まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2005.04.05
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カテゴリ: 不機嫌なジーン
仁子ちゃんが負った肩の傷をのぞきこんで、


「お前は、・・アホだ」

このセリフ、すごく印象に残ってます。

あまりに傷が些細なものだったので、呆れて言ったのかもしれないけど、
でも、その反面、
すごく仁子ちゃんをいとおしむような、
いろんな気持ちのこもった言い方でした。

それは、

という意味もあるけど、
仁子ちゃんが政治に首をつっこんだことが「アホ」だ、
という意味でもあるし、
自分の立場を危うくしてまで国を敵に回したことが「アホ」だ、
という意味でもあります。

でも、本当は、
有明海の事実を仁子ちゃんが明らかにしたことで立場が危うくなったのは、
仁子ちゃんよりも、南原教授自身だったはずです。
事実、彼はそのことでマスコミに追われ、日本にいられなくなってしまうから。

南原教授は、そのことを当然、予測できていたと思う。

でも、彼は、

そのことで、仁子ちゃんを責めたりもしませんでした。
むしろ自分のことよりも、仁子ちゃんのことを心配していました。



あの病院のシーンというのは、
2人の立場のズレがいちばん先鋭になってしまったときのシーンです。
にもかかわらず、

また、相手を責めあったりすることもしませんでした。

ただ、
「怖かったよう・・」と泣き出した仁子ちゃんを、
教授がしずかに抱き締めるだけだった。


お互いのことを責めあったりしないところが、
あのときの二人の優しさでもあると同時に、悲しさでもあったような気がする。
お互いに、わかりすぎてたんだと思う。


2人が結婚の約束をしたのが、
お互いのズレがいちばんハッキリしてしまった時だったというのが、
このドラマの、皮肉で悲しいところだと思います。


2人は、オーストラリアと日本に引き裂かれることになるけど、
ある意味、教授をオーストラリアへ追いやったのは、仁子ちゃん本人です。
彼女が有明の真実を明かさなければ、南原教授は日本を追われることもなかった。
仁子ちゃんは、それでも、
あえて恋人を告発するようなことをしたんだと思う。

最終回、
南原教授は、
オーストラリア行きをためらっている仁子ちゃんを、みずから突き放して、
日本での研究を続けるように言いました。

・・けっきょく、2人は自分たち自身で、相手のことを突き放したように見える。

お互いに何もかも分かりすぎていたから、
たがいに自分の意見や自分の思いをぶつけあうこともなく、
ただ、それぞれに、じぶんで決断を下したんだと思います。


◇ ◇


ところで、
2人のあいだを引き裂いた、もうひとりの当事者がいます。
言うまでもなく、それは、オダギリくんが扮する「勝田」。

彼は、最初のうちは、
仁子ちゃんにとって「キケンなオス」という設定で登場しました。
でも、彼が「男性」として仁子ちゃんを惑わすことはできなかったし、
そういう意味で、彼は「危険な存在」になることができませんでした。
仁子ちゃんの、南原教授に対する気持ちは変わらなかったから。

でも、べつの意味で、
彼はやっぱり「危険な存在」だった。
それは、知らせてはいけない真実を、仁子ちゃんに教えてしまったという意味で。
有明問題の事実を彼女に教えたことが、
仁子ちゃんと南原教授のズレを浮き上がらせることになり、
その結果、2人のことを修復不能なぐらいに引き裂いてしまいました。

そう意味で、やっぱり彼は、このドラマの中で「危険な存在」だったんですね。


◇ ◇


ただ、ドラマが終わってしばらくたって思うことだけど、
南原教授は、本当に仁子ちゃんと相容れない考え方をもった研究者だったのか、
そのことについての考えが、わたしの中ですこし変わってきました。

ほんとうは南原教授の心の中にも、
仁子ちゃんと同じように、
研究者としての倫理的な意志をつらぬきたいという気持ちもあったんじゃないか、
そんなふうな気がしてきたからです。

教授が、しばしば長崎を訪れていたのは、
たんに科学者として、堤防締切後の干潟に、
クールな関心をもっていたからだけでしょうか。
わたしは、ほんとうは彼のなかに、
データの改ざんに関わったことへの後ろめたさがあったんじゃないかと思う。


前日の日記のスレッドにも書きましたけど、
南原教授が、仁子ちゃんの書き上げた論文を読んだ直後に、
研究室の事務長(陣内孝則)のところへ直訴しにいくシーンがあります。
彼は、それまでの大学の研究のあり方をはげしく批判してまでしながら、
仁子ちゃんの論文を取り上げるべきだと強く主張しました。

あれは、学会や大学への批判であったと同時に、
研究者としての、
それまでの自分自身の姿勢に対する批判でもあったと思う。
たぶん、あのとき、
教授は、自分自身を否定してでも、彼女を守ろうとしたんだと思います。

あのときの教授のなかには、高ぶった、そして複雑な心境があった気がする。

そのあと、研究室を出た教授は、
外ですれ違った仁子ちゃんに目も合わせずに立ち去ってしまうんですが、
あのときの彼の感情が、ただならぬものだったことが分かります。
きっと彼にとって、あの行動は、意を決したものだったんだと思う。


おもてむき、仁子ちゃんと南原教授は、
たしかにタイプのちがう研究者だったかもしれないけど、
でも、
仁子ちゃんのような考え方や姿勢をいちばん理解していたのは、
ほんとうは南原教授だったんじゃないかという気がします。






ドラマの中で、仁子ちゃんがすごく楽しそうだったシーンがあります。
わたしが思い出すのは、ズバリ、このふたつのシーン。

◎南原教授と2人でハリスホークを捕まえようとしてたとき。

◎南原教授と2人でフクロモモンガを捕まえようとしてたとき。

ああいうときの仁子ちゃんが、いちばん幸せそうでした。
やっぱり、動物にかかわってるときの彼女が、いちばん輝いてたと思う。
そして、そういう仁子ちゃんのいちばんそばにいることができたのは、
やはり南原教授でした。

白石くんじゃダメだった。

(※白石くんって、それを理解させるだけのために登場した気がする(~~;)

もし、このドラマの続編があるんだとしたら、
わたしは、教授と仁子ちゃんがやりなおす道も、あるんじゃないかと思います。
もちろん、たがいに考えが喰い違ったりすることはあるかもしれないけど、
でも、2人のズレは、けっして本質的な違いじゃないと思うようになったから。



◇ ◇ ◇



最後に、
神宮寺教授(小林聡美)のことについても触れておきます。

正直、わたしは、いまいち、
あの役柄の意味を、うまく理解できていません。(汗)
たぶん、すごく重要な役ではあったんだと思うんだけど・・。

仁子ちゃんと、南原教授と、オダギリくんと、
この3人のことをいちばん見渡せる場所にいたのが、神宮寺教授。
数学の世界に引きこもっているように見えて、
じつはいちばん人間のことをよく見ていたのも、彼女だったと思います。

・・なんだけど、
彼女が、物語の展開のなかで結局どういう役割を果たしたのかが、
いまいち見えません。

もうちょっと考えてみます・・。





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最終更新日  2005.10.01 00:36:13
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