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2021.02.04
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カテゴリ: 気になる本
この本が積読状態になっていたが・・・
言語学的な薀蓄に富んでいるので、久々に読もうと思ったのです。



ハングル
戸田郁子著、講談社、2009年刊

<「BOOK」データベースより>
韓国語学習歴30年、韓国人写真家と結婚、大家族の韓国家庭に揉まれて18年。「韓国生まれの韓国人」だと間違われるほどの実力の持ち主である著者をもってしても、いまだにちょっとした言い回しに驚くことがしばしば。見知らぬ子どもに「イモ」と呼ばれたり、雨の日はなぜかチヂミを食べたり。日々の不思議をくぐり抜けて韓国語を磨いた過程を、ユーモアと愛情たっぷりに描いたエッセイ集。

<大使寸評>
この本が積読状態になっていたが・・・
言語学的な薀蓄に富んでいるので、久々に読もうと思ったのです。

Amazon ハングルの愉快な迷宮


ソウルの街中では、あちこちに卍を表記した巫堂が見られるが・・・その巫堂のお告げについて見てみましょう。
p272~275
それが私の運命なのよ
 人の運命は生まれつき決まっていると考える運命論者が、韓国にはけっこう多い。そして、人生の重大事を占いによって決定しようとする人がかなりの数いるからこそ、巷にあまたある巫堂(ムーダン)も商売が成り立っているわけだ。

 巫堂とは呪術師、シャーマンのことで、その起源は原始宗教にまでさかのぼる。日本で占いといえば星占い、タロット、手相、はては神社のおみくじまでさまざまあるが、韓国では占いといえば巫堂と相場は決まっている。

 日本のように、恋愛に悩む者が一時占いに凝ったりするのとはわけが違って、韓国で巫堂を訪ねる人々の層は厚く、ときには占いの結果が社会に影響を及ぼすことまである。

 一般に巫堂の主たる顧客は中年以上の女性で、相談内容は夫婦関係、家族の病気、子供の結婚や進学問題などが多い。このごろは長引く不況の影響から商売の見通し、転職や再就職、不動産の売買などについて相談に来る男性の数も増えているという。

 巫堂への相談事は、なにも個人のプライバシーばかりではない。企業経営者が社屋の移転の日や方角を占ってもらったり、会社の創立記念日と会長の誕生日とで会社の運勢を占うこともある。また、次期大統領選挙の日取りを決めるために占い師を訪ねた政府高官もいるという。

 この占いの席でまず聞かれるのが生れた年、月、日、時間の四項目で、これを四柱という。この場合の月日は必ず陰暦だ。この四柱を、それぞれ十二支に基いた漢字ニ文字で表したものを八字(パルチャ)という。四柱八字とはつまり、その人の生まれつきの運命を表すものなのだ。

 四柱八字を占う四柱推命は中国古代の陰陽五行説に基いた易学で、もちろん日本にも伝わっている。しかし今の日本でこれがさしたる影響力を持たないのは、日本人が陰暦を忘れてしまったからに違いないと私は考える。四柱推命は陰暦じゃないと当らないのである!

「アイゴー、ネーパルチャヤー」
 女たちの口からため息まじりに漏れるその言葉を聞くたびに、私はどうにもやるせない思いにとらわれるのだが、言っている本人はすでに悟りの境地にある。

 期待をかけていた一人息子が大学受験に失敗したとき、亭主が花札で大負けして借金を抱え込んだとき、あれやこれやの思わぬ不幸に見舞われたとき、思いっきり泣いたり叫んだりした後に、母や妻は「そうよ、これも私の運命なのよ」と言い放つのだ。

 できの悪い息子を持ったことも、甲斐性なしの亭主と連れそうことも、だれのせいでもなくこの私に運がないせいだ。これもみな天が私に与えたもうた運命なのだと、自分自身に言い聞かせるように。

 思えばわが身に降りかかるすべての悪運を「ネーパルチャヤ」と諦めながら、この国の女たちはしぶとく生き抜いてきた。
「あなたの人生、あなたが切り開いていくのよ。あんな男となんか別れてしまいなさい」
 日本人ならそう忠告するだろう。でも韓国人は違う。
「自分の八字だと思って生きて行きなさい」
「千里逃げても、八字からは逃げられない」
 そう言って慰めてやることこそ、韓国式人生の達人なのである。

 わが子に恋人ができたと聞いた母は、さっそく巫堂を訪れて二人の宮合(相性)を占ってもらう。いくら条件のよい相手でも、宮合が合わないことには幸せにはなれないと母たちは信じている。逆に相手の家柄や性格が気に入らなくとも、巫堂から「餅宮合」のお墨付きをもらえば、母親にはもう反対する術はない。それほど巫堂のお告げは、人生を左右するほどの重みを持っているのだ。

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Last updated  2021.02.04 00:33:35
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