帰り、宇多田ヒカルの"COLORS"を買った。講演の最初に僕の紹介の後、僕の本から引用して紹介された話。「…アドラーは私に教えてくれました。世界は信じがたいほどシンプルだ、と」。これはリディア・ジッハーの話なので僕のことではないのだがいいそびれてしまった。世界はシンプルなのに複雑な(そして神経症的な、とアドラーはいうのだが)意味づけをして、結果、世界がシンプルに見えなくなっている。 宇多田は"Simple and Clean"という曲の中でこう書いている(この曲の由来など何も知らないが、"Deep River"の中の「光」と似ている。後記:「光」の英語ヴァージョンっだった)。"I don’t think life is quite that simple."人生はそんなにシンプルだとは思わない、と。別のところで、たぶんとてもシンプルなものもあるのだろうけど、ともいっているのだが。 夜、寝られず深見じゅんの『悪女(わる)』を三巻まで。徹底的にまわりの悪女たちにいびられるが、麻里鈴(まりりん)はめげることがない。不幸を耐えているというふうでもない。粗削りだが優れた感性を持った彼女が今後どう育っていくか、思わず読みふけってしまった。 よしもとばななの『はごろも』読了。いつもながら神秘的な話でおもしろいといえばおもしろいのだが、いかにもありそうな話の展開ならいいのだが、いかにもありえないので少しがっかり。宇多田ではないがlife is not that simpleといいたくなった。