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2018.03.30
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カテゴリ: アート
図書館で『定年なし、打つ手なし』という本を手にしたのです。
著者の『気になる日本語』というエッセイ集を読んで以来、コバヤシ式が気になっていたのです。
この本をざっと見るにつけ・・・
定年が有るということは、わりとシアワセなことなんだと気づくのでおます♪


【定年なし、打つ手なし】
定年

小林信彦著、朝日新聞社、2004年刊

<「BOOK」データベース>より
老年問題の“傾向と対策”。さて、どうしたものか?中年の不安、老年のとまどい。“不自由な自営業者”たる作家が、迷える日本人たちに贈る、趣味や思い出の語りもたっぷりのコバヤシ式“総合学習”テキスト・エッセイの決定版。

<読む前の大使寸評>
著者の『気になる日本語』というエッセイ集を読んで以来、コバヤシ式が気になっていたのです。

amazon 定年なし、打つ手なし



戦中派の原初とやらを、見てみましょう。
p213~216
<原初の風景>
 くりかえすようだが、昭和十年代の下町でも、大衆は伝統の中になんか生きてはいなかった。ライフ・スタイルの中には伝統的と称されるものが残っていたが、それも、心もとなかった。大衆が享受していたものは、アメリカ映画であり、ジャズ・ソングであり、<アメリカ的>とみえるステージ・ショウであった。

 荷風がそれらを浮薄と見たのは、彼が若いころ、アメリカに滞在し、本当のアメリカを知っていたからである。荷風がなによりも嫌悪した<ラヂオ>はアメリカ文明の所産であった。
 大衆はアメリカに惹かれていたが、そこに展開していたのはアメリカ文化そのものではない。アメリカと日本の混血文化である。

 私などがいうまでもなく、日本文化と称されるものは、ある時は朝鮮との混血であり、ある時は中国、またある時はオランダとの混血であった。明治・大正はヨーロッパとの混血である。つまりは<混血が正統であるという不思議な文化>(河村要助著『サルサ番外地』)は、大正末期から新しい血を求めだしたのだ。

 関東大震災によって始まった新<混血文化>が表面的には消えてみえたのは、ほかならぬそのアメリカとの戦争が始まったからだ。そして、そのアメリカによる大空襲で、下町は、私の生まれた町を含めて、壊滅した。

 私は小学校の卒業式をしていない。卒業証書も貰っていない。小学校は廃校になった。 生れた家は、むろん、焼失した。中学・高校は(国の事情で)名称が変わり、これまた、ないに等しい。・・・すべては、消滅する、と私が受けとめたとしても、さして不思議ではないだろう。

 戦前の浅草に鳴りひびいたタップの音も、生まれた町の記憶も、私の身体のどこかに残るだけだが、私にとっては、それこそが文化である。『世界文学全集』や『源氏物語』のような、あとからきたものは、どうしても、身体にしみつかない。

 私は、私にとってのみ貴重なビデオ・テープのたぐいを集めている。小さな書庫一杯ほどの本も持っているが、それじたいは何の価値もない。私の身体に入ったときだけ、それは<ある種の文化>になあるのであり、私が死ねば、スクラップとして四散するだけだろう。

 かなり好意的な見方として<不思議な作家>というような言われ方をしてきた。(好意的でなければ、妙な奴、だろう。)
 小説だけでは生活できないので、雑文のたぐいをずいぶん書いた。すでに述べたような生い立ちなので、映画、芸人、ショウ、といったことにふれて、短文を書くのは苦労しないし、たのしみでもあった。

 ニューヨークへも、何度か行って、<下町アメリカニズム>の原点を確認した。他人からみれば、遊びに過ぎないが、冷房のきき過ぎた劇場は、いつも<感覚の真剣勝負>の場であった。近代美術館の映画担当のチャールズ・シルヴァー氏は、私が映画評を述べると、「あなたは正直すぎる」と呆れた。

 雑文集や映画や芸人についての本を出しているからとはいえ、<変な>という形容詞がつくのは、あまり、嬉しくない。だから、この十年ほど、小説以外の文章を書くのは、やめることにした。いちおう、そう決めても、すぐには実行できない。随筆は小説家の命トリである、という室生犀星の言葉があったのはいうまでもない。

 小説『ぼくたちの好きな戦争』の第1章に、私は<原初の風景>の一部を書きとめた。だから、というわけではないが、『ぼくたちの好きな戦争』が自分の仕事の第1部の終わりになるであろう予感は、ペンをすすめるにつれて、濃厚になってきた。

 『ぼくたちの好きな戦争』は1986年5月に世に出て・・・ほんらいなら、少なくとも、1年は休むべきであろうが・・・、わけあって、すでに第2部の仕事に入っている。小説の方法も変わるはずである。

ウン 一見奇妙な作家・小林さんの<原初の風景>が見えましたね♪


『定年なし、打つ手なし』2
『定年なし、打つ手なし』1





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Last updated  2018.03.30 09:44:01
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Re:『定年なし、打つ手なし』3(03/30)  
歩世亜  さん
今晩は。

人間は早く引退して、後生はボランティア活動を中心に生きたいものです。 (2018.03.30 21:33:18)

Re[1]:『定年なし、打つ手なし』3(03/30)  
Mドングリ  さん
歩世亜さんへ
ボランティア活動もいいですね。やってはいないけど。

ところで、今年のサクラですが・・・
ドングリ国では、どういうわけか、ソメイヨシノ、オオシマ、山桜が同時に満開になっています。262487 (2018.03.31 07:07:13)

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