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2008.07.18
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カテゴリ: Movie
イヴォンヌ・ド・ブレという巨星が落ちたあと、運命のようにマレーとともに舞台に立つことになった輝ける新星、ジャンヌ・モロー。ブッフ座での『地獄の機械』は、芸術監督のマレーが主演・演出を務めた。モローの役はスフィンクス。ところが、稽古を始めてみると、マレーはモローの依怙地で頑固な態度に手を焼くことになった。マレーの演出を彼女はことごとく無視した。モローにはモローのスフィンクスのイメージがあり、譲りたくなかったのだ。


「君の指示を聞かないって?」
「そうなんだ。最初は指示が理解できないのかと思ったよ。でもそうじゃない。ジャンヌはちゃんとわかったうえで、わざと無視してる」
「困ったものだね。君に言われて映画でのジャンヌを見たけど、大変に知的だ。あれだけの素質をもった女優はそうは見つからないよ。あの眼の強さは、まさしくイヴォンヌに匹敵する」
「だからぼくも悩んでるのさ」
「役を降ろすのかい」
「いや、彼女に替わる舞台女優はいないよ。今回ぼくはブッフ座の運営のことを考えなけりゃいけない。新しいスターが必要なんだ。ぼくが舞台に立たなくても客を集められるような、ね」
「なるほど……」


初日の幕が開くと、『地獄の機械』は大評判となった。50回の予定だった公演だったが、100回以上は上演した。1ヶ月後、ジャンヌ・モローがマレーのところにやって来た。

「私が間違っていたわ。あなたの演出に従うべきだった」
「やっとわかってくれたか」
「私のスフィンクスには無理がある。イオカステやオイディプスと調和していない。ロングランが続いたら、もっとボロが出そうよ。あなたのスフィンクスに戻せるかしら」
「ジャンヌ、それはダメだよ。もう君は別の軌道で走っている。いまさら迷っちゃいけない」
「でも……」
「自分を信じるんだ。ぼくに言えるのは、今の君もまったくもって素晴らしいってことだけさ」

マレー版『地獄の機械』が成功したことで、コクトーのこの20年前の戯曲は再び脚光を浴び、さまざまな演出家が手がけるパリの舞台劇の定番となっていく。

マレーのほうは『地獄の機械』を演じつつ、モローの夢である『ピグマリオン』上演の準備に入った。ヒギンズ教授役に舞台装置。この役はマレーには難役だった。ヒギンズ教授は言語学の専門家。相手のちょっとした訛りを聞いただけで出身地を言い当て、イライザの発音を徹底的に矯正していくプロ中のプロ。ところが、ジャン・マレーという俳優は、批評家からしばしば発声の歪みを批判されていたのだ。コクトーは訛りを好み、マレーの発声を決して矯正しようとはしなかった。またその歪みが一種の個性になっていたのも事実だった。

だが、ヒギンズ教授役はそうはいかない。マレーにとっては役者人生でも最大の挑戦といってよかった。自分の発声の難点を克服する時間を取るため、マレーは演出はジャン・ウォールという友人に頼んだ。

そこへ映画監督のマルク・アレグレがやってくる。

「ああ」
「ぼくの次の映画で、彼女と契約したんだ。君にも是非出てもらいたいんだけど」
「マルク、今は映画は無理だよ。まだ『地獄の機械』が終わっていない。舞台をやりながら『ピグマリオン』の舞台装置を考えないといけないし、ヒギンズ役の勉強もしないと」
「でも、『ジュリエッタ』は大受けだったよ。フランス以外だと、南米で特に評判がいい」
「へえ……」


何度も断わるマレー。だが、アレグレは毎晩のように楽屋にやってきて、マレーを口説いた。マレーの気が進まない理由はタイトなスケジュールのほかに、アレグレの次作『未来のスターたち』でのブリジット・バルドーの役が、ワグナー歌手だったこともあった。確かに、15歳のセクシーな少女ジュリエッタにバルドーはピッタリだった。だが、彼女がワグナー歌手になれるとは到底思えなかった。

それでもアレグレの熱意に最後は譲らざるをえなかった。マレーは一緒に暮らしているアメリカ人のバレエ・ダンサー、ジョルジュ・ライヒにも役をつけるよう頼んだ。

さらに「不幸」なことが起こった。『ピグマリオン』の練習に入って3日とたたないうちに、ジャンヌ・モローが演出が気に入らないとゴネ始めたのだ。

「ジャン・ウォールの演出には耐えられないわ。私の思ってることと、あの人の指摘とは、いつも正反対なのよ」
「それじゃ、誰の演出ならいいの」
「あなたよ」
「ジャンヌ、君は『地獄の機械』のぼくの演出に、今のウォールと同じことを思ったんじゃないのか」
「あのときの私は未熟だったのよ。あなたの意図が理解できなかった。でも、それを知るためには自分の考えを通す必要があったと思ってる。もしあのとき、イヤイヤあなたの指示に従っていたら、今でもあなたの正しさを理解できないでいたわ」
「ウォールに対しても同じように考えられないのかい?」
「イライザは私の夢よ。私はこの公演を成功させたいの」
「それはぼくだって同じだよ」
「だったら、ジャン・ウォールか私か、どちらかを選んでちょうだい。あなたとなら誰にも負けないイライザを作る自信があるわ。でもウォールではダメ。嫌だ嫌だと思いながらいい演技はできないでしょ」
「何がそんなに気に入らないの」
「ウォールにとってのイライザは、本当に単なる『大理石の少女』( =注:ピグマリオンとはギリシア神話で大理石の少女に恋した男性) なのよ。無知で愚かで可愛いだけお人形。それをヒギンズが作り変えたというのね。でも私の解釈はそうじゃない。イライザはもともと賢い女性だったの。ヒギンズは彼女の隠れた知性を引き出すのを手助けをしただけ。イライザはウォールが考えてるより、ずっと自発的な女性よ。彼女は自分からヒギンズ教授を愛したの」
「確かに君は、『大理石の少女』じゃないかもしれないね…… でも、話しただろう? ぼくはあまりに忙しいんだよ。舞台装置とヒギンズ役、それに映画も撮らなくちゃいけない。だから演出までは断わったんだよ」
だが、モローは聞く耳をもたなかった。
「選ぶのはあなたよ。ウォールか私か」
一方的に宣言して、稽古場を出て行ってしまう。

新人のくせに、どこまでもチョ~強気なジャンヌ・モロー――だが、彼女の才能はマレーにとってすべてに優先した。マレーはやむなくジャン・ウォールを犠牲にし、演出を引き受けた。

舞台装置の製作、衣装の仮縫い、映画と舞台の役作り。すべてが同時進行で、マレーは自宅に帰る時間すらなくなった。劇場の前のホテルに一室を借り、睡眠時間は毎日たったの2時間。多忙を極めるスケジュールの中でも、特にマレーが力を入れたのは、ヒギンズ教授役のための自身の発声の歪みの矯正だった。歯の間に鉛筆を挟み、発声を一から、徹底的にやり直した。こうして声の歪みを取り除き、舞台に臨んだ。

『ピグマリオン』は大成功だった。劇場は連日満員となった。モローは絶賛され、一躍スターとなった。マレーの発声について批判する人間は、この作品を境に姿を消した。若いスターを育てるというマレーの目的も、見事に達せられた。

この時期、ジョルジュもリドを離れ、自分のバレエカンパニーを結成した。もちろん、マレーはできる限り支援した。ブッフ座にバレエのためのオーケストラボックスを設置し、リドのオケに話をつけ、ジョルジュのバレエカンパニーの結成記念公演を行った。舞台装置も衣装デザインもマレー。劇場は満員となり、マレーが座席案内係まで買って出た。

このころのマレーの舞台はすべてが順調だった。1956年末には、サラ・ベルナール座でバーナード・ショーの『シーザーとクレオパトラ』に出演し、これまで演じたことのない老け役で人々を驚かせた(このときの役作りについては 5月12日の「ファントマの魅力」のエントリー を参照)。






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最終更新日  2008.08.07 01:19:44


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