詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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2015年03月28日
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カテゴリ: 詩集Link

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誕生日に買ってもらった

ヴィジュアル・ディクショナリー、

どのページも、ほんとにきれい。

パピルス、羊皮紙、粘土板。

食用ガエルの精巣について調べてみた。


田中宏輔「みんな、きみのことが好きだった。」より


   *


  墓



 月はこぼれた。



 通夜がおこなわれている。

 (テニスボールに見えたものが、

 ラグビーボールに見える、

 餃子に見える、

 トンネルに見えてくる、)

 ・・・兄が言う。

 墓参りはしない、と。

 成程、

 宗教離れですね。

 さらに続けて、墓に骨を、

 いれられたくない。



 ――賛同。

 海に撒いてください、火葬して、

 骨を犬にあげてください。

 なんだったら地獄の門-ダルヴァザへでも。

 ・・・でも境内にいる、



 通夜はやはり行われている、葬儀、告別式、

 火葬、遺骨迎え、埋葬、あとは法要。

 香典は不祝儀用ふくさに、

 酒は必ず用意する、軽食でも、

 盛大な精進料理にかかわらず。

 そんな風に先祖や歴史のつながりが、

 更新されている。古い書物がひもとかれぬまま、

 常識だのを振りまわすガイドブックをめくりながら。

 (御神燈はほおづきのようなあかり。

 遺影は絵に描いたようなうさんくささ。

 公孫樹の樹に、松の樹に、杉の樹。

 世間を逃れる隠遁-山里志向をそそる。)

 ――でも二十九にもなって、

 墓参りしたくないなんて馬鹿だって思う、

 葬式にも出ないなんて言うのは馬鹿だ、

 社会はそうなんだよ、

 面倒くさくてもそれが伝統なんだよ、

 と思いながら、

 しかし一体それがどんなに、

 それがどんなに―――。

 「昔はあの月にも月宮殿とやらがあったとか・・・。」

 ありましたか・・?

 おもむろに口を開く、記憶の中。

 竜宮城でもらった玉手箱。

 魅入られでもしたように呆然となる。

 あの月。

 「若い人が自殺をしているそうですね・・・」

 死にたい人は、

 もう死なせてやりなさい。

 止めても無駄だし、

 そんな馬鹿の為に考える時間が勿体ない。

 それに死にたいのが好きなら、

 わざわざ生きることはない。

 (狂いたいのが好きな人もいれば、

 真面目や堅物なのが好きな人もいる。

 好きにやらせてあげんさい!)

 極楽浄土へでも好きなだけ行くといい。

 お前の好きな嘘の世界を信じ続けるのが吉!

 ...白っぽい埃屑。

 ――淋しげな甲高い犬の鳴き声、

 そのあとに、鹿鳴。

 そして私はしばらく寺の壁の一点を、見つめていた。

 (新薬の話で、十年五十億という話を聞いた。

 嘘だとは思わないけど、多少は盛ってるかも知れない。

 けれどすごい話だ、新薬と墓。新訳と墓・・。)

 ・・・少し前に夜の墓へと行きました。

 兄を連れて墓参りです。

 花を買って、お茶を買って、お菓子を買って。

 でもタオルを忘れて、

 墓の周りの草も抜きませんでしたが。

 (これも新しい古墳なのだと思ったんですよ、

 これこそが文化のもっともいらないものだと、

 思ったんですよ――。)

 ・・・呪いとか、罰当たりとか、

 あるはずがないじゃありませんか。

 言霊思想とか、アミニズムとか、

 数珠玉とか、霊石だとか、

 そんなものが間違った形で人を騙すなら、

 のさばらせるくらいなら、

 のさばりつづけているくらいなら――。

 「白色矮星って、蛍みたいですよね・・・。」

 そうですか・・?

 おもむろに口を開きたくなる、記憶の中。

 金剛石のような、それすら、風に吹かれているようで、

 いつの日にか、星の名前も変えられるでしょうか?

 あの月も・・・・・・。

 でも写真で十分じゃないでしょうか。

 墓参りをしなくても十分。

 大切なのは心ではありませんか。

 愛や、正義を信じている情熱ではありませんか。

 先祖を思いやる気持ちが本当なら、

 そこに感謝と真心があれば本当に十分。

 神社や寺もいらない。

 なまぐさ坊主もいらない。

 ――無数にうがたれた空の漏斗から、

 氷のかけらのように光る。

 ふっと思う。

 みんな、本気で泣いたかい?

 そしてみんな、そこでちゃんと人生を噛み締めたかい。

 両手いっぱいにかかえた瓦礫を、

 宝石に変えることはできたかい?

 ・・・月は空しい速度でしずんでゆく、

 太陽はあかるくかがやかしい速度でのぼってゆく、

 カーテンを開ければ、朝だ。

 そして朝、歯を磨き、顔を洗う。

 誰が死のうが、生きようが、

 そんなの構っていられない世界だけれど。

 墓参りのあたらしい形を見つけようよ。

 墓を撤去してその代わりに樹を植えようよ。

 どうせならもっと先に残るものを作ろうよ。

 もっと先の人が喜ぶことをしようよ。








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最終更新日  2015年03月30日 06時43分26秒 コメントを書く


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