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2018.04.28
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カテゴリ: 歴史
図書館で『明治の外国武器商人』という新書を、手にしたのです。
日清・日露戦争勝利の礎を築いた武器商人となると、聞き捨てならないわけで・・・興味深いのです。





長島要一著、中央公論新社、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
デンマークの名門の牧師の家に生まれ、優れた海軍士官であったバルタサー・ミュンターだったが、軍上層部との対立もあって退役、その後アームストロング社の代理人となって来日し、帝国陸海軍との関係を深めていく。特に海軍には戦艦・武器を売り込むとともに、自らの海軍の知識と経験を生かして技術・操練指導を行ない、後の日清・日露戦争勝利の礎を築くことになる。なぜか滞日時代が謎に包まれている親日武器商人の実像に迫る。

<読む前の大使寸評>
日清・日露戦争勝利の礎を築いた武器商人となると、聞き捨てならないわけで・・・興味深いのです。

rakuten 明治の外国武器商人


「第2章 死の商人ミュンターの東洋体験」でミュンターの東洋行きを、見てみましょう。

■アームストロング社嘱託として東洋へ


 春になってロシアのアレクシス候がデンマーク王室を訪れた。ミュンターは発注を受けて建造中だった砲艦までアレクシス候を案内した。ミュンターはのちに揚子江上に浮かぶ同艦を目にすることになる。

 その年アームストロング社は、コペンハーゲン市を防御する砲台に新式砲架を設置するよう、ミュンターを通じて売り込んでいた。その商談は破綻したものの、デンマーク海軍が巡洋艦ヴァルキューリエ号にヴァヴァスー式砲架を取り付けることを決定、アームストロング社に発注した。

 ミュンターがアームストロング社との雇用契約に署名したのは冬が近づいてからであった。ミュンターは、中国、日本、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オランダ向けのアームストロング社代理人として、5ヵ年契約を結んだ。同期間中東洋に赴いて滞在、3年が経過したのちに短期間デンマークにもどることができる。また、ヨーロッパ諸国に関しては、ミュンターの権限でもって臨時の代理人を雇うことができるという内容の契約だった。

 妻と8人の子供をかかえたミュンターにはきびしい仕事だった。しかし条件がすこぶる良く、経済的安定が得られると思うと断るわけにもゆかない。それに、歳の方ももうすぐ50に手が届く。これ以上時間の無駄はしていられない。家族も、スウェーデンのマルモーから対岸のコペンハーゲンにもどれる、デンマークの学校へ行けると喜んでいる。

 ミュンターは決心した。マルモーにおけるデンマーク領事の職を解任してもらい、ひと月ばかりニューカッスルに出張した。そこでアームストロング社と細かい打合せを行ない、同社の商品である兵器、特に大砲についての詳細な知識を身につけた。そして、出発前に最後のクリスマスを家族とともにマルモーで過ごしたのだった。
(中略)

 家族をあとに残したミュンターは、アームストロング卿を訪問して別れを告げた。スコットランドとの境界に近いクラッグサイドにあった丘あり小川ありの大邸宅には、松の木とツツジが無数に植えてあった。邸の中は絵画にあふれ、中国製の磁器のコレクションが人目を引く。暖炉の上にはEast and West, Home is bestと刻んであった。ミュンターはそこで在ロンドン中国公使の秘書、李鴻章の甥で養子でもあった李卿に出会った。のちに在東京中国公使になった人物でミュンターは彼とごく親しい仲になった。

 ロンドン、パリ経由でマルセイユに着いたミュンターは、そこから香港行きの郵便船に乗船した。1887年1月30日、日曜日。妻と妹と伯母にお別れの花束を送り、最後の電報も打った。はるかかなたの未知の国に旅立つにあたっての心境を、ミュンターは『回想記』に書いている。
「気分はよかった。自分はなすべき義務を果しているにすぎないと思っていたし、波乱に満ちた経歴のうちに身につけてきた知識と経験をもってすれば、よい結果が生じるにちがいないと確信していたからである。」こうして自分を励まし慰める言葉のうちには、使命感と悲壮感が秘められていた。


『明治の外国武器商人』1





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Last updated  2018.04.28 08:34:39
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