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「歴史ごはん 縄文~弥生~奈良時代の食事」監修 永山久夫 山本博文 遠藤雅司さんの『歴メシ!』を読んだ時に日本古代メシがなかったので「遠藤さん、是非アジア編を作ってください」とお願いしていたら、日本古代メシをテーマにした本が既にあると知り飛びついた。 本書を開いてガッカリせざるを得なかった。少年向けの大判絵本だからではない。三つしか料理レシピはなくて、しかも古代ファンにはあまりにも有名な料理しか載せていなかったからである。 縄文時代は縄文クッキーならぬ「縄文パン」、弥生時代はしとぎ(白玉饅頭)、そして最近ネットで話題になった牛乳を煮詰めた「蘇」が取り上げられている。ないよりはマシだけど、もっと絶品料理をたくさん出して欲しかった。 もちろん、文献にないからだ、ということは承知している。監修が東大の「偉い」考古学者と料理研究家という「学者」で、著者はいなくて発行社が編集して作っている。中身に情熱がない。考古学には「実験考古学」という分野があるのである。縄文パンを作るなら、混ぜてつくる工夫があっても良いでしょ?縄文時代から煮物を作っていたのは明らかなのだから、その時に考えられる旨味成分を駆使して「旨い料理」を提案することは可能だったのではないか?弥生時代ならば、美味しい「お粥」があっても全然おかしくはない。 博物館の資料を援用して「長屋王の食事」「下級役人の食事」「一般の人々の食事」を写真提供している。材料に少し手を加えたものであり、何の工夫もない。材料は遺物が出ているから根拠あるのだが、そこからもう一歩がないのである。これらは博物館にいる考古学者が考えた料理だ。考古学者の頭の固さには、考古学ファンの私たちは、いつもガッカリさせられている。 奈良時代は、もっと色々レシピが出ていいのではないか?万葉集には、様々な庶民の生活が記されていて、そこから「推理」して料理レシピを作ることは可能なはずだ。また、この本にも写真だけ紹介されているけど、平安時代の最古のお菓子「清浄歓喜団」ならば、既に商品化して売られている。私はこの前京都に行った時に、三十三間堂でそれを手に入れて食べた(一個600円だったかな)。沖縄サンタギーに、様々なお香を詰めたような揚げ菓子だった。 やはり、遠藤雅司さんに登場してもらうしかない。
2020年03月27日
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そこからしばらく歩く。獣道みたいであるが、30年前までは畑を作っていた生活道路だったようだ。しかも、「こんなところに!」と専門家も驚く五輪塔を彫った石碑が辻堂隣にある。平安時代に遡るようだ。重要な道だった可能性がある。 確かに張田は、近世山陽道の要の場所だった。番所もあったらしい。その上が何故重要な道になるのか。どうやら昔、銅が採れていたらしい。それが何時からなのか?もし弥生時代からだとすると、此処に、王墓が集中するのも宜なるかなとも思う。 【大東第二号古墳】にたどり着く。ホントについ最近、2017年に地権者から「そんなモンならこっちにもあるよ」ということで、測量をすると、円墳らしきものが出現。それを更に伐採整備した。すると、前方後円墳らしき形が!全長約34m。形は1、4号古墳と酷似している。 最も大きな大東大仙山古墳と小さな谷を挟んで東隣に存在。非常に興味深いのは、大東1、2、4号古墳共に、同じ向きに向いている。初期古墳は、後円部が県境方面に向いている。それは何故か?その方向には狭まった古代道しかないのではないか? もう一つ謎がある。後円部南に大きな平坦なテラスがあるのだ。これが、もし「造り出し」の初期形態だとしたら、とてつもなく大きな発見だ。どちらにせよ、発掘しないとハッキリしたことはわからない。前方部とテラスでは、葺石らしきものはほとんど当たらず、後円部だけはぎっしりとあったらしい。昭和時代には、この地で畑や家はなかったらしい。 移動途中、猪の罠があった。一人で来るときには気をつけよう。 大東大仙山古墳の前にある墓地も、実は古墳だった(【大東第三号古墳】)。造成時に石棺が出ている。 それをまとめて、墓地の入り口に祀っていた。 さて、【大東大仙山古墳】である。これだけは、教育委員会が立て看板を作成している。ロマンを蘇らせる会が発見したとハッキリ書いている。【訂正】立派な説明板なので、てっきり教育委員会設置かと思いきや、ロマンの会お手製の説明板でした!すみません。節約のために、設置は自力だったようです。1-4号古墳はだから何もしていない。確かに発掘しないと、確かなことがわからないのは理解できるが、大きさや形など今わかっていることだけでも書いていたら、ここまで来てみる人の参考になると思うのだけどなあ。 元は藪だった。 「最初専門家の方は、前方後円墳とは絶対違うよと言っていたんです」 そのあと、伐採整備してもう一度見せたらしい。 「そしたら、一目見て、間違いないよ!と。頭が柔らかいというか、なんというか。でもハッキリ認めてくれたお陰で、前方後円墳と確定しました」 笑うしかない。 全長47メートル。形で言えば、前方部はバチ型。前期(3c後半ー4世紀)に当たり、備後の前方後円墳としては最古になる。築造時点では、備後で最大の可能性がある。現状では、葺石、埴輪は確認されていない。となっていたが、 なんと参加者の小学生たちが、神社の下を探すと、土器片が見つかった。しかも、なんと弥生土器くさい。!!! 説明者の佐藤さんは興奮を隠せない。 これならば、弥生時代の築造の可能性がある。 ないとは言い切れない。何故ならば、讃岐で、弥生時代の前方後円墳が発見されているからである。それはどういう意味か。 一般的に、前方後円墳は、大和政権が地方豪族を従えるための位置づけの意味があった。大和政権が前方後円墳を指導したのである。しかし、その最初期に置いて、実は備後から「前方後円墳の形が発生した」ということになる。様々な前方後円墳形があって、まだ固まっていないこの古墳群がそれを裏付けることになる、のではないか? と、とうとうと述べたものである。まるで、弥生の王墓を発見したかのような説明だった。 とっても新鮮だった。 今まで参加してきた、古墳巡りは全部教育委員会の説明者であり、基本こんな「ロマン」は人前では語らない。 もちろん、ちょっと「危うい言葉」はいくつも出てきたが、素人の私たちは「とっても楽しい」! 後円部前のこの盛り上がりも墳丘墓の可能性があると言っていた。 御領遺跡は、古墳時代の重要遺跡ではない、ことが少なくともハッキリした。弥生時代でも、非常に興味深い遺跡だった。弥生関係だけでも、まだまだ行けていないところがある。帰って、「御領古墳群こふん弁当」を食べさせてもらった。ものすごい手の凝った企画なのに、みんな買わずに帰っていった。スタッフが残りを食べていた。なんでだろ。 私の興味関心は、楯築の王との関係だ。特殊器台は、少し出ているらしい。それを求めて、神辺歴史民俗資料館に出向く。かなり南側の神辺城の隣にひっそりと立っている。城の荒布櫓跡から、神辺の街並みを見る。 神辺歴史民俗資料館。 そこから、御領遺跡を眺める。 日曜日なのに、誰も観覧していない。「40年間展示資料は変わっていないのではないか」とロマンの会の方は言っていた。しかし、さすがに公立の資料館である。重要な遺物があった。 西中条の愛宕山墳丘墓から、特殊壺片が出ていたのである。少なくとも、少しは吉備影響があることがハッキリした。 また、典型的な分銅型土製品も出土していた。 また、御領遺跡から出土した、船絵画土器のレプリカが展示されていた。山道を車でえっさら登ってきた甲斐があった。 御領遺跡の範囲は、こんなに大きい。これからも期待して良さそうだ。
2020年03月25日
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3月22日(日)に、御領の古代ロマンを蘇らせる会主催の「第四次古代探検隊-弥生の王墓を探せ-」に参加した。ちょっと興奮している。早く御領遺跡全体を全面的に発掘するべきだ。 私の興味関心から少し外れる「古墳探検隊」とあるので、実は参加を躊躇していた。でも行って良かった。正に私の興味関心のど真ん中、弥生終末期(かもしれない)の遺跡群であり、もしかしたら、幾つかの大発見を含んでいるかもしれないのである。 【張田遺跡】井原市高屋との境にある金光教芸備教会で集合して二班に分かれて裏山に上る。丑寅神社の上方にある窪地(猪の堀跡・沼田場)から朱塗りの壺(弥生後期後半)が発見された。埋納されていた祭祀土器の可能性が高い。土器棺かもしれない。非常に興味深いし、この上に重要な古墳がたくさんあることを考えると、更に興味深い。 これは見つかった壺。 【大東第一号古墳】急な斜面を登って行くこと、標高130メートル。前から古墳と目されていた遺跡が、この度、前方後円墳型の古墳と判明した。会が古墳周辺を広く伐採整備したことで判明した。後円部は径約18m・高さ約2.5m、前方部は長さ約12m・幅約1.0m・高さ約1-1.5mといった規模が予測。弥生後期前葉の土器が見つかっている。弥生墳丘墓を改変して古墳を作った可能性もあるが、もともと前方後円墳発生期の古墳の可能性も捨てきれない。 此処から、眺望は非常に良い。 更に上がる【大東第四号古墳】がある。明治期の天神社を後円部とし、全長約35m,1号墳と同じ向きと形である。 神社建立の際に、石棺部は消失しているように思える。ただし、神社の両脇の積み石は、主体部の石槨の転用かもしれないし、石碑の土台も石棺の転用かもしれない。 そのうちの一つは、叩くと高い音がするカンカン石(安山岩)である。石棺の蓋によく使われる。二上山からも産出するが、讃岐からも産出する。つまり、讃岐と此処で繋がる。 弥生後期の特殊土器が見つかっている。10センチの小片ではあるが、復元径を推計すると、40センチらしい。大型器台の可能性がある。表面採取なので、なんとも言えないが、弥生首長墓の可能性も捨てきれない。
2020年03月24日
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さて、次に行ったのは、塩津山公園である。ずっと気になっていた、山陰道を通る時トンネル手前から上を見ると見える古墳復元(実際はその下に実物があるらしい)。これは古墳時代前期の塩津1号墳。この地に最初に作られた古墳で方墳だが、四隅突出墓の特徴を残している。 1番期待したのは、ここには6・10号墳と、弥生後期の島根県内最大級(つまり大谷古墳群と同等の40m)の四隅突出墓があるはずなのだ。説明書には、存在は示しているのだが、行ってみても案内板は全然わからない。場所がわからない。古墳と比べてこの扱いはなんなのだ。もちろん藪の中をかき分けしばらく探しましたよ。でも全然かけらさえも見つからない。後でガイドマップをじっくり見ると、場所が微かに確認できた。リベンジ候補。それに隣接する柳・竹ヶ崎遺跡も山陰道でかなり削られたようだが、確認していない。今回下山墳墓群や安養寺墳墓群復元模型も確認できていないので、リベンジするべきだと思う。 車を途中に留めて、中仙寺墳墓群に向かう。駐車場がないというので、かなり遠くから田んぼをテクテク行ったのだが、結局楯築遺跡のように住宅街の丘陵にあり、近くに工夫しながら駐車は出来たと思う。 中規模(含突出27m)の四隅突出墓である。19あったが、二つしかのこっていない。写真は八雲立つ風土記の丘から採っているので、遺物はそこにあるんだっけ。あそこに資料とか揃っているのかなぁ。 そこからテクテク宮山公園へ。4号墳。中規模(含突出30m)の四隅突出墓。 後期の発達したそれで、突出部はシャモジみたいな形をしている。 ここには隣に形のいい前方後方墳があり、 実はその背後の安来第三中学校のところに、出雲で2番目に大きい前方後方墳があった。 また、ここから中仙寺墳墓群も見え、 塩津山墳墓群も見える。この三角形地帯に王陵が固まり、同じ王陵に後代、方墳や前方後方墳を作り、長きにわたって安来王国をつくってきていることがわかる。 この地域は、川と海といくつかの平野に、神奈備山にできるような丘が立ち並び、いかにも弥生王国が出来そうな地域だ。しかも、出雲中心部と肩を並べる四隅突出型墳墳墓群をたくさん作りながら、大谷王国が滅びた後も、滅びた形跡がない。もしかしたら、大和政権の出雲支配の道標役を買って出たのではないか?という憶測も無碍には出来ない感じだ。 ただし、大和政権とは一線を画している。3C後半から4Cにかけて、全国最大級の方墳が相次いで作られている。四隅突出墓の伝統も積極的に引き継ごうという面も見られる。ホントに安来王国は大谷王国を裏切ったのだろうか? また、古墳時代中期から後期にかけて、全国的には激減する前方後方墳が、安来では広がりを見せる。安来王国の位置づけはどうだったのか。 この後、塩津神社古墳を見た。石室だけがのこってある。説明書にもあるように古墳時代後期から終末期に現れた非常に変わった石室だ。 石棺式石室という。土に覆われるべき天井が家形というのが大きな特徴である。かなり複雑な形。この地域の豪族は、土に埋まる前に石室内で儀式をしたのか?ともかく、この地域は、長きにわたって、大和政権の言う通りにはならないぞ、という意識が見え隠れする。 昼になった。米子道は、まだ全面チェーン規制がかかっている。山陰道を帰って、淀江で降りて、久しぶりに妻木晩田のガイドセンターで、新たな図録を買うことにした。 改めてこのジオラマはよく出来ている。 木製品の作り方も、改めてよくわかる。 こじんまりとしているけれども、良いガイドセンターだ。青谷上寺地遺跡のように、大きな展示会を是非して欲しい。図録は、簡便な総合図録しか売っていなかった。とっても残念。1時半、外に出ると雪が降り始めた。鳥取から津山に帰る大回りの道を選ぶ。 大山・道の駅で、蒜山豚で作った生姜焼き定食を食す。あとは、延々鳥取から北へ高速を走り智頭で高速を降りて奈義町へ向かった。峠あたりで、景色が雪景色に一変してヒヤヒヤしたが、道は凍ることなく、なんとか無事に戻れた。判断が良かったと思う。今回は、思わぬ雪で、急ぎ足になったが、温泉はゆったり使えたし、発見もいろいろあって楽しい旅だった。
2020年03月23日
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2020年3月16日 島根の旅 昨晩降り出した雪の影響は、皆生温泉の周りはとりあえずなかった。しかし、米子道が全面チェーン規制だ。困ったことになった。今日中に帰らなくてはならないのだが。朝食は、ホテルらしい格式。ちょうどいい量だった(常備薬を置き忘れた。しょっちゅうである)。 9時出発。前回出雲の旅の時にとりこぼした「安来」(島根県)に行くことにした。あまり時間がない。昼過ぎには帰る体制を取らないといけない。でも、安来の唯一の歴史博物館らしき「安来市立歴史資料館」に赴く。来てみて、わかった。戦国時代の月山富田城跡の真下(白い建物)が資料館なのだ。 この模型を見ると、思った以上にに広大な堂々としたお城だった。戦国時代のお城としては、ピカイチと思う。中世では尼子氏代々の居城として栄え(1467-1566)、尼子氏滅亡以降は毛利氏の山陰地方支配の拠点となる。江戸時代は、堀尾氏が松江城を建てるまで、此処に居たらしい。 帰り、山中鹿介の尼子氏再興を大河ドラマにせよ、と町が全面に力を入れていた。最近の「麒麟が来る」を見ると、可能な気もしてくる。 予想通り、弥生時代展示は両手を伸ばすぐらいしかなかった。吉備器台が出ているのが、特に目を引く。果たして、王墓の祭に吉備特殊器台を使ったのか?だとしたら、出雲大谷墳墓群と同じ扱いということになる。もし、違っていたらそれはそれで考えないといけない。特殊器台がもし「龍信仰」というベースがあるのだとしたら、緩やかな同盟関係にあったとしてみても良いということになる。この資料館に、もし遺物が無くても古代のガイドパンフがあるのを期待していたのだが、それさえも無かった。もちろん図録など一切ない。3人も職員が居るのに、ちょっと情熱が足りないなぁと思う。今回回った博物館で、ここだけコロナのために名前と住所を書かされた。 そのあと、足立美術館の外側だけを見た。あの庭をこの白い箱の中に閉じ込めているのか。太陽光はどうしているんだろう。 荒島駅の近くに、古代出雲王陵の丘というものがあるようだ。そこを目指して行く。資料館で資料が一切手に入らなかったので、そこに行くしかなかった。行くと、ここは目当ての弥生時代ではなく、造山古墳群、つまり古墳時代のものでした。幸いにも、この最初の王陵にガイドマップが置いていた。他の王陵に残っていたのは塩津だけだったので、貴重。このガイドがあるかないかでは、全然違う。どうして安来市立歴史資料館には置いていないのか? 前方後円墳(2号墳、古墳時代後期、50メートル)があるのはわかったが、目当ての前期で1番大きな方墳である1号墳の位置がわからなかった。前方後円墳から出雲地域を眺める。 辛夷の咲く丘陵から宍道湖の中海と、遠く国引き神話の全体像を眺める。 ここで一旦切ります。
2020年03月22日
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「週刊文春3月26日号」 初めて文春を買った。2年前に、森友事件公文書改竄を強制させられて自殺に追い込まれた財務局職員の赤木俊夫さんの手記公表に関する要点は、民放各局で一定報道されているとはいえ、手記の全文をどうしても読みたいと思ったからである。 記事を書いたのは相沢冬樹氏。元NHK。『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』を書いた人だ。赤木夫人から初めて手記の中身を見せられたのは、その著書を上梓する直前の18年11月(赤木俊夫さん自殺の半年後)だったという。しかし、夫人は公表を禁止した。ホントは、この手記を相沢氏に託して自殺するつもりだったという。ところが興奮する相沢氏を見て託すのを止め自殺もやめた。個人的に責任者たちの謝罪と真実追及を求めたが、ダメで三回忌を終えた今年3月に、国と直接の責任者である佐川氏を相手取り提訴に踏み切ったというわけだ。 森友問題は、過去の話ではない。さくら問題やコロナ問題でも『今現在』行われている『公文書改竄・軽視』の始まりであり、その元凶を作った人たちが『誰なのか』『何故なのか』を明らかにする、『今ここにある危機』の話なのである。 赤木俊夫さんが『刑事罰、懲戒処分を受けるべき者』とした人たちは、現在 佐川局長は国税庁長官(のち辞職) 理財局次長は横浜税関長 理財局総務課長は駐英公使 理財局国有財産企画課長は内閣官房内閣参事官 理財局国有財産審理室長は福岡財務支局理財部長 と、みんな出世している。 また、最後に「全責任を負う」と述べゴーサインを出した近畿財務局局長は東京国税局長になっている。 大阪地検特捜部は、全て知っていたが全員不起訴にした。 私はこの数日、黒澤明の『悪い奴ほどよく眠る』(1960)をずっと思い出している。土地開発公団汚職で殺された父親の仇をとるために、副総裁の秘書に潜り込んだ西(三船敏郎)の八面六臂の暗躍と悲しい結末を描き、最後副総裁は記者に「申し分のない秘書を、しかも、娘の婿を失って呆然自失--」とつぶやくのである。赤木さんの手記に対して、白々と哀悼の意を評した某大臣や某首相を見て、憤慨やり方なかった。 キモとなるところは、日にちどころか、時間まで書いていて、名前も全て実名である。改竄をやった人たちは、「刑事訴追があるので明らかに出来ない」等々ともう言えない。もはや公人でもない佐川(とはいえ、何らかの鎖を掛けられている可能性はあるが)は、今度こそ公の場で全ての真実を、ほんの少しでも良心があるならば、「ぼくの契約相手は国民です」といった赤木俊夫さんの死を無駄にしないためにも、明らかにしてほしい。
2020年03月21日
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今月の映画評です。 「パットマン 5億人の女性を救った男」 ダークヒーローのバットマンではありません。PADマンです。変身もしません。でも5億人いると言われるインドの女性を救う能力があるのは、ウソではありません。1人の真面目で、妻をこよなく愛する男の奮闘が描かれています。 ラクシュミは、貧しくて生理用ナプキンが買えずに不衛生な布で処置をしている最愛の妻を救うため、清潔で安価なナプキンを手作りすることを思いつきます。研究とリサーチに日々明け暮れる彼の行動は、村の人々から奇異な目で見られ、妻にも嫌われます。インドの田舎では生理を口にすること自体が「タブー」なのです。ついには彼は村を離れるまでの事態に…。それでも諦めることのなかったラクシュミは、彼の熱意に賛同した女性バリーとの出会いと協力もあり、ついに低コストでナプキンを大量生産できる機械を発明します。私利私慾のないラクシュミは特許を企業に売り渡しませんでした。農村の女性たちに製造機を使ってもらいナプキンを作り販売して、雇用もつくっていくのです。結果、55ルピーだったナプキンを2ルピーで作り、ナプキン普及率は12%から18%まで高まります。 まるでかなり昔のインドのように思えますが、なんと2001年から始まる話なのです。 生理現象を「穢れ」と考えて、普通の生活と隔離する風習は珍しくありません。皆さんは知っているでしょうか?日本でも昭和初めまでは普通に「月経小屋」が存在していました。しかし100年遅れているからといってインドをなめてはいけません。ナプキンの情報を取り寄せるのは、子供が持っていたPCからでした。インドには日本の10倍の10億の人間がいるそうです。「インドは遅れているのではない。10億の頭脳があり、可能性がある」とラクシュミに発明大賞を授けた人が言っていました。その通りだと思います。 クライマックスで、ラクシュミが片言英語で語った国連演説が素晴らしいものでした。 「金持ちは自分を幸せにするだけ。いいことをすると、みんなを幸せにする。女性には、5日間のトラブル(生理)があり、その間仕事ができません。1年で60日、2ヶ月がムダになります。ナプキンがあれば2ヶ月活躍できる。私が思うに、偉大な男、強い男、国を強くしない。女性が強くなれば国も強くなれる」 最近のインド映画は侮れません。(2018年インド映画、R.バールキ作品、レンタル可能)
2020年03月20日
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2020年3月15日鳥取の旅(2) 9号線通って青谷へ。ここにしかないと思われる図録を買うためだが、きてよかった。先ずは、食事。展示館横の物産館の人に教えてもらって古代米カレーを食べた。コーヒー&カレー五島(青谷4928-1)920円。物産館で貰ったチケットで、食後コーヒーが無料。 青谷上寺地展示館の展示は流石に出払っていて、しょぼいものだったが、それでも面白いものがいくつかあった。 特に、この(実物は鳥取にあった)の籠の複製品は改めて凄いと思う。 実際の遺跡に久しぶりに行く。遠景。 近景。 ホントはアプリで、発掘途中の写真共に見せれるはずだった。ところが上手く作動しない。直ぐに固まる。(後で岡山県に帰って作動させると、なんとか動いたので、アプリもまだまだだけど、青谷の通信環境も良くなかったのかもしれない)説明版と一緒に見せる。 バイパスで米子へ。 米子山陰歴史館は、元米子市庁のようだ。 いわゆる、洋風建築。 妻木晩田の展示があることで行ったのだが、パネル展示だけだった。ガッカリ。 青谷の古代道の発掘様子が載っていた。 ホテル松月に着いた。皆生温泉である。わりといいホテルだが、一泊朝食付きを6600円という安さはコロナの影響ではない。曜日と部屋の位置のためだという。ホテルから伯耆大山を眺める。この時はまだ天気が良かった。 夕食は、高い和食屋はとても手が出せないのだ、安いと思われる居酒屋に入った。 「景気はどうですか」 「全然ダメですわ」 ビールと、おまけのような蟹味噌と、焼き鳥だけで2100円も取られた。親父の生活費だと思って喜んで払う。帰りに、コンビニでビールと美味しいつまみ三点700円を買って帰宅に着く。 6600円だけど、家族風呂サービスがつく。必要ないけど、後学(?)のために入ることにした。勉強になった。 風呂から出ると、ボタン雪が降り出した。皆生温泉周りでさえ積もりそうな勢い。明日、私は大山のそばを通って帰れるのだろうか。
2020年03月18日
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鳥取の旅 2020年3月15日(日)曇りのち雨 8時に家を出て、3時間半車を飛ばして鳥取日市に着いた。智頭から高速自動車道が通っていてびっくりした。 鳥取博物館はちゃんと予定通り「青谷上寺地遺跡の世界」を開催した。 どうやら重要文化財指定遺物記念展らしく、指定された重要文化財がわんさか展示されている。 無料のミニパンフはあったが、1/3ぐらいしか解説されていない。やはり、図録か欲しかった。 それでも、パネル展示の「説明」は、この間の研究成果が非常にわかりやすく書かれていて、とってもおすすめです。私は既に何度も見てきた遺物が多いので、これを見るだけでも意味があったと思う。 その他の気になる展示は例えばこんなもの。まぁ面白かった。脳がまるまる保存されていた骸骨と、青谷にもあった分銅型土製品。 鳥取博物館には、ダイオウイカと70年近く生きた大山椒魚の剥製が展示されている。 博物館の外に出ると、ここは鳥取城跡に建てられていて、仁風荘?という明治建築風の建物が風情を出していた。
2020年03月17日
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「プレゼント」若竹七海 中央公論社 アラサー、アラフォーの葉村晶を読んできたので、次は彼女のデビューを読みたいと思って図書館を探したならば、置いてなかったのでリクエストすると「他の図書館にあるので、借用します」とメールが来た。文庫本が欲しかったのだが、単行本が来た。表紙の絵を見ると「純粋にミステリを愉しんで欲しい、これはキャラを愛でる短編集ではないのですよ」という編集者の意図を感じる。因みに表と裏の絵(装幀 藤田新策)は、色使いだけでなく微妙に内容も変わっているのだけど、意味はわからない。誰か解説してほしい。 葉村晶と小林舜太郎警部補のダブル主演である。そういう作品から、一方だけスターダムにのし上がるというのが、世の中の皮肉というものだろう(因みに警部補の部下で完全脇役の御子柴くんもシリーズ化されてしまった。警部補はその2作に出演して以降は一切世の中には出ていないそうだ)。 94年段階で、葉村晶は26歳である。デビュー作ならぬ、初登場作には、その人の「全て」が詰まっていると、亡くなった祖父が言っていた(ウソ)。その仮説から言えば「プレゼント」ではなく「海の底」を解説しなくてはならない。 このとき葉村晶はフリーターで、大学は出たけれども、どうやら一度も定職に就かず「かといってなにかやりたいことがあるわけでもなく、ただ同じ仕事を続けるのが嫌なあまり転々と職を変え続けている」女性らしい。探偵社に就職するのも第3作目にしてやっとである。「海の底」では、ノンフィクション・ライターとして編集者から一目置かれている。アルバイトで培った技術なのか染み抜きも得意としている。無職の女性として初登場した。ある高級ホテルに呼び出されて、看板作家が突然消えたので血のついた絨毯の染み抜きをして帰って欲しい、と編集者に頼まれた訳だ。もちろん、事件の匂いはぷんぷんしているが、葉村晶の染み抜き仕事に手抜きはない。もちろん、いろんな矛盾をさりげなく探るのも手抜きはない。見事な登場でした。 初登場作から、仕事は完璧だけど、自己肯定感の少ないキャラは確定している。ただし、好奇心は旺盛である。男関係が一度もなかったわけではないことは、「あんたのせいよ」で明らかになった。まぁ男も体験してみるか、というノリだったようだ。彼女は、最初からずっと独りで生きていこうと決心している様子がある。その点では頑固なのである。探偵の仕事にもあまり拘りはない。 このままだと、葉村晶シリーズ、あっという間に読み終わりそうだ。1年間も楽しめない。困ったことになった。
2020年03月16日
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「プチ哲学」文と絵 佐藤雅彦 中公文庫 無印良品には言葉や生活をテーマにして、厳選書籍を置いている店舗がある。年数回、フリーペーパー「縄文ZIN」を無料で頂くついでに、その棚を眺めて気に入ったものを買うこともある。よって、この本は最近の本ではない(2004年発行)。でもそこで買った本で外れたことはない。 「プチ哲学」とは、哲学紹介とか哲学要約とか哲学入門とかの意味ではない。 全部で31章。たいていは4ページ建て。見出し、著者が描いた可愛い絵のエピソード、解説から成ります。例えば「12 ツバメの実習」。電線に止まっている燕の親子の会話「お母さん、ボクあんなに速く動いている虫とれないよ」下には5匹ほどの虫がブーンと速く飛んでいます。「だいじょうぶよ」とお母さんは言っています。→次のページでは、親子飛んでいるけど、とまっているようにも見えます。虫も9匹ほどの・として描いています。お母さん「ほら速く飛べば虫は止まって見えるのよ」。→次のページを開くと、「今回のテーマ 動いているものは動いている者にしか見えない」と書いて新幹線の例とか挙げて解説しています。そして結論は「この世の中で、なにが1番ビビッドに動いているか知りたいとしたら、自分自身もビビッドに動いていないといけません」となるのです。 「あぁなるほど」となりますか?私は、そんな風に納得してはいけないんだと、最後まであっという間に読めますから、全部読んで見て思いました。そんな「処世術」を結論にしていいんだろうか?これは実は「相対性理論」の解説ではないだろうか?時間の速さは実は相対的なものであり、見方を変えると別の世界が広がることを描いているのではないか? この本の解説欄は、実はかなりいい加減です。でも、大抵は「おっと、そういう見方があったか!」というのを狙って書いている気がします。 最後の章は、「オリーブは、アイラブで出来ている」ということを解説していました。ちょっと考えてみてください。決して「世界の真実」じゃないけど、楽しいじゃないですか?
2020年03月15日
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「ビッグイシュー378号」ゲット! 表紙はレネー・ゼルヴィガー。「ジュディ 虹の彼方に」で、アカデミー主演女優賞を獲った。この前観た。どうしてもブリジット・ジョーンズのまるまる太った彼女のイメージがあるので、ガリガリに痩せて、短髪、濃い化粧、年寄りじみたジュディ・ガーランド役に違和感を持った。ほとんど別人だ。それもそのはず、鼻も付け鼻だった。 何故ゼルヴィガーでなくてはいけなかったのか?それは、この記事ではわからない。ただ、彼女は挑戦して成し遂げた。挑戦してきた女優なのかもしれない。歌も上手かった。もっとも、晩年の嗄れ声の彼女の歌はピークのジュディとは違うらしかったらしいが。だからこそ、最後の「虹の彼方に」は途中で終わっても打つものがあった。名実とものオスカー女優。次を期待させる女優である。 「10年目のふくしま」。昨日、常盤線が繋がった。あれからまだ一回も東北に行っていない。都会の神戸とは全く違う時間が流れているのは明らかなのだが、行く時間と金と心の余裕は、まだない。いつか「行かねばならない」。ここの幾つかの記事を読んでそう思う。
2020年03月14日
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「ナウシカ考 風の谷の黙示録」赤坂憲雄 岩波書店 表紙は第5巻のナウシカの呟きを採っている。 虚無にいわれるまでもなく 私達が 呪われた種族なのは 判っている 大地を傷つけ 奪いとり 汚し 焼き尽くすだけの もっとも醜いいきもの この後、虚無的になったナウシカはメーヴェに乗って王蟲のところへ行き、大海嘯の後に腐海の苗床になり大地の傷を癒そうとしている王蟲と共に、腐海の一部になろうと沈んでゆくのである。その瞬間、王蟲はナウシカを救うためにナウシカを食べる。 もはやナウシカは、青き衣をまとった救世主ではなく、滅びゆく世界の仕組みを探し求める旅人でしかない。宮崎駿が、戸惑い探りながら作り上げた神話的物語。‥‥なんのことやらわかんないですよね。基本はやはり全7巻を読んでもらうか、この本をじっくり読むしかない(絵は少ないが、台詞はかなり採用している)。 どうやら初めて本格的に現れたマンガ版「風の谷のナウシカ」論らしい。82年に連載開始、何度もの中断のあとに94年に全7巻が完結。「アニメと原作は全くの別物である」ことは、知る人ぞ知られている。私は、最終巻は特に暗く難解で、正直戸惑った。どう言葉にしていいのかわからないままに本棚の奥に仕舞われて25年が経った。 そのあと「もののけ姫」(98年)は、正にマンガ版ナウシカだと私は思ったものだが、それさえも宮崎駿は否定して行った。もちろん宮崎駿の暗い衝動は、鈴木プロデューサーの仕掛けで巧妙に隠されている。この本は、直近アニメとの関連は、ほとんど言及されていない。残された課題は、そこだろう。 赤坂憲雄は、私の比較的信頼する民俗学者である。もちろん、民俗学含む人類学のバイアスがかなり掛かっていて、もう少し別の読み方も出来る余地があると私は思っている。ただし、赤坂氏も言うように「裏読み」的な読み方(隠されたメッセージを探る→マニアックな読み方)には、私も与(くみ)しない。絵も含めた物語と直に向き合う。豊穣な物語世界が、この全7巻の中にあることを改めて確認させて貰った。 短い書評で、赤坂憲雄版「ナウシカ論」を紹介することはできない。「ナウシカ」は反黙示録である。と言っても、なんことやらさっぱりわからないでしょ?私的には、最後の巨神兵が何故あんな「変容」を遂げたのか、今回やっと言葉でなんとか説明できる気がしてきた。とっても面白かった、とだけ言っておこう。 ※本の趣旨とは関係ない処で啓示を貰うのは、読書の喜びのひとつである。文字を持たないナウシカ的世界の中で、文字がいかに世界を支配して変えようとしたかを、「ナウシカ」はもしかしたら見事に描いていたかもしれない。日本の古代、弥生時代は、もしかしたら意識的に文字を拒否していた可能性がある。もう一度、埃を被った本棚から引っ張り出して読む必要があるだろう。
2020年03月13日
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「黄昏の岸 暁の天」小野不由美 新潮文庫 今回は、十二国記最大の事件の「序章」である。事件が今までの物語の焼き直しになるのか?それとも新しい地平が広がるのか?は紐解いてみなくてはわからない(王朝の立て直しや盛衰はこれ迄も書かれたので、焼き直しの可能性も捨てきれない)。この巻だけでも「魔性の子」「風の海 迷宮の岸」「風の万里 黎明の空」「華胥の幽夢」とリンクしていて、10年越しの「構想」の下に書かれたことがわかる。 ところが、この巻から18年経ってやっと続きの全4巻が上梓された。ファンの想いは如何程だったか、私には想像だに出来ない。十二国にとって、28-30年などの時は一瞬である。読者も試されたのかもしれない。実際は、あっという間に200万部が売れた。蓋し、最今出版業界の奇観であった。‥‥いかん、又前振りが長くなっている。 荒筋や見どころは、ほかのレビュアーのそれを見てもらうとして、この巻でひとつ大きな前進を見せた綱目がある。それは「天とは何か」ということだ。様々な人物が様々に語っているが、私は以下の会話を引用してみよう。 「世界には条理がある。それに背けば罪に当たり、罰が下されることになる」 「でも、遵帝の行為を罪だと認めたのは誰なんだ?罰を下したのは?誰かいるはずだろう?」 「とは限らないだろ。例えば王と宰輔はその登極に当たり、階を昇る。陽子も昇ったろう。天勅を受ける、というあれだ。それまで知らなかったはずのことが、頭の中に書き込まれる。そのときに、王と宰輔の身体の中に、条理が仕込まれた、と考えることもできる。天の条理に背けば、あらかじめ定められた報いが発動するよう、身体の中に仕込まれていると考えれば、少なくとも遵帝を見守り、その正否を判じ、罰を下す決断をした何者かの存在は必要ではなくなる」 「御璽は?」 「同様に御璽に仕込まれていると考えることはできるだろ?」 「それでも問題は同じなんじゃないのか?全てを仕込んだー仕込むべく用意したのは誰なんだ?」 さてなあ、と六太は宙を仰いだ。 「天帝がそれだ、と俺たちは説明するわけだが、実際のところ、俺は天帝に会ったという奴を知らないんだよな‥‥」(288p) 500年生きている延麒六太と、この間まで高校生で景王となってまだ3年も経っていない陽子の、「現代的な」十二国分析は、多くの処が「当たっている」と私は見る。十二国世界は、彼らが観るように非常にシステマチックである。 ー「天帝」はいない それが、私の推論である。 えっ?それならば「誰が仕込んだんだ?」 おそらく、十二国シリーズ最後になっても、それは明らかにならないのではないか? と、私は推論している。 この最後の長編で、それにどこまで接近するのか?それが私的に最大の見どころである。結果がどうなろうとも、私は私の推論を最後の辺りに発表したい。 年表(加筆訂正) 1400年ごろ 奏国宗王先新が登極 妻と3人の子仙籍に入る 才国遵帝「覿面の罪」により斃れる 1470年 六太4歳延麒となる。 1479年(大化元年) 雁国延王尚隆が登極 1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺 1700年ごろ 範国氾王登極 ーX96年 柳国劉王露峰が登極 ーX75年 恭国供王珠晶が登極 ーX 25年 舜国の王登極 ーX18年ごろ 芳国峯王仲韃登極 才国采王砥尚登極 X元年 泰麒 胎果として日本に流される X2年 才国采王砥尚崩御 才国采王黄姑が登極 X9年末 慶国予王が登極 X10年 泰麒 2月蓬山に戻る 戴国泰王驍宗が登極 X11年 泰王驍宗文州の乱に出向いて行方不明 泰麒 鳴蝕により戴から消える X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 芳国の麒麟卵果が触により流される X14年 5月慶国予王崩御 X15年(1992年?)陽子日本より来たる 10月慶国景王陽子が登極 X 16年 功国塙王崩御 慶国で和州の乱 X17年 泰麒 9月蓬莱国(日本)より帰還
2020年03月11日
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後半の3作品。いずれも力作でした。 「37セカンズ」 当たりです。見逃してはいけない作品です。MOVIXとイオンシネマでやっている。おそらく、もうすぐ切られると思います。急いでください。 主演は、身体に障害を持つ女性たちを日本全国で一般公募し、約100名の応募者の中から監督に見出された佳山明が務める。生まれた時、息をしていなかった時間が37秒だった、とユマはラスト近くで呟く。そのせいで脳性麻痺になったと。どういう気持ちでそれを呟いたのか。見事な説得力を持って、ラストの母との対面に持ってゆく。新人監督HIKARIの力量。今年度、邦画の中では今のところマイベスト。 (ストーリー) 23歳の貴田ユマ(佳山明)は、生まれたときに37秒間呼吸が止まったため、手足を自由に動かすことができない。親友で漫画家のゴーストライターをしているが、自分の作品を出せないことに複雑な気持ちを抱いていた。ユマは、過保護な母・恭子(神野三鈴)のもとで閉ざされた生活を送っている。 (キャスト) 佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏 (スタッフ) 監督・脚本・企画・プロデューサー:HIKARI 挿入歌:CHAI 企画・プロデューサー:山口晋 2020年2月16日 MOVIX倉敷 ★★★★★ 「1917 命をかけた伝令」 比較的最初から、こんな状況に放り込まれたら「世界は地獄だ」という信条に鞍替えするだろうと思った。それは即ち、終始個人の目線で、最前線の世界を映しているからそう思わせるので合って、明らかに監督の意図が成功している証左だろう。 現代の戦争と違い、第一次世界大戦は、戦車や爆撃機は未だ発達していなくて、日露戦争と同じに、肉弾戦の陣地とりごっこだった。兵士はどんどん死んでいった。馬も牛も人も、肉体として土の上に取りこなされて腐ってゆく。 時は春。時折桜の花びらが散る風景が悲しい。 正午の休憩から午前の前線攻撃の直後までの約1日を、まるでワンカットのように撮り編集した狙いは良かったと思う。これは地獄だ。何故、人類は地獄を繰り返すのだろう。 (ストーリー) 第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙(たいじ)する中、イギリス軍兵士のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に、ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えていた。 (キャスト) ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロング、アンドリュー・スコット、リチャード・マッデン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ (スタッフ) 監督・脚本・製作:サム・メンデス 脚本:クリスティ・ウィルソン=ケアンズ 撮影監督:ロジャー・ディーキンス プロダクションデザイン:デニス・ガスナー 編集:リー・スミス 衣装:ジャクリーン・デュラン、デイビッド・クロスマン 音楽:トーマス・ニューマン 2020年2月20日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「スキャンダル」 セロン様が美しくない。いつもテレビで見ているキャスターに似せるためとはいえ、アカデミー賞の辻一弘のメイクとはいえ、最初は見間違いと思った。しかも冒頭「ニュース映像以外は、名前が違う場合もあるし、セリフや場面も違う場合もある」と断りが入っている。つまりは「それ以外は」事実である、と断っているわけだ。いやあ、なかなかえげつない作品である。 たった3年前の出来事も映画にしてしまう。日本の映画界も、このぐらいの貪欲さ(つまりモリカケ問題とか)を見せて欲しい。 (ストーリー) 大手テレビ局FOXニュースの元人気キャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、CEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラで提訴する。メディアが騒然とする中、局の看板番組を背負うキャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、今の地位をつかむまでの軌跡を振り返って動揺していた。一方、メインキャスターの座を狙うケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)は、ロジャーと対面する機会を得る。 (キャスト) シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー、ケイト・マッキノン、コニー・ブリットン、マルコム・マクダウェル、アリソン・ジャネイ (スタッフ) 監督:ジェイ・ローチ 脚本:チャールズ・ランドルフ 製作総指揮:ミーガン・エリソン、ジェイソン・クロース、リチャード・マコーネル (解説) 密やかな爆弾は彼女の「告白」で着火した― 全米最大のTV局を揺るがした 衝撃のスキャンダルの全貌が暴かれる! 2016年、アメリカニュース放送局で視聴率NO.1を誇る「FOXニュース」に激震が走った! クビを言い渡されたベテランキャスターのグレッチェン・カールソンが、TV業界の帝王と崇められるCEOのロジャー・エイルズを告発したのだ。騒然とする局内。看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリーは、自身の成功までの過程を振り返り心中穏やかではなくなっていた。一方、メインキャスターの座を狙う貪欲な若手のケイラは、ロジャーに直談判するための機会を得て――。 実在のスキャンダルを描いた本作、この事件を葬ってはならないと決意した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアカデミー賞受賞脚本家がシナリオを書き上げ、シャーリーズ・セロンがプロデューサーに名乗りを上げ、遂に映画化が実現! シャーリーズ自らがメーガン・ケリーを演じ、アカデミー賞に輝いた『モンスター』を超える演技と絶賛される。グレッチェン・カールソンには、アカデミー賞女優のニコール・キッドマン。ケイラ・ポスピシルには、アカデミー賞にノミネートされた今旬女優のマーゴット・ロビー。その驚異の再現度を実現させたのは、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を日本人として初めて受賞したカズ・ヒロ(辻一弘)。今のハリウッドを背負う3大女優が、それぞれ立場も年代も違う女たちの、華麗なる戦いと逆転劇を鮮やかに体現した、本年度必見の傑作 いよいよ公開!! メーガン・ケリー Megyn Kelly メーガン・ケリー Megyn Kelly 1970年11月18日、イリノイ州出身。シラキュース大学に進学後、オールバニロースクール法科大学校から法務博士の学位を得る。ジャーナリストであり元企業弁護士。2004年から2017年までFOXニュースで「AmericaLivewithMegyn Kelly」や「TheKellyFile」などでニュースアンカーを務めた。2016年グレッチェン・カールソンのロジャー・エイルズへのセクハラ告発の流れを受け、自身の過去のセクハラ被害についても公にする。2017年1月にはFOXニュースを去り、NBCニュースに参加。「Megyn Kelly Today」で2018年10月末までホストを務める。2019年1月にはNBCとの契約を終了。プライベートでは、2008年に当時は実業家で現在は小説家となったダグラス・ブラントと再婚し、3人の子供がいる。 グレッチェン・カールソン Gretchen Carlson グレッチェン・カールソン Gretchen Carlson 1966年6月21日、ミネソタ州出身。スタンフォード大学を優等で卒業。ミス・ミネソタを経て1989年にミス・アメリカに輝いた才色兼備。テレビ司会者、ジャーナリスト、および著者。私生活では1997年に結婚、子供が2人。FOXニュースの朝の番組「Fox&Friends」(02~13)の顔として11年にわたり活躍した後、昼の番組「The Real Story」(13~16)でアンカーを務めた。2016年7月6日、FOXニュースの会長兼CEOのロジャー・エイルズをセクハラで提訴。2016年7月21日にエイルズがCEOを辞任したことを受け、21世紀フォックス側と和解。和解金は2000万ドル(20億以上)だと伝えられている。FOX側との和解における秘密保持条項のために、過去の詳細について直接話したりすることは禁じられているため、「TheLoudestVoice」や『スキャンダル』に意見することはできない。 ロジャー・エイルズ Roger Ailes ロジャー・エイルズ Roger Ailes 1940年5月15日、オハイオ州の出身。リチャード・ニクソン、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュら歴代共和党大統領のメディアコンサルタントとして辣腕をふるった後、ニューズ・コーポレーション会長のルパート・マードックに招かれ、FOXニュース・チャンネルの設立と共に初代CEOに就任。96年より放送を開始し、同局を米ニュース専門ケーブルテレビ局で視聴率トップを誇る一大チャンネルへと成長させる一方、アメリカの保守政治に絶大な影響を与えてきた。少なくとも20人の女性からセクハラ被害を訴えられ、疑惑は否定しながらも、2016年7月21日にCEOを辞任。辞任してからは大統領選の共和党候補のドナルド・トランプのキャンペーン顧問となり、助言役に。血友病により悪化した硬膜下血腫で、2017年5月18日に77歳で死去。妻との間には子供が1人。 2020年2月29日 MOVIX倉敷 ★★★★
2020年03月10日
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2月に観た映画はたった6作品でした。2回に分けて紹介します。 「AI崩壊」 「AIは人を幸せにすると思いますか?」 2030年、AIが仕事を奪い「現代のラッタイト騒動」が常時起きる、しかも5 0%の人しか労働価値のない社会になっていた。という設定自体にちょっと拒否感が起きる。それに託けて、人の選別を始める。うまくしたら保安条例も成立させる。それは既視感がある。 「その質問に対しては、こう言い換えることもできるかな。親は子供を幸せに出来るだろうか?」親と子供が反対のような気がするけど、まぁそんなところでしょ。 (ストーリー) 天才科学者の桐生(大沢たかお)が開発した医療AI「のぞみ」が、国民の膨大な個人データを基に、人間を選別し殺りくを始める。人々がパニックに陥る中、AIを暴走させたテロリストと断定された桐生は逃走を図るが、警察のAI監視システムによって徐々に追い詰められていく。一方、桐生の義弟で「のぞみ」を運営する企業の代表を務める西村(賀来賢人)は、事態の収束に動いていた。 (キャスト) 大沢たかお、賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典、高嶋政宏、芦名星、玉城ティナ、余貴美子、松嶋菜々子、三浦友和 (スタッフ) 監督・脚本:入江悠 企画・プロデューサー:北島直明 上映時間 131分 (C) 2019映画 2020年2月2日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」 名探偵ほどの推理は働かなかったけど、ミステリの王道の物語なので、幾つかのことを気をつけておけば、自ずと犯人は絞られてくる。 (1)序盤で殺人動機が出たら、その人物は除外される。 (2)自殺、殺人も視野に入れる場合、全てを目論んだのは、被害者自身であることを視野に入れておかなくてはいけない。 (3)序盤で、被疑者には「嘘をつくと吐く」という仕掛けがは入っているならば、それ自体も嘘であることを視野に入れておかなくてはならない。 (4)中盤まで被疑者にならなかった人物は、怪しまなくてはならない。 (5)犯人は基本的に有名俳優である。 (6)探偵自体も犯人であることを視野に入れておかなくてはならない。以下かなりのヒント(回答ではない)を書くので、注意を! さて、疑うべきはこの6点として、全てを潰していけば自ずと犯人は出てくる。(3)は、中盤1人密かに吐いたことで、、疑いが晴れた。だとすると、彼女の証言は全て真実である。そこから、(2)はなくなる。(6)とすると、終盤まで何の伏線もないのはおかしいのでなくなる。(1)(5)を考えると、犯人は1人だ。 ちょっと単純かな。 ところで、題名の付け方が不満だ。 (ストーリー) NYの豪邸で世界的ミステリー作家の85歳の誕生日パーティーが開かれた翌朝、彼が遺体で発見される。名探偵ブノワ・ブランは、匿名の人物からこの事件の調査依頼を受けることになる。パーティーに参加していた資産家の家族や看護師、家政婦ら屋敷にいた全員が第一容疑者。調査が進むうちに名探偵が家族のもつれた謎を解き明かし、事件の真相に迫っていく―。 監督 ライアン・ジョンソン 出演 ダニエル・クレイグ、クリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス、ジェイミー・リー・カーティス、トニ・コレット、ドン・ジョンソン、マイケル・シャノン、キース・スタンフィールド、キャサリン・ラングフォード [ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 上映時間:131分 ] 2020年2月9日 シネマ・クレール ★★★★ 「ヲタクに恋は難しい」 まぁある意味私もオタクなわけだから、ヲタクだからといって偏見を持つわけではないけど、これを「ララランド」ギャグのミュージカルでやろうという発想は、映画ファンとして如何なものかと思う。あまりにもクオリティなさすぎ。それもギャグなんかもしれないけど、笑えない。 ヲタク世界で、エヴァの位置の高さを改めて感じた。他には、銀英、召喚もの、当然BL、もちろん私は彼らの「言語」の8割はわかりませんでした。 高畑充希ちゃんを大画面で観れたのは「眼福!」。 (STORY) 26歳の会社員・桃瀬成海(高畑充希)は、転職先で幼なじみの二藤宏嵩(山崎賢人)と再会する。イケメンで仕事もバリバリこなす宏嵩はかなりのゲームヲタクで、成海もボーイズラブを愛する隠れ腐女子だった。成海は周りの人にヲタクと知られる“ヲタバレ”を恐れており、家族や友人にも内緒にしていた。 (キャスト) 高畑充希、山崎賢人、菜々緒、賀来賢人、今田美桜、若月佑美、ムロツヨシ、佐藤二朗、斎藤工 (スタッフ) 原作:ふじた 脚本・監督:福田雄一 ミュージカル作曲編曲:鷺巣詩郎 ミュージカル作詞:及川眠子、藤林聖子、福田雄一 2020年2月15日 MOVIX倉敷 ★★★
2020年03月09日
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「ビッグイシュー377号」ゲット! 特集は「考える動物たち」。リード文は以下の通り。 ヒトは他の動物より優越した存在でしょうか? 実際には、紫外線が見える昆虫や鳥類、光の振動方向が見えるハトやミツバチ、においの感受性が高く超音波も聞き取れるイヌなど、多彩な能力をもちます。イヌやネコを飼っている人は、彼らに「心」の構成要素、「知」「情」「意」があると感じているに違いありません。 19世紀にダーウィンが『種の起源』を出版。20世紀初頭から、人間の心理学に先行して“動物の心の働き”を調べる「動物心理学」の研究がすすめられ、1世紀を経た今、その問いへ実証的に答えられるようになってきたといいます。 牛谷智一さん(千葉大学准教授)に「動物心理学とは何か? 動物の空間認識、ヒトと動物の脳の共通構造」などについて、また渡辺安里依さん(千葉大学助教)に「動物のメタ認知、エピソード記憶」などについて聞きました。 今、気候危機を引き起こしているのはヒト。地球の生態系を構成する仲間である動物たちの心を知りたいと思います。 かつて「死を悼む動物たち」について書いた本をメタメタに批判した私ですが、この特集に危惧していた「死を悼む」話題がひとつもなかったことに安堵した。つくづくアレは非科学的な本だったなぁと思う。たまたま目にした事例を持って「そういう感情がある」と本を書く学者の存在がある。それがまた、文庫本にまでなって世界的に売れる。オカシイと思う。一方、動物の「記憶」「認知」「感情」は、サンプルとして科学的に観察できる範囲で言えば、信頼して「ある」と言っていいと思う。 今年の邦画映画今のところNo. 1の「37セカンズ」の記事は大変参考になった。監督は主演の佳山明(めい)さんに出会って、ラブストーリーだった元の脚本を変えて全く別の話にしたらしい。私も、ラブストーリーにならなかったのが、この作品を良いものにしたと思っていたので、成る程と思った。 大阪心斎橋(心斎橋マンション404号室)にある「人生図書館」(田中希代子館長)の記事も良かった。今のところ、200冊の本全てに「人生で心に残った本」「命の大切さを感じた本」などのテーマで寄贈した人のメッセージがついているという。良いなあ、非常に良い!是非行きたい!私も何か一冊寄贈したい!平日9ー18時開館。 4月1日号からビッグイシュー価格が100円上がって450円になるという。私は買い続けます。
2020年03月08日
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「ビッグイシュー376号」ゲット! 表紙は美女レイチェル・ワイズ。彼女がプロデュースした「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」は、岡山にはやってこない。残念。 ただし、もう終わったが、諏訪敦彦監督の「風の電話」の記事もあった。良い映画だった。が、あの台詞が台詞を役者任せにしていたとは思いもしなかった。呉の原爆を記憶する老女の台詞、クルド族難民を求める人々の台詞、西田敏行の台詞、そして最後のハルの台詞。そうやって思い出すと、すごい映画だった。 特集は「世論調査と社会」。リード文は以下の通り。 世論調査による内閣支持率や政党支持率が、新聞やネットで定期的に発表されています。その結果については、周辺から「この内閣支持率って妥当なのか?」「捏造されているのでは?」という声も聞こえてきます。はたして世論調査結果は信頼できるものなのでしょうか? そんな疑問をみごとに解き明かすのが、三春充希さん(「みらい選挙プロジェクト」運営)だ。三春さんは、日本で実施される各社世論調査による内閣支持率と政党支持率の数字を最高の解像度で描き出し解釈、明快にわかりやすく説明します。 世論調査はいつから、どんな方法で? その結果から何が読み取れるのか? そこから、三春さんは「“私たちが向き合う社会がどのようなものか”を知り、それが社会を変えていく武器になる」と言います。 貧困問題や若い世代の生きづらさなどの社会のひずみを解消し、生きやすい社会をつくっていくために、世論調査から見えてくること、それを役立てる方法を聞きました。 彼の世論調査の見方は参考になる。本を読むべきだ、と思った。 「国際記事:香港、ガラスの壁は本当の意味でまだ破られていない」も参考になった。 2019年は香港にとって激動の一年でした。しかし、すでにその伏線は14年に起こった「雨傘運動」にありました――。当時、ドキュメンタリー映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』を制作したチャン・ジーウン監督は昨年何を思い、あの光景をどう見たのでしょうか。ビッグイシュー日本版にエッセイが届きました。 テレビニュースで見えてこない、当事者たちの葛藤がすごい。平和的デモから暴力的デモに変わる瞬間の彼らの葛藤は、もう少し具体的に見なくては軽々に語ることはできない。
2020年03月08日
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平和新聞3月5日号にショッキングなことが書かれていた。「米軍基地汚染」というと、真っ先に思い浮かぶのは原子力潜水艦の放射能汚染なのだが、権力によって完全に隠されているそういう汚染よりも、英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が参議院院内集会で講演したソレは、一定データでも裏付けることのできる、日本国民の将来に影響を与える深刻な汚染だった。 米軍基地の汚染も、米国内では調査結果を常に公表しているが、日本ではされていない。深刻なのは、有機フッ素化合物汚染である。「泡消化剤」に使われている。PEOSとかPFOAと言われる。決してなくならない物資である。発がん性があり、幼児や胎児への発育への影響が大きい。米保健福祉省は、18年PEOSの含有上限を7ppt、PFOAの含有上限を11pptに抑えるように勧告した。そして、沖縄北谷浄水場の水道水から最高で120ppt、年平均でも44pptが検出された。現在特別なフィルターを用いて低減しているが、それでも30ppt近くある。厚労省の水質基準は、この4月から50pptにするらしい。学者は暫定目標を10pptにするように求めている。 詳しくは平和新聞を読んで欲しい。お求めは、お近くの平和委員会会員へ。
2020年03月06日
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「図書2020年3月号」 「図書」は数ある宣伝誌の中で、掲載記事の中であまり自社作品の宣伝をしない。後半に32ページかけて宣伝欄を設けているからいいのだ、という人もいるかもしれないが、記事中の宣伝がなかろうとも、この宣伝誌は岩波書店の見識を見せる雑誌なのだという「見識」なのだと思う。 見識の浅い私は、今回の16もある短い記事の中で、最後まで読み切ったのは小林聡美「はじまりの小三治」、原田國男「物書き出世せず」、長谷川櫂「三十分の死」の3つだけであることを告白する。まぁ雑誌とはそういうものである。 小林聡美のは、ファンの会報に載せるべき駄文(い、いかん、こんなこと書くから‥‥)。 原田國男の短文は、「裁判の非情と人情」(岩波新書)を読んだ時と同じ感銘を受けた。この場合の「物書き出世せず」の「物書き」とは、裁判官が随筆ではなく学術論文さえ「書くべきでない」と指導されている状況に対してである。裁判官たるもの、判決書のみに専念するべきだ、裁判官は定時を過ぎても裁判官でいなければならない、という空気のせいである。元裁判官として、原田さんは疑義を唱える。「狭い世界に閉じこもり世間から隔絶された裁判官がいい裁判をするようにも思えない」。原田さんは「40年にわたる裁判官人生でともに映画や小説を語る相手に出会わなかった」らしい。「さびしいことだ」。 長谷川櫂は、漱石「こころ」の先生の死を「明治の精神に殉じたのは、自分から国家による死の意義づけを求めた」と云っている。私は反対意見を持っている(LGBTを自覚していた先生が生き辛さを感じていた説)。それはともかく、長谷川櫂は癌の手術の後ヘルニア手術の後遺症で3時間意識不明になった。そして、夏目漱石が修善寺の大患で「30分死んだ」ことは漱石にとって吐血よりも衝撃だったろうと、自分の経験に即して言っている。それは「こころ」から「明暗」にかけて水脈のように浸しているだろうと、俳人らしく推測しているのである。 「図書」は「Amazonあわせ買い対象商品」 ご注文合計額が¥2,000 (税込)以上の場合、購入いただけます。価格: ¥102
2020年03月04日
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「太平洋食堂」柳広司 小学館 第一次世界大戦前夜の紀州新宮で、リベラルな医者をやっていた大石誠之助を描く。この時代、社会主義者を標榜して、新聞で論陣を張り、演説会に登壇し、人が気楽に集まれるサロン(太平洋食堂)を開き、自由に新聞・雑誌を閲覧できる場を提供し、俳句やフリートークのサークルを作り、尚且つ、貧乏人からは診察代は取らないという「個人でできること」をやっていた人物であった。 太平洋は世界に開いている。大石はアメリカやインドへ留学していた世界人でもあった。新宮は田舎ではない。奈良の熊野詣での昔から、地方の都会だった。昔も今も東京だけに人物がいるわけではない。それでも、戦争は人々の生活に影を落とし、ブラック企業は労働者を搾取するだろう。現在と似ている部分は多々ある。その中で、大石誠之助はどうなったのだろうか?新宮に居て、大逆事件とは関係なかったのに逮捕されて死刑に処されたのである。いや、死刑になった12人全員が冤罪だったのは、この本で詳細に述べられている。一方、この時代いろいろ制限はあるにせよ、昭和の戦中と比べれば、まだ言論に自由な雰囲気は残っていた。あまり描かれてこなかった明治時代小説と言えるだろう。 大石がしていたのは、現代の知的リベラルがしていることの理想型だと思う。しかし、戦争前夜にそういう運命に陥る。明治末期に日本に芽生えた社会主義思想という名の理想主義は、このように壊滅的な打撃を受けた。私は大きな教訓があると思う。大逆事件は、単なる社会主義者弾圧ではない。日本は大きな事件があると、コロッと空気を変える(意味は違うが、昨今の感染症騒動を見てもそう思う)。 新宮市は、2018年になってやっと「名誉市民」という称号を大石誠之助に与え、名誉を回復させた。もっとも、まだまだ復権にはほど遠い岡山県井原市出身の森近運平よりはマシではあるが。
2020年03月03日
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「静かな炎天」若竹七海 文春文庫 9時7分、玄関を出たところでスマホに載せているバス時刻表を見ると出発時刻は9時9分だった。考える暇はなかった。普段は5分の道のりを、私は走った。散歩中のお爺ちゃんおばあちゃんが、目を剥いて私のガニ股走行を眺めている。最初のダッシュは、無酸素系の筋力エネルギーが使われるという。その1-2分後に有酸素系の筋力のエネルギーが使われる。が、こういう場合、無酸素のエネルギーは一瞬で使われて、バス停に近づく頃にはガス欠になりかけていた。ところが、信号待ちとバス特有の遅れのお陰で、バスがちょうど信号が青に変わって出発しようとするところだった。火事場の底力は、このように出るのかもしれない。10メートル手前、私は再びダッシュし手を上げた。バスは止まった。良くテレビや小説では目をするけれども、こういうシチュエーションは初めてだった。ギリギリ乗り込んだ。 私はバスと岡山までの電車の間は「静かな炎天」という小説を紐解いた。「世界で1番不運な探偵」という副題が付いたテレビドラマを見て買ったものである。10数ページ読んだところで、岡山に着き、高松行きのプラットホームに降りる。階段上ではまだ電車のドアは空いていた。まさか、その電車が都合よく高松行きとは思わずにゆっくり降りると、果たして高松行きマリンライナーだった、と気がついた時にはドアは閉まっていた。ドアに手をかけた時に、そろそろと電車は走り始める。こういうシチュエーションも、小説やドラマでは良く見たが、初めて体験した。これも今読んでいる「静かな炎天」のおかげだろうか。ちょっとだけ不運を貰ったわけだ。 すみません、わたくし史上最大の前振りをしてしまいました。意味ないことを書くな?いえ、意味はないことは無い。葉村晶シリーズを読むこと、2冊目。ハードボイルド文体は、私を侵食して脳味噌を溶かし、何を書いても下手な真似をしたくなる。私の推しメンだけあって、かなり影響力のある呟きをするのです。文体こそが、この小説の最大のウリなのだ。 いつの間にやら「悪いうさぎ」から10年と少しが経っていて、葉村晶も40代。四十肩になる。身体が基本のお一人様は私も同じだから、彼女同様私も食事に気をつけ、ストレッチと筋トレを心がけていた。にも関わらず、「なんでこうなる」と嘆く彼女にとても共感した。 と、なんやかんや書いても一向に作品あらすじに入っていかないが、これも意味がある。この文章構造こそが、この表題作の短編(静かなる炎天)の、最大のネタバレだからである。←おお、壮大な前振りだった(^_^;)。
2020年03月02日
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実は、昨日(2020年2月29日)は、日本原米軍単独訓練反対県民集会を開催して、3月から始まる海兵隊の訓練に、自衛隊演習場までデモ行進をして、要望書を渡す予定だった。 ところが、その1日前になって、会場の奈義町から「数百人規模の集会は開催しないで欲しい」と要請が来たらしく、協議の結果急遽取りやめになってしまった。 それでも、米軍が「(日本のためではなく)侵略のための訓練をする」予定は変わりなく、忸怩たるものがある。 14年前に初めて米軍「共同」訓練をした時の記事があった。ここで、心配されていることは、多くの点で実現している(共同訓練は、そのあと4回実現された。更には、単独訓練は今回で2回目である)。または、実現されつつある。しかし、そのスピードが緩やかなのは、我々の「反対運動」があるからに他ならないだろう。一方、この時には700名も集まったのか!とビックリした。今回の目標は400名だった。しかももし開催すれば、それ以下になることは目に見えていた。この間の運動の力量低下も自覚しなくてはならない。 「教訓」のために、以下に再掲する。 2006年2月26日 日本原演習場における日米共同演習の概要は一昨日の記事に書いた。今日は、日米共同訓練反対集会(事務局・岡山県労働組合会議)にバスを連ねて参加した。場所は奈義山麓の奈義美術館となりの休耕田。幸い雨もやみ、雪も解けていた。県下全域から700人が集まった。 この集会で採択した決議に、この共同訓練が何を意味するのか、簡潔に述べているので、一部を抜粋したい。 陸上自衛隊第8普通科連隊とアメリカ海兵隊の予備役部隊が、滋賀県饗庭野演習場を同時に使用して、ここ日本原駐屯地と演習場で共同訓練を強行した。さらにこの共同訓練と連動して日米両政府は、日本原駐屯地と演習場を日米地位協定第2条4項(b)に定める米軍使用の基地・演習場とすることを決定した。これは昨年の日米安保協議委員会で合意した日米再編計画の具体化であり、断じて許すことが出来ない。 この決議に書いてある「日米地位協定第2条4項(b)」というのは、返す返すもひどいものである。今回は最初ということで米軍の数も少なく、期間も5日間であったが、これからは永久に年6週間内で、いつでも、米軍が日本原演習場を使うことが出来るようになるということを示している。しかも前の記事では12/26に地元奈義町は受け入れを強行採択したと書いたが、実は広島防衛局から岡山県知事宛に12/21に既にこの文章が届いていて、その時点で既に決定していたのである。自治体の毅然とした態度が求められている。座間や岩国の市長を見習え!闘いはこれからだ!と次々と決意表明された。 この日米再編計画は、アメリカの先制攻撃戦略の機動性をさらに高め、世界のいかなる場所にも迅速に出撃できる体制をとるため、米軍の統合作戦本部を神奈川県座間基地に新設し、岩国へ米艦載機部隊を移転するなど、在日米軍の編成を抜本的に改めるものである。同時にこの計画は、自衛隊を米軍の補完戦力とする軍事一体化を目指して「相互運用性の向上」や「共同の活動の増大」をはかり、「共同訓練」、「施設の共同使用」をすすめることを決定している。これは「長期戦時体制」に踏み込んだアメリカとの共通戦略のもとで、日米安保体制が地球規模の軍事同盟に変質したことを示し、この態勢の中で日本原は、1965年に「専守防衛」の名のもとに駐屯地が開設された状況と全く異なり、アメリカの戦争に直結する危険な役割と機能を新たに果たすことになったといわなければならない。 今回の訓練は主に「テロ対策訓練」がされている。一部に「備えあれば憂いなし」でそういう訓練を同盟国と一緒にするのは必要である、という意見があるみたいだ。もちろんそのような事態になれば、役に立つことも少しはあるかもしれない。(このような訓練に賛成すること自体がそのような事態を招聘してしまうことになる、という点についてはここでは触れない)しかし、今までのアメリカのやってきたこと、今回の米軍再編の意味をきちんと見れば、アメリカの意図は日本へのテロに対処することが第一義ではないということはすぐ分かるだろう。自衛隊を米軍の補完戦力とする軍事一体化を目指して「相互運用性の向上」や「共同の活動の増大」をはかること、アメリカの戦争に直結する危険な役割と機能を新たに果たすことが目的なのだ。そして、日本も意図的にその流れに乗っているのである。 このあと、日本原駐屯地の入り口まで約4キロをデモ行進し、決議を自衛隊に渡した。
2020年03月01日
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かなり迷った。大きな道から中に入ってゆく時の案内板が無いので在る。これは、絶対改善して欲しい。 猫塚。もっと双方中円墳の形が推測出来るかと思っていたら、まるきり崩れていた。古墳時代では、此処にしか無い形。弥生時代最大墳墓の楯築遺跡と同じ形である。 微かに前方部が推測できた。 わずかに、山の下の住居が見えるが、そんなに見晴らしがいいところではない。ここが最初の王墓だとしたら、最初は祭祀の方に重きを置いた可能性がある。 楯築遺跡が工事で壊されなければ比較的綺麗に残っていたのと対照的。これは積石塚の特徴なのではないか?何故積石塚を採用したのか?2つの説があるらしい。一つは、弥生以来の集積墓に起源を持つ。一つは、高句麗や百済の積石塚に起源を持つというもの。私は後者だと思う。しかし、猿真似だった。よって、数世紀ですぐに崩れるものしか作れなかったのだ。猫塚、鏡塚などは前期前半4世紀のものらしい。よって、間に200年もの歳月があって、楯築遺跡との関連はないだろうというのが定説である。つまり、祭祀の関連はないのである。来てみて、私はその思いを非常に強くした。 行けなかったが、鶴尾神社4号墳出土と言われる方格規距四神鏡もこの時期の鏡。鏡の世界は良く知らないのだけど、神獣鏡のようなゴチャゴチャしたものより格が上らしい。 猫塚からしばらく行くと、展望スポットがあって、カップルの車が長いこと停まっていた。 そのあと、完全に崩れている猫塚古墳(前方後円墳らしい)。 小塚古墳等々の積石塚系の古墳を通る。 前期後半の石船塚古墳。前方後円墳で形が残っている。 だけでなく、石棺が綺麗に残っている。頭を置く部分を綺麗に加工していた。この時期には、既に双方中円墳は築かれない。前方後円墳も、かなり前方部が長い、特徴ある古墳だ。石清尾古墳群衰退期らしい。 これが鏡塚古墳。ここから、屋島が綺麗に見える。ということは、海からもこの古墳が綺麗に見えたということだ。 更に10分ほど山道を行くと、北大塚東古墳、北大塚古墳、北大塚西古墳にたどり着く。暫く瓦礫の山があるようにしか見えない。 わずかに前方部がわかる。 ここからの景色の方が、屋島は良く見えた。鏡塚はどうしてこっちを先に頂かなかったのか。余計なお世話だけど。 そこからかなり急なそして石ころだらけの斜面を降りてゆく苦行を経て、おそらく道を間違って大回りして帰途についた。 途中で峰山養蜂場作りの蜂蜜を買う。何か記念が欲しかった。 長いこと歩く。電車で帰りたかったが、それ以上にうどんを食べたかった。県庁前のさか枝に行くと、やはりもう閉まっていた。その他、いくつかのうどん屋は閉まっていた。高松の有名うどん屋は、祝日やらないとか、やっていても2時で閉めるとかだったのを忘れていた。結局駅まで歩くことになる。兵庫商店街に着く。 うどん市場というところが開いていた。 天ぷらをその場で揚げてくれる。シソと玉ねぎのかき揚げ、ゴボウのかき揚げ、そしてかけうどん少で、410円。安いけど、美味しい。天ぷらが美味しい。いりこ出汁が美味しい。 店を出るともうすっかり暮れていた。 この日は約3万3千歩歩いた。
2020年02月29日
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高松駅に着くまでは、「静かなる炎天」の書評に詳しく書きます。 高松駅についた。ホントは7時に家を出るつもりだったので、9時に家を出て11時20分過ぎについたのは僥倖の部類に入る。バスの運転手に感謝。 その足で、県立ミュージアムに足を運ぶ。10分少々で着いて、40分ほどで見て周り、15分で戻る。今日は2つの博物館を回って、山登りさえする。急ぎすぎて困ることは無い。 県立ではあるが、やはり古代は全体の数%しか展示スペースがない。それでも紫雲出山遺跡の弥生時代に戦争が始まったことを証明する石鏃の展示や、石清尾山(いわせおやま)古墳群の猫塚古墳の遺物の展示が目立っていた。 今日は、図録を買う気まんまんでリュックを担いでやってきたのにお店には本図録もなければ、古代歴史関係の図録は一切なかった。「ないんですか?」「本図録は売り切れているんです。」とのこと。この博物館に、古代遺跡を期待するのは、一切やめよう。 昭和町までの切符を買った後に、電車は50分後にしか来ないことが判明。50分の待ち。お昼を食べにうどんやに入る。なるほど、うどんそのものはコシもないし、キレもない。何故それが、本場高松でこんな人がいるのか、不思議だったが、天ぷらが美味しいのである。出汁も良い。香川でうどん屋を流行らせるためには、うどんだけではダメなのである。 ここまで来たら歩いて行った方が早いと判断する。途中で高松市のマンホールを写す。屋島の戦いでの「那須与一扇の的を射る」の図です。高松市立歴史資料館は、昭和町にある。約15分間で着いた。 ここの展示も、古代に関しては県立とそう変わらない。 図録も本図録こそはあったが、古代歴史ものはほとんどなかった。あと確かめていないのは、埋蔵文化財センターだけか。 同じ建物に菊池寛記念館が併設されていたので、この前書評を書いたこおもあり、覗いてみる。歴代芥川賞・直木賞受賞者をずらっと並べているのが印象的。流石に、戦時協力の展示はザット見ただけだが一切なかった。 歴史資料館の受付の方に、石清尾山古墳群の行き方を詳しく聞いて歩いてゆく。石清尾八幡宮神社には、馬の大きな像があった。何故か?ちょっと興味あったが、確かめる時間はない。 資料館受付だけではなく、車を洗車していたおじさんや、タクシー会社に居た運転手など、途中で声をかけながら迷うことなく山登りを敢行する。こういうのが、日本の遺跡巡りでは便利なところだ。韓国のように決して一緒に歩いてくれる人はいないが、要所要所で的確なアドバイスをもらえる。異様に車の行き交いが多い。普通の古墳群の山にはあり得ない多さ。道理でみんな場所を知っているわけだ。時は天皇誕生日。頂上の峰山公園に向けて、4つある駐車場は全部満杯で、子供がうじゃうじゃと遊んでいた。かなり急なハイキング道をあがって行ったおかげで、八幡宮からは30分ほどで公園に着いた。大汗。良い運動。 横穴式石室が見事に残っている石清尾山2号墳。六世紀末の築造。公園から5分という立地とメジャーな姿で国指定になったけど、特異性はない。 そこから猫塚古墳を目指す。これが今日の目玉である。何故か。2世紀の楯築遺跡以来、日本に再登場した双方中円墳という形を見たかったというのが一つ。ここから出土したという副葬品が多様で、紛うことなきこの地域の王墓であったということが一つ。県立ミュージアムでも、歴史資料館でも、出土品のレプリカが展示されていた。銅剣17本、銅鏃8本、筒形銅器3本、内向花文鏡など様々な鏡。ホントに全部猫塚から出たのか?という多さだ。 ところが、迷って、地域の人にも聞いたが「あっちの方ですよ。えっ、案内板ありますよ」という返事。でも、案内板はない。細道を入ったところの古墳の目の前に案内板はある。知らない人は、どうやって此処に来るんだ?と私は言いたい。以下次号。
2020年02月28日
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「悪いうさぎ」若竹七海 文春文庫 1月から始まった某公共放送の「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」というドラマで、若竹七海という小説家のことも葉村晶というアラサー女性私立探偵のことも初めて知った。一目で恋に落ちた、わけではない。最近流行らなくなった言い方を使うと、「推し」になった。 4人姉妹の末っ子。やっかいな姉から逃れ、転職、転居を繰り返すうち探偵業につくようになった苦労人。頭の回転は速く仕事はできる。なのに、苦労を自ら背負う性分と、何故か要らない「痛い目」に遭うことか多い。今回の葉村晶も、初めての長編に張り切ったわけではなかろうが、冒頭から腹を刺されて、少しずれていたら致命傷だったし右足中足骨二本にヒビも入れている。そのあと何度も痛い目に遭って、生死の境を飛び越えている。TVディレクターの副題の付け方もあながち大袈裟じゃない。 ところが、私は「一生懸命頑張る女の子」にはつい肩入れをしたくなる悪いクセがある。そんなわけで‥‥あ、いや、小説の中身のことを紹介する前に紹介文が終わりそうだが、実はわざとです。女子高生失踪事件に端を発した、やがてとんでもなくあと味悪い事件に鞍替えするお話。言えるのはそこまで。買った時には気がついていなかった、信じて欲しい。TVの「ハムラアキラ」が今現在ちょうど、全7回のうち3回も使って、「悪いうさぎ」を最終回シリーズとして描いている真っ最中なのだ。ヒントのヒの字も喋れなくなっちまった。 だから詳しい紹介はよす。 二兎を追うものは一兎も得ず。 ハムラアキラは私の推しメンになった。今年はシリーズ読破する、とだけ伝えておきましょう。
2020年02月26日
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「自転車日記」夏目漱石 青空文庫 鳥打帽を衝(つい)て猛然とハンドルを握ったまではあっぱれ武者ぶりたのもしかったがいよいよ鞍に跨(またが)って顧盻(こけい)勇を示す一段になるとおあつらえ通りに参らない、いざという間際でずどんと落ること妙なり、自転車は逆立も何もせず至極落ちつきはらったものだが乗客だけはまさに鞍壺にたまらずずんでん堂とこける、かつて講釈師に聞た通りを目のあたり自ら実行するとは、 ずどんと落ちる、ずんでん堂とこける、近代からこの方、多くの人が辿った道を、この文豪が辿っているのがおかしい。 ただし、舞台がロンドン、時は1902年というのが少し普通とは違う。地名がたくさん出てくるので、ロンドン旅の折には、漱石の転び場所を特定する愉しみも出てくる(実現出来ないだろうけど)。 漱石の運転技術はなかなか上達せず、漱石の落車に引きずられてたまたま後ろをついてきた人の自転車も落車する。そうすると、 彼の落ち人大に逆鱗の体で、チンチンチャイナマンと余を罵った、 「チャイナマン」は中国人だからわからんでもないが、ホントに「チンチン」と言ったのか?今となっては確かめようもない。 「吾輩は猫である」より2年前の執筆(1903)らしい。この時より、現代的なユーモア小説の文体は既に完成に近づいていたのかと感心する。 また、この背景には気うつ病(鬱病?)になってロンドン留学を退散する近代人漱石の自虐気味な自己分析が垣間見れないこともない。面白い一文でした。
2020年02月25日
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「華胥の幽夢」小野不由美 新潮文庫 「冬栄」 雲上の物語。青鳥と書いて「しらせ」と読む。おそらくホントに戴国と漣国との間で鳥のやり取りがされたのだと思う。往復で何日かかるのか。騎獣で半月なのだから、機動力があっても20日はかかったのだろう。 精神年齢10歳としては、あまりにも責任感のある泰麒の初外交のお話。泰麒の自己肯定感の欠如は、一旦この短編では解決したかに見える。 「乗月」 雲上の物語。月渓がこの章の主人公ではあるが、彼の逡巡は4年の月日があったにしては幼いと思う。寧ろ描きたかったのは、祥瓊の手紙だろう。さあコレでケリがついた。あと100年ほどすれば、祥瓊がまた芳国に戻ることもなきにしもあらずだろう。 「書簡」 雲上と雲下の物語。さすが十二国。王様の使う鳥(便り)は、現代で云うボイスメモの機能が付いている。小野不由美女史が書いた頃には、テープレコーダーのイメージだったんだろうか。お互い背伸びをして、手紙をやり取りする友だち同士の物語。この半年後、慶国は動乱が始まる。 「華胥」 雲上の物語。華胥華朶(かしょかだ)は才州国にある宝。宝玉でできた桃の枝。それを枕辺に挿して眠れば花開き、華胥の夢を見せる。昔、黄帝が治世に迷ったおり、夢で華胥氏の国に遊び、そこに理想の世を見て道を悟ったと伝えられる。采王黄姑の前王の砥尚(ししょう)の二十余年の治世と、代替わりを巡る「殺人事件」ミステリを描いた一編。 黄帝とは、古代中国における伝説の皇帝達、「三皇五帝」のひとり。「三皇」の治世を継ぎ、中国を統治した「五帝」の、最初の帝である。(ピクシブ百科事典より)十二国に於いては「伝説」ではない。何しろ、歴史的「遺物」が実際に使われているのだから。 「帰山」 雲上の物語。前半は、利広と延王の会話からなる。ここで、十二国の栄枯盛衰の傾向と、利広と延王の隠れた闇の心を垣間見、驚く。また(X16年ごろの)十二国の世界情勢報告が一挙にされたということでも重要な一編。 さて、最後の短編集を終えて、怒涛の最大長編に、次回から突入するようだ。 年表(加筆訂正) 1400年ごろ 奏国宗王先新が登極 妻と3人の子仙籍に入る 1470年 六太4歳延麒となる。 1479年(大化元年) 雁国延王尚隆が登極 1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺 1700年ごろ 範国氾王登極 ーX96年 柳国劉王露峰が登極 ーX75年 恭国供王珠晶が登極 ーX 25年 舜国の王登極 ーX18年ごろ 芳国峯王仲韃登極 才国采王砥尚登極 X元年 泰麒 胎果として日本に流される X2年 才国采王砥尚崩御 才国采王黄姑が登極 X9年末 慶国予王が登極 X10年 泰麒 2月蓬山に戻る 戴国泰王驍宗が登極 X11年 泰麒 4月日本に戻る X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 芳国の麒麟卵果が触により流される X14年 5月慶国予王崩御 X15年(1992年?)陽子日本より来たる 10月慶国景王陽子が登極 X 16年 功国塙王崩御 慶国で和州の乱 X17年 泰麒 9月戴国に戻る
2020年02月24日
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「ウォーキングの科学」能勢博 ブルーバックス スロージョギングの本を3年前ぐらいに読んで、おそらく2-3キロ落としたのだけど、やはりなかなか続かなくて、目先を変えてこの本を選んでみた。 ウォーキングをどのように、どのくらいすれば効果的なのか。その答えは「インターバル速度」で歩くことだという。だいたいの結論だけを読んで、あとはこまめに試しながら4ヶ月寝かせてみた。 ダメだね。やっぱり、自分の中できちんと納得しないと徹底出来ない。それで今回、最初からきちんと読んでいった。 この本の目的は痩せることだけではない。体力を10%向上(10歳の若返り)させることで健康になろうというものである。機械を使わずにそれを実現させる方法を考察したものである。 体力とは何か。 「持久力」と「筋力」である。 「持久力」は最高酸素消費量で表される。 「筋力」はウォーキングには主に遅筋が使われる「筋収縮力」と、「筋持久力」に分けられる。 20代を100とすると30まで体力が落ちると要介護状態に落ちるとされる。60歳では一般に50まで落ちる。 トレーニングをすると、血液量が増加し、一回心拍出量も増加、筋肉内での酸素利用速度の亢進とあいまり、最高酸素消費量が高まり、体温上昇にもつながる。それが健康に繋がる。ダイエット効果もある。 漫然と1日1万歩歩いても体力は向上しないことが科学的に証明されている。 「運動形態を問わず」個人の最高酸素消費量の60%の強度を目標とした運動を、30分/日、3-4日/週、3-6ヶ月間行うと、「年齢、性別、初期体力に関係なく」、最高酸素消費量が初期値に比べ10ー20%向上することが明らかになっている。(56p) 筋力は、「ようやく一回できる強度の動き」の80%の負荷をかけて、8回・3セット/1日、3回/週(必ず1日あける)、で2-3ヶ月のトレーニングで、年齢に関係なく、筋収縮力は初期値に比べると10ー20%増加する。 しかし、これは両方ともする必要はない。中高年は、一つで十分目的を達する。 インターバル速度の歩行は3分交代(速歩が15分、ゆっくり15分)週4日だが、要するに週に速歩60分を5ヶ月間行えば効果ある。 私的には、以下の質疑応答が目からウロコだった。 Q5「ウォーキングでなく、走ってもいいのですか」 インターバル速歩は、個人の最大体力の70%以上に相当することを前提。体力ある人は、早歩きでは達しないかもしれない。そのような方は、ジョギング、トレイル・ランニングでも良い。テニスでも、何でも良い。インターバル速歩は、一人でできる、道具がいらないということで勧めている。ほとんどの中高年はインターバル速歩で70%レベルに達するからである。(104p) Q6「専用の測定値がなかったら?」 表1-2で示した「ややきつい」運動をストップウォッチなどで測定し、1週間早歩きが60分に達しているか確認。数ヶ月に一度里山登山に挑戦し、時間が10%短縮できていたら、10%体力が向上したことになる。(105p) インターバル速歩30分後までに乳製品3単位摂取すると、糖尿、肝臓などの慢性炎症を抑制する。熱中症も予防できる。 さて、理論武装はした。あとは実践あるのみ。
2020年02月23日
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今月の映画評は「グリーンブック」です。 米国アカデミー賞の季節がやってきました。今年は、この投稿が載る頃には結果発表の後になります。日本のそれとは違って、受賞各作品は、好き嫌いはあるけど力作ばかりです。無視出来ません。さて、昨年最優秀作品賞を獲得した作品を紹介します。 1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップは、黒人ピアニストのドクター・シャーリーの運転手として南部への演奏ツアーに出かけることになります。当時米国には黒人差別が残っていましたが、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに不穏な旅に出るのです。 NYブロンクスで生まれ育ち犯罪世界の空気を吸いながらも善良さを決して捨てなかったイタリア系アメリカ人トニーを、ヴィゴ・モーテンセンは、別人とも思える体重増量を図って演じました。かつてある時は王様、ある時はロシアンマフィア、ある時は終末世界の父親を演じた彼だからこそ、こういうトニーも居るかなと存在感を持たせることができたのだと思います。 一方、著名人でもあり、金持ちでもあるシャーリーは、当時の黒人の常識とはかけ離れて神秘的です。何故彼が危険とも言える南部演奏に出ることにしたのか、それは彼の人生と信念に絡んでいました。「ムーンライト」でアカデミー賞助演男優賞を獲ったマハーシャラ・アリが、孤独で神経質で優しい複雑な人間性を演じています。 そうです。黒人差別を描いた作品に見られがちなのですが、もちろんその面は大いにあるのですが、外見とは違う隠されたキャラクターを見せることが、この映画のテーマなのだと私は思います。最初お互いを嫌い、本来は決して出会わない水と油の2人が、やがてお互いの人格を認め助け合い喧嘩もする相棒(バディ)に変わってゆくのです。しかもロードムービーでもあります。びっくりするのは、ほとんどが実話だった事です。拳銃や大統領への電話のエピソードはホントにあった事だそうです。事件の順番は変えています。 南部各地を回ってゆき、最後のバーミンガムで決定的に我慢ならない差別に出会った時に、彼らが取った選択は何だったか。 トニーの妻のドロレス(リンダ・カーデリニ)が、いいアクセントを持って終わりを締めていました。(2019年米国ピーター・ファレリー監督作品、レンタル可能)
2020年02月22日
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「Fukushima50」という映画がもうすぐ公開される。もちろん映画の評価は観てからするが、その前に、映画原作本や映画ノベライズ本を見て、世の人たちの感想を読んで気になったことがあるので、メモする。 これは「小説 Fukushima50」を読んである人の感想である。 「菅直人こそ、未曾有の大惨事をここまで悪化させた張本人である」 この認識を、多くの国民が持っていることに驚いた。全文を読めば分かるように、彼は必ずしも現在の自民党政権をそのまま支持するような人物ではない。それでも、そのように本に書いている「事実?」を見て、「思いを新たにしている」のである。 もう1人、これはノベライズではなく、原作本を読んでの感想だ。 彼も「菅がまだ存在していることに腹が立つ」とまで言っている。 私はかつて民間が出した「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」を読んだ。かなり大部の書であったが、それを読んだ限りでは、確かに当時は「エリートパニック」があり、それが事故を更に酷いものにしていたと思う。その時のエリートは、官邸もそうだったが、最大の元凶は、東電本部だった。事故の1番詳しい情報を、官邸に伝えていなかったのである。この映画や原作は、そのことをどう伝えているのか?それを読んでどうして、東電本部の一言も読者は言及していないのか?それが私は気にかかる。 それと、もう一つ大事なのは、そもそも事故が起きたのは「人災」であるということ。「安全神話」を牽引してきた東電と自民党政権の責任が1番大きい。 原発事故は、「正に神風が吹いた」から大事にならなかった、「正に連鎖崩壊が起きなかった」から、日本壊滅まで行かなかったのである。ホントに僥倖以外の何者でもなく、もう2度とこれは望めない。もちろん、その下には、この作品の本筋であろう身を挺した50人がいたのだろうと思う。しかし、それを見て森を見なかったらいけない。 世の人たちの「思想コントロール」がとても怖い作品にならるのではないか?と私は危惧している。
2020年02月21日
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「めんどくさい」がなくなる脳 加藤俊徳 SB クリエイティブ 自らを遅筆堂と呼んでいる私ですが、少し楽になりました。 めんどくさい、それは「脳のクセ」です。 ・起動に時間がかかる ・一度休むと、起動にものすごいエネルギーがいる。 ・疲れている時、眠い時、不機嫌な時は処理能力が低下する。 ・新しいこと、苦手意識のあることの処理速度が落ちる。 コレはつまり、貴方の脳の初期設定です。(2p) そうか!クセなのか。 しかも、脳だけは身体の中で、80歳になっても新しい習慣を学べるらしい(周り見てもそういう人はいる)。 コツは4つだけ。 ・脳みそくんの声に耳を傾ける。 ・嫌がる時は作業させない。 ・行動する出口を作ってあげる。 ・大好きなご褒美をたくさんあげる。 もちろん、簡単なことじゃない。ホントのめんどくさい原因を突き止めるのが一番めんどくさいかもしれない。 パソコン立ち上げるのがめんどくさいのか。 足下が寒いのがめんどくさいのか。 資料が集まりきっていないからか。 眠りの時間が迫って机上で寝るのが恐ろしいのか。 そもそも善意で作っているのに、何故遅れた事を皆んなに謝らなくてはならないのか、という気持ちになると、余計作り始めるのが嫌になる。遅れる。謝るのが嫌。無限ループ。 他にもあるのか。 あ、あった。ついつい書評書きとか他のものに手を出して、そっちに夢中になってしまう。 以上、私が時々めんどくさくなって、締め切り守れずに、自己嫌悪に落ち入る理由を分析してみました。ホラ、脳のクセです。なんとかなるかな。いや、そうでもないか。 「行動する出口」。「自分を2番目に置く」尊い仕事のためには自分を犠牲にしているんだ!と、すぐやる脳に切り替える。合言葉は「私は何をしても一流なんだ」「私はプロなんだ!!」もちろん「やるべきこと」は、その時点で具体的に理解している必要はある。 チョコチョコしたテクニック(私用に整理)。 ・予定はデッドラインから順番に立てる(あ、いかん、コレ何回も失敗してる) ・ネットサーフィンして、なかなか取りかかれないのであれば、ネットサーフィンの時間を資料収集の時間と位置付ける。すぐ準備する脳になる。(←コレはいけるかも) ・理解系脳番地が疲れる人は、本や映画を見たらダメ。運動系脳番地にシフト(ジム・ウォーキング)すること。 ・準備して、ウォーキングして、目的地を目指す、更に寄り道をすると「ひらめき」は最も降りやすくなる。(←コレ試してみよう!)めんどくさいを活かして脳の可能性を広げる。 ・両手を軽く握って、右手の小指と左手の親指を、同時に伸ばす。反対もして続ける。脳のマンネリ化を防ぐ。 ・新しい情報や経験は、脳に新しい回路が生まれること。 ・1番のご褒美は「早く終わった」達成感を味わうこと。次に「めんどくさい」と思わなくなる。 ・「人体の中で、脳だけが未熟で生まれ、未完成で死んでいく」脳科学で脳の画像として観察できるようになった。 因みに書評に関しては、「めんどくさい」と思ったことは一度もない。更には、ブログは週に約6/7日アップしているけど、15年間ネタが尽きたことは一回もない。「めんどくさい」とも思わない。誤字脱字、出来不出来、時々誰かの感情を逆撫でしていることにも、鈍感だから感じないし、素人文章で結果的に許してもらえるというのもあるけど、確実に1日何人かが読んでくれているという実感があるから続いていると思っている。それなのに、お金は発生しないけど義務感を伴う文章書きには突然「めんどくさい」ことになってしまう。でも、ここまでやってきたのだから「俺って、プロだよな」とプライド持って自信持って「直ぐに取り組む」ことは可能かもしれない、という気もしてきた。この時点で、自ら設定している或る会報のデッドラインを3日過ぎています(涙)(涙)。
2020年02月20日
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「歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる」遠藤雅司 柏書房 思ったよりも内容が充実した、想像力膨らむ、食材も味も膨らむ本でした。紀元前の食事をここまで再現できるのは、ひとえに文字があったから。粘土板なので、覚書のために書いたことが、5000年後にも残ってしまった。 残念ながら、メソポタミア文明の料理を食べたかったのですが、食材の調達ができません。その後に書いている「ソクラテスの腹ごしらえ」も、出来そうなのはなく、「カエサルの祝宴」に至って、急に現代のヨーロッパ風料理になる。やはり全ての道はローマに通じるのだ(私の主観)。 ところが、私の古代への関心はご存知のように倭国の弥生時代です。そこに通じる、紀元前の中国料理やアジア料理があれば、またはせめて「聖徳太子の夕飯」ぐらいがあればよかったのだけど、アジアはスルーして後半は一挙に15世紀以降のヨーロッパに飛びます。 大阪弥生博物館で「卑弥呼の食卓」なんて展示を観たのですが、考古学者は頭が固いので根拠ある魚やら貝やら野菜などの素材を、生のやそのまま茹でてドドーンと皿に盛り付けているだけ。そんなはずはないでしょ!その時代よりも3000年以上前にギルガメシュはレンズ豆と麦のリゾットを作ったり、ラム肉シチューを作ったり、カブの煮込みスープを作ったりしていたんだよ。「美味しいものを食べたい!」というのは、人類の基本欲求のはずで、必ず「◯◯さんの絶品料理」というものがあったはずだ。そういうものをともかく知りたい。遠藤さん、是非アジア編を作ってください!
2020年02月19日
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「怪獣記」高野秀行 講談社文庫 青春の書でもある『幻獣ムベンベを追え』の単行本が出てから16年目(2006年)のある日、もはや「怪しい探検家」じゃない「怪しいもの専門探検家」に成長した高野秀行は、ワンコじゃないワン湖に生息するとして一部では有名なUMA(未確認不思議動物)ジャナイじゃない、ジャナワール情報の真偽を確かめるべくトルコに飛んだのです(すみません、後は真面目に書きます)。十数年の冒険で鍛えられた彼は、一般に知られているビデオ映像はフェイクだと疑っていたが、トルコでの出版物の中に目撃証言者が48人もいただけでなく顔写真と住所まで載っている本の存在に注目したのである。 イスラム復興主義やクルド問題、或いは金儲けとか観光客誘致とか、マスコミの無責任な報道とか、ネットの無節操な伝達など、怪しげなベールを一枚一枚はいでいった時点で、高野秀行は初めてこのUMA探索にやる気を見せます。 「今、ちゃんとした情報を握り、客観的にジャナを調査できる人間は世界でたった1人しかいない。もちろん、私だ。やっと出番が来たという気すらする。ジャナは今まさに既知の未知動物から未知の未知動物になったのだ」(103p) 軽くて調子が良い読み物を装ってはいるけれども、高野秀行の視点は鋭い。信頼に足ると思う。文章がとっても気持ちいい。それに、『ムベンベ』から経験を積んで、視野が広がっている。目的のUMAよりも、クルド民族の日常や、ワン湖周辺の自然や、何より日常的な食べ物の描写がとても美味しそうで、ついつい観光で行ってみたくなる。現在、難民流出が止まらない大変なところではあるのだが。 さて、高野秀行はUMAをビデオに収めることが出来たのか?結果は、あっと驚く‥‥ごめん古かった。 高野秀行著作物、記念すべき読了10冊目でした。
2020年02月18日
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「呪いの言葉の解きかた」上西充子 晶文社 「嫌なら辞めればいい」「選ばなければ仕事はある」「ダラダラ残業する人が残業代多くもらうって、不公平だよね」「デモで世の中は変わらない」「政治の話はしたくない」「◯◯を政治利用しないで」「野党は反対ばかり」「モリカケばかりで国会が進まない」「沖縄の経済は基地に依存している」「女性は権利ばかり主張するようになった」「恥をかくぞ」「決まっているものは変えられない」 巻末の※「#呪いの言葉解き方」サイト(@tokikaroさんまとめ)より抜粋されたものをさらに抜粋した。サイトには、全国から集まった「解き方文例集」も同時に載っている。 これらは「呪いの言葉」である。「いや、これは違うんじゃないか?」と思う方もおられるかもしれない。貴方は間違っている、とは言わない。そもそも、こんな数行で「呪いの言葉」の仕組みを紹介出来ると思う方が間違っている。でも、「呪いの言葉」は「たった一言」でそ人の人格や努力や地道な行動を否定する。その一言で、ホントに仕事を辞めて、その人の人生は激変するのである。表面の言葉の裏に、言っている本人さえ気がつかない(当然恣意的に言っている場合も多々ある)悪意や「社会的な圧力」があるのが「呪いの言葉」の特徴のひとつだからだ。この本には、これらの数倍の言葉が溢れているけれども、それらの背景、解き方を簡単に説明しているだけで、270ページの本が出来上がるのも宜(むべ)なるかなと思う。 私はひとつひとつに反論したい。私自身が何度も聞いてきた言葉だからだ。でもそれをやると、数十頁の論文が出来ちゃうからグッと我慢している。まぁ読んで欲しい、ということですね。 つい最近も、ある女性から労働相談された。「パワハラまがいを受けている」という。「その上司の上司(店長)とは相談出来ますか」「でも、そんな文句を言ったら職場にいられなくなる」「それは文句じゃない。上司は労働者が気持ちよく働けるように職場環境を整える義務があるんですよ」「でも言ったらどうなるかわからない」「感情じゃなくて、事実を伝える必要があるけど、それは店長にとっても必要なことなんです」延々3時間ぐらい話したけど、どうどうめぐりが続いた。結局辞める方向でアクションを起こしてみる、ということにしかならなかった。かくも「文句を言うと、職場の雰囲気をこわす」という呪いの言葉の力は大きい。
2020年02月16日
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「図南の翼 十二国記6」小野不由美 新潮文庫 「何故この長編が書かれなければならなかったのか、わかりますか?」 「当たり前でしょ!とっても魅力的で十二国の主要人物の1人である珠晶が、艱難辛苦の上、登極(王様になる事)する話を、何処かで詳しく書いておかなければいけないのは、理の当然でしょ」 「珠晶が登極したことは、シリーズを読んできた読者には周知のことでしょう。屋上に屋を架す事ではないでしょうか」 「では長編の主人公に、私は相応しくない、とでもいうの!」 「無理しなさんな。勝気な12歳の少女を演じてみても貴女は珠晶じゃない。珠晶は賢いから、私が挑発していることなど直ぐに見通しますよ」 「‥‥じゃ、貴方は誰?」 「その前に、貴女は所謂物語をキャラで読もうとするひとたちの魂が形を成した者と観ました」 「悪い?」 「悪くない。それも物語を読む方法です。でも私はそれとは真反対の方向から読もうとする者だと言っておきましょう」 「‥‥じゃ、いいわ。で、何故登極の話が長編になったの?」 「それは、今迄書かれていなかった黄海の話、否、道の話を書かなくてはならなかったからだと、私は思います」 「道の話‥‥」 「今まで長編で描かれたのは主に三ヶ所を舞台にしています。国を司り不老不死の人たちが住む雲上と、普通の人たちが住む雲下と分けた場合、雲下はエピソード1、雲上はエピソード3、そして世界中央の黄海真ん中の五山に住む仙人たちの話がエピソード2、エピソード4の陽子の話は雲上下両方かな。そしてもう1つ2つ書かれなければならない舞台があります。それが黄海だと私は思うのです」 「十二国の中央に位置して、妖魔の跋扈する人外魔境、人の領分でもなく、神の領分でもない。でも人は黄海を通って蓬山に昇山し、麒麟に王様になる事を願わないと登極できないのよね」 「この巻で、やっと黄海が実は水のない海であることがわかりました。人は基本的にそこを徒歩か、馬などで苦労して道なき道を行かねばなりません」 「だから道の話なの?」 「その道ではない。麒麟と対たる鵬を象徴する道、即ち王の行く道とは何かを明らかにする話、だったのだと私はこの作品を解釈しました」 「それは今までも描かれてきたわ」 「国の政治とは全く無関係の舞台で描かれる必要があるのです」 「わからないわ」 「それは十二国世界の成り立ちに関することだ、と今はそれしか言えません。ともかく、黄海を舞台にして、抽象的な道の世界を描く必要があった」 「この巻は、そんな抽象じゃなくて、冒険ものよ」 「そこが小野不由美女史の凄いところなんでしょう。おそらく漢文で書けば数百字ですむところを四百頁超の大長編にしてしまいました」 「貴方のそんな全てを見透かしたような物言い、大っ嫌い!私は私の道を行きます。でも‥‥貴方、ちょっとこの巻の利広に似ているわね」 「さあ、それはどうかな」 年表(加筆訂正) 1400年ごろ 奏国宗王先新が登極 妻と3人の子仙籍に入る 1467年 六太1歳応仁の乱で罹災する。 1470年 六太4歳延麒となる。 1479年 瀬戸内海賊村上氏により海辺領主小松氏滅亡 (大化元年) 雁国延王尚隆が登極 1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺 −X75年 恭国供王珠晶が登極 X元年 泰麒 胎果として日本に流される X4年 才国采王黄姑が登極 X9年末 慶国予王が登極 X10年 泰麒 2月蓬山に戻る 戴国泰王驍宗が登極 X11年 泰麒 4月日本に戻る X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 芳国の麒麟卵果が触により流される X14年 5月慶国予王崩御。 X15年(1992年?)1月?陽子日本より来たる 10月慶国景王陽子が登極 X 16年 慶国で和州の乱 陽子伏礼を廃す X17年 泰麒 9月戴国に戻る
2020年02月16日
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「孟夏の太陽」宮城谷昌光 文春文庫 古代中国を自家薬籠中のものとしてきた著者の初期連作小説。実は宮城谷昌光氏は喪われた古代書物を匿していて、それを翻訳しているだけではないか?と窃(ひそか)に測っているが、証拠を見つけること我能わず。 冗談はそれぐらいにして、紐解いたのは、小野不由美「十二国シリーズ」の世界観は、孔子以前、つまり古代中国春秋時代だと当たりをつけている私が、また別の作家の視点から、その世界を見たかったからです。 小説は紀元前655年ごろから始まり、時代の覇権を担った晋の宰相を務めた趙氏一族を7代に渡り記し、紀元前453年ごろに終わります。 すると驚く勿れ、十二国の世界観が至る所に展開されていました。 曰く。 「山の霊に憎まれるようなことを、わたしはやったおぼえがないのに‥‥」(24p) ←この素朴な信仰から神仙信仰までは近いと言えるだろう。 曰く。 「趙盾の立場からすると、公子楽の殺害は、あきらかに法の行使であった」(54p) ←既に法治主義が徹底されていました。法に照らして宰相が王子を殺すことも許されるのです。日本で言えば弥生時代中期ですよ。すごいな。 曰く。 「たとえ楚との戦いで敗けても、晋は滅びはせぬが、苛政をおこなえば、国人は叛かんして、国はおのずと滅んでしまう」(112p) ←この徳治主義の考え方もやはり十二国の世界観です。 曰く。 「寛大な政治とは水であり、厳格な政治とは火である」(213p) ←この水と火の政治の葛藤が、時々十二国世界で、大長編となっていっているようです。 曰く。 「天が授けたものは、たとえ生まれが卑しくても、かならず尊貴になるものです」(269p) ←有名な占い師の言葉に従い、趙鞅は下女が産んだ無恤を優秀な息子を差し置いて跡取りと決めて仕舞う。もっとも趙鞅はそのほかにも人(世論調査)と地(宝探し)の声も聞いて判断したのではあるが。此処に、既に「天」という動かし難い神?権威?が有る。しかもそれに従ったから、思いもかけない「運命」を趙氏は乗り切ってゆくのです。こういう「跡取り=王」の決め方は、十二国世界観と繋がっているものでしょう。 思いもかけないところで、孔子も登場します。また、チェン・カイコーの映画「運命の子」の原作となった「趙氏孤児」のエピソードを、氏独自の視点で、この大河物語に挿話しています。蓋(けだ)し、中国古典は物語の宝庫也。
2020年02月14日
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写真は、海兵隊単独訓練中止を求めることなどの要請書を、津山市長に渡す県北住民の会の中西会長。 2月6日、日本原演習場で3月に行われる米軍単独訓練の概要が明らかになりました。来るのは、岩国基地所属の「後方支援部隊」で、海兵隊171航空支援団中隊(後の要請行動で、36給油部隊も来ることが判明)です。訓練期間は、3月8日から21日の2週間。ヘリパッドの敷設、ヘリコプターの着陸・給油訓練、機関銃の射撃訓練を行います。オスプレイは、今回は来ません。 県平和委員会は、岡山県の平和諸団体と共に、県知事や美作の自衛隊や自治体に要請行動を行いました。 2月5日には、県南の諸団体とともに県知事へ。2月10日には、津山平和委員会や県北住民の会などとともに津山防衛局、津山市長、奈義町長へ要請書を手渡し、単独訓練を中止させること、ならびに強行した場合には、内容を住民につぶさに知らせることを要請しました。 大西県平和委員会会長は「平和憲法があるもとで、日本原で戦争の訓練をするのは問題がある。海兵隊は殴り込み部隊なのだから、日本を守る役割がないと言っている部隊が来て射撃の訓練をするのは受け入れがたい」と抗議しました。 懇談の中で各首長共に「市民の安全を守るのが1番だあり、覚書の遵守も徹底させたい」と約束しました。 一方で、公文書で「火機の使用」がライフルから機関銃に格上げされていることや、「自衛隊不使用時に単独訓練を行う」という説明が「自衛隊演習と違う場所で単独訓練を行う」というように、変化していることを自治体に伝え抗議しました。 「解釈の違いで、なし崩し的に変わるのは安倍内閣と一緒だ」と、津山平和委員会の末永氏は言います。 2月29日に、奈義町で400人目標の「米海兵隊の単独訓練に反対する抗議集会」を行います。
2020年02月12日
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「しめかざり 新年の願いを結ぶかたち」森須磨子 工作舎 文章の隅々から、人生をかけてしめかざりを追い求めてきた著者の愛を感じる。著者の今までの集大成であるとともに、まだまだ収集しきっていないしめかざり学の出発点だと思う。 しめかざりとは、正月にトシガミ様(新しい年の福を授ける神様)を迎える準備として、家の内外に飾りつける藁でできたお飾りです(略) しめかざりは、「しめ縄」という文化から派生しました。今でも神社のご神木や磐座(いわくら)にぐるりと張られたしめ縄を見ることができるでしょう。古来、しめ縄は神が占有する場所を示し、のちに結界や魔除けの性質も帯びるようになりました。 そこで、正月には家のまわりや座敷などにしめ縄を張り巡らし、邪気を払ってトシガミ様をお迎えしました。(略) しかし、しだいにそのような風習も少なくなり、かわりに近世になると、しめ縄を造形した「しめかざり」が生まれます。その当時は「輪飾り」や「牛蒡(ごぼう)じめ」など数種類だけでしたが、現在では、数えきれないほど種類が増えました。(略)(10p) 美大出身の著者ではあるが、民俗学的にも正確な説明だと思う。民俗学者は経てして微に渡り細に渡り一地方だけの民俗事例を説明する。著者が、全国地図を大胆に提示しているのは、専門家ではなく、美術品としてしめかざりを紹介しているからできたのだろう。こういう場合、全体の本質を描けることが多い。経験的に考古学の本にも、専門外の人の書いた本にそういうのが多いことでも肯ける。 私は日本国内を旅する時、1/3くらいは正月休みのことが多い。そういう時に気にしてこの20年間写真に撮ってきたのは、マンホールとしめ飾りだ。地方の特色が鮮やかに出ているものだからである。 我が岡山は、大きな括りで言えば眼鏡の形をしているらしい。「未来を見通す力にあやかりたい」ということらしい。もしかしたら元は海老だったかも、とは著者。いずれにしても眼鏡形だったとは、この本で初めて知った。輪っかだと思っていた。縁は太く藁を締める。私はこの形が普通だと思っていたが、広島県も兵庫県も細い眼鏡縁を作っていた。岡山市と新見市のそれは、一見すれば全く別物みたいなのですが、よく見たら同じ眼鏡形。微妙に土地で構造が違う。まるで古代土器の編年のように、土地と時代で「流行」がある。ということは、あと数百年すれば、この「しめかざり」の写真を見れば専門家は、その土地と時代を当てることができるのかもしれない。 香川県高松市に行った時も、私は写真に撮ったが、此処には載っていなかった。牛蒡じめ、という分類に入るらしい。これも地方により、太く締めたり、縦に飾ったり色々です。 東京は、輪飾り系ですが、松の枝を立ててそれに飾っています(東京都杉並区)。派手さはないけど、松の枝を使うこと自体が、かなり特殊。この前大晦日に旅していた時に、大久保辺りで松の枝だけを売っている一角に出会った。 しめ縄の本場?出雲はいろんなしめかざりの交差点らしい。 本の前半の写真は、宝珠や俵、蛇、馬、鋏、鶏、正月魚等々特殊な形が続く。思うに、特殊な職人が居て、やはり「流行った」のだと思う。 ※ふと思ったこと。 しめ縄は、古代からあった。しめかざりは、近世から。何故か。商品の流通が始まったからではないか。だとすると、現代では需要が無くなり、廃れていくのは理の当然かもしれない。残るのは、素朴なしめ縄だけなのかもしれない。そう考えていくと、近世以前も、ほかの理由で一旦広く流行って現代では忘れ去られたものは多いかもしれない。
2020年02月11日
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「木下サーカス四代記」山岡淳一郎 東洋経済新聞社 岡山市表町商店街の南端に「千日前」という一画がある。ほんの20年前までには此処は6館ほどの映画館が林立する映画館街だった。60年前は、正月前後などは人混みでごった返す盛況だったと先輩から聞いている。更に遡ること100年前、映画の街はサーカスに続いてこの街で産声を上げ、戦災をくぐり抜け岡山の興行ならびに大衆文化をリードし続けた。 今、私たち映画ファンが娯楽を楽しんでいられるのも、先人たちが健康な興行を始めたお陰だと忘れないように本書を紐解いた。因みに、本書では言及していないが、千日前商店街の大看板は昨年秋に撤去された。現在の木下サーカス本部があるビルの目の前に、新しい市民会館の建設が始まっている。新しい文化の殿堂が造られようとしている。 もう文章は波乱万丈だ。今や世界三大サーカスの一翼を担う木下一族。118年前に岡山から幕を開けたという。サーカスという一般には知られていない仕組みと事業の継承に関するドラマがてんこ盛りである。絶対映画に出来る。映画並みの心踊る導入部を各章に設けて綴っている。‥‥それは読んでもらうとして、岡山に関する事を中心に私的メモを以下に残す。 ・1886年、岡山市中島(旭川の中洲にある遊郭街)に芝居小屋「旭屋」が立ち上がる。木下藤十郎30歳。唯助はその養子。蓮昌寺の高市を仕切る。 ・一代目(矢野)唯助は、西大寺観音院の裸祭りの興行の仕切りを四国や関西から取り戻した。 ・1902年、軽業一座創設、奉天、ロシアなどを回る(木下サーカス創設)。 ・1909年蓮昌寺の矢野巡回動物園(ライオン・カンガルー・ベンガルトラ・狼・駝鳥)に1日観覧者8千人。複数興行で、北海道・東北を回る。 ・1916年、唯助は大阪千日前の被災した奥田社中を取り込み、甥に軽業、曲馬主体の第二部を作らせた(後の矢野サーカス)。 ・1919年、岡山市天瀬の帝国館の向こうを張り、金馬館開設、初めて映画の昼興行を行った。大正末に若玉館も開業。さらに映画館二館、旅館、料理屋、銭湯などを同地に建設。「千日前」という歓楽街に変わる。 ・関東大震災(1923)の時に、靖国神社で「世界無比日本アームストロング木下演芸曲馬団」の準備をしていた唯助は、被災支援で都民の心を掴む。(中原中也「山羊の歌」所収「サーカス」はおそらく木下曲馬団)大儲け。一方矢野巡回動物園は閉鎖(1926)。 ・1943年9月鳥取大地震。弟の行治が準備中に圧死。 ・1945年、岡山大空襲、映画館灰塵に帰す。娘婿二代目光三、中国から帰還で妻子と離れ離れ。 ・1946年9月大阪歌舞伎座で木下サーカス復興第一公演。金馬館、文化劇場、若玉館、白鳥座の順に映画館が再築。※私たちの調査では金馬館は現在美容室になっている(昭20-33開館)、白鳥座は現在は駐車場(昭25-60開館)である。他の映画館の名前は知らなかった。 ・光三はサーカス界で初めての大学出の団長になった。団員の意識改革、近代化に努めた。 ・1950年、戦後初の芸能団体の渡米でハワイへ。 ・近代化への「革命」、丸太掛け小屋から洋式の丸テントへ。会場の不便解消、歩方や太夫元のしがらみからの解消。宣伝(新聞社やテレビ)には、軍隊の宣撫活動が役に立つ。 ・1962年一代目唯助の葬式を、千日前の文化劇場で執り行なう。花輪が千日前商店街を埋め尽くした。 ・1973年、韓国親善公演を目指して、政府に「岡山が生んだ世界三大サーカス、木下サーカス」の保護・育成を申請している。金大中事件で頓挫。タイやソウルやフィリピンなどの海外公演に拘ったのは、光三の戦中体験に関係していたのかも。誰にも何処にも語ってはいない。 ・1968年、司法試験を目指していた長男光宣を成田山の1週間断食に誘い、木下サーカスに入る事を決意させる。商店街入口に建設中の7階の「ニュー千日ビル」の木下興産専務へ。 ・1974年次男唯志が父親入院を機に銀行内定を蹴り、木下サーカス入団。週休を認めさせる。 ・1983年、光宣が三代目襲名。待遇改善、住環境の改善(トレーラーハウス)。 ・1988年瀬戸大橋博覧会会場の公演で大赤字。※坂出は本当に人出が無かった事を思い出した。博覧会ばっかりが続いていた頃で、飽き飽きしていたし、第一岡山から高い瀬戸大橋通って行く気が全く起きなかった。三億円の赤字。 ・唯志は岡山に英会話学校「プリンストン」を開講、3年間で黒字へ。 ・1990年、光宣倒れる。唯志4代目就任。負債10億円。 ・「シルク・ドゥ・ソレイユ」はプログジェット型ビジネス、「木下サーカス」は大家族ビジネスで世界一へ。 ・2018年岡山公演、西日本豪雨のあと連日35度を超える猛暑、熱波(天井付近は40度を超える)との闘いだった。一台1千万円のエアコンを8台使い凌いだ。また、大阪関空を襲った台風21号を前に千秋楽前にこの公演を畳んでいる。公演は自然との闘いである。 ・此処で告白するが、まだ一度もサーカスを見たことは無い。2018年も行きたい行きたいと思いながら、1人で行くのが恥ずかしくて行けれなかった。次回は何としてでも行きたい。
2020年02月11日
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最後の三作品は、tohoシネマズから離れて色んな映画館で観た。館独自の上映に良い作品は多い。という法則はあると思う。 「ある女優の不在(原題 3FACES)」 ドキュメンタリータッチのシニカルなストーリー、芸人と女優の間で揺れる3世代の女優、中央から見放されたようなイラン僻地の実態、というようなテーマも興味深かったが、私は初めて観るようなイランの片田舎の景色が既視感があった。 それはまるで、釜山から蔚山に行く途中に合計2回よった彼処のような崩れた土壁の村、ガタガタのコンクリートブロックの壁、四合院タイプだけど、乾いた土地らしく変形した建物、ドアの作りが韓国・中国そっくり(シルクロード関係だからか?)、放牧と果物を作って人生を終える村人たちと新しい車を乗り回しスマホを終始観る若者たちが同時にしかも百数十人規模で住んでいる村の現実(人口の新陳代謝はあるけど、なかなか未来を感じられないというのもあると思う)。 主要登場人物が3人とも本名で登場しているのは、20年間映画作りを禁じられている監督が「これは映画ではなくて記録映画なんです」と説明するための装置なのだろうか。 (解説) 『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』などのイラン人監督、ジャファル・パナヒが第71回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したドラマ。夢を断たれた少女が自殺しようとしていることを知った女優が、パナヒ監督を伴い少女の住む村を訪れる過程を、ドキュメンタリーとフィクションの枠を超えて表現する。ベーナズ・ジャファリ、マルズィエ・レザイらのほか、パナヒ監督自身も出演した。 (あらすじ) イランの女優ベーナズ・ジャファリのもとに、マルズィエという少女から動画のメッセージが届く。女優を目指すマルズィエは、芸術大学に合格したが家族によって夢を断たれたと話し、ロープを首にかけようとしていた。ジャファリは心配になり、ジャファル・パナヒ監督と共にマルズィエの住む村に行く。少女を調査をするうちに、二人はイラン革命後に起きたスター女優の悲劇を知る。 (キャスト) ベーナズ・ジャファリ(ベーナズ・ジャファリ) ジャファル・パナヒ(パナヒ) マルズィエ・レザイ(マルズィエ) (スタッフ) 監督・脚本 ジャファル・パナヒ 1月27日(月) シネマ・クレール ★★★★ 「リチャード・ジュエル」 捜査状況を明かしたFBIとそれを記事にした女性記者が、これを作ったが、それに乗った他メディアと何の見解も出さなかったFBIは次に悪い。そして、不確かな情報に乗った世間が悪い。キャシー・ベイツの記者会見を涙を流して聞くキャシーに反吐が出る。サム・ロックウェルが、すっかりこんな役がついてきた。悪のようで、実はいい役をジョジョでもやっていた。ポール・ウォルター・ハウザーは、見事な肥満ぶり。これ以降どうなるんだろう。キャシー・ベイツの助演よりも、こっちに主演をあげて欲しい。 松本サリン事件が明らかになった1年後じゃないか!アメリカはこの事件のことを知らなかったのか? 現代は、マスコミが扱わなくても、インターネットに流れるだけでこれと同様のことが起こる世の中になった。我々の情報テリラシーが問われている。 麻薬疑惑で、何処からか元アイドルの名前が何人か上がり、1人は声明を出すことになっている。我々はそんなに偉いのか? (ストーリー) 1996年、アトランタで開催されたオリンピックで爆破テロ事件が発生する。警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)が爆弾の入ったバッグを発見したことで、多くの人々の命が救われた。だがFBIは、爆弾の第一発見者だということを理由に彼を容疑者として逮捕。リチャードを担当する弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)が捜査に異議を唱える中、女性記者のキャシー・スクラッグス(オリヴィア・ワイルド)の記事をきっかけに容疑の報道は熱を帯びていく。 (キャスト) ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム、オリヴィア・ワイルド、ニナ・アリアンダ、イアン・ゴメス (スタッフ) 監督・製作:クリント・イーストウッド 製作:ティム・ムーア、ジェシカ・マイアー、ケヴィン・ミッシャー、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・デイヴィソン、ジョナ・ヒル 脚本:ビリー・レイ 1月28日(火) MOVIX倉敷 ★★★★ 「風の電話」 古来より、挽歌の伝統有り。鳥や風に託して言葉を送る。古来より、英雄(ヒロイン)は、厄災を背負いて旅をして何かを得る。 危篤状態の伯母を置いて旅をするのが非常識とか、女子高校生のヒッチハイクなんて荒唐無稽だとか、偶然が重なりすぎるとか、そういう批判はおそらく重々承知の上で作られた、いわば「英雄譚」である。 ヒロインは、佇まいだけで選ばれたのだろう。ラストの風の電話場面だけ本気でやったということもできる。それを脇が支えた。特に、福島の年寄の怨念・情念をそのまま演ったかのような西田敏行の場面は圧巻であった。 生きていりゃハラが減る。生きていなけれゃ思い出す人がいなくなる。生きているから、支え合う。そういうことを、少女は静かに納得する。 (ストーリー) 2011年に岩手県大槌町のガーデンデザイナー・佐々木格が死別した従兄弟ともう一度話したいという思いから自宅の庭に設置し、「天国に繋がる電話」として人々に広まった<風の電話>をモチーフにした作品。震災から8年が経ち、一見日常を取り戻しつつある中、ある日突然、ハル(モトーラ世理奈)の伯母が倒れ、少女の行き場の無い怒りや悲しみが、叫びとなって響き渡る。その後、少女は豪雨被害にあった広島で年老いた母と暮らす公平(三浦友和)、ハルと同じく震災で家族を失った森尾(西島秀俊)、かつての故郷の景色に想いを馳せる今田(西田敏行)など、旅の中で出会った人々のそれでも生きていくという強さに触れる。ハルは次第に光を取り戻していく。一人の少女が広島から故郷の岩手に帰り、天国につながる唯一の電話「風の電話」にたどり着くまでの道程が描かれる。 【公開日】 2020年1月24日 【上映時間】 139分 【配給】 ブロードメディア・スタジオ 【監督】 諏訪敦彦 【出演】 モトーラ世理奈/西島秀俊/三浦友和/西田敏行 ほか 1月30日(木) イオンシネマ岡山 ★★★★
2020年02月09日
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第四弾です。一月に観た作品は16と書きましたが、15の間違いでした。次回三作品で締めます。 「カイジ ファイナルゲーム 」 2020年の後、超不況に陥った日本にはものすごいインフレが起こり、350ビールが1000円になっていた。政府は慢性赤字を解消すべく、預金封鎖、新札発行を目論み、1500兆円という国民の預金の分捕りを計画していた。それを阻止するために、カイジに白羽の矢が立つ。ギャンブルで500億円のお金を倍化して、新札発行を阻止しようというのである。 ストーリーラインは無茶苦茶だけど、郵政民営化含んで、ちょっと現代を批判した部分もある。 最後のカイジ(とは言っても今回初めて見たのだが)は、何と政府に相対する。うーむ、国民の全員のために動くなんてカイジらしくない。これで終わってよかった。 最後に一文無しになるのはお約束。 (ストーリー) 2020年、国を挙げて盛大に開かれた東京オリンピックの終了を機に、この国の景気は恐ろしい速さで失速していった。 今この国では、金を持つ強者だけが生き残り、金のない弱者は簡単に踏みつぶされ、身を寄せ合うことで何とか今を生きていた―。 自堕落な生活を送っていたカイジは、派遣会社からクズと罵られ、薄っぺらい給料袋を手渡される。憤りを感じながらも一缶千円に値上がりしたビールを買うかどうか迷っていた。「久しぶりだね、カイジくん」「ハンチョウ?」声をかけてきたのはスーツに身を包んだ大槻だった。帝愛グループ企業のひとつを任される社長に出世したという。 監督 佐藤東弥 出演 藤原竜也、福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎 [上映時間:128分 ] フリーパスポート第22作目 2020年1月13日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「ジョジョ・ラビット」 1944年秋、ヒトラーユーゲントの合宿に勇躍して参加する冒頭場面に、ビートルズの歌が被さる。あゝこれはリアルじゃない、と了解する。当時のヒトラーに熱狂している写真が被さる。まるで、現代のポピュリズムを戯画化しているかのようだ。 10歳の子供から見たら、こういう世界に見える。過去は冷静に見えるから、その背後の狂気も我々は笑うことができるけど、同時代に起きれば、おそらく真面目に取り組まれる。 10歳の子供から見た、曇りのない世界が、教育洗脳の恐ろしさを背景にしながらも、屋根裏に匿われたエルサのお陰で、ギリギリのところで回避される。また、密かにジョジョのお母さんが好きだった大尉の機転のお陰で回避される。 ラストのリルケの詩が、感動的だ。 全てを経験せよ 美も恐怖も 生き続けよ 絶望が最後ではない (ストーリー) 第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラーの助けを借りて、青少年集団ヒトラー・ユーゲントの立派な兵士になろうと奮闘していた。しかし、心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺せず、教官から<ジョジョ・ラビット>という不名誉なあだ名をつけられる。そんな中、ジョジョは母親と二人で暮らす家の隠し部屋に、ユダヤ人の少女エルサが匿われていることに気づく。やがてジョジョは皮肉屋のアドルフの目を気にしながらも、強く勇敢なエルサに惹かれていく―。 監督 タイカ・ワイティティ 出演 ローマン・グリフィン・デイビス、トーマシン・マッケンジー、レベル・ウィルソン、スティーブン・マーチャント、アルフィー・アレン、サム・ロックウェル、スカーレット・ヨハンソン [上映時間:109分 ] 2020年1月19日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★★ 「ラストレター」 「岩井俊二ほどロマンチックな作家を僕は知らない」というキャッチコピーを新内誠に言わせたのは、「君の名は。」でキュンキュンさせた世代が、四年経って大人の女性になって、その世代にキュンキュンさせたかったからに違いないと踏んでいた。 その私の予測は、当たっていたとも言えるし、外れたとも言える。 当たっている部分は、手紙の復権、SFを介さない20数年の時を飛び越える過去との交叉でラブストーリーを作っていた事。老いらくの恋のキュンキュンがあった事。 当たっていなかったところは、予告CMから妹が姉に代わって手紙を出していたのは、高校時代だと思っていたので、ラブコメ漫画の王道をいくのかと予想していたら、それが見事に外れた事。思ったよりも、ドロドロとした部分を見せた事。 福山雅治は感心しなかったが、松たか子は良かった。それとゲスの男を演じた豊川悦司が、良かった。 美しい仙台の風景をスクリーンに描き止めた佳作である。 (ストーリー) 夫と子供と暮らす岸辺野裕里(松たか子)は、姉の未咲の葬儀で未咲の娘・鮎美(広瀬すず)と再会する。鮎美は心の整理がついておらず、母が残した手紙を読むことができなかった。裕里は未咲の同窓会で姉の死を伝えようとするが、未咲の同級生たちに未咲本人と勘違いされる。そして裕里は、初恋の相手である小説家の乙坂鏡史郎(福山雅治)と連絡先を交換し、彼に手紙を送る。 (キャスト) 松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一、豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治 (スタッフ) 監督・原作・脚本・編集・共同製作:岩井俊二 音楽:小林武史 主題歌:森七菜 製作:市川南 共同製作:千葉伸大、杉田成道、村松俊亮、宮崎伸夫、広田勝己、森田圭、舛田淳、長谷川晋一、永田勝美、吉川英作、林誠、石垣裕之、田中祐介 エグゼクティブプロデューサー:山内章弘 企画・プロデュース:川村元気 1月25日(土) MOVIX倉敷 ★★★★
2020年02月08日
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第三弾です。やはり力作続き。 「パラサイト 半地下の家族」 韓国題名は「寄生虫」。韓国は、坂の斜面にへばりつくように家が建っている。決して計画的に建てられたわけではない。よって道も家と家の間を通るので、かなり入り組んでいるし、階段も多い。おそらく最初の頃は上に行くほど不便になるので、下層民は下へ下へと家を密集させたと思う。ある時、坂の上に大きな道が通る。そうして、上層民は坂の上に家が建てられるようになる。あらゆる坂を歩けば、だいたいはそういう構造だ。だから、坂の下の更に半地下の家は、最下層の家族である。そういう家族が上層家族に寄生しても、バチは当たらんだろう、と考えてもおかしくはない。それが一家族だけではない、としてもおかしくはない。 地頭はいいのに、貧しいから半地下まで落ち込み、大学にも受からない、予備校にも行けないから芸大にも入れない、ずっと無職の彼らは、正に現実だ。 でも、その現実を告発する作品ではない。上と下の対比を考えれば、こうなる。そのために起きるドタバタまでは想定外だ。しかし、計画を取りやめた時から物語は、落ち着く処に落ち着く。 前の家政婦が、夫を何もせずに、出られない事故まで起こして出ていたのが負に落ちないし、正体不明のホームレスの正体に警察が気がつかないのも負に落ちないし、彼らが共謀していなかったとなったものも負に落ちない。でも、まぁあり得ると判断したならば、無計画の計画は、最高の詐欺だと思う。息子はそれに学ばなかった。あまりにも無謀な計画をたてて、つまりバッドエンドを匂わして物語は幕を閉じる。 (ストーリー) 過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる、元ハンマー投げ選手の母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン…しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“半地下住宅”で暮らす貧しい4人家族だ。“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。 ※PG12 監督 ポン・ジュノ 出演 ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン [ 上映時間:132分 ] フリーパスポート20本目 2020年1月13日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「ダウントン・アビー」 思ったよりもキッチリとした映画版だった。変わりつつある英国貴族を横糸に、英国王の「お泊まり」を縦糸に、貴族や労働者階級、保守主義と共和主義、革命主義、LGBT問題等々の様々な問題をスパイスに、2時間の間にテレビドラマのスピンオフとは思えないまとまりを見せていた。 英国の「お城」に再び泊まってみたくなる一作。 (ストーリー) 1927年。英国国王夫妻の「ダウントン・アビー訪問」という一大事に、グランサム伯爵家の長女メアリーはかつての執事カーソンと共に、パレードや豪勢な晩餐会の準備にあたる。そんな中、一族やメイドたちのスキャンダル、ロマンス、陰謀が次々と明るみに。メアリーは重要な決断を迫られることになる・・・。 監督 マイケル・エングラー 出演 マギー・スミス、ヒュー・ボネヴィル、ジム・カーター、ミシェル・ドッカリー、エリザベス・マクガヴァーン、イメルダ・スタウントン [ 上映時間:122分 ] フリーパスポート第21作目 2020年1月13日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「フォードVSフェラーリ」 フリーパスポート第23作目で、これが最後。とりあえず、フリーパスポートで1番観た。そして、もう1か月でこれ以上見る事は絶対ないだろうと思う。 さて、作品は題名に偽りあり。VSフェラーリじゃない。VSフォード経営陣である。 まだまだG-デイ等、第二次世界大戦の記憶新しい時代(64-66年の話)の、アメリカが初めてル・マンに挑戦し始めた頃の話。 24時間耐久レースの面白さは、実は私はあまりよくわからない。でも、今までの作品よりも、かなり人物に寄った話になっていた。フォード社長を実際に乗せて、要求を通したのは実話なのだろうか? クリスチャン・ベイルがやっぱりすごい。完全に役にはいりこんでいる。同じ痩せ細った役もあったのに、どうしてこうまで人が違って見えるのか?素晴らしかった。競技映像よりも、人間ドラマを重視した、真の友情を描いたドラマだった。 (ストーリー) ル・マンでの勝利という、フォード・モーター社の使命を受けたカー・エンジニアのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)。常勝チームのフェラーリに勝つためには、フェラーリを超える新しい車の開発、優秀なドライバーが必要だった。彼は、破天荒なイギリス人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に目をつける。限られた資金・時間の中、シェルビーとマイルズは、力を合わせて立ちはだかる数々の乗り越え、いよいよ1966年のル・マン24時間耐久レースで長年絶対王者として君臨しているエンツォ・フェラーリ率いるフェラーリ社に挑戦することになる。 監督 ジェームズ・マンゴールド 出演 マット・デイモン、クリスチャン・ベイル、トレイシー・レッツ、カトリーナ・バルフ、ノア・ジュプ [フォードvsフェラーリ 上映時間:153分 ] 2020年1月13日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★
2020年02月07日
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1月に観た映画の第二弾。この3作品はいずれも力作! 「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」 「とんでもない世の中になったと、あの頃は思っていた‥‥」平和の軍縮会議のために造船不況が起きて、周りが大変だった時を、19年の初めの段階で周作のお母さんが呟く。そうやって、庶民は、だんだん悪くなってゆく世の中を、悲しみながら笑いながら凌いで行く。 40分近く足したらしいけど、10分くらいにしか感じなかった。確かにところどころは、初めて見るエピはあるが、そもそも原作のファンだし、原作とほとんど変わらないのだから、泣いたところは前回と同じところ。いや、クラウドファンディングの最後のところは少し増えていた。まさかの白木リンは実は助かっていた、というような安易なつくりを、していなかったのは、さすがというか、残念というか。 庶民は、戦争も、災害も、凌いで行くしかない。 【ストーリー】 2016年公開の映画『この世界の片隅に』に約30分の新規シーンを追加し、主人公だけではない「さらにいくつもの人生」を描き出す「もう一つの物語」。広島県の呉に嫁いだすず(のん)は、夫・周作(細谷佳正)とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリン(岩井七世)と出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりを感じてしまう。昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる。 【公開日】 2019年12月20日 【上映時間】 168分 【配給】 東京テアトル 【監督】 監督:片渕須直/原作:こうの史代 【出演】 声の出演:のん/細谷佳正/稲葉菜月/尾身美詞/小野大輔/潘めぐみ/岩井七世/牛山茂/新谷真弓/澁谷天外(特別出演) ほか 2020年1月9日 イオン・シネマ岡山 ★★★★★ 「家族を想うとき」 始まった途端、観るのが苦しくなる。これは多くの処で、私が元いた職場の現実だ。「委託」(偽装に近い)の宅配ドライバーに就いたリッキーは、家族が幸せになるために無理してトラックを手に入れる。ワーキングプアの夫婦は、更にワーキングプアになるだろうという事を、私たちは日々実感している。 予想に反して、リッキーは初動でミスをせずに優秀ドライバーとして1日14時間の労働に勤しむ。妻も夫のために車を手放し不便を感じながらヘルパーをやっている(バス移動でヘルパーやるなんて信じられない)。子供の女の子は、ちょっと出来が良すぎるほど良い子だけど、長男の高校生は落書き美術に目覚めたり、万引きをしたりして夫婦を悩ませる。だけでなく、子供対応のために更に借金が重なり、子供は更に深まりにハマってゆくように思える。 今の時代、子供に前科がついたらチャンスがあっても「勝ち組」になれない。リッキーは焦って、更に子供を追い詰める。そんな時に更に悪いことが‥‥。 家族誰も悪くない。誰も頑張っている。 私の元いた職場でも、「委託配送」があった。熱が40度出ても、体制が整うまで配達させられた。風のためにガラス戸が割れても弁償させられた。休みは少なく、給料は正規職員よりも低い。労働組合を作って、「職場内改善」に取り組むことを始めたはずだけど、今はどうなっているやら。 90年代の終わりに労働法制の「規制緩和」とか「新自由主義」という名の「改革」が始まって、あっという間に職場環境はそういう風に変わっていった。英国の問題ではない。日本を含む世界の問題なのだ。 ケン・ローチの現代ものは、そうは言っても明るい希望で終わらせる話が多い。この作品には、それがほとんどない。出口が見えないからである。高校生はいうだろう。「前科がつかなくて、真面目に学校に行って、真面目に働けば家族は幸せになるのか?そうはならないだろ?何を綺麗事言ってんだ」寡黙な彼の気持ちがよくわかる。彼にかける言葉はない。けれども、彼は最後には家族に帰ってきた。希望はないけど、そこにのみ少し光が見えた。 今年のベストの一つになると思う。 (解説) 『麦の穂をゆらす風』『わたしは、ダニエル・ブレイク』などのケン・ローチ監督が、働き方の変化と時代に振り回される家族の姿を描いたヒューマンドラマ。イギリスのニューカッスルを舞台に、懸命に生きる家族の絆を映し出す。クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーンらが出演する。脚本は『天使の分け前』『エリックを探して』などローチ監督作を担当してきたポール・ラヴァティ。 (ストーリー) マイホームを持ちたいと考えている父のリッキーは、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立する。母のアビーは、介護士として働いていた。夫婦は家族の幸せのために働く一方で子供たちと一緒に居る時間は少なくなり、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンはさみしさを募らせていた。ある日、リッキーが事件に巻き込まれる。 (キャスト) クリス・ヒッチェン(リッキー) デビー・ハニーウッド(アビー) リス・ストーン(セブ) ケイティ・プロクター(ライザ・ジェーン) ロス・ブリュースター(マロニー) チャーリー・リッチモンド(ヘンリー) ジュリアン・アイオンズ(フレディ) シェイラ・ダンカリー(ロージー) マクシー・ピーターズ(ロバート) クリストファー・ジョン・スレイター(ベン) ヘザー・ウッド(モリー) アルベルト・ドゥンバ(ハープーン) ナタリア・ストーンバンクス(ロズ) ジョーダン・コラード(ドッジ) 1月12日(日) シネマ・クレール ★★★★★ https://longride.jp/kazoku 「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(吹き替え) 2回目鑑賞。吹き替え版を観ました。前半は、かなりギャグテイストの掛け合いだったことがわかりました。だからこそ、後半が生きるのです。 テーマは、英雄譚なんですが、もう一つのテーマはやはり「父親殺し」です。家族はそうやって更新されていくわけなんですね。 それと、フィンがレイに話そうとしたことは、遂にはまともに出てきませんでしたが、レイの出自の話だったのか、それともフォースの話だったのか、人と話し合ってみたい。 フォースとは何か。今回は、かなりはっきりした気がします。 私は傑作だと思います。 (ストーリー) はるか彼方の銀河系で繰り広げられる、スカイウォーカー家を中心とした壮大な<サーガ>の結末は、"光と闇"のフォースをめぐる最終決戦に託された─ 果たして、彼らを待ち受ける運命とは?そして、いかなるエンディングを迎えるのか? 監督 J・J・エイブラムス 出演 デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、マーク・ハミル、ビリー・ディー・ウィリアムズ、キャリー・フィッシャー [上映時間:142分 ] 2020年1月6日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★★ フリーパスポート第18弾
2020年02月05日
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一月に映画館で観た作品は16作品でした。14日までは、TOHOシネマズフリーパスポート継続中であり、かなり多くなった。5日にかけて紹介します。一月は、実は後半に力作が多かった事を付け加えておきたい。 「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」 ジャンプらしいマンガでした。 なんか、延々闘っていて、ドラゴンボールを見ていたような感じ。 (ストーリー) 雪が降り続く冬のある夜。ヒーロー社会を壊そうと目論む死柄木弔が率いる敵<ヴィラン>連合とその動きを事前にキャッチしたヒーローたちの戦闘が繰り広げられる中、人知れず静かに蠢く【何か】が目覚め、その場を去って行った。ちょうどその頃、出久たち雄英高校ヒーロー科1年A組の面々は、引退したNo.1ヒーロー・オールマイトの後を継ぐ“次世代のヒーロー育成プロジェクト”の一環として、クラス全員で期間限定の校外ヒーロー活動のために日本のはるか南に位置する離島・那歩島(なぶとう)を訪れていた。 監督 長崎健司 出演 声の出演:山下大輝、三宅健太、岡本信彦、佐倉綾音、石川界人、梶裕貴 2020年1月1日 TOHOシネマズ岡南 ★★★ フリーパスポート16弾 https://heroaca-movie.com/ 「英雄は嘘がお好き」 最近英国の1812年前後の作品ばかり観ていたので、その当時の仏国の貴族の生態が面白い。「もう中世じゃないのよ」と宣うエリザベット嬢が、新時代を表している。 そうそう、フレンチコメディはこうだった。かなり毒を隠している。 (解説) 19世紀のフランスを舞台にしたロマンチックコメディー。妹のために姉がついたうそが思わぬ騒動に発展する。『アーティスト』などのジャン・デュジャルダン、『イングロリアス・バスターズ』などのメラニー・ロランらが出演する。メガホンを取るのは『おとなの恋の測り方』でもジャンと組んだローラン・ティラール。撮影は、実際に存在する城で行われた。 あらすじ 19世紀初頭のフランス、ブルゴーニュ。ボーグラン家の長女エリザベット(メラニー・ロラン)は、一向に戦地から戻ってこない婚約者のヌヴィル大尉(ジャン・デュジャルダン)を待ち続ける妹ポリーヌ(ノエミ・メルラン)のことを気の毒に感じていた。そこで彼女はヌヴィルを装って妹に手紙を書いて送り続け、最終的に戦場で活躍して戦死したことにする。それから3年後のある日、エリザベットは街でヌヴィルと出くわす。 キャスト ジャン・デュジャルダン(ヌヴィル大尉) メラニー・ロラン(エリザベット) ノエミ・メルラン(ポリーヌ) クリストフ・モンテネ(ニコラ) フェオドール・アトキン(モルティエ=デュプレシ将軍) スタッフ 監督・共同脚本 ローラン・ティラール 2020年1月2日 シネマ・クレール ★★★★ 「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション 」 様々なお約束は、全く知らずに観ました。 過去の仮面ライダーと全く違うのは、主人公たちが中東の少年兵士と見紛うほどに、バリバリに銃や機関銃を使い、機械人間といえどもヒューマギアたちを殺しまくる映画になっていました。内容は、完全にほとんど戦争場面です。観客対象は、完全に小学生以下です。仮面ライダーの1人が「ヒューマギアは人間の道具なのよ」と言って殺す場面もあります。建前は、「人類抹殺」を目指す悪のヒューマギアに対し、「人間とヒューマギアの共存」を謳っているのですが、これでは全く信用できません。 悪影響しか及ぼさない。酷い作品です。 (ストーリー) 「‥‥夢を忘れず、戦え」或人が目覚めるとそこは、いつもの日常ではなく人工知能搭載ロボ・ヒューマギアに支配された世界だった・・・!社長の座もヒューマギア・ウィルに奪われ、ヒューマギアたちの人間抹殺が激化する最中、現れたのは仮面ライダーの記憶を失くし、学生として過ごしていたはずのソウゴ・ゲイツ・ツクヨミ、そしてそこにはウォズの姿も。 元いた世界を取り戻すべくソウゴたちとともに12年前にタイムトラベルした或人を待ち受けていたのは、仮面ライダー1型なる兵器を開発しヒューマギアを守るために戦う父親ヒューマギア・其雄と、謎のタイムジャッカー・フィーニス。何故、其雄は仮面ライダー1型になったのか。 監督 杉原輝昭 出演 高橋文哉、岡田龍太郎、鶴嶋乃愛、井桁弘恵、中川大輔、砂川脩弥、奥野壮、押田岳、大幡しえり、渡邊圭祐 [上映時間:98分 ] フリーパスポート第18弾 2020年1月6日 TOHOシネマズ岡南 ★
2020年02月04日
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「図書2020年2月号」 表紙。氷原の中で巫女のような人が、蝶やら花やらの音楽を鳴らしている絵。司修さんが96年1月23日に見た夢を描いているそうだ。稀代の音楽家・武満徹さんが南極の氷原で鑿をふるっていたそうだ。夢だからその他いろいろあったのを正確に書き留めている。その約1か月後、武満徹さんの訃報に接するのである。こういう話が広まると、やはり予知夢ってあるんだ、となるからおそらく今になって書いたのだろう。 巻頭投稿は市井の歴史家・渡辺京二氏。些細な事(けれどもかなり専門的)にこだわった顛末を延々と書いた後「こういう何の意義もない営みが、結局生命活動なのではないか」と呟く。89歳の偏屈さが前面に現れて、彼の仕事(『逝きし世の面影』等)を理解していなければ老害の文章としか思えないものでした。 岩波現代文庫創刊20周年を受けて成田龍一氏が「『戦後知』の収蔵庫」を書いて、短文でキチンと整理していました。 柳広司さんが直近の自著『太平洋食堂』について、全面的に解説していました。なんと、大逆事件に全く関与していなかったのに、和歌山県新宮市で逮捕され処刑された大石誠之助についての小説でした。貧乏人からは金を取らない事をモットーにしたお医者様でした。一つ大石の文章で印象的なものを記す。此処の「電話開通」を「オリンピック」と置き換えて読んで欲しい。 昨年、我が町に初めて電話の開通した時、これを主導した有為会の連中は至極立派な装飾と御馳走を為して、逓信大臣を招き、一等局長を迎え、地方の官公吏を呼び、その他あらゆる紳士階級のお客を網羅した祝賀会を開いて、甚だ盛んなお祭り騒ぎをした。実に新宮の天地を振動するほどの馬鹿騒ぎをやった。(略) 酒を飲みたくば毎日でも飲みに行け、女を呼びたくば毎晩でも呼んで遊べ。しかし之を公に電話開通の名によって行い、大びらに地方繁栄の仮面を被ってやることだけはやめてくれ。殊に工事費として彼らが保有している金をそのまま押さえておいて馬鹿騒ぎの費用に流用する事は、僕一己として断然不服である。 柳さんは言う。「『天地を振動するほどの馬鹿騒ぎ』など、現在の東京の馬鹿騒ぎに比べればほんの子供騙しのようなものだったでしょうが」。この明らかな自著宣伝(小学館で刊行)を「図書」でやる岩波の懐の不思議さ。 鹿子裕文氏の「何を今さら『方丈記』、されど今こそ『方丈記私記』(下)」は、何を今さら『方丈記私記』とも私は思ったのだが、考えてみれば私が堀田善衛『方丈記私記』を読んだのは15年前に過ぎず、鹿子さんは私とほぼ同じ、いや私以上に現在の政治状況とシンクロさせて読んでいた。確かにそうだよ。15年前よりもっと酷くなっている。「何をやっても罪に問われない連中がいて、子供騙しのうそをついて逃げ延びられる連中がいる。利権にありついた者たちは、こぞって私腹を肥し、親分の機嫌を害さない限り安泰だ」。はからずも、大逆事件で殺された大石誠之助と同じ事を鹿野さんが言っている。現代はこういう事を言い捨てできるから昔とは違うんだよ、と貴方が思ったのだとしたら、ナチスを例に出すまでもなく、それは一昼夜で変わり得ると私は言っておきたい。鹿野さんは宮崎駿の新作は、実は内実は『方丈記私記』なんだろうと推察する。私もそう思う。 高橋三千綱「帰ってきたガン患者」、赤坂憲雄との往復書簡の藤原辰史の『ナウシカ考』の感想、長谷川櫂「『こころ』の深層」も面白かったのですが、長くなるので此処迄。 「図書」は「Amazonあわせ買い対象商品」 ご注文合計額が¥2,000 (税込)以上の場合、購入いただけます。価格: ¥102
2020年02月03日
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「私の日常道徳」菊池寛 青空文庫 予想以上の短文だった。もっと「思想・信条」が全面的に書かれているものと予想して読んだのですが、カネの貸し借りはどのような基準にしているとか、そういう話でした。一般的に金持ちの部類に入る彼としては、極めて常識的な意見を書いていたと思います。 菊池寛は、芥川賞・直木賞を始めた今で云うインフルエンサーです。一方で戦時中に文学者として戦争協力を惜しまなかった人です。そういう彼を虚心坦懐に先ず「読んで」判断しようとしたのですが、こんな短文ではわかりません。ちょっと楽をしようとし過ぎたようです。 これは納得いかない、これは共感する、という意見の分かれる部分が経験的には重要なことが多いのですが、此処ではこういう一文でした。 ・私は往来で帯がとけて歩いている場合などよくある。そんなとき注意をしてくれると、いつもイヤな気がする。帯がとけているということは、自分で気がつかなければ平気だ。人から指摘されるということがいやなのだ。そんなことは、人から指摘されなくても、やがては気がつくことだ。人生の重大事についても、これと同じことが言えるかも知れない。 貴方はどう思いますか? もしかしたら、これが戦争協力に走った一因かもしれない、などと又無責任な事を思ったりします。
2020年02月02日
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「世界の本屋さんめぐり」ナカムラクニオ 産業編集センター 外国に行ったら(とは言っても、ここ20年間で行ったのは、韓国、台湾、ベトナムだけだけど)、本屋さんを覗くことにしている。その国や地域の文化が、何を目指しているのか、少し推察できるからである。面白いことが聞けるかな、と思って紐解いた。 著者の紹介した韓国、台湾の記事は私の知らなかった部分があった。例えば、ソウル光化門広場では、一箱古本市をやっているそうだ。覗いてみたい。現存する最も古い古本屋「大悟(テオ)書店」は喫茶店みたいな仕組みで残っているそうだ。台湾には独立系の個性派書店が多いらしい。台南には、図書館スタイルのブックカフェ「Room A」があるという。どっちにせよ、行ってみないとその雰囲気はわからない。 一方、ソウルの本屋で感じた品揃えの特異さ(詩集が多く、英語・日本語等の留学関連が多い)や、地方都市でのあまりにも本屋の少なさ等のことは、何処にも無かった。 丸善の宣伝誌「書標(ほんのしるべ)」では、毎回世界の本屋さんを紹介している。そういうのを予想していたら、ちょっと違っていた。写真が一切無いのである。写真撮影を断られるところもあるだろうからかもしれない。全て著者本人の「絵」で統一されている。そうなるとどうなるか。美しい絵だけが並ぶ。著者の見せたい部分しか、見ることはできない。文化を「推察」することは出来なくて、その国の突出した「特徴」だけが知らされる。 おそらく、もうヨーロッパに行くことはないだろう。でも、その時にこの本は参考にならないと思う。
2020年02月01日
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「ラストレター」岩井俊二 文春文庫 本が先か、映画が先か。という議論があって、普通は、どちらでも良い、というのが結論なのだけれども、この文庫本に関して言えば、映画を先に観るべきだ、或いは小説を読んで忘れかけた頃に映画を観るべきだ、というのが私の偽らざる感想です。何故ならば、小説を脱稿しておそらく一年有余、脚本化に当たって大きな変更があったからで、小説を先に見ていたらそれが気になって鑑賞に集中できなくなるのが目に見えていたからです。私はラッキーだった。映画を観た翌日に、コレを紐解き、そして一気読みしました。 映画を先に観て良かった。登場人物は既に、松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治以外の風貌と「声」以外では脳内変換出来なくなっています。ある程度は書いて良いのかもしれないけど、あえて粗筋紹介は省略します。ただ、何度も写された映画のCM映像は、わざとミスリードする様に作られているということは言っておきたいです。仙台の雨に濡れた遠野家、透明な少女たちの佇まいは、映画ならではでした。こっちは、単なるノベライズではありません。独立した小説でした。「ラストレター」の意味は、映画と小説では違います。 映画を観て違和感を覚えた方に言っておきたい。昭子祖母の老いらくの恋の経過があまりにも急展開だったのは、映画マジック。小説では、ちゃんと当たり前の時間が流れていました。 松たか子も、広瀬すずも、庵野秀明も、森七菜も、豊川悦司も、中山美穂も、神木隆之介も良かったのだけど、唯一福山雅治が2回「真相を知る場面」があって、その演技に納得がいかなかったのが、私がこの本を紐解いた動機です。結果は、小説でも描写できていませんでした。けれども、ストーリー全体を見渡した時に、私は福山のあの演技は未だ不十分と思っています。 男には、人生を左右するような「失恋」というものが、一回はあって、それを美しく描いた作品だったと思います。 「岩井俊二ほどロマンチックな作家を僕は知らない」と新海誠に言わせたのは、「君の名は。」でキュンキュンさせた世代が女性として成長した今、大人の女性としてキュンキュンさせたいと映画製作者側が考えたからに違いない、と私は踏んでいます。その狙いは、どうだったか。むしろ、小説の方が、あらゆる世代の女性(男性も)をキュンキュンさせるに違いないと、私は思います。
2020年02月01日
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「畿内 古墳探訪ガイド(改訂版)」松本弥 メイツ出版 百舌鳥・古市古墳群の世界遺産認定を受けたからだと思うが、昨年11月に改訂版が出された。著者は松本弥さん。日本の考古学者でもなければ、最近多い市井の趣味人でもない。エジプト古代史学者である。そのせいか、素人が分かりやすい体裁を持ちながら、専門的なツッコミもある。私的にピッタリなガイドだった。 特に全ての地図にGoogle Earthの図版を使用しているのが良い。遺跡というものは、よっぽど有名でないと、観光地図にも載っていなければ、近所の人も知らない。「えっ?裏山が古墳だったの?」と驚かれることはしょっちゅうである。地形や山が直ぐに分かる写真は、古墳探訪にピッタリだと思う。場所は「所在地」「座標軸」もあるからスマホ検索で特定できる。アクセス方法も詳しい。その他、探訪に便利な編集がされている。 ほとんどの写真は、松本さん家族が撮り貯めてきた物らしい。時々、墳頂から見える景色が載せられている。こういうのが大切なんですよ、古墳巡りは!そこから色々想像するロマンが、遺跡巡りの真骨頂です。 県ごとにまとめてはいますが、その中で地域ごと、歴史順に載せています。通して読むと、文献にはない古代史を「想像」できるように構成されています。松本弥さんの想いをこういう所からも汲むことができる。 多くは、既に探訪した地域ではあるが、正直「こんなにもとりこぼしていたのか!」と絶望的な気持ちにもなった。まぁ目標ができたから嬉しい。 その中で、京都山城は全然探訪していなかった。弥生重要遺跡でもある森山遺跡、庄内式土器が出土した芝が原古墳、それらを解説した城陽市歴史民俗資料館があり、いかねばならない地域になった。 ※松本弥さんは、箸墓の宮山型特殊器台は、総社の宮山展望古墳(この名称は何処から来たのか?我々は宮山遺跡としか見ていない)からしか出土していないことを大きく重視している。改めて、調べてみたい。そもそも箸墓とここがリンクしているのならば、弥生時代末とすると、50年の間隔がある。この特殊器台は、果たしていつの時代のものなのか? 位置 34°39’39”N 133°44’51”E
2020年01月29日
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