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養老の滝
むかしむかし、奈良時代、美濃の国の山里に、源丞内(げんじょうない)という名の、たいへん親孝行な若者がいました。
ひどい貧乏で毎日の食べる物にも不自由する暮らしでしたが、年取った上にアルコール依存症で働かない父親のために出来るだけ働いて生活費とを稼ぐしかありませんでした。
その父親は何よりもお酒が好きで、朝から晩まで飲み続け、家にお酒がなくなると暴れだし手に負えません。
生活費といってもほとんどが酒代に消えていきました。
「おとうさん、これぐらいでかんべんしてくださいね。もっとうんと働いて、お酒をいっぱい買ってきてあげますからね。かんべんしてね、かんべんしてね」
丞内は父親のお酒が切れて殴る蹴るの乱暴をされないように、少しでも酒代を稼ぐため奥山にわけ入って、たきぎを取るのでした。
そんなある日、丞内は栄養失調から来るめまいで岩から足をふみはずして、あっと言う間に谷底へ転がり落ちてしまいました。
頭の打ち所が悪かったのか、しばらく気を失っていましたが、夢の中で酒のにおいがしました。
眼をさましてもまだ酒のいいにおいがします。
体を起こしてあたりを見ると、岩かげから水の音が聞こえてきます。
若者がかけよると、そこには見上げるばかりの滝が、しぶきを立てて流れ落ちていたのです。
若者は足元に泡立つ水を手にすくって、口にふくみました。
何とそれはただの水ではなく、これまで飲んだ事もないような、上等のお酒だったのです。
「ああ、ありがたい事だ。これを持ち帰れば、もう、おとうのために人生台無しにしなくていい」
若者は腰にさげたひょうたんにお酒をくみとると、急いで家に帰りました。
「どうした、今日は馬鹿に遅かったな。逃げたんかと思ったよ。もう酒が飲めねえかと心配したわ。ん? お前、酒くせえな、どういうこっちゃ? 殴るぞ」
息子はニコニコしながらうなづくと、ひょうたんのお酒を父親に差し出しました。
「まあまあ、今日はいいおみやげがあるんですよ。これをちょっと飲んでみてください。ごたくはその後並べろや」
一口飲んだ父親は、目を丸くしました。
「こんな上等な酒を、わしはこれまで飲んだ事がなーい。いったい、どこで手に入れたんじゃ?」
息子は山奥で起きた不思議な出来事を話して聞かせると、父親は言いました。
「わーい、それは、お前がいつもいつも親孝行をしてくれるので、神さまがちゃんと見ていて、ごほうびにくださったのだよ。めでたし、めでたし」
おとうさんは息子の手を握り、ぽろぽろ涙を流してよろこびました。
この話は間もなく、奈良の都の時の帝、元正天皇の耳に伝わりました。
天皇陛下はたいそうテンションが上がって、親孝行の丞内に山ほどのごほうびをくださり、酒税は無税になり、丞内は美濃の守に任ぜられました。
そればかりか年号を「養老(ようろう 717年11月17日に改元)」とあらため、
その滝は「つぼ八」と呼ばれました。
おしまい
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