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2017.04.09
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カテゴリ: アート
図書館で『ドーン』という小説を手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、おお 平野啓一郎のSF小説ではないか♪
期待できるかも。



ドーン

平野啓一郎著、講談社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史を揺るがす秘密とは?愛はやり直せる。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、おお 平野啓一郎のSF小説ではないか♪
期待できるかも。

rakuten ドーン


中連(中華連邦)が誕生するあたりを、見てみましょう。
p159~160
<俺は何に巻き込まれている?>
 東アフリカ戦争について、ネイラーは、中国が中連へと体制を転換するに際して、当地でのプレゼンスが一気に低下し、代わって進出したロシアとの資源開発競争に加え、極度の貧困、原理主義的な宗教勢力の拡大、部族間抗争、独立運動とイデオロギー対立、武器の密輸入と溶解国家から垂れ流しになっている兵器の存在、憎しみの連鎖、幾つかの致命的な武装解除の失敗例、更には表沙汰にならない<魔術>攻撃合戦について、ひとつひとつを丁寧に説明し、ハー政権が、その粗雑な情報分析と国連を無視した乱脈な過剰介入、更には外注する民間戦争企業の荒れによって、結果的に自ら戦争当事者となってしまっていることを痛烈に批判したが、その正しさを理解した有権者はほとんどおらず、ここでもやはり、キッチンズの「問題はそんなことじゃない。シンプルなのです。より安全で、平和な世界にするためにアメリカは何をすべきか?・・・そう国民一人一人が問いかけてみれば分かることです!」という反撃の破壊力の方が勝っていた。

 更にキッチンズは、国際的な枠組み作りを無視した、帝国主義的膨張と批判されているハー政権の宇宙開発事業を、小惑星のレアメタル採掘への大胆な予算投入を柱として拡大する方針を打ち出し、関連株が軒並みストップ高になるというオマケまでついた。

 明らかに、実態と掛け離れた宇宙ビジネスは、既にバブル化しつつあった。その傾向は、《ドーン》の有人火星探査成功後、とりわけ顕著だったが、エコビジネスのバブル崩壊後に、散々な目にあったはずの国民が、新たな投資先の登場に、まったく自制的でないことが、ネイラー陣営の悩みの種であり、彼らのより現実的で、抑制的な計画は、どうしても消極的に映り、見栄えが悪く地味だった。

 《ドーン》に関連して、思いがけず妙な動きがあったのは、丁度その矢先のことだった。
 最初こそ、それは選挙とはまるで無関係なことのようだったが、次第にそうでもなさそうな雰囲気になってきていた。

 きっかけは、中連の火星衛星が捉えたという、《ドーン》クルーの火星滞在モジュール内での「手術映像」なるものの流出だった。

 映像は、15秒ほどの短いもので、手術台らしいベッドの上に一人が横たわって、その傍らにもう一人が付き添っている様が、赤外線カメラによる不鮮明な映像に収められていた。顔は二人とも見えず、体もシーツらしきもので覆われているので、誰が何の手術をされているのかは分からなかったが、そうした手術の事実自体が、これまで公表されておらず、かつての「宇宙人モノ」を連想させる。そのいかがわしい動画の真偽を巡って、ネット上では様々な議論が交わされていた。流出先とされる中華連邦からの公式コメントはなかった。

 たった半日で、様々な憶測が飛び交ったが、噂の一つに、こんなものがあった。・・・手術を受けているのは、現在もまだNASAのクリニックに入院しているノノ・ワシントンである。ノノは、単に精神失調を来たして地球に帰還したのではない。「メルクビーンプ星人」という宇宙人に火星で人体実験を施されたのだ。有人火星探査は、生きたままの人間を宇宙人に引き渡すための、壮大な偽装計画だった。NASAは、この事実を隠し続けている。・・・・

 ノスタルジックなSF的妄想に彩られたこの噂は、次々にその「証拠」を積み上げてゆき、人気の小説共作サイト《ウィキノベルWikinovel》には、早速そのための数章が作られることとなった。


おお 中国がソ連のような体制になるのは・・・・
ちょっと無理っぽいけど、アメリカでは大統領選を控えてフェイクニュースまで登場するところが鋭いですね。

更に読み進めてみます。
p176~178
<問題としてのリリアン・レイン>
《ドーン》が地球を出発してから4ヵ月半、ノノ・ワシントンの精神疾患の発祥から1ヵ月半が経過していた。火星軌道に到着するまでは、残りあと約2ヶ月の予定で、NASAとの交信は、既に3分ほどのタイムラグを来たすようになっていた。些細な時間ではあったが、クルーたちにとっては、それもまた、神経を掻かれるような不安と苛立ちの種だった。

 地上では、湿度100%の室内に空腹状態で閉じ込められて、30年前のパソコンに、何度やっても正常にインストールできないアプリケーションのインストールを試み続けるといった、極力無意味なストレス負荷の訓練を、驚異的な忍耐力で冷静にこなすことが出来、火星と地球との交信の片道5分のタイムラグ・シミュレーションにも十分に対応していたクルーたちが、今やそのたった3分間に、どうしても耐えられなくなっているというのが、ヒューストンのジョンソン宇宙センターでは、深刻に受け止められていた。

 事件は、そうした最中に起こった。

 この日、ミッション運用部長のドナルド・スターン宛に届いたメアリー・ウィルソンからのメールは、所長のハロルド・アレン、宇宙飛行士室長イアン・ハリス以下、安全管理担当官、精神心理支援担当官、統括医療部長の計6名にのみ回覧されたが、一読後、誰もが、万事休すといった絶望的な気分になった。1兆ドルを費やし、アポロ計画以来の悲願として、NASAが総力を結集して取り組んできたこの有人火星探査プロジェクトも、今や崩壊寸前という暗澹たる予感が、それぞれの顔に染み渡っていた。

 極秘の3時間にも及ぶ検討会議の末に、彼らは一旦、文章化された内容をメアリーに返信し、それから改めて対面で対応を協議した。

 モニターの前に座ったメアリーは、憔悴を隠そうとしなかった。
 「・・・とにかく、アストーに診察させるしかないが、・・・彼にその余裕があるかな?」
 直接話す役目は、クルーたちの直属の上司で、彼らの信頼も厚いイアン・ハリスが引き受けた。質問してから6分待つ間に、手を叩いたり、腕組みしたりする彼女の様子を観察していた精神心理支援担当官は、頭に浮かんでくる考えを必死で押さえつけようとするかのように、時々、顎の筋肉を膨らませながら唇を噛み締めていた。

 「ないと言えば、何か手立てがありますか?」
 両手の親指で強く目頭の上を押すような仕草を見せてから、メアリーは苛立ちと格闘しながら言った。

 「ノノのケアで、彼が限界に近づいていることは確かです。・・・しかし、クルーで協力して負担を分かち合うより他はありません。ニールも、一時のように取り乱すことはなくなりました。船内はむしろ、ノノの精神疾患を共通の困難と見做すことで、緊張感と団結とを取り戻しつつあります。火星着陸までの時間を、どうにか協力して乗りきろうとしているんです。・・・リリアンの今回の問題は、その危うい均衡に、取り返しのつかないダメージを与えるはずです。・・・現状を正確に認識して、実効性のある的確な指示を与えてください。ヒューストンの対応に、我々はまったく不満です。」

 「・・・OK、分かった」


『ドーン』1
『ドーン』2





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Last updated  2017.04.09 15:07:46
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