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“私の全存在は、生活の陳腐さに意味を与えるかもしれない、
いまだ知られざる何かを求めていたのであった。”
―― ユング
今日の授業は,あるとてもユニークな人のおかげで,クラス全体が非常にいい雰囲気になった。
僕自身も,最高に愉快な気分になった。
この人。
先々週の授業初日に,休み時間が明け,クラスのほぼ全員が戻って来た頃に,僕に向かって言った。
「この授業は,情報満載なのはいいんですけど,,,一度にいろいろな情報が入って来すぎて,理解が追いつけないです・・・」
僕にとって,こういうフィードバックは大歓迎。
謹んで受け止める。
「あぁ。。。早口って言うことですか。それは,よく言われます。そうですね。気をつけたいと思います」
「いえ,早口って言うか・・・」
数秒の間。
先に,僕が口を開く。
「ん?・・・説明のスピードが全体的に速いということですか?もっと間を取りながら,ゆっくり目に進めた方がいいってことでしょうか?」
「はい。。。そうして,いただけますか?」
「あ,はい。。。気をつけてみます。では,もしわかりにくいところなどがあったら,たとえば,首をかしげたり,してみてください。あるいは,わかりにくい,という表情など,してみてください。そうしていただけると,こちらとしても,スピードを調整しやすくなりますので。
いや,でも,そういうコメントやフィードバックは大歓迎ですので,ほかの皆さんも,何か気づいたことがありましたら,どんどんおっしゃってくださいね。メールで頂いても結構です。あそこのあの説明は,ちょっとわかりにくかった,とか。。。」
で,授業が再開。
クラス全体の雰囲気が,一変。
僕が,みんなの表情を見ている,という緊張感からか,あるいは,そういう意見があったことによる刺激からか,受講生たちの集中力が一気に高まったのを,肌で感じとることができた。
しかし。
なんと。
「理解が追いつけない」と言い出した張の本人,授業が始まって5分後くらいに,寝てしまった。
これには,びっくり。
超びっくり。
ときおり,目を開けるが,やはり,どうしても耐え切れない様子ですぐに目がとろんとなり,寝てしまう。
ああ,この人。
きっと,おそろしく勉強に不慣れな人なんだろうな。
あるいは,今日に限って,睡眠不足なのだろうか。
それにしても,あんな発言をした後に,寝てしまうかなー。
神経がフツーじゃないんだろうなぁ,と,すっかり感心。
しかし,大人だし。
しかたがないな,と思い,放っておくことにした。
授業後。
あえて皮肉も兼ねながら,「やっぱり,わかりにくかったですか??」と,その人に訊いてみた。
すると,「いえ,,,だいじょうぶです。ついていけるように頑張ります!」と言いながら,初回授業アンケートを僕に差し出す。
オフィスに戻って,それを読み,再び,ずっこけた。
アンケートの「早すぎる」「難しすぎる」「わかりにくい」という欄に,丸印。
いやぁ。。。
寝ている人に,どうやって,わかりやすい授業をせぇって言うんだい。
それに,ぜんぜん「だいじょうぶ」じゃないじゃないか。
言ってることと行動が,あまりにも違いすぎる。
もう,この人,面白すぎて笑うしかなかった。
そして,自由コメントの欄には,「今日は体調が悪くてついていけませんでしたが,ついていけるように何とか頑張りたいと思います」という記入。
まあ,このあたりは,しおらしいと言えばしおらしいが。。。
しかし。
2日目も,この人,最初の方こそ,集中しようと頑張っていたが,やはり,途中で耐え切れなくなった様子で,授業の大半を寝て過ごす。
授業にきている意味ないじゃん,と思いつつも,まあ,相手も大人だし,と思って,そのまま放っておくことにした。
すると。
3日目。
大事件,勃発。
宿題の解説が一通り終わったところで,「何か質問がありますか?」という僕の問いかけに対して,またもや,その人が発言。
「まだ,ぜんぜん説明が早すぎると思います。重要なポイントは,もっと丁寧に強調して,進めてほしいです。もう少し噛み砕いて説明していただかないと,理解が追いつきませんので・・・」
などと,言い出した。
「んー,,,,重要ポイントは,きちんと強調しているつもりですけど・・・たとえば,さっきのこれなんかも,一度だけではなく,何度もゆっくり強調してほしいということですか?」
「はい。そうしていただかないと,内容が頭にきちんと残らないと思うんです」
このあたりで,クラス全体の雰囲気が,いいかげんにしてくれよ~,という表情になる。
「いやぁ,,,でも,私の授業は,テンポよく進む,というスタイルで確立していますので・・・それは,ご自身の求める授業のスタイルと,私の授業のスタイルが違う,ということを仰りたいだけだと思うのですが・・・先日お話したように,首を傾げたり,不明な点があれば,どんどん質問していただいても結構ですし・・・」
「いや,それじゃ効率が悪いと思うんです。逆に,講師がこちらの求めるスタイルの授業をすれば,受講生の満足度も高くなりますし,それが,結局,お互いのためにもなると思うんですよ。こんなふうに感じてるのは,私だけじゃないと思いますし・・・」
「あぁ,,,それが,実はですね。初回に,そうおっしゃったので,ゆっくり授業をしてみたら,アンケートで,非難ゴーゴーだったんですよ。ペースを遅くしないでほしい,今のままでちょうどいい,という意見が,圧倒的に多かったんです。やはり,今のままのペースのほうがいい,と思っている方が,ほとんどだと私は思いますよ」
「それは,わかりませんけど,,,,私は,そう思いません。私と同じように感じている方は,多いと思います。」
こうなったら,2人で議論していても,水掛け論。
この人以外の受講生全員の授業中の目の輝きと集中力をしっかりと肌で感じていた僕は,1つの賭けに出ることにした。
「わかりました。では,,,ここでちょっと授業が中断してしまったので,他の皆さんに,伺いたいと思います。この方の意見に,賛成,反対,,,,いや,どちらかというと賛成,あるいは,どちらかというと反対,という,いずれかに決めていただけませんか?皆さんのご意見を伺います。よろしいでしょうか?はい。では,どちらかというと,この方の意見に賛成,という方は?」
挙手,ゼロ。
「お一人も,いらっしゃらないですか? はい。では,どちらかというと反対,という方は?」
9割以上の人が,挙手。
僕はといえば,心の中で大きくガッツポーズ。
「はい。ありがとうございます。・・・と,こんな感じなんですよ,他の方のご意見は,,,。なので,やはり今のままのスタイルでいきたいと思います。もし,まだ何かご意見があるようでしたら,後ほど伺いますので。」
と,そんなことがあってから。
それまで以上に,クラス全体が,一体化した。
今まで,授業のスピードが少し速いと感じていたであろう人たちも,クラスの大半の人が現在のスピードに満足していることを目の当たりにして,俄然,頑張ってついていかなきゃ,と思ったようだ。
僕は僕で,クラスのほとんどの人が露骨に僕の味方をしてくれたことに対して,というより,僕の授業スタイルを本音で認めてくれたという嬉しさで,非常に,異常に,ハイテンションになった。
ときおり交える僕の軽口に,何度も大爆笑が起きた。
そして,驚いたことに。
上の発言をしたユニークな人も,それまでとは人が変わったように,まじめに集中して授業に取り組むようになった。
重要なところで,ノートもしっかりとるようになった。
僕のネタにも,腹を抱えて愉快そうに笑っていた。
休憩時間中に,彼に向かって「どうでしょうか?先ほどの話の続きを今した方がいいですか?」と訊くと,「いいえ。だいじょうぶです。完全に納得しましたので」という返事。
その後も,この人も含めて,クラス全体が,非常にいい雰囲気。
こうなると,もう,授業が,楽しくてしかたがない。
そんな僕自身の気分が飛び火してか,他のクラスも,楽しい。
すべての仕事が,最高に,愉しい。
“わたしは,どんなときにでも応用できるような政策をたてたことは,一度もなかった。
つねに,その時,その場で,最大に意義のあることを試みてきたに過ぎない 。”
―― リンカーン
つくづく,人間っていうのは予測不可能で面白い。
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