこの大役を果たし、父の故郷シシリーへ身を隠した。タッタリアとの闘いは熾烈をきわめ、ソニーは持ち前の衝動的な性格が災いして敵の罠に落ち、殺された。シシリーでもマイケルが危うく暗殺から逃れた。そんななかでドンの傷もいえ、和解が成立した。ドンにとっては大きな譲歩だが、マイケルを呼び戻し、一家を建て直すためだった。2年後、アメリカに帰ったマイケルは、ドンのあとを継ぎ、ボスの位置についた。ファミリーは縄張りを荒らされ、ゴッドファーザーの過去の栄光がかろうじて崩壊をくいとめているという状態だったが、マイケルの才能は少しずつ伸び始め、勢力を拡大しつつあった。ある日曜日の朝、孫と遊んでいたドンが急に倒れた。偉大なるゴッドファーザー、ドン・ビトー・コルレオーネは穏やかな死を迎えたのだった。父の死を受け、マイケルは遂に動き出す。その天才的な頭脳で練られた計画によってライバルのボスたちは次々に殺され、コルレオーネ・ファミリーの勢力復活が為された。マイケルの横顔は冷たく尊大な力強さにあふれ、部下たちの礼をうけていた。“ドン・コルネオーレ”と。(スタッフ)監督フランシス・フォード・コッポラ、脚本フランシス・フォード・コッポラマリオ・プーゾ、原作マリオ・プーゾ、製作アルバート・S・ラディ、撮影ゴードン・ウィリス、音楽ニーノ・ロータ(出演)マーロン・ブランDon_Vito_Corleoneアル・パチーノMichaelジェームズ・カーンSonnyリチャード・カステラーノClemenzaロバート・デュヴTom_Hagnスターリング・ヘイドンMccluskeyジョン・マーレイJack_Woltzリチャード・コンテBarziniダイアン・キートンKay_Adamsアル・レッティエSollozzoエイブ・ヴィゴーダTessioタリア・シャイアConnie_Rizziアル・マルティーノJohnny_Fontaneモーガナ・キングMama_Corleone2019年5月21日TOHOシネマズ岡南★★★★
2019年06月11日
コメント(0)
中盤の四作品を紹介します。「アベンジャーズ/エンドゲーム 」(後半ネタバレあり。気になる人は読まないように)何故三時間必要かというと、もちろんいろいろややこしい設定になっているからでもあるんだけど、30分ぶんは、2つのヒーロー物語にケリをつけるために時間をとったのだろう。実際には、あと2つの物語も、これで締めてもいいと思う。ガモーラは、サノス側として消えたのだろうか?(消えたという説が有力)まさか、アントマンがあんなにもカギになるとは!まさか、ストレンジマンは全て見えていたとは!スタークスは、どうやってすり替えたのか?見えなかった!最後に想定外の予告編なし!サノスって、あんなに強いんだ!そんなに最初から強かったけ。今度のスパイダーマンは、時間軸で何処に入るのか?全然わからない。(どうやら時間軸では次の話らしい)ナタリー・ポートマンは、カメオ出演なのか?それとも昔の映像の使い回しなのか!ついつい他のシリーズも見直さなくちゃという気にさせる、ものすごく上手い商売!(この後4-5作観た)マーベルの次の戦略はどうなのか?等々色々疑問が湧きました。(ストーリー)破格のメガヒットによって映画史を塗り替え続ける「アベンジャーズ」シリーズが、この春ついに完結。最凶最悪の敵"サノス"によって、人類の半分が消し去られ、最強チーム"アベンジャーズ"も崩壊してしまった。はたして失われた35億の人々と仲間を取り戻す方法はあるのか? 大逆転へのわずかな希望を信じて再び集結したアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーたちに残されたのは、最強の絆だけ──。"今はここにいない"仲間のために、最後にして最大の逆襲が始まる!監督 アンソニー・ルッソ出演 ロバート・ダウニー・jr、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン[上映時間:182分 ]2019年5月7日TOHOシネマズ岡南★★★★「ずぶぬれて犬ころ」岡山が産んだ夭折の俳人、住宅顕信の半生を、いじめにあって悩んでいる15歳の中学生のドラマと並行して描く。元担任だったという教頭先生からもらった句集を読んで中学生は呟く。「気の抜けたサイダーが僕の人生」尾崎放哉が好きだと言う顕信は、そういう淋しい気持ちを切り取るのが、最初から上手く、中学生もそういう日常句に共感して読んでいく。けれども、中学生のいじめはエスカレートし、顕信の病気は深刻化してゆく。顕信の句が素晴らしいのは、やはり以下のような句が見事に死を意識しつつある人間の感情を表しているからだろう。洗面器の中のゆがんだ顔すくいあげるレントゲンに淋しい胸のうちのぞかれた陽にあたれば歩けそうな脚なでてみる最後の句は、映像で見たからその哀しみがよくわかる。映画の中の顕信は、決して人間的に突出していたわけではない。けれども、句に向けた純粋な心は本物であり、だからそこから紡がれる日常句に光がある。そこが放哉とは違う。抱きあげてやれない子の高さに座るずぶぬれて犬ころ地をはっても生きていたいみのむし中学生は生き直す。それは、放哉とは違う顕信の個性であり、可能性だった。潤沢な資金を用意できなかったために、ドラマの完成度はイマイチのところはあるが、ストレートないい邦画だったと思う。(解説) 5・7・5の字数にとらわれない自由律俳句を詠み、生涯に残した俳句はわずか281句。22歳の時に得度し浄土真宗本願寺派の僧侶となった。空前の俳句ブームと言われる現在、その死後に日常をテーマとした俳句と生き様が脚光を浴びている。 その俳句と共にいきた稀有な人生を、生きづらさを感じながら生きる現代の中学生と重ね合わせて描いた『ずぶぬれて犬ころ』。 ドキュメンタリー映画『船、山にのぼる』『モバイルハウスのつくりかた』の本田孝義監督が初の劇映画に挑む。同郷の住宅の俳句と人生から「生きろ」というメッセージを感じ、オール岡山ロケと地元の熱い協力で本作を完成させた。 主演は『おんなのこきらい』『21世紀の女の子』で注目される木口健太。住宅を演じるために髪を短く切り、鬼気迫る演技で新境地を開いた。住宅の俳句に励まされる中学生・小堀を演じるのは岡山出身の新鋭、森安奏太。オーディションで見出された、繊細ながら力強い眼差しが印象深い。また『アウトレイジ 最終章』など数多くの作品で個性的な役を演じる仁科貴や、特別出演の田中美里ほか、実力派ぞろいが短くも強烈なひとりの人生を彩る。 撮影は『人のセックスを笑うな』『ニシノユキヒコの恋と冒険』の鈴木昭彦。息の長いカットが過去と現在を鮮やかに繋いでいる。音楽は“あらかじめ決められた恋人たちへ”のリーダーで、近年は『モヒカン故郷に帰る』、『武曲 MUKOKU』、ドラマ『宮本から君へ』など数多くの映画やドラマを手がける池永正二。音数の少ない旋律が強い印象を残す。 人はどのように生き、そして去っていくのか。どの時代にも通づる普遍的なテーマが貫かれる。2019年5月19日シネマ・クレール★★★★「ある少年の告白」ラッセル・クロウが、衝撃の姿形をしていて、最初誰だかわからなかった。ニコール・キッドマンがどうしてこんな保守的なキリスト教徒を演じるのか不思議だったけど、ラストで合点が行く。信仰を持たない日本人にはわかりにくいけど、キリスト教原理主義者はアメリカでは大統領選に決定的影響を与えるほどに存在していて、大きな要望はLGBT規制である。何故ならば、キリストが認めたのは、聖書にある通り「男女による結婚のみ」であるから。それ以外の結婚では天国には行けないのだ。それを否定するのは、生きる意味を否定するのと同じことになる、と、彼らは固く信じている。実際は、この映画にある通り医者はそうは思っていないし、ある人は信仰を保ちながらも大きく意見を変える。こんな中だから、矯正施設が未だに影響を持っている、未だに70万人が影響下にあるというのは、極めてアメリカ的な現象なのだろう。そこに一石を投じる作品。なおかつ、キリスト教とLGBTとの、現代での関係を正面から描いた作品として、アメリカ理解のためにはとても役に立つ作品であると思う。ところで、ラッセル・クロウのアレは役作り?それとも生活習慣のため?(解説)アメリカの田舎町。牧師の父と母のひとり息子として愛情を受けながら、輝くような青春を送ってきたジャレッド。しかし、”自分は男性のことが好きだ”と気づいたとき、両親に勧められたのは、同性愛を”治す”という危険な矯正セラピーへの参加だった。〈口外禁止〉だという驚くべきプログラム内容。自らを偽って生きることを強いる施設に疑問と憤りを感じ、ジャレッドは遂にある行動を起こす…。原作は、NYタイムズ紙によるベストセラーに選ばれ、全米で大きな反響を呼んだ衝撃の〈実話〉。親と子はなぜ、互いの幸せを願うほどにすれ違ってしまうのか――。本当の自分を見つめた先に、誰にも奪うことはできない真実の愛が浮かび上がる。一筋の希望が胸を震わせる、圧倒的な人間ドラマが誕生した。ジャレッドを演じるのは、本作で初主演を飾るルーカス・ヘッジズ。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』では弱冠20歳にしてオスカー候補となり脚光を浴びた。本作では、葛藤を抱えながらも信念を貫こうともがく主人公を熱演、ゴールデングローブ賞にノミネートされた。さらには両親役には二コール・キッドマン、ラッセル・クロウらベテラン俳優陣が出演。また、奇才グザヴィエ・ドラン、本作へ楽曲提供もした注目のシンガーソングライターのトロイ・シヴァン、ロックバンド“レッチリ”のフリーら個性的な面々が脇を固める。メガホンを取ったのは、俳優としても活躍するジョエル・エドガートン。監督としては『ザ・ギフト』(15)以来2作目の長編作で、本作では監督、脚本、製作、出演とマルチな才能を発揮している。原作者のガラルド・コンリーが実際に体験し、回顧録として実態を告白した「矯正治療(コンバージョン・セラピー)」での出来事。強制的に性的指向やジェンダー・アイデンティティを変更させようとする科学的根拠のないこの治療は、鬱や深刻なトラウマをもたらすだけでなく、自殺率の高さも指摘されている。米国では、規制は進んでいるものの現在も施され続けており、これまでに約70万人が経験、そのうち約35万人が未成年のうちに受けたといわれる。2019年5月19日シネマ・クレール★★★★「荒野にて」「さざなみ」の監督・脚本らしく、クセのある構成だった。普通ならば、旅の最初に厳しい現実を見せて、最終盤で総てを解決する、という展開がわかりやすく、感動を与える。ところが、善意は旅の序盤で何度も現れ、悲劇は中盤に、悪意は最終盤で現れる。しかも、同じ人間が善悪の部分を見せる。しかも、主人公自身は全然ピュアじゃない。正に、これこそが人生なんだと言わんばかりである。少年の違法行為は、簡単に数えるものだけで大小4つほどある。そのどれも、最終盤まで彼は裁かれない。日本映画だと、なんらかの裁きがあるはずだが、米国作品では、裁きは基本的に神が行うものだから、これでいいのである。日本人にとってはどうなんだろう?まんまと逃げ果せたとしても、彼自身は罪の意識をもっているのだから、いいことない、と思うはずである。そういう意味で座りの悪い作品かもしれない。そういうことを含めて余韻の残る作品だ。悪くはない。(ストーリー)天涯孤独な少年と、走れなくなった競走馬。彼らは居場所を求め、希望と絶望の境を進んでいく。それは人生という名の長い旅路―。 チャーリー(チャーリー・プラマー)は15歳にして孤独だった。仕事を変えては転々と暮らす父親(トラヴィス・フィメル)と二人でポートランドに越してきたのだが、父は息子を愛しながらも自分の楽しみを優先していた。母親はチャーリーが赤ん坊の頃に出て行ったので、もちろん覚えていない。以前はマージー伯母さん(アリソン・エリオット)が何かと面倒を見てくれたが、チャーリーが12歳の時に父と伯母さんが大ゲンカをしてしまい、以来すっかり疎遠になった。チャーリーは寂しくなると、伯母さんと一緒に写った写真を眺めるのだった。 ある日、家の近くの競馬場で、デル(スティーヴ・ブシェミ)という厩舎のオーナーから競走馬リーン・オン・ピートの世話を頼まれたチャーリーは、食べ物も十分に買えない家計を助けるため引き受ける。素直で呑み込みが早く、馬を可愛がるチャーリーは、すぐにデルに気に入られた。 その夜、チャーリーは男の罵声で目を覚ます。「女房と寝たろ!」と、以前父が家に泊めた女の夫が怒鳴り込んできたのだ。殴り飛ばされた父はガラス窓を突き破り、大ケガを負ってしまう。恐怖に立ちすくみ何も出来なかったチャーリーは、自らの非力さにショックを受けながらも手術を終えた父に「ごめん、助けてあげられなくて」と謝り、マージー伯母さんの電話番号を教えてほしいと頼むが、「人の手は借りない」と跳ね付けられる。 唯一の家族であり、予断の許されない状態の父の傍を離れるのは怖かったが、入院費を稼ぐためにピートの遠征に付き添うチャーリー。騎手のボニー(クロエ・セヴィニー)からは「馬を愛しちゃダメ。競走馬は勝たなきゃクビよ」と忠告されるが、今やピートはチャーリーが唯一心を許せる存在だった。翌日、仕事から病院へ戻ると父の姿がない。容体が急変して亡くなったという。引き取り手の居ないチャーリーを心配し、養護施設に連絡しようとする医師を振り切り、彼はピートの厩舎へと走る。 だが、老いたピートの競走馬としての寿命も尽きかけていた。レースに惨敗したピートを、デルは売り払うと決める。それは殺処分を意味していた。今度こそ自分の手で友を助けると決意したチャーリーは、ピートを乗せたトラックを盗み、かつてマージー伯母さんの住んでいたワイオミングを目指して逃走する。 やがてトラックがエンストを起こし、ピートを連れて荒野へと分け入るチャーリー。日中は黙々と歩き続け、夜には野宿し、父から聞いた母のこと、楽しかった学校生活やマージー伯母さんとの思い出をピートに語り続けるチャーリー。けれども現実は厳しく、チャーリーはあまりに非力だった。残酷にもチャーリーを襲う再びの別れ。チャーリーは孤独を抱きしめ、愛と居場所を求めてひたすら前へと進んでいくが─。監督・アンドリュー・ヘイ2019年5月26日シネマ・クレール★★★★
2019年06月10日
コメント(0)
5月に観た映画は10作品でした。3回に分けて紹介します。「バースデー・ワンダーランド」観客は、私以外に2組しかいなかったかけど、とってもステキなアニメでした。原監督は、この数作、アニメのカラーの可能性にかけているようです。造形美は素晴らしい。原作はあるけど、映像は完全に原監督の創造でしょう。ただ、人物の表情が人形みたいで、あれだとなかなかキャラに自分を託せない。言いたいことはよくわかる。産業革命以来、私たちはたしかに美しい世界をなくしているのかもしれない。でも、それを体現すべき人間も描いてくれないと、やはり弱い。ステキな作品なのに、残念です。(ストーリー)自分に自信のないアカネは誕生日の前日、突如現れた謎の錬金術師ヒポクラテスと弟子のピポから世界を救ってほしいと言われ、骨董(こっとう)屋の地下室からつながるワンダーランドへ連れ出される。幸せな色に満ちたワクワクする世界は、色が消えてしまうという危険にさらされていた。ワンダーランドを守る救世主として期待されるアカネは、世界を救うための冒険に出る。(キャスト)松岡茉優、杏、麻生久美子、東山奈央、藤原啓治、矢島晶子、市村正親(スタッフ)監督:原恵一2019年5月2日ムービックス倉敷★★★★「映画 賭ケグルイ 」テレビシリーズが続いている中で、映画を上映する意図をちゃんと計算に入れておくのだった。まさかの、あそこで終わり。賭けに負けました。新人俳優の表情変化を楽しむことはできました。支持率がある程度高いのは、ドラマの完成度よりも、賭けグルイ観客の「程度」に、製作者が勝ったからだろう。(ストーリー)創立122年を迎える私立百花王学園。この伝統ある名門校で生徒の階級を決めるのは“ギャンブルの強さ”。勝者には地位と名誉が与えられ、敗者は財産も尊厳も奪われる。この学園に、一人の少女が転校してくる。彼女の名は蛇喰夢子。一見するとお淑やかなこの美少女は、いかなるリスクもいとわない常軌を逸したギャンブル狂だった。学園を支配する生徒会は、夢子を危険な存在と判断し、百戦練磨の刺客を送り込むも次々と撃破。学園は夢子を中心に大きく動き出そうとしていた。生徒会はついに、全校生徒を巻き込んだ百花王学園史上最大のギャンブルバトルの開催を宣言する―監督 英勉出演 浜辺美波、高杉真宙、宮沢氷魚、福原遥、伊藤万理華、松田るか、岡本夏美、柳美稀、松村沙友理(乃木坂46)、小野寺晃良、池田エライザ、中村ゆりか、三戸なつめ、矢本悠馬、森川葵2019年5月7日TOHOシネマズ岡南★★★「E.T.」実は初めて観た。1982年の年末映画なので、大学時代、卒論に追われてそれどころではなかったようだ。ヨーダも出てくるあたり笑える。序盤はずっとE.T.の手しか出てこない演出や、ジョンウィリアムの見事な音楽と映像がピッタリ合っている様や、最終盤のCIAぽい大人たちが、実は科学者集団だったという種明かしや、上手い演出だと思う。有名俳優を使わずにヒット作を連発したスピルバーグの才能が光っている。指と指を合わす仕草や、月明かりを背に自転車で飛翔する影や、その後のアイコンとなる映像も、実は怪我を治す映像だったり、そのあと夕陽を背にもう一度同じ映像を作っていたり、とか意外な場面もある。最初は野蛮な動物、そして未開人、そして人間、やがて知性豊かな超能力者と、印象が2日で変わって行くE.T.のクリエイティブな姿は、その後の人類の進化に大きな影響をを与えたに違いないと思う。ただ、人類の大きな特徴は、食物の共食にあると私は思っているので、エリオットがそれを最初にするのは理解できるが、E.T.もそれに倣うのはおかしいかもしれない、とは思った。出演者の中で、出世頭は、結局紆余曲折のあったドリューバリモアだけだったというのは、アメリカという国の不思議だろう。(解説)宇宙人と地球の子供たちの交流を描くSFファンタジー。スティーブン・スピルバーグとキャスリーン・ケネディが製作に当り、スティーブン・スピルバーグが監督。脚本は「マジック・ボーイ」のメリッサ・マシソン、撮影はアレン・ダヴュー、音楽はジョン・ウィリアムス、E・T創造はカルロ・ランバルディ、視覚効果はデニス・ミュレンの監修によりILMが担当。出演はディー・ウォーレス、ヘンリー・トーマス、ピーター・コヨーテ、ロバート・マクノートン、ドリュー・バリモアなど。ストーリー アメリカ杉の森に、球形の宇宙船が着地し、なかから小さな宇宙人が数人出てきた。彼らは地球の植物を観察し、サンプルを採集する。1人だけ宇宙船から遠く離れた宇宙人が、崖の上から光の海を見て驚く。それは郊外の住宅地の灯だった。突然、物音がした。宇宙船の着陸を知った人間たちが、宇宙船に向かってきたのだ。宇宙船は危険を察知して離陸する。先ほどの宇宙人1人は、地上にとり残された。その頃、住宅地の1軒では、少年たちがカード遊びをしていた。10歳のエリオット(ヘンリー・卜ーマス)は、小さいという理由から、兄マイケル(ロバート・マクノートン)らの仲間にいれてもらえず、くさっていた。ピッツアの出前を受け取りに外へ出たエリオットは、物置小屋で音がしたことに気付いて、みんなを呼びよせた。しかし、中には誰もいなかった。深夜、エリオットはトウモロコシ畑で、宇宙人を目撃。翌日、夕食をたべながら、エリオットは宇宙人を見たことを話すが、誰も信じない。「パパなら…」というエリオットの言葉に、母のメリー(ディー・ウォーレス)は動揺する。パパは愛人とメキシコに行っているのだ。その夜もふけ、エリオットがポーチで見張っていると、宇宙人が彼の前に姿を現わす。エリオットは宇宙人を部屋に隠した。翌日、エリオットは仮病をつかって学校を休み、宇宙人とのコミニュケーションを試みた。そして帰宅した兄、妹ガーティ(ドリュー・バリモア)に紹介する。宇宙人は太陽系を遠く離れた星からやって来たことを、超能力でボールを宙に浮上させて説明した。次の朝、エリオットにマイケルの友達が、「怪物がいたか」と尋ね、宇宙人だと聞かされると、「ではエキストラ・テレストリアルだな」という。こうして宇宙人は以後、エキストラ・テレストリアルを略してE・Tを呼ぱれることになる。学校で授業をうけるエリオットと家にいるE・Tとの間に心が通いあい、E・Tが冷蔵庫からビールを取り出して飲むと、学校のエリオットも酔っぱらう。E・TがTVで「静かなる男」を見て、ジョン・ウェインとモーリン・オハラのキスシーンに見とれていると、学校でエリオットがかわいい女の子にキスをする。E・TはTVの「セサミストリート」を見ながら、英語を覚え、家に電話したいといい出す。E・Tはノコギリや傘を使って通信器を作る。ハロウィーンの夜、子供たちはE・Tに白い布をかぶせて森に連れ出し、E・Tは故郷の星に連絡をとる。翌朝、E・Tは瀕死の状態となり、エリオットが彼を家に運ぶ。E・Tを始めて見て、驚くメリー。突然、宇宙服を着た科学者たちが家にやって来た。NASAの科学者キース(ピーター・コヨーテ)がエリオットに「私も10歳の時からE・Tを待っていた」と話しかける。E・Tは死亡し、最後のお別れをエリオットがしていると、E・Tの胸が赤くなる。彼は死んでいなかったのだ。エリオットは兄妹、兄の友人グレッグ、スティーブ、タイラーの協力を得て、E・Tを森に運ぶ。後を必死に追う科学者の一団。森の空地に着地した宇宙船に乗り込むE・T。宇宙船が消えたあと、空に美しい虹がかかった。スタッフ 監督スティーヴン・スピルバーグ脚本メリッサ・マシソン製作スティーヴン・スピルバーグキャスリーン・ケネディメカニカルデザインラルフ・マクウォーリークリーチャーデザインカルロ・ランバルディ撮影アレン・ダヴュー美術ジェームズ・ビッセルフランク・マーシャル装飾ジャッキー・カー音楽ジョン・ウィリアムス音響効果ベン・バート編集キャロル・リトルトン衣裳/スタイリストデボラ・スコットメイクロバート・シーデルMA(音声編集)ケネス・ホールアソシエイト・プロデューサーメリッサ・マシソンSFX/VFX/特撮インダストリアル・ライト・アンド・マジッククリストファー・エヴァンズフランク・オーダスSFX/VFXスーパーバイザーデニス・ミューレンケネス・F・スミスローン・ピーターソン字幕戸田奈津子アドバイザーチャールズ・L・キャンベルキャスト 出演ディー・ウォーレスMaryヘンリー・トーマスElliottピーター・コヨーテKeysロバート・マクノートンMichaelドリュー・バリモアGertieK・C・マーテルGregショーン・フライSteveトム・ハウエルTylerエリカ・エレニアックPretty_Girlリチャード・スウィングラーSchool_Teacherフランク・トスPoliceman2019年5月7日TOHOシネマズ岡南★★★★
2019年06月09日
コメント(0)
「ダンガル きっと、つよくなる」 インド映画が元気だ。上映されるほとんどの作品を無視出来ない。いっときの韓国映画のごとく、これは驚くべきことです。去年の作品では、これが最も注目すべき作品でした。 ダンガルとは、インド語でレスリングのこと。インド版アニマル浜口・京子親子を描いた作品と言えばいいか。メダルの夢破れた父親が、長女ギータと次女バビータが悪口を言う男の子をボコボコにしたのを見て、その才能に気がつきレスリングの特訓を始めます。アマチュア国際大会で、インドで初めて金メダルを獲るまでを描きます。 頑固一徹な父親マハヴィルを演じるのは『きっと、うまくいく』のアーミル・カーン。映画大国インドの大スターが27キロも体重を増やし肉体改造したと話題になりました。男物の服を着せ、髪を切り……暴走するマハヴィルの指導に、流石に姉妹も「あんな父親、要らない」と切れてしまいます。けれども、それを諌めたのは、意外にも友達の花嫁でした。IT産業を中心に急成長を遂げているインドは、それでもその人口の多さから、まだまだ地方には昔の因習が残っています。「14歳になったら、知らない男のところに嫁に出される。この国の女性の人生には、家事をし、子を育てるというほかに選択肢は無いの。それを押し付けないあなたたちのお父さんはよっぽど娘思いよ」友達の言葉をきっかけに、娘たちは「主体的に」トレーニングを始めて、大会で次々と優勝して、インド代表になるのです。これがインド映画で歴代興行収入1位を勝ち取ったのは、単なるスポ根ものではなく、社会派作品でもあったからだろうと思います。 実際に訓練したコーチからは、いろいろと事実とは違うというクレームも起きたようですが、そもそもインド映画はエンタメが基本です。ある程度の脚色はお約束。冒頭の、実況中継に合わせた対決場面など、いたるところにアイディアもあります。ミュージカルではないけど、「♪ダンガル、ダンガル」と繰り返す力強い主題歌や、トレーニングを強いられた中学生の娘たちがコミカルに歌う「♪やめて父さん、私たち体を壊すわ」 等は、とても耳に残る楽曲でした。 13億の人が住むインドが、今大きく変容しつつある。それを楽しく感じることのできるボリウッド映画でした。(2018年インド映画・ニテーシュ・ティワーリー監督作品)
2019年05月17日
コメント(0)
「ハンターキラー 潜航せよ」なかなかハラハラドキドキするポリティカルアクションでした。久しぶりの潜水艦アクションとしても、まあ楽しめました。最後の艦長の決断は、本来は五分五分というところか。上手くいったから、三方一両得、万歳だったが、上手くいかなくても、あそこで証拠映像は既にあるわけだから、本来なら米国は知らぬ存ぜぬでいいわけだ。アクション映画を撮りたかったプロデューサーの杜撰な脚本というべきだろう。ゲイリーオールドマンが、完全脇役なのに、何故か助演男優並に大きく出ています。(ストーリー)ジョー・グラス(ジェラルド・バトラー)が艦長を務めるアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦ハンターキラーに、ロシア近海で行方不明になった同海軍原潜の捜索命令が下る。やがてハンターキラーは、沈没したロシア海軍の原潜を発見し、生存していた艦長を捕虜として拘束する。さらに、ロシアで極秘偵察任務にあたるネイビーシールズが、世界の命運を左右する巨大な陰謀をつかむ。それを受けてハンターキラーは、敵だらけのロシア海域に潜航する。(キャスト)ジェラルド・バトラー、ゲイリー・オールドマン、コモン、リンダ・カーデリーニ、トビー・スティーヴンス、ミカエル・ニクヴィスト(スタッフ)監督:ドノヴァン・マーシュ製作:ニール・H・モリッツ、ジョン・トンプソン原作:ジョージ・ウォーレス、ドン・キース2019年4月28日ムービックス倉敷★★★★ 「洗骨」今年の邦画では、今のところベスト。監督・脚本の照屋氏の手腕が素晴らしい。郷里に帰った家族が絆を確かめ合う、という縮めれば身もふたもないないストーリーが、実はそうではなくて、日本人が遠い新石器時代から延々築いてきた営みを振り返る壮大な叙事詩にも見えてくる。或いは、良質な喜劇にも見えてくる。という稀有な物語になっている。酸性土壌の本土では、古墳時代以来、絶えて無くなった「風習」ではあるが、沖縄の孤島では、まだ生き生きと残っているのをドキュメンタリー風ではなくて、きちんと「風葬」の本来のあり方を見せてくれる。「何故洗骨するのか、わかった。ぼくたちは、自分自身を洗っていたんだ」という実際作品を観なくてはわけのわからない長男の呟きは、実際そうなんだと思うし、沖縄の人でなくてもきちんと伝わる。証拠に観客の半分は、最後にはみんな泣いていた。岩波『図書』2月号では、風葬の習俗が新石器時代にも認められるという研究者の途中報告を載せていた。私もそう思う。そもそも、三回忌や村のはずれに結界を持つ日本の埋葬習俗は、多くの部分で風葬を受け継いでいるのである。(解説)〈 洗骨とは 〉今は殆ど見なくなった風習で、沖縄の離島、奄美群島などには残っているとされる。沖縄の粟国島(あぐにじま)では島の西側に位置する「あの世」に風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらい、ようやく「この世」と別れを告げることになる。最愛の人を失くすのは誰しも悲しい。だが数年後、その人にもう一度会える神秘的な風習、“洗骨”。死者の骨を洗い、祖先から受け継がれた命の繋がりを感じる。ユーモアと感動で世界各国で絶賛を浴びた珠玉のヒューマンドラマ。本作の礎になったのは国際的な短編映画祭で数々の賞を受賞し、大きな話題となった照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)監督の短編映画『born、bone、墓音。』。12年に渡り短編映画や自主映画の制作で積み重ねてきた照屋監督のその短編を原案に、長編映画として新たに生まれたのが本作『洗骨』です。主演に奥田瑛二を迎え、実力派の筒井道隆、河瀨直美監督作『光』で堂々の主演を演じた水崎綾女ほか、大島蓉子、坂本あきら、鈴木Q太郎、筒井真理子などが脇を固めます。そして主題歌には、数々のアーティストによって歌い継がれてきた古謝美佐子の名曲「童神」が起用され、その余韻が涙を誘います。2018年8月に開催された北米最大の日本映画祭“JAPAN CUTS”では28本の新作日本映画の中から見事観客賞を受賞。モスクワ、上海、ハワイなど国際映画祭でも軒並み高い評価を受けています。世界中で絶賛され、観客の心をつかんできた最高に笑って泣ける至極のヒューマンドラマが、満を持して日本公開を迎えます。(ストーリー)沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。長男の新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の“洗骨”のために、4 年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)がひとりで住んでいる。生活は荒れており、恵美子の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末。そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来るが、優子の様子に家族一同驚きを隠せない。様々な人生の苦労とそれぞれの思いを抱え、家族が一つになるはずの“洗骨”の儀式まであと数日、果たして 彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか?2019年4月21日シネマ・クレール★★★★「マイ・ブックショップ」1950年代のイギリスの田舎の土地の有力者と目をつけられた未亡人との確執のお話。どういうことはない。何故映画になるのか、わからない。結局いつのまにかクリスティーナの時点で物語られるわけだ。あらゆる場面でお茶と共に話をする(一回だけ例外あり)習慣と、手にキスをするのは恋愛の証なのか他の証なのか、わからなかった。いわゆる、既に歴史になった昔のイギリスの話であり、私には興味を持てなかった。(解説)『ナイト・トーキョー・デイ』などのイザベル・コイシェ監督が、イギリスのブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの小説を映画化。田舎町で亡き夫との念願だった書店を開業しようとするヒロインを描く。主演は『レオニー』などのエミリー・モーティマー、共演に『ラブ・アクチュアリー』などのビル・ナイ、コイシェ監督作『しあわせへのまわり道』にも出演したパトリシア・クラークソンら。(ストーリー)1959年、戦争で夫を亡くしたフローレンス(エミリー・モーティマー)は、書店が1軒もないイギリスの田舎町で、夫との夢だった書店を開こうとする。しかし、保守的な町では女性の開業は珍しく、彼女の行動は住民たちから不評を買う。ある日、40年以上も自宅に引きこもりひたすら読書していた老紳士(ビル・ナイ)と出会う。(キャスト)エミリー・モーティマー(フローレンス・グリーン)ビル・ナイ(エドモンド・ブランディッシュ)ハンター・トレメイン(キーブル氏)オナー・ニーフシー(クリスティーン)フランシス・バーバー(ジェシー・ウォルフォード)ジェームズ・ランス(ミロ・ノース)パトリシア・クラークソン(ガマート夫人)2019年4月29日シネマ・クレール★★★
2019年05月15日
コメント(0)
「バイス」マイケル・ムーア作品のドラマ版とでも言おうか。そもそもムーア作品はドラマ的なドキュメンタリーだったのだから、ドキュメンタリー的なドラマがあったていいのだ。というよりか、こちらの方がより説得力を持つ寄りや演義があるからわかりやすい。何しろ、出演者はオスカー常連の演技巧者ばかりなのだから。予想が外れたのは、思った以上ににチェイニーの伝記作品になっていたこと。まだ死んでないのに、ほとんどここまで批判するのは、基本的には相当調べなくては描けない筈だ。ほとんど真実に基づいているが、限界はあると最初に断っている。その限界は、例えば一旦断った副大統領職を夜中の妻との会話の中で引き受けることにする場面なのだが、シェイクスピアの台詞を借りて演技するわけだ。ハッキリ言って意味がわからなかった。反対にいえば、それ以外はほとんど事実だということだ。ラストシークエンスで、この映画をまとめるシーンがあるのだが、私は当然「バカラル」の立場(映画を観れば意味が解る)だ。面白かった。面白いだけじゃいけないのだけど。(解説)大統領を差し置いてアメリカを操り、世界をメチャクチャにした悪名高き副大統領、その名はディック・チェイニー。まさかの実話&社会派ブラック・エンターテインメント!よほどの政治マニアでなければ、アメリカの副大統領の言動に関心を抱く人はいないだろう。常に陰に隠れた副大統領は、大統領が死亡したり、辞任した際にその代わりとして昇格するポジションであるため、「大統領の死を待つのが仕事」などと揶揄する者もいる。しかし、もしも副大統領が目立たない地位を逆手にとって、パペットマスターのごとく大統領を操って強大な権力をふるい、すべきでない戦争を他国に仕掛けた揚げ句、アメリカを、そして世界中を変えてしまったら……。本作はそんなまさかの“影の大統領”が本当に存在したことを証明し、現代米国政治史における最も謎に包まれた人物に光をあてた野心作。その主人公の名は第46代副大統領ディック・チェイニーである。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のチームが再結集この前例の見当たらないユニークなプロジェクトに挑んだのは、リーマン・ショックの裏側を斬新な視点で描き、アカデミー賞5部門にノミネート(脚色賞を受賞)された『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアダム・マッケイ監督。この“影の大統領”を綿密にリサーチするうちに、底知れないほど深くてどす黒い人物像に魅了され、いかに彼が密かにホワイトハウスの権力を掌握し、その後の今に至る世界情勢に多大な影響を与えたかを徹底的に追求した。ちなみに題名の『バイス』には、バイス・プレジデント(副大統領)を指すだけでなく、“悪徳”や“邪悪”という意味もこめられている。驚異的な役作りで魅せるクリスチャン・ベールと豪華キャストのアンサンブル本年度アカデミー賞を賑わせたオールスター・キャストの豪華なアンサンブルにも、目を奪われずにいられない。マッケイ監督に「彼に断られていたら、この映画を作ることはなかった」と言わしめた主演俳優はクリスチャン・ベール。ハリウッド屈指の“演技の鬼”として名高い彼が、約20キロにおよぶ体重の増量、一度あたり5時間近くを要する特殊メイクを施して、約半世紀にわたるチェイニーの軌跡を体現した。その体型や髪型、顔つきの信じがたい変化に加え、内面からにじみ出すオーラの迫力には誰もが息をのむだろう。自身のキャリアにおいて本作に特別な思い入れがあるベールは、ゴールデン・グローブ賞男優賞(コメディ/ミュージカル部門)に輝いており、アカデミー賞主演男優賞にも順当にノミネートした。チェイニーの野望を後押しする妻のリンに扮するのは、『ザ・ファイター』『アメリカン・ハッスル』に続いてベールとの3度目の共演が実現したエイミー・アダムス。本作でアカデミー賞ノミネートが6度目となる名女優が、タフでしたたかなセカンドレディを演じている。チェイニーを取り巻くブッシュ政権の面々の“そっくりさん”ぶりも驚嘆に値する。『マネー・ショート~』『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のスティーヴ・カレルがラムズフェルド国防長官、『スリー・ビルボード』でオスカー俳優の仲間入りを果たしたサム・ロックウェルがブッシュに扮して曲者ぶりを発揮。ナオミ・ワッツやアルフレッド・モリナの意外な登場シーンも要チェックである。また、話題作を次々と世に送り出すプランBが全面バックアップした本作には、強力なプロデューサー陣にブラッド・ピット、ウィル・フェレルも名を連ねている。シーンごとに社会派、ブラック・コメディ、家族ドラマ、さらには荘厳な叙事詩やシェイクスピア劇のようにも表情を変える本作は、アカデミー賞でも堂々たる主役のひとりとしてスポットライトを浴びた。2019年4月7日シネマ・クレール★★★★「未知との遭遇」実は初めて観た。有名場面だけは飽きるほど見たから知っているものと思っていた。かなりキワモノ作品だということが今回わかった。世界的ヒットになったのは奇跡のようなものかもしれない。リチャード・ドレイファスは、明らかに変でしょ。それは許せるとしても、これはファイナル・カット版なので最も説明している作品のはずだ。それなのに、説明不足があまりにも多い。ドレイファスとメリンダ・ディロンはどうして山の上でキスをしたのか?音と光で、会話が出来ると判断した研究機関の根拠がわからない。何故今になって(拉致した人を返すのはいいとしても)飛行機や船まで返すのか?果たして彼らとは、分かり合えたのか?これは物語として破綻しているでしょ?でもヒットしてしまった。いったい何が要因だったのだろう。宇宙人と分かり合えるというメッセージは、その後の中東人との戦争を経て、随分後退しているように思える。最新のアベンジャーズ含めて、未だにアメリカンは未知との戦争を続けている。【ストーリー】 インディアナポリスで続発する謎の停電事故。調査のため派遣されたロイは、そこで信じられないような出来事を目撃する。だが、彼の驚くべき体験を誰も信じようとはせず、調査は政治的圧力によって妨害されてしまう。しかしロイは何かに導かれるように、真実の探求を始めた。そして彼が辿り着いた場所とは…。 スピルバーグが初めて監督と脚本を共に手掛けた記念すべき作品。彼のその後の作品に多大な影響を与えたSFスペクタクルの金字塔! 【スタッフ&キャスト】 ≪監督≫スティーブン・スピルバーグ ≪出演≫リチャード・ドレイファス 2019年4月1日TOHOシネマズ岡南★★★★「キングダム」原作は読んでいない。秦国の中華統一を目指す若き王の政と天下の大将軍を目指す奴隷出身の新が主人公であるという情報だけを知っていた。秦の始皇帝を私は良くは思っていないが、始皇帝になる前の政についてはあまり知識はない。新が何処まで政と二人三脚できるのか不明だった。結果はどうであったか。まさか呂不韋(良くは知らないがかなり複雑な関係らしい)が出現する以前で終わるとは、思わなかった。これならば、まだ奴隷と王とで二人三脚できる。結局なんだったかというと、「中国歴史大河の舞台を借りたアイドル映画」でした。いちいち負けそうになって勝負に勝つというパターンが一回ならまだしも4回以上あって、それ全部にアイドルが「見得を切っ」ているのである。あり得んでしょ?でも、アイドル映画だからあり得るのである。長澤まさみが素晴らしいと聞いていたけど、私見ですが、わざわざ観に行くほどじゃありません。自作作るのかなあ。あと4作ぐらい作らないと中華統一まで行かないと思うんだけどなあ。(ストーリー)紀元前245年、中華西方の国・秦。戦災で親を失くした少年・信(山崎賢人)と漂(吉沢亮)は、大将軍になる夢を抱きながら剣術の特訓に明け暮れていた。やがて漂は王宮へと召し上げられるが、王の弟・成キョウ(本郷奏多)が仕掛けたクーデターによる戦いで致命傷を負う。息を引き取る寸前の漂から渡された地図を頼りにある小屋へと向かった信は、そこで王座を追われた漂とうり二つの王・エイ政(吉沢亮)と対面。漂が彼の身代わりとなって殺されたのを知った信は、その後エイ政と共に王座を奪還するために戦うことになる。(キャスト)山崎賢人、吉沢亮、長澤まさみ、橋本環奈、本郷奏多、満島真之介、阿部進之介、深水元基、六平直政、高嶋政宏、要潤、橋本じゅん、坂口拓、宇梶剛士、加藤雅也、石橋蓮司、大沢たかお(スタッフ)脚本・原作:原泰久監督・脚本:佐藤信介脚本:黒岩勉主題歌:ONE OK ROCK製作:北畠輝幸、今村司、市川南、谷和男、森田圭、田中祐介、小泉貴裕、弓矢政法、林誠、山本浩、本間道幸2019年4月25日ムービックス倉敷★★★
2019年05月14日
コメント(0)
4月に観た作品は9作品でした。3回に分けて紹介します。 「ビリーブ 未来への大逆転」法廷劇。最後の10分の逆転が鮮やかだ。結論はわかっているのだけど、その過程を見ると、全く違うように思える。「未来」は、いくつかある選択肢を「闘いとって」選んだ結果の集まりなのだとわかる。1970年までに、日本が民主主義の手本としているアメリカの現実が、現代の日本から見ると、あまりにも「正義からかけ離れている」としかし見えないことを、知ることは、現代の「#ME TOO運動」も歴史的に映画化されると確信できる、運動なのだとわかる。そして、日本も変わらざるを得ない。なぜならば、「現実はとうの昔に変わっているのだから」。ラストソングの「HERE COME TO CHANGE」がとても力強くて素晴らしかった。(ストーリー)ルース・ベイダー・ギンズバーグはハーバード大学の法科大学院の1回生であった。多忙な日々を送っていたルースだったが、夫のマーティンがガンを患ったため、夫の看病と娘の育児を一手に引き受けざるを得なくなった。それから2年後、マーティンのガンは寛解し、ニューヨークの法律事務所で働き始めた。ルースはコロンビア大学で取得した単位を以てしてハーバードの学位を得ようとしたが、学部長に却下されたため、やむなくコロンビア大学に移籍することになった。ルースは同大学を首席で卒業したにも拘わらず、法律事務所での職を得ることが出来なかった。ルースが女性であったためである。やむなく、ルースは学術の道に進むことになり、教職を得たラトガース大学で法律と性差別に関する講義を行った。1970年のある日、マーティンが持ち込んできた案件の一つがルースの関心を引いた。その案件はチャールズ・モリッツという名前の男性に関するものだった。モリッツは働きながら母親を介護するために、介護士を雇うことにしたのだが、未婚の男性であるという理由でその分の所得控除が受けられない状態にあったのである。その根拠となる法律の条文には「介護に関する所得控除は、女性、妻と死別した男性、離婚した男性、妻が障害を抱えている男性、妻が入院している男性に限られる」とあった。ルースは法律の中に潜む性差別を是正する機会を窺っていたが、モリッツの一件はその第一歩に最適だと思った。「法律における男性の性差別が是正されたという前例ができれば、法律における女性の性差別の是正を目指す際に大きな助けとなるに違いない。また、高等裁判所の裁判官は男性ばかりだから、男性の性差別の方が共感しやすいはずだ」と考えたからである。ルースはアメリカ自由人権協会(ACLU)のメル・ウルフの助力を仰いだが、にべもなく断られてしまった。その後、ルースは公民権運動家のドロシー・ケニヨンに会いに行き、必死の説得の末に協力を取り付けることができた。ケニヨンの口添えで、ウルフも協力してくれることになった。それから、ルースはデンバーにいるモリッツの元を訪ねた。モリッツは訴訟を渋ったが、ルースの熱意に心を打たれ、地元の行政府を訴えることにした。ほどなくして、ルースとウルフは第10巡回区控訴裁判所に訴訟を提起した。ところが、ルースには法曹の実務経験がなかったため、口頭弁論でしどろもどろになってしまった。そこで、ルースは法廷経験のある夫、マーティンの力を借りることにした。(キャスト)ルース・ベイダー・ギンズバーグ: フェリシティ・ジョーンズマーティン・D・ギンズバーグ(英語版): アーミー・ハマーメル・ウルフ: ジャスティン・セロードロシー・ケニヨン(英語版): キャシー・ベイツアーウィン・グリスウォルド(英語版): サム・ウォーターストンジェーン・ギンズバーグ(英語版): ケイリー・スピーニージェームズ・スティーヴン・ギンズバーグ(英語版): カラム・ショーニカージェームズ・ボザース: ジャック・レイナーブラウン教授: スティーヴン・ルートルース・ベイダー・ギンズバーグ: 本人監督 ミミ・レダー2019年4月1日TOHOシネマズ岡南★★★★ 「バンブルビー」最初、ホントに犬ころのように縮こまるB-127を見て、まあ女の子ならばみんな保護したくなるだろうな、と思う。そして、同時にメカに強い女の子。憧れのヒロイン像だと思う。だからこそ、せっかく35年前のエピソードを出したのに、現在はどうなっているのか、一言も触れないのは、観客をバカにしているとしか思えない。(ストーリー)1987年、海辺の田舎町。父親を亡くした哀しみから立ち直れない思春期の少女チャーリーは、18歳の誕生日に、海沿いの小さな町の廃品置き場で、廃車寸前の黄色い車を見つける。自宅に乗って帰ったところ、この車が突如、変形≪トランスフォーム≫してしまう。驚くチャーリーを前に、逃げ惑う黄色の生命体。お互いに危害を加えないことを理解した瞬間、似たもの同士のふたりは急速に距離を縮める。チャーリーは、記憶と声を失い“何か”に怯える黄色の生命体に「バンブルビー(黄色い蜂)」と名前をつけて、かくまうことを決めた。思いがけない友情が芽生えるのだが、しかし、予想もしない運命が待ち受けているのだった―監督 トラヴィス・ナイト出演 ジョン・シナ、ヘイリー・スタインフェルド、ジョージ・レンデボーグ・Jr、ジェイソン・ドラッカー、パメラ・アドロン、スティーヴン・シュナイダー、リカルド・ホヨス2019年4月1日(元号が決定しているときに鑑賞)TOHOシネマズ岡南★★★ 「ダンボ」ティム・バートンの描くアンチ「グレイテスト・シャーマン」。ティム・バートン毒が薄れたディズニー映画。時は1919年、コリン・ファレルは西部戦線で腕を失くし、妻はスペイン風で亡くした、そういう家族が見つける、ダンボという奇跡。ジャンボの子供の宣伝ネームが落ちてダンボになったり、ドリームランドの文字が変わって騙しランドになったりのわかりやすい毒は、それとして、ティムがこの作品を引き受けたのは、おそらく「グレイテスト・ショーマン」のヒットにあったことは間違いない。マイケル・キートンの富豪は、サーカスのランド化を唄ったり、ヨーロッパから愛人を引き連れたりしているのは、そういうことだろう。しかし、悪役の行動があまりにもお粗末だ。自ら大火事を作って自滅するなんて有り得ないだろう。この辺りは、ティムは老いたかな、と思う。(解説)ディズニーと、個性の素晴らしさを描き続けてきたティム・バートン監督が新たな「ダンボ」の物語を実写映画化。“大きすぎる耳”を持つ子象のダンボはサーカス団の笑いものだったが、やがてその大きな耳を翼にして空を飛べることに気づく。コンプレックスを強さに変えたダンボは、引き離された母を救うため、サーカス団の家族の力を借りて新たな一歩を踏み出す!大きな耳で大空を舞うダンボが、世界中に“勇気”を運ぶ感動のファンタジー・アドベンチャー監督 ティム・バートン出演 コリン・ファレル、マイケル・キートン、ダニー・デヴィート、エヴァ・グリーン2019年4月1日TOHOシネマズ岡南
2019年05月13日
コメント(0)
今月の映画評はマイベスト3位のこの作品です。「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」昨年春、スティーヴン・スピルバーグ監督は二本のまるきりタイプの違う作品を世に出しました。ひとつは、日本のガンダムや世界のヒーローが一堂に集まって競争するCG満載の春休み映画(「レディ・プレイヤー1」)、もうひとつは骨太の作品「ペンタゴン・ペーパーズ」です。メールも高性能のコピー機もなかった時代の「報道の自由と使命」を描きました。もとは前者の方に力を注いでいた監督は、2017年1月に誕生したトランプ政権に危機感を覚えて急遽製作と監督を引き受けたのです。なんと17年秋の公開に間に合わせ、この作品は昨年のアカデミー作品賞にノミネートされました。1971年。当時ベトナム戦争は明らかに泥沼化して、勝利の見通しはありませんでした。現代の我々がそれを聞くと「当たり前だろ」と、感想を持つかもしれなませんね。でも、アメリカ政府はまるで何処かの国のように、ずっと嘘とごまかしの説明をしていました。戦争調査内容はペンタゴン・ペーパーズ(最高機密文書)として隠されていましたが、NYタイムズがその内容をすっぱ抜きます。実は、アメリカにも秘密保護法があります。NYタイムズは追加記事を出せない状態になりますが、ライバル紙のワシントン・ポストの編集主幹トム・ハンクスは文書を手に入れることに成功します。一方メリル・ストリープ演じるポストの社主は、株式公開を控えて後発の記事を出すのかどうか難しい決断を迫られます。「新聞は国民の繁栄と自由のために尽くすべきです」と銀行を説得するのです。記者が特ダネを報道したいのはわかる。しかし、映画は経営者の矜持と決意を描きました。幹部全員が罪を被ってもおかしくはありませんでした。けれども、最高裁判所は世論の高まりを受けてこのように判決を下します。「報道が仕えるべきは国民だ。統治者ではない」。翻って、日本でこのような映画は可能だろうか?観ている間、ずっと思っていました。日本の報道機関は、一度でもこんな闘いをしただろうか?もちろん、国民の支持がないと新聞社は動かなかったでしょう。米国と日本の違いをいろいろ考えさせられました。ラストシーンは、ニクソンを辞任に追い込んだウオーターゲート事件を描いた映画「大統領の陰謀」の冒頭シーンでした。(2018年米国作品・レンタル可能)
2019年04月17日
コメント(0)
最後の二作品です。「金子文子と朴烈」平成の終わりに観た。天皇制に対する徹底した批判を、韓国映画が作ったからと言って、日本人が多く出るこの作品に、日本人が数人しか出演していないのがとても恥ずかしい。日本人の観客は、非常に入っているというのに、である。強烈な法廷劇である。しかも、韓国のロケ村と法廷と、ソウル西門刑務所を使って、富士山の見える風景だけが日本で、非常に安くつくられているが、緊張感のある脚本だった。主人公は朴烈である。そのように作られている。しかし、鮮烈な印象を残すのはあくまでも文子だ。文子のソウル時代を少しでも劇中に入れていたならば「何が私をこうさせたか」というテーマが非常に鮮明になっだのに残念である。(解説とあらすじ)1923年関東大震災後の混乱の中、囚われたふたりは、愛と誇りのため、強大な国家に立ち向かう。韓国で235万人の動員を記録した、激しくも心揺さぶる真実の物語。1923年、東京。金子文子は、朝鮮人アナキスト朴烈が書いた「犬ころ」という詩に心を奪われる。出会ってすぐに朴烈の強靭な意志とその孤独に共鳴した文子は、唯一無二の同志、そして恋人として生きる事を決め、日本人や在日朝鮮人による「不逞社」を結成した。しかし同年9月1日、日本列島を襲った関東大震災により、ふたりの運命は大きなうねりに巻き込まれていく。内務大臣・水野錬太郎を筆頭に、日本政府は関東大震災の人々の不安を鎮めるため、朝鮮人や社会主義者らを無差別に総検束。検束された朴烈と文子は、社会を変えるため、そして自分たちの誇りのために、獄中で闘う事を決意。その闘いは韓国にも広まり、多くの支持者を得ると同時に、日本の内閣を混乱に陥れていた。そして国家を根底から揺るがす歴史的な裁判に身を投じていく事になるふたりには、過酷な運命が待ち受けていた…。本作は『建築学概論』『探偵ホン・ギルドン 消えた村』のイ・ジェフンと、イ・ジュンイク監督のミューズとして『空と風と星の詩人』で注目された新鋭チェ・ヒソがW主演を務め、2017年に韓国で大ヒットを記録。『王の運命』『空と風と星の詩人』のイ・ジュンイク監督がメガホンをとり、大正期の日本に実在した金子文子と朴烈の愛と闘いの物語を描き出した。大鐘映画祭で監督賞をはじめ5冠を達成し、計10冠を記録。日本では2017年の大阪アジアン映画祭のオープニングを飾り、大きな話題を呼んだ。人気スターのイ・ジェフンは、朴烈役を演じるに辺り日本語を習得し、その卓越した演技により表現者として大きな転機を迎えた。チェ・ヒソは、本作で大鐘映画祭新人女優賞と主演女優賞のW受賞のほか、韓国映画評論家協会賞、青龍映画賞などでも新人女優賞を獲得、一躍人気女優となった。日韓両国の実力派俳優による共演も見所のひとつ。布施辰治を演じた山野内扶やキム・ジュンハン、韓国を拠点に活動する在日コリアンの俳優キム・インウ。そして金守珍をはじめとした劇団「新宿梁山泊」のメンバーが顔を揃える。監督:イ・ジュンイク/出演:イ・ジェフン、チェ・ヒソ、キム・インウ、キム・ジュンハン、山野内扶、金守珍2019年3月31日シネマ・クレール★★★★http://www.fumiko-yeol.com/ 「ビール・ストリートの恋人たち」この監督は、黒人の歴史から「黒人悲劇の時代」「黒人運動の時代」「黒人解放の時代」以外の黒人の歴史を吸い上げようとしているように見える。黒人の中には、犯罪者や運動家やスーパースターだけがいたのではない。普通の愛し合う平凡な恋人たちがいたのだと。そういうフィルムを作るのには、成功している。しかし、普通ではあるけど、普遍的ではない。やはり黒人に拘泥している。私もエチオピア生産のカバンを買ったからわかるが、彼らの民族色は、緑であり、水色であり、赤色なのだ。そういう色調でずっと映像をつくる監督のスタイルは、これで確立したが、私はだから何?と思ってしまう。(解説)「ムーンライト」でアカデミー作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督が、1970年代ニューヨークのハーレムに生きる若い2人の愛と信念を描いたドラマ。ドキュメンタリー映画「私はあなたのニグロではない」の原作でも知られる米黒人文学を代表する作家ジェームズ・ボールドウィンの小説「ビール・ストリートに口あらば」を映画化し、妊娠中の黒人女性が、身に覚えのない罪で逮捕された婚約者の無実を晴らそうと奔走する姿を描いた。オーディションで抜てきされた新人女優キキ・レインと、「栄光のランナー 1936ベルリン」のステファン・ジェームスが主人公カップルを演じ、主人公を支える母親役で出演したレジーナ・キングが第91回アカデミー賞で助演女優賞に輝いた。キャストキキ・レイン ティッシュ・リヴァーズステファン・ジェームス ファニー(アロンゾ・ハント)コールマン・ドミンゴ ジョーゼフ・リヴァーズ監督バリー・ジェンキンス2019年3月31日シネマ・クレール★★★
2019年04月08日
コメント(0)
「運び屋」ずっと、イーストウッドの人生を顧みての呟きに見えて仕方なかった。妻のメアリーが言う。「貴方は外ではいつもすごい人物だと思われたかった。でも、家では何もできない。」最後の時は、ずっと凡ゆる殺される可能性を封じて側にいる。結局それで家族は許してくれた。予想に反して、終始予想通りの展開だったけど、結局家族の許しだけが想定外だった。何処かで見たと思ったら娘役の女性はアリソン・イーストウッド実娘でした。最後の「フォー〜」は、誰だったんだろ。(STORY)90歳のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、家族を二の次にして仕事一筋に生きてきたが、商売に失敗した果てに自宅を差し押さえられそうになる。そのとき彼は、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられる。それを引き受け、何の疑いも抱かずに積み荷を受け取っては運搬するアールだったが、荷物の中身は麻薬だった。(キャスト)クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、イグナシオ・セリッチオ、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ(スタッフ)監督・製作:クリント・イーストウッド脚本:ニック・シェンク製作:ティム・ムーア、クリスティーナ・リヴェラ、ジェシカ・マイヤー、ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス撮影:イヴ・ベランジェ美術:ケヴィン・イシオカ編集:ジョエル・コックス衣装:デボラ・ホッパー音楽:アルトゥロ・サンドヴァル2019年3月17日movix倉敷★★★★http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie/「スパイダーマン スパイダーバース」「スパイダーマンは独りじゃない。勇気を持って、自分らしく生きれば、みんなスパイダーマンだ」というメッセージをストレートに出して、王道のヒーローアニメだった。最初から最後まで目まぐるしく変わる動画をものしたこと。かっこいい音楽で全面覆ったこと。黒人主人公、アフリカ系少女、アニメロボットキャラ、動物、白黒時代、そして中年太りの各ヒーローで、多様性の時代を反映している。なかなか楽しかった。ともかくアメリカは「ヒーロー」が好きなのだ。(1)ある日クモに噛まれてヒーローになる。(2)活動に挫折する(3)親しい人の死で、絶望する。(4)復活する。(5)本来のホームに帰って行く総ての英雄譚にも共通するが、スパイダーマンも、今回は特に6回も繰り返したことで、「お約束」という事がわかった。(ストーリー)本年度アカデミー賞® 長編アニメーション賞受賞ニューヨーク、ブルックリン。マイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。彼はスパイダーマンだ。しかし、その力を未だ上手くコントロール出来ずにいた。そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。その天地を揺るがす激しい衝撃により、歪められた時空から集められたのは、全く異なる次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマンたちだった――。(スタッフ・出演)監督 ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン出演 声の出演(字幕):シャメイク・ムーア、ジェイク・ジョンソン、ヘイリー・スタインフェルド、マハーシャラ・アリ、ブライアン・タイリー・ヘンリー/声の出演(吹替):小野賢章、宮野真守、悠木碧2019年3月14日TOHOシネマズ岡南★★★★http://www.spider-verse.jp/site/sp/「キャプテン・マーベル」マーベルの隠し球。一種、最強なんでもありのヒーロー。女は怒らしたら怖い。結局、あの猫は何者?20年間何していたの?おてんば大将の彼女はどんなレディになったの?なんか、まだまだ?がいっぱい。(STORY)1995年、ロサンゼルスのビデオショップに、突然正体不明の女性(ブリー・ラーソン)が空から降ってくる。彼女には驚くべきパワーが備わっていたが、全く覚えていない“記憶”がフラッシュバックすることが悩みだった。その記憶にはある秘密が隠されており、それを狙う敵がいた。彼女は、後にアベンジャーズを結成するニック・フューリーと共に戦いに身を投じることになる。(キャスト)ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ベン・メンデルソーン、ジャイモン・フンスー、リー・ペイス、ラシャーナ・リンチ、ジェンマ・チャン、アネット・ベニング、クラーク・グレッグ、ジュード・ロウ、(日本語吹き替え版)、水樹奈々、森川智之、日笠陽子、安元洋貴、日野聡、関俊彦(スタッフ)監督・脚本・ストーリー:アンナ・ボーデン、ライアン・フレック脚本・ストーリー:ジェニーヴァ・ロバートソン=ドウォレ ットストーリー:ニコール・パールマン、メグ・レフォーヴ2019年3月21日movix倉敷★★★
2019年04月07日
コメント(0)
「アリータ バトル・エンジェル」鉄腕アトムを作った日本人にとっては、ここまで人間臭い機械人間いな、アンドロイドは何の違和感もなく、しかも時代は26世紀ということで、何でもありで違和感ゼロ。偶然にも、数日前に観た「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」でデビューしたジェニファー・コネリーと、数日前にオスカーをとったマシャーラ・アリに出会えた。アリータには、普通の女性ではあり得ない眼の大きさと輝きを与えた。様々な人間離れの表現の成否は保留したい。その他、21世紀の現代では出来うる限りの「再現力」でもって、力演と世界観を作成をしていたと思う。全ての謎は次回作に持ち越しており、今はこの世界の判断がつかない。(ストーリー)数百年後の未来。サイバー・ドクターのイド(クリストフ・ヴァルツ)は、アイアン・シティのスクラップ置き場でアリータ(ローサ・サラザール)という意識不明のサイボーグを見つける。目を覚ましたアリータは、一切の記憶をなくしていた。だが、ふとしたことから並外れた戦闘能力を秘めていることを知り、なぜ自分が生み出されたのかを探ろうと決意する。やがて、世界を腐敗させている悪しき存在に気付いた彼女は、立ち向かおうとするが……。キャストローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、エド・スクライン、ジャッキー・アール・ヘイリー、キーアン・ジョンソン、エイザ・ゴンザレススタッフ監督:ロバート・ロドリゲス脚本・製作:ジェームズ・キャメロン脚本:レータ・カログリディス原作:木城ゆきと製作:ジョン・ランドー製作総指揮:デヴィッド・ヴァルデス撮影:ビル・ポープ編集:スティーヴン・リフキン、アイアン・シルヴァースタイン音楽:トム・ホルケンボルフ2019年3月11日movix倉敷★★★★「天才作家の妻 40年目の真実」ミステリー仕立て。実在作家の真実ならばともかく、虚構の世界の話ならば、プロットは大したことではない。問題は、校正(演出・演技)の間に肉付けされる細部の「リアル」だろう。確かにグレーン・クローズの「内に溜め込んで、全てを表現に昇華させた妻の半生」を演じた表現には説得力があった。死ぬ間際の夫に向かって「愛しているわ。心から」と言っても、「何が真実か、わからない」と夫が言うのも宜なるかな。ただ、このプロットにこの肉付けは弱い。果たして、そういう作品でノーベル賞はとれるのか?どうやらオスカーは逃したのも頷ける。(解説)ノーベル賞に輝いた作家とその妻の秘密にまつわる心理サスペンス。メガホンを取るのは、ビョルン・ルンゲ。『アルバート氏の人生』などのグレン・クローズと『キャリントン』などのジョナサン・プライスが夫婦を演じ、ドラマシリーズ「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」などのクリスチャン・スレイターらが共演する。(あらすじ)現代文学の重鎮ジョゼフ(ジョナサン・プライス)と妻のジョーン(グレン・クローズ)はノーベル文学賞受賞の知らせを受ける。息子を連れて授賞式が開かれるストックホルムに行くが、そこで記者のナサニエル(クリスチャン・スレイター)からジョセフの経歴に関わる夫婦の秘密について聞かれる。類いまれな文才に恵まれたジョーンは、ある出来事を契機に作家の夢を断念し、夫の影となって彼を支え続けていた。2019年3月25日シネマ・クレール★★★ 「バーニング 劇場版」世の映画評を読んで驚いた。ヘミはいなかったかもしれない、猫はいなかったかもしれない、井戸はなかったかもしれない。全ては曖昧なお話だった、というところが魅力だ、などと言っている。確かに全ては描いていないが、最後の場面が現実だとしたならば、全ての事は明らかになっていると思う。ヘミはベンによって、要らないビニールハウスのように殺されたか、売られたかしたのである。時計が、他の女性の戦利品のように置かれていたかことからも明らかだろう。猫はいた。ベンの部屋の猫があの猫かははっきりしないが、ウンチがあった以上はもともとはいたのである。井戸はあった。見ようとしない者には井戸は見えない(虐げられてきたジョンスの母親には見えた)。その中で、ジョンスだけはヘミに気がついた。だから最初からヘミは、猫のようにジョンスに懐いたのだ。こんなにもきちんと説明し、その意図も、韓国の格差社会にあると、明確に描いているのに、まるでファンタジーのように捉える、日本の観客の、何という「現実を見る眼」のないことか!ジョンスは、簡単に捕まらないように、裸になったが、あまりにも杜撰な犯行だった。捕まるのは、時間の問題だろう。その時には、ベンの罪も明らかになるだろうか。いや、それなりの保険はかけているのが、現代の富裕層だろう。そういう、韓国の人たちが観ると、極めてリアルな風景を写し撮った、リアルな作品だった。猫のように表情の変わるチョン・ジョンソは素晴らしかったし、長回しのシーン美しさも特筆ものだった。また、「あると思うのではなく、ないということを忘れるのよ、大事なのは食べたいという気持ち」というのは、作品全体を貫いてはいたが、その気持ちが、何処に着地したのか、それだけはわからないミステリーだった。(解説)『ポエトリー アグネスの詩(うた)』などのイ・チャンドン監督が、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を大胆に翻案したミステリー。小説家志望の主人公の周囲で起こる不可解な出来事を、現代社会に生きる若者の無力さや怒りを織り交ぜながら描く。主演は『ベテラン』などのユ・アイン。ドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」などのスティーヴン・ユァン、オーディションで選ばれたチョン・ジョンソらが共演する。(あらすじ)小説家を目指しながらアルバイトで生計を立てているジョンス(ユ・アイン)は、幼なじみのヘミ(チョン・ジョンソ)からアフリカ旅行へ行くのでペットの猫を預かってほしいと頼まれる。帰国したヘミに旅先で出会ったベン(スティーヴン・ユァン)を紹介されたジョンスはある日、ベンに秘密を打ち明けられ、恐ろしい予感が頭から離れなくなる。2019年3月25日シネマ・クレール★★★★
2019年04月06日
コメント(0)
3月に観た映画は全部で11作品。4回に分けて紹介します。「グリーンブック」何故モーテンセンは、あそこまで太らなくてはならなかったのか。もちろん、終始食べてばかりのトニー(よくもまあ2013年まで長生きしたのだとは思う)の役を作るためには必然だった。でも、何故ヴィゴ・モーテンセンだったのか?これは所謂典型的な二人きりのロードムービーだ。その存在感を出さなくては、失敗してしまう。新人は使えない。過去、ある時は英雄の旅を乗り越えた王様、ある時には全身入れ墨を施したロシアン・マフィア、ある時には善良なドイツの大学教授、ある時にはディストピア世界でひとり息子を守る父親を演じたモーテンセンならば、NYブロンクスで生まれ育ち犯罪世界の空気を吸いながらも、善良さを決して捨てなかったイタリア系アメリカ人を演じ切れると踏んだからだろう。時々見せる優しい表情が、過去の映画のことを反映してリアルさを出していた。ドクター・シャーリーの南部演奏ツアーは、62年当時ではかなりの勇気が要ったものだったのだろう。シャーリーは、そんな熱血漢とは思えないけれども、やはり外見とは違う隠された孤独感を持っている。そういう複雑な役を、オスカー俳優マハーシャラ・アリは見事に演じたと思う。外見とは違う隠されたキャラクターが、この映画のテーマなのかもしれない。本来、決して出会わない水と油の2人が、次第とそれを理解する。というのは普遍的なテーマである。登場人物たちが、実は「奥の手を持っていた」という「実話」も、うまく機能している。シャーリーの電話、トニーの銃、奥さんの最後のささやきである。(STORY)1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。(キャスト)ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニスタッフ監督・脚本・プロデューサー:ピーター・ファレリー脚本・プロデューサー:ブライアン・カリー脚本:ニック・ヴァレロンガプロデューサー:ジム・バーク、チャールズ・B・ウェスラー、ニック・ヴァレロンガ2019年3月5日Movix倉敷★★★★★「翔んで埼玉」倉敷でもヒットしています。若者ばかりが、観ていました。ひたすら、県のことをディスるお話。学園ものかと思いきや、実は埼玉解放戦線が活躍する革命物語だったり、複雑な(?)物語入れ子構造になっていたり、同じときに奇をてらった「カメラを止めるな!」がテレビ上映しているときに観たのだが、こちらの方がよっぽど丁寧、かつくだらなかった。ただし、二階堂ふみやGACKTは力演しており、いやあ流石だと思う。機動隊に立ち向かう数万の市民の行動はでてくるが、これを観たからといって決して若者が立ち上がらなければ、と影響を受けるお話ではない。くれぐれも、安倍晋三さん弾圧しないように。(STORY)東京都民から冷遇され続けてきた埼玉県民は、身を潜めるように暮らしていた。東京都知事の息子で東京屈指の名門校・白鵬堂学院の生徒会長を務める壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は、容姿端麗なアメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)と出会い、惹(ひ)かれ合う。しかし、麗が埼玉出身であることが発覚し……。(キャスト)二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、成田凌、間宮祥太朗、加藤諒、益若つばさ、中尾彬、武田久美子、麿赤兒、竹中直人、京本政樹(スタッフ)原作:魔夜峰央監督:武内英樹脚本:徳永友一2019年3月8日Movix倉敷★★★★「ヒューマン・フロー/大地漂流」高野秀行さんがコメントを寄せている。「さまざまな難民キャンプをいろいろな角度で撮ると、焦点がぼけて作品が平板になりがちだ。でもこの作品は圧倒的な映像美と軸のぶれない世界観で軽々とその罠をクリヤーしている。アイ・ウェイウェイ監督おそるべし。」私もそう思った。国際問題の詳しい知識無しには、難民問題の全体像はわからない。しかし、わからないからと言って無視すべき問題でもない、ということをこの映像を通してまざまざと感じることのできる。雄大な自然風景ではない。無機質な自然物、或いは厳しい砂嵐や岩場、それらの景色が何故にここまで美しいのか。美術家の監督の視線から撮っているから、だけではないだろう。そこに「人間」がいるからだ。まるでアリのように動き回る無数の黒い点が、やがて自転車に乗った男や子供の姿で見えてくる。SNS時代に世界は狭くなり、難民は世界史上とてつもない規模で広がり、日本の明治時代の人口よりも遥かに多い人たちが、漂流している。難民を始めた集団に老人は多いが、難民キャンプには圧倒的に若者と子供たちが動き回っている。どれだけ厳しい環境なのか。私は微かに想像する。何度か、観るべき作品だと思う。(解説)今、世界に最も影響力がある現代美術家アイ・ウェイウェイが、"大地の漂流者たち"と共に地球を旋回していく。貧困・戦争・宗教・政治的立場・環境問題など、様々な理由で増え続ける難民たち。その数は、2018年には過去最高の6,850万人に上り(撮影当時の16年は6,500万人)、深刻化する事態とは裏腹に難民受け入れを拒否する国が広がっている。 いま、世界で何が起きているのか。難民たちが辿り着くギリシャの海岸、四方八方の国に散るシリア難民、ガザに封鎖されるパレスチナ人、ロヒンギャの流入が止まらないバングラデシュ、ドイツの空港跡を利用した難民施設、アメリカとメキシコの国境地帯など、23カ国40カ所もの難民キャンプを巡り、彼らの旅路をなぞってカメラに収めたのは、中国の現代美術家であり社会運動家としても活躍するアイ・ウェイウェイ。11年米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、その力強い美術的主張が注視される彼が、祖国を追われ地球上を逃げ惑う人々の日常に肉薄する。自らのスマートフォンやドローンからの空撮を駆使し、地球を巡っていく壮大で圧倒的な映像美は、ヴェネチア国際映画祭を始め各国の映画祭で賞賛された。“大地の漂流者たち”が味わう苦難の中に、人間の尊厳と希望を、索漠とした光景に息をのむほどの美しさを見つけ打ちのめされる本作は、“観る”のではなく“体験”するためにつくられた。何度も地図の書き換えが行われてきた動乱の世界で、人間の尊厳への関心を失いつつある社会は予測もつかない分裂の危険に瀕していると、全世界へ警鐘を鳴らす衝撃のドキュメンタリー!難民とは難民については、1951年の難民条約に以下のように定められています。「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」上記に加えて、「平和に対する犯罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪、避難国外での重大な犯罪、あるいは国連の目的や原則に反する行為を行ったことがない」、という条件もクリアする必要があります。このように、国際法上でいう「難民」の正式な定義は、たいへん狭く限定的なものなのです。世界の「難民」はここ10年で何とほぼ倍増、国内避難民など強制的な移動を余儀なくされた人を加えると6,850万人にのぼります。これは世界全人口の1%弱。実に100人に1人が移動を強いられ“難民”あるいは迫害や紛争を逃れるため国内避難民になっていたり、他の国に庇護を求めていたりするという計算になります。いまや世界は、難民を抜きにして語る事はできません。Agenda note「国連難民高等弁務官事務所の広報日記」連載より抜粋執筆:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)/ 駐日事務所広報官 守屋由紀日本の難民問題日本に庇護を求める難民申請者の数も年々増えています。10年前には難民申請者がわずか1,600人だったのが、昨年は10倍以上、2万人近く(1万9,629人)ありました。日本は1970年代後半からインドシナ難民の大量流出を受け、1981年難民条約に、翌1982年に難民議定書に加入、新たに難民認定制度を導入しています。日本は、1970年代後半から難民の受け入れを始めてから、インドシナ難民、条約に基づく難民認定された人、難民として認定されなかったものの、人道配慮を理由に在留を認められた人、2010年に開始した第三国定住によって受け入れられた人が延べ1万5,000人近くいます。そんな私たちの身近にいる難民…、彼らはどんな想いを抱いて過ごしているのでしょうか。Agenda note「国連難民高等弁務官事務所の広報日記」連載より抜粋執筆:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)/ 駐日事務所広報官 守屋由紀2019年3月4日シネマ・クレール★★★★
2019年04月05日
コメント(0)
最後の3作品。力作ばかりだった。「パッドマン 5億人の女性を救った男」題名からすると、壮大な話なので、60年か70年代のことかと思っていたら、なんと2001年から始まる話と知り、そこで先ずびっくり(感動)した。生理現象を「穢れ」と考えて、普通の生活と隔離する風習は珍しくはない。日本でも、おそらく明治の中頃までは田舎では普通にやっていたことである。しかし、100年遅れているからといってインドをなめてはいけない。ナプキンの「キモ」となるセルロースの情報を得て取り寄せるのは、アルバイト先の子供のPCからだというのが、現代インドを象徴している。インドには、日本の10倍の10億の人間がいるのだ。「インドは遅れているのではない。10億の頭脳があり、可能性がある」という有名人の演説には感動(びっくり)した。私利私欲なく一生懸命やれば、周りが助けてくれる。これが、古今東西普遍的な真理だろう。国連演説は何処まで実際をトレースしているのだろうか。普通は、10分以上の演説などクライマックスで持って来ない限り、脚本化しないものだが、なんとあくまでも一つのエピソードとして描いていた。その中の「生理のために女性は1年のうち5×12=60日間(二ヶ月)お金を生み出していない。私の発明は、女性に男と同様の仕事をさせる。まだ18%しか、ナプキンを使っていない。」というリングイッシュ(片言英語)での演説内容には、びっくり(感動)した。事実と何処まであっているのか、確認したい。歌って踊っては、出来うる限り少なくなっていた。ボリウッドも少しずつ変わっている。(ストーリー)「愛する妻を救いたい――。」その想いはやがて、全女性たちの救済に繋がっていく。インドの小さな村で新婚生活を送る主人公の男ラクシュミは、貧しくて生理用ナプキンが買えずに不衛生な布で処置をしている最愛の妻を救うため、清潔で安価なナプキンを手作りすることを思いつく。研究とリサーチに日々明け暮れるラクシュミの行動は、村の人々から奇異な目で見られ、数々の誤解や困難に直面し、ついには村を離れるまでの事態に…。それでも諦めることのなかったラクシュミは、彼の熱意に賛同した女性パリーとの出会いと協力もあり、ついに低コストでナプキンを大量生産できる機械を発明する。農村の女性たちにナプキンだけでなく、製造機を使ってナプキンを作る仕事の機会をも与えようと奮闘する最中、彼の運命を大きく変える出来事が訪れる――。(解説)インドで初登場NO.1の大ヒット!衛生的なナプキンが手に入らず生理障害に苦しむインドの女性たちの現状、そして男性が“生理”について語るだけでも奇異な目で見られるインド社会の中で公開した本作は初登場NO.1の大ヒット!主人公ラクシュミ役のアクシャイ・クマールがみせたクライマックスの演説シーンは圧巻で観客を感動と涙の渦に巻き込む。インドに革命を起こした<パッドマン>ことムルガナンダム氏本作の物語には実在のモデルがいる。モデルとなったのはアルナーチャラム・ムルガナンダム氏。1962年南インド生まれの56歳。彼は商用パッド(ナプキン)の3分の1もの低コストで衛生的な製品を製造できるパッド製作機の発明者。かつ、女性たち自らがその機械を使い、作ったナプキンを女性たちに届けるシステムを開発した彼の活動は高く評価されて、2014年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、2016年にはインド政府から褒章パドマシュリも授与された。ボリウッドの実力派俳優たちが熱演主人公ラクシュミに扮するのは、素朴で誠実な男性を演じさせたら右に出る者がいない人気男優、“インドのジョージ・クルーニー(!?)”ことアクシャイ・クマール。リウッドではトップの稼ぎ頭で演技力にも定評がある。妻ガヤトリ役には実力派女優のラーディカー・アープテー、ラクシュミを助けてナプキン普及に尽力する都会の女性パリーには、『ミルカ』(13)で日本でもお馴染みのボリウッドのトップ女優ソーナム・カプールが演じる。監督はユニークなテーマの作品を作り続けているR.バールキ。彼の妻は『マダム・イン・ニューヨーク』(12)の監督ガウリ・シンデーで、あの作品にもバールキ監督はプロデューサーとして関わっている。2019年2月25日シネマ・クレール★★★★http://www.padman.jp/site/「女王陛下のお気に入り」本来の政務とかけ離れて、7人もの子供を亡くし孤独に苛まれ、容姿のコンプレックスもあったアン王女をめぐって、2人の女性のお気に入り合戦のドロドロとした思惑を描いて、18世紀の宮廷と議会運営に苦戦する貴族の思惑、そして退廃ぶりを見せて、面白かった(文部省の書いた教科書「民主主義」にある通り、英国の王族は野党の主張を無視できない)。(解説)本年度アカデミー賞レジスタードマーク 主演女優賞受賞18世紀初頭、宿敵ルイ14世のフランスと交戦中のイングランド。揺れる国家と女王のアンを、彼女の幼馴染で女官長を務めるレディ・サラが操っていた。そこに、サラの従妹で上流階級から没落したアビゲイルが召使として働くことになる。サラに気に入られ、侍女に昇格したアビゲイルだったが、彼女の中に生き残りをかけた野望が芽生え始める。夫が総指揮をとる戦争の継続をめぐる争いにサラが没頭しているうちに、アビゲイルは少しずつ女王の心をつかんでいくのだが―。※PG12監督ヨルゴス・ランティモス出演オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン2019年2月28日TOHOシネマズ岡南★★★★「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(ディレクターズカット版)」(午前10時からの映画祭)1984年公開らしい。しかし、舞台は1920年代、33年、そして68年のニューヨークである。私はずっとこの作品を禁酒法時代を背景とした暗黒街ノワールの傑作と勘違いしていた。1度観た覚えはあるが、9割形寝ていたらしく全く覚えていないと思っていた。今回観てわかったのだが、それさえも勘違いしていて、今回まるきり初見だった。よって、これはこのように言うことができるのかもしれない。移民の子セルジオ・レオーネ監督が、死ぬ間際に観た、古きアメリカの姿を幻視した物語である、と。悪いこともしたけど、人として曲がったことは避けて来たユダヤ移民の子たちが、どのように少青年時代を送ったのか。女性への憧れ、頂点に立つ夢、そして挫折。約60年の時を懐古して、時を振り返ってヌードルスがアヘン巣窟で笑う場面のラストカット。監督としてはしてやったりという気持ちなのに違いない。ユダヤ財閥からおそらく豊富な資金を受け取って、これ以上にない街の再現を行った。CGに頼らないで、現代では、もうここまでの街の再現はあり得ないと思う。大画面で観るべき作品である。けれども傑作ではない。若き日のヌードルスとマックス、2人が恋する美少女デボラの存在感が、この映画の方向を決めたと言っていい。少女期のジェニファー・コネリーは息をのむ美しさだった。「オンリー・ザ・ブレイブ」(2017)の消防士の妻を演じたコネリーを私は20年振りぐらいに観たが、まだ美しかったが、鼻が異常に高くなっていた。痩せたためか。少女の美しさはほんの一瞬なのかもしれない。ヌードルスもマックスも意図しない彼女の美しさに[人生を狂わされた]のかもしれない。(解説)アウトローの世界に身を投じた若いユダヤ移民たちのつかの間の栄光と挫折を描く。製作はアーノン・ミルチャン。エグゼキュティヴ・プロデューサーはクラウディオ・マンシーニ。監督は「夕陽のギャングたち」のセルジオ・レオーネ。彼の遺作となった。ハリー・グレイの原作をレオ・ベンヴェヌッティ、ピェロ・デ・ベルナルディ、エンリコ・メディオリ、フランコ・アルカーリ、フランコ・フェリーニ、レオーネが共同で脚色化、撮影はトニーノ・デリ・コリ、音楽はエンニオ・モリコーネ、編集はニーノ・バラリ、衣裳はガブリエラ・ペスクッチ、美術はカルロ・シーミが担当。出演はロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガヴァン、トリート・ウィリアムズ、チューズデイ・ウェルド、バート・ヤングなど。日本版字幕は進藤光太。イーストマンカラー、ビスタサイズ。1984年作品。後に229分の完全版が発表された。ストーリー デヴィッド・アーロンソン、通称ヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)はユダヤ移民の子である。1923年、17歳のヌードルスがマックス(ジェームズ・ウッズ)と出会ったことから、仲間が寄り集まってゆく。パッシィー、コックアイ、年少のドミニク、親が経営するバーを手伝うモー、ヌードルスが憧れているモーの妹デボラ(エリザヴェス・マクガヴァン)、ケーキ1個で誰にでも身体を許してしまうペギー…。折りからの禁酒法施行を利用して稼ぐことを覚え、その金を共同のものとして駅のロッカーに常置しておくことを誓い合った彼らに大きな試練がやってくる。地元のやくざバグジーたちの襲撃でドミニクが殺されてしまったのだ。怒ったヌードルスはバグジーを刺し殺す。刑期は6年だった。1931年、刑務所から出てきたヌードルスも、迎えに来たマックスもすっかり成長していた。デボラも少女から成熟した美しい娘へと変貌し、彼女への愛が再び燃え上がった。再会の喜びにひたる間もなく、ヌードルスは新しい「仕事」にひき入れられた。デトロイトのギャング、ジョー(バート・ヤング)が持ってきたある宝石店襲撃プランを実行することになったのだ。事は手順どおり運んだ。だが店の主人の妻キャロル(チューズデイ・ウェルド)の意外な抵抗にあい、ヌードルスは彼女を犯す。禁酒法時代はやがて終焉を迎え、彼らは次の仕事に着手した。多発する労働争議への裏からの介入だ。しかし、ヌードルスの心は充たされなかった。デボラの愛が欲しかったのだ。しかし彼女はハリウッドに行って女優になるという幼い頃からの夢を実現するために、彼の前から姿を消した。ある日、マックスが全米一の警備を誇る連邦準備銀行を襲撃する計画を打ち明けた。ヌードルスは頑強に反対したが、マックスは言い出したらひき下がらない男だ。マックスの愛人になっているキャロルは警察に密告してマックスの計画を潰す以外に彼の命を助ける方法はないとヌードルスに懇願した。ヌードルスはキャロルの願いを聞き入れ、ダイヤルを回した。1968年、60歳を越したヌードルスは1通の墓地の改葬通知を手にしてニューヨークにやってくる。彼は、密告によって警察に殺されたマックス、パッツィー、コックアイが眠る墓地で1個の鍵を発見した。それはあの駅のロッカーの鍵だった。ロッカーの中には現金がつめ込まれた鞄が置いてあった。マックスは生きている! ヌードルスはその直感に従って今は女優として大成しているデボラに会い、デボラの子がマックスにそっくりなので唖然とした。ヌードルスとマックスは30数年ぶりに会った。マックスは、今はベイリー財団の理事長として政財界に君臨しており、ヌードルスの裏切りは全てマックスが計画したものだったのだ。ヌードルスはマックスの邸宅を辞し、彼のあとを追ってきたマックスは、清掃車の後部に身を投じた。スタッフ 監督 セルジオ・レオーネ脚本 レオ・ベンヴェヌーティ ピエロ・デ・ベルナルディ エンリコ・メディオーリ フランコ・アルカッリ フランコ・フェリーニ セルジオ・レオーネ原作 ハリー・グレイ 製作総指揮 クラウディオ・マンシーニ製作 アーノン・ミルチャン撮影 トニーノ・デリ・コリ美術 カルロ・シーミ音楽 エンニオ・モリコーネ編集 ニーノ・バラリ衣裳デザイン ガブリエラ・ペスクッチ出演ロバート・デ・ニーロ DavidNoodlesジェームズ・ウッズ Maxエリザベス・マクガヴァン Deborahトリート・ウィリアムズ Jimmy_O'Donnellチューズデイ・ウェルド Carolバート・ヤング Joeジョー・ペシ Frankie_Monaldウィリアム・フォーサイス CockeyeJames Hayden PatsyLarry Rapp Fay_Moeダーレーン・フリューゲル Eve2019年2月28日TOHOシネマズ岡南★★★★
2019年03月08日
コメント(0)
2月に観た映画第2弾です。「フロンランナー」フロントランナーとは、最有力候補のこと。88年米国大統領選挙において、民主党最有力だったゲイリー・ハートが、序盤の不倫スキャンダル報道で消えた3週間を描く。「(候補者の私生活を問わない)時代ではなくなったということだ」「それは誰が決めるんですか」「読者だよ」80年代の終わりにもアメリカで既に問題になっている、ニュース報道の大衆紙化、ひいてはポピュリズムに繋がる大統領選挙の人気投票化は、トランプ時代のアメリカの問題でもあるけど、現代の日本の問題でもあるだろう。ハートというポピュラーな名前やハンサムかどうか、ということが、選挙に大きく影響されるということは、事件が露わになる前に既に選挙事務所で語られている。それは更に加速して、その後のクリントンやブッシュ、トランプにもひきつがれて行くだろう。選挙にあまり関係しないという日本においても、波のように小池旋風が現れたり、「不適切動画」の「流行」など、表面の報道だけで世論が語られる状況が今も続いている。必要なのは、深くきちんとした「調査報道」であり、それが読まれる世論を作ることだ。「デイズジャパン」の廃刊は、そういう意味でも非常に残念だ。(ストーリー)1988年、米国大統領選挙。コロラド州選出のゲイリー・ハート(ヒュー・ジャックマン)は、史上最年少にして最有力候補《フロントランナー》に躍り出る。知性とカリスマ性を兼ね備えた彼は、ジョン・F・ケネディの再来として大衆に愛され、当選は確実視されていた。しかし、 マイアミ・ヘラルド紙の記者が掴んだ“ある疑惑”が一斉に報じられると、事態は一変する。勝利を目前にして、ハートの築き上げた輝ける未来は一気呵成に崩れ去り、一つの決断を下す時が訪れる…。あの日、一体何が起きたのか。監督ジェイソン・ライトマン出演 ヒュー・ジャックマン、ヴェラ・ファーミガ、J.K.シモンズ、アルフレッド・モリーナ2019年2月14日TOHOシネマズ岡南★★★★http://www.frontrunner-movie.jp/sp/「あの日のオルガン」倉敷市出身の平松美恵子監督・脚本の本作に、Movix倉敷の観客は、8番館だけどほぼ満杯の観客で応えていました。笑泣きの映画を、久しぶり体験した。庶民視点の多くの戦争映画はあるが、疎開映画も幾つかあるが、疎開保育園を正面から描いたのは、これが初めて。未就学児童なので、村の子供との軋轢はない代わりに、保母さんがほとんど親代わりで約5-6人で53人の子供を疎開生活させる。相当な苦労があったのだ。大原櫻子がとてもいい。もうホントに15歳くらいの近所の女学生から駆り出された子供としか思えない。そういう彼女が、幼児の世話を命がけでする。リアルだった。戸田恵梨香もとてもいい。面白い笑い、さみしい笑い、悲しい涙、心温まる涙、様々な感情を引き起こすいい作品だったと思う。(ストーリー)第2次世界大戦が終局を迎えつつあった1944年。警報が鳴るたびに防空壕に避難していた品川の戸越保育所では、幼い園児たちの命を守るため保育士たちが保育所の疎開を検討していた。さまざまな意見を持つ親たちを説得してようやく受け入れ先が決まり、埼玉の荒れ寺で疎開生活が始まる。保育士たちは、多くの問題と向き合いながら子供たちと過ごしていたが……。(キャスト)戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、萩原利久、山中崇、田畑智子、陽月華、松金よね子、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功(スタッフ)監督・脚本:平松恵美子エグゼクティブプロデューサー・企画:李鳳宇プロデューサー:三宅はるえ企画:鳥居明夫撮影:近森眞史照明:宮西孝明美術:小林久之録音:西山徹編集:小堀由起子音楽:村松崇継2019年2月24日Movix倉敷★★★★https://anohi-organ.com/「アクアマン」DC世界は、宇宙からスーパーマン、神話世界からスーパーウーマン、パラレルワールドのニューヨークからバッドマン、そして七つの海の王として、アクアマンがキャラとして誕生させた。それぞれが、私的には合格作品だった。マーベル世界との超人とは、パラレルワールドなので出会う可能性は低いが、あとあとの大きなサプライズとしては、それぐらいしか残っていないかも。一つの王様誕生譚の中に、人間の悪人との闘争、海の王国戦争、闘いアイテムの矛誕生物語をぶっこんで、テンポよく、作り込んだお得感を与えるつくりは、いかにも現代風、ヒロインもなかなか勇敢で、また環境問題と移民問題も横糸として編み込んでいる。(STORY)海底王国アトランティスの末裔であるアクアマン(ジェイソン・モモア)は、人間として育てられた。ある日、彼はアトランティスが人類の支配を目的とした侵略を始めたことを知る。人類の想像をはるかに超える文明を持つアトランティスの強大さを知る彼は、海を守るべきか地上を守るべきかの選択を迫られる。(キャスト)ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ウィレム・デフォー、パトリック・ウィルソン、ドルフ・ラングレン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、ルディ・リン、テムエラ・モリソン、ニコール・キッドマン(スタッフ)監督・ストーリー:ジェームズ・ワン脚本:デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック脚本・ストーリー:ウィル・ビールストーリー・製作総指揮:ジェフ・ジョンズ製作:ピーター・サフラン、ロブ・コーワン製作総指揮:デボラ・スナイダー、ザック・スナイダー、ジョン・バーグ、ウォルター・ハマダ撮影:ドン・バージェス美術:ビル・ブルゼスキー編集:カーク・モッリ衣装:キム・バレット視覚効果監修:ケビン・マキルウェイン音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ2019年2月25日TOHOシネマズ岡南★★★★http://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/
2019年03月07日
コメント(0)
2月に観た映画は、9作品でした。3回に分けて紹介します。「七つの会議」ここで描かれているのは、冒頭の「第一の会議」に総てがある。即ち、ノルマを達成しない第二課を徹底的に痛めつけ、さらなるノルマを課す。それは、20年前の親会社出向上司から叩き込まれた「伝統」でもあった。その「ノルマ至上主義体質」が、データ偽装という「事件」を引き起こす。三菱自動車、神戸製鋼だけでなく、今でも日本中に起きているかもしれない、日本の「組織至上主義体質」の原因に切り込む映画である。という見方も出来ないではない。ところが、米国映画のように、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」のように、淡々と事実を深く抉り取る手法ではなくて、主人公は屈折した曲者、時々奇声を発する、特異な人物として登場する。敵は最初はいかにも憎々しい面構え、そして歌舞伎張りに見栄を切る。やがて、真の悪者が現れるが、お咎め無しに終わる。まるで、何処かの国の架空物語のように作られるのである。これは赤穂浪士の話を「忠臣蔵」として作られたのと同じだろう。現代は、江戸時代のようにモノが言えない時代なのか?こういう形でしか、政治だけでなく、企業の悪事でさえ描けない、この日本の民度が、私的には白けてしまう。「あんなに怖れていたあの上司の慌てふためく顔を見て、目が覚めたよ」。鬼の営業部長・北川誠は呟く。その真実を発見した時の香川照之の表情と、ひたすらひたむきに仕事として「何か残そう」とする朝倉あきの可憐な姿だけが、この映画の収穫だった。(STORY)都内の中堅メーカー、東京建電の営業一課で係長を務めている八角民夫(野村萬斎)。最低限のノルマしかこなさず、会議も出席するだけという姿勢をトップセールスマンの課長・坂戸宣彦(片岡愛之助)から責められるが、意に介することなく気ままに過ごしていた。営業部長・北川誠(香川照之)による厳格な結果主義のもとで部員たちが疲弊する中、突如として八角がパワハラで坂戸を訴え、彼に異動処分が下される。そして常に2番手だった原島万二(及川光博)が新課長に着任する。(キャスト)野村萬斎、香川照之、及川光博、片岡愛之助、音尾琢真、藤森慎吾、朝倉あき、岡田浩暉、木下ほうか、吉田羊、土屋太鳳、小泉孝太郎、溝端淳平、春風亭昇太、立川談春、勝村政信、世良公則、鹿賀丈史、橋爪功、北大路欣也(スタッフ)原作:池井戸潤監督:福澤克雄音楽:服部隆之主題歌:ボブ・ディラン脚本:丑尾健太郎、李正美2019年2月6日Movix倉敷★★★★「マダムのおかしな晩餐会」勘違いから起こるイギリス貴族男性とイタリア移民バツイチメイドの恋を縦糸に、フランスに集った英仏米のセレブたちの社交の在り方を横糸に、エスプリを持った悲喜劇に仕上げた、まあ大人の喜劇かな。終わりは、明確にハッピーエンドの映像を流しても良かったのに、と思った。「これは青年作家の想像の中の話かもしれない」と観客は思ってくれるはずなのに、むしろひとり行く女性の姿で終わらした。また、3人の不倫関係にも、何のエンドも与えなかった。これは、脚本の不備というよりも、意図されたエンドなのだろう。作家性にこだわるそういうフランス的な終わり方が、それでは、私に余韻をもたらすかといえば、否というしかない。独りよがりという感じが強い。嘘で固めた夫婦の在り方に、きちんとしたラストを与えないと、日本人の我々には、何が何だかわからない。果たしてフランス(ヨーロッパ)人には自明のラストだったんのだろうか?(見どころ)身分を隠して晩餐会に出席したメイドに客の紳士が一目ぼれしたことから騒動が起こるロマンチックコメディー。アメリカ人の妻と夫を『リトル・ミス・サンシャイン』などのトニ・コレットと『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』などのハーヴェイ・カイテル、晩餐会に波乱をもたらすメイドを『ジュリエッタ』などのロッシ・デ・パルマが演じる。脚本家としても活動しているアマンダ・ステールがメガホンを取る。(あらすじ)パリに引っ越してきた裕福なアメリカ人夫婦のボブ(ハーヴェイ・カイテル)とアン(トニ・コレット)は、セレブの友人たちを招いて晩餐会を開こうとするが、招待客の数が不吉な13人になる。急きょスペイン人のメイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)を神秘的な女性に仕立て上げ晩餐会に同席させるが、彼女が酒を飲み過ぎて下劣なジョークを言ってしまう。2019年2月7日シネマ・クレール★★★★「ファースト・マン」映画は素晴らしいところは、普通では出来ないことをさもやっているかのように追体験出来る事にある。そういう意味では、合格。宇宙飛行士目線で追体験出来る。何事も過去の偉業の影には大変なことがたくさんある。ということも知らせる。ジェミニー計画の初期に、宇宙船内で、飛行士が計算して帰還の軌道を計算し判断するなんて、現代では想像さえ出来ない。しかも、アポロ11号段階で、あんなにも今にも壊れそうなガタゴトいうボロ船だったとは。しかし、やはりだからどうした、成功するのが分かっているミッションを見せられてもなあ、と思う。私は9歳の七月だった。確かに覚えている。でも、それだけだ。月に行く前に国民の生活を、というデモは描かれた。でも、アポロ計画が弾道弾ミサイルの計画の前段階だという描写はない。それに、終始全ての飛行士は、お通夜のように悲壮だ。ミッションが成功しても悲壮だ。ホントにそうなのだろうか?何を描きたかったのか?よくわからない。(ストーリー)21世紀の現在でも困難な宇宙への旅。携帯電話も無かった時代に、月を目指した者たちがいた。前人未踏の月面着陸というとてつもないミッションの始まりから、志半ばで散った仲間の命、愛する家族の切なる祈りと希望、さらに偉業達成の陰にあった秘話まで、そのすべてが明かされる!監督デイミアン・チャゼル出演 ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール2019年2月14日TOHOシネマズ岡南★★★
2019年03月05日
コメント(0)
“カンヌ女優”チョン・ドヨン×ユン・ゲサン×ユ・ジテ豪華競演!「魔女の恋愛」監督が贈る、法廷を舞台に繰り広げられるサクセス&ラブストーリー「グッドワイフ~彼女の決断~」最近常盤貴子主演で、日本ドラマでリメイクされている(とはいっても、これも米国ドラマのリメイクらしいが)韓国版「グッドワイフ」を録画していたのをやっと全編観ることができた。何を隠そう、私はチョン・ドヨンのファンである。ところが、岡山にはなぜか時々作られていた彼女の初演映画が、この10年ほどかからなかった。2014年あたりから本格的に映画復帰していたみたいだ。いま、少しずつネットやビデオで見ている。相変わらず、美しいし、演技がうまい。彼女はいわゆる「憑依型」の女優だった。韓国映画は、評価が高い割には、キム・ギドクは別としていまだにあまり海外の映画祭で賞を取らない。彼女は貴重なカンヌ女優だ(「シークレット・サンシャイン」)。最近の彼女は不倫で悩む役が多くて、なんだかなあと思ってしまう。もっとはじけた演技や歴史大作に抜擢するべきだと思うのだか、韓国のプロデューサーに力がないのかな、と思ってしまう。さて、「グッドワイフ」は、日本のそれよりも21話があり、より詳しく展開しているのと、終わり方が賛否ありそうで(結局離婚しなかった)、日本版はどう着地するのか、それだけは確かめようと思っている。
2019年02月25日
コメント(0)
映画評「スリー・ビルボード」毎年2月の第4月曜日の午前から昼過ぎにかけての約3時間、映画ファンならば気もそぞろになる出来事が起こります。米国アカデミー賞の発表があるのです。私は携帯を始めてからは、ほぼリアルタイムで結果を把握してきました。今年は2月25日です。アカデミー作品賞、監督賞が、必ず私のベスト10に入るかどうかは、観てみなくてはなんとも言えません。確率は五分五分でしょうか。ただ授賞作品は必ず観ます。昨年は「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞・監督賞を獲りました。けれども、私は主演女優賞・助演男優賞の本作を断然推します。それは私だけではなく、 昨年秋にキネマ旬報が、ベスト・テン外国映画第1位、読者選出外国映画第1位、外国映画監督賞、読者選出外国映画監督賞をこの作品に授けたことでも、少数意見ではないことが分かります。圧倒的なヒリヒリするようなドラマでした。冒頭、ミズーリ州の寂れた道路に、町の警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)を非難する巨大な3枚の広告看板(ビルボード)が現れます。設置したのは、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)です。何の進展もない捜査状況に腹を立てケンカを売ったわけです。署長を敬愛するディクソン巡査(サム・ロックウェル)や町の人たちは、彼女をなじります。ここまでは、保守的な田舎町に反逆する女性の物語かと思います。ところが、そこから不穏な事件が次々と起きるのです。混沌とはしていません。不思議とまとまっています。3枚の広告が、チェスの一手のように手詰まりだった町を動かし、3人の人物を動かし、途中3通の手紙が、憎しみの連鎖で破滅するかに思えた結末を、不思議な赦しの物語に変える構造になっているからかもしれません。悪人の中に善人が隠れている。リアルなんだけど何処か寓話的な、不思議な話でした。田舎町の描写は、アメリカの閉塞感を表し、トランプ支持層の現実とはかくなるものかと思わせます。黒人、障害者、イラク派兵等々の問題も出てきます。まるで3枚のビルボードが見せる米国の曼荼羅でした。米国アカデミー受賞作品は、たいていは力作です。でも、最終的な評価は、やはり直接観ないと判断出来ません。さて、今年はどうなるでしょうね。(2018年米国マーティン・マクドナー監督作品、レンタル可能)
2019年02月17日
コメント(0)
最後の三作品、それぞれ力作で退屈はしなかったけど、突っ込み所もありました。「マスカレード・ホテル」これは、原作を先に読むタイプの映画ではなかった。ほとんど原作通りに、エピソードも、真犯人も綴られるので、愉しむ点は、ホテル(ロイヤル・パーク・ホテル)の造りと、長澤まさみだけになってしまった。ホテルグランド擬きで、あらゆるタイプの仮面客を見せるのが醍醐味なんだけど、私は仮面の裏の素顔をあらかじめ知っているから、感動はない。つくづく、木村拓哉の新田刑事には、刑事仮面を被った映画という舞台の男優としか見えなかった。それと、最も重要なのは、原作の中の重要なテーマがすっぽりと抜け落ちていること。刑事は人を疑うのが仕事。ホテルマンは、仮面を被っていることを承知で、人を信じてサービスをするのが仕事だと、映画は主張するが、原作はそうではない。フロントの仕事の重要なことは、「お客様は神様ばかりではありません。悪魔も混じっています。それを見極めるのも、私たちの仕事なんです」(文庫本51p)と原作では言わせている。なのに、たくさんのエピソードの中から、 宿泊逃げのホテルを跨いでのブラックリストの存在があることを明らかにしなかった。あのエピソードがないと、原作の面白さの半分はなくなる。等々、テンポよく、オールスター形式の映画は楽しかったのだが、結果つまらなかったと言わざるを得ない。ラスト・シークエンスも100%無駄な5分間だった。(STORY)現場に不可解な数字の羅列が残される殺人事件が3件発生する。警視庁捜査一課の刑事・新田浩介(木村拓哉)は、数字が次の犯行場所を予告していることを突き止め、ホテル・コルテシア東京で4件目の殺人が起きると断定する。だが、犯人の手掛かりが一向につかめないことから、新田が同ホテルの従業員を装って潜入捜査を行う。優秀なフロントクラークの山岸尚美(長澤まさみ)の指導を受けながら、宿泊客の素性を暴こうとする新田。利用客の安全を第一に考える山岸は、新田に不満を募らせ……。(キャスト)木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、梶原善、泉澤祐希、東根作寿英、石川恋、濱田岳、前田敦子、笹野高史、高嶋政宏、菜々緒、生瀬勝久、宇梶剛士、橋本マナミ、田口浩正、勝地涼、松たか子、鶴見辰吾、篠井英介、石橋凌、渡部篤郎(スタッフ)原作:東野圭吾脚本:岡田道尚音楽:佐藤直紀監督:鈴木雅之上映時間133分2019年1月21日ムービックス倉敷★★★「十二人の死にたい子どもたち」展開も、結末も、ラストの「意外な真相」も、そんな意外でもない。こういうテーマの映画ならば、結局ああいう展開にならざるを得ない、とは思った。あとは、若手俳優の演技合戦である。目立つのは、杉咲花と黒島結菜、そして新田真剣佑。杉咲花は、1番丁寧に描かれているし、特異な役だから、演じやすいとしても、まあ流石だと思う。けれども、彼女の主張には、私は納得いかない。黒島結菜は頑張ったと思う。明るい面が多かった彼女が、よくあそこまでダーク面を引き出した。痩せたのは役作りだろうか。だとしたら、凄い。男の方は、新田真剣佑が図らずも探偵役を演るのであるが、惜しい。何か、全然切羽詰まっているように思えなかった。私は彼が巧妙にお膳立てを作ったのか、とさえ思えた。この設定には、無理がある。イエスの方舟のような、カリスマ役がいなければ、もともと成功するような企みとは思えない。STORYそれぞれの理由で安楽死を望み、廃病院の密室に集まった12人の少年少女は、そこで死体を見つける。死体が何者で自殺なのか他殺なのか、集まった12人の中に殺人犯がいるのか。やがて、12人の死にたい理由が明らかになっていく。キャスト杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙、黒島結菜、橋本環奈、吉川愛、萩原利久、渕野右登、坂東龍汰、古川琴音、竹内愛紗スタッフ監督:堤幸彦原作:冲方丁脚本:倉持裕音楽:小林うてな主題歌:The Royal Concept上映時間118分2019年1月31日Movix倉敷★★★「メアリーの総て」「フランケンシュタインーあるいは現代のプロメテウス」神話で人類を創ったプロメテウスをなぞり、人造人間を造った「男」の博士は、その後に「英知と希望」の反対方向の運命に出逢う。そういう物語になったのは、この作者が女性であり、19世紀イギリスで女性としての自立を自覚しながらも抑圧された者だからだ。しかし、だからと言って、彼女は科学の力を否定せず、神に抗い、生命の蘇りの可能性を否定しなかった。母親メアリ・ウルストンクラフトの「女性の権利の擁護」を慕い、父親ウィリアム・ゴドウィン「政治的正義」の自由主義思想を糧に、しかし、父親の保守思想に反対され、シェリーのロマン主義に恋して3人も子供を産み(うち1人は出産後間も無く死亡)、放蕩家のバイロンのスイス別荘で、「吸血鬼」を書いたポリドリと共に数ヶ月を過ごして、フランケンシュタイン」の着想を得る。幾つか、脚色はされているが、当時の前衛的な思想をフランケンシュタインのようにつぎはぎしながら、まるで全く新しい物語を創った、メアリーの才能を、見事に映像化していたと思う。200年前のイギリスで、奔放な恋愛を唱えていた人たちがいたことも新鮮ならば、メアリーの早熟な才能が開花する過程も、新鮮だった。エル・ファニングは16歳から18歳を違和感なく演じ、曲者女優のベル・バウリーとの屈折した友情(姉妹愛?)も面白かった。2019年1月27日シネマ・クレール★★★★
2019年02月12日
コメント(0)
中盤の三作品です。「蜘蛛の巣を払う女」原題は「THE GIRL IN THE SPIDERS WEB」。これは幾重かの意味が込められているだろう。一つは父親の後継組織「スパイダーズ」を打ち払う話。一つは姉妹の確執を打ち払う話。一つは、インターネット(蜘蛛の巣)の悪利用を打ち払う話。ドラゴンは孤独であるが、とてつもなく強い。これは、現代のおとぎ話である。映像はとてもスタイリッシュだ。冒頭場面。セレブの1人の男が女性に謝っている。女はいいのよ、と答えている。ところが、場面がパンして状況がわかってくると、これはDVの場面だとわかる。その直後に、リスベットが現れて必殺仕事人よろしく形勢は逆転するのである。このような洒落た作りが随所にある。デヴィッド・フィンチャーのような、陰気な作風ではなくて、そうはいってもハリウッドのような明るさはなくて、いかにも北欧らしい、でもヒューマンちっくな勧善懲悪物語になっていた。小国だけど、アメリカ大国主義にも、ロシア軍国主義にも抗する、スウェーデン国民の矜恃、それが一個人のしかも女性に担わされているというのが、現代世界をみさせてくれるのかもしれない。(解説)天才ハッカー、リスベット・サランデルの活躍を描いた「ドラゴン・タトゥーの女」に続くミステリー第2弾。AIの世界的権威から核攻撃プログラムの奪回を依頼されたリスベットは、やがて16年前に別れた双子の姉妹カミラの罠に落ちたことに気付くが……。リスベットを演じるのは、「ブレス しあわせの呼吸」のクレア・フォイ。前作でメガホンを取ったデヴィッド・フィンチャーは製作総指揮に回り、本作では「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレスが監督を務める。背中にドラゴンのタトゥーを持つ天才ハッカー、リスベット(クレア・フォイ)は、特殊な映像記憶能力を駆使して活躍していた。そんなある日、彼女は人工知能=AIの世界的権威・バルデル教授から仕事の依頼を受ける。依頼の内容は、意図せずに開発してしまった核攻撃プログラムを、アメリカ国家安全保障局から奪回するというもの。その裏に隠された恐るべき陰謀を探るうち、奇妙で不気味な謎の存在に行き当たるリスベット。それは、16年前に別れた双子の姉妹カミラ(シルヴィア・フークス)。だが、そのことに気付いた時はすでに、周到に仕組まれたカミラの罠に落ちていた。そしてリスベットは、自身の忌まわしい記憶と、葬り去ったはずの残酷な過去に向き合うことに……。製作国 イギリス=ドイツ=スウェーデン=カナダ=アメリカ(ストーリー)冷え切った空気が人の心まで凍てつかせるストックホルムの厳しい冬。背中にドラゴンのタトゥーを背負う天才ハッカー、リスベット・サランデルに仕事が依頼される。「君しか頼めない――私が犯した“罪”を取り戻して欲しい」人工知能=AI研究の世界的権威であるフランス・バルデル博士が開発した核攻撃プログラムをアメリカ国家安全保障局から取り戻すこと。それは、その天才的なハッキング能力を擁するリスベットにしてみれば簡単な仕事のはずだった。しかし――、それは16年前に別れた双子の姉妹、カミラが幾重にもはりめぐらした狂気と猟奇に満ちた復讐という罠の一部に過ぎなかった。※PG12監督 フェデ・アルバレス出演 クレア・フォイ、シルヴィア・フークス、スヴェリル・グドナソン2019年1月14日TOHOシネマズ岡南★★★★http://www.girl-in-spidersweb.jp/sp/「この道」職人監督の佐々部清の良くない所が出た作品。出演者は、なんとほぼ全員歴史上人物。朔太郎、犀星、啄木、鈴木三重吉そして与謝野夫妻が出てくる冒頭部は、日本文学ファンならば、それだけでドキドキするけど、適当に字幕で説明すればいいだろうという魂胆が見え見え。ほぼ全体的にそれで、なんか大正昭和文学史をなぞった気分しか残らない。白秋のトリビア的な情報(あんな繊細な詩を書くのに、実は女たらしで泣き上戸だった)だけをウリにしている。職人監督としては、戦争に協力しない信条か、それとも生きるための作詞か、というテーマは、鋭く描けるはずなのに、全然思い入れがない。(ストーリー)九州柳川から文学を志し上京した北原白秋。隣家の美人妻・俊子に気もそぞろ。逢瀬を俊子の夫に見つかり姦通罪で入獄。白秋の才能を眠らすまいと与謝野夫妻が奔走し釈放されるが、恩も顧みずのうのうと俊子と結婚。その刹那、俊子は家出、白秋は入水自殺を図るが蟹に足を噛まれ断念。そんなおバカな白秋と洋行帰りの音楽家・山田耕筰に鈴木三重吉は童謡創作の白羽の矢を立てる。才能がぶつかり反目する二人だが、関東大震災の惨状を前に打ちひしがれた子供たちを元気づけるため、手を取り合い数々の童謡を世に出す。しかし、戦争の暗雲が垂れ込める中、子供たちを戦場に送り出す軍歌を創るよう命ぜられた二人は苦悩の淵に・・・。監督 佐々部清出演 大森南朋、AKIRA、貫地谷しほり、松本若菜、小島藤子、由紀さおり、安田祥子、津田寛治、升毅2019年1月14日TOHOシネマズ岡南★★★「クリード 炎の宿敵」正統ボクシング映画。アメリカのボクシング映画が、日本のそれと比べて面白いのは、ヘビー級の映像が全くウソには見えないからだろう。だから、ボクシングと人生の生きる目的をリンクさせるお話が、ウソに思えない。都合よく、子供に障害があって、妻もシンガーで試合時に一緒に闘えるし、復讐や恨みという構造から離れて、ロッキーの役割が面白かったり、するのも自然に思える。ただ唯一、ヴィクターの母親が試合途中で席を立ったのはやりすぎだ。そうする必然性は全くない。(解説)ロッキーのライバル、アポロの息子アドニスの成長を描いた「クリード チャンプを継ぐ男」の続編。ロッキーの指導を受け、一人前のプロボクサーに成長したアドニスは、ついに父の仇であり、かつてのロシア王者ドラゴの息子ヴィクターとの対戦を迎える。出演は「ブラックパンサー」のマイケル・B・ジョーダン、「ロッキー」のシルヴェスター・スタローン、「エクスペンダブルズ」のドルフ・ラングレン。監督は前作のライアン・クーグラーから新鋭スティーヴン・ケイプル・Jrにバトンタッチ。(あらすじ )ロッキー(シルヴェスター・スタローン)最大のライバルにして親友だったアポロ・クリードは、ロシアの王者イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)と壮絶な戦いを繰り広げた末、帰らぬ人となった。歳月は流れ、ロッキー指導の下、一人前のプロボクサーに成長したアポロの息子アドニス(マイケル・B・ジョーダン)は、ついに父の仇・ドラゴの息子ヴィクター(フローリアン・ムンテアヌ)との対戦を迎える……。2019年1月14日TOHOシネマズ岡南★★★★
2019年02月11日
コメント(0)
1月に観た映画は9作品でした。三回に分けて紹介します。「私は、マリア・カラス」テーマ作品に選ばれなかったら、永遠に観なかった世界。オペラの歌というだけでなく、音楽全般が苦手。でも、私がカラスの特別な才能を目の辺りにしているのは理解している。声量が続く人は多いのかもしれない。けれども、表情とともに歌える人は多くは無い。と思う。大きな目玉と、大きな口、そして巨大な鍵鼻。宮崎駿アニメに出て来る魔女そっくりの特徴的な迫力ある顔から、この世のものとは思えない音楽が発せられる。人類は、そういうものに、数十万年間反応して来たのかもしれない。(解説)3年間かけて世界を回り、マリア・カラスの友人たちを探し出しました。彼らは誰も見たことのない数多くの資料を保管していて、それらはマリア・カラスのとても個人的な記録でした。自叙伝と400通を超える手紙を読み終えた時に、やっと見えてきた〈マリア・カラスの姿〉が映画の最も重要な部分になることを確信しました。またその過程で、楽曲に関しても、観客によって撮影されたコンサートやオペラの映像をはじめ、幸運にも、これまで聴いたことのない数々の録音にアクセスできました。今回、彼女と親しかった数え切れないほどの人々に会いましたが、彼女自身の言葉ほど強く、印象的な証言はなかったので、映画の中に他の人の証言はほぼ入れず、彼女の言葉だけでつなぐことを決めました。彼女が書き残した言葉が世に出るのも、多くの真実が明かされるのも初めてなので、本作では、彼女の熱狂的なファンさえも知りようのなかった〈マリア・カラス〉が見られます。ライトを浴び、特別な運命を辿ったレジェンドの影に隠れていた〈一人の女性〉について、きっと深く理解していただける映画になったとおもいます。―監督:トム・ヴォルフ2019年1月2日シネマクレール「鈴木家の嘘」予想とは違って、冒頭のお母さんの作るお昼ご飯が丁寧で、そこからこの作品いいんじゃないの?とお家族全員の「演技」に「嘘」が全然感じられなかった。唯一の「嘘」と思えるのは、ピッタリタイミング良く現れる何回かのコウモリ君であって、他は自殺された家族の有り方を丁寧に丁寧に写し取ったと思う。自殺された家族は基本的に救われない。人に語ることが1番大きな癒しになる。お母さんと妹には、その道はあったが、お父さんにはない。だけど、お父さんは忘れる能力があるだろう。結果、自殺する人に直前に見せると逆効果だろうから、10年前に観て欲しい。無理かな(^^;)。妹の富美を演った木竜麻生は、表情は少ないけど、時々爆発する役柄であり、新人ながら力演だったと思う。途中から、すっかり「妹」にしか見えなかった。リアルなのに、そこかしこで観客を笑わし、泣かせもする見事な脚本。この作品が賞レースに絡まないならば、その賞レースは信用しない。(解説)鈴木家の長男・浩一がある日突然この世を去った。ショックのあまり記憶を失った母のため、遺された父と長女は一世一代の嘘をつく。「引きこもりだった浩一は家を出て、アルゼンチンで働いている」と。父は原宿でチェ・ゲバラのTシャツを探し、娘は兄に成りかわって手紙をしたため、親戚たちも巻き込んでのアリバイ作りにいそしむ。すべては母の笑顔のためにーー!母への嘘がばれないよう奮闘する父と娘の姿をユーモアたっぷりに描きつつ、悲しみと悔しみを抱えながら再生しようともがく家族の姿を丁寧に優しく紡ぐ感動作。家族の死と、そこからの再生という重厚なテーマを心に沁みいるハートウォーミングな喜劇に仕立てた、まったく新しい家族映画の傑作が誕生した。鈴木家の家長・幸男役に岸部一徳、母・悠子役に原日出子、引きこもりの長男・浩一役に加瀬亮が扮し、いずれも見事な演技を披露するほか、瀬々敬久監督作『菊とギロチン』で主演の女力士を演じ注目された新星・木竜麻生が長女・富美を演じ、瑞々しい輝きを放つ。そのほか岸本加世子や大森南朋ら演技派が個性的なキャラクターの親族を魅力的に演じ、画面を明るく彩る。 『滝を見にいく』(沖田修一)、『恋人たち』(橋口亮輔)などを生み出した松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト第6弾となる本作は、橋口亮輔(『恋人たち』)、石井裕也(『舟を編む』)、大森立嗣(『セトウツミ』)ら名匠たちの助監督を務めてきた野尻克己の監督デビュー作。脚本も、監督が自身の経験を基に手がけたオリジナルで、家族の再生をあたたかなユーモアで包みこんだ物語は岸部一徳ら名優たちをもうならせ、出演を快諾させた。2019年1月6日シネマ・クレール★★★★「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」原作との差異を確かめたくなった。親や叔父さん叔母さんの死に際を看取った事はあるけど、老人介護の現場で仕事しているけど、まるきり違う介護の現実がありそうだ。やはり体験してみないことには、わからない事は多そうだ。最初の頃の高畑充希の「この人、何様⁈」と思っている表情に説得力あって、良かった。大泉洋の鹿野さんそのモノのような演技に、もしかしたら彼の代表作になるかもしれない説得力を感じた。感動押し売りにならずに、きちんと笑わせる。こういう映画は貴重である。ただし、テーマが「ボランティアから見た障害者」であり、決して「障害者から観た障害」ではない。そこには、まだまだ描かれない事は多いと思う。また、NPO法人の運営者である萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平の本当の活動は省略されていて、ボランティアの本当の姿もまだまだ描かれてはいない。また、そこを描いていいのか、どうかも私には判断できない。(解説)鹿野靖明、34歳。札幌在住。幼少の頃から難病の筋ジストロフィーを患い、体で動かせるのは首と手だけ。人の助けがないと生きていけないにも関わらず、病院を飛び出し、風変わりな自立生活を始める。自ら大勢のボランティアを集め、わがまま放題。ずうずうしくて、おしゃべりで、ほれっぽくて!自由すぎる性格に振り回されながら、でも、まっすぐに力強く生きる彼のことがみんな大好きだった―。この映画は、そんな鹿野靖明さんと、彼に出会って変わっていく人々の人生を、笑いあり涙ありで描く最高の感動実話!実在した人物・鹿野を演じるのは、同じ北海道出身の俳優・大泉洋。減量で最大10キロ痩せるなどの容姿面を似せるだけでなく、彼の人間的な魅力をユーモアたっぷりに体現する。鹿野に反発しながらも、少しずつ心を開いていく新人ボランティアの安堂美咲役には、高畑充希。何も知らない感情豊かな女の子が、鹿野の最大の理解者へと成長していく姿を、伸びやかに演じる。その美咲の恋人で医大生の田中久を演じるのは、三浦春馬。将来や恋に悩みながらも、鹿野と触れ合う日々を通じて変わっていく青年を、繊細に演じる。その他、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、そして原田美枝子と、本格派・個性派キャストが勢揃い。佐藤浩市も友情出演し、豪華な俳優陣が脇を固める。監督は『ブタがいた教室』『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』など、デビュー以来「命」と「生きること」をテーマに映画を創り続ける前田哲。原作は、第35回大宅壮一ノンフィクション賞と第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した渡辺一史の名著「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」。実際に鹿野靖明さんが暮らしていた札幌や、美瑛・旭川などのオール北海道ロケで撮影が行われた。誰もが見たことのない力強い人生に、生きる力と希望が溢れ、笑いと涙が止まらない!この冬、最高の感動作が誕生します。(ストーリー)北海道で医大に通う田中(三浦春馬)は、ボランティア活動を通じて体が不自由な鹿野(大泉洋)と出会う。鹿野は病院を出てボランティアを募り、両親の助けも借りて一風変わった自立生活をスタートさせる。ある日、新人ボランティアの美咲(高畑充希)に恋をした鹿野は、ラブレターの代筆を田中に頼む。ところが美咲は田中の恋人だった。(キャスト)大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、佐藤浩市、原田美枝子(スタッフ)監督:前田哲脚本:橋本裕志音楽:富貴晴美原作:渡辺一史2019年1月7日Movix倉敷★★★★
2019年02月10日
コメント(0)
今月の映画評です。「タクシー運転手 約束は海を越えて」去年私が観た劇場作品数は、十数年ぶりに100作を切って97作でした。原因は明らかです。邦画が不作だったからです。マンガ原作の青春ものや、色モノ企画が多くて、私の好きな本格ドラマが少なかったからです。去年のベスト1から順番に10を発表します。「沖縄スパイ戦史」「タクシー運転手 約束は海を越えて」「ボヘミアン・ラプソディ」「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」「1987、ある闘いの真実」「万引き家族」「ダンガル、きっと強くなる」「スリー・ビルボード」「ウィンド・リバー」「女と男の観覧車」です。その中から、6年ぶりに韓国に渡りロケ地巡りまでした「タクシー運転手」を紹介します。行ったのは全羅南道光州でした。1980年に、時の全斗煥政権が市民運動を軍隊を使って潰し、自国民を数百人殺し五千人以上負傷させた抗争を描いた作品です。行って見て分かったのですが、今だにこれを日本では「光州事件」と言っていますが、間違いです。「光州民主化運動」なのです。タクシー運転手役の名優ソン・ガンホの存在感が光っていました。ドイツ人記者ピーター役をトーマス・クレッチマンが演じ、東京で「事件」報道に接した彼が、ソウルに渡ってタクシー運転手を雇い、情報が遮断されていた光州に潜入取材した事実を描いています。当時、クーデターで政権を奪取した全斗煥に対し、ソウルでも市民デモが頻発していました。情報統制のためにデモを嫌悪する普通の市民として運転手は登場します。その彼の見方が変化していく。現在フランスの反マクロン政権デモで起きているような市街の暴動は、光州では一切起きませんでした。それどころか、凡ゆる階層の市民が参加し助け合い、炊き出しを行い、報道記者のために身体を張って援助する、世界に例を見ない統制された抵抗運動の姿が描かれます。私たちは、世界記録遺産にもなっているこの市民運動の本当の姿を全然知っていなかった。私は、ロケ地巡りをして、一昨年に平和裡に朴政権が崩壊した起因が、正に1980年のこの「民主化運動」にあったことを知りました。もちろん、韓国映画らしく、いろんなところに笑いとアクションも挿入しています。また、何故か主人公なのに運転手が名前で呼ばれなかったのですが、それがラストの場面の伏線にもなっていました。こんな見事なドラマ、邦画でも作って欲しい。(チャン・フン監督作品、レンタル可能)
2019年01月19日
コメント(0)
12月は5作しか見ていません。しかも、そのうちの二作(「バッド・ジーニアス」「アリー スター誕生」)しか合格作はなく残念な結果。一挙に紹介します。「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」題名が「誕生」になっている限り、物語がまだ序章段階は予想出来たが、やっぱりね、というのはやはりがっかりね。それから、ほらほらドキドキするでしょ、と作者が物語を我々に「押し付けている」。あそこまで伏線を出せば、この世界に興味ない私でも、展開予想は2~3通りしかない。面白くない。また、小ネタを小出しして、そらそらこんなこともあるのよ、と我々を驚かそうとしているけど、全く面白くない。ファンタジーは、世界の大問題を、或いは哲学的な究極の課題をその力を借りて描くことができる。だから面白いのである。「ロード・オブ・ザ・リング」は、最初から三部作と打ち上げ、見事にその中で大問題を立ち上げ着地した。たからこそ、名作なのである。これは、いつ終わるかわからない物語を、まだ大問題の大の字も描かずに、もう2回も消費した。これは酷い作品になりそうだ。(ストーリー)ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、学者として魔法動物を守るため、不思議な空間が広がるトランクを手に世界中を旅している。ある日、捕まっていた“黒い魔法使い”グリンデルバルド(ジョニー・デップ)が逃亡する。ニュートは、人間界を転覆させようと画策するグリンデルバルドを追い、魔法動物たちと一緒にパリの魔法界へ向かう。(キャスト)エディ・レッドメイン、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、エズラ・ミラー、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、ゾーイ・クラヴィッツ(スタッフ)監督:デヴィッド・イェーツ脚本:J・K・ローリングプロデューサー:デヴィッド・ハイマン2018年12月1日Movix倉敷★★「アンダー・ザ・シルバーレイク」世の中は全て陰謀や隠されたメッセージに満ちている。テレビゲームの中に、○の中に(なんか、多すぎて見終わった途端に全て忘れてしまった)。それを、若者は「私ならば見つけることが出来る」と簡単に信じるだろう。明日、ホームレスになる状況なのに、冒険はその中にこそ、あるだろう。ポップカルチャーは、セレブのピアノで総て作られたと嘯く老人、世の中価値はないと地下に潜るセレブたち。その総てを「あり得ることだ」と受け入れる若者。1人を殺し、1人は殺されたのに、平然と日常に戻ってゆく若者。今の、なんともぐにゃぐにゃした現代の構造を批判的に扱っている。現代の「時計じかけのオレンジ」だ。(ストーリー)恋に落ちた美女の突然の失踪。オタク青年サムは光溢れる街シルバーレイクの闇に近づいていく。新感覚ネオノワール・サスペンス。2018年12月3日シネマ・クレール★★★「バッド・ジーニアス -危険な天才たち-」音楽も構成も、すっかり「オーシャンズ11」というよりか、何処かのスパイ映画。でもやっているのは高校生、そしてカンニング、という設定がとっても新鮮。映画作法が、ほとんど数十年前の日本であり、なんか懐かしく感じる。もちろんラインを使ったカンニング手法は、とっても現代的。9頭身のリンが、人より隔絶した才能を感じさせる。タイの貧富の差は、正に現代アジアの問題だ。教師の娘と母子貧困家庭の息子と、裕福な彼らの級友たちの立ち位置は、このミッションを推進する力だ。ともかく外国留学が、貧困の連鎖を断ち切る方法であるのは、韓国台湾、中国、ベトナム、ほとんどのアジアの立ち位置である。ならば、日本はその意味でも幸か不幸か国際化からずれている。仏教国のタイは、高校生さえも手を合わせるのが当たり前のお国柄、仏の教えには、現世で利益を得ても来世で報いを受けるということがある。リンが立ち戻ったのは、そこなのに違いない。(Introduction)“高校生版「オーシャンズ11」”の呼び声高く、世界16の国と地域で、サプライズ大ヒット!スタイリッシュでスリリングな、第一級クライム・エンタテインメント!世界16の国と地域でサプライズ大ヒットを記録し、そのうち、中国・香港・台湾・ベトナム・マレーシア・ブルネイ・マカオ・フィリピンではタイ映画史上歴代興収第一位の座につきアジアを席捲した話題作がいよいよ日本に上陸します。タイ・アカデミー賞とよばれる第27回スパンナホン賞で監督賞、主演女優賞、主演男優賞をはじめとした史上最多12部門を受賞した本作は、米批評家サイトRotten Tomatoesでも堂々の92%FRESHを記録しています。一人の天才少女をリーダーに、高校生の犯罪チームが頭脳と度胸だけを武器に世界を股にかけたカンニング・プロジェクトを仕掛ける第一級のクライム・エンタテインメントです。物語の背景になっているのは、近年発展目覚ましいアジア各国で深刻な社会問題となっている熾烈な受験戦争。中国で実際に起きた集団不正入試事件をモチーフに、カンニングをスタイリッシュ、かつスリリングに描き、世界各国のメディアで絶賛。“まるで高校生版「オーシャンズ11」だ!”(-ヴァラエティ紙)などの声が上がりました。クライマックスは、28分間におよぶ手に汗握る、史上最大のカンニング・シーン!監督は、長編デビュー作『Countdown』が第86回米アカデミー賞外国語映画賞タイ代表に選ばれ、2作目となる本作がメガヒット、一躍時の人となった37歳の俊英ナタウット・プーンピリヤ。ヒロインの女子高生リンを演じるのは、モデル出身で今回が映画初出演となるチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。不敵な笑みを浮かべた9頭身のルックスで、映画公開後人気が爆発し、インスタグラムのフォロワーは約40万人、更に2017年のアジアン・フィルム・アワードで最優秀新人賞を獲得し、今アジアで最も注目されている女優の一人となりました。リンを筆頭にした高校生たちが、あの手、この手のカンニング・テクニックを披露するのも見どころの一つ。クライマックスに用意された28分に及ぶ史上最大のカンニング・シーンに、観る者は手に汗握り、心臓の鼓動が早まるばかりです。(Story)小学生の頃からずっと成績はオールA、さらに中学時代は首席と天才的な頭脳を持つ女子高生リン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)。裕福とは言えない父子家庭で育った彼女は、その明晰な頭脳を見込まれ、晴れて進学校に特待奨学生として転入を果たす。新しい学校で最初に友人となったグレース(イッサヤー・ホースワン)を、リンはテストの最中に“ある方法”で救った。その噂を聞きつけたグレースの彼氏・パット(ティーラドン・スパパンピンヨー)は、リンに“ビジネス”をもちかけるのだった。それは、より高度な方法でカンニングを行い、答えと引き換えに代金をもらう――というもの。“リン先生”の元には、瞬く間に学生たちが殺到した。リンが編み出したのは、“ピアノ・レッスン”方式。指の動きを暗号化して多くの生徒を高得点に導いたリンは、クラスメートから賞賛され、報酬も貯まっていく。しかし、奨学金を得て大学進学を目指す生真面目な苦学生・バンク(チャーノン・サンティナトーンクン)はそれをよく思わず…。そして、ビジネスの集大成として、アメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試<STIC>を舞台に、最後の、最大のトリックを仕掛けようとするリンたちは、バンクを仲間に引き入れようとするが…。監督:ナタウット・プーンピリヤ出演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン チャーノン・サンティナトーンクン イッサヤー・ホースワンティーラドン・スパパンピンヨー タネート・ワラークンヌクロ2017/タイ/130分/シネマスコープ/Dolby digital/原題:Chalard Games Goeng「アリー/スター誕生」音楽オンチで、洋楽オンチの私はレディ・ガガって言えば奇抜なファッションや社会的発言以外には知らないのだけど、これは彼女の半生と幾分か被るストーリーなのかもしれない。いや、スターに共通して被るストーリーなのかもしれない。「君に言っておきたいことがある。自分の魂の底まで見せるんだ。飾ったり、ごまかしたりしたら、いっときはいいかもしれないが、いつか客は離れてゆく」彼の言葉は、一生アリーについて回るだろうし、あらゆる表現者について回るだろう。だから、都合のいいサクセスストーリーで、心の内を全て歌で作っていった歌映画だったが、レディ・ガガの歌が本物である以上は、やはり本物の作品だったと思う。(ストーリー)昼はウエイトレスとして働き、夜はバーで歌っているアリー(レディー・ガガ)は、歌手になる夢を抱きながらも自分に自信が持てなかった。ある日、ひょんなことから出会った世界的シンガーのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)から歌を高く評価される。アリーは彼に導かれてスター歌手への階段を上り始め、やがて二人は愛し合うようになるが、ピークを過ぎたジャクソンは、徐々に歌う力を失っていく。(キャスト)ブラッドリー・クーパー、レディー・ガガ、アンドリュー・ダイス・クレイ、デイヴ・シャペル、サム・エリオット、アンソニー・ラモス、ラフィ・ガヴロン、ルーカス・ネルソン&プロミス・オブ・ザ・リアル(スタッフ)監督・脚本・製作:ブラッドリー・クーパー脚本:エリック・ロス、ウィル・フェッターズ2018年12月24日Movix倉敷★★★★「来る」万が一と思って、夕方の公開時間に観たい作品はこれだけだったので観た。やはり、中島哲也はもうダメだ。たくさんの大仕掛けをして、実力派俳優を使って、「驚かすだけ」の作品を作った。「恐怖の正体を、言葉ではなく映像で見せた」と言い訳するかもしれない。しかし、それは監督の独りよがりだと、私は言いたい。加えて、今回はあらゆる伏線は中途半端に終わっていて、物語は破綻している。ただ、妻夫木聡の「人がいいのは確か」だけど「嘘つき」で「人当たりだけは良くて、自分の気持ちを最優先して妻や周りの気持ちがわからない」男だけは、とてもよく描かれていた。また、それを利用する友人の民俗学者(青木崇高)の闇も。でもコレは中盤でフェイドアウトする。他の人物たちの心の闇は全て中途半端。中島哲也に振り回される周りのスタッフが見えるようだ(まるで妻夫木聡演じる秀樹そのものだ)。監督自身が最大の恐怖だったのかもしれない。STORY幸せな新婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)は、勤務先に自分を訪ねて来客があったと聞かされる。取り次いだ後輩によると「チサさんの件で」と話していたというが、それはこれから生まれてくる娘の名前で、自分と妻の香奈(黒木華)しか知らないはずだった。そして訪問者と応対した後輩が亡くなってしまう。2年後、秀樹の周囲でミステリアスな出来事が起こり始め……。キャスト岡田准一、黒木華、小松菜奈、青木崇高、柴田理恵、太賀、志田愛珠、蜷川みほ、伊集院光、石田えり、松たか子、妻夫木聡スタッフ監督・脚本:中島哲也原作:澤村伊智脚本:岩井秀人、門間宣裕製作:市川南エグゼクティブプロデューサー:山内章弘企画・プロデュース:川村元気プロデューサー:西野智也、兼平真樹制作プロデューサー:佐藤満ラインプロデューサー:内山亮撮影:岡村良憲照明:高倉進、上野敦年録音:矢野正人美術:桑島十和子装飾:西尾共未スタイリスト:申谷弘美チーフヘアメイク:山崎聡音楽プロデューサー:冨永恵介、成川沙世子キャスティングディレクター:元川益暢VFXスーパーバイザー:柳川瀬雅英、桑原雅志編集:小池義幸記録:長坂由起子助監督:高土浩二制作担当:大塚健二2018年12月27日Movix倉敷★★
2019年01月15日
コメント(0)
「平成30年」が暮れようとしています。今年は、もしかしたら5年ぶりぐらいに、地元で過ごすお正月です。長い休みは、お正月しか取れなかったので、ずっと韓国やら出雲やら台湾やら東京やらに行っていて、大晦日にこんな風にブログをアップすることはなかったと思います。それで今年の終わりに何をアップしようかと考えて、久しぶりに映画ベスト10を発表しようと思います。簡単なコメントをつけます。上位1位から洋邦問わずに並べて、簡単なコメントをつけて。最後に全体をまとめます。1位「沖縄スパイ戦史」(三上智恵・大矢英代監督)今だからこそ撮り得た、今迄の沖縄戦を見る見方が変わる作品。過去の話ではなく、現代のこととして、安保法制や秘密保護法がある現代だからこそ、とてつもなく恐ろしいドキュメンタリー。2位「タクシー運転手 約束は海を越えて」(チャン・フン監督)流石の名優ソン・ガンホの存在感。ドイツ人記者ピーター役をトーマス・クレッチマンが演じ、光州民主化運動が「事件」ではなく、市民運動を軍事政権が軍隊を使って「虐殺」した抗争だったことを、国際的な視点からも雄弁に語る。社会派にして、エンタメ。3位「ボヘミアン・ラプソディ」(ブライアン・シンガー監督)音オンチの私でも楽しめた。フレディ・マーキュリーの半生を、最後の20分ものライブ・エイドのコンサート場面に集約させるという、異例で大胆な構成が大成功している。4位「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(スティーヴン・スピルバーグ監督)ベトナム戦争時、「The New York Times」が政府の極秘文書の存在を暴く。もちろん監督は、メディアを敵視するトランプに対抗して本作を作ったのだろう。しかし、これは日本の報道陣を励まし叱る作品にもなっている。5位「1987、ある闘いの真実」(チャン・ジュナン監督)「タクシー運転手」と対で観ると、感動も倍加する。韓国市民は、光州から充分に学び、一人ひとりがバトンを手渡すように、その「革命」をやってのけた。6位「万引き家族」(是枝裕和監督)世間からは偽装家族による詐欺事件のように見えていたあの「事件」が、中に入って見ると「もしかしたらこうだったかもしれないよ」と、監督は複合的視点を提示する。7位「ダンガル きっと、つよくなる」(ニテーシュ・ティワーリー監督)作品完成度ではイマイチな処はあるけど、インド映画らしいところと、楽しくてヒューマニティ、そしてまさかの社会派な処。8位「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督)まるで「チェスの一手によって、手詰まりだった局面が次々と変わってゆくように、物事が好転するかも」と書いた署長のような展開になってゆく先の見えない脚本も秀逸。三枚の広告が広げる見事なアメリカ曼荼羅。9位「ウインド・リバー」(テイラー・シェリダン監督)この稀に見る「見せる銃撃戦」。アクションが終わった後に3段かかりで見せるラストシークエンスが、実力のある脚本であることを示している。見事な新しい西部劇。10位「女と男の観覧車」(ウッディ・アレン監督)82歳の監督に敬意を表する。老いてますます軒昂。素晴らしい。そして、ケイト・ウィンスレットに尽きる。観た作品は結局97作のみ。十数年ぶりに100作を切りました。原因は明らかである。邦画が不作だったからだ。漫画原作の青春映画(中には「響」みたいな良作もあったが)ばかりや、漫画原作やドラマ延長や企画ものの、変わり種ばかりが目立ち、じっくりとドラマを見せる作品が、あまりにも少なかった。実力もついてきている若い役者を無駄使いしている。彼らの代表作と言えるものを早く作ってやって欲しい。この不作は、もう今年限りにして欲しい。来年は、豊作でありますように。良いお年を!
2018年12月31日
コメント(2)
「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」先月28日、ソウルに行ったときに初めて韓国の販売者さんからビッグイシューを買いました。5000wで、半分が販売者のものになります。とってもフレンドリーな方でした。私はずっと岡山天満屋前で倉敷の仲間と共同購入しています。イギリスから始まった、この「ホームレスの仕事をつくり、自立を応援する、書店では売っていない」雑誌の存在は、だからとっても身近なものです。映画でビッグイシュー販売者が主人公になったことは、おそらくこれが初めてです。日本版は去年2回も表紙に使いました。俳優のルーク・トレッダウェイではなく、その相棒の猫ボブのアップの写真を。そうなんです。主演は実質主人公ジェームズの飼い猫ボブなんです。麻薬依存症の青年が、家に紛れ込んできた猫の世話をするうちに、色んな事が好転して、再び人生をやり直す話です。「最初からずっと涙が止まらなかった」岡山の販売者はシネマ・クレールで観てそう言っていました。イギリスの麻薬更生プログラムや、住居だけは提供する生活保護制度等、日本と違うところはたくさんあります。でも、かなりリアルにホームレスの実態を描いています。当初、ネコは役者猫をつかっていたそうですが、試しにホンモノのボブを使ってみたらものすごく上手かったので、そのまま使ったそうです。例えばいろんな時にずっと肩に留まっている芸当、ハイタッチする芸当、全てわかっているような表情、まるで過去を覚えていてなぞっているような演技。名演です。原作(青年ジェームズの体験を綴った本)も読んでみましたが、人間関係などを少し脚色しているだけで、ほぼ実話です。猫好きでない私にはわからないけど、ボブは凄くキュートらしくて、彼といるだけで、いつも収入は数倍化するらしいのです。でも、簡単にうまくはいかないのが現実。岡山の販売者さんはこう言いました。「彼らはたまたま出会ったんだけど、それを大切にしてセカンドチャンスを活かした。私も、ネコというのではなく、セカンドチャンスを生かしたい」見事な映画評です。11月になって、販売者さんは、セカンドチャンスがやってきたのか、それとも体調崩したのか、お休みの日が多くなっています。もし見かけたら、気軽に購入ください。そして、今もイギリスに居るボブに、いいクリスマスを。(2017年英国、ロジャー・スポティスウッド監督作品レンタル可能)
2018年12月15日
コメント(2)
11月に観た映画、最後の三作品です。「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」下のストーリーを読むと、米国密入国問題の裏側を描こうとしたかのように思える。が、当然、前作と同様、そんな風には終わらない。汚い仕事を義務のようにこなすグレイヴァーと、今やメキシコマフィアの間では伝説化している殺し屋のアレハンドロが入る蛇の道のような殺伐とした世界は、更に殺伐化して、混沌と言っていい世界に入り込む。最初こそ、ソマリア沿岸の海賊からイエメンの繋がりを汚い手で探る辺りが現代米国情報戦線を見せるが、あとはなんでもありになる。アレハンドロは、まるで死神だ。当たり役と言っていい。ヒロインと言うべきか、娘役のイザベラ・モナーの鮮烈な魅力が光る。この少女、これから出てきそうだ。さて、続編あるかな。(ストーリー)アメリカで、メキシコを経由して不法入国したと思われる人物が、15人の死者を出す自爆テロを起こす。アメリカ政府はさらなる犯行を防ぐため、CIAの特別捜査官のグレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に、国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルをかく乱させるよう命じる。グレイヴァーは、家族を殺したカルテルに恨みを抱く暗殺者のアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と共に麻薬王の娘(イザベラ・モナー)をさらい、カルテル同士のを引き起こそうとする。(キャスト)ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー、ジェフリー・ドノヴァン、マシュー・モディーン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、キャサリン・キーナー(スタッフ)監督:ステファノ・ソッリマ脚本:テイラー・シェリダンプロデューサー:ベイジル・イヴァニク、エドワード・L・マクドネル、モリー・スミス、トレント・ラッキンビル、サッド・ラッキンビル2018年11月19日Movix倉敷★★★★https://border-line.jp/sp/「息衝く」岡山映画祭で観た。当たり前のように、時制が行ったり来たりする脚本の分かり難さは、観客に努力(再び見ることを含む)を強いているのかもしれない。まあ、そういう作品なんだと腹を据えて見出すとやっと付いていけるようになる。「映画のネタ探しに、原発を見に行った。すると、知ってしまった。知ってしまった以上は、関わらなくてならない」そういう気持ちで撮ったと、監督冒頭あいさつで述べる。だから、真ん中に原発があり、その周りを政治や宗教や家族が回っている映画である。いや、真ん中ではない。太陽のように、遥か遠くを回っている。真ん中に何があるのか。家族なのか。それも、違う気がする。結局、それが問題なのだと思う。監督の芯に何があるのか、とても曖昧なのだ。架空の宗教団体をぶち上げ、原発反対や福祉充実をかかげながら、宗教で票集めをして、自民党系候補の当選のために奔走する。保守系か革新系か曖昧な宗教団体である。その描き方が、あゝこの監督宗教団体どころか、政治を嫌いに嫌っているんだな、とわかる。じゃあ、自分なりの世界を作っているのかといえば、それもない。3人の若者が分裂した監督だとしたら、したたかな元宗教家政治家にコテンパンにやられるのは至極当然。もちろん、森山さんもかなり世俗的で、歳の功で若者をやり込めたに過ぎない。まるで、高村薫小説世界のパロディのようにさえ見える。そういう監督の心のウチを130分見せられて退屈しなかったのは、それでも役者がきちんと演じ、きちんと撮影されていたから。志はあるのかもしれないが、もっと世界を見て欲しいと思う。(解説)『へばの』『愛のゆくえ(仮)』などの木村文洋が監督を務めた社会派ドラマ。東日本大震災以降の日本を舞台に、新興宗教団体の二世・三世信者の男女の姿を映し出す。物語の中心となる男女3人を、『知らない町』などの柳沢茂樹、『KOKORO』などの長尾奈奈、『At the terrace テラスにて』などの古屋隆太が演じる。木村知貴、齋藤徳一、川瀬陽太、坂本容志枝、小宮孝泰、寺十吾らが共演。(ストーリー)東日本大震災から数年後の東京。政権与党の政治団体であり新興宗教団体でもある「種子の会」信者の則夫(柳沢茂樹)と大和(古屋隆太)は、種子の会青年幹部で国会議員となった森山(寺十吾)の失踪後、何年かぶりに選挙に呼び戻される。則夫と大和、そして種子の会を離れて母親となった慈(長尾奈奈)は森山に会いにいくことにする。2018年11月24日岡山シティミュージアム★★★「ボヘミアン・ラプソディ」音オンチの私が楽しめた音楽映画は、たいていは傑作と言っていい作品になってきた。だから、これは傑作だろうと思う。フレディ・マーキュリーの半生を描いたこれは、おそらく幾らかの脚色があると思うが、アルバムのエポックとライブ・エイドの歌は変えようがないから、総ては説得力を持って最後の3曲に向かえる。いい曲とはおもっていたけど、あんな歌詞とは思わなかった。まるで数年後の自分の運命を知っていたかのような歌たちが、最高の舞台で、最高のパフォーマンスをする。しかも、史実だ。これほどの説得力はあろうか?今、クィーンの曲は安く聴くことが出来る。早速ウチに帰って探そうと思った。品切れになる前に(映画は力があるんだ)。(ストーリー)1970年のロンドン。ルックスや複雑な出自に劣等感を抱くフレディ・マーキュリー(ラミ・マレック)は、ボーカルが脱退したというブライアン・メイ(グウィリム・リー)とロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)のバンドに自分を売り込む。類いまれな歌声に心を奪われた二人は彼をバンドに迎え、さらにジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)も加わってクイーンとして活動する。やがて「キラー・クイーン」のヒットによってスターダムにのし上がるが、フレディはスキャンダル報道やメンバーとの衝突に苦しむ。(キャスト)ラミ・マレック、ルーシー・ボーイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョー・マッゼロ、エイダン・ギレン、アレン・リーチ、トム・ホランダー、マイク・マイヤーズ、アーロン・マカスカー(スタッフ)監督:ブライアン・シンガー脚本・原案:アンソニー・マクカーテン原案:ピーター・モーガン製作:グレアム・キング、ジム・ビーチ製作総指揮:アーノン・ミルチャン、デニス・オサリヴァン、ジャスティン・ヘイザ、デクスター・フレッチャー、ジェーン・ローゼンタール撮影監督:ニュートン・トーマス・サイジェルプロダクションデザイナー:アーロン・ヘイ編集:ジョン・オットマン共同製作:リチャード・ヒューイット音楽スーパーバイザー:ベッキー・ベンサム音楽総指揮:ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー2018年11月22日Movix倉敷★★★★http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/sp/
2018年12月14日
コメント(0)
次の三作品。ごめんなさい、「三回に分けて紹介する」と書いたけど、計算間違っていました。あと一回三作品を紹介します。「ヴェノム」マーベルの映画には、いつもおまけ映像がつくのだけど、今回のに限って言えば1番よくわからないものだった。そもそもヴェノムって、スパイダーマンの宿敵らしいけど、あれじゃ敵になりようがない。結局ひねりに捻った続きになるしかない。多くのヒトが敵キャラをゾゾタウンの社長をイメージしたことだろう。案外本質を突いていたりして。今までのヒーローたちは、一定中産階級以上だった。しかし、今回はスラム街を代表して登場して来た。自ら負け犬だったというヴェノムも、クビを繰り返してきたトム・ハーディのキャラも、その辺りをカバーして、観客の拡大を狙ったのかもしれない。もっとも成功するように思えない。(ストーリー)ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、ライフ財団が人体実験を行っており、死者が出ているといううわさを聞きつける。正義感にかられ、真相を突き止めようと調査を始めた彼は被験者と接触したために、地球外生命体のシンビオートに寄生される。(キャスト)トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド、スコット・ヘイズ、リード・スコット、(日本語吹き替え)、中村獅童、中川翔子、諏訪部順一(スタッフ)監督:ルーベン・フライシャー脚本:スコット・ローゼンバーグ、ジェフ・ピンクナー、ケリー・マーセル、ウィル・ビール2018年11月7日Movix倉敷★★★ 「かみいさん」岡山映画祭で「かみいさん」鑑賞。現役美容師の桑田浩一が監督。郷里の児島を舞台に、高校生のサトルが、インターシップで美容室の仕事を体験、次第と生涯の仕事にする決心をするというそれだけの1時間ほどの物語だ。監督は仕事が休みの毎週月曜日だけ撮影。しかし、主要俳優は、母親役に元アナウンサーの橋本昌子さん、マサルに石原響、店長に「毎週高速バスで地球一周くらい走った」という大滝明利さん、介護施設のお客様に元ウルトラマンAの星光子さんなどを配し、地元の俳優八木景子(美容師の仕事の魅力を語る場面は説得力あった)、美容師受付にRSKで釣り番組レギュラーの福井柑奈などが出ている。よって、地元民を使った演技は少したどたどしいけど、俳優の演技にわりと大きな破綻はない。冒頭、野崎家旧宅でロケした、嫁入りでお嫁行列に出る前の髪結い場面、きちんと商業映画の水準になって居た。掴みはOKだったと思う。ただし、この場面でこのセリフは少し不自然だったり、間がおかしいという場面はあり、商業ベースに載せるのはむつかしいような気がする。私は脚本と編集は、まだ課題があると思う。「聖地になって欲しい」と監督が話す堤防の場面(クジラ山の話、)や、倉敷シルバーセンターからの絶景とか、(個人的には水島工業地帯の夜景が美しく見える場面)住人にしかわからない、児島の隠れた絶景、見どころをポイントポイントで数多く出していて嬉しかった。児島市史編纂室が「資料として残せると」、言ってくれたらしい。監督も意識して、いわゆる観光名所を外したらしい(瀬戸大橋は出てこない)。終わった後の出演者、監督のトークで、星光子さんが見事に映画の魅力を整理していた。(1)美容師の仕事の魅力を紹介(2)夢を実現するということを青年の成長を通して描いた(3)監督は児島が大好き。児島の魅力がいっぱい。シネマ・クレールに出すのは躊躇するが、是非あと一本見てみたい気がする。もちろん、素人映画ではない。お金をとっても良い映画だ。でも、採算がとれるかどうかには、疑問符がつく。2018年11月18日オリエント美術館★★★ 「タリーと私の秘密の時間」シャーリーズ・セロン様の役作りは完璧です。この完璧主義が時には、彼女の重荷にもなっていたのかもしれないなぁ、とファンとしては少し反省する作品でした。時にはスキンヘッドで片腕まで無くしてギリギリのアクションを挑み、時にはモンスター級の醜女にもなる。時には絶世の美女だけど、超冷たい女にもなる。それでも、スクリーンにセロン様が出てくれば間違うことはない。チラシの写真がいくら違っていて、これが出演映画とは一週間前までは気がつかなかったとしても、スクリーンで観れば紛うことなき、どんなに18キロ増量してデブデフになっても、セロン様である。まさかの結末だったけど、少し⁇がつく設定はあるけど、まあお母さんて大変、と男としては思うしかない。(ストーリー&解説)マーロ(シャーリーズ・セロン)は大きなお腹を抱え、娘サラ(リア・フランクランド)と息子ジョナ(アッシャー・マイルズ・フォーリカ)の世話に追われていた。聞き分けのいいサラと違い、落ち着きがないジョナのおかげでマーロは何度も小学校から呼び出される。夫ドリュー(ロン・リヴィングストン)は優しいが、家のことはマーロ一人に任されていた。『ヤング≒アダルト』のジェイソン・ライトマン監督と脚本のディアブロ・コディ、オスカー女優シャーリーズ・セロンが再び組んだ人間ドラマ。2018年11月18日シネマ・クレール★★★★
2018年12月12日
コメント(0)
中間の三作品です。「旅猫リポート」猫好きでもない私がなぜ観たかというと、一定評判なのでチェックのため、という他には理由なし。我が郷土が生んだ平松恵美子脚本ではある(彼女はペット殺処分反対の映画を監督している)。ストーリーは、二通りの予想をしていたが、最もオーソドックスな展開だった。まあそれでも猫好きにはたまらない作品。一切CGを使わず、キチンと話を作っていた。広瀬アリスが、いい味だしていた。子役は重要だったが、残念ながら大根だった。猫は始めから結末を知っていた、というのが、映画的サプライズである。観客は約6人。半数はボロボロに泣いていた。作品感想から離れて、ふと思ったことを言うと、猫にとって親しい人間の死はどのように見えるのだろう。ナナは元は野良猫だったのだから、いろんな仲間の死を見てきたことだろう。死の瞬間はわかるものなのか。それとも、全く動かなくなり、それで初めて判断するものなのか。死に物語を付随させるのは、おそらくホモ・サピエンスが地球上で唯一だと思う。言葉を駆使出来るサピエンスは、祖先物語を作ったから、人類のみに郷里や国が出来上がったのである。だとすると、猫にとって親しい者の死はどう映るのか。記憶能力は持っているはずだから、悲しむことは出来るはずだ。けれども、ナナはあまり悲しんではいなかった。ナナは男だから、種は撒き放しのはず。家族を持つという習性はない。でも仲間だけは作るのが、猫の習性である。死ぬまで生きる、というのが猫の諦観なのかもしれない。そうだとすると、いつも遠くを見つめるあのナナの眼差しは、いっそ清々しい。(ストーリー)野良猫だったナナは交通事故に遭ってしまい、猫好きの人のいい青年・悟(福士蒼汰)に救われる。その後5年間、ナナは家猫として悟と仲良く暮らしてきたが、ある事情から彼は愛猫を手放す決意を固める。そして新たな飼い主を見つけるため、彼らは悟の親友や初恋の相手などを訪ねる旅に出る。(キャスト)福士蒼汰、広瀬アリス、大野拓朗、山本涼介、前野朋哉、田口翔大、二宮慶多、中村靖日、戸田菜穂、橋本じゅん、木村多江、田中壮太郎、笛木優子、竹内結子、(声の出演)、高畑充希、沢城みゆき、前野智昭(スタッフ)原作・脚本:有川浩監督:三木康一郎脚本:平松恵美子音楽:コトリンゴ2018年11月6日movix倉敷★★★ 「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」やはり大坂なおみのテニススタイルのことを考えてしまう。テニスは、どこまで自分の感情をコントロールし、集中するかで、勝負が決まってくるのだな、とおもう。ウィンブルドンみたいな大舞台だとなおさら。ボルグもマッケンローも、名前はよく知っているけど、観たことはない。既に「エースをねらえ!」で、テニスの一定知識はあったものの、彼らに思い入れはない。それでも、最後に二人ハグし合うのは、スポーツのいいところだろう。ボルグは、炎を鎮めるための氷だった。それを徹底したので、ずっと氷の男ということになったのだろう。頂点の26歳で引退。正にそんな人生もあり、なのだろう。ところで、レオ・ボルグって、お孫さん?(解説)1980年代を代表する名テニスプレイヤー、ビヨン・ボルグとジョン・マッケンローの実録ドラマ。ライバルとして火花を散らしていた彼らが、1980年のウィンブルドン決勝戦で繰り広げた激闘を活写する。監督は『アルマジロ』などのヤヌス・メッツ。『マン・ダウン 戦士の約束』などのシャイア・ラブーフ、『ストックホルムでワルツを』などのスヴェリル・グドナソン、『男と女、モントーク岬で』などのステラン・スカルスガルドらがそろう。(ストーリー)世界がテニスブームに沸き立つ1980年、その最前線に立つ存在として活躍するビヨン・ボルグ(スヴェリル・グドナソン)。類いまれな強さに加えて彫刻を思わせる端麗な容姿と冷静沈着な性格で、テニスファン以外からも圧倒的人気を集めていた。ウィンブルドンで4連覇を果たし、5連覇をも達成しようとするボルグ。だがその前に、過激な言動で注目されていた天才的プレイヤーのジョン・マッケンロー(シャイア・ラブーフ)が立ちはだかる。(出演)スヴェリル・グドナソン(ビヨン・ボルグ)シャイア・ラブーフ(ジョン・マッケンロー)ステラン・スカルスガルド(レナート・ベルゲリン)ツヴァ・ノヴォトニー(マリアナ・シミオネスク)イアン・ブラックマン(ジョン・マッケンロー・サー)レオ・ボルグ(9歳~13歳のビヨン・ボルグ)(スタッフ)監督ヤヌス・メッツ脚本ロニー・サンダル2018年11月7日シネマ・クレール★★★★ 「search/サーチ」事前情報がほとんど無く、ネットの評判が良いので観た。題名からすると、フェイクニュース系の、或いはネット犯罪系の話かと思いきや、そうでは無く、下の(ストーリー)にある様に最初から最後までお父さんが娘を探すために娘が残したPCのデータやSNSを駆使して探すというもので、全ての映像が、全て「データ画像」として構成されているのが、今迄にない斬新なものだった。冒頭はPCの立ち上げから始まり、娘が生まれてどんどんデータが増えて行き、妻の病死までの15年間を過不足なしに我々に見せる。このまま最後まで行くのか?と心配になったが、遂に最後まで行ってしまった。デビッドはお父さんのメール送信元から推察するに、韓国系米国人と思われる。完全ネイティブアメリカンなので、二世かもしれない。テレビ会議が当たり前の職場と、娘のパスワードを突破するスピード(1分もかからなかった)は、現代のネット人類は此処まで来ているのか!と思わせる。親だから、緊急事態だから許せるが、正にPCやSNSを見れば、今や娘の日常や秘密もだいたいわかるのである。それがわかるという意味でも興味深い作品。二転三転のストーリーは、ありきたり。でも、充分エンタメで面白かった。(ストーリー)忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット。行方不明事件として捜査が始まる。家出なのか、誘拐なのかわからないまま37時間が経過。娘の無事を信じる父デビッドは、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。インスタグラム、フェイスブック、ツイッター・・・。そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があった―。監督アニーシュ・チャガンティ出演 ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー、ミシェル・ラー2018年11月1日TOHOシネマズ岡南★★★★http://www.search-movie.jp/sp/index.html
2018年12月10日
コメント(0)
11月は12作品を観ました。三回に分けて紹介します。「若おかみは小学生!」評判が良いので、もう終わりかけているけど、一応見ておいた。凄い傑作ではないが、編集もとても映画的、かつ肝になる映像は事実によく取材した丁寧な美術、動きも最初こそはギクシャクしたけどとてもスピーディ、良質なアニメだったと思う。「花の湯温泉は、誰でも受け入れて癒してくれるの」何度も出てくる台詞。お母さんから、お祖母さんから、そしてやがて主人公から、語られる。それが、温泉街の子供たちは当たり前の様に家の仕事を手伝い、伝統行事を守る、昔ながらの習慣と共に、古き良き日本を体現する言葉になる。素直に大人をも納得させる作品になっていた。(ストーリー)小学6年生のおっこ(関織子)は交通事故で両親を亡くし、おばあちゃんが経営する旅館〈春の屋〉に引き取られることになった。旅館に昔から住み着いているユーレイのウリ坊や、美陽、子鬼の鈴鬼、ライバル旅館の跡取り・真月らと知り合ったおっこは、ひょんなことから春の屋の若おかみ修業を始めることになった。慣れない若おかみ修業に、毎日失敗の連続・・・。「あたしって、ぜんぜんしっかりしてないじゃん。」落ち込むおっこだったが、不思議な仲間たちに助けられ、一生懸命に接客していくうちに、少しずつ成長していくのだった!監督 高坂希太郎声の出演:小林星蘭、松田颯水、水樹奈々、一龍斎春水、一龍斎貞友、てらそままさき、遠藤璃菜、小桜エツコ2018年11月1日TOHOシネマズ岡南★★★★「ビブリア古書堂の事件手帖」アニメ化もドラマ化もされている、この作品の映画化の目的は、剛力彩芽では栞子は表されないということと、映画映えする鎌倉の景色をスクリーンにとどめたいという単純な動機だったとしか思えない、なんということはない作品。好きな監督だったので期待したのだが、がっかりした。流石にあからさまではないが、鎌倉散策をしてみたくなる作品になってしまっていた。例えば、犯人を捕まえたり、彼から逃げる方法は幾らでもあったはず。ああいう展開は、あまりにも意図的で、それがクライマックスというのだから萎えてしまう。(ストーリー)鎌倉の片隅にひそやかに佇む古書店「ビブリア古書堂」。過去の出来事から本が読めなくなった五浦大輔(野村周平)がその店に現れたのには、理由があった。亡き祖母の遺品の中から出てきた、夏目漱石の「それから」に記された著者のサインの真偽を確かめるためだ。磁器のように滑らかな肌と涼やかな瞳が美しい若き店主の篠川栞子(黒木華)は極度の人見知りだったが、ひとたび本を手にすると、その可憐な唇からとめどなく知識が溢れだす。さらに彼女は、優れた洞察力と驚くべき推理力を秘めていた。栞子はたちどころにサインの謎を解き明かし、この本には祖母が死ぬまで守った秘密が隠されていると指摘する。監督 三島有紀子出演 黒木華、野村周平、成田凌、夏帆、東出昌大2018年11月1日TOHOシネマズ岡南★★★「スマホを落としただけなのに」中田監督らしさがほとんど感じられない、世相を表現するプログラムピクチャーでした。予想外だったのは、少しは怖く作っているのかと思いきや、全然ホラーじゃなかったこと。おもったよりもラストシークエンスが長く、「いい話」に仕上げていること。原作では完全脇役の毒島刑事の相棒を助演扱いにして、犯人のもうひとつあったかもしれない未来を見せたこと。最後の設定は、よく設定したとはおもったが、なぜ彼があの環境で刑事を目指したのか、全然わからない。イマイチだった。北川景子の綺麗な顔、ぐしゃぐしゃの顔全部観れて、それだけで満足できる人には価値のある作品だと思う。(STORY)派遣社員・稲葉麻美(北川景子)の恋人が、スマートフォンを落としてしまう。そのことを知らずに恋人に電話をかけた彼女は、「あなたが稲葉麻美さんだってことは、分かりますよ」と見知らぬ男から電話越しに言われ、絶句する。拾い主の男から恋人のスマホを受け取りホッとする麻美だったが、その日から彼女の周囲で不穏な出来事が起こり始める。同じころ、山中で身元不明の女性の遺体が次々と発見され……。(キャスト)北川景子、千葉雄大、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太、筧美和子、原田泰造、成田凌、田中圭(スタッフ)主題歌:ポルカドットスティングレイ企画プロデュース:平野隆監督:中田秀夫脚本:大石哲也2018年11月4日Movix倉敷★★★http://www.sumaho-otoshita.jp/sp/
2018年12月09日
コメント(0)
今月の映画評です。「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」威張ることではないが、私はマクドナルドのヘビーユーザーです。おそらく年間200回ぐらいは通っていると思う。健康や味は二の次、「便利」だからです。世界人口の約1%は毎日マクドナルドを利用しているらしい。この店は、なぜそこまで大きくなったのか。そこを描いて、アメリカという「帝国」が持つ「野心」と「貪欲」と「執念」をも表現する作品でした。売れないシェイクミキサーのセールスマン、人生の後半を様々な商売に手を出してきたレイ・クロックは、マクドナルド兄弟の革新的で効率的なバーガー製造方法に商機を見出します。1954年に契約。1961年に、マクドナルド兄弟をマクドナルド社から追い出すことに成功しました。そうです。マクドナルド兄弟は、創立者とは法律的には言えないのです 。宣伝用のチラシが面白かった。堀江貴文氏は「全ての企業経営者に見て欲しい名作」と持ち上げ気味に評価しています。元NHKアナウンサーの堀尾正明氏も、ディープ・スペクター氏も絶讃しています。一方、町山智浩氏は「マクドナルドを乗っ取った主人公が毎日聴くのは『パワー・オブ・ポジティブ・シンキング』の朗読。ドナルド・トランプの座右の書だ!ドナルドがなんで怖いのか、よくわかったぜ!」と1番皮肉を込めて評価していました。私はもちろん町山さんに同意します。レイ役のマイケル・キートンは「嫌な奴」を演じ切りました。マクドナルド兄弟にレイ・クロックは言います。「商売は弱肉強食だ。溺れているライバルの口にはホースを突っ込む。お前にそれが出来るか?」「出来ないし、しようとも思わない」兄弟がそう言ってくれて、私はアメリカの良心を感じ、ホッとしました。レイは、売れない時からこの様にセールストークをして来ました。「供給量を増やせば、需要がついてくる。賢明な貴方はわかりますよね」需要と供給のバランスでは無く、供給を先に持ってゆく。それは良くも悪くも、日本を含めた戦後資本主義の姿と被ります。更に言えば、レイは「マクドナルド」の名前を卑怯な手を使ってマクドナルド兄弟から奪う必要は、本来はなかったのです。マクドナルドシステムは、公開されていたのだから。でも、レイは名前に拘りました。そこに、トランプ大統領に繋がる、用意周到な消費者戦略があったのですが、それは映画を観て確かめてください。(2017年米国ジョン・リー・ハンコック監督作品)
2018年11月17日
コメント(2)
後半の三作品です。10月は一年で最も収穫の多い月でした。「判決、2つの希望」中東問題のしがらみを扱った作品だとは聞いていた。けれども、イスラエルとPLOの対立ではなく、レバノンというなかなか国のいちを想像出来ない国のベイルートというよく聞く都市での話である。後でいろいろ学習すればするほど複雑でわからなくなる。冒頭、「内容は政府の見解を表したものではない」という異例の断りを入れていて、何故かなと思っていたら、2人の喧嘩にどうやら大統領まで仲裁に入る(けれども2人は頑として肯じない)までゆく。内戦を思わすような事態をつくる。まさかここまでエンタメとは思わなかった。「シャロンに殺されていたならばな」「第1次中東戦争(以下2次3次4次も出る)」「パレスチナ難民」等々の言葉。諍いの背景には、数十年の重い戦争の歴史がある。「我々は、これらの出来事に慣れてしまった。でも、その時の家族には、今も心を傷つける」。最後のシーンは、あまりにも省略し過ぎ。2人の台詞じゃなくてもいいからもう少し分かり易い場面が欲しかった。(解説)キリスト教徒のレバノン人男性とパレスチナ難民男性の衝突を描き、第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたドラマ。口論から始まった対立が裁判に発展し、やがて全国に知れ渡るさまを映し出す。監督はレバノン出身で、クエンティン・タランティーノ監督作品にアシスタントカメラマンとして参加したことがあるジアド・ドゥエイリ。本作で第74回ベネチア国際映画祭最優秀男優賞を受賞したカメル・エル・バシャのほか、アデル・カラムらが出演する。(ストーリー)レバノンの首都ベイルート。パレスチナ人のヤーセル・サラーメ(カメル・エル・バシャ)とキリスト教徒のレバノン人トニー・ハンナ(アデル・カラム)が、アパートの水漏れをめぐって口論を始める。さらに、ある侮辱的な言動が裁判に発展。これをメディアが大々的に報じたことから政治問題となり、さらには国中を揺るがす騒乱が巻き起こる。2018年10月11日シネマ・クレール★★★★「イコライザー2」映画館で観るのはこれが初めて。お金を貰わない必殺仕掛け人という認識だった。そういう面もあるし、今回は仕事人VS仕事人という構造も合っている処もある。しかし、どうもマッコールさんは人間ぽくないのである。殺される気が全くしない。一回死んで生き返っている設定が、もしかしたら、と思う。もしかしたら、神の憑依なのでは。そう考えると全てがガッテン行く。アクションも面白かった。(STORY)表向きはタクシー運転手として働くマッコール(デンゼル・ワシントン)は、CIA時代の上官で親友のスーザン(メリッサ・レオ)が何者かに殺害されことを知る。独自に捜査を進める彼は、スーザンが死の直前まで手掛けていた任務の真相に近づき危険にさらされる。その手口からCIAの関与が浮かび上がり、敵はマッコールと同じ特殊訓練を受けていることが判明する。(キャスト)デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、アシュトン・サンダース、オーソン・ビーン、ビル・プルマン、メリッサ・レオ(スタッフ)監督・プロデューサー:アントワーン・フークア脚本:リチャード・ウェンクプロデューサー:トッド・ブラック、ジェイソン・ブルメンタル、デンゼル・ワシントン、アレックス・シスキン、スティーヴ・ティッシュ、メイス・ニューフェルド、トニー・エルドリッジ、マイケル・スローン2018年10月16日mobix倉敷★★★★「日日是好日」私の叔母さんに、お茶の先生が居た。狭い茶室で1度だけお茶を飲んだことがある。思えばあれも一期一会だった。その茶室はもう26年間暗い部屋のままだ。ストーリーらしいストーリーはない。黒木華も樹木希林も取り立てて凄い演技をするわけではない。けれどもあっという間に時間がすぎて終わって居た。あの額縁は面白いな。二十四節気の自然は素晴らしいな。お茶菓子美味しそ。とか思ううちに終わって居た。要はそんな作品である。思うに、「世の中には直ぐにわかることと、わかるのに長い時間を要することがある」。たった二時間で、わかろうというのがそもそも無理なのだが、その戸羽口を見せるのが、この作品の役割だろう。そのために、おそらく幾つもの「本物」を借りてきたに違いない。樹木希林に、「(今度12年後ならば)私は100歳過ぎてるわね」と言わせたのは、監督の願いだったのだろう。(ストーリー)大学生の典子(黒木華)は、突然母親から茶道を勧められる。戸惑いながらも従姉・美智子(多部未華子)と共に、タダモノではないとうわさの茶道教室の先生・武田のおばさん(樹木希林)の指導を受けることになる。(キャスト)黒木華、樹木希林、多部未華子、原田麻由、川村紗也、滝沢恵、山下美月、郡山冬果、岡本智礼、荒巻全紀、南一恵、鶴田真由、鶴見辰吾(スタッフ)監督・脚本:大森立嗣原作:森下典子2018年10月19日Movix倉敷★★★★
2018年11月10日
コメント(0)
10月に観た映画は、今月も少なくて6作品だった。2回に分けて紹介します。「散り椿」これは、この前高倉健展を観たから思ったわけではない。脚本家、監督共に確信犯的にやっている。これは、まんま任侠映画の世界である。つまり、ストーリーは以下のような「構造」になっている。かつて罪を得たと言われた兄貴格の男が故郷に帰ってくる。あまりにも明確に分かる悪役が、主人公の周りの男たちを次々と殺す。薄幸の美女は、秘かに主人公を愛してるが、想いを伝えることが出来ない。悪役は、遂に最後の手段に出る。主人公は、もう1人の兄貴格と共に討ち入りに入る。卑怯な手でもう1人の兄貴格は殺される。主人公は、怒り、夜叉の様に悪役の親玉を殺す。そのあとは、平和が戻る。主人公は、美女を置いて、また1人旅に出る。岡田准一自身も参加した殺陣は、今までの殺陣のどれよりも実用的、かつ速く、かつ美しい。相当の鍛錬を積んだはずであり、ひとつの価値ある映像である。彦根城や長野などで撮影された、文字通り江戸時代の四季自然は、流石木村大作という他はない。台詞は、いかにも察してくれという様な短いものばかり。だいたいはわかったが、少し?がつくものもあった。また、回想が二度三度ありひつこいなと思った。終わってみれば物語は単純。任侠映画なのだから、当然。ただ、50年前と違って、観客に熱はなかった。シリーズ化はむつかしい。だとすると、第二の高倉健へとなって欲しい岡田准一への期待(監督は過去何度も高倉健の映画の撮影監督だった)は、叶えられない。(解説)過去日本アカデミー賞優秀撮影賞を21回受賞、そのうち最優秀撮影賞を5回受賞、キャメラマンとしてだけでなく、映画監督としても『劔岳 点の記』(2009)で第33回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞している日本映画界の巨匠・木村大作が、三作目の監督・撮影作品『散り椿』に挑みました。原作は、「蜩ノ記」で直木賞を受賞した葉室麟の名作「散り椿」(角川文庫)。朴訥で不器用だが、清廉に生きようとする侍たちの“凛とした生き様”、そして愛する女性のために命を懸けて闘う、“切なくも美しい愛の物語”をテーマに、日本人の誰もが心揺さぶられる脚本が生まれました。脚本は、『影武者』『乱』『夢』『まあだだよ』など黒澤明のもとで助監督を長年務め、監督デビュー作の『雨あがる』(脚本・黒澤明)では第24回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞、その後も『阿弥陀堂だより』『蜩ノ記』など黒澤明を彷彿とさせる数々の良質な日本映画を手掛けてきた小泉堯史が務めます。撮影は、富山、滋賀(彦根)、長野(松代)にて、時代劇としては前代未聞の全編オールロケを敢行し、厳しい自然の中に浮かび上がる登場人物たちの想いや感情を木村大作によるキャメラで掬い取っていきます。木村大作ならではの圧倒的な自然描写と侍として生きる男の闘い、そして男と女が惹かれ合い、想い合い、労り合っていくラブストーリーを丁寧に叙情豊かに描きだします。今までの時代劇とは一線を画す新しい時代劇となります。主演には、幅広い世代から絶大な支持を受ける国民的俳優・岡田准一。本作では、かつて藩を追放されるも妻の最期の願いを胸に藩の不正や権力に立ち向かっていく男・瓜生新兵衛(うりゅう しんべえ)を儚くも強く演じます。また、道場の四天王の一人という役柄からクランクイン前から殺陣の稽古に励み、激しく鋭い剣豪アクションに臨んでいます。共演には、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子、富司純子、奥田瑛二ら錚々たる日本を代表する豪華俳優陣が集結しました。全編オールロケによる“美しい自然”と木村キャメラマンによる“美しい画”、木村監督の演出と岡田准一ら豪華俳優陣による“美しい佇まいと生き様”が全編通して描かれました。ここに、日本映画界に新たな歴史を刻む“美しい時代劇”が誕生いたします。(ストーリー)享保15年、藩の不正を告発した瓜生新兵衛(岡田准一)は、追放の憂き目に遭う。藩を追われた後、最愛の妻・篠(麻生久美子)は病魔に侵され、死を前に最後の願いを夫に託す。それは、かつては新兵衛の友人で良きライバルでもあり、篠を奪い合った恋敵でもあった榊原采女(西島秀俊)を助けてほしいというものだった。(キャスト)岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、緒形直人、新井浩文、柳楽優弥、芳根京子、駿河太郎、渡辺大、麻生久美子、石橋蓮司、富司純子、奥田瑛二(スタッフ)原作:葉室麟監督・撮影:木村大作音楽:加古隆脚本 小泉堯史2018年10月2日ムービックス倉敷★★★★http://www.chiritsubaki.jp/sp/「寝ても覚めても」映画はウソをつくる装置である。そのためには10のうち9はホンモノを見せなくてはならない。この場合のウソは言うまでもなく、全く同じ顔の別人を、1人の女性が時間軸をずらしてそれぞれ愛するという「偶然」である。一人二役を演ればいいので、そのウソは比較的簡単だ。その2人を愛する女の「実在」を証明するのは、非常に困難だ。ひとつのやり方は圧倒的な演技力で、あらゆる感情を我々に見せつけること。若い女性で、それをやることが出来るすっと佇まいの美しい女性は、現代には居ない。この映画はもう一つのやり方を選んだ。それが恐ろしいことに上手くはまっている。大成功かどうかはわからない。意見は半々に分かれるだろう。2度の手のひら返しを評価するかどうかは、ひとそれぞれによるだろうと思う。それをなんとか、わたしに説得力持たせたのは、東山の演技力(朝子と同じ突っ走るタイプの男と、堅実な優しい男)の賜物だろう。何故女性は、仙台でボランティアをしたのか。私は前の男を捜していたのだと思っていたが、映画仲間の女性の指摘でそうでは無く何かしていなくてはいけないだけなのだと知った。その方が確かに頷ける。やはり私は女性の気持ちはわからない。久しぶりに、緊張感のあるラブストーリーを観た。こんな恋愛したくはないけど、降りかかったら受けて立ちたい。(解説)違う名前、違うぬくもり、でも同じ顔。運命の人は二人いた。東出昌大主演の話題作。主演:東出昌大×監督:濱口竜介×原作:柴崎友香×音楽:tofubeats世界が感嘆!新しい才能によって生み出された「日本映画の新しい波!」突如姿を消し、朝子が心のどこかで思い続ける運命の人・麦を、掴みどころのない不思議な佇まいで具現化し、一途に朝子を想う・亮平を、やさしさと包容力で体現したのは東出昌大。初の一人二役で新境地を見せた本作は、東出の新たな「代表作」になるだろう。麦と亮平の間で揺れ動くヒロイン朝子には、”新星”唐田えりか。本作が本格演技デビューの唐田は、スクリーンの中で朝子と共に成長し、その瑞々しさで観客を魅了する。瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子の豪華キャストが脇を固め、物語に深みを与えているのも見逃せない。監督は、前作『ハッピーアワー』(15)でロカルノ、ナントをはじめ数々の国際映画祭で主要賞を受賞しその名を世界に轟かせた気鋭・濱口竜介。芥川賞作家・柴崎友香による原作「寝ても覚めても」に惚れ込み、その映画化で満を持して商業映画デビューを果たす。また、日本のエレクトロミュージックを若くして牽引するtofubeatsが映画音楽に初挑戦。物語の情感に寄り添う劇伴、本作のために書き下ろした主題歌「River」が、切なくも爽やかな余韻を残す。新しい才能が集結し生まれた本作は、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、「日本映画の新しい波!」と海外メディアが絶賛した。(キャスト)丸子亮平/鳥居麦:東出昌大泉谷朝子:唐田えりか串橋耕介:瀬戸康史鈴木マヤ:山下リオ島 春代:伊藤沙莉岡崎伸行:渡辺大知平川:仲本工事岡崎栄子:田中美佐子2018年10月4日シネマ・クレール★★★★http://netemosametemo.jp/「1987、ある闘いの真実」「タクシードライバー」が一人の男優に頼って歴史的事件を描いたのだとしたら、「1987」はその7年後今だに事件の真実は密かにビデオが上映されるぐらいだった韓国社会で、ヒーローは1人ではなく(1人ならば殺される)、検事、解剖医、記者、看守、つなぎ役、学生、民主活動家と次々と命がけのバトンを渡し、最終ドキュメンタリー場面に持ってゆく。市庁前広場は、ソウル旅行をした者ならばたいてい訪れている処だから、あそこが人でいっぱいの場面は観て驚きがあるだろう。もちろん韓国映画らしく、小道具を使っての泣かせの場面もちゃんとつくる。(実際に李韓烈が殺されたのは延世大学前だったらしい、スニーカーは実際に残っていたらしい)不満はある。5月から6月に至る場面が一瞬と言っていいほど短かったこと。もっと尺をとってもよかった。光州80年から87年まで、反共対策室という「怪物」が活躍出来たのに、何故87年は1人の拷問死が大問題だったのか、その背景の説明(国際批判の高まりやソウルオリンピックの問題)が弱かったこと。よって、あの緊迫した場面の説明が今ひとつわかりにくい。群像劇として、わかりにくくする直前の処で、スターを配置して観させた。延世大学とか、その学生の名前を最後までわからなくしていたのは、韓国人ならば自明の歴史的人物の運命を隠すためだが、おかげで上手く驚かせてくれた。また、唯一の架空人物のヨニが、「デモで世の中変わらない」とか「活動家の裏切りでお父さんが酒浸りになって死んだ。殺されたんだ」とか、活動家の言う「真実こそが相手を倒すことができる」等々の、当時の雰囲気をよく見せる台詞もよかった。あと1年公開が遅ければ、1987から2017へのロウソクデモへのバトンタッチが映像化出来たのに残念である。でも韓国の人たちはみんな脳内でその場面を作っていたことだろう。社会派である。けれどもエンタメである。これが韓国映画だ。(見どころ)翌年にオリンピックが開催される韓国で吹き荒れた民主化闘争に迫る社会派ドラマ。警察で取り調べを受けた1人の大学生の死をきっかけに、国民が立ち上がった韓国の激動を活写する。『チェイサー』などのキム・ユンソクをはじめ、ハ・ジョンウ、ソル・ギョング、カン・ドンウォンらが出演。『ファイ 悪魔に育てられた少年』などのチャン・ジュナンが監督を務める。(あらすじ)1987年1月、チョン・ドゥファン大統領率いる軍事政権下の韓国で、北分子を目の敵にする南営洞警察のパク所長(キム・ユンソク)が指揮する取り調べは日毎に激化していた。あるとき、ソウル大学の学生が度を越した取り調べ中に死亡するが、警察は真実を隠すため即座に火葬を申請。異変に気づいたチェ検事(ハ・ジョンウ)は解剖を命じる。2018年10月14日シネマ・クレール★★★★http://1987arutatakai-movie.com/
2018年11月09日
コメント(0)
「響 -HIBIKI-」はじめまして。女優平手友梨奈。おかえり。アヤカ・ウィルソン。北川景子さん、こんなにもあっという間に時間がすぎた作品は久しぶりでした。お疲れさまでした。原作も読んでいる。これはキャスティングで九割成功するタイプの作品なのだが、それに血を通わせるのは、やはりスタッフである。編集部の雰囲気とか、響の部屋の美術とか素晴らしかった。国民の皆さんに言いたい。これって、アイドル映画じゃありません。もしも、天才が現れたらどうなるか?という作品です。平手も素晴らしかった。でも、凡人の私たちが理解出来て共感できるのは、祖父江(村上春樹がモデルなのは明らか)を父に持ち、才能はあるけど、ちょっと背伸びをしている才女の祖父江凛夏を演じた元天才子役のアヤカ・ウィルソンである。2人の対比に焦点を絞った「第一作」はとても良かった。凛夏は、複雑な心境をほとんど「表情だけで」表現した。凛夏がいたから、この作品が締まった。ホントにおかえり。女優アヤカ・ウィルソン。マンガが原作なので、原作通りなんだけど、やはり2度も「偶然で」命が助かるというのはやり過ぎかもしれない。ラストの1度だけにして欲しかった。そうやっていれば、脚本にもOKが出せた。残念ながら、映画は傑作ではない。天才響の目力、そして無邪気さ、平手友梨奈そのままなんだけど、やはり素晴らしい。なんとかしてもう一作観たいと思わせる女優である。マンガ自体が、そもそも現実離れしているのだけど、なんとか傑作小説の「文体」を見せないで、凌いで来た。見せると響のカリスマ性が失われるからだ。映画は冒頭に不完全ながら、2ページ見せている。もちろん読めなかったが、DVDならば全文読めただろう。そこで底が割れるかもしれない。(解説)「マンガ大賞2017」大賞受賞作品待望の映画化!主人公・響を演じるのは映画初出演にして初主演の平手友梨奈。その他、北川景子、小栗旬、高嶋政伸、柳楽優弥といった超豪華俳優陣が出演。主人公の圧倒的な才能を軸に、周囲の人々の心の葛藤を描いた人間ドラマが交錯する。(ストーリー)突如として文学界に現れた、鮎喰響(平手友梨奈)という15歳の少女。彼女から作品を送られた出版社の文芸編集部の編集者・花井ふみ(北川景子)は、彼女の名を知らしめようと奔走する。やがて響の作品や言動が、有名作家を父に持ち自身も小説家を目指す高校生の祖父江凛夏(アヤカ・ウィルソン)、栄光にすがる作家、スクープ獲得に固執する記者に、自身を見つめ直すきっかけを与えていくようになる。キャスト平手友梨奈、北川景子、アヤカ・ウィルソン、高嶋政伸、柳楽優弥、野間口徹、小松和重、黒田大輔、板垣瑞生、小栗旬、北村有起哉、吉田栄作スタッフ監督:月川翔脚本:西田征史原作:柳本光晴2018年9月15日Movix倉敷★★★★http://www.hibiki-the-movie.jp/sp/「スターリンの葬送狂想曲」ブラックコメディという触れ込みだったけど、劇中クスリとも声は漏れなかった。思った以上に「真面目な」作風だった。私が物心ついた時にソ連の政治家は既にブレジネフであり、フルシチョフはキューバ危機を回避した政治家として、少しはスターリンよりもマシな政治家という印象だったのだけど、これを観て認識は一変した。「驚くことにほとんどが事実」のほとんどとは何なのか?わたしは現代ロシア史に詳しく無いので、精査が必要だろう。裏切りと陰謀で、秘密警察を牛耳っていたベリヤが葬儀直後に裁判もなく殺されて燃やされ灰と化したのは事実(淫行容疑書面も事実だろう)だろうから、そこだけから感想を言うと、あのような恐怖政治をそのまま移したような権力闘争は、まさしくスターリンの下でそれが常態化していた名残だろうし、その後のマレンコフの失脚、フルシチョフの失脚も、その名残だろう。ブレジネフは相当上手くやった。だから64年から80年代半ばの死ぬまで生き延びたのだろう。翻って、トランプやアベなどの現代の「独裁者」の行動を考える。国民の見えない所で、突然起きる失脚や「自殺」は、果たして彼らとレベルが違っているのか?私たちは見なくては、想像しなくてはならない。その力を貸してくれるのが、正に映画の力なのである。(解説)1953年、ソビエト連邦の最高権力者スターリンが、脳出血の発作で危篤に陥る。“粛清”という名の大量虐殺による恐怖で、国民はもちろん部下たちも支配してきた独裁者だ。今こそ彼の後釜につくチャンスだと色めき立つ側近たちが、互いを出し抜くオトナげない駆け引きを始めるなか、スターリンは後継者を指名することなく息を引き取る。表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、スターリンの腹心だったマレンコフ、中央委員会第一書記のフルシチョフ、秘密警察警備隊長のベリヤが3大トップとなり、各大臣にソビエト軍の最高司令官ジューコフ陸軍元帥までが参戦し、権力バトル開始のゴングが鳴った! 嘘と裏切り、仕掛け合う罠─勢力地図は1秒ごとに目まぐるしく塗り替えられ、国を担うはずの男たちの“なんでもあり&やったもの勝ち”のゲスな本性が暴かれていく─。 「驚くべき物語が、さらに驚くことに、ほとんど事実」であるために、フランスで出版されるや物議と人気がヒートアップしたベストセラーの映画化が実現。メガホンをとったのは、アカデミー賞®ノミネートとエミー賞受賞歴のあるアーマンド・イアヌッチ監督。 スティーヴ・ブシェミら個性派が、俳優生命を自ら危機に追い込むほどの熱演を披露。ロシアでは政府が急遽上映を禁止したが、ヨーロッパを始め、アメリカ、オーストラリアなど各国で続々スマッシュヒットを記録!どの国の観客も笑いに引きつりながら、ひょっとしてこれは今のわが国のことでは?とヒヤリと背筋が冷たくなる、壮大なのに姑息、大真面目なのに可笑しくて、卑劣で残忍なのにひき込まれる、史上最もドス黒い実話に基づくブラック・コメディ!(ストーリー)“敵”の名簿を愉しげにチェックするスターリン。名前の載った者は、問答無用で“粛清”される恐怖のリストだ。時は1953年、モスクワ。スターリンと彼の秘密警察がこの国を20年にわたって支配していた。下品なジョークを飛ばし合いながら、スターリンは側近たちと夕食のテーブルを囲む。道化役の中央委員会第一書記のフルシチョフ(スティーヴ・ブシェミ)の小話に大笑いする秘密警察警備隊長のベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)。スターリンの腹心のマレンコフ(ジェフリー・タンバー)は空気が読めないタイプで、すぐに場をシラケさせてしまう。 明け方近くまで続いた宴をお開きにし、自室でクラシックをかけるスターリン。無理を言って録音させたレコードに、ピアニストのマリヤ(オルガ・キュリレンコ)からの「その死を祈り、神の赦しを願う、暴君よ」と書かれた手紙が入っていた。それを読んでも余裕で笑っていたスターリンは次の瞬間、顔をゆがめて倒れ込む。お茶を運んできたメイドが、意識不明のスターリンを発見し、すぐに側近たちが呼ばれる。驚きながらも「代理は私が務める」と、すかさず宣言するマレンコフ。側近たちで医者を呼ぼうと協議するが、有能な者はすべてスターリンの毒殺を企てた罪で獄中か、死刑に処されていた。仕方なく集めたヤブ医者たちが、駆け付けたスターリンの娘スヴェトラーナ(アンドレア・ライズブロー)に、スターリンは脳出血で回復は難しいと診断を下す。その後、スターリンはほんの数分間だけ意識を取り戻すが、後継者を指名することなく、間もなく息を引き取る。この混乱に乗じて、側近たちは最高権力の座を狙い、互いを出し抜く卑劣な駆け引きを始める。表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、マレンコフ、フルシチョフ、ベリヤに加え、各大臣、ソビエト軍の最高司令官ジューコフまでもが参戦。進行する陰謀と罠――果たして、絶対権力のイスに座るのは誰?!2018年9月24日シネマ・クレール★★★★http://gaga.ne.jp/stalin/「菊とギロチン」「女1人救えないで、何が革命だ!」2人の主演男優がそれぞれ発する言葉が、この作品の全てだろう。東出のなり切り型役作りは、わたしは好感が持てた。女優がまるきり新人とは思わなかった。関東大震災後の朝鮮人虐殺などを批判的に観て、それに反発する青年群像を見せる狙いはわかる。それでも、テロリズムに走った青年たちを無批判に見せているのは、納得出来ない。今更、まるきり革マル派みたいな青春像を描く必要性が、私には理解出来ない。30年来の構想だそうだから、遅れてきた全共闘世代なのだろう。ロケ地を選んで、大正の町並みを再現する努力は、素晴らしかった。(解説)『ヘヴンズ ストーリー』などの瀬々敬久が監督を務め、第1次世界大戦終結後の大正時代を舞台に描くパワフルな一作。女性力士と平等な社会を目指すアナキストたちの不思議な縁を中心に、色恋沙汰やアクションに社会批判などを詰め込んで活写する。『GONIN サーガ』などの東出昌大と、オーディションで選出された木竜麻生が出演。共演に『んで、全部、海さ流した』などの韓英恵、『下衆の愛』などの渋川清彦、『ジ、エクストリーム、スキヤキ』などの井浦新らが名を連ねる。(あらすじ)大正末期、関東大震災直後の日本では軍部の力が増し、それまでの自由できらびやかな世界は終わりを迎えようとしていた。人々が貧しさと先の見えない不安に息を詰まらせる中、東京近郊に女相撲一座“玉岩興行”が到着する。一座には剛腕の女力士たちのほかに、元遊女の十勝川(韓英恵)や家出娘たちもいた。2018年9月24日シネマ・クレール★★★http://kiku-guillo.com/
2018年10月16日
コメント(0)
9月に観た映画はたった6作品でした。二回に分けて紹介します。「ウインド・リバー」冒頭の「事実に基づく物語」と最後のテロップの「ネイティブアメリカンの失踪者の数はカウント出来ていない」という言葉が、この稀に見る「見せる銃撃戦」の中味を締まったものにしたし、アクションが終わった後に3段かかりで見せるラストシークエンスが、実力のある脚本であることを示している。見事な新しい西部劇。最初、少女とコリーの元妻との顔が見分けつかなくて、勘違いしていた。ちょっと突発で、あそこが上手く付いて行けたとしたら、もっと良かったかもしれない。(解説)『ボーダーライン』のテイラー・シェリダンがメガホンを執った圧倒的な緊迫感と衝撃がみなぎるクライム・サスペンス 荒涼としたメキシコ国境地帯におけるアメリカの麻薬戦争の知られざる実態に迫った『ボーダーライン』(15)。銀行強盗を繰り返す兄弟とそれを追うテキサス・レンジャーの攻防を通して、アメリカンドリームの衰退をあぶり出した『最後の追跡』(16)。共に批評家筋の絶賛を博し、それぞれ第88回アカデミー賞®で3部門、第89回アカデミー賞®で4部門にノミネートされたこの2本の骨太な快作は、物語の舞台となった場所も監督&キャストもまったく異なるが、同じシナリオライターが手がけたオリジナル脚本に基づいており、一貫した奥深いテーマが息づいている。その脚本家の名前はテイラー・シェリダン。ハリウッドで今最も注目を集めるクリエイターのひとりと言っても過言ではない新進気鋭の才能が自らメガホンを執り、圧倒的な緊迫感がみなぎるクライム・サスペンスを完成させた。それが“Rotten tomatoes”で満足度87%(04/10時点)と世界中の批評家に絶賛され、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて監督賞に輝いた『ウインド・リバー』である。雪深いネイティブアメリカンの保留地で、なぜ18歳の少女は殺されたのか?その残酷な真実は現代のアメリカの闇に隠されている わずか全米4館の限定公開でスタートした本作は、作品のクオリティの高さがSNSや口コミで広まり公開4週目には2095館へと拡大。興収チャート3位にまで昇りつめ、6週連続トップテン入りのロングラン・ヒットを記録した。多くの観客の関心を引きつけた大きな要因は、『ボーダーライン』『最後の追跡』に続き、現代社会の潮流から“忘れ去られた人々”に光をあてたテイラー・シェリダン監督の視点にある。今回の舞台となるウインド・リバーは全米各地に点在するネイティブアメリカンの保留地のひとつで、荒れ果てた大地での生活を強いられた人々は貧困やドラッグなどの慢性的な問題に苦しんでいる。保留地で頻発する女性たちの失踪や性犯罪被害にインスパイアされ、その信じがたい現状を告発した本作は、まさに今のアメリカに渦巻く闇を衝撃的なストーリー展開でえぐり出していくのだ。 さらに、ミステリー仕立てのクライム・サスペンスとしての充実ぶりも目覚ましい。心に傷を抱えた孤高のハンターとFBIから派遣された新人女性捜査官という対照的なコンビが、幾多の苦難に見舞われながらも心を通わせ、理不尽な殺人事件の真相ににじり寄っていく様をスリリングに描出。不意に炸裂するアクション・シーンを織り交ぜながら、主人公たちが必死の思いで貫こうとする“正義”の重みをひしひしと伝えるエモーショナルなドラマは、観る者の心を揺さぶってやまない。孤高のハンターと新人捜査官の共闘を力強く演じるジェレミー・レナー×エリザベス・オルセンウインド・リバーの大地に根ざして生きる凄腕のハンターで、殺人事件の捜査に協力する主人公コリーを演じるのはジェレミー・レナー。『ハート・ロッカー』でアカデミー賞®賞主演男優賞にノミネートされ、『メッセージ』での好演も記憶に新しい実力派スターが、ストイックでありながら豊かな人間味を内に秘めたキャラクターをこのうえなく魅力的に体現し、キャリア最高の名演技を披露する。 殺人捜査の経験をほとんど持たず、厳寒の山岳地帯に初めて足を踏み入れるジェーンに扮するのはエリザベス・オルセン。いかにも頼りなげに登場する新人捜査官が、いたいけな少女が犠牲となった悲劇的な事件に心を痛め、過酷な試練を乗り越えて成長していく姿が深い共感を誘う。くしくもレナーとオルセンは“マーベル・シネマティック・ユニバース”のホークアイ、スカーレット・ウィッチ役で共演経験があり、両者の新たな“共闘”が実現したことも大きな話題である。 また、雪に閉ざされた大自然の風景をダイナミックに捉えた映像世界に荘厳な神秘性を吹き込む音楽を創出したのは、『ジェシー・ジェームズの暗殺』『最後の追跡』などのニック・ケイヴとウォーレン・エリス。『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』のベン・リチャードソン(撮影監督)、『アメリカン・スナイパー』でアカデミー賞®にノミネートされたゲイリー・D・ローチ(編集)らの一流スタッフの見事な仕事ぶりも見逃せない。2018年9月2日シネマ・クレール★★★★http://wind-river.jp/info/「オーシャンズ8」オーシャンズシリーズを実は初めて観る。女性版なので、華やか。さて、デビーが仮出所してから、ほとんど止まることなく詐欺成功まで突き進む物語。考える暇を与えないという意味では正統なだまし映画ではある。後で考えると、あれはどうだったんだということは幾つかある(ダフネがわざわざ行けばダフネが疑われる、途中で方向転換したのか?でもそれだとデビーの話と違う、既に疑われているのに、どうしてデビー以外捜査の手が伸びないのか等々)。単なる盗みの映画が、どうして面白いのか、そもそもがよくわからない。オーシャンズ「8」という題名をつけた段階で、話の構造は予想が付いていたが、その通りだった。(解説)全世界で社会現象を巻き起こした“オーシャンズ”が、ターゲットもトリックもすべてが破格にスケールアップし、この夏ド派手に打ちあがる! 緻密な計画を元に、勢いとノリで世間の度肝を抜く強奪を企てるプロフェッショナルたちが集結した史上最強の犯罪ドリームチームが、新たなカリスマ的リーダー、デビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)を中心に新結成。たった1秒の狂いが命取り。予想の斜め上をいく個性豊かなチームの二転三転するゴージャスなダマしの連続は、最高にスリリング!主人公=デビーを演じるのはサンドラ・ブロック。彼女の[右腕]にケイト・ブランシェット、[ターゲット]はアン・ハサウェイ、ほかリアーナ、オークワフィナ、ヘレナ・ボナム=カーター、サラ・ポールソン、ミンディ・カリングとアカデミー賞女優3名を含む超豪華キャストが一挙集結。監督は『ハンガー・ゲーム』のゲイリー・ロス、そしてプロデューサーにはこれまでの『オーシャンズ』シリーズの監督でもあるスティーブン・ソダーバーグが名を連ねる。新生“オーシャンズ”を率いるカリスマ司令塔は、あのダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)の妹、デビー・オーシャン。彼女が声をかけたのはいずれも一流の才能を持つ個性豊かな犯罪のプロたち。そんな彼女たちのターゲットは、世界中の600人以上ものセレブが集うNYメトロポリタン美術館で開催される、世界最大のファッションの祭典“メットガラ”に登場する、総額1億5000万ドルの宝石! 世界一と言われる最高難度のセキュリティに守られた、人気ハリウッド女優(アン・ハサウェイ)が身につけるその宝石を、一粒残らずいただく。しかも祭典の模様は、リアルタイムで全世界に生配信されるという高すぎるハードル付き。世界中が見つめる中、彼女たちのとびっきりのショータイムが幕を開ける――!(物語)仮出所したデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)は、服役中に考えていた犯罪計画を実行しようとする。それは、ニューヨークで開催される世界最大規模のファッションの祭典メットガラに出席する女優ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)が身に着ける1億5,000万ドルの宝石を盗み出すというものだった。デビーは旧知の仲のルー・ミラー(ケイト・ブランシェット)を相棒に、ハッカー、スリ、盗品ディーラーらを集めてチームを結成する。(キャスト)サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、アウクワフィナ、サラ・ポールソン、リアーナ、ヘレナ・ボナム・カーター、ジェームズ・コーデン、リチャード・アーミティッジ、(日本語吹き替え版)、本田貴子、塩田朋子、甲斐田裕子、高乃麗、園崎未恵、村中知、釘宮理恵、杉浦慶子(スタッフ)監督・脚本:ゲイリー・ロス脚本・共同製作:オリヴィア・ミルチ製作:スティーヴン・ソダーバーグ、スーザン・イーキンス製作総指揮:マイケル・タドロス、ダイアナ・アルバレス、ジェシー・アーマン、ブルース・バーマン撮影:アイジル・ブリルド美術:アレックス・ディジェルランド編集:ジュリエット・ウェルフラン衣装:サラ・エドワーズ音楽:ダニエル・ペンバートンhttp://wwws.warnerbros.co.jp/oceans8/2018年9月6日Movix倉敷★★★ 「SUNNY 強い気持ち・強い愛 」この原作の映画については、6年前の公開時に、このように感想を記していました。「サニー 永遠の仲間たち」1986年、等身大のソウル女子高生の青春。韓国らしい独裁政権打倒デモと一緒に縄張り争い(←また古い!)のケンカをする場面などは、楽しい映画的な趣向。何ということもなくつるんで楽しかった日々は、おそらく全ての世界共通のティーン女性たちの世界だろう。まあ、男にはあんまりわからん世界ですな。少し羨ましいけど。inシネマクレール2012年7月8日★★★☆☆韓国版は、国民性として高校生のケンカは日常茶飯事であり、それと1987年の政権打倒デモと合わせることで、リアル感があった。しかし日本版、95年当時にあそこまでクスリをやっていてケンカに結びつく女子高生がいたかどうかはわからないし、時代性は主人公が阪神大震災のせいで転校をして来たということのみ。話を作りすぎていて、終わりも予定調和。池田イライザや野田等の高校生演技が雑、結果あまり面白くなかった。サニーというのも、題名に入れたいがために無理をした。原作はきちんと当時の流行歌(英語)にかけていた。(解説)韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」の日本版リメイク。90年代のヒット曲をふんだんに盛り込んだ。専業主婦の奈美はある日、高校時代の親友、芹香が末期がんに冒されていることを知り、当時の仲良しグループ“サニー”の仲間を再び集めようとするが……。出演は「北の桜守」の篠原涼子、「ラプラスの魔女」の広瀬すず、「空飛ぶタイヤ」の小池栄子、「PとJK」のともさかりえ。監督は「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」の大根仁。音楽を小室哲哉が担当している。(あらすじ )90年代に青春時代を過ごした6人の女子高生グループ“サニー”。20年以上の時を経て、大人になった彼女たちだったが、それぞれに問題を抱えていた。その1人、専業主婦の奈美はある日、当時の仲間だった芹香と再会する。ところが、芹香は末期がんに冒されていた。“死ぬ前にもう一度だけ、みんなに会いたい”。芹香の願いを叶えようと決意する奈美。これをきっかけに、止まっていたそれぞれの時間が再び動き始める……。(スタッフ )監督 大根仁脚本 大根仁原作(監督) カン・ヒョンチョル(『サニー 永遠の仲間たち』)エグゼクティブプロデューサー 山内章弘企画・プロデュース 川村元気(キャスト )出演 篠原涼子 奈美広瀬すず 奈美(女子高生時代)小池栄子 裕子ともさかりえ 心渡辺直美 梅池田エライザ 奈々(女子高生時代)山本舞香 芹香(女子高生時代)野田美桜 裕子(女子高生時代)田辺桃子 心(女子高生時代)富田望生 梅(女子高生時代)三浦春馬 藤井渉リリー・フランキー 中川新井浩文 新井矢本悠馬 梅の兄板谷由夏 芹香2018年9月13日Movix倉敷★★★http://sunny-movie.jp/sp/index.html
2018年10月15日
コメント(0)
「県労会議機関紙」に連載している今月の映画評です。「ワンダーウーマン」一見は胸躍るエンタメです。マーベルコミックシリーズ(スパイダーマンやアントマンが活躍する世界)に対抗するDCコミックシリーズ(スーパーマンやバットマンが活躍する世界)のひとつとしてこれを観ました。ところがその後、敬愛する映画評論家の町山智浩氏が、パティ・ジェンキンス監督が作ったこの作品を高く評価している文章を読んで意見を変えました(参照『「最前線」の映画を読む』)。ジェンキンス監督にとっては、男たちの女性虐待を糾弾した「モンスター」(シャーリーズ・セロンがアカデミー主演女優賞)のあと14年目にやっと作った作品でした。そのせいか、単なるスーパーヒーロー映画ではなく、様々な寓意を含んだ「映画史における女性の描き方を大きく変えた傑作」になっています。人間(マン=男ともとれる)を救うために、女だけの島アマゾンを離れて、ワンダーウーマンことダイアナ(ガル・ガドット)は第一次世界大戦中のロンドンに赴きます。戦争指導者会議に乗り込むと「どうして女を会議室に入れるんだ!」と怒鳴られたりします。西部戦線に到着すると、膠着状況をダイアナは一挙に変えてしまいます。塹壕を一歩一歩梯子を上がる姿はジャンヌ・ダルクの故事を踏まえているだろうし(英語では女性の社会進出を「梯子を登る」という)、ダイアナの後ろに英仏連合軍の兵士が続く場面は、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」を彷彿させるでしょう。ダイアナの装備は基本的には、全ての攻撃をはね返す腕輪と真実を語らせる鞭だけです。防衛力のみでドイツ軍を蹴散らしてきたダイアナは、人間に扮した軍神アレスを殺せば、自動的に戦争を終わらす事が出来ると信じていたのですが、やがてそんな単純なことではないことを悟ります。人間を見限りるか、困難な道を選ぶかの選択に、ダイアナは後者を選ぶわけです。「どんな人間でも希望はある、大事なのは何を信じるか。私は愛を信じる」と言って最後にキリストのように戦場に降り立つダイアナは、平和の女神でした。原作は女性解放運動に根ざしていて、監督はそれをエンタメに仕上げたのです。シリーズの他の作品に出ているワンダーウーマンは別として、ジェンキンス監督の作品は多くの隠喩そして社会性を隠しています。それを見つける楽しみも知ってもらいたくて、今回はこれを取り上げました。(2017年米国作品)
2018年09月17日
コメント(1)
8月に観た映画は8本でした。二回に分けて紹介します。「天命の城」朝鮮王朝の戦争を描いたのは、これが初めてかもしれない。朝鮮半島は、常に大陸や日本からの侵略の歴史だった。しかし、朝鮮王朝は奇跡的にその独立を保って来た。何故独立を保つことができたのか?巧妙に世界の力関係を図り、それでも儒教の教えを守って決して「大義と名分」を失わなかったからだ、とおそらく韓国人は思っている。しかし、それが危機的に脅かされることが何度かあった。その幾つかは、秀吉の侵略(壬申の乱)、朝鮮併合(朝鮮の植民地化)、そして「丙子の役」(清の侵攻)である。敵を打ち負かすことも起きずに、外交で危機を乗り越えたのは、おそらく「丙子の役」だけだろう。先ずは王様の世界の力関係の見誤りがあった。籠城に最も適した退却のタイミングも逸した。その上で「大義と名分」を失えば、朝鮮王朝は瓦解するだろう。謝ることは、大義と名分を失うことなのか?否か?「王様、彼らの言う大義と名分は、いったい何のためですか? まず生きてこそ、大義と名分があるのでは」アメリカと日本と中国の力関係を図り、その独立を保とうとする現代韓国の、課題を見せた作品である。(解説)清の軍勢12万人に包囲された、1万3000人の朝鮮朝廷は、進むことも退くこともできない孤立無援の“南漢山城”に逃げ延びる。生き残る唯一の道は、清の臣従に落ちること。恥辱に耐えて民を守るのか、大義のために死を覚悟で戦うのか。同じ国への忠誠を持つ、二人の家臣の異なる信念の闘いの末に、未来のために下した王の決断とは―。リーダーである王の決断、臣の覚悟、そして民の平和。切迫した逆境で起こる、三人の男のスリリングでドラマティックなぶつかり合い。国の天命を背負った彼らの誇り高き生きざまは、「いま、なにが民衆のための選択なのか」というテーマを我々に鋭く突きつけ、380年余りの時を経た現代社会に、深く共感できる大切なメッセージを伝えている。朝鮮歴史上最も熾烈な「丙子の役」と呼ばれる闘い。その最後の47日間を、5カ月にも及ぶ極寒の中でのオールロケ―ションを決行し、初めてスクリーンに描いた感動の歴史大作。最高のキャスティングとスタッフが集結!そして、坂本龍一の音楽が奏でる感動の旋律。清との和平交渉を突き通す大臣ミョンギル役には、『王になった男』以来の歴史時代劇の主演となるイ・ビョンホン。常に冷静沈着な善意のキャラクターを高潔に演じ、平和への熱い想いを深い演技力で伝える。大義と名誉を重んじて、徹底抗戦を貫くサンホン役には、『哀しき獣』など骨太なカリスマ性を魅せる、時代劇初出演のキム・ユンソク。激しく対立する大臣たちの間で苦悩する朝鮮の王を、パク・ヘイルが演じている。監督は『トガニ 幼き瞳の告白』のファン・ドンヒョク。音楽は世界的巨匠、坂本龍一が韓国映画を初めて手掛け、現代的なシンフォニーに韓国の伝統音楽を取り入れ、物語の普遍的な感動と迫力を重厚なサウンドで盛り上げる。(実際の歴史)当時の時代背景1608年に即位した光海君は、外交が巧みだった。当時、中国大陸では、長く統治していた明と新興の後金が激しく争っていたが、光海君は両国と戦略的な二股外交を展開して、朝鮮王朝の領土を守っていた。 しかし、光海君は1623年にクーデターによって王宮を追放された。クーデターを主導した仁祖が代わって即位したのだが、彼は明に追随して後金を卑下する外交を展開した。これが後金の怒りを買い、後金は1627年に大軍で攻めてきた。 朝鮮王朝は武力で後金に歯が立たなかった。仁祖は都の漢陽を捨てて江華島に避難した。そのうえで、講和会議を重ねて後金の怒りを解こうとした。条件は後金を支持することだった。 従来から朝鮮王朝は明を宗主国のように崇めていたのだが、その方針を変更せざるをえなくなった。それを条件に、後金は大軍を引き揚げた。 しかし、仁祖は後金と交わした講和条件を守らなかった。 怒った後金は国号を清と変えた後、1636年12月に12万の大軍で再び攻めてきた。またもや仁祖は江華島に逃げようとしたが、すでに清の大軍が迫ってきており、漢陽の南側にある南漢山城に避難するのが精一杯だった。 1万3千人の兵と一緒に南漢山城で籠城した仁祖。その間に、清の大軍は漢陽で略奪と放火を繰り返した。 民衆は悲惨な状態になった。観念した仁祖は籠城をやめて、1637年1月に漢江のほとりまで出てきて、清の皇帝の前で額を地面にこすりつけて謝罪した。 朝鮮王朝が始まって以来の屈辱だった。 そればかりではない。莫大な賠償金を課せられ、数十万人の民衆が捕虜となり、仁祖の息子3人も人質として清に連れていかれてしまった。 仁祖の失政が前代未聞の惨状を招いたのである。2018年8月2日シネマ・クレール★★★★http://tenmeinoshiro.com/info/「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」いつもの通りのミッションでした。美女が3人出てきて、「あり得ない」展開から「あり得る」結論に至る「安心の展開」を遂げるという意味ではまあ安定のドル箱でしょう。でも、もうトム・クルーズはあんなアクション出来ないだろうから、代替わりすべきではとも思う。いや、そうなればこのシリーズも終わりだ。終わらすべきだ。これでレベッカ・ファーガソンは、IMFのメンバーになったという認識でいいのかな。(STORY)盗まれたプルトニウムを用いて、三つの都市を標的にした同時核爆発の計画が進められていることが判明する。核爆発阻止のミッションを下されたイーサン・ハント(トム・クルーズ)率いるIMFチームは、犯人の手掛かりが名前だけという困難を強いられる。タイムリミットが刻一刻と迫る中、イーサンの行動に不信感を抱くCIAが放った敏腕エージェントのウォーカー(ヘンリー・カヴィル)が現れる。(キャスト)トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、ヴィング・レイムス、レベッカ・ファーガソン、アレック・ボールドウィン、ミシェル・モナハン、ヘンリー・カヴィル、ヴァネッサ・カービー、ショーン・ハリス、アンジェラ・バセット、(日本語吹き替え)、DAIGO、広瀬アリス、森川智之、根本泰彦、手塚秀彰、甲斐田裕子、岡寛恵、中尾隆聖、田中正彦(スタッフ)監督・製作・脚本:クリストファー・マッカリー製作:J・J・エイブラムス、トム・クルーズ上映時間148分http://missionimpossible.jp/sp/2018年8月9日movix倉敷★★★★「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」故人のドキュメンタリーなので、証言と白黒フィルムと写真がずっと続く退屈なものになるかと危惧していたら、編集が上手く、しかも熱を帯びていて、まるで1人の半生を描く伝記映画のようだった。つまり、一つの事件が起きると、興味を引くようにカメジローの心情を日記等を使って描き、それを受けるように証言を入れて他人視点を入れてゆく。これはエンタメ小説の描き方だ。カメジローを主人公にNHK大河ドラマを作れば、それはそのまま戦後の日本を照射することになるだろう。彼の人生はかっこいい。刑務所に入れられて、数日のうちに刑務所の暴動を治め、病気で見殺しにされそうになり、出所の時には大勢の人に迎えられ、その日のうちに数万の歓迎集会で演説をする。正に映画になる、小説になる。私が力あるプロデューサーならば絶対作ります。即ち何が言いたいかというと、退屈しないいいドキュメンタリーだった。「カメジローは神様のようだった」複数人が証言する。占領下の沖縄で、カメジローを聞くだけのために十万人が複数回集まったのは、今の沖縄の結集率さえ本土の我々にとっては驚嘆以外の何物でもないのに、凄いというしかない。本人のカリスマ性は、もっともっと掘り下げていい。映画やドラマがダメならば、腕のいい小説家がエンタメ小説を書かないだろうか?つまり、こういう映画や小説が日本で広く読まれないことが、日本の不幸なのだと私は思う。「不屈」の言葉は、どのような経緯で那覇市庁舎に刻まれたのだろうか?今度行った時には是非訪ねてみたい。カメジローの生涯はまさに不屈な生涯だったが、娘さんが「カメジロー本人は沖縄こそが不屈なのだ、と言っていました」という言葉がとても印象的だ。元気な頃の翁長知事が何度も県民集会に姿を現す。翁長知事はカメジローほどのカリスマ性はなかったかもしれない。けれども、沖縄のカリスマ性は受け継いでいた。県知事選挙、頑張るしかない。カメジロー、翁長と続いた不屈の精神を沖縄は、今度も体現するに違いない。連帯支援していきたい。(解説)本作は、「筑紫哲也NEWS23」でキャスターを務め、筑紫哲也氏の薫陶を受けた 佐古忠彦 初監督作品。作品の主旨に共感した 坂本龍一 による、オリジナル楽曲書き下ろし。さらに、語りには、名バイプレイヤー、大杉漣 が参加。アメリカ占領下の沖縄で米軍に挑んだ男、瀬長亀次郎のドキュメンタリー映画。なぜ、沖縄の人々は声を上げ続けるのか、その原点はカメジローにあった━。第二次大戦後、米軍統治下の沖縄で唯一人"弾圧"を恐れず米軍にNOと叫んだ日本人がいた。「不屈」の精神で立ち向かった沖縄のヒーロー瀬長亀次郎。民衆の前に立ち、演説会を開けば毎回何万人も集め、人々を熱狂させた。彼を恐れた米軍は、様々な策略を巡らすが、民衆に支えられて那覇市長、国会議員と立場を変えながら闘い続けた政治家、亀次郎。その知られざる実像と、信念を貫いた抵抗の人生を、稲嶺元沖縄県知事や亀次郎の次女など関係者の証言を通して浮き彫りにしていくドキュメンタリー。JNNだけが持つ、当時の貴重な資料映像の数々をふんだんに盛り込んだTBSテレビが本気で製作した映画が遂に公開。2016年TBSテレビで放送されたドキュメンタリー番組が、第54回ギャラクシー賞月間賞を受賞するなど高い評価を得ており、映画化を熱望する声を受けて、追加取材、再編集を行って映画化。沖縄戦を起点に、今につながる基地問題。27年間にわたったアメリカの軍事占領を経て、日本復帰後45年が経っても、なお基地が集中するなか、沖縄の人々が声を上げ続ける、その原点…。それは、まさに戦後の沖縄で米軍支配と闘った瀬長亀次郎の生き様にあった。JNNだからこそ保存されていた貴重な未公開映像やインタビュー、そしてアメリカ取材を交えて描き切る。2018年8月19日岡山市文化センター★★★★「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」ビターズ・エンド配給らしく、予想とは違った。ハッピイエンドではないラスト。けれども、足立紳脚本らしく、爽やかなラストになっていた。足立紳は「百円の恋」以来精力的に脚本を書いている。全てメジャー系の映画ではないが、今のところ大当たりはないものの外れがない。これは素晴らしいことだ。菊池のように、しゃべりすぎて浮いてしまうことがないよう、がんばってほしい。足立紳は今のところ「不遇時代をなんとか挽回しようとする」主人公ばっかしを描いている。けれども、今回のもう1人の主人公志乃ちゃんは夢は「普通の高校生」というものだ。ここに出てくる「コンプレックス」を持っている3人は、みんな「空気が読めない」或は「空気に溶け込めない、溶け込みたくない」高校生ばっかしだ。そういう意味では、私もそうだった。高校生の時に連むことが苦手だった。社会人になっても、みんな車の話をするのが意味わかんなかったし、人事情報を気にするのが意味わかんなかった。けれどもそのおかげで‥、あ、まあいいや、展開し出すと墓穴を掘ることに気がついたのでここでやめるが、だから、ここの登場人物たちの悩みはそれぞれ真剣なのだが、多くの人には共感できるものだ。志乃ちゃんの吃音の会話を何度も何度も、言いたい事はわかるでしょ、予想できるでしょ、と聞いていると、監督はそれでも時間をかけてゆっくりと描く。結果、描いている事は単純なのに、いつの間にか2時間近くがあっという間に過ぎる。クライマックスは、想定内の展開にせずに、ああいう展開にしたけど、その中の予想外の言葉、「言えないから自分の気持ちを他の言葉で誤魔化していたのは、私」、えっ⁉︎そうだったの‼︎ その他いろんな部分をそう見ることでまた違った風景で見える作品である。(解説)不器用な二人の小さな一歩。悩みもすべて抱きしめて世界はかすかに輝きだす。高校一年生の新学期。喋ろうとするたび言葉に詰まってしまう志乃は、自己紹介で名前すら上手く言うことが出来ず、笑い者になってしまう。ひとりぼっちの高校生活を送る彼女は、ひょんなことから同級生の加代と友達になる。ギターが生きがいなのに音痴な加代は、思いがけず聴いた志乃の歌声に心を奪われバンドに誘う。文化祭に向けて不器用なふたりの猛練習が始まった。コンプレックスから目を背け、人との関わりを避けてきた志乃と加代。互いに手を取り小さな一歩を踏み出すが――。あの頃、誰もが抱いた苦悩や葛藤。戻れないからこそ現在を照らしてくれる、つたなくて、いとおしい日々。胸を打つラストに涙溢れる、傷だらけでまぶしい青春映画の傑作が誕生した!全世代が感動、共鳴した押見修造・人気コミック待望の映画化!気鋭監督・湯浅弘章×脚本・足立紳(『百円の恋』)が瑞々しく繊細に描く思春期の少年少女をモチーフに、独創的な作風で「惡の華」「ぼくは麻理のなか」等の傑作を生みだしてきた人気漫画家・押見修造。自身の体験をもとに描いた代表作「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、発表と同時に幅広い世代の読者を感動の渦に包み、大きな反響を呼んだ。待望の映画化でメガホンをとったのは、本作で満を持しての長編商業映画デビューを果たす気鋭・湯浅弘章。脚本を『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞など数々の賞に輝いた足立紳が務め、瑞々しい映像と繊細な脚本で十代の揺れ動く心の機微を映し出す。また、物語の舞台となる90年代の音楽シーンをリードした、ザ・ブルーハーツ、ミッシェル・ガン・エレファントなどの楽曲も登場、物語をエモーショナルに彩る。注目を集める十代の実力派女優 南沙良×蒔田彩珠 ダブル主演!本作では、次世代を担う同年齢の実力派女優がダブル主演を務める。志乃を演じるのは、現役モデルにして『幼な子われらに生まれ』に出演、女優としても注目を集める新星、南沙良。加代を『三度目の殺人』やドラマ「anone」などでの高い演技力が記憶に新しい、蒔田彩珠が熱演。思春期、真っただ中の二人が観る者の心震わす体当たりの演技をみせる。更に、志乃と加代の同級生・菊地を『帝一の國』『あゝ、荒野』と話題作への出演が続く萩原利久が演じるほか、奥貫薫、山田キヌヲ、渡辺哲ら、ベテラン俳優陣が脇を固めている。http://www.bitters.co.jp/shinochan/sp/2018年8月19日シネマ・クレール★★★★
2018年09月15日
コメント(0)
「四月の永い夢」春に自殺した彼氏のショックを3年後の夏にやっと精算出来た若い女性のお話。ありきたりと言えば、ありきたり。日常を丁寧に描写することで、リアルさをつくる。死んだ彼氏のお母さんの高橋恵子は云う。「貴女はまだ若いから、人生とは何かを獲得することだと思っているかもしれない。私も昔はそう思っていた。けれども、今は人生は何かを失っていくことだと思っている。失いながら、それでも残る自分自身を見つけていくことじゃないかな」朝倉あきは、20歳前後はテレビドラマにいろいろ出ていた。途中、ぷっつりと消える。四年前に「かぐや姫の物語」で、かぐや姫の声を演じたけど、基本的にはこの映画までほとんど仕事をしていないのではないか?彼女に何があったかはわからないが、そのモラトリアムな「陰」が、この作品にリアリティを与えている。それにしても、昔はこんなにも美しかったのかと思うくらい「匂うように」美しい。女優として大成しなくても、良い人生を送って欲しい、と「男」に思わせるほどに「陰のある美しさ」である。三浦貴大の片思いがリアリティあり過ぎ。役柄上は27歳だが、実年齢もそのくらいか。モスクワ国際映画祭でダブル受賞ということで観たのだが、30代の頃の私ならばともかく、今の私には「まあこんなもんかな」というぐらいの作品。(解説)世界四大映画祭のひとつモスクワ国際映画祭・邦画史上初のダブル受賞!2017年6月、モスクワ国際映画祭。『四月の永い夢』は、国際映画批評家連盟賞、ロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞する快挙をなし遂げた。「詩的な言葉の表現と穏やかな映像を通して人生の大事なエッセンスを伝えているプライスレスな作品」と評価されたのだ。モスクワ国際映画祭は、カンヌ、ベルリン、ヴェネチアにならぶ“世界四大映画祭”のひとつと称され、2年に1度開催される映画祭。過去の各賞受賞者には、新藤兼人、黒澤明、小栗康平、熊切和嘉といった錚々たる監督が名を連ねる。弱冠27歳(映画祭当時)の中川龍太郎監督は、受賞の記者会見でこう語っている。「今の日本は表では平和に見えるが、同時に生きている実感を持ちづらい社会。そんな中で、悲しみややりきれなさを抱えながらも、どのように次のステージへ向かっていけるのかということを静かなトーンで描きたかった」。恋人を亡くしたひとりの女性が喪失感や心の棘から解放されていく姿を、日常の輝きの中で描く『四月の永い夢』。「派手でなくとも、誠実に生きる」姿をテーマに撮り続けたいという、世界が注目する若き監督の最新作が、いよいよ公開となる。Story&Introduction亡き恋人から届いた手紙――止まったままの私の「時」が動き出す3年前に恋人を亡くした27歳の滝本初海。音楽教師を辞めたままの穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。元教え子との遭遇、染物工場で働く青年からの思いがけない告白。そして心の奥の小さな秘密。――喪失感から緩やかに解放されていく初海の日々が紡がれる。初海の心の光と影をその透明感あるたたずまいでみずみずしく演じるのは『かぐや姫の物語』の朝倉あき。初海に恋する朴訥で誠実な青年・志熊を体現するのは映画・TVで活躍する三浦貴大。脇を固める高橋由美子 志賀廣太郎 高橋惠子ら実力派俳優陣の心打つ演技、舞台でも活躍する川崎ゆり子。モデルで活躍する青柳文子の新鮮な存在感。大橋トリオ等と活動するユニット・赤い靴の「書を持ち僕は旅に出る」が挿入歌として印象的に流れ初海の一歩をそっと後押しする。物語を彩るのは『おおかみこどもの雨と雪』の舞台となったともされる国立や富山県朝日町をロケ地とした日本の美しい風景。平成という時代が過ぎ去ろうとする今、本作は物質的豊かさをゴールとしない丁寧で誠実な日常が生みだす幸せと希望をどこか昭和的なノスタルジーと共に伝えてくれる。文学のフィールドから登場したユニークな才能:監督中川龍太郎これまで中川龍太郎監督が手掛けた作品のうち、『愛の小さな歴史』(15)、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16)が2年連続で東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門出品。後者は、フランスの映画批評誌「カイエ・ドゥ・シネマ」からも高く評価され、小さな規模の公開にも関わらず話題を巻き起こした。そんな『走れ、絶望に追いつかれない速さで』に続いて、『四月の永い夢』は、“親友の死”という自身の実体験を踏まえながら、だが前作の鋭い感性とはまた異なる優しいまなざしで、主人公の心の旅を描き出していく。原作本の映画化が多い昨今の中で、監督自ら執筆する脚本におけるセリフは本作の魅力のひとつ。語り過ぎず、さり気なく発せられる端正な言葉と、そこに込められた心情のリアリティ。観る者の心に響くそれらは、17歳で「詩集 雪に至る都」を出版した詩人、エッセイストにして、大学の文学部に籍を置きつつ独学の映画作りで才能を発揮してきた経歴を持つ、彼ならではのもの。同時に、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』で主演を務めた太賀のその後の活躍ぶりの礎となったように、キャストの魅力を最大限引き出すことでも定評がある。平成2年生まれの若者としての視点に立ちながら、昭和の風景への憧れを抱き、文学というフィールドを背景に持つユニークな映画監督・中川龍太郎が、閉塞感ある今の社会に風を吹き込む。2018年7月19日シネマ・クレール★★★★http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/「ジュラシック・ワールド/炎の王国」ジェフ・ゴールドブラムが最後に言ったことが、この作品の全てだろう。遺伝子工学の「行き過ぎ」の失敗は、地球温暖化を含めて、あらゆる科学技術の「行き過ぎ」への警告になっているだろう。ここまで来たら、もうシリーズも終わりだろうから、新しい世代は、新しい物語を作るべきだ。第一作と見事にリンクしていて、悪者は全員「恐竜」によって殺される。殺される悪者の数が、3倍化していて、恐竜の数も増えているのが、第一作と違うところか。(解説)ハイブリッド恐竜インドミナス・レックスとT-REXの激しいバトルで崩壊した「ジュラシック・ワールド」があるイスラ・ヌブラル島の火山に、噴火の予兆が見られた。恐竜たちを見殺しにするのか、彼らを救うべきか。テーマパークの運営責任者だったクレア(ブライス・ダラス・ハワード)と恐竜行動学の専門家であるオーウェン(クリス・プラット)は、悩みながらも恐竜救出を決意し島へ向かうが、火山が噴火してしまい……。(キャスト)クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、B・D・ウォン、ジェームズ・クロムウェル、テッド・レヴィン、ジャスティス・スミス、ジェラルディン・チャップリン、ダニエラ・ピネダ、トビー・ジョーンズ、レイフ・スポール、ジェフ・ゴールドブラム、(スタッフ)製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮・脚本:コリン・トレヴォロウ製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー、ベレン・アティエンサキャラクター原案:マイケル・クライトン脚本:デレク・コノリー監督:J・A・バヨナ2018年7月24日Movix倉敷★★★☆http://www.jurassicworld.jp/「マルクス・エンゲルス」1843年「ライン新聞」の廃刊から始まり、1848年の「共産党宣言」までの、マルクス・エンゲルスの「理論活動」と「労働者の組織化」を描く。マルクスの時代の家や家具の再現、理論的な批判対象の運動家たちとどういう関係にあったのか、または共産主義同盟の「劇的な誕生の瞬間」などは見どころだろうとは思う。しかし、私はマルクスの理論を批評する資格はないが、マルクスに関する映画の批評をする資格はあるだろうと自覚している。これは映画としては、万国のプロレタリアートを納得させるようなものにはなっていないと、言わざるを得ない。マルクスは、ずっと人を薄ら笑いしながら、一旦仲間付き合いをしたかと思うと手のひらを返したように批判してゆく。ずっとその繰り返しの作品だった。マルクスの理論に精通していない者が観ると、嫌な奴にしか見えない。この人物が、20世紀世界に最も影響を与えた人物の伝記には到底思えないのである。演技の問題ではない。脚本でも無理だったと思う。製作の問題である。エンゲルスと出会ってマルクスは「哲学者は世界を解釈してきた。でも、君と話して変革の時がやってきたと思ったんだ」というくだり、どうしてそうなったのか?全然説得的ではない。ブルーノ・バウアー、カール・グリュ-ン、プルードン、ヴァイトリング等々との付き合いがどのくらいだったのか、わかって面白い。いろんな理論家の中で、マルクスが相手をべた褒めしたのは、唯一エンゲルスだけだった。このくだりは、説得力もあり(それ以前にエンゲルスの「イギリスにおける労働者階級の状態」誕生話が描かれている)、また感動的な所でもある。また、マルクスの妻のイェニーが、マルクスの仕事を十二分に理解しなおかつ尻を叩いた部分もある(共産主義同盟の前身の正義者同盟を貶す所)のは、新しい視点だった。終わると、本棚の奥に隠れているマルエン全集を紐解きたくなる作品です。(解説)レーニン、ゲバラ、カストロ、マンデラ‥20世紀を代表する変革の指導者の前には、いつもマルクスとエンゲルスがいた。本作はドイツ、フランス、イギリス、ベルギーを舞台に、二人が「今日までのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」という有名な言葉で始まる『共産党宣言』を執筆するまでの日々をドラマティックに描く。監督は『ルムンバの叫び』(00)、『私はあなたのニグロではない』(16)で知られる社会派の名匠ラウル・ペック監督。彼はマルクスとエンゲルスの思想は過去のものではなく、社会をよりよくするという思いが不滅である限り永遠であると映画を通して語っている。とりわけエンド・クレジットで流れるボブ・ディランの名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」がそのことを強烈に伝えてくる。(ストーリー)若きマルクスとエンゲルスの友情は世界の未来を大きく変えた 。永遠の名著『共産党宣言』(1848)が誕生するまでの激烈な日々を描く歴史的感動作。1840年代のヨーロッパでは、産業革命が生んだ社会のひずみが格差をもたらし、貧困の嵐が吹き荒れ、人々は人間の尊厳を奪われて、不当な労働が強いられていた。20代半ばのカール・マルクスは、搾取と不平等な世界に対抗すべく独自に政治批判を展開するが、それによってドイツを追われ、フランスへと辿りつく。パリで彼はフリードリヒ・エンゲルスと運命の再会を果たし、エンゲルスの経済論に着目したマルクスは彼と深い友情をはぐくんでゆく。激しく揺れ動く時代、資本家と労働者の対立が拡大し、人々に革新的理論が待望されるなか、二人はかけがえのない同志である妻たちとともに、時代を超えて読み継がれてゆく『共産党宣言』の執筆に打ち込んでゆく――。2018年7月26日シネマ・クレール★★★http://www.hark3.com/marx/「未来のミライ」成る程、絶讃の声があまり聞こえて来ないのもわかる気がする。「バケモノの子」と同じで、驚きの発見が無いのである。今度こそは、と日常の中に驚きを発見しようとして、一生懸命がんばっているし、子どものぷにゅぷにゅした感じやら、喜怒哀楽やら、日々のワンダーやら、それはそれでがんばっているのだけど、私にこいないからなのかもしれないけど、だからなんなの?と思ってしまうのである。私の琴線には触れなかった。それにしても、細田監督は、結局「時をかける少女」から先には進めないのかな。今回は「時をかける少年少女」だったと思う。観る前は未来ちゃんが凄いのか、或いは少女の時間で死んでしまうのかな、と予想していたのだけど、全然違った。(STORY)小さい木が立つ庭のある家に住む、4歳で甘えん坊のくんちゃんは、生まれたばかりの妹に対する両親の様子に困惑していた。ある日、くんちゃんはセーラー服姿の女の子と出会う。彼女は、未来からやってきた自分の妹で……。(キャスト)(声の出演)、上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治(スタッフ)監督・脚本・原作:細田守作画監督:青山浩行、秦綾子美術監督:大森崇、高松洋平プロデューサー:齋藤優一郎上映時間98分2018年7月29日Movix倉敷★★★☆http://mirai-no-mirai.jp/sp/
2018年08月11日
コメント(0)
7月は8作観ました。2回に分けて紹介します。「オンリー・ザ・ブレイブ」「事実に基づいた物語」なので、最終盤誰かが死ぬことは知っていたが、まさかあんな結末になるとは思わなかった。お国ごとにやはり様々な職業があるのだと思った。日本では考えられない山専用の消防士隊がいるのだ。市の自治体出身の消防士隊は、彼らが初めてだったらしく、ボランティア組織(?)から正規に昇格するまでが詳しく描かれる。日本ではおそらく空からの消化しかないが、彼らは防火帯を作ったあとに、更に焼いて防火帯を広げて延焼を防ぐやり方で消していく。広い土地と日本とは違う植林があるから、そうなるのだろう。山火事の映像はCGだろうか。防火テントで、避けることが出来ると信じていたので、あの結末はあまりにも悲しい。久しぶりにジェニファー・コネリーを観た。彼女の鼻の高さは異常だ。マーシュの判断ミスはあったかもしれない。けれども、製作はそのことを追求しなかった。ベストを尽くしたはずだ。という確信からだろう。(ストーリー)学生寮で堕落した日々を過ごしていたブレンダン(マイルズ・テラー)は、恋人が妊娠したことをきっかけに、生まれ変わる決意をし地元の森林消防団に入隊。地獄のような訓練の毎日を過ごしながらも、仲間と絆を深め、チームを率いるマーシュ(ジョシュ・ブローリン)との信頼を築き、彼らの支えの中で少しずつ成長していくブレンダン。しかしそんな彼を待ち受けていたのは、山を丸ごと飲み込むような巨大山火事だった――。監督ジョセフ・コシンスキー出演 ジョシュ・ブローリン、マイルズ・テラー、ジェフ・ブリッジス、テイラー・キッチュ、ジェームズ・バッジ・デール、ジェニファー・コネリー[ 上映時間:134分 ]http://gaga.ne.jp/otb/2018年7月1日TOHOシネマズ岡南★★★★「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」アメリカでこけているのもわかる気がする。「遠い昔、はるか銀河の彼方で」の字幕のあとに、物語が流れないのである。テーマ音楽も被さらない。おやっ、と思う。違和感は更に広がる。もちろん誰と誰が死んで、誰と誰が生き残るか、観る前から確定している人間は3人もいるので、あと少ない人間の運命について、ドキドキして観ながら、思いも掛けない方向に行くのが面白い、と観るか、これは違う、と観るか、好みは別れるだろう。こういう展開もアリだと思う。しかし、それもこれも続きがあるという前提のもとだ。しかしいまの興行成績だとないと思う。しかも幾つか決定的な間違いを犯している。(1)主人公に「悪者ではない」主要人物を殺させてはダメだ。(2)最初トゥルーパーが出てきたので、これはエピソード2以降の時代かと思いきや、なんと最後でダー︎︎ールが出てきた。ダメでしょ。いくら人気キャラだといっても、あの場面では︎︎︎︎︎卿でしょ。これでこの映画の「信頼性」が一挙に下がった。(3)観客はあくまでも普通のスペースオペラを観に来たのではない。スターウォーズストーリーを観に来たのである。大河につながる場面をふんだんに見せないと、なんのためにシリーズをわざわざ観に来たのかわからなくなる。例えば、反乱軍はレイア姫につながる設定を作らないとダメだ。(4)問題のキーラ嬢であるが、あの3年間で何があったのか、やはりきちんとわからせないとダメだと思う。ハン・ソロと同年代のはずだから、エピソード9で出てきたら面白いと思う。(5)「いい予感がするぜ」は、却って反感を呼んだのではないか。そして遂に「フォースと共にあらんことを」の決まり文句が出なかった。「スターウォーズストーリー」を軽く見過ぎているというファンの意見が出ても当然だと思うチューバッカがこの時点で190歳だったという衝撃の事実が知られる。だとすると、エピソード8時点で230-240歳ということになる。歳をとると彼らは太るんだろうか。(解説)「スター・ウォーズ」最新作!シリーズ屈指の人気を誇る“愛すべき悪党”ハン・ソロはいかにして銀河最速のパイロットになったのか?ルークとレイアに出会う前の、若き日のハンソロの知られざる過去を描く、全世界待望のアナザー・ストーリー。生涯の相棒チューバッカや愛機ミレニアム・ファルコンとの出会いと絆、そしてこれまで語られたことのないロマンス・・・かつてない冒険に満ちたアクションエンターテイメントが誕生した。監督ロン・ハワード出演オールデン・エアエンライク、ウッディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ドナルド・グローヴァー、ヨーナス・スオタモ[ 上映時間:135分 ]https://starwars.disney.co.jp/movie/2018年7月1日TOHOシネマズ岡南★★★「海を駆ける」「孤狼の血」で発見した女優の阿部純子の資質を見るためだけに鑑賞したようなもの。結果的には、脚本のせいか、この女性の1番の謎は遂には明らかにならなかった。存在感は持っていて、無邪気さと色気を両方持っているいい女優だと思う。この監督作品を観たのは2作目。共感を引き出すよりは、それを拒否する作り方をする。説明不足をいい作り方と思っているのではないか?解釈は一定出来ると思う。2004年インドネシア大津波を生き残った四者四様の若者(純子は東北大震災)を配置して、四人に津波体験をさせること(子供を四人殺したという近所の証言からすると、殺すためという解釈も成り立つ)、彼は、津波の犠牲になった子供の霊だった︎四人に「融和をもたらしたのだ」という監督の言葉も漏れ聞く。それならば、子供の死亡や貴子の失神(死亡?)が説明できない。また、意図も更にわからない。等々。説明は一切ない。それを拒否する。私の映画を観る姿勢が足りないのか?面白くない。(解説)『淵に立つ』などの深田晃司監督と『結婚』などのディーン・フジオカが組み、インドネシアを舞台につづるファンタジードラマ。2004年の地震による大津波で大きな被害を受けたスマトラ島でロケを行い、海からやって来た不思議な男が起こす奇跡を描く。『走れ、絶望に追いつかれない速さで』などの太賀や『2つ目の窓』などの阿部純子、『恋する彼女、西へ。』などの鶴田真由らが共演。(あらすじ)貴子(鶴田真由)は息子のタカシ(太賀)とインドネシアに移住し、 NPO法人で災害復興の仕事に就いていた。ある日、貴子の自宅で息子の同級生クリス(アディパティ・ドルケン)と、その幼なじみでジャーナリストを目指しているイルマ(セカール・サリ)が取材を行っていたところ、身元不明の日本人らしき男性が見つかったという連絡が来て……。(キャスト)ディーン・フジオカ(ラウ)太賀(タカシ)阿部純子(サチコ)アディパティ・ドルケン(クリス)セカール・サリ(イルマ)鶴田真由(貴子)(スタッフ)監督・脚本・編集深田晃司http://umikake.jp/sp/2018年7月8日シネマ・クレール★★★「ファントム・スレッド」何も予備知識無しに観た。1950年代の英国。上流階級の仕立て屋でマザコンで独善家で仕事人間の男と、労働者階級のウェイトレス出身のモデルで、夢想家で男の愛を独占したい我儘な女の物語なのだと、途中から納得する。音楽が独特、初めの1/4はピアノ曲のみ、次にバイオリン曲が間断なく流れる。服は高級服ばかり。女性だけではなく、男も着たならばさぞかし立派に見えるだろうという背広ばかりなので、服装に興味ある人ならば価値があったかもしれない。最初からミスリードを誘う仕掛けが、構成上現れる。まあ、そういうこともあり得るとは思うのだが、あの展開は説得力がないのではないか?意見の分かれるところだろう。男女の機微の解らぬ私には、わかりません。(解説)男は女にドレスを着せることを望み、女は男を丸裸にしたいと願った 。1950年代のロンドン。唯一無二のデザインと職人技術で英国の高級婦人ファッション界の中心に君臨する仕立て屋のレイノルズは、ウェイトレスのアルマと惹かれ合い、彼女を新たなミューズに迎える。レイノルズにとってミューズは創作に不可欠なインスピレーションと一時の癒しをもたらす存在、それ以上でもそれ以下でもないはずだった。しかし若く情熱的なアルマは、恐るべき愛の力でレイノルズの心に入り込み、彼が長年かけて築き上げた孤高の領域をかき乱していく̶̶。運命の恋に落ちた男女は、相手をどこまで自分のものにできるのか?愛に屈し、自分を失うことは悦びか悲劇か?やがて狂い始める二人の関係は、“ある秘密”を抱きながら激しさを増していき、誰もが想像し得ない境地にたどり着く。極上の恋愛にひと匙の媚薬を垂らし、観るものを虜にして離さない至高のドラマが誕生した。主人公のレイノルズ・ウッドコックを演じるのは、『マイ・レフトフット』(89)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)、『リンカーン』(12)で三度のアカデミー賞主演男優賞に輝く名 優ダニエル・デイ=ルイス。徹底した役作りで知られるデイ=ルイスは、撮影前に約1年間ニューヨーク・シティ・バレエ団の衣装監督も務める裁縫師のもとで修業を積みながら、10年ぶり二度目のコラボレーションとなるポール・トーマス・アンダーソン監督の脚本執筆作業にも参加し、稀代のドレスメーカーを演じることに全身全霊を捧げた。その後、俳優業からの引退を発表して世間を驚かせたが、芸術の高みを目指すレイノルズ役 は、まさにデイ=ルイスの偉大なキャリアの到達点にふさわしい仕事だと言えるだろう。そして、そのデイ=ルイスに一歩も引けを取らない存在感を放つのが、アルマ役のヴィッキー・クリープスだ。ルクセンブルク出身でヨーロッパ映画を中心に活躍するクリープスは、若きウェイトレスが華やかなドレスをまとって瞬く間に垢抜けていく過程と、何者にも支配されない意志の強さを時に大胆に時に繊細に体現し、本作で国際的スターの座に躍り出た。さらに、レイノルズの生活を公私ともに管理する厳格な姉のシリル役として、『人生は、時々晴れ』(02)、『家族の庭』(10)などのマイク・リー監督作で高い評価を受けたレスリー・マンヴィルが出演。クリープスとともに、レイノルズをめぐる女二人の心理 戦をスリリングに魅せる。本作『ファントム・スレッド』は、作品を発表するたびに熱狂的なファンを生み出し、『パンチドランク・ラブ』(02)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)、『ザ・マスター』(12)で世界三大映画祭の監督賞を制覇したポール・トーマス・アンダーソンの長編第8作にあたる。これまではカリフォルニアを主な舞台に米国の文化や歴史を象徴する人間ドラマを撮って きたアンダーソンだが、往年のファッションデザイナーたちの仕事に関心を持ったことが きっかけで、本作では仕立て屋とミューズの関係に着目。第二次世界大戦後の英国 オートクチュール界を背景に、究極のラブストーリーを作り上げた。物語を彩る映像や美術、衣装も本作の大きな見どころだ。官能的で幽玄美あふれる映像は、撮影監督を立てずにアンダーソン本人がディレクションを担当。白を基調とした レイノルズのアトリエ「ハウス・オブ・ウッドコック」は、間取りから小物一つひとつに至るま で格調高さが漂い、夢の世界へと観る者を誘う。ヒロインやレイノルズの顧客である上 流階級の女性たちが着る優雅なドレスは、アンダーソンの全監督作品を手がけている 衣装デザイナーであり、『アーティスト』(11)でアカデミー賞衣装デザイン賞他を受賞、本作でも見事アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したマーク・ブリッジスがデザイン。ブリッジス率いる衣装チームは、1950年代の流行や各登場人物のバックグラウンドを綿密にリサーチし、50点もの衣装をゼロから仕立て上げた。そして、映画を構成する各要素を縫い合わせるかのように大半のシーンで流れる音楽は、レディオヘッドのメンバーとしても活動するジョニー・グリーンウッドが作曲。主人公たちの波乱に満ちた愛の駆け引きを盛り上げる。2018年7月12日シネマ・クレール★★★☆http://www.phantomthread.jp/
2018年08月10日
コメント(0)
今月の映画評です。「新感染ファイル・エクスプレス」6月の初め、東海道新幹線で1人の男が無差別に乗客を殺傷し、パニックになるという事件が起きました。いち度に乗客が他の車両に避難しようとした時に、あまりにも急に人が殺到したのでかえって詰まってしまったという証言を聞いて、わたしはとっさに去年観た韓国のホラー映画を思い出したのでした。「あゝやっぱりそうなるんだ…」皆さん、ゾンビ映画はお好きですか?これは見事に好きな人、嫌いな人に分かれると思います。わたしも、どちらかといえば苦手な方なのですが、何とこれは楽しめました。いえ、怖くないゾンビ映画じゃないんです。何しろ、ソウルから釜山に向かう韓国新幹線(KTX)に、1人のゾンビが紛れ込んだことから始まり、急速に車両全体がゾンビ化して行く映画なのですから。気持ち悪い場面も正直あります。でも、韓国の場合アメリカとは違んです。敵を殺しまくって(ゾンビだから殺すというのはおかしいんだけど)生き延びるんじゃなくて、逃げて逃げて、逃げまくるのです。新幹線という密室なので、日本の事件のようなパニックがどんどん増幅されて展開されます。そして不思議なことに、最後には「泣けるゾンビ映画」になるのです。これは凄かった。こんなの観たことない。こういう所が韓国映画の良くも悪くも真骨頂だと、私は思います。どんな作品も「情(チョン)」に訴えるのです。家庭を顧みない仕事人間(コン・ユ)がひとり娘(キム・スアン)を守る、妊婦の妻(チョン・ユミ)をマッチョの夫(マ・ドンソク)が守る、高校生カップルがお互いを守る。悲しい運命の脇役も大勢登場して飽きさせません。主人公が最初自分のことしか考えない酷い男として登場します。もうひとり会社役員が同じような人間として登場しますが、彼には家族がない。この人と主人公との対比が、最後まで見せ場を作りました。その他、今までのゾンビ映画の「お約束」を踏襲しながらも、工夫満載です。ラストは、冒頭近くのさりげない場面が伏線になっていたのですが、わたしは泣きながら「上手いなぁ」と思いました。ちなみに原題は「釜山行」。久しぶりに「新感染」は、邦題の傑作でした。(2017年韓国ヨン・サンホ監督作品、レンタル可能)
2018年07月21日
コメント(0)
6月に観たのは、12作品じゃなくて13作品でした。ラスト5作品を紹介します。「空飛ぶタイヤ」2016年4月新聞社の調査報道を扱った「スポットライト」の映画の感想を仲間で語ったとき、三菱の燃費偽装問題が起きた。度重なる三菱自動車のリコール隠しであるにもかかわらず、倉敷市はいち早く三菱自動車の全面的な税金投入を決定し、世の中の報道は、三菱労働者の休業生活がどうなっているかに終始した。私は「スポットライト」のジャーナリストと比べて「おかしい!」と文句を言った。「報道すべきは、こんなことではない。なぜ三菱でリコール隠しがなくならないのか。そのことに切り込んだ報道を今こそすべきではないか」映画仲間には、マスコミ関係者もいる。彼は確かこう言ったと思う。「日本では無理だろうね」あの財閥系大企業に逆らう報道をするなんて、ということらしい。この映画の中でも、一旦決まった週刊誌掲載がボツになるのは、グループ全体の広告費のせいだというシーンがある。「おかしいじゃないですか?アメリカに出来てどうして日本で出来ないんですか!ジャーナリストとしてのプライドはどうなるんですか!」私は声を荒げた。しかしそれだけだった。この映画の中ではホープ自動車の事になっているが、2002年の三菱自動車のタイヤの構造的欠陥で死亡事件が起きたことがモデルであることは明らかである(「この映画はフィクションであり」というお決まりの文句さえ、入っていなかったことに今気がついた。監督が入れたくなかったんだと思う)。構造的欠陥を作ったのは、企業の構造的隠避体質であることを、有る程度は明らかにした作品である。そして、あるべき会議の記録は、遂に隠して隠して隠し通したので安心していた「上の人たち」の悪事を暴いたのは、会議の記録の暴露だったことが、わかるラスト。それはそれのまま、現代日本の「政治」の構造的隠避体質と同じだろう。宣伝では、赤松運送の長瀬、ホープ自動車のディーン、ホープ銀行調査部の高橋一生の3人が主要登場人物になっていたが、実は高橋はほとんど関係ない。そして1番のキーマンは、最後貧乏くじだけをひいている中村蒼であるはずなのだが、「現実」と同じように、全然注目されないのである。(ストーリー)ある日突然起きたトレーラーの脱輪事故。整備不良を疑われた運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)は、車両の欠陥に気づき、製造元である大手自動車会社のホープ自動車カスタマー戦略課課長・沢田悠太(ディーン・フジオカ)に再調査を要求。同じ頃、ホープ銀行の本店営業本部・井崎一亮(高橋一生)は、グループ会社であるホープ自動車の経営計画に疑問を抱き、独自の調査を開始する。それぞれが突き止めた先にあった真実は大企業の“リコール隠し”―。果たしてそれは事故なのか事件なのか。監督 本木克英出演 長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子、寺脇康文、小池栄子[120分 ]http://soratobu-movie.jp/sp/2018年6月18日TOHOシネマズ岡南★★★★「ワンダー 君は太陽 」予想されるような陰湿なイジメは、あっさり描かれる。周りの子供も、親も、教師も理想に近いほどの理解があって、酷いのは、イジメを主導した男の子の親ぐらいなものだ。(「これが現実なのよ」)確かにオギーはがんばった。しかし、描きたかったのはおそらくそこではない。非常にテンポいい演出。明るさを強調。うまく行き過ぎが、少し心配。途中で数回語り手が入れ替わる。オギー、姉、友達、姉の友達。友達までならば、観客の我々も彼らの善意は予想の範囲内だ。けれども、姉の友達までになると、その心の内を映画を通じて見ないことには、その美しい顔の容姿の下の淋しい心はわからない。でも、「よく見る」そうすることによって、「理解し合える」ことを押し付けがましくはなく、描くことに成功している。小学5年の修了式の表彰を、クライマックスに持ってきて少しうるっとこらせるのは、オギーの障害が、発達障害や吃りなど、誰にでもあり得ることをみんな承知しているからではある。(ストーリー)10歳のオギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は、普通の子には見えない。遺伝子の疾患で、人とは違う顔で生まれてきたのだ。27回もの手術を受けたせいで、一度も学校へ通わずに自宅学習を続けてきたオギーだが、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の「まだ早い」という反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に行かせようと決意する。夏休みの間に、オギーはイザベルに連れられて、校長先生に会いに行く。先生の名前はトゥシュマン(マンディ・パティンキン)、「おケツ校長だ」と自己紹介されて、少し緊張がほぐれるオギー。だが、「生徒が学校を案内するよ」と言われたオギーは動揺する。監督 スティーヴン・チョボスキー出演 ジュリア・ロバーツ、ジェイコブ・トレンブレイ、オーウェン・ウィルソン、マンディ・パティンキン、ダヴィード・ディグス、イザベラ・ヴィドヴィッチ、ダニエル・ローズ・ラッセル、ナジ・ジーター[ 上映時間:113分 ]2018年6月18日TOHOシネマズ岡南★★★★http://wonder-movie.jp/「焼肉ドラゴン」なぜ監督は既に評価の定まっているこの作品を苦労してまで映画化したのだろう?もしかしたら、有名俳優を使えばヒットするかもと考えたのだろうか?それが全然ないとは言えないだろうけど、大きな理由はそれではない。と思う。いくら演劇で賞を獲っても観た観客数は映画の観客数に遠く及ばない。できるだけ多くの日本人や韓国人に等身大の在日を見せる。それに尽きるのではないか?多くの日本人に、この作品で在日の真実がわかるとは思えない。あの夫婦、北に行って馬鹿だなあ、という感想がたくさん出てくるのがオチと言えばオチかもしれない。セリフでさらっと出てくるだけなので、若者が在日の不平等に心を砕くかどうかはとても疑問だ(戦中の補償、日本籍問題、済州島事件、強制立ち退き等々)。だけど、親と子の情、男女の愛憎は、万国共通である。井上真央と桜庭みなみ、そしてイ・ジョンウン、キム・サンホがとっても良かった。映画だから出来る、ほぼバイリンガルの会話もとっても自然だった。基本会話が多いので、ハングル初心者にも学習用にとっても良い。韓国人は顔が日本人そっくりだから、日本人は韓国人の振る舞いが癪に触って仕方ない。もういい加減気がつかなくてはならない。一世二世は、そうはいっても韓国人なのである。外国人なのである。「情」に厚いが、白黒はっきりつけなくては気が済まない。どんなに人前でも、唾を飛ばして喧嘩をする。人と人との距離が近いから、ゴミゴミしたところでも大丈夫だけど、ホルモンとキムチは、やはり韓国人が作った方が美味しいのである。3人の美人姉妹は三つの違う道に進む。それは戦後在日の歴史でもある。在日映画の秀作である。(ストーリー)日本万国博覧会が開催された高度経済成長期の1970年、関西地方で焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む龍吉(キム・サンホ)と妻・英順(イ・ジョンウン)は、娘3人と息子と共に暮らしていた。戦争で故郷と左腕を奪われながらも、前向きで人情味あふれる龍吉の周りには常に人が集まってくる。(キャスト)真木よう子、井上真央、大泉洋、桜庭ななみ、大谷亮平、ハン・ドンギュ、イム・ヒチョル、大江晋平、宇野祥平、根岸季衣、イ・ジョンウン、キム・サンホ(スタッフ)原作・脚本・監督:鄭義信2018年6月28日Movix倉敷★★★★http://yakinikudragon.com/sp/「万引き家族」テレビドラマ「幸色のワンルーム」が誘拐自体を肯定している。助長しかねない、という批判を受けて、1部の放送局の放映を中止した。そのことに関して、その批判に対して「表現の自由の侵害」「コナンなどの殺人を扱った他の作品も悪いことになる」と再批判が起こる。それに対して、当初の批判をした太田啓子弁護士がインタビューに応えている。「殺人、窃盗は、作品の中でも悪いことだという認識が通用している。しかし、この作品の中には、(虐待を受けていた少女が)誘拐された方が幸せになれる、という認識がまかり通る。殺人は世の中がそういう認識を許さないが、誘拐はそういう認識を許すのが現代日本であり、そういう状況がある限りこの作品は放映されてはならない。」と大まかにはそういう反論を行っていた。なぜ長々と、そのことを述べたのか?この作品が誘拐を助長するように描いているからか?そこまではいかなくても、誘拐は結局許されるんだと描いているからか?これが許されるのならば、太田弁護士の論理は通用しないからか?結論的に言えば、映画を見てわかるのは、家族が嫌になったら擬似家族を作ればいいじゃないか、とは決してならない作品だった。ということは、分かる。もっと大事な視点がある。わたしも微かに覚えている。年金受給者が死んだ後も、それを隠してずっと年金をもらっていた擬似家族の報道を。あれが実はこういう家族だったという問いかけの映画ではない。物事の真実は、いつも「微妙な中」にこそあり、報道で分かった気になってはいけないのである。万引きは良くないことである。これはどう言い訳しようとも誘拐である。だから、主人公は法的に罰せられただけではなく、孤独に独り罪と向き合っている。それでも、その後に、何かをつかんでいる。それはこの家族にしか見えないものであり、いくらにているからと言って昔報道された擬似家族がその景色を観たとは誰も思わないだろう。彼らは確かに観た。その確信を、わたしは映像の中に観る。松岡茉優が無人の引き戸を開けた時、安藤サクラが何なんだろうねと涙を拭ったとき、城桧吏がけじめをつけたとき、佐々木みゆがラスト「外」に何かを見つけたとき。リリー・フランキーだけは何も見つけていないかもしれないが(笑)。あ、それから、日本の貧困対するセーフティネットの欠如は、思ったよりも実にさりげなく、作られていた。老人の年金受給が2ヶ月で12万円もないことに、若者は気がついただろうか?日雇い労働者が明らかに仕事中事故をしても、労災が下りないのに若者は怒りは湧かないのか。長年勤めている労働者の首切りが平然と行われることに怒りは湧かないのか?さりげなく描かれているので、若者が「政府から助成金もらっているのに、そんな告発映画作っちゃダメだろ」というのは、二重の意味で「忖度」する発言である。バカらしい。改めていうが、そんなことをいう若者(だけじゃなく大人も大勢いるけど)の殆どは作品を実際に観ずに言っている。映画の批判は、作品を観てからにすべきである。(STORY)治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は万引きを終えた帰り道で、寒さに震えるじゅり(佐々木みゆ)を見掛け家に連れて帰る。見ず知らずの子供と帰ってきた夫に困惑する信代(安藤サクラ)は、傷だらけの彼女を見て世話をすることにする。信代の妹の亜紀(松岡茉優)を含めた一家は、初枝(樹木希林)の年金を頼りに生活していたが……。(キャスト)リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林(スタッフ)監督・脚本・編集:是枝裕和音楽:細野晴臣撮影:近藤龍人2018年6月24日Movix倉敷★★★★http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/「女と男の観覧車」ケイト・ウィンスレットに尽きる。見事な存在感。もしかしたらホントにこの女性は「タイタニック」のあと、作品に恵まれなくてやさぐれていたのかな、とうたぐってしまうほどの迫真の演技。ホントはその後何度も女優賞にノミネートし、遂には最優秀女優賞さえ獲ったというのに。82歳になって、もはやウッディ・アレンはコメディを作らないのだろうか。長い人生で付き合って来た女たちの、少女のような夢、ぞくりとする色気、悪魔のような嘘、醜い執着、それらをまるでこれでもかという風に遊園地の見世物のように見せる。ここに出ている海岸監視員は、軍役の後に世界を旅した知識人という20代の若者。82歳のウディ自身の分身である。だとすると、彼女に儚い夢を持たせ、そして捨てるのは、彼自身の告白なのかもしれない。舞台は最初から危うい均衡に成立している。ギャングに追われた妹が、最初追手から逃れるのは幸運以外の何物でもない。そのつかの間の悲劇の間に、妹は中断の学問をして恋をする。そのつかの間の希望は、まるで観覧車が与える美しさのようでもある。ジニーの息子の放火癖は、彼女の抱える人生の罪の(不倫による夫の自殺、諦めきれない女優の仕事、40歳間近という身体の衰え)合わせ鏡である。冒頭の放火にせよ、心理医療者の家への放火にせよ、冒頭か最終には死者を出す大事故を起こしていても仕方なかった。彼女が若者との不倫で夢観たのは、そのつかの間の観覧車の美しさだったのかもしれない。老いてますます軒昂。ウッディ・アレンは素晴らしい。(解説)ウッディ・アレン監督がケイト・ウィンスレットを主役に迎え、1950年代ニューヨークのコニーアイランドを舞台に、ひと夏の恋に溺れていくひとりの女性の姿を描いたドラマ。コニーアイランドの遊園地内にあるレストランで働いている元女優のジニーは、再婚同士で結ばれた回転木馬操縦係の夫・ハンプティと、ジニーの連れ子である息子のリッチーと3人で、観覧車の見える安い部屋で暮らしている。しかし、ハンプティとの平凡な毎日に失望しているジニーは夫に隠れて、海岸で監視員のアルバイトをしながら劇作家を目指している若い男ミッキーと不倫していた。ミッキーとの未来に夢を見ていたジニーだったが、ギャングと駆け落ちして音信不通になっていたハンプティの娘キャロライナの出現により、すべてが大きく狂い出していく。ウィンスレットが主人公のジニーを演じるほか、ミッキー役を歌手で俳優のジャスティン・ティンバーレイク、ハンプティ役をジム・ベルーシ、キャロライナ役をジュノー・テンプルがそれぞれ演じる。(スタッフ)監督ウッディ・アレン製作レッティ・アロンソンエリカ・アロンソンhttp://longride.jp/kanransya-movie/2018年6月25日シネマ・クレール★★★★
2018年07月20日
コメント(0)
「タクシー運転手 約束は海を越えて」10数年前に、光州まで行った時に、ともかく何も知らずに「国立光州墓地」に、タクシーで行った。一面の墓、墓、墓。全て、1980年の5月19日から20数日にかけての死亡日になっていて、恐ろしく高い確率で19歳、18歳、はては14歳という若者の享年が刻まれていた。資料部屋では、当時の2人の大統領の囚人服姿が延々と流されていた。死刑宣告されたが、彼らはその後減刑される。あの時は、光州駅のロータリー前がまだ当時の様子をとどめていて、入れなかったが県庁の弾丸跡などが生々しかった。流石のソン・ガンホである。冒頭に学生デモを苦々しく思う一般成人の雰囲気を見事にまとい、その後の変貌ぶりを、しかもエンタメで演じた。どこまでが実話なのかはこれから検証するが、事件そのものに大きなウソはない。政府はウソをつく。韓国の民主化運動の大きな転換点がこの光州事件であり、それが失敗に終わることなく成功したのは、ドイツ人記者ピーター(日本人ではないのが、残念)と、韓国の「情」の行動で献身した無名のタクシー運転手に依る、或いは光州で出会ったタクシー運転手たちや若い運動家に依ることが多かった。タクシー運転手が最後に名前を偽ったのは、当時の社会情勢から見て当然だろう。そこから、10数年おそらく必要に迫られ誰にも一言も喋らなかったのではないか?そのあと、遂に名乗らなかったのは、病死等の不幸があったと思うが、映画はハッピーエンドで終わらす。ソン・ガンホが素晴らしい。解説1980年5月に韓国でおこり、多数の死傷者を出した光州事件を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話をベースに描き、韓国で1200万人を動員する大ヒットを記録したヒューマンドラマ。「義兄弟」「高地戦」のチャン・フン監督がメガホンをとり、主人公となるタクシー運転手マンソプ役を名優ソン・ガンホ、ドイツ人記者ピーター役を「戦場のピアニスト」のトーマス・クレッチマンが演じた。1980年5月、民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、光州では市民を暴徒とみなした軍が厳戒態勢を敷いていた。「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーターを乗せ、光州を目指すことになったソウルのタクシー運転手マンソプは、約束のタクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、時間ギリギリにピーターを光州まで送り届けることに成功する。留守番をさせている11歳の娘が気になるため、危険な光州から早く立ち去りたいマンソプだったが、ピーターはデモに参加している大学生のジェシクや、現地のタクシー運転手ファンらの助けを借り、取材を続けていく。キャストソン・ガンホキム・マンソプトーマス・クレッチマンユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)ユ・ヘジンファン・テスルキャストの続きを見るスタッフ監督チャン・フン製作パク・ウンギョン製作総指揮ユ・ジョンフン映画評論韓国現代史上最大の悲劇を題材に、笑いも交え感動作に仕立てた監督の離れ業光州事件が起きたのは1980年5月。前年の朴正煕大統領暗殺から、非常戒厳令、粛軍クーデターなどが立て続けに起きた韓国の激動期、同国南西部の光州で民主化を求める20万人規模の市民デモに軍が発砲し、多数の死傷者を出した。さて、韓国現代史上...2018年6月11日岡山メルパ★★★★「羊と鋼の森」3回繰り返される原民喜の理想の文体を表した文章。「ー明るく静かに澄んで懐かしい文体。少し甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体。夢のように美しいが現実のようにたしかな文体。」この言葉と、森と、そして調律という仕事を、どのようにして映画として説得力のあるものにして行くのか?派手な場面、ラブストーリーもないので、ものすごくむつかしい作品になるだろう、ということはわかっていた。わかっていて、それに挑戦するのだから、見てやろうという気持ちで、観た。結果は、「コツコツ、コツコツですね」という板鳥さんの感想とかぶる。ピアノの音と森の映像をかぶせる。それがうまく行く時(上白石萌音の演奏シーン)と、冒頭の森のシーンのように意味わからない映像になっている時がある。小説を読んでいる時はよくわからなかった、「羊のハンマーが鋼の弦を叩く」という意味が、映像できちんと見せてくれて、調律の音の違いがわからないまでも少し聞き分けられたり、映画ならではの部分があって、良かった。デモ、原作のような感動は、ちょっとむつかしかったかな。(物語)将来の夢を持っていなかった外村は、高校でピアノ調律師・板鳥に出会う。彼が調律したその音に、生まれ故郷と同じ森の匂いを感じた外村は、調律の世界に魅せられ、果てしなく深く遠い森のようなその世界に、足を踏み入れていく。調律師の先輩たち、高校生姉妹、引きこもりの青年、意地悪なバーのオーナー。ときに迷い、悩みながらも、ピアノ関わる多くの人に支えられ、磨かれて、外村は、調律師として、人として、逞しく成長していく。監督 橋本光二郎出演 山﨑賢人、鈴木亮平、上白石萌音、上白石萌歌、堀内敬子、仲里依紗、城田優、森永悠希、佐野勇斗、光石研、吉行和子、三浦友和[ 上映時間:134分 ]http://hitsuji-hagane-movie.com/sp/2018年6月14日TOHOシネマズ岡南★★★★「30年後の同窓会」2003年の元海兵隊員の心情と、当時のアメリカの空気をよく伝える、思いも掛けない興味深い作品だった。原題は「LAST FLAG FLYING 」(最後の国旗掲揚?)。これは悪い邦題のつけ方の見本。アメリカ国民にとって、ベトナム戦争とは何だったのか。イラク戦争とは何だったのか。酒浸りになるにせよ、牧師になるにせよ、地道に労働者になるにせよ、傷を持ち込んで30年間過ごさざるを得なかった。それは、それから15年経った今のアメリカも同じなのだろう。ドクとドクの息子が合わせ鏡の関係を持っていたように、現在も合わせ鏡を持っているのだろう。(ストーリー)男一人、酒浸りになりながらバーを営むサル(ブライアン・クランストン)と、破天荒だった過去を捨て今は牧師となったミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)の元に、30年間音信不通だった旧友のドク(スティーヴ・カレル)が突然現れる。ドクは、1年前に妻に先立たれたこと、そして2日前に遠い地で息子が戦死したことを2人に打ち明け、亡くなった息子を故郷に連れ帰る旅への同行を依頼する。バージニア州ノーフォークから出発した彼らの旅は、時にテロリストに間違われるなどのトラブルに見舞われながら、故郷のポーツマスへと向かう――。監督リチャード・リンクレイター出演 スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーン[ 上映時間:125分 ]http://30years-dousoukai.jp/sp/2018年6月14日TOHOシネマズ岡南★★★★私のわけのわからない感想よりも、高遠菜穂子さんの映画鑑賞記には、真実が詰まっています。長いですが、是非読んでください。高遠菜穂子戦争場面が一切ないけど、やっぱり反戦映画だと思いました。原題の「Last Flag Flying」の意味を考えても、そう思いました。"Keep Flag Flying "戦い続けるのを、もう最後にしようぜというような。そして、ベトナム帰還兵とイラク帰還兵はやはり似ていますね。2世代にわたって国に命を捧げた親子、ドクとラリー。この2つの戦争は、救いようのないほど大義も意味もなく、長引かせるだけ長引かせ、若い世代は粗末に扱われた。これだけ国に尽くしたのに、払わされる代償が大きすぎやしませんか?「心から恨んでいるものは、大昔の自分の愚かさ」だと断言していたサルが、「辛かった」と本音をぶちまける場面。帰還後は自由に楽しく生きているように見えた彼の心の傷があまりに深いことに、こちらまで胸が痛くなりました。イラクで強張った顔をした若い米兵たちを思い出しました。私たちは、兵士を讃えながら、どこまで彼らを理解しているといえるでしょうか。戦争はウソで始まり、ウソで終わる。僕らはジャングルへ、そこに意味はなかった。息子は辺ぴな砂漠へ。なぜだ?理由なんかない。そして、棺はウソで固められて。どん底にまで落ちないと目が覚めない。この悲劇はわかっていた。ついに3人の口からいくつもの実感が語られます。少し、イラク戦争とイラク帰還兵のことを書かせてください。今年はイラク戦争開戦から15年。開戦以来、イラクは"テロ”の最大被害国のひとつとなり、内戦状態にも陥り、地獄を何度も経験しました。ここ数年は、イラク戦争が生んだモンスター"ISIS"に苦しみました。イラク戦争は「永遠の対テロ戦争」の始まり。テロ撲滅どころか、世界中にテロが拡散してしまった。つくづく...戦争は理想論。ちっとも現実的じゃない。戦争は費用対効果が低すぎる。安全は遠のくばかり。2003年「イラクは大量破壊兵器をもっている」かつての米大統領や英首相は脅威を煽り、勇ましいリーダーたちは「世界の安全のために」イラクへの先制攻撃を強行しました。攻撃開始からわずか数週間で、「大規模戦闘終結宣言」を発したブッシュ大統領でしたが、サクッと終わる戦争なんてない。しかも、敵が誰かわからない。そのうち「動くものはすべて撃て」が繰り返され、夥しい数の民間人がさらに犠牲になっていく。いつか聞いた声。いつか来た道。ジャングルは砂漠に続いていたというわけか。2003年11月、日本の外交官2名がイラクティクリートで殺害。12月、フセイン大統領処刑。私はバグダッドでそれらの報道を見ていました。米軍の占領政策は「失敗」と叩かれ、狙撃や爆弾攻撃が増えていきました。路上には巻き添えになった人々の血や遺体。苛立つ米兵たちは私たちにも銃を向けることが多くなっていました。学用品を届ける米兵たちと学校で行き合った時、生徒も先生も一斉に校内に隠れました。両手を上げないと撃ってくるかもしれない米兵たちを、好きになれとは無理な相談です。何万人ものイラクの民間人が殺されたのち、勇ましいリーダーたちは、大量破壊兵器保有疑惑は「誤情報」だったから謝ると言いだしました。いやいや、遅いよ。遅すぎる。すでにイラクは泥沼です。戦場イラクで路上爆弾や狙撃で殺された米兵の死者数が止まらない。「兵士を帰還させよ」というスローガンが全米でうなっていました。いつか聞いた声。いつか来た道。ジャングルと砂漠が一緒になっていました。「大義なき戦争」でイラクに送られ、過酷過ぎる戦場を生き延びた若い兵士たち。2005年、私は彼らに会うためにアメリカに行きました。故郷に帰ってきた彼らは戸惑っていました。「英雄」と呼ばれながら、自分のしてきたことに「痛み」を感じて。1971年、ベトナム帰還兵が自らの残虐行為を告白し「冬の兵士」となりました。2008年、今度はイラク帰還兵たちが「冬の兵士」となりました。私がそれまでイラクの人々から聞き取ってきたおぞましい米軍蛮行の被害は、加害者である米兵が語ったことで、初めて世間に大きく知られることとなりました。米兵の「告白」は軍法裁判にかけられたり、刑務所送りになる可能性が高いのです。彼らの勇気と良心は賞賛に値します。けれど、「心の痛み」はそばにいてヒリヒリするほどでした。兵士としての行為が、一人の人間としての良心と折り合いがつかないよ。僕が殺したあの子は誰だったんだろう?「動くものはすべて撃て」と上官の命令。そんなこと「あってはならない」のに、イラクとベトナムでは「日常茶飯事」だった。笑っていたって心は痛い。「殺すか殺されるかは当たり前」と米兵はよく言いますが、「殺したくない」は軍隊では罪。戦場で人間性を取り戻すことだけはやっちゃいけないんだ。「名誉」だとされながら、いっそ殺されたいと願う日々。「ウソ」を受け入れねば生きていけない者、隠し通さねば生きていけない者。楽になりたくて戦場に戻ろうとする者。アメリカでは帰還兵が1日平均22人自殺するという。(退役軍人省)「本当ですか?」と訝る私に、「現実はもっと多い」と即答する米専門家。映画の中のベトナム帰還兵3人も若いイラク帰還兵も、命令があれば死ぬことさえ厭わない覚悟をもっている。「国に命を捧げた兵士はみな英雄」。なのに、彼らはみな胸の中に痛みを抱えている。せめて、その戦争を始める理由が「ウソ」でなければ。せめて、ジャングルでの戦いに「意味」があれば。せめて、失われた兵士の棺が「真実」で包まれていれば。〜Not Dark Yet (まだ暗くない)でも やがて闇となる〜私たちが「ウソ」と「隠蔽」に慣れた頃、私たちの「英雄」はさらなる「ウソ」と「隠蔽」で固められていることだろう。それが「国に命を捧げる兵士」に対する敬意といえるの?長らく戦場から遠ざかっていた私たち日本人は今、そこに向かって歩いている。「国に命を捧げる兵士」を戦地に送り出す覚悟が私たちにあるといえるの?もう一度、闇に葬られ、闇に突き落とされないと目が覚めないのか。あたりはもう暗くなってきた。「終わった人」よくある「何もすることなくて妻からゴミ扱いされる人」ではない。そもそも舘ひろしが、ずっとそんな役を勤めることができるはずはない。全編「終わらない人」を演じながら、何度も終わる人になる役である。そもそも、東大卒で役員競争に敗れて地方会社の専務で終わった人の定年後が、退屈になるはずがない。それでも、なんとか居場所を見つけようとする、都会の人の話。まあ、好きにやって、という感じ。それでも、久しぶりの中田監督でした。職人監督です。(ストーリー)大手銀行の出世コースから外れ、子会社に出向させられたまま定年を迎えた田代壮介。これまで仕事一筋だった壮介は途方に暮れる。日々、やることがない。時間の進みが遅すぎる…。このまま老け込むのはマズイと感じ、スポーツジムで身体を鍛え直したり、図書館で時間を潰そうとするのだが、よく見ると周りにいるのは“終わった”ように見えてしまう老人ばかり…。美容師として忙しく働く妻・千草には、ついグチをこぼし、次第に距離を置かれてしまう。「俺はまだ終われない」と、職業安定所で職探しを始めるも、高学歴と立派な職歴が邪魔をして思うように仕事が見つからない。妻や娘からは「恋でもしたら?」とからかわれる始末…。監督 中田秀夫出演 舘ひろし、黒木瞳、広末涼子、臼田あさ美、今井翼、ベンガル、清水ミチコ、温水洋一、高畑淳子、岩崎加根子、渡辺哲、田口トモロヲ、笹野高史http://www.owattahito.jp/sp/index.html2018年6月18日TOHOシネマズ岡南★★★
2018年07月18日
コメント(0)
今回は珍しくたくさん観た(12作品)。三回に分けて紹介する。「恋は雨上がりのように」小松奈菜の走る姿や身体や、ツンデレの表情は想像以上にキチンと映像にあっていて、不器用であり得ない恋に、リアル感をもたらしていた。それだけが、この映画の手柄であり、45歳バツイチ男の未練たっぷりの夢(小説作り)は、私は共感を持つけど、添え物みたいなもの。ホンモノの恋に発展させないのは、ドラマとしては弱いけど、リアルでもあり作品としては爽やかな後味を残したと思う。(STORY)陸上競技に打ち込んできたが、アキレス腱のけがで夢をあきらめざるを得なくなった高校2年生の橘あきら(小松菜奈)。放心状態でファミレスに入った彼女は、店長の近藤正己(大泉洋)から優しい言葉を掛けてもらったことがきっかけで、この店でアルバイトを始めることにする。バツイチ子持ちである上に28歳も年上だと知りながらも、彼女は近藤に心惹(ひ)かれていく。日増しに大きくなる思いを抑え切れなくなったあきらは、ついに近藤に自分の気持ちを伝えるが……。(キャスト)小松菜奈、大泉洋、清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、濱田マリ、戸次重幸、吉田羊スタッフ原作:眉月じゅん監督:永井聡脚本:坂口理子音楽:伊藤ゴロー主題歌:鈴木瑛美子×亀田誠治製作:市川南共同製作:久保雅一、村田嘉邦、弓矢政法、山本浩、中江康人、高橋誠、細野義朗、吉川英作、田中祐介エグゼクティブプロデューサー:山内章弘プロデューサー:春名慶、石黒裕亮、唯野友歩2018年6月5日Movix倉敷★★★★http://koiame-movie.com/sp/#/boards/koiame「デッドプール2」「1」は観ていない。ここまで実在作品に言及するとは思わなかった。これが、アメリカのユーモア作品なのだろうか?アメリカならば、いつも爆笑しているのだろうか?わたしの観た劇場は、ピクリとも笑いは起きなかった(とツイートしたら「うちは大爆笑だった」と反論が来た)。今回の目玉のギャグは、「アナ雪」の「雪だるまつくろう」が、昔の映画のメロディのまるまるパクリである。ということ。日本人はもう少し反応しても良いのにね。今回は、主人公は死にたくて死にたくて仕方ないらしい。バラバラになっても、真っ二つになっても、不死身なのがこのヒーローらしいが、それを逆手にとってここまで作劇するのが、ハリウッドということらしい。基本的に玄人受けする作品だけど、わたしは嫌いじゃないけど、好きでもない。可愛い日本人の女の子、誰だったかな誰だったかな、とずっと思っていたら、なんと忽那汐里だった。英語をものにした彼女の活躍の場が増えている。STORYのんきに過ごすデッドプール(ライアン・レイノルズ)の前に、未来から来た“マシーン人間”のケーブル(ジョシュ・ブローリン)が現れる。大好きなヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)のためにまっとうな人間になると決めたデッドプールは、ケーブルが狙う不思議な力を持つ少年を守ろうと、特殊な能力があるメンバーだけのスペシャルチーム「エックス・フォース」を作る。キャストライアン・レイノルズ、ジョシュ・ブローリン、モリーナ・バッカリン、ジュリアン・デニソン、ザジー・ビーツ、レスリー・アガムズ、T・J・ミラー、ブリアナ・ヒルデブランド、カラン・ソーニ、ジャック・ケシー、忽那汐里スタッフ監督:デヴィッド・リーチ脚本:ポール・ワーニック、レット・リース、ライアン・レイノルズ製作:サイモン・キンバーグ、ライアン・レイノルズ、ローレン・シュラー・ドナー2018年6月7日Movix倉敷★★★★http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/sp/「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」観客はオーバーエイジばかりではあるが、ある程度の入はあるようだ。どうして、60代、70代の女性は、あんなに素直に笑うことができるんだろ。安定の家族会議。安定の特上ウナギの出前10人分。前回は、せっかく頼んだのに人の生き死にがあって無駄に終わったが、今回はホントに上手くいった。きっと、この部分は世の中の庶民感覚からかけ離れていると、山田洋次に意見が届いたのに違いない。わたしも、ずっとそれだけを気にしていた分、今回やっと納得のいく「出前」になったと思う。前回死んだ小林稔侍が、今回当たり前のようにお父さんの友人として再登場しているところが、おお、これはパラレルワールド世界なんだと納得させる。おそらくこれからも少しづつ、設定は変わってゆくだろう。家の間取りはあまり変わらなかったけど、今回も家の前の景色は変わったと思う。えっ⁉︎そういう話じゃない?そうだよね。でも、本来はあり得ないあの家族会議が、現代へのアンチテーゼになっているとは思う(結局寅さんと同じ構造)。主婦のシャドウワークというテーマは、実はその後に来る。西村まさ彦の傍若無人ぶりは、一生懸命工夫はしているが、予定調和であり、まあこういう喜劇としては仕方ないとも思った。反対に言えば、やはり傑作とは言い難い。夏川結衣が、うまい具合に肉が着いて、非常にリアルな奥さんになってた。あれって、役作り?(STORY)平田家に泥棒が入り、長男・幸之助(西村まさ彦)の嫁・史枝(夏川結衣)がひそかに貯めていたへそくりが盗まれる。自分の身を心配せずにへそくりをしていたことに怒る幸之助に対し、史枝は不満を爆発させ家を出ていってしまう。家事を担当していた彼女がいなくなり、母親の富子(吉行和子)も体の具合が良くないことから、父親の周造(橋爪功)が掃除、洗濯、炊事をやることになる。しかし、慣れない家事に四苦八苦するばかりで……。(キャスト)橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、藤山扇治郎、広岡由里子、北山雅康、大沼柚希、小林颯、小川絵莉、徳永ゆうき、小林稔侍、風吹ジュン、木場勝己、立川志らく、笹野高史、笑福亭鶴瓶(スタッフ)監督・脚本・原作:山田洋次脚本:平松恵美子音楽:久石譲撮影:近森眞史美術:倉田智子照明:渡邊孝一編集:石井巌録音:岸田和美プロデューサー:深澤宏衣裳:松田和夫装飾:湯澤幸夫音響効果:帆苅幸雄監督助手:佐々江智明、濱田雄一郎タイトルデザイン:横尾忠則VFXスーパーバイザー:オダイッセイ音楽プロデューサー:小野寺重之宣伝プロデューサー:古森由夏スチール:金田正記録:鈴木敏夫製作担当:杉浦敬製作主任:牧野内知行ラインプロデューサー:相場貴和上映時間123分2018年6月7日Movix倉敷★★★★http://kazoku-tsuraiyo.jp/sp/index.html「ラッキー」予想からかなりかけ離れたお話だった。老年の独身男の迎える癌の話だと思っていた。冒頭近くに、彼は倒れる。お話が始まったかと思いきや、ラッキーは変わらず健康体だと医者が太鼓判を押す。彼はラッキーなのである。でもさすがに「死ぬとは何か」を考え始める。青年時には、第二次世界大戦で海軍のラッキーな炊飯兵で(ということは、現在90歳?)、しかしやはり死ぬ恐怖は感じていたようだ。特攻兵、集団自決等の日本人の死生観の前に、どうやらラッキーはずっと「無とは何か」「死ぬとは何か」を考えて来たようだ。常に答えの見つかるクロスワードパズルを解くことを日常としながらも、解釈によって真実は違うことにこだわる。「孤独と1人暮らしは違う」。彼は、沖縄で7歳の女の子が米兵に向けた輝くような笑顔の話を聞いて、やっと「悟り」らしきものをつかむ。死はまぬがれない。死は「無」であり「空」である。けれども、しかしその先にあるのは、「微笑み」である。アメリカ単館系映画の愛すべき一品。(解説)銀行強盗もしない、飛行機から飛び降りもしない、人助けもしない。「人生の終わり」にファンファーレは鳴り響かない ―神など信じずに生きてきた90歳のラッキーは、今日もひとりで住むアパートで目を覚まし、コーヒーを飲みタバコをふかす。いつものバーでブラッディ・マリアを飲み、馴染み客たちと過ごす。そんな毎日の中でふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされた彼は、「死」について考え始める。子供の頃怖かった暗闇、去っていった100歳の亀、“エサ”として売られるコオロギ ― 小さな町の、風変わりな人々との会話の中で、ラッキーは「それ」を悟っていく。現実主義で一匹狼、すこし偏屈なラッキーを演じるのは、2017年9月に亡くなったハリー・ディーン・スタントン。名バイプレイヤーとして知られるジョン・キャロル・リンチが、全ての者に訪れる人生の終わりについて、スタントンの人生になぞらえて描いたラブレターともいえる初監督作品である。また、ラッキーの友人役として、映画監督のデヴィッド・リンチが出演。実際、長きにわたる友人である彼らを当て書きした脚本は哲学的で示唆に富んでおり、彼らの"素"を思わせるやりとりを見ることができる。(STORY)神など信じずに生きてきた90歳のラッキーは、今日もひとりで住むアパートで目を覚まし、コーヒーを飲みタバコをふかす。ヨガを5ポーズ、21回こなしたあと、テンガロンハットをかぶり、行きつけのダイナーにでかけることを日課としている。店主のジョーと無駄話をかわし、ウェイトレスのロレッタが注いでくれたミルクと砂糖多めのコーヒーを飲みながら新聞のクロスワード・パズルを解くのがラッキーのお決まりだ。そして帰り道、理由は分からないが、植物が咲き乱れる場所の前を通る際に決まって「クソ女め」とつぶやくことも忘れない。ある朝、突然気を失ったラッキーは人生の終わりが近づいていることを思い知らされ、初めて「死」と向き合うが ― 2018年6月11日シネマ・クレール★★★★http://www.uplink.co.jp/lucky/
2018年07月17日
コメント(0)
今月の映画評です。 「私は、ダニエル・ブレイク」映画評論家の町山智浩さんが、カンヌ映画祭でパルムドールを獲った是枝裕和監督の作品についてこんなツイートをしていました。「『万引き家族』が子どもに万引きさせている家族の映画だと思い込んでる人が多いけど、監督の説明を読むと、国の福祉から見捨てられた人々が身を寄せ合って疑似家族を形成する『わたしはダニエル・ブレイク』の日本版みたいだよ」80歳のケン•ローチ監督が引退宣言を撤回してまで取り組んだこの作品、公開当時はあまり話題になりませんでしたがちょっとは興味が湧いたでしょうか?ちなみに、この作品も2年前パルムドールを獲っています。でも監督が「麦の穂をゆらす風」で初めてパルムドールを獲った時のような歴史大作でもなければ、ヒーロー的な男が登場する話でもありません。何処にでもあり得る普通の市井の人々の話なのです。イングランド北東部にある町ニューカッスルに住む大工のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)。59歳の彼は心臓に病が見つかり、医師からは仕事を止められてしまいます。手続きが複雑で彼は国の援助を受けられません。そんな中でも、彼は二人の子供を抱えるシングルマザーのケイテイ(ヘイリー・スクワイアーズ)を助けるのです。まるでご近所さんが食べ物を分け合うように自然とそういうことをします。「役所は助ける気なんかない。とことんミジメにさせるだけ。みんな申請を諦めている」近所の黒人移民はそう言います。「根が良くて正直な人ほどホームレスになる」善良なケースワーカーは言います。次第とイギリスだけの問題ではない、日本にもあるな、と気がついていきます。この映画を観た頃、日本では小田原市で「保護なめんなジャンパー」が話題になっていました。生活保護受給者は国に甘えていると、役人が真剣に思っていたのです。支給決定が再々度取り消されたあと、遂にダニエルは切れます。職業安定所の壁にこのように大書するのです。「私は、ダニエル・ブレイクだ。飢える前に申し立て日を決めろ」周りの労働者は拍手喝采、警察に引っ張られて行く彼に「デカしたぞ!」と云うのです。ラストにケイテイがダニエルのメモを読みます。ホントは、その内容こそを書いておきたいのだけど、ダニエルの「尊厳」を汚すようで、遠慮します。是非、作品を観て確認してください。(2017年英国作品・レンタル可能)
2018年06月26日
コメント(0)
5月鑑賞作品の後半です。「孤狼の血」東映ヤクザ映画の復活というのはウソで、語りが似ているだけであとは白石和彌監督らしい作品。昭和の時代だからやれた、暴対法成立以前だからやれた、かもしれない昔の警察の清濁あわせた捜査を、役所広司と松坂桃李というふたつの眼で見せる。呉の町の昭和部分を見事に映し出し、郷愁も誘う事に成功している。大上を惨めに殺したのは、よかったと思う。日岡のラストの意図がイマイチ伝わらなかった。大上タイプを踏襲するのか、改革するのか?新人の阿部純子(岡田桃子役)が鮮烈な印象を残す。これ一本で「女優」が誕生したかもしれない。(解説)第69回日本推理作家協会賞を受賞した柚木裕子の警察小説を「彼女がその名を知らない鳥たち」の白石和彌が映画化。暴力団対策法成立直前の昭和63年。広島の呉原で暴力団関連企業の社員が失踪。ベテラン刑事・大上と新人の日岡は事件解決に奔走するが……。出演者には、「三度目の殺人」の役所広司、「不能犯」の松坂桃李、「天空の蜂」の江口洋介、「海よりもまだ深く」の真木よう子ら豪華キャストが顔を揃えている。(あらすじ )昭和63年。暴力団対策法成立直前の広島・呉原。いまだに暴力団が割拠するこの土地では、新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組と地場の暴力団・尾谷組との抗争の火種が燻り始めていた。そんな中、加古村組関連企業の金融会社社員が失踪。これを殺人事件と睨んだマル暴のベテラン刑事・大上(役所広司)と新人刑事・日岡(松坂桃李)は、事件解決に奔走する。だが、ヤクザ同士の抗争が、正義も愛も金も、全てを呑みこんでゆく……。警察組織の目論み、大上自身に向けられた黒い疑惑、様々な欲望を剥き出しにして、暴力団と警察を巻き込んだ血で血を洗う報復合戦が幕を開けようとしていた……。2018年5月20日Movix倉敷★★★★☆http://www.korou.jp/sp/「ダンガル きっと、つよくなる」これがインド映画で興行収入1位を勝ち取ったのは、単なるスポ根ものではなく、意外にも社会派作品だったからだろう。近所の花嫁が娘たちに告白する「花嫁の実態」は、田舎のインドに広くあった。だから、娘たちがこぞって観たのだ。スーパースターの「きっとうまくゆく」と彼とはとうてい思えない役づくりも、よかった。冒頭の、実況中継に合わせた対決場面などいたるところにアイディアもある。三曲だけだけど、なかなか心に残るスコアもあって、ボリウッド映画としても成立している。ただ、やはりあまりにもあからさまな敵方コーチをつくるなど、話を作りすぎているところもある。まあ、楽しむための映画なので、これくらいでもいいだろう、と思えば合格点の作品だった。てっきりオリンピックの女子レスリングで金メダルとったのかと思ったけど、インドの実力はまだまだみたいです。でも日本はそろそろ危ないよ。(解説)父の夢をまとった姉妹がレスリングで世界に羽ばたく壮大な逆転サクセス・ストーリーインド映画の世界興収歴代第1位の座を奪取し、中国では『君の名は。』の記録のダブルスコアとなるモンスター級のヒットを樹立、今も各国で記録を更新中の話題の大興奮作。圧巻の面白さと感動で人々の心をわしづかみにしたのは、レスリング一直線の熱血パパと2人の娘たちの実話。「巨人の星」の星一徹ばりの過酷な特訓を強いるパパに、「猛烈すぎる!」と驚いた観客も、因習、悪徳コーチ、挫折、世界の壁……いくつもの限界を、娘を支えながら共にブチ破っていくその姿に魂を燃やされる。やがて彼の真の目的が明かされた時、観る者の涙腺は決壊、クライマックス30分は爽快な涙が止まらない。 レスリングの国内チャンピオンになったものの、生活のために引退したマハヴィルは、金メダルの夢を息子に託すはずだったが、授かったのは、娘、娘、娘、娘──。やむなく夢は諦めたが、十数年後にケンカで男の子をボコボコにした長女ギータと次女バビータの格闘センスに希望を見出し、翌日から2人を鍛え始める。男物の服を着せ、髪を切り……暴走するマハヴィルの指導を見た町の人々は一家を笑い者にするが、父の信念は曲がらない。やがて2人は目覚ましい才能を開花させ始める──。 頑固一徹なパパに扮するのは、公開時にインドで歴代興行成績を塗り替え、日本でも大ヒットを記録した『きっと、うまくいく』のアーミル・カーン。50本を超える作品に出演し、国内外で数々の権威ある賞に輝くインドの国民的スターだ。ギータとバビータの子供時代と成長してからを演じる4人は、厳正な健康チェックを含むオーディションで選ばれた。父との葛藤に揺れるギータを情感豊かに演じたファーティマー・サナー・シャイクと、家族の絆を取り戻そうとする愛らしいバビータを演じたサニャー・マルホートラは、すべての試合シーンを自分たちで演じている。彼女たちを一流のアスリートかつ女優に育て上げた監督は、ニテーシュ・ティワーリー。 “ダンガル”とは、インド語でレスリングのこと。広い意味での情熱に溢れたファイターや、人間の尊厳も表し、闘い続ける者たちを称える言葉でもある。父から受け継いだ夢をまとい、姉妹がレスリングで世界へと羽ばたく壮大な逆転サクセス・ストーリーにして、全ての夢追い人へ贈る最高のエールが誕生した。(ストーリー)レスリングを愛しすぎた男、いつか息子を金メダリストに。しかし、うちには娘しかいない——。そうだ!誰よりもレスリングを愛し、インドの国内チャンピオンにまで上りつめたが、生活のために引退したマハヴィル(アーミル・カーン)。母国に初の金メダルをもたらす夢は、まだ見ぬ息子に託した。ところが、待望の第一子は女の子。町の人々から伝授された“男の子を作る方法”を全て試しても、2人目も3人目も……なんと4人目も女の子。やむなくマハヴィルは夢を諦める。 それから十数年後、長女ギータと次女バビータが、悪口を言う男の子をボコボコにし、マハヴィルは2人を叱るどころか歓喜する。娘たちの格闘DNAを信じたマハヴィルは、止める妻を試しに1年間と説得する。 男物のTシャツと短パン姿で走らされ、お菓子もスパイス料理も禁止、ゲームやお出かけもなし。毎朝5時からの厳しい肉体改造が始まった。だが、女の子がレスリングなんてあり得ないと、一家はたちまち町の笑い者に。レスリング場の使用も断られ、マハヴィルは土のリングを作り、甥のオムカルに娘たちの練習相手をさせる。 体力も気力も限界に達したギータとバビータは父親にやめさせてと懇願するが、許されるどころか髪を短く刈り込まれてしまう。ある夜、父に内緒で友達の結婚パーティに出掛けると、すぐにバレて激怒される。「あんな父親、要らない」と涙ぐむ姉妹に、意外にも花嫁が「いい父親よ」と諭す。幼い娘に家事を押し付け、14歳になったら顔も知らない男に嫁に出す自分の親と違って、マハヴィルは娘の未来のためを想っているというのだ。 心を打たれた2人は翌朝から特訓に励み、才能は急速に開花していく。ギータがオムカルに勝った翌日、マハヴィルはギータを男子のレスリング大会へ連れて行く。最初は断られるが、話題になるとふんだ主催者に許可されて出場、ギータは破れたものの善戦し、拍手喝采を浴びる。その敗戦がギータの闘志に火をつけ、驚異の快進撃が始まった! やがてバビータも参戦、2人は男を投げ飛ばす少女としてたちまち人気者になっていく。いよいよ次は全国大会。男を負かしてきたギータに敵はいない。サブ・ジュニア、ジュニアと優勝し、さらに成長してシニアの全国チャンピオンを獲得、町の人々にも英雄として迎えられる。「ついに夢が叶ったね」と喜ぶオムカルに、「まだだ」と答えるマハヴィル。「俺の夢はお前が国際大会で金メダルを取った時に叶う」という父の言葉に、ギータはしっかりと肯くのだった。 インド代表となったことで、国立スポーツ・アカデミーに入団するために、家族のもとを離れるギータ。そこで彼女を待っていたのは、外食やおしゃれもできる自由な生活と、「父親の教えは一切忘れろ」というコーチからの指導だったーー。多くの人に伝えたい、女の子を尊重したインドの一家の実話 姉妹のキャスティング=レスリング選手の育成?! リサーチを重ねて得た事実にユーモアを盛り込んだ脚本 70キロ→97キロ→70キロ!名優史上最難関の肉体改造 インドの大スターにしてヒットメーカーが主演&プロデュース国宝級スター、アーミル・カーンのすごさがわかる世界制覇作品松岡 環アジア映画研究者 インド人観客は、アーミル・カーン主演作の公開を毎回、特別な感慨を持って迎える。その理由の一つは、アーミルの主演作が少ないことだ。年に1本、あるかなしかなので、観客はいつも、アーミル作品に対して飢餓状態に置かれている。そこで、「やっと公開か!」となるのである。 もう一つの理由は、アーミルは出演作を厳選し、演じるにあたっては最大限の努力をする、ということを誰もが知っているからだ。それゆえ、彼の主演作にはハズレがない。観客はそれを確認しに行くだけなのだが、その確認作業こそが観客の至福の時なのである。 アーミルの「最大限の努力」の中には、演技力だけではなく、極端な肉体改造も含まれる。『きっと、うまくいく』(2009)や『PK ピーケイ』(2014)では、極限まで体重をしぼって、実年齢より20歳も若い大学生役や全裸シーンをこなした。そして『ダンガル きっと、つよくなる』では、今度は何と体重を27㎏増やしたという。一体どんな映画なんだ、と人々はチケットの入手に奔走し、『ダンガル きっと、つよくなる』は2016年12月23日に封切られると即、興収は急上昇、3週間で当時歴代興収第1位だった『PK ピーケイ』を抜いたのである。 実を言うと、『ダンガル きっと、つよくなる』が公開される半年前に、内容が似通った作品が封切られていた。サルマーン・カーンとアヌシュカー・シャルマー主演の『スルターン』(2016)である。主人公スルターンは女子レスリング選手に一目惚れし、レスリングを始めて結婚後世界選手権金メダル級の選手となるが、誕生直後の息子を亡くしたことで妻とも別居、落ち目となる。数年後、格闘技選手として立ち直った彼は妻との関係も修復、生まれた女の子にレスリングを教え始める、という物語だ。 『スルターン』は『PK ピーケイ』には及ばなかったものの、歴代4位のヒットとなった。その記憶が薄れぬうちの、『ダンガル きっと、つよくなる』公開である。女子レスリング、父と娘、男児誕生の優位性に疑問を呈したフェミニズム、それに舞台がどちらもハリヤーナー州の田舎町という設定も似通っている。 ところが蓋を開けてみると、やはりアーミルは強かった。『ダンガル きっと、つよくなる』を見た観客たちは、「逆ライザップ」とでも言うべきアーミルの加齢と共に太っていく肉体に圧倒され、苦虫をかみつぶしたような顔で娘たちを鍛える太鼓腹オヤジ演技に魂を奪われた。さらに、娘たちを演じたフレッシュ・フェイス4人に魅了され、家族の絆が最後に勝利する姿に涙した。そして、「♪ダンガル、ダンガル」と繰り返す力強い主題歌や、トレーニングを強いられた中学生の娘たちがコミカルに歌う「♪やめて父さん、私たち体を壊すわ(直訳:父さん、あなたは健康に有害よ)」は、ヘビロテ・ソングとなったのである。後者は、YouTubeでの再生回数が、全ヴァージョン合わせると軽く1億回を超えた。 もちろん、公開してみると問題も起きた。実話に基づいた本作で、女子レスリング国家チーム・コーチのモデルとなった人が、「映画は事実に反している」と抗議の声を上げたのだ。だが、そこは映画に脚色が入っていることは皆、百も承知。それもまた話題作りに貢献して、2017年4月28日に『バーフバリ 王の凱旋』が公開されるまで、『ダンガル きっと、つよくなる』はインド国内興収、全世界興収共にインド映画の歴代トップに君臨した。 『バーフバリ 王の凱旋』公開後は一時トップの座を奪われるが、そこでまた奇蹟が起きる。何と、中国で2017年5月5日に『摔跤吧!爸爸(レスリングして! 父さん)』のタイトルで公開されるとみるみるうちに興収を伸ばし、ついには『バーフバリ 王の凱旋』を抜き去ってしまうのである。それより前、3月24日に『我和我的冠軍女兒(私と私の金メダル娘)』のタイトルで公開された台湾や、8月31日に『打死不離三父女(殺されても離れぬ父と娘2人)』として公開された香港でも好成績を挙げ、かくして『ダンガル きっと、つよくなる』は世界中で最もヒットしたインド映画となった。 中国の映画市場を制したことは、インド国民にとっては別の意味も持っていた。1947年のインド独立直後は友好関係にあった中印両国は、1962年の中印国境紛争で袂を分かち、敵対関係となる。近年、関係修復が進んではいるが、いまだに中国に対するインド国民の感情は微妙だ。その中国で大ヒットしたのだから、大きなニュースとなったのも当然である。もともと中国では、インド映画はネット視聴を中心によく見られており、中でもアーミル・カーン主演作は人気があるのだが、それでも12億9657万元(約224億円)稼いで2017年中国国内興収第9位となったのは、インド映画初の快挙であった。 以前、『チェイス!』(2013)の公開時に来日したアーミル・カーンに対して、宣伝会社が「国宝級スター」という表現を使ったことがあったが、まさに今の彼はそのタイトルにふさわしい。すさまじい役者魂を目撃できる、世界制覇の重量級作品である。アーミル・カーンマハヴィルファーティマー・サナー・シャイクギータ 青年期サニャー・マルホートラバビータ 青年期ザイラー・ワシームギータ 幼少期スハーニー・バトナーガルバビータ 幼少期サークシー・タンワルダーヤアパルシャクティ・クラーナーオムカル監督・脚本:ニテーシュ・ティワーリー『Chillar Party』(11・未)で監督デビュー。本作でインド国際映画祭で最優秀児童映画賞、脚本賞を受賞。続く『Bhoothnath Returns』(14・未)もインドで大ヒットを収めた。脚本を務めたコメディ映画『ニュークラスメイト』(16/原題:Nil Battey Sannata)が埼玉SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016で上映され、好評を博した。2018年5月21日シネマ・クレール★★★★http://gaga.ne.jp/dangal/「地獄の黙示録(午前10時の映画祭)」ヘリコプターの音から始まるこの大作。公開時に観た。1980年。大学生だった。見事に寝た。あの音とつぶやくようなセリフ。その見事な催眠効果で、ワルキューレの爆撃場面とプレイボーイ誌ガールの慰問場面とカーツ殺害場面しか覚えていない。今回も前夜3時間しかねれなかったこともあるのだが、途中何度も意識が飛んだ。けれども、以前よりは遥かによくわかった。カーツの意図したものがなんだったのか?果たして王国を築きたかったのか、ホントは何をしたかったのか?よくわからなかったが、それ以外は、「お偉方たちがしている」ことにみんな反吐を吐きながら、中佐は狂気の爆撃を行い、兵士は無慈悲な殺戮のあと生存者を病院に送ろうとする欺瞞を示し、電飾の橋を守るために無駄な犠牲を出し、至る所に死体が転がる。「地獄だ、恐怖の地獄」という「アメリカ側から見たベトナム戦争」がよく出ていたと思う。やはり、残すべき大作だったと思う。あの爆撃場面、CG使ってなかったとしたら、どのように撮ったのだろう。解説「ゴッドファーザー」シリーズで世界的成功を収めたフランシス・フォード・コッポラ監督が、1979年に発表した傑作戦争映画。ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」を原作に、舞台をベトナム戦争下のジャングルに移して戦争の狂気を描き、第32回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞。過酷で困難を極めた撮影時のエピソードは伝説的であり、その過程はドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」(91)で描かれている。また、22年後の2001年には、コッポラ自らの再編集で未公開シーンを追加し、50分近く長い「地獄の黙示録 特別完全版」も製作・公開された。サイゴンのホテルに滞在していたアメリカ陸軍のウィラード大尉は、軍上層部からカーツ大佐の暗殺を命じられる。カーツ大佐は任務で訪れたカンボジアのジャングル奥地で勝手に自らの王国を築きあげ、軍から危険人物とみなされていた。ウィラード大尉は部下たちを連れ、哨戒艇で川をさかのぼってカーツ大佐の王国を目指すが、その途中で戦争がもたらした異様な光景を次々と目撃する。日本初公開は80年。2016年にデジタルリマスター版でリバイバル公開される。キャストマーロン・ブランドカーツ大佐ロバート・デュバルキルゴア中佐マーティン・シーンウィラード大尉デニス・ホッパーフォト・ジャーナリストフレデリック・フォレストシェフアルバート・ホールチーフサム・ボトムズランスラリー・フィッシュバーンクリーンG・D・スプラドリン将軍ハリソン・フォードルーカス大佐ジェリー・ザイスマースコット・グレンコルビーボー・バイヤーズジェームズ・キーンケリー・ロッサルロン・マックイーンスタッフ監督フランシス・フォード・コッポラ製作フランシス・フォード・コッポラ共同製作フレッド・ルース作品データ原題 Apocalypse Now製作年 1979年製作国 アメリカ配給 boid日本初公開 1980年2月16日上映時間 147分2018年5月24日TOHOシネマズ岡南★★★★☆http://apocalypsenow2016.com/「のみとり侍」あまりにもご都合主義的な展開にウンザリする。前田敦子が、夫に嫉妬する小間物屋の女房を、鬼気迫る迫力でやっていた。私的には、やり過ぎという気がする。でも彼女もすっかり七変化女優になってしまった。そういえば、ここに出てくる俳優全てが七変化。だからウソっぽいのか!鶴橋康夫監督作品はもう観ない!(ストーリー)越後長岡藩士として出世コースを邁進する小林寛之進(阿部寛)は、ある失言から、藩主・忠精(松重豊)の逆鱗に触れ、左遷されてしまう。その左遷先は、猫の"蚤とり"を生業とする貧乏長屋。そこには、旦那の甚兵衛(風間杜夫)と女房のお鈴(大竹しのぶ)、貧しい子供たちに読み書きを教える友之介(斎藤工)が暮らしていた。戸惑う寛之進の初めての猫の"蚤とり"客は、亡き妻・千鶴に瓜二つの女・おみね(寺島しのぶ)!この運命的な出会いに胸高鳴る寛之進であったが、彼女から浴びせられたのが、この一言。「この、下手クソが!!!!」猫の“蚤とり”とは、女性に“愛”をご奉仕する裏稼業であったのだ!※R15+監督 鶴橋康夫出演 阿部寛、寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、松重豊、桂文枝2018年5月24日TOHOシネマズ岡南★★http://nomitori.jp/sp/徹頭徹尾、女の主観・目線で映像と台詞が作られる。もちろん、テロの犯人は許せない。女はネオナチの夫婦を犯人だと確信しているが、それを観る観客は、こういう映像を観せられれば観せられるほど、ホントなのかな、と思わせる効果を産んでいると思う。確かに客観証拠はネオナチだ。しかし、あの女がたまたまあそこに居て、たまたまガレージ資料を作って爆破を仕掛けた第三者がいたとしたら(ネオナチならばなおさらその背後関係が重要である)、あんなラストは良くないと、観客の私は思う。しかし、主人公の女にその言葉は通じないだろう。これは、右翼テロを扱った映画ではなく、復讐の是非を扱った作品なのだとラストまでは思っていた。ところが、最後のテロップで、想いは千々にみだれる。ドイツにおけるネオナチによるテロの犠牲者の数を述べて、それがすべて外国人だったと伝えるのである。あれはどういう意味なのか。解説では「ネオナチの連続テロ事件に着想を得た」と書いている。ホントにそうなのだとしたら、もう少し描き方があるようにも思う。この邦題は、いいと思う。自殺と最後の自殺。ふたつの間に、実はあまり隔たりはなかったのかもしれない。(解説)突然、最愛の家族を奪われた女。絶望の中、彼女がくだす決断とは──。ドイツ、ハンブルク。カティヤはトルコ系移民であるヌーリと結婚する。かつて、ヌーリは麻薬の売買をしていたが、足を洗い、カティヤとともに真面目に働き、息子ロッコも生まれ、幸せな家庭を築いていた。ある日、ヌーリの事務所の前で白昼に爆弾が爆発し、ヌーリとロッコが犠牲になる。外国人同士の抗争を疑い警察は捜査を進めるが、在住外国人を狙った人種差別主義のドイツ人によるテロであることが判明する。容疑者は逮捕され裁判が始まるが、被害者であるにも関わらず、人種や前科をあげつらい、なかなか思うような結果の出ない裁判にカティヤの心の傷は深まってゆく。愛する人、愛する子供と生きる、ささやかな幸せ。それが一瞬にして壊されてしまった。絶望の中、生きる気力を失いそうになりながら、カティヤがくだす決断とは――。ドイツ警察の戦後最大の失態と言われるネオナチによる連続テロ事件。初動捜査の見込み誤りから、10年以上も逮捕が遅れ、その間、犯人は殺人やテロ、強盗を繰り返した。それらの実際の事件に着想を得て『女は二度決断する』は生まれた。理不尽な暴力により、愛する家族を奪われたあるひとりの女性が、捜査や裁判の過程によって更に心を引き裂かれる。もしも自分の家族に突然悲劇が起きたならば、そのときにどうするのか? これ以上ない悲しみを湛えて迎える衝撃的な結末は、すべての人の心を強く揺さぶる。ゴールデングローブ賞 外国語映画賞、カンヌ主演女優賞受賞!ダイアン・クルーガーが最高の演技を魅せる、名匠ファティ・アキン監督最新作。ゴールデングローブ賞授賞式。驚きと感激を隠せないダイアン・クルーガーとファティ・アキン監督が壇上にいた。数々の強豪を打ち破り、外国語映画賞を受賞した『女は二度決断する』。「ダイアンなしにこの賞はなかった。この受賞は君のものだ。僕らのものだ」というファティの言葉はダイアンのみならず、会場中の感動を呼んだ。主人公カティヤを演じたダイアン・クルーガーは、ハリウッド、ヨーロッパとワールドワイドに活躍する実力派女優。初めて母国語であるドイツ語で演じ、見事、第70回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得した。世界がダイアン・クルーガーの演じた悲しみを共有したのだ。カンヌでの受賞後も各国の映画祭でダイアンの力強い演技が絶賛されている。監督はドイツの名匠ファティ・アキン。ベルリン、カンヌ、ヴェネチア、世界三大国際映画祭すべてで主要賞受賞経験を持つカリスマ監督だ。自身もトルコにルーツを持つ監督ならではの強い想いが本作には込められている。音楽はアメリカン・ロック界の雄クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オム。レディー・ガガやイギー・ポップ、フー・ファイターズとのコラボレーションも多く、2017年発売のアルバム「ヴィランズ」はグラミー賞にノミネートされた実力派バンドの中心人物である。ジョシュが書き下ろした楽曲は、エレクトリックと生楽器の音を組み合わせ、主人公カティヤの激しく揺れる気持ちに寄り添う。本作は、ゴールデングローブ賞で受賞した他、数々の映画賞にノミネートされ、アカデミー賞®外国語映画賞ショートリスト(ドイツ代表)にも選出されている。2018年5月31日シネマ・クレール★★★★http://www.bitters.co.jp/ketsudan/sp/
2018年06月09日
コメント(0)
5月はなんとか10作品観ました。比較的佳作が多かった気がします。前半の5作品を紹介します。「アベンジャーズ/インフィニティ・ウオー」マーベルは数年に1度のアベンジャーズでオールスター戦を見せて、集客力を持ってきた。次々と新たな敵を考えつくのではなく、以前の敵をバージョンアップさせて物語を紡いで来た。今回はガーディアンズとの因縁を大幅にフィージョンして、新たな話を作ったと思う。お陰で、過去の2作品のDVDが売れることだろう。もちろん、というか意外なラストを迎える。私なんかは、まあこういう手もあるよね。というだけど、まあ話題になるだろう。私なんかは、ちゃんと伏線張っているとは思っているのだけど。(ストーリー)それぞれ異なるパワーを持つインフィニティ・ストーンが六つそろうと、世界を滅ぼせるほどの力が得られるという。アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、スパイダーマン(トム・ホランド)らアベンジャーズはほかのヒーローたちと共に、インフィニティ・ストーンを手に入れようとたくらむサノス(ジョシュ・ブローリン)に立ち向かうが……。(キャスト)ロバート・ダウニー・Jr、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ホランド、クリス・プラット、チャドウィック・ボーズマン、ジョシュ・ブローリンスタッフ監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ製作:ケヴィン・ファイギ(C) Marvel Studios 20182018年5月1日TOHOシネマズ岡南★★★★http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/「いぬやしき」2人とも善良な普通人だった。一方の初老の男は臆病な分やるべきことをやれるだけする「常識」を実行した。一方は、人生経験の少ない青年だったため、最初の殺人こそは衝動的だったが、以降はネットによる日本的な殺人に抗し、最後は国家の悪に抗した時に、あの大量殺人が起きた。もし、人に神のような「力」を与えたらどうなるか?これもゲーム時代が生み出した「物語」である。ゲーム世代が観て、何かしら感じるべきであって、犬屋敷世代は何も言うべきではない。のかもしれないが、獅子神の責任論に終始するよりはいろいろ思って欲しいと思う。それにしても、東京の爆破映像は少し粗かったが、サイボーグの創出は、流石に日本のCGはすごいと思う。ラストシーンは、蛇足だった。(STORY)定年を控えるうだつが上がらない会社員・犬屋敷壱郎(木梨憲武)は謎の事故に巻き込まれ、目が覚めると見た目は変わらず、体の中はサイボーグになっていた。超人的な能力を手にしたことを自覚した彼は、その力を人のために使うことで存在意義を見いだすようになる。一方、犬屋敷と同様の事故で同じ能力を備えた高校生・獅子神皓(佐藤健)は、敵対する人間を全て消し去りたいと考え……。(キャスト)木梨憲武、佐藤健、本郷奏多、二階堂ふみ、三吉彩花、福崎那由他、濱田マリ、斉藤由貴、伊勢谷友介(スタッフ)原作:奥浩哉監督:佐藤信介脚本:橋本裕志音楽:やまだ豊主題歌:MAN WITH A MISSION製作:石原隆、市川南、吉羽治2018年5月1日TOHOシネマズ岡南★★★★http://inuyashiki-movie.com/sp/「しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス」夫のエベレットが、どのようにしてモードへの愛に目覚めていったのか?が、この作品のキモだと思う。ああいう無骨な愛し方に、とても共感する自分がいるのだけれども、他の人はどうなんだろう。絵は幾つかはホンモノを使っていると思う。生涯どのくらいの絵を描いているのだろうか?日本で特別展とかはしないのだろうか。やはり映画では本当の良さはわからない。「シェイプ・オブ・ザ・ウォーター」の主演が生々しいサリー・ホーキンスが、ここでも見事な演技。今回はイーサン・ホークと四つに組んだ。(解説)カナダで最も有名な画家モード・ルイスが教えてくれる、人生で大切な喜びとはカナダの小さな港町で、子供のように無垢で愛らしい絵を描き続けた素朴派画家のモード・ルイス。夫のエベレットは不器用ながらも妻のサポート役として献身的に尽くしていた。孤独だった2人が運命的な出会いを経て、夫婦の絆とたしかな幸せを手に入れた感動の実話を映画化!毎日、鮮やかな色彩でカナダの美しい風景と動物たちを描いたモードは、愛とユーモアに満ちた心象風景を心の赴くままに描いた。その魅力は海を渡り、当時のアメリカ大統領ニクソンから依頼を受けたこともあったという。日本ではまだ知る人ぞ知る存在だが、本国では小品でもオークションで500万円を超える人気を誇る、カナダで最も愛されている画家である。電気も水道もなく、わずか4メートル四方の小さな家で慎ましく暮らすモードを演じるのは、『ブルージャスミン』(13)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた実力派サリー・ホーキンス。絵本作家の両親を持ち、自身もイラストレーター志望だったサリーは、役作りのために素朴派画家の絵画クラスに数ヶ月間通ったという。背中を丸め、縮こまった手で絵筆を握る姿はモードが乗り移ったかのようだ。妻への愛と尊敬の念を無骨に隠すエベレットには、『6才のボクが、大人になるまで。』(14)などでアカデミー賞ノミネート常連組のイーサン・ホーク。本作出演後に、モードの作品を2点購入したという美術愛好家の一面を持つ。カナダの広い空の下で一風変わった夫婦の愛を描くのは、ホーキンス主演のTVドラマ「荊の城」(05)のアシュリング・ウォルシュ監督。再びサリーとタッグを組んだ本作はベルリン国際映画祭をはじめ世界の名だたる映画祭で上映され、観客賞ほか多くの賞を受賞。世界中で愛される、彼女の代表作となった。幼い頃から障害を抱え、家庭に恵まれなかった1人の女性が、生きがいである絵と夫の愛に包まれて花開いていく。「どんな人生でも自由な精神で楽しめば、素晴らしいことが待っている」と教えてくれる感動作が誕生した。2018年5月7日シネマ・クレール★★★★http://shiawase-enogu.jp/「ラプラスの魔女」原作を読んでいるので、観たのはひとえに広瀬すずという女優の将来を「予測」するためである。常に主演を張れる女優として若手No.1の彼女が、あとあと「主演女優」としての位置をキープ出来るかどうか。ラプラスは必要なデータさえ揃えば、未来は予測出来るとした。1番必要なデータは、彼女に、ある基準以上のオーラがあるかどうか。私は無いと観た。でも、女って化けるからなあ(^_^;)。結局データ不足。監督が三池崇史なので、豊川悦司の長セリフは、三池節。見事に主人公たちを喰っていたと思う。また、最後に福士蒼汰の云うセリフは、原作にはないステキな言葉であり、あれだけで高い金払って映画を観て良かったと若者たちに思わせるモノになった。ホントはそこのところをもっと映像で見せて欲しいんだけど、別の作品になる可能性もあるし、三池崇史だから単なるサービスで語っただけのような気もする。(ストーリー)離れた場所で二つの死亡事件が連続して発生し、両方同じ自然現象の下での硫化水素中毒死だと判明。さらに死亡した二人は知り合いであることがわかり、警察は地球化学の研究者である大学教授の青江(櫻井翔)に協力を依頼する。青江は事件性はないと考え調査を進めていると、そこに円華(広瀬すず)という女性が現れ……。(キャスト)櫻井翔、広瀬すず、福士蒼汰、志田未来、佐藤江梨子、TAO、玉木宏、高嶋政伸、檀れい、リリー・フランキー、豊川悦司(スタッフ)監督:三池崇史原作:東野圭吾脚本:八津弘幸上映時間116分2018年5月10日Movix倉敷★★★http://www.laplace-movie.jp/sp/index.html「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」時代考証を重ねた街の風景や国会議事堂やチャーチルの私邸の表現以外には、見どころはやはり毎回数時間かけて行われた辻氏のメイクアップ表現だろう。本人のUPばかりが続く本篇の中で、これでもかと云うほどに、チャーチルだけを写しこむ。根っからの貴族であるチャーチルが歴史に果たした役割は、唯一断固としてヒトラーにNOと言ったことで、それ以外には何もないのだと云うことを、おそらく言外に滲ませた作品なのだろう。それにしても、あの時点で和平交渉か徹底抗戦かは、歴史の検証としてどうだったのか?映画を見るだけでは判断つかない。しかし、ウソもばら撒き、「言葉だけを武器にのし上がって来た根っからの政治家」をオールドマンはよく演じたと思う。単なる似せただけではなく、血の通ったチャーチル像を見せた。(解説)『つぐない』などのジョー・ライト監督と、『裏切りのサーカス』などのゲイリー・オールドマンが組んだ歴史ドラマ。第2次世界大戦下のヨーロッパを舞台に、苦渋の選択を迫られるウィンストン・チャーチルの英国首相就任からダンケルクの戦いまでの4週間を映し出す。チャーチルの妻を『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマスが演じるほか、リリー・ジェームズ、ベン・メンデルソーンらが共演。『博士と彼女のセオリー』などのアンソニー・マクカーテンが脚本を担当している。(ストーリー)第2次世界大戦勃発後、ナチスドイツの勢いはとどまることを知らず、フランスの陥落も近いとうわさされる中、英国にもドイツ軍侵攻の危機が迫っていた。ダンケルクで連合軍が苦戦を強いられている最中に、英国首相に着任したばかりのウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)がヨーロッパの命運を握ることになる。彼はヒトラーとの和平か徹底抗戦かという難問を突き付けられ……。2018年5月13日シネマ・クレール★★★★
2018年06月08日
コメント(0)
後半の四作品です。「港町」最初カラーで撮っていたけど、編集段階で白黒に切り替えたらしい。その効果は挙がっていると思う。港町を舞台にしたドロドロと因習や血の連鎖を描く小説は、中上健次を筆頭に日本人の得意分野ではあるが、実際はそんなにはドロドロしてはいない。しかし、そんなにも幸運な人生ではなかったけど、不幸とも言えない人生はあるだろう。印象的な四人が出てくる。86歳になるというのに、まだ現役で漁にでるおじいさん。ヨボヨボの歩き方だけど、網の修理や、網掛け、網引きの手順は少しも狂いがない。世話焼きお婆さん。頭もクリア、足腰もしっかりしてるが、何よりも撮影隊の世話をひつこいぐらいに焼く。それはおそらく一人息子を「福祉」に奪われた悲しみや、おそらく妾腹で昭和の初めに4歳で家に引き取られて継母イジメに遭って苦労した人生がそうさせているのだろうと、問わず語りでわかるのである。まさか撮影の2年後には亡くなっているとは。75歳以上だという魚行商のおばさん。スーパー進出で昔の需要は無くなっているけど、一人ひとりの病院日程や趣味の日程まで把握して、売り歩く、商売という名の地域見守り活動を実践している人。おばあちゃんが無数に出てくる。猫も無数に出てくる。都会から来たような、いかにもそんな顔つきの夫婦がドラ猫の餌付けをしている所を通り過ぎて付いて行ったおばさんの先には、牛窓のお墓事情があった。喋りながら手際よく草を抜いていく様はちょっとした職人技である。村君(ソングン←これは明らかに韓国語。朝鮮通信使の港なのでありうるのだが、由緒ある家柄というのが腑に落ちない)という漁師の由緒ある家柄らしいが、この老女が最後の守りをしているのはよくわかる。牛窓の民俗と現代の老人問題をもゆるく見せて静かにフェイドアウトする。面白かったけど、傑作ではない。(解説)岡山県牛窓を舞台にした観察映画第七弾。美しく穏やかな内海を背景に、豊かな土地の文化や共同体のかたちを映し出すドキュメンタリー。小さな海辺の町で暮らす人々が語る言葉から感じるものは、孤独と優しさ、そして‥?監督・製作・撮影・編集 想田和弘2018年4月22日シネマ・クレール★★★★http://minatomachi-film.com/「レディ・プレイヤー1」「オアシスは、人を繋げる」だからゲームの世界は素晴らしい。けれども、「現実こそがリアルなんだ」単純でリアルな真理を、壮大なバーチャルリアリティを作って、子供にも大人にも分かるやり方で見せてくれたスピルバーグは、やはり偉大な映画作家と言わざるを得ない。米国では、1年以内に「ペンタゴン・ペーパーズ」と「レディ・プレイヤー1」という正反対の傑作を公開した凄い人だけど、日本では一ヶ月以内の公開になった。映画の神様のような人だ。これは伝説にしてもいいと思う。2045年の話であと27年後の話になっているけど、これを観た11歳の男の子が30歳になる19年後ぐらいには、その男の子がこの作品に刺激を受けてこのような同時体験型のバーチャルリアリティの、想像力でなんでも作れるゲームを作ってしまいそうな気がする。その時に、ゲーマーたちは、この映画を指針にして欲しいと切に思う。森崎ウィン演じる青年は、三船敏郎のアバターを持ち、瞑想をした後にガンダムになるけど、やったことはほとんどルパンの五右衛門だった。メカゴジラがラスボスで出てくるとか、日本のアニメをリスペし過ぎ。これは大画面で観ても疲れるぐらいなので、テレビの小さい画面で見るのはやめた方がいいと思う。(STORY)2045年、人類は思い浮かんだ夢が実現するVRワールド「オアシス」で生活していた。ある日、オアシスの創設者の遺言が発表される。その内容は、オアシスの三つの謎を解いた者に全財産の56兆円とこの世界を与えるというものだった。これを受けて、全世界を巻き込む争奪戦が起こり……。(キャスト)タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ、T・J・ミラー、ベン・メンデルソーン、森崎ウィン、(日本語吹き替え版)、KENN、坂本真綾、茅野愛衣、山寺宏一、三ツ矢雄二、高島雅羅、玄田哲、松岡禎丞、日高のり子スタッフ監督:スティーヴン・スピルバーグ脚本:ザック・ペン原作:アーネスト・クライン上映時間140分2018年4月26日TOHOシネマズ岡南★★★★http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/sp/「ザ・スクエア 思いやりの聖域」私は絵画は大好きだが、現代美術は好きじゃない。ここに出てくるのは、体験型現代アートであるが、(現代アートとは少し違うが)安藤忠雄の建物を入っても、これだけの仕組みにこんな無駄金を使って!と先ず思ってしまう。というわけで、感動しなかった。はい、終わり。と出来ないだろうから少し付け加える。ここは私の方が思いやりがあるな、とかここは私は同じかな、とか、突然現れる「現代アートの仕掛け」に素直に従って感想を述べるのがそもそもイヤだ。私はあんたの仕掛けに乗るために映画館に来たわけじゃない。因みに、(1)携帯を盗まれる前に、移民のホームレスを見て見ないふりをしていたわけだから、私が陥れられたのは自業自得と納得するとおもう。だから、その後の展開もあり得ない。(2)男の子を階段から突き落として何もしなかったのはあり得ない。(3)炎上商法の宣伝動画は、初動を完全に間違っている。もともとあんな商法を入れる隙を見せたのが間違い。(4)あの猿を見て見ぬ振りをした時点で、あの女性のことを理解しなかったのは明白。これもあり得ない。(6)猿パフォーマンスが、やり過ぎをやった時点で、主催者のクリスティアンは止めるべきだった。まあ、あり得ない展開だった。と、観客にいろいろ議論させたいのだろう。それを上から眺めている監督の姿が見えるようで不愉快で仕方ない。(ストーリー)正義という名の落とし穴理想どおりに生きることの難しさクリスティアンは現代美術館のキュレーター。洗練されたファッションに身を包み、バツイチだが2人の愛すべき娘を持ち、そのキャリアは順風満帆のように見えた。彼は次の展覧会で「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いた作品を展示すると発表する。その中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートで、現代社会に蔓延るエゴイズムや貧富の格差に一石を投じる狙いがあった。ある日、携帯と財布を盗まれてしまったクリスティアンは、GPS機能を使って犯人の住むマンションを突き止めると、全戸に脅迫めいたビラを配って犯人を炙り出そうとする。その甲斐あって、数日経つと無事に盗まれた物は手元に戻ってきた。彼は深く安堵する。一方、やり手のPR会社は、お披露目間近の「ザ・スクエア」について、画期的なプロモーションを持ちかける。それは、作品のコンセプトと真逆のメッセージを流し、わざと炎上させて、情報を拡散させるという手法だった。その目論見は見事に成功するが、世間の怒りはクリスティアンの予想をはるかに超え、皮肉な事に「ザ・スクエア」は彼の社会的地位を脅かす存在となっていく……。(解説)リューベン・オストルンド監督『フレンチアルプスで起きたこと』、最大の野心作全世界を巻き込んで話題騒然!?あなたはもう、ただの観客ではいられない!北欧の若き巨匠リューベン・オストルンド監督の最新作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、第70回カンヌ映画祭にて衝撃のパルムドール受賞を果たし、以降もヨーロッパ映画賞で最多6部門を制覇、そして、第90回アカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされるなど、現在各国の映画祭を席巻中! そして日本では、スウェーデンとの国交樹立150周年にあたる、記念すべき2018年に本作が公開となる。有名美術館のキュレーターが発表した展示作品「ザ・スクエア」が、世間に思わぬ反響を生み、とんでもない大騒動へと発展していく皮肉な運命の悲喜劇だ。主演は本作でブレイクを果たし、ヒット作『ドラゴン・タトゥーの女』の続編に出演決定したクレス・バング。共演にHuluのドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」でエミー賞、ゴールデン・グローブ賞などを続々受賞、スターの階段を駆け上がるエリザベス・モス、『シカゴ』などの演技派ドミニク・ウェスト、謎のパフォーマー役に『猿の惑星』のモーションキャプチャーを務めたテリー・ノタリーらが脇を固めている。アート界を舞台に、現代社会を生きる人々が抱える格差や差別といった問題を抉り出し、本当の正義や生きていくことの本質を痛烈な笑いたっぷりに描き出す。主人公が窮地に追い込まれ、人間としての決断を迫られるたびに私たち観客は「自分だったら、どうするだろう…?」と考えずにはいられない。観る者すべての〈心〉が試される究極の問題作だ!2018年4月28日シネマ・クレール★★★「ザ・思いやりパート2」意義や内容は、下のとても詳しい解説を読んで欲しい。ドキュメンタリーとして映画作品として、感想を言うと、「知られていない事実の発掘」「想定外の出来事の記録」この二つが優秀なドキュメンタリーの条件であるが、ここに表される事実すべてが国民に十分に知らせれていないし、シリアから帰ったばかりの米兵から「(訓練は)日本を守るためじゃない」「(この爆弾で)市民病院や学校に落としたら、誰も生きられない」という言葉を拾えたのは手柄である。平和運動家ではなく、普通の市民が観る上映会を企画して欲しいと思う。(解説) 日本政府が負担する在日米軍の駐留経費、いわゆる「思いやり予算」の驚くことばかりのひどい実態を『ザ・思いやり』というドキュメンタリー映画にしました。私はアメリカのテキサス州出身のアメリカ人ですが、神奈川県の米軍厚木基地の飛行ルートの下に23年間住んでいます。子どもが夜中に飛び起きるような戦闘機の爆音も体験してきました。 2009年ころに米軍がイラクで子どもを含む市民を銃撃するネット動画を見て、3日間くらい夜も眠れないほど激しい憤りを覚えました。何かしなければという思いにかられて、身近にある在日米軍を調べようと基地の島・沖縄を訪ねてみました。そこで「思いやり予算を被災地の支援へ」という署名に取り組んでいる女性の存在を知りました。「思いやり予算」と聞いた瞬間に、これはあらゆる問題に通底するテーマで興味深い映画になると直感しました。3年間かけて沖縄・石巻・横須賀・グアム・アメリカなどをめぐり、15年に『ザ・思いやり』が完成しました。 日本国民のくらしがこんなに苦しいのに、在日米軍に5年間8911億もの税金が費やされていました。支払う義務がないにもかかわらず、その予算は横須賀の原子力空母の停泊場・辺野古新基地の建設費・グアムへの基地移転費など軍事費に使用され、さらには基地内の住宅や学校をはじめ、プールやボーリング場、バーやゴルフ場などの豪華で贅沢な娯楽施設にまで使われ、なんとペットの世話係の給料にも充てられています。神奈川県の神武寺駅には、米軍家族だけが近道できるようにと、なんと米軍専用の改札口まで「思いやり予算」で作られているのです! 特に日本人にとっては怒っていい深刻な問題だと思いますが、笑いを誘うようなユーモラスな語り口と軽快なテンポと音楽で娯楽性も持たせながら、この矛盾だらけな実態を描きました。基地問題に関心がある人だけでなく、ふだんあまり関心を持っていない6〜7割ほどの人々にも「変なアメリカ人が面白そうな映画をつくったから、いっしょに見に行こうよ」と気軽に誘い合って、自然に広がってほしかったからでした。 『ザ・思いやり』は口コミを中心にじわじわと話題が広がり、2年ほどかかりましたが、全国500カ所以上の自主上映会が取り組まれています。この上映会の広がりに勇気づけられ、製作費支援などのバックアップもいただきながら、『ザ・思いやりパート2〜希望と行動編』をこの7月に完成させました。 第一弾では「思いやり予算」の不条理さと矛盾をさまざまな視点から問いかけ、「なぜ日本人はここまで米軍を思いやるのか?」という疑問を投げかけました。パート2では、在日米軍が日本や世界で何をやっているのか、本当に日本を守るために存在しているのか、さらに単純に金額の大きさだけではない倫理的な問題に迫りました。神奈川県の米軍相模補給廠からベトナム戦争に送られる戦車を100日にわたり座り込みで阻止した闘争を改めて注目し、米兵への直撃インタビューで青森県の米軍三沢基地が、シリアやヨルダンなどの海外への空爆の出撃拠点となっている実態を暴露できました。米軍が日本の基地を拠点に、さまざまな国でどれほど多くの市民、子どもや女性にまで被害を与えてきたのか、歴史と現実を知ってほしい。日本を守るどころか、逆に米軍基地があるから日本が戦争に巻き込まれ、攻撃対象となりかねません。 500億円もの基地周辺対策費と騒音軽減費が使われている厚木基地周辺のすさまじい爆音のもとでの子育て、民意を踏みにじって基地建設が強行される沖縄の辺野古と高江のあまりの理不尽さ、同じく沖縄で、米兵による交通事故や犯罪被害の賠償金を日本が負担している信じがたい事実など、前作同様に自らレポーターとして映画に登場し、沖縄・神奈川・青森など各地を取材し、米軍基地の脅威や被害に晒されながらも、それでも基地撤去を求めて行動している人々の夢や願いに耳を傾け、米軍基地なき世界への希望と展望を示していきます。 「国会前野外上映会」「膨大思いやり予算のそろばん対決」「米軍のための思いやりクリスマス募金」など、「思いやり予算」を風刺する奇抜な「面白映像」も盛り込みました。シリアスな問題ですが、コミカルさも交えて観客をあきさせないような映画をめざして製作しました。たくさんの方に観ていただきたいです。(談)文責・「ザ・思いやり」事務局★製作費のカンパを募集を引き続き募集してます。持続可能な映画づくりをめざしています。応援していただければ幸いです。(チラシ参照)★あなたのグループ、地域で上映会の企画をしませんか? (上映料1万円〜)お問合せ 「ザ・思いやり」事務局 090−2625−8775(佐藤契)zaomoiyari@hotmail.co.jp出演:横井久美子(歌手) 松元ヒロ(コメディアン) 前泊博盛(沖縄国際大学教授)ほか 希望をもって行動している沖縄をはじめ全国のみなさん製作:平沢清一 リラン・バクレー 佐藤 契 編集:伊藤ニコラ 配給:「ザ・思いやり」事務局2018年4月28日水島公民館★★★★https://zaomoiyari.com/
2018年05月12日
コメント(0)
4月に観た映画は、7作品だった。2回に分けて紹介します。「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」アメリカの中の秘密保護法にも、共謀罪にも抵触して、社主や会社幹部が鎖に繋がれる恐れがあったにもかかわらず、彼らは「報道の自由」を選んだ。また、それを支持する最高裁や国民の支持もあった。もちろんスピルバーグは、メディアを敵視するトランプに対抗して本作を作ったのだろう。しかし、これは日本の報道陣を励ます作品にもなっている。そのことに言及しない日本の報道は、いち早く秘密保護法も共謀罪も導入しているアメリカに劣る国だと言わざるを得ないだろう。偶然にも、日本にも「政府に(首相のメンツのために)ウソをつき通そうとする事案」が何度も出ている。自衛隊日報問題然り、森友・加計問題然り、さらには最近のセクハラ問題然りである。報道はその役割を果たしているか?裁判所はその役割を果たしているか?国民はその権利を行使しているか?とっても疑問だ。そんなことをしきりに思わざるを得ない作品である。(STORY)ベトナム戦争の最中だった1971年、アメリカでは反戦運動が盛り上がりを見せていた。そんな中、「The New York Times」が政府の極秘文書“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在を暴く。ライバル紙である「The Washington Post」のキャサリン(メリル・ストリープ)と部下のベン(トム・ハンクス)らも、報道の自由を求めて立ち上がり……。(キャスト)メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス、アリソン・ブリー(スタッフ)監督・製作:スティーヴン・スピルバーグ脚本:リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー製作:エイミー・パスカル、クリスティ・マコスコ・クリーガー製作総指揮:ティム・ホワイト、トレヴァー・ホワイト、アダム・ソムナー、トム・カーノウスキー、ジョシュ・シンガー撮影監督:ヤヌス・カミンスキープロダクションデザイン:リック・カーター編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー共同製作:レイチェル・オコナー、リズ・ハンナ音楽:ジョン・ウィリアムズ衣装:デザインアン・ロス上映時間116分2018年4月1日Movix倉敷★★★★☆「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」恋人たちに大病が舞い降りて、絆が試される、しかも実話、と言えば、ほとんど「8年越しの花嫁」みたいな話に思えるけど、実は大病が1番の「困難」ではない。9.11から10数年、アメリカ社会には根強いイスラム教徒に対する「無理解」があって、それをネタにしたピン芸人の舞台もどうやら成立しているらしい。芸人の表舞台はシカゴのような「田舎」じゃなくてニューヨークだというのも、まあありそうなこと。ここには、現代アメリカの若手芸人の実態や、それでも偏見を克服しようとしているアメリカ社会の実態が、本人たちの脚本を持ってイキイキと描かれていておそらくそれがウケタのだと思う。パキスタン家族の、どうしても同じ民族で結婚させようとする圧力、クメイル(なんと本人が主演)も言っていたけど、それならどうしてアメリカに来たのか。その他いろいろ、あゝなるほど現代アメリカだな、というところがあって面白かった。ただ、二つだけ違和感があったのは、アメリカ芸人のギャグがひとつも面白いと思えないこと。また、いくら振られた直後だとしても、すぐに他の女と寝ちゃダメでしょ。潔癖症の彼女がどうしてこの脚本にOKしたのか不思議だ。2人の他は脚本にクレジットされていないから正真正銘2人の脚本だと思うのだが、それ以外はとってもよくできている。アカデミー賞脚本賞ノミネートも納得。あとメアリーの母親を演じたホリー・ハンターは流石の存在感だった。(映画解説・あらすじ)パキスタン出身のアメリカ人コメディアンであるクメイル・ナンジアニの実話を映画化したハートフルコメディー。主人公が昏睡(こんすい)状態に陥った元恋人エミリーの両親との衝突を経て心を通わせるさまを描く。主人公をクメイル自身が演じ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンターらが共演。脚本をクメイルとエミリー本人が共同で執筆し、製作をジャド・アパトー、監督をマイケル・ショウォルターが務める。パキスタン出身のアメリカ人コメディアン、クメイル(クメイル・ナンジアニ)は、自分が原因で恋人の大学院生エミリー(ゾーイ・カザン)と別れてしまう。数日後、エミリーが原因不明の昏睡(こんすい)状態になり、クメイルは病院に急行する。エミリーの母ベスは娘を傷つけたクメイルを嫌うが、ある出来事をきっかけにクメイルとエミリーの両親は打ち解け始め……。2018年4月8日シネマ・クレール★★★★https://movies.yahoo.co.jp/movie/362690/「トゥームレイダー ファースト・ミッション」何故か広まっていないので、お教えするけど、この作品、日本が舞台で、なんと卑弥呼の墓を暴くお話です。まあ、日本人は1人も(おそらく)出ていないですけどね。もしかして傑作ではないかと思い楽しみにして観たけど、反対の意味でとんでもない作品でした。約5分に一回は「こんなのあり得ねえだろ」という展開や映像や台詞が飛び出る。荒唐無稽とはこういう映画のことをいうのだろう。アメリカ人は卑弥呼自体を知らないだろうけと、あの時代倭国が、あんな大掛かりな仕掛けを作れるはずもない。し、そもそも魏志倭人伝には「1000人の殉葬」とは書いていなくて「100人の殉葬」と書いているんです。その他いろいろあるけど、まあ今年の「とんでも映画」候補のNo.1ですね。主人公のアリシア・ヴィキャンデルは、文字通り身体張ってがんばったけど、続編ありきのつくりだったけど、これで終わらして欲しいね。(STORY)大学生のララ・クロフト(アリシア・ヴィキャンデル)は、バイク便のライダーとして働いているが、生活はいつもギリギリ。冒険家である父親は彼女が子供のときに行方をくらまし、亡くなっていた。その父の最後の目的地が、日本のどこかにあるとされている神話上の島の伝説の墓だった。ララはその島を探すために冒険に乗り出す。(キャスト)アリシア・ヴィキャンデル、ドミニク・ウェスト、ウォルトン・ゴギンズ、ダニエル・ウー、クリスティン・スコット・トーマス、ハナ・ジョン=カーメン(スタッフ)監督:ローアル・ユートハウグ製作:グレアム・キング脚本・原案:ジェニーヴァ・ロバートソン=ドウォレ ット脚本:アラスター・シドンズ原案:エヴァン・ドーハティ2018年4月7日Movix倉敷★★☆http://wwws.warnerbros.co.jp/tombraider/sp/
2018年05月11日
コメント(0)
今月の映画評です。「沈黙ーサイレンスー」島原の乱が鎮圧されて数年後の長崎、捕らえられたイエズス会の宣教師ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)は、遂に踏絵を踏みます。その直前、彼はキリストの「それで良い、踏むのだ」という声を聴くのです。これが、この映画のクライマックス。ネタバレ承知でコレを書くのは、ここに至るドロリゴの葛藤をいろいろと想像するのが、この作品の醍醐味だからです。曰く。確かにロドリゴは、殉教するよりも棄教する方が支配者のプロパガンダに乗ることを知っていました。果たして、ロドリゴは転向したのか、否か?何度も転向を繰り返し、ドロリゴを裏切る貧農民キチジロー(窪塚洋介)の存在は、この物語にとって何を意味しているのか?……答は一つではないでしょう。ただ、マーチン・スコセッシ監督が並々ならぬ決意でもって作ったのは、確かです。日本の役者もそれに応えて端役(塚本晋也、浅野忠信、小松奈菜、加瀬亮)に至るまで力演していて、かなり見応えがあります。特に、飴と鞭を使い分けて巧妙にロドリゴに棄教を促す井上筑後守を演じたイッセー尾形の造形は、単なる悪役ではなく、誠実な知性をも垣間見せる「怪演」でした。彼の「日本にはキリスト教は根付かないのだ」という理屈は、私をも「一理ある」と思わせる部分があります。しかし、人間の思想を権力が強制・弾圧するのは言語道断であり、現代の私は井上を決して許しません。「鞭」の部分の教徒に対する拷問は、熱湯、波死、溺れ死、逆さ吊り、首切り等々と陰惨を極めていて、観る方も覚悟が要ります。これらの描写は、最近のイラク戦争で問題になった米兵の拷問に触発されているのかもしれません。遠藤周作の原作を禁書扱いにしたキリスト教圏内では賛否の分かれる作品であることから、昨年の映画賞ではあまり話題になりませんでした。でも日本人こそは、この作品をきちんと観て正当に評価するするべきだと私は思います。去年私はちょうど100作品観ましたが、これはベスト3に位置する力作でした。ちなみに、私はこのように思っています。ロドリゴは転向しませんでした。また、キチジローはロドリゴの分身という位置づけだったと思います。2人の最後の無言の会話がとっても重要です。「主よ、私はあなたの沈黙と闘いました」「私はお前と共に苦しんだ。沈黙していたのではない」殉教のような勇ましい戦いにのみ神は微笑むのか、そうではない。神は常に弱い者に寄り添っておられる、という監督の想いが伝わるラストでした。(2017年作品、レンタル可能)
2018年04月18日
コメント(2)
後半の三作品です。「シェイプ・オブ・ウォーター」どうして60年代なのだろうか?それは、まだ世の中の矛盾が明確化されていなくて、恋も醜さも混沌の中にあったからだろう。生き物は怪獣か神か、宇宙人か超能力者かもわからないままに、この恋物語は終わりを告げる。「本当のわたしをまっすぐに見てくれる」現代の様々な(戦争に繋がる)悪徳は、この恋の魔法で、ことごとく解決して欲しい。というような「願い」も深読みできるような物語。悪役・ストリックランドのマヌケとも不気味とも思える悪徳振りは、この世界をカルチャライズしているかのようだ。それにしても、先に手を洗って手を使わないで用をたすような男って、世の中にはいるのかしら。「生き物」は、しばらくするとグロテスクからは程遠く、かつ美しくなる。これが映画の魔法というものだろう。出来たらアマゾンでの彼の勇姿も観たかった。(解説)本年度アカデミー賞® 4部門受賞作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞受賞ギレルモ・デル・トロ自らがオファーしたという絶妙なキャスティングが実現。ヒロインのイライザを演じるのは、『ブルージャスミン』でアカデミー賞®にノミネートされたサリー・ホーキンス。溢れんばかりの感情を、言葉を発することなく全存在をかけて表現、その渾身の演技は、本年度の主演女優賞レースでも本命視されている。イライザを温かく支え、姉妹のように何かと面倒を見る同僚のゼルダには、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』でアカデミー賞®を受賞のオクタヴィア・スペンサー。イライザの決断に危険を承知で手を差し伸べる心優しき隣人ジャイルズには、『扉をたたく人』のリチャード・ジェンキンス。イライザと“彼”を執拗に追い詰めるストリックランドには、2度のアカデミー賞®ノミネートを誇るマイケル・シャノン。そして、“彼”に扮するのは、デル・トロ監督の『ヘルボーイ』でエイブ・サピエンを演じて絶賛されたダグ・ジョーンズ。監督の期待に応え、人間の女性でも「彼となら恋に落ちる」と確信できる、魅力的かつ官能的なキャラクターを生み出した。音楽は、『グランド・ブダペスト・ホテル』でオスカーを獲得したアレクサンドル・デスプラ。アナザーワールドへと誘う甘美な音色が、細部まで徹底的にこだわった美術や衣装と一つに溶け合い、観る者はまるで夢の中を泳いでいるようなアメイジングな映像を体験できる。アンデルセンの「人魚姫」から、『シザーハンズ』や『美女と野獣』まで、いつの時代も愛されてきた、種族を超えたラブストーリーの新たなる傑作が誕生した。同時に、不安な世界情勢を抱える現代と重なる1960年代の冷戦下を舞台に、社会からはみ出したアウトサイダーたちの権力への反乱もユーモラスかつサスペンスフルに描く、心躍る人間ドラマとしても唯一無二の作品が完成した。(ストーリー)1962年、アメリカ。政府の極秘研究所に勤めるイライザは、秘かに運び込まれた不思議な生きものを見てしまう。アマゾンで神のように崇められていたという“彼”の魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。子供の頃のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。※R15+監督 ギレルモ・デル・トロ出演 サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、オクタヴィア・スペンサー[上映時間:124分 ]2018年3月21日TOHOシネマズ岡南★★★★http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/sp/「ちはやふるー結びー」ネットの評判がすこぶるいいので、観た。確かに退屈せずに、「チャンスを活かす」「一瞬が永遠になる」とかのメッセージを、青春物語に仕立てていて、しかも退屈しない。いいんだけど、傑作かと問われると、どんなんだろ。結局、松岡茉優VS広瀬すず、賀来賢人VS新田真剣佑との勝負を観たくて、千早の耳の良さがどう活きて行くのか、観たくて期待していたのに、肩透かしを貰った感じ。いやあ、若い女の子はみんな可愛くて良かったんだけどね。(ストーリー)瑞沢高校競技かるた部員の綾瀬千早(広瀬すず)と若宮詩暢(松岡茉優)が、全国大会で激闘を繰り広げてから2年。真島太一(野村周平)、綿谷新(新田真剣佑)らと共に名人・クイーン戦に挑む千早だったが、詩暢と戦えない自分の実力不足を痛感する。そんな中、千早たちの師匠・原田秀雄(國村隼)が史上最強の名人とされる周防久志(賀来賢人)に敗れてしまい、新が彼に挑戦状をたたきつける。その後3年生になった千早は、高校最後の全国大会に向けて動くが……。(キャスト)広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、優希美青、佐野勇斗、清原果耶、松岡茉優、賀来賢人、坂口涼太郎、松田美由紀、國村隼(スタッフ)原作:末次由紀監督・脚本:小泉徳宏音楽:横山克主題歌:Perfume2018年3月23日Movix倉敷★★★☆「ナチュラルウーマン」もっと有為転変があるのかと思いきや、極めてナチュラルに物語が進んで、普通に落ち着いていったので、結局この作品は、(そういえばアップ画面が多い)この「女優」をずっと追いかけるドキュメンタリーなのかもしれない。まさか、あれが全部演技じゃないはず。チリのジェンダー環境は、日本に近い気がする。登場人物の半分ぐらいは彼女を理解している。ラストの犬はどうやって手に入れたのか?彼女は最初からあの劇場の歌手だったのか?等々、突発的な展開が、意見が分かれるところだろう。ただ、このようにじっくりトランスジェンダーに付き合ったのは初めてかもしれない。声とか身体つきとか、じっくり見ると直ぐにオトコだとわかるのだけど、仕草や表情、さらには演技か本心かわからない心は、確かに「オンナ」に思える。しかもホントに美しい。確かにこういう女性に出会ったときは、女性として接しなくちゃならないと、心に誓う。(見どころ)『グロリアの青春』などのセバスティアン・レリオが監督と脚本を担当した人間ドラマ。最愛の恋人をなくし、いわれのない偏見や差別にさらされながらも誇り高く生きるトランスジェンダーの主人公を映す。主演を務めるのは、自身もトランスジェンダーのシンガーであるダニエラ・ベガ。フランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコらが共演している。(あらすじ)ナイトクラブで歌っているトランスジェンダーのシンガー、マリーナ(ダニエラ・ベガ)は、チリの首都サンティアゴで年齢差のある恋人オルランドと同居していた。マリーナの誕生日を祝った晩、家に戻ると急にオルランドの意識が遠のき、そのまま他界する。彼が亡くなったことでマリーナは予想外のトラブルに見舞われ……。2018年3月26日シネマ・クレール★★★★
2018年04月14日
コメント(0)
3月に見た映画の中盤の3作です。3つとも「思ったよりは良かった」。「ロング,ロングバケーション」末期ガンの妻と認知症患者の夫。2人が入院を放り出してルート1号線をひたすら南へ。ヘミングウェイの家のあるフロリダ州キーウェストを目指す。ヘミングウェイは最後に自殺をしたというようなセリフが、冒頭近くに語られるので、全体のトーンはかなり明るいのだけど、わたしはかなり緊張して見ていた。日本やヨーロッパの映画ならば、明るい道行きでもきっと、深刻な問題を提示するはずなのだけど、これがアメリカ映画なのか、最後まで明るい。そもそも認知症患者に長距離運転させるなんて、最初から自殺行為なのだけど、どうやら成立してしまう。ヘレン・ミレンは何度も素顔を晒して、女優魂を見せるし、サザーランドは、まだら模様のアルツハイマー患者を自然に演じていた。ほとんど2人の2人芝居なので、安心して楽しめる。「あなたは英雄よ」。「ア・ムール」と全く両極端の夫婦の姿がある。社会派を拒否する内容なのだけど、2016年の大統領選挙の熱狂を、「強い合衆国を取り戻す」というデモの光景を、なぜ無批判のごとくに取り入れたのか?どうもよくわからない。(しかも、冒頭と中盤2回も!)(解説・ストーリー)元文学教師でアルツハイマー病のジョン(ドナルド・サザーランド)と末期がんの妻エラ(ヘレン・ミレン)の結婚生活は、半世紀を過ぎていた。子供たちもすでに独り立ちして家を出た今こそ二人きりの時間を楽しもうと、彼らは愛車のキャンピングカーで旅に出る。目的地は、ジョンが大好きな作家ヘミングウェイの家があるフロリダのキーウェストで……。『人間の値打ち』などのパオロ・ヴィルズィが監督を務めたロードムービー。原作はアメリカの作家マイケル・ザドゥリアンの小説。『クィーン』などのヘレン・ミレン、『ハンガーゲーム』シリーズなどのドナルド・サザーランドらが出演している。2018年3月18日シネマ・クレール★★★★「北の桜守」あまり話題になっていないので、ガラガラかと思いきや、年配層ばかりだけど、半分くらいの席が埋まっていて、充分に客を呼んでいた。流石、吉永小百合である。日本の誇る最後の映像女優だろう。(ここから突然70代のおっさんになったつもり)良かった。ええもん見させてもらった。昨日今日の若造には、この絵の良さはわからん。きっと若い衆らは、SNSとかなんとかいうもんで、吉永小百合が1人で30代前半から66歳まで描かれるのは無理があるとか、樺太からの避難場面を舞台演出で見せるのは予算削減の幻滅場面だとか書いておるのじゃろう。わしらがボケとるから脚本に舐められておるんじゃと揶揄するものまでおる。サユリストは、なんでも許すんじゃと。それは、映画を「ちゃんと」観ん奴の繰り言じゃ。虚心坦懐によおう観てみい。小百合さまは、老人の動きをしとったか?現在74歳の小百合さまは、身体を張って海に溺れ、野原を駆け、ブリザードの中を歩き、峻烈な山を登っておった。何処も年齢なんて感じさせんかった。それに、舞台演出は、流石に樺太ロケは無理というもんがあったゆうのもあるけど、それ以上に見事な心理描写になっとったろうが。もちろんお涙頂戴場面はあったんかもしれん。わしも、久しぶりにボロボロになったわ。それ以上に、知られざる「北の引き揚げ者」の戦前戦後の苦労を、ここまできちんと見せてくれて、戦争の実像を改めて示すのは、意義あることじゃなかろうか。(以上呟き終わり)北の三部作。監督は全部違うけど、脚本家だけはベテラン女性脚本家の那須真知子。この14年間、彼女の執念が見せた世界だろう。(STORY)1945年、樺太で暮らす江蓮てつ(吉永小百合)は、8月にソ連軍が侵攻してきたために2人の息子と一緒に命からがら北海道の網走まで逃げる。凍てつく寒さと飢えの中、てつたち親子は必死に生き延びるのだった。1971年、アメリカで成功を収めた次男の修二郎(堺雅人)は日本初のホットドッグ店の社長として帰国し、網走へと向かう。(キャスト)吉永小百合、堺雅人、篠原涼子、岸部一徳、高島礼子、永島敏行、笑福亭鶴瓶、中村雅俊、安田顕、野間口徹、毎熊克哉、阿部寛、佐藤浩市(スタッフ)監督:滝田洋二郎脚本:那須真知子舞台演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ音楽:小椋佳、星勝、海田庄吾撮影監督:浜田毅上映時間126分http://www.kitanosakuramori.jp/sp/index.html2018年3月19日Movix倉敷★★★★「リメンバー・ミー」物語の展開は、中盤で既に読み読みなのが弱点だけど、日本のお盆とは違って、なんともカラフル、陽気な「死者の日」の細かい民俗描写、死者の国の見事な造形が、とっても魅力的な作品。マリーゴールドの橋の美しいこと!写真を飾らなくても、生者が死者の事を思い出せば、死者の国で死者は「第二の死」を体験しなくて済むというのならば(そもそも昔は写真なんてなかった)、ミゲルが生者の国に帰った時点でヘクターの願いは聞き入れられるはずという矛盾には、とりあえず目をつむっておこう。年一度しか帰れないのに、みんなパーティを楽しんでいるのも目をつむっておこう。だって、「時を越えて、わたしたちを導き支えてくれた人たちを忘れない」という誓いは真実だから。(STORY)過去の出来事が原因で、家族ともども音楽を禁止されている少年ミゲル。ある日、先祖が家族に会いにくるという死者の日に開催される音楽コンテストに出ることを決める。伝説的ミュージシャンであるデラクルスの霊廟に飾られたギターを手にして出場するが、それを弾いた瞬間にミゲルは死者の国に迷い込んでしまう。元の世界に戻れずに困っていると、ヘクターという謎めいたガイコツが現れ……。キャスト(声の出演)、アンソニー・ゴンサレス、ガエル・ガルシア・ベルナル、ベンジャミン・ブラット、アラナ・ユーバック、レニー・ヴィクター、ハイメ・カミーユ、アナ・オフェリア・ムルギア、ナタリア・コルドバ=バックリー、ソフィア・エスピノーサ、(日本語吹き替え)、石橋陽彩、藤木直人、松雪泰子、大方斐紗子、大抜卓人、カイミ、シシド・カフカ、鈴木拡樹、高柳明音、多田野曜平、立木文彦、チョー、恒松あゆみ、寺田ちひろ、茂木欣一、安野希世乃、渡辺直美(スタッフ)監督・原案:リー・アンクリッチ共同監督・原案・脚本・歌曲:エイドリアン・モリーナ製作:ダーラ・K・アンダーソン製作総指揮:ジョン・ラセター原案・脚本:マシュー・オルドリッチ原案:ジェイソン・カッツ歌曲:クリステン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペス、ジャーメイン・フランコ音楽:マイケル・ジアッキノ上映時間105分2018年3月20日Movix倉敷★★★★
2018年04月13日
コメント(0)
全337件 (337件中 101-150件目)