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2021.12.19
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『魯肉飯のさえずり』という本を、手にしたのです。
台湾にルーツを持つ著者の生活が見えるようなお話なのかなぁ。





温又柔著、中央公論新社、2020年刊
<「BOOK」データベース>より
ママがずっとわたしの恥部だったー「もしも、あたしが日本人ならと思う」就活に失敗し、逃げるように結婚を選んだ桃嘉。優しい台湾人の母に祝福されるも、理想だった夫に一つ一つ“大切なもの”をふみにじられていくーことばを超えて届くのは、愛しいさえずり。台湾と日本のはざまで母娘の痛みがこだまする。心の声をとり戻す長篇小説。

<読む前の大使寸評>
台湾にルーツを持つ著者の生活が見えるようなお話なのかなぁ。

rakuten 魯肉飯のさえずり


台湾語と中国語、日本語が語られているあたりを、見てみましょう。
p257~260
<第5章 あるがままのわたしたち>
 桃嘉は遠い記憶がよみがえる。あれは確か、昭和から平成に改元された年のことなので桃嘉は8歳だった。
―あの方は、台湾にも来たことがあるからね。
 祖父は確かに、亡くなったばかりの天皇陛下を、あの方、と呼んでいたと桃嘉は言う。百瀬の話によれば、皇太子だった昭和天皇が台湾をめぐったのは一度きりだというから、祖父はその時のことを言っていたのかと桃嘉は思う。
「わたし、母方の祖父母とはいつも日本語で話してました。祖父のほうはもう亡くなってるんですが。あるとき母に、なんでオジイチャンとオバアチャンは台湾人なのにあんなに日本語がじょうずなの? と訊いたことがあります。母は教えてくれました。オジイチャンは昔、日本人だったのよって・・・」

 母はそのあと、
 ―オジイチャンオバアチャンとちがう。ママは台湾人なのに、日本語、へた。わるかったね。
 冗談めかしながら頬をふくらませたのだった。
「ということは、深山のお祖父さまは本省人なんですね」
「え?」
「深山のお祖父さまとお祖母さまはどちらも蒋介石の軍隊と一緒に戦後になってから台湾にわたったのではなく、日本統治時代の頃からずっと台湾にいらした方なんですね」

 そういうことになる。父と初対面だった母が、ミヤマモキチ、と書いて周囲を驚かせることができたのは祖父が母にカタカナを教えたからだ。台湾人なのに日本語ができるからといって祖父が特別だったのではない。あの頃の台湾人は皆、学校に行ったら日本語を教わった。

「胸が痛みます。それはもとをただせば、日本人のせいなのですから」
「でも祖父は自分が日本語をはなせることをすごく自慢に思ってたと母は言います。父が日本人だと知ったときも、それで反対することはなくて、むしろ歓迎したらしくて・・・」

 百瀬は遠慮がちな笑みを浮かべ、あいまいにうなづく。紹興酒のせいで、今夜の自分は少し浮かれすぎているにちがいない。ふだんなら、あれこれ質問されても期待されているだろうことが答えられないうしろめたさもあって、台湾の話題をみずから長引かせるようなことはめったにしたことがない。それなのに今はどうしたことか、訊かれもしないのに、みずからすすんで喋っている。街灯に照らされた、自分とほんの五つほどしか年の変わらない老師にむかって、なんだか喋りすぎてしまいました、と桃嘉は言う。
「いや、ぼくこそ、つい聞き入ってしまって・・・深山のお祖父さまのお話、とても興味深いです」

 それから百瀬は、自分の“本業”は博士論文を完成させることなのだと打ち明ける。専門は台湾文学。それも、日本統治期に日本語で執筆した作家たちの研究をしている。大学時代は史学科にいて中国近現代史を学んでいたが、ひょんなはずみでそうなった。

「台湾に留学中、寮の近くに文学館があって、そこに毎日のように通いました。勉強に飽きると、日本語に飢えていたのもあって、日本語で書いてあるという理由で片っ端から読むうちに、台湾人作家たちの作品にのめり込んでしまったんです」

 特に、1940年代に活躍した作家たちが書くものに夢中だった、と言う。となると、桃嘉がうまれる40年ほども前の話だ。百瀬を惹きつけたという台湾の作家たちは、祖父より少しい年上か、あるいは同年代の人もいるのだろうと桃嘉は思う。


『魯肉飯のさえずり』2 :桃嘉の離婚
『魯肉飯のさえずり』1 :冒頭の語り口





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Last updated  2021.12.19 14:22:35
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