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神奈川県警では、蜜柑が同僚の婦人警官と食堂で昼ご飯を食べていた。「横浜港の殺人事件、進展がないみたいね」 婦人警官は言った。「コロナ騒動に入って、自由な捜査が出来にくくなったのが大きいかしら。言い訳になるけど」「不要不急の捜査以外は控えるようにって、訳の分からない方針が出たしね。オンライン捜査ってのも流行ってるわ」「コロナ不況で、芸能界がアップアップしていることもあるわね。実際、渋谷のワールド・プロダクションもタレントや芸人の自宅待機が続いていて、マネジャーの死について関心を払う人なんか皆無だわ。それで、結局、事務所は閉鎖になったけど」「確か芸能界のマネジャーが殺害された事件って、はじめてじゃないかしら?」「薬や痴情がらみの事件は山ほどあるけど、殺人事件となると先例がなくてどこから手を付けていいのか、パパもわからないのが本心よ」 蜜柑がテレビを見ながら言った。食堂のテレビが次のような報道を始めた。「いよいよ東京オリンピックの開会式が行われ、一部、すでに競技が始まっていましたが、昨晩の開会式によって、正式に30日間のオリンピックが始まりました。8月23日の閉会式まで熱戦が繰り広げられます。ところで、昨晩の開会式では、IOCバッハ会長のあいさつに続いて、天皇陛下が開会宣言を行いましたが、真後ろに座っていた総理大臣と東京都知事が座ったままで、大変な失礼があったと、各メディアが一斉に報じました。JOCによると、台本では天皇陛下の宣言の前に『ご起立ください』の進行アナウンスがある予定だったのが、バッハ会長が『次に天皇陛下の開会宣言です』と、早とちった発言をしてしまったので、東京都知事の目配せで、慌てて起立するという不手際になったものです。昔なら不敬罪だ、などとする厳しい見方もあるようですが、それにしても知事から促されるまで、椅子にふんぞり返っていた総理大臣は一体何を考えていたのでしょうね」と、キャスターが嫌みたらしく言った。「例の、横浜港殺人事件だけど、赤い傘の女、芸能関係の可能性が大きいという噂で持ちっきりよ。女の細腕じゃ、もみ合いになったら、逆襲されるから、赤い傘をさした男じゃないかって。歌手の藤堂麻里矢さんがホテル内で目撃した赤い傘の女も女装していたんじゃないかって」 婦人警官は、興味半分で言った。「あなた、芸能通だったわね。芸能マネジャーが殺害されたということになると、動機はどんなことが考えられるかしら?」 蜜柑は、警察に入る前に芸能プロダクションに所属していたことのある婦人警官に聞いた。婦人警官は向坂といったが、今でも暇を見てはオーディションに出ている。「これは私の考えだけど、芸能界って結構足の引っ張り合いが多いのよ。まあ、どの世界にもあるでしょうけど、芸能界はジャンルにもよるけど、テレビ、映画、ライブ会場、劇場、寄席、ネットなど軒並みオンラインでやっとこさ息をつないでいるわけ。まあ、パイが極端に小さくなって、競争が激化しているようよ。足の引っ張り合いと言えばかっこいいけど、実は血で血を洗う生き残り戦が繰り広げられているのよ」 向坂は、芸能界通の知識で推理して見せた。「売れっ子タレントを押しのけて、のし上がるための権力闘争っていうと、大げさかしら。マネジャーの仕事は芸人さんのスケジュール管理、私生活にも踏み込むことがあるって聞いたけど」「そうね、最近はあまり私生活の面倒まで見るというのは聞かないけど、あるわね。殺人犯が赤い傘の女だとすると、殺された澤田マネジャーの担当芸人かタレントかもしれないわね。問題は直接的な動機だけど」 婦人警官の向坂は言った。「ひき逃げされた歌手の光岡瑠偉さんも、確か澤田さんがマネジしていたわね。光岡さんは何かを知っているのではないかしら」「パパの聞き取りでは、まったく思いもよらないということだったの。ただ、事件直後光岡さんも気が動転していたことのことなので、何かを思い出してくれるのではないかと、期待はしているんだけど。もう少し焦点を絞って聞いてみる必要がありそうね」蜜柑がため息をつきながら言った。 原宿のホテルでのさわやかな目覚めに、真佐子は電話の相手を確信して、「はい、真佐子です」と言って、仲村の声を期待した。ところが出たのは蜜柑だった。「今夜、横浜のレストランでお食事する件ですが」と言って、蜜柑はその場所と名前を告げた。「仲村先生がよく知っていると思うので、ご一緒にいらしてくださいね」用件だけ告げて、蜜柑は電話を切った。すると今度は仲村から電話が入った。真佐子は気を取り直して、原宿の駅前で待つという仲村の言葉を事務的に聞いた。仲村の声のトーンが妙に事務的だった。(続く)
2021.07.25
お断り:このブログは予告なしに加筆修正を行うことがあります。ご了解ください。 東京五輪・パラ2020開催があと2日後に迫りました。2021年7月23日、約1か月にわたる五輪の幕が切って落とされる。2020とされていることは皆さんもご存じでしょう。東京オリンピック東京招致が決まった時の関係者の溢れる歓喜がまだ瞼に焼き付いていますが、いったい誰が新型コロナのパンデミックによって、延期を余儀なくされるなど、想像だに出来なかったでしょう。 昨年(2020)春、新型コロナ感染拡大で、1年間延長することに決まったので、そのまま2020としているようです。私は小学校でソフトボールを始め、中学校で軟式野球、高校で野球は中断しましたが、大学を出てから大学院に進み、就職後静岡で軟式野球を再開、フルマラソンにも挑戦しました。名古屋の東海学園大学に移籍して硬式野球部を立ち上げ、名古屋産業大学に移籍するまで野球とかかわってきました。小学校から中学にかけて柔道をやり、中学校では野球をやりながら長距離走にも参加しました。 そういうわけで、スポーツに関しては、ある程度分かるつもりでいるし、スポーツが人間力形成にとって大事だということも心得ています。ここ30年くらいの間は、大学のゼミで、スポーツ社会学みたいなことも教えてきたし、一般教養のスポーツの教師として十分通じると自負しています。でも、まあそんなことはどうでもよいですね。 日本での先のオリンピックは、昭和39年、マラソンや女子バレーの健闘に興奮したことを、つい昨日のように覚えています。歌手三波春夫の「東京オリンピック音頭」(あっているかな)は、半世紀以上が経過した今でも、ついつい口ずさんでしまいます。その数年後には、確か大阪で万国博覧会が開かれ、オリンピックの勢いが日本の高度成長をけん引したことを実感したことも、つい昨日のように思い出します。 もちろん、良いことばかりではなかった。経済成長が先走り、日本列島改造のような環境破壊を誘発したことも事実です。スポーツは人間の肉体と競技の限りない「美」の追及であり、自然界の頂点に人間を置きます。オリンピックを契機に、公害列島が出現したと言ってもよいのではないのでしょうか。 世界のオリンピックに目をやると、オリンピックの過熱は、すなわちオリンピックマネーの暗躍でもあり、オリンピック投資は、反動としてオリンピック不況を招来し、雑草が生え放題で、「兵どもが夢の跡」的情景を呈した競技場もあります。五輪を正当化する手法の一つに、経済波及効果という統計手法による効果算出があります。しかし、それが所詮はケインズの言う人為的「有効需要」である限り、大会終了後はそのバブルが消え、元の状態へ戻ることは言うまでもありません。 オリンピック投資は、金融バブルを生み出し、1年でそれがはじけて反動不況をもたらします。例外は、アトランタオリンピックだけだったようです。この点は、オリンピックと不況に関するいくつかの論文や資料を読めばわかるので参照してください。 今回の東京オリンピックが反動不況をもたらすかどうかは、コロナ不況との関連、無観客開催に代表される投資のシュリンクがどう影響するかによって、リバウンド不況は性格が複雑になるだろうと予測できます。しかし、反動不況が来るとしても、数年で元の経済水準に戻るので、それをもってしてオリンピックの功罪を語るのは適当ではないかもしれません。それよりも、いわゆるオリンピックマネー(OM)が誰を豊かにし、だれを貧しくするかの、経済分断効果が重要でしょう。読者はこの答えを知っているでしょう。ざっくりと言って、独占的放映権を持つメディア、メディアのスポンサー、誘致国の広告会社、アミューズメント関連業界、観光資本などがそうです。入国制限、観客の制限によって、絵にかいた経済波及効果は十分でないにしても、「落ちる」金は莫大な金額になります。アメリカNBCが受け取る放映権料は、たとえ無観客でも数兆円規模です。NBCは7000時間に及ぶ放映を予定していると言われます。 私は、オリンピック「村」(IOCを頂点とした各国OC、推進政権、メディアや協賛企業と各種スポーツ競技連盟の共同体)の利権集団が、各国政府の財政資金や民間資金、ボランティアを食い物にしながら自己増殖を遂げていく構造(スポーツ独占資本主義)自体に本質があるように思います。IOCバッハ会長を「ぼったくり男爵」と評価したワシントンポストの記事は、あながち間違いとは言えません。電通は米テレビ局の放映権を香港メディアに、確か売っていると思います。過日のworld newsが報道していました。(つづく)
2021.07.20
「芸能界の浮沈が激しいことは、誰でも知ってのことと思うが、今回の事件もそのような離合集散、競争激化の業界事情に加えて、事件後、世界を恐怖の坩堝に陥れたコロナ禍が災いして、当該事件の被害者のSさんが所属していた芸能プロダクションも倒産の危機にさらされ、最近閉鎖に追いやられた。 会社は個人経営の事務所で、多少の清算があっただけで、今は事務所の跡形もないという。マネジャーのSさんが欠けたことと、事務所閉鎖との関係は推測でしかないが、売れっ子タレントを育ててきたSさんがいないでは、他の事務所への移籍や引き抜きが大きな要因だろう。突然の閉鎖は、今回の事件と何か関係があるかもしれない。 私の大学での経済分析は、芸能・スポーツ分野の分析へ軸足を移しており、今後も検討を続けるが、今度の事件との関連では、同事務所の関係者を徹底して洗うことが必要だろうと考えている。所属タレントは50名を数えたが、ざっと調べたところでは、他の事務所へ転籍したものがほとんどだ。 マネジャー、アシスタント、それから当の会社代表者の動静がどうなっているのか、捜査当局は十分承知していることだろうが、その解明の中に事件解決の手がかりがあるように思えてならない。大阪のドリームプロダクションとの関係もそうだ」 おそらく神奈川県警の夏警部は、この線での捜査に方針を切り替えようと考えているのだろう。真佐子は、「それでは明日を楽しみにしていますね。今夜は、仲村さんのホテルに泊まりたいのですが、彼、だめだというので、ちょっと離れた原宿にとってもらいました。そう、嫌な人でしょ。別々の部屋なのにね。ははは」と勝手なことを言っている。こういう純真さは昔とちっとも変っていないと仲村は思っている。「それでは明日の夕方ね。時間が決まったら連絡ください。中華街はまだ駄目ですけど、安心なレストランを予約しておきます」と言って、蜜柑は電話を切った。「それでは、原宿まで送っていきます。1時間くらいで着きます」と言って、仲村は伝票をつかんだ。外国のメディア関係者らしい一行が大きな荷物を引いて通り過ぎた。オリンピックの開幕も目前に迫った。スポーツ・芸能界の動きも活発になってきた。 緊急事態下の原宿は、さすがに人通りは少なかった。といっても1回目から3回目のような効き目はないらしく、肩がぶつかり合うほどでもなく、かといって閑古鳥が鳴いているという寂しさでもなかった。テレビでよく言う「慣れ」や「緩み」が出てきたのだろう。ワクチン接種も急速に進んできている。周りに抗体を持った人が増えてくると、「まあ大丈夫だろう」という雰囲気になってくるのもうなづける。 明治通りを右に曲がると、つい今しがた予約したホテルがあった。「無断外出はだめですよ。朝食が終わったころ迎えに来ますが、それでいいですか?」 仲村はバッグを真佐子に渡した。 「あなた、私が中学生の頃も、こんなに冷たい扱いをしたのね」と、いつもの攻撃を仕掛けてくる。いくつかの背の高いビルの合間から白い月がこちらを見ている。世界がコロナで割れそうなのに、月はいつも同じ顔をしている。「気のない素振りのあなたの気を引こうと思って、わざとそうしたかもしれません」「嘘おっしゃい。ほかにいい女がいて、わたしになど気が回らなかったんでしょ」 ビジネスホテルの前で、言い争いをしている男女を、通行人がいぶかしげに見て通り過ぎる。「あなたに首ったけで、気持ちをうまく伝えられなかっただけだと思います」「そう、ならいいけど。今回はそういうことにしておきます。おやすみなさい」と言うだけ言って、真佐子は手を振った。パトロールの警官が2人、新しくなった駅のほうへ歩いて行った。時計の針は午後8時を指していた。 翌朝、梅雨明け宣言が出て3日目。真佐子は、旅の疲れからか、久しぶりに熟睡し枕もとの腕時計を見ると6時半を指していた。昨日の仲村の言葉を思い出していた。中学生のころ、仲村が実際にどのような姿でどのような言葉で、どのような会話をしたか、記憶を失った真佐子には思い出すすべはなかった。しかし、たびたび仲村に会い、仲村の癖に接することで、若かった仲村のイメージを自分の脳裏に刻むことができ、それを実際にあった記憶として、積み重ねていくことが、2度青春を送っているようで、とても楽しくて、失われた記憶の空虚な空間を埋めていくのだった。この「記憶の復元」が真佐子の生きがいになっていた。仲村の心遣いがうれしかった。満ち足りた心は、真佐子に空腹感をもたらした。ご飯のお代わりをして、デザートもしっかり食べた。真佐子の携帯が鳴った。(続く)
2021.07.20
「全国の原子力発電所の毎月の排熱量について」(内閣府原子力委員会のHP内に意見として投稿されたもののようです。によれば、世界の原発の1時間当たりの温排水排熱量は、1時間あたり約6.0×10の14乗カロリーだそうです。1か月に換算すると、6×24×30×10の14乗カロリー、4.14E+18カロリーとなります。簡略化すると、432×10の16乗カロリー。1年では、432×12×10の16乗カロリー。 問題なのは、このサイトが依拠している上記のサイトのリンクが途切れてることですが、別の根拠を探すまでは、この計算は単なるお遊びにすぎません。遊びを続けましょう。 さて、エネルギー保存則によれば、この熱量は、海水全体に保存され、冷たい海域へ移動し、不可逆性によって海洋全体を温めます。太陽からの入射熱量の影響、地球温暖化による永久凍土の融解、氷山の融解の影響を無視して、原発廃温水が海水温度を何度上昇させるかに挑戦してみます。 全海水体積と平均海水温を所与とすれば、計算可能のように思えますが、ここでは計算の仮説としておきます。水1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量が1カロリーだから、地球上の海水の全体積(グラムg)を432×12×10の16乗カロリーで割れば、温度上昇値が得られることになります。では、地球の海洋の重量はいくらでしょうか? 13億5,000万km3すなわち、1350000000km3、1350000000000000000g。1.4×10の21乗キログラムという試算もあります。割り算は、結果は1年で0.007986111℃。式は6×23×30×1000000000000000/(432×12×100000000000000000)。現在の原発総量を前提に計算した結果が、1年に0.008℃、10年で0.08℃ということになります。これは大したことではないかもしれない。いかに海が大きいかという証でもあります。 しかし、我われは別の角度から原発の拡大傾向を指摘しなければなりません。さらに次のサイトが指摘するように、原発立地周辺海域では温度が上昇し、その水を再び、三度、四たびと使っていくので、原発の発電効率は落ちていかざるを得ない。こうして世界中の海岸は原発で埋め尽くされ、悪循環の末に、上に計算した海水温度上昇をはるかに超える日は遠からずやってくると言えるのでしょう。今回はここまでにとどめておきたいと思いますがこのようなことが言えるのではないでしょうか。中国の原発は内陸部にもありますが、東シナ海沿岸にずらりと並んでいます。ですからこれら原発からの温排水は黒潮に交じって北上します。黒潮は九州南端で対馬海流を分岐させ日本海を北上します。日本近海の海水温は上昇し、日本海沿岸での大雪と、列島全体の線状降水帯となって大雨の原因を作っていると。(このブログ内容は予告なしに変更・加筆修正することがあります。ご了解ください。)
2021.07.17
羽田空港「ああ、蜜柑さん。ご無沙汰しています。お元気ですか」神奈川県警の蜜柑からと分かって、真佐子の怖い顔がほころんだ。「ええ。元気ですよ。実は、今一緒にいるんですよ。はい。警部はお元気ですか?」仲村は、真佐子に目配せしながら、警部にかわる様に言った。用件は大体わかっていた。「ええ、真佐子さんと羽田空港にいます。事件の件は私も気になっていて、こちらから連絡しようと思っていたのですが、新型コロナ騒動で、なかなか出る気になれず・・・ええ、もう2年になりますね。光岡瑠偉さんがひき逃げされた件はいち早く知りましたが、現場は私が住んでいたマンションから至近距離のところなんです。そうです、見通しのよいところで、夜と言っても横断している人に気が付かないということは考えられませんよ。・・・鳥取県の事件も知っています。ええ、存じています。三つの事件の共通項は芸能界ですね。僕もそう思います。・・・・・・ご覧になりましたか。ええ、お恥ずかしい話ですが、興味半分でやっている研究で、お役に立ちますかどうか」 真佐子は無視されていると思い、割りばしで仲村の腕をつついている。真佐子は、よくこんないたずらをする。中学生の頃もそうだった。「明日ですか? とくに用事はないのですが、真佐子さんを連れて氷川丸でも見学に行こうかなと。ロープウエーができたみたいですね。彼女はもう二回目のワクチンをうっていますので、マスクは外せませんが。はい、彼女はまだ横浜を知りません」 真佐子の機嫌がよさそうになった。電話を渡せというしぐさをしている。「あの、真佐子さんが蜜柑さんと話がしたいと」 仲村は、スマホを真佐子に渡した。「おばさま、しばらくです。いつぞやの事件では、本当にお世話になりました。アガサクリスティ顔負けの推理でしたわ」 蜜柑も真佐子の扱い方を覚えてきたようだ。「寂しい漁師町にいるとすることもないし、人のうわさがとりえのいなかにいると、本当に知的レベルが低下して、仲村さんを頼って出てくるんですよ。今度の事件、なかなか進展しませんね。私、女の勘で、今度の事件の陰には女がいると思うんです」と、勝手なことをまくしたてているが、仲村は笑いながら、女の影がいるという点には、なるほどと思った。犯罪の陰に女ありだ。「おばさま、明日横浜港の見学が終わったら、どこかで待ち合わせしませんか。県警も暇だし、コロナの暑気払いということで、おばさまの名推理をお聞きしたいわ」 蜜柑も真佐子の扱い方がうまくなった。というよりも、母親を早くに亡くした蜜柑にとって、真佐子は母親のような存在なのだ。蜜柑は、夏警部を見た。警部は大きくうなづいている。遊びと食べる話はすぐにまとまる。最近エンタテインメント産業を研究しているという仲村から、何かヒントが得られるのではないかと、夏は期待した。 夏は、ある経済雑誌の中で、仲村がこのようなことを書いていたのを思い出した。雑誌は、県警で定期購入している。「梅雨のさなか、横浜の山下公園の桟橋付近で、殺人事件と思われる事件が起きた。深夜に同海岸を散歩していた人が発見した。偶然近くのホテルに投宿していた人が目撃しており、赤い傘をさした人が現場を立ち去っていくのを見ていたそうだ。殺害されたのは、東京の芸能プロダクションのマネジャーで、聞き込み捜査では、殺されるような理由は見当たらないということだった。 それから10日くらいたって、今度は鳥取県の白兎海岸で、大坂の芸能プロダクションの社長(65)が背中を一つきにされ、海に突き落とされて、岩に打ち上げられたところを、大坂から遊びに来ていた大学生によって発見された。殺害の手口は似ている。 鳥取県警の捜査では、こちらも手掛かりがつかめないという。この後しばらくして、山下公園のふ頭で殺害されたS氏と同じプロダクションに所属する歌手の光岡瑠偉さんが、自宅へ帰る途中、甲州街道を渡ろうとして、乗用車にはねられ大けがをした。光岡さんはすでに回復し、近く歌手活動を再開するが、この3件の事件に共通するのは、言うまでもなく最近世間を騒がせている芸能界だ」(つづく)
2021.07.15
仲村は浅い眠りから目覚めようとしていたが、もうすこし夢の成り行きが知りたかった。セピア色でちりばめられた風景と大きな木造の建物の中に真佐子が正座をして座っている。建物の懐かしいたたずまいから、真佐子が中学生のころにいた中学校の校舎だと分かった。男子生徒も数名いるのがわかる。仲村は真佐子に声をかけたかったが、中学生に大学生の仲村が声をかけるのは風紀上許されない。それに真佐子はなぜだかまっすぐ横を向て何かに聞き入っている。その横顔が見えるだけだ。仲村は真佐子の挙動を見つめるしかなかった。真佐子は横顔をこちらに見せて、凍り付いていて拒否反応を示しているように見えた。仲村に対して、何かを抗議しているのかもしれない。 やがて、真佐子は田んぼのあぜ道を歩いていき、川の土手まで来ると振り返り、仲村に手招きしている。川は、吉井川という。河原には数人の真佐子の友だちが遊んでいて、手を振っている。仲村は、真佐子がこれからどうするか尋ねようと思い、近づいていったが、急に真佐子は「だめよ」と言い、土手の坂を駆け上がり、橋を渡って逃げていった。振り返りざま「東京に会いに行くわ」と叫んだように聞こえた。「飛行機でおいで、迎えに行くから」と、仲村は大声でかえしたが、もう真佐子は見えなくなっていた。 仲村の部屋の窓からは、カーテン越しに、早朝の明るい日差しが入り始めていた。天気予報では、まもなく梅雨が明けるといい、その兆しかと思った。2日前に受けたワクチンの左肩が痛かったが、倦怠感も消え、さわやかな目覚めだった。明るい未来が待っているような感じもあった。 枕元に置いたスマホが軽快なメロディーを奏で、起床の時間を告げた。火曜日は2限と3限が授業で、月曜と火曜の授業の出席や提出レポートの採点などをするために、もう1日水曜日に勤務する。学生のお話のお相手もあった。 仲村はスマホのメールを開いた。画面には小さな字で、「羽田に17時に着く便で行きます。昨日、あなたが、昔、私との約束を破って、別の女性とデートに行ってしまった夢を見たわ。悔しいからとっちめに行きます」という文字が見えた。開くと、続きに「ごめんなさい。何か胸騒ぎがするのよ。東京で何か良くないことが起きて、あなたが危なくなる夢を見たの。わたし、助けに行きますからね。17時20分着です。いつもの国内線出口でお願いします。ワクチン打ったから大丈夫よ。フフフ」 相も変わらぬ、一方的な約束取り付けメールだ。これで、都合が悪いなどというと仕打ちが怖い。「はい、はい。わかりましたよ。実は僕も相談したいことがあります」と、真佐子の独断をたたえる返事を返した。「とてもよい心がけです」と返事が来た。仲村は笑った。 羽田空港で、真佐子の姿をとらえた仲村は、驚いたというよりびっくりした。水色のショルダーバッグを肩にかけ、手提げかばんをぶら下げているのはいつもの通りだが、何と、濃い青色のミニスカートに、中ヒール、白のブラウスに真っ黒なサングラス、水色のハンカチーフで長い髪を覆っている。スカートには太い革のベルトが巻き付けられている。確か、昭和40年代にこういう格好が流行ったような気がする。仲村は動じないふりをして、「やあ真佐子さん、マスクがお似合いですね」と言って、重そうなバッグを取った。「来てくださって嬉しいわ。何か用事があって、来てくれないかと心配したのよ」と言って、サングラスを外した。 「お元気そうで何よりです。急に暑くなりましたね。ちょっと冷たいものでもいかがですか」と言って、仲村はレストランを指さした。東京は4たび緊急事態宣言が出され、空港は閑散としている。宣言が出るたびに、仰々しく内容のない、うつろな文章を読み上げるものだから、国民はもううんざりしていた。緊張感などありはしない。新規感染者数は、首都圏も地方もうなぎ上りだ。 パーティションで仕切られた席が一つあった。まだ日は高く、ビールの注文は可能だった。中ジョッキを軽く合わせ、のどを潤わせた。真佐子は青色のマスクをしている。青色で統一しているところが、何かのメッセージなのだがよくわからない。夕食はホテルの部屋でゆっくり取るというので、飲み物の注文だけにした。そこへ、仲村のスマホがなった。神奈川県警の夏警部からだった。出たのは若い女性だった。よく通る声だ。「はい、仲村です」 真佐子が強い目線で仲村をにらんだ。「横浜の事件ですか? ええ、知っています。世田谷のひき逃げ事件、ええ。ずっと気になっていました」 真佐子が会話に聞き耳を立てている。(つづく)
2021.07.11
2021年7月3日午前10時過ぎ、熱海市伊豆山付近の不動産会社所有地で、産廃の投棄に使用されていたとされる、急傾斜地から、突然土砂が流れ出し、同地を水源とする相逢川流域の谷間の住宅地を押しつぶした。 これまでに報道された内容などを総合的に判断して、2010年ころ神奈川県小田原の業者が宅地開発目的で急傾斜地を購入し、許可された10倍に当たる土砂を搬入、ひな壇状に廃棄した。その高さも15メートルの計画を上回る50メートルを廃棄したものだった。木くずなどが搬入されていたことは、当時目撃があり相模ナンバーのトラックが頻繁に搬入していたようだ。また、所有者の関係者が撮影したとされる動画も公開された。この小田原の不動産管理会社は「清算」というらしいが、これまでにも大雨はあったが、何も起こらなかった。責任はいないなどと言っている(日刊スポーツ)。 違法な土砂の投入に対して県は是正を勧告、業者は従わず、熱海市の不動産業者に販売したとされる。この業者は違法投棄のことは知らずに購入したとされ、法的手段に訴えるようである。静岡県が、川勝県知事が最初「天災」と言っていたが、技術者である難波副知事の見解として、廃土の投棄が崩落を引き起こしたとし、因果関係の解明を目指すという。 すでに報道されているとおり、犠牲者が多数出ており、行方不明者は絶望に近いものの、必(決)死の警察・消防・警視庁などにより救出活動が続けられている。被災者は地元のホテルに一時的に避難し、救出を見守っている。ドローンの画像を見る限りでは、崩落現場にはまだ2か所くらいの未崩落の個所が認められ、今後の降雨の状況によっては再崩落の可能性がある。県ではビニールシートでの被覆や土嚢での応急対策をするという。 崩落地の東側の尾根に細長い形状の風力発電所が設置されているが、ソーラーパネルに降った雨が崩落の引き金になったとする専門家(サングラスをかけてリモートで参加)の意見を報道したが、雨水は西側に流す構造になっているとの修正報道が行われた。しかし、ソーラー発電所の東側の道路に、ドローンからの撮影と思われるが、南北に小さな亀裂が走っており、崩落の影響かどうか、あるいは以前から亀裂が入っていたのか、今後の検証が待たれる。途中ですがyoutubeにもアップしているのでご覧ください。開発行為に対する防災監視システムの必要性を述べています。 いずれにしても、今回の災害は線状降水帯による自然災害ではあるが「開発行為による天災」であることは明らかであり。因果関係の徹底した解明と責任の追及が必至である。ないがしろに済まされることは絶対にあってはならない。 今回の報道の一部に「ハザードマップや避難指示などあてにできないことに頼らず、自助で逃げるしかない」とか「ソーラーパネルが引き起こした」、「山地の崩落はよくあること」、「開発行為の具体と崩落の因果関係は多方面の検証が必要」など、もっともな見解ではあるが、クーラーのきいたスタジオや自宅の部屋からいい加減なことを言う評論家の放言が目に付くのも付言しておきたい。 特に、自助を強調し、聞くものの耳には「逃げなかった住民が悪い」とも受け取られかねない評論家の発言は、お詫びと訂正が求められる。メディアは慎重を期してもらいたい。同日の別のメディアでは、この発言に批判が出ていた。またオリンピックに向けてナショナリズムが高揚する中で、過少に扱うことは絶対に許されない。(2021年7月8日 本稿は一部に不正確な事実表現や記述があるかもしれません。追って信頼できるニュースソースやエビデンスによって加筆修正し、訂正することがあります。ご了解ください。)
2021.07.08
バイオマスエネルギーには、リサイクル、発電、熱供給など様々な種類があり、種類ごとのその利用方法も多様である。この中で、畜産系の糞尿と食品系のバイオガスの利用とくに発電に関して、普及しない原因そして普及の条件、成功の事例をネット上の資料を中心に考えてみる。糞尿に関しては、メタンや一酸化二窒素の発生源となり、ここで扱うバイオガス利用とは異なる角度からの対策が必要であり、別途考察している。 筆者は2007年4月、東海学園大学で教授を勤めながら、名古屋産業大学大学院、環境マネジメント研究科博士後期課程に入学し、風力発電に関して、清水幸丸工学博士の指導を仰ぐこととなった。成果は博士論文として発表した(「躍進する風力発電」大学教育出版)。 在学2年目であったか、教授の前任校・三重大学に作ったバイオガス施設、太陽光・風力発電所の見学に連れて行ってくださった。その時が、私とバイオガスの出会いということで、のちにバイオガス発電所の課題は、残滓をいかに効率よく収集できるか、そのネットワーク作りだと教えられた(記憶は定かではないが、伊豆では、ホテルの残滓は海に捨てているということをおっしゃっていた)。この課題は今日まで引き継がれている課題だ。船舶からの廃棄物は、海洋投入処分という形で、いまも行われているようだ。 さて、①バイオ燃料がバイオマス由来のガスで、FITで39円と優遇されているにもかかわらず、普及していない理由は、ア)国のバイオエタノールの導入目標が小さいこと、イ)バイオ燃料の使用義務がないこと、ウ)国内に製造業者がほぼないことが挙げられる。(出典:ベストカー)三重県が計算した、全バイオマスの石油換算発電目標はわずか34万klに過ぎない。 ②バイオマス発電が普及しない理由や、これからの市場について。まず、PREGRIPエナジーによれば、バイオマス発電が他の再生可能エネルギーと比較して普及されていない理由は、発電効率が悪いからといった点が挙げられるとしている。発電効率は20%程度と言われており、発電効率が40%程度である石炭火力発電と比較すると、さらなる技術革新が必要。しかし、発電だけでなく熱も有効活用すると、エネルギー変換効率は75%程度まで上がるため、暖房などの熱利用も考えていくことも一つの方法だという。 2030年には市場が3倍になるというが、収集運搬コストが高いことも、バイオマス発電が普及しない理由の一つとしてあげられる。家畜の糞尿や生ごみなどを集めるためには、コストがかかる。効率的に収集運搬できるシステムが構築されると、バイオマス発電はさらに普及していく。 また、バイオマス発電の需要が高まると、競合の用途の供給に影響を及ぼす可能性がある。例えば、食料供給です。食料供給と両立ができる稲わらを燃料とすると、トウモロコシや大豆などの穀物価格が上昇する可能性がある。このような課題が解決することで、バイオマス発電の市場はさらに拡大していくのではないか。 現在の市場規模は小さいが、2030年度には3倍以上に拡大すると予測されている。その理由は、食料供給と競合しない第二世代のセルロース系バイオマス原燃料や工業的に量産が可能な微細藻類などの新しいバイオマス原燃料の技術開発が進められているから。さらに、2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けてバイオジェット燃料の導入プロジェクトも進められている。こうした状況があるため、これからのバイオマス発電の市場は拡大していくことが期待できる。(PREGRIPエナジ―) ③ (富士通経済研究所「日本におけるバイオガス利用の課題とチャンス 2014年」)では、普及が進んでいるドイツの経験(仕組み、技術、現場ノウハウの蓄積によって一つの産業として確立しているドイツに事例)に学び、「地域の資産としてのバイオガス事業」という構想を上げており示唆に富む内容となっている。 ④ バイオガス発電は地域の資源循環に貢献できる。(日経BP総合研究所) ⑤ 以下の資料の4.3にコストダウン要素があげられている。(一般社団法人日本有機資源協会 バイオマス発電事業の持続的普及に向けてPDF 経済産業省) ⑥ フジテックスエネルギー バイオガス発電の課題があげられている。「バイオガス発電は、原料の確保と輸送、残渣物の活用をするというサイクルの構築が欠かせません。・・・輸送コストを減らすため、バイオガス発電所の近隣で家畜ふん尿、食品残さを収集するのが望ましい。また、発電後に残る残渣物は優良な液体肥料として活用できる。液肥を農家で消費するという循環が理想的。近隣の食品工場や農家、畜産家とネットワークを作り、互いにwin=winの関係を創ることが安定的なバイオガス発電所の運営につながる。さらに原料調達のネットワーク、バイオガス発電のワンストップサービス」があげられている。 内容は以下の通り。「事業計画の立案、原料の確保から、プラントの選定・設置、売電手続きまでワンストップで対応します。十分な情報共有がなく、原料と相性の悪いプラントを選定してしまう。プラント設計と売電手続きがばらばらで課題整理とスケジュール管理ができていない。ステップに合わせて様々な協力会社に依頼すると情報共有と各社の調整に一苦労することがあります。我々はプランニングから売電手続きまでワンストップで対応します。信頼できる専門家と協力したチームを作り、バイオガス発電のプラントを実現します。」⑦ 日本有機資源協会『バイオガス発電事業の現状と課題』に具体的な課題と要望があげられている。バイオガス発電の事例・YANMER・資源エネルギー庁バイオマス発電Q&A 利用できる補助金、工法などについて関係法令の解説や留意点が説明されている。・全国のメタン化施設一覧はこちら。対象バイオマスごとの施設が掲載されている。ほとんどが家庭系、事業所系の生ごみを対象としており、42を数える。 ・シンガポールでは産業排水と食料廃棄物をガス化した発電を官民で開始した。・またシンガポール国立大学は、食品廃棄から発電する小型発電プラントを開発した。・月島機械はFITを利用した下水処理場での消化ガス発電を全国で展開している(民設民営方式)。 西日本中心に17か所設備容量14600kW。・アメリカワシントン州で稼働しているThe Horseの紹介がある。一部を引用する。「エネルギーの地産地消を目指す取り組みが世界各地で始まっています。ここ日本でも、これまでにgreenz.jpでも紹介した、「中之条電力」や「片浦電力」など、エネルギーの地産地消を実現させることで、地域内でのお金の循環が生みだし、経済効果につなげようとしているのです。アメリカ・ワシントン州に住むJan Allenさんも、そんなエネルギーの地産地消を目指し活動しているひとり。ジャンさんは、食糧廃棄物などの有機物を電力に変換することができる移動式バイオガス発電機「the HORSE」を開発。そしてこの発電機を広めていくことで、世界中の地域でエネルギーの地産地消を進めようと考えています。」なんと移動式だそうだ。食品残滓のネットワーク化と効率的な収集が課題だが、「移動式」でこの課題を克服しようとしているのだろうか。移動式バイオガス発電機は小型のものはamazonですでに販売しているし、少し大きなもの(中型)は大原鉄工所が販売している。同社のHPには、「本機器は食品工場、一般家庭生ごみ、家畜糞尿等から得られるバイオガスを燃料として発電を行うものです。また、各自治体の下水道施設から発生する未利用な消化ガスにも適応可能であり、クリーンエネルギーを得ることを目的としています」とある。もちろん大型発電機も扱っている。バイオガスの前処理に使用する機械(セパレーションサイザー)もイニシャルランニングコスト低減に役立つとしている。・P&G バイオガスプラントの計画段階(2015年)の報道。・最新の情報では「食品廃棄物や紙ごみなどの一般廃棄物(バイオマス)をメタン菌により発酵させることでバイオガスを生成させ、このバイオガスを発電用燃料として利用する再生可能エネルギー発電施設」が、オリックス資源循環株式会社によって建設されることが発表された。(2021年6月)・柏崎自然環境浄化センターでは、施設内使用電力の35%と熱を賄っている。また発電機からの排熱でメタン発酵施設の加温を行っている。・コンビニエンスストアでは、例えばローソンでは堆肥化、廃油のリサイクルを中心に行っているが、富山県ではバイオマス発電への食品路ロスの供給を行っている。・ファミリーマートでは、油のバイオ燃料化はやっているが、バイオガスはやっていないようだ。・セブンイレブンも検索した限りではバイオガスには取り組んでいないようだ。スーパーマーケット各社はどうだろうか?・御影バイオガス発電所(御影バイオエナジー 北海道十勝)、FIT対象事業。2系統750kw、1000世帯分の電力を売電。牛の糞尿、近隣農家に液肥を提供。・土谷特殊農機具製作所の家畜糞尿バイオガスプラント。・養豚農家(豊橋市)のバイオマスプラント。・南オーストラリア州で、コロナで余ったビールを使い、汚泥を温めると発生するメタンが飛躍的に増加し、発電量が増えたという。(2020年8月)資料・文献① 国内のバイオガス発電事業(日揮)PDF② バイオガス発電事業Q&A(経産省)(畜産系バイオガスと食品系バイオガスに分けて進め方を解説している)③ 発電事業を行う際のデューデリジェンス ④「フランスのバイオガス発電企業Naskeoが北海道に進出」Naskeoは従業員40人、17億円の年商を誇るフランスの事業リーダー。 設立した会社の概要はここをクリック。設立実務はJETROビジネスサポートセンターが協力した。 NASKEOはこちらから。⑤ 『ドイツ農業とエネルギー転換』(岩波ブックレット)⑥ 『バイオマス・ガス事業計画の立て方』環境ビジネス2017夏⑦ 『家畜排せつ物のメタン発酵によるバイオガスエネルギー利用』(農林水産省)は畜産業と農山村の振興の角度から興味深い。各地の事例が紹介されており、FIT価格39円が維持されるかどうかは不透明として、FITに頼らない取り組み(JA阿寒)を紹介しており、参考になる。⑧「再生可能エネルギーによる農業経営の多角化ー畜産バイオマス発電の可能性ー」バイオマス発電機の事例①Yanmerが提供するマイクロ・バイオガス発電機。原料は下水汚泥、家畜の糞尿、生ごみから生成するメタンから電気と熱を作り出す、コジェネレーションシステム。ひとつのコントローラで14台(400KW )まで設置可能。Yanmerがユーザーに代わって遠隔監視サービスを行う。製品の詳細はここ。②シンガポール国立大学の自立型小型バイオガスプラント。農業園芸用の飼料を生成。センサーが携帯のスマホにデータを送って来る移動型(20フィートコンテナに格納。)。熱はプラントの加温装置に供給1tの生ごみで200-400kw電力を作り、余剰電力は蓄え、小規模電力供給。公営住宅での運用可能性。2017年のシンガポールの生ごみは年間81万トン。③大原電機(小型バイオガス発電機)。食品工場、家庭ごみ、家畜糞尿等から出るバイオガス(メタンガス)を原料。下水道施設からでる消化ガスで発電。系統連系盤、排熱回収装置。(本稿は予告なしに加筆修正することがあります)
2021.07.03
お断り この小論は「今次新型コロナ感染症拡大の経済学的背景と共生の基本的視点」と題する論考の準備段階のアイデアであり、追って加筆修正、充実していく予定論考です。このことをご了解の上お読みください。改変は予告なしに行いますので、この点もご了解ください。 2021年8月18日、新型コロナウイルスは、ラムダ株へ置き換わり、過密空間東京から首都圏へ、さらに大阪、名古屋から周辺の中規模過密空間へ浸潤し、全国へと拡大、政府の無策無能をしり目に一日2万人の人体へと入り込み、まさに列島を震撼させている。 今回(2020年2月初頭のダイアモンド・プリンセス号クラスター)の感染症の大流行の当初から「三密(密集、密接、密閉)を避ける」ということがしきりに叫ばれた。この「三密」は東京都知事の小池百合子氏によって造語され、対応する英語も登場した。 ′Three Cs’がそれで、Closed spaces with poor ventilation(密室で換気がされていない場所:密閉)、Crowded places with many people nearby(混雑していてたくさんの人がいる場所:密集)、Close-contact setting such as close-range conversations(近づいて会話をする場所:密集)と紹介される。 日常化したインフルエンザにしろエボラ出血熱にしろ、人に感染したら、その人と接触することは極めて危険で、病原体が見えない存在である以上、感染者と接触を避けることが重要であることは、子供にでもわかることだ。 もっとわかりやすく言えば、感染者は額に「感染しています」というワッペンをつけているわけでも、ほっぺが特殊な色をしているわけでもない。また重症化して、ひどく咳き込んだり、発疹が出たり、ふらついて倒れるなど、外形的特徴を示せば、近づかないで感染を防ぐこともできる。感染者は発症・無症状のいかんにかかわらずsilentなので、ワクチンによる抗体がない以上、3密が避けられない場合、社会的距離(social distance)をとるしか、防御方法は基本的にない。 また、症状が出て入院とか隔離されてしまえば、その人と「三密」を避ける必要もないわけだ。「三密」を形成する大都市ではなく、「ぽつんと一軒家」、「チューネンの孤立国」(外に対して閉ざされた仮想上の閉鎖空間を特徴とする中世的な都市であれば、たとえ感染が流行しても、孤立国の中で7割が感染し、不幸にして死者が出たとしても、やがて集団免疫が形成されて、実効再生産数は1を下回り、ワクチンはなくても、ウイルスは孤立国の中で暫時自然消滅する。イギリス・ジョンソンは、感染の初期にこれを信じて、伝統的なレセ・フェール(laissez-faire)にこだわり失敗した。孤立国同士の人の移動は遮断しやすく、中世の感染爆発は地域的な流行で終わることとなる。 感染症の大流行を資本主義の発展段階で、あるいはそれとの関連でとらえるという試みがあるのかどうか、私は感染症の専門家ではないので知らないが、また、そのような研究を行う能力もないが、例えば感染症の大流行の時期的な特徴を、入門書を見て気づくことは、産業革命が近づくころから増大し始めていることに気づく。 Wikipediaによれば「病原体(病原微生物)について、それを人類が初めて見たのは、形態的にはオランダのアントニ・ファン・レーウェンフック" の"顕微鏡" の改良により、細菌を肉眼で容易に観察できるようになったことに始まり、フランスのルイ・パスツール、ロベルト・コッホに負うところが大きいとされている。 これは、産業革命以降の出来事であり、ここに紹介した仮説を裏付けているように見える。産業革命は資本主義的生産様式のブースター(エンジン)であり、そして、主要な感染症は、1875年のハンセン病を皮切りに、数年の間隔で人類に襲い掛かっている。このころ、資本主義的生産様式を経済学として完成させたK.マルクスの『資本論』が現れた。しかし、マルクスはのちに厚生経済学のピグーやカップが分析したような「社会的費用」を感染症に適用して分析はしなかった。 また、ここで提唱しているような三密「空間と時間」の観点から、社会的費用を分析する視点を持ちえなかった。資本論によれば、感染症は児童労働や婦人労働の過度な就労環境がもたらす労働災害と同じ次元の「社会的費用」だ。この費用は、カップによれば資本の費用概念には入らず、政府と他の社会階層に転化される(kapp,『私的企業と社会的費用』)。なんとなれば、三密空間と高速時間移動は「資本」の蓄積欲からくる必然的な傾向だからだ。海外との投資案件を進めるのに、のんびりクルーザーで行く資本家はいない。一刻を争う場合は、自社の飛行機かチャーター便を使う。ウイルスは、こうして早く別の宿主のもとへ運んでくれるほうがありがたい。 感染症学や顕微鏡の発展ももちろんあるだろうが、ここで問題提起しようとしている、資本主義的生産様式の発展に伴う3密空間の重層的拡大と、人・物の移動の高速化が関連しているのではないか。この仮説をチューネンの孤立国と比較してみると、仮説からの展開が容易になると思う。時間概念が必要だということはこういうことだ。だから、感染症が蔓延し長引くと想定される場合、密空間と高速移動手段をたたみ、今次新型コロナウイルスの場合、検査で網をかぶせて隔離し、隔離網をすり抜けた発症者・重篤者を大規模専用病棟で治療することが基本となる。これがとりえない場合は、密空間は患者であふれかえり、多くの国で目の当たりにする地獄絵巻となる。2021年8月18日、法制度の不備から徹底した感染症対策をとりえない日本は地獄の入り口に差し掛かっている。まさに地獄絵巻だ。 ウイルスが人間にとりついたとして、その人が中世の時代に東京(江戸)から名古屋(尾張)まで、てくてく歩いていくとしよう。ウイルスはやがてその旅人の体を蝕み、箱根あたりで、旅人の細胞を破壊して旅人は死に至り、旅人とともに繁殖の機会を失われる。しかし、旅人が今日新幹線で移動すると、その日のうちに名古屋へ到着し、微熱の出た旅人はスナックか酒場で知り合いと接触して、病原体を振りまき、感染機会を拡大する。東京から沖縄まで行くのに数時間しかかからない。ウイルスは、容易に沖縄の住民に乗り移ることができる。対策は「沖縄旅行禁止」で沖縄観光業者への給付金給付だ。グローバリズムは地球上の人間の移動を高速回転し、ウイルスに感染機会を提供する。パンデミックの折に、スポーツ・グローバリズムであるオリンピックを開催することが、いかにウイルスの喜ぶことかお分かりかと思う。感染症と経済学の分析に「時」が必要で「時空」の経済学が必要な所以だ。 私は、実は三密と言われてもピンとこないし、想像することすら難しい時代に生まれた。昭和23年、戦災による焼け野原からようやく立ち上がり、復興と講和独立を目指して日本国民が立ち上がった時期、地方都市に生まれた。 その当時「密」な空間と言えば、ようやく賑わいを取り戻した夏祭り、中心商店街の大売り出し、納涼花火大会、たまに連れて行ってもらえた映画館や行楽地へ行き帰りの汽車や連絡船にバスの車中。母親に並んで受付をしてもらってようやくは入れた幼稚園と小学校の教室。 私は地方都市で生まれたが、当時は大都市でも高密空間はそんなもので、歌舞伎町は混んで密であったが、全体的に居住空間はのんびりとしていた。しかし、高度成長以降の地域・都市の空間構造は、資本の論理に従う過密都市の形成と対極に過疎空間を作りだした。世界のどこを見ても、過疎空間では、密となる生産工場や鉱山以外ではクラスターは発生していない。感染症は高速稠密経済空間を好む。ウイルスとの和解を申し出るならば、この高速稠密生活経済空間の再配置が必要だ。 過密都市と工業地帯の間を高速道路と鉄道、飛行機の高速交通ネットワークが結合し、過密と高速の時空構造を作った。この構造はグローバルに展開している。この「時空」構造は物理のアナロジーとして語ることができるかもしれない。 生産構造は、「粗密」な農林漁業は言うに及ばず、製造業は空爆によって壊滅状態にあり、ようやく臨海型のだだっ広い素材型の工業地帯が地域開発政策として構想された頃であった。「日本列島改造論」は過密都市・密高速空間への序曲となった。物流は蒸気機関の貨物、人流も客車とバスが中心で、トラックはまだ主流になってはいなかった。物と人の「低速」移動は「密」な空間を作ることはなかった。「粗密」が社会経済地域構造の基本的な構造だった。それが一変した。現代資本主義の下では、小舟で観光客を往復させる風光明媚な一大観光リゾート地は成立しないのだ。 これが、高度成長の資本の蓄積過程を経て、上述の過密で高速移動が可能な時空構造に変異したことは先ほど述べた。空港の水際を抑えないと、ウイルスは容易にすり抜けてくる。船でのんびりと移動していた時期には、水際に着くまでにウイルスは宿主を殺してしまい、感染を広げることができない。ダイアモンドプリンセスは、高速クルーザーだ。大型クルーザーでは、ウイルスは急速な蔓延を果しえない。2021年8月16日(続く) 上に仮説的に導入した社会的費用としての感染症は、私的企業がその流行を加速させるのかについての原理的考察は欠いているが、「医療費や介護費」にも言われている。地球温暖化という社会全体に転化される社会的費用に似て、その構造は複雑極まりない。「病気にかかると医療費や介護費といった経済的負担が発生するが、特に後遺症が残った場合には、患者本人のみならず介護を行う家族の労働機会が損失し、本来得られたはずの収入も減ってしまう可能性がある。さらに企業においても、患者やその家族のパフォーマンス低下や退職等によって、本来得られたはずの生産性(利益)が低下する事も考えられる。これらの患者・家族・企業にかかる経済的負担は『社会的費用』と呼ばれ、今後高齢化が進む中で益々増加する事が懸念されている」とされている。(「病気の早期発見による社会的費用の削減効果」)「社会的費用」は、私的企業の費用概念に入らない費用で、社会や政府に転化される費用であるから、医療費や介護費用、関係者の所得機会の減少を社会的費用というなら、「三密と高速移動を経営資源として利潤をあげる企業及びその集合体ないしは過密都市構造」という注釈が必要となる。カップの「社会的費用」は拡張されなければならないだろう。 このような方法論によってはいないが、次の論文に「社会的費用」のカバーされる問題群が扱われている。追って紹介したい。(Background paper 9 by Paola Pereznieto & Ilse Oehler Commissioned by The Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response | May 2021)この報告書では、パンデミックの影響として、①所得と貧困、②労働市場、③教育④ジェンダー・性差別があげられている。2021年8月17日(続く)
2021.07.01
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