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2018.04.29
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カテゴリ: 歴史
図書館で『明治の外国武器商人』という新書を、手にしたのです。
日清・日露戦争勝利の礎を築いた武器商人となると、聞き捨てならないわけで・・・興味深いのです。





長島要一著、中央公論新社、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
デンマークの名門の牧師の家に生まれ、優れた海軍士官であったバルタサー・ミュンターだったが、軍上層部との対立もあって退役、その後アームストロング社の代理人となって来日し、帝国陸海軍との関係を深めていく。特に海軍には戦艦・武器を売り込むとともに、自らの海軍の知識と経験を生かして技術・操練指導を行ない、後の日清・日露戦争勝利の礎を築くことになる。なぜか滞日時代が謎に包まれている親日武器商人の実像に迫る。

<読む前の大使寸評>
日清・日露戦争勝利の礎を築いた武器商人となると、聞き捨てならないわけで・・・興味深いのです。

rakuten 明治の外国武器商人


「第2章 死の商人ミュンターの東洋体験」でミュンターの来日あたりを、見てみましょう。
p44~47
■観音崎における砲撃演習
 西洋の郵便船でシンガポール以北を航海する場合、召使は通常主人と一緒に無料で旅行し、食事も自由にとることができた。しかし、日本船が中国航路を開き、同じ規制を導入してみたところ、二人連れの日本人がかわるがわるに主人と召使を演じわけ、1枚の切符で航海するという事態が生じた。そのためにこの規制は撤廃となってしまい、ミュンターはフー・サンの切符も買わざるを得なかった。日本船とはいえ船長も航海士も英米人だった。保険会社が、経験の乏しい日本人の航海術に信用をおいていなかったためのやむをえない措置だったが、日本人はこのことにひどく傷つけられていた。

 好天の中、黄色く濁った海を渡り、やがて五島列島の灯台を夜の海上にみとめてから数時間後、真夜中に長崎港へ入港した。次の朝眼前に広がった光景は、一面梅の花におおわれていた。小高い丘の上に一本松が見える。そこは以前グラヴァーの大きな邸宅だったが、今はデンマーク人の一家が住んでいた。

グラバー園

 ミュンターの受けた第一印象は明るく好意的だった。この日本という国にそれから十年も滞在することになろうとは、夢にも思っていなかった。けれども、この最初の出会いが無意識のうちに決定的な要因となり、そうなるべくして長期間の滞在になったにちがいなかった。

 町を歩いて薩摩、肥前、伊万里、鍋島などの焼物を見てまわる。古い刀剣類がたくさん売りに出されていた。国内の情勢が変わり、不用になったものらしい。もちろん造船所も見学した。すでに甲鉄船を建造しており、大きくて立派なドックもあった。また、近くでは良質の石炭が産出され、炭鉱が海底深くまで延びていた。

 同じ日の午後近く出港、翌朝下関を通過して瀬戸内海を走った。最上級のことばをいくつ並べても形容できないほどすばらしい景観が展開された。小さな島々が多数点在し、段々畑が造られていた。灌漑の水も豊富で、1年に2度も収穫できるとのことだった。海上にはいたるところに漁船が浮かんでいて、木々の間に見える村落の背後には、雪におおわれた山脈が左右に見えていた。

 次の朝、目的地の神戸に着いた。砲撃演習がすでに始まっていると聞き、急いで近江丸に乗り換えて横浜へ向かった。これはアームストロング社建造になる船で、戦時には仮装巡洋艦として使用できるように設計されていた。もちろん船脚が速かった。本州の美観を眺めつつ北東に進む。

 夜があけると漆器や青銅の装飾品でおなじみの富士山が見渡せた。大島の火山三原山が噴煙を空高く吹き上げていた。そして御前十時近く、東京湾の入口が見えてきた。前の晩は風が強かったが、そのためか、この頃になってようやく他の乗客が姿を現わした。髪を高く結いあげた日本婦人が、前日同様見事な髪型をしている。おかしな形の枕を使うので、髪がくずれないのである。

 横浜の波止場にはジャーディン・マセソン商会のボートが迎えにきてくれていた。そしてネズミが走り回るホテルに連れていかれた。
 ジャーディン・マセソン商会はアームストロング社の日本における代理店となっていて、ウォルターが支配人をしていた。その夫妻のもとで晩を過ごしてホテルにもどったが、ネズミのせいで眠れず、翌朝早くおきだしてそのまま砲撃演習を見学にいった。

『明治の外国武器商人』2
『明治の外国武器商人』1





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Last updated  2018.04.29 00:03:58
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