まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2022.09.29
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今回の朝ドラ『ちむどんどん』には、
重要なテーマが大きく3つありました。

1.やんばる
2.沖縄の野菜食
3.民謡文化


とくに終盤では、
顕著な形でこれらのテーマに収斂していきました。





1.やんばる

20年前の『ちゅらさん』の実家は那覇市の首里でしたが、
今回の『ちむどんどん』の実家は北部の山原(やんばる)でした。

目下、沖縄の在日米軍は、

それらを北部やんばるへ移転することを計画しています。

ヒロインたちの実家は西海岸でしたが、
米軍の機能移転においてもっとも重要なのは東海岸 (辺野古) であり、
さらに森林への移転も重要な争点になっていきます。

今後、日本の国民は、
沖縄の「やんばる問題」に向き合わざるをえません。

最終週では、
やんばるの海の際立った美しさを見せていましたが、
このドラマの最大のテーマは、
「沖縄のやんばるを守るのか」
という国民全体への問いかけだったといえます。


2.沖縄の野菜食


とりわけ米国文化の影響下に置かれたので、
ランチョンミートやハンバーガーやステーキなど、
安直な肉食を中心とした生活に置き代わり、
その結果として生活習慣病が蔓延し、
極端な「肥満増加」や「寿命低下」を招きました。


日本料理でもなく、中華料理でもなく、フランス料理でもなく、
(ましてアメリカン・レストランで学んだのでもなく)
イタリア料理、
すなわち野菜と魚介を中心とした「地中海料理」でした。

この「地中海料理」の発想を、
ふたたび沖縄の食文化のなかへ取り戻すことが、
このドラマにとって二番目に重要なテーマだったといえます。

さらに、
ニーニーと養豚との関わりも、
《米国流の牛肉食》から《沖縄本来の豚肉食》へ回帰させるために、
重要な意味を含んでいました。


つまり、極論をいえば、


このドラマは、
おおむね「戦後の沖縄文化の否定」であり、
それはとりもなおさず「米国文化の否定」だったのです。
そのことによって、
戦前的な沖縄文化の回復を目指した物語だったといえます。


3.民謡文化

20年前の『ちゅらさん』では、
山田孝之が演じた弟の恵達や、
鮎川誠が演じたジョージ我那覇を中心として、
戦後の沖縄人とロックとの関わりが描かれていました。

しかし、
今回の『ちむどんどん』には、
米国の音楽やロックの話はいっさい出てきません。

その代わりに描かれたのは、
末娘の歌子と沖縄民謡との関わりでした。

彼女が三線で民謡を弾き語ったのは、
「芭蕉布」「てぃんさぐぬ花」「娘ジントーヨー」「浜千鳥」…
などの旋律と言葉をとおして、
伝統的な美意識を回復するためだったろうと思われます。

そして、最終週では、
末娘の歌子による歌と、母の優子による踊りとを、
「遺骨すら見つからない戦争の死者」への鎮魂のために捧げていました。
こうした要素も20年前の『ちゅらさん』にはなかったものです。





ところで、
SNSに書き込む視聴者たちは
例によって、恋愛や結婚がらみのエピソードについて、
やれ共感できるのできないのと最後まで騒ぎつづけたのですが、

じつは、このあたりの話は、
「沖縄の少女と本土の少年が恋に落ちて結婚する」
という『ちゅらさん』のパロディにすぎず、
今作では、たんに話題のための炎上ネタにすぎませんでした。

ヒロインらへの不評が世間を覆っているかのように報じられ、


 空気の読めない鈍感な人間は排除すべきと考える日本人の集団主義、
 そうした旧来型の大衆的無意識がSNSのなかに露出した結果でした。

あろうことか評論家や大学教授や国会議員までもが、
その炎上に「同調」するという、
まともな言論/アカデミズムとは思えない醜態もありましたが、

結果的には、そんな炎上ネタの効果もあって、
ドラマ視聴率の全体的な下落傾向のなかでは、
むしろ高い水準の数字を維持していたというべきだし、
NHKが今回の朝ドラを「成功」と見なしているのも理解できます。

本質的な部分において、
この朝ドラは『ちゅらさん』の価値観を覆した作品であり、
結果的には、
「やんばる」「島野菜料理」「民謡/歌三線」 というワードについて、
国民社会へ刷り込む役割を果たしえたと思います。






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最終更新日  2022.11.08 13:00:55


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