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【時期】6月中旬の平日に来訪。【入場料】入場料無料。【駐車場】無料駐車・バイク駐車場あり。(2箇所あります。)駐輪可能。【トイレ】あり(ウォシュレットなし) かなり大きな滝です。ただし、滝つぼ近くから眺めることはできないので、迫力を感じることは難しいかもしれません。 駐車場から歩いて5分程度で、写真の通り2通りのルートになります。下の方は、途中で行き止まりになっています(湧き水を楽しめるスポットはあります) 階段を上る方は、200段以上の階段があるので、心配能力があまり高くない方は、昇らない方がよいと思います。ただし、足の接地面は安定、段差の高さもそれほど高くありません。手すりもあります。 しかも、展望台の風景は非常に美しいです。滝のすばらしさ。周囲の緑の美しさ。鳥の美しい鳴き声。緑の合間から顔を出す、青空。本当に絶景だと言えましょう。ベンチが一組しかないのが残念ですが、極上です。
2025.05.30
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自然・ほたる鑑賞に特化した報告となります【時期】6月12日(平日)に来訪。【入場料】入場料無料。【駐車場】無料駐車・駐輪場あり。駐輪可能。【トイレ】あり(ウォシュレット無し)。【自販機】近隣にあり非常に秀逸なほたる鑑賞スポットでした。日付を詳細にしたのは、ほたる鑑賞においては、時期とタイミングが非常に重要となってくるからです。参考にしてください。また今回のほたる鑑賞の時間帯ピークは夜の8時でした。スタッフの方が多忙の中にも関わらず、友愛的に教えてくださいました。感謝しかありません。現場は川沿いになるのですが、恐らくほたるを鑑賞できるようにするために、生息地を整備しているのだと思われます。ですから、ほたるの捕獲も禁止です。また写真のとおり、車はやや離れているところにしか駐車できません。ルール順守へのご協力をお願いいたします。(最寄りに駐車して、ほたるを勝手に捕獲している浜松ナンバーのご老人と外国人女性がいらっしゃいました。次回お見掛けしたら、通報致します)ほたる鑑賞のエリアは、網で囲ってあるエリアと釣り堀のエリアになりますが、釣り堀の方がおすすめです。網が無い分、より身近にほたる鑑賞できます(ただし、子供にほたるの生息環境などを教える為には、網エリアの鑑賞も有効です。生息地、幼虫時代に食べる餌等の話)ほたる鑑賞可能にもかかわらず、トイレがあるのもありがたいですね。☆動画ではとれませんでしたが、2、300匹の蛍が飛び交っていましたよ。
2025.05.30
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【時期】6月中旬の平日に来訪。【料金】入場料無料。【駐車場】駐車料金1時間200円。以降30分で100円。バイク200円(1日)【トイレ】あり(ウォシュレット無し) 非常に広大な公園です。全部回ろうとしたら、半日かかってもおかしくない広さです。菖蒲と紫陽花を観に行きました。中央部から南のエリアにあります。もう少し時季が過ぎると、睡蓮の花が盛りになってくるそうです。
2025.05.30
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今回は皆様にSWOT分析についてご紹介したいと思います。ですがその前に、なぜSWOT分析やメリット・デメリット表などの分析の方法をご紹介しているのか? その理由からお伝えしたいと思います。 そもそも人は、自分なりのとらえ方で、ものごとを把握したり理解しようとします。自分なりのとらえ方のことを「主観」といいます。気持ちであろうが、思考(理性を発揮させる)であろうが、人は絶対に主観的にとらえようとするのです。 主観的にものごとを捉えるときに、必ず起きる現象があります。それはものごとを捉える・把握するときに、何かしらの偏りが発生するということです。偏りが発生することは、必ずしも悪いことではありません。 たとえば何かしらの問題が発生したとき。それに対して自然と「なんとかなりそうだ」と思える場合。その判断の根拠が現実的であった場合、主観でとらえたその判断は、むしろ不要な悩みや迷いを感じにくくしてくれる働きを持ち得ます。 しかしデメリットとしては、偏りが激しくなるほど、ものごとを非現実的に捉えてしまう傾向が強くなってしまうのです。そしてこの特徴は、特にものごとを冷静に判断するときに、マイナスに働きやすい欠点を持っています。 ものごとを冷静に判断するケースとはどんな場合が考えられるでしょうか?たとえば次のようなケースが挙げられます。①マリッジブルーとなり、結婚に対して否定的な気持ちしか感じられなくなった。②職場のストレスが強いので、転職することしか考えられなくなった。③生活が苦しいが、生活保護なんて絶対に受けられない、と決めつけてしまっている。④恋愛や友人づきあいにおいて、トラブルが生じた際、絶縁するしかないと決めつけている。⑤投資の話を受けて、これは絶対に儲かるし成功するに違いないと利益面のみに注目している。 具体例はいくらでも挙げられますが、判断における基本は「よいこと・わるいこと(メリット・デメリット)」を最低でも2つの視点から考えることです。そしてより適切な判断(現実的で、成功しやすく、失敗しにくい)をするためには、更に多くの視点から考えることがとても有効なのです。そして今回紹介するSWOT分析は「4つの視点」から分析する方法です。活用するのは少し難しいですが、メリット・デメリット表よりも適切な分析をしやすい強みを持っています。【SWOT分析とは?】SWOT分析とは、4つの英語の頭文字をつなげて作った造語です。強み Strength弱み Weakness機会 Opportunity脅威 Threatの英単語なのですが、要はこの4つの視点から物事を分析してみようということです。こんなイメージになります(ウィキペディアより 日本語の方が良いのでウェブで探してみてください)強み:自分に関連するメリットです弱み:自分に関連するデメリットです機会:相手、環境、タイミングなどにおけるメリットです脅威:相手、環境、タイミングなどにおけるデメリットですメリット・デメリット表と比べると、内部環境と外部環境をあらかじめわけておくので、より自動的にいろいろな角度から分析しやすいようになっています。【実際の作り方】大きく2つあります。①メリット・デメリットを数多く考え出し、そこに肉付けする方法。②まず内部環境における強みと弱みを考え出す。次に外部環境の機会と脅威を考え出す。①の方法の利点は、制限が少ないので、まずはたくさんメリット・デメリットを考え出しやすい点にあります。そのかわり整理されていないので、ある程度考えを出し尽くしたら、今度はそれらが内部・外部どちらの要因なのか?整理していきます。その際、更に浮かんできた分析内容を追加していきます。②の方法の利点は、最初からバランスがとれた視点で進めるので、分析内容が偏りにくいという点です。そのかわり数多く考え出しづらいときもあるので、その場合は①の方法に切り替えてもいいでしょう。【具体例:私のケガと実習】 では私を実験台にして、SWOT分析をしてみましょう。今回は「抱えているケガと実習に向けたコンディショニング」をお題にしたいと思います。<強み>・整形外科的な知識をある程度有している。・何度も同じ症状に対応してきた。・アイシング、固定、服薬等をできている。<弱み>・体重が重いので(脂肪+筋肉)、怪我の場所に荷重がかかって治りにくい。・怪我しやすい体質である。<機会>・仕事でけがをかばう勤務が可能であるため、治療しやすい。・自転車通勤できるなど、足を使わない行動が可能。<脅威>・実習開始まで〇〇日しか残されていない。(※〇〇日残っている、の方が冷静と言えます)・一度治りかけて、油断して筋トレをして悪化させてしまっているので、いつもよりも治癒の過程が不透明。・仕事を休むことはできない。肉体労働でもある。・ケガの為にトレーニングを休むと、基礎体力が低下して、実習をこなす上で不利になる。【私が考えた今回の総合判断】 実習までにケガが軽快する可能性は十分あるし、治る可能性すらある。しかし対応方法を再び間違えると、長引かせる可能性がある。体力の低下は多少不安だが、怪我をしながらでも座りながら筋トレなどを安全にできる。従ってケガの治療を第一にする。副作用でおきるデメリットを極力おさえていく。何より毎日実行していこう。完ぺき主義に陥らず、毎日できることを行っていく。【まとめ】 いかがでしょうか?SWOT分析は個人でも、組織でも使える方法になります。ですが私は個人の皆様を対象にしてお伝えしています。個人を対象とした場合、次のような効果が生まれやすいことでしょう。【期待できる効果】①具体的な方法を考え出すことができる。②方法を実行する事で、成果が見込める。③悩みが減るので、不安が減る。④問題があるなか実行するので、自信を持てる。(私の場合は、自分がDoerであるという意識があり、それを体現できると感じられるため)
2025.05.30
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胎児性アルコール・スペクトラム障害 妊娠中の母親の飲酒は、胎児・乳児に対し、低体重や、顔面を中心とする形態異常、脳障害などを引き起こす可能性があり、胎児性アルコール・スペクトラム障害といわれます。胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法はなく、唯一の対策は予防です。また少量の飲酒でも、妊娠のどの時期でも影響を及ぼす可能性があることから、妊娠中の女性は完全にお酒をやめるようにしましょう。 妊娠中のお母さんが飲酒すると、生まれてくる子どもに様々な影響を残すことがあり、胎児性アルコール・スペクトラム障害と呼ばれています。胎児性アルコール・スペクトラム障害は幅広い症状を含み、名称や診断基準も複数提案されています。 その中核ともいえる胎児性アルコール症候群において、特に知的能力障害について大きな問題となっています。非遺伝性疾患による知的能力障害ではアルコールが最多の原因とする意見があるからです。 基本的に、胎児性アルコール症候群は、飲酒量に比例してリスクも増え、大量飲酒者である女性アルコール依存症者の子どもに対する調査では、妊娠中飲酒したケースの30%と報告されています。一方で、ここまでなら大丈夫という飲酒量はわかっていません。短期間であっても大量の飲酒はリスクが高く、また妊娠初期がよりリスクが高くなりますが、基本的には妊娠全期間を通して何らかの影響が出る可能性があります。 また、特異的顔貌や低体重などは成長とともに次第に目立たたなくなってきますが、ADHDやうつ病、依存症などの精神科的問題が、後年明らかになってくることがあります。胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法はないため、唯一の対処法は妊娠中飲酒しないことです。【引用・参照】『胎児性アルコール・スペクトラム障害』健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 厚生労働省執筆者:真栄里 仁 まえさと ひとし独立行政法人 国立病院機構 琉球病院 副院長
2025.05.25
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アルコールと糖尿病 適切な飲酒による適量のアルコール摂取は、糖尿病の発生を予防する可能性があります。しかし度を越した過剰なアルコール摂取は高血糖状態を生み、それは同時に脂質異常症や高血圧などと相まって脳血管障害・虚血性心疾患の危険因子となります。 糖尿病はインスリンが分泌されないことや、インスリンがうまく使えないことで血糖値(血液中のブドウ糖の値)が高くなり、その結果として目や末梢神経、腎臓などの小さな血管の障害から、やがて脳血管障害・虚血性心疾患などの動脈硬化疾患も引き起こす一連の疾患群です。 血糖値が空腹時で126mg/dL以上、もしくはブドウ糖を投与して2時間の血糖値が200mg/dL以上、もしくは普段の血糖値が200mg/dL以上のいずれかが満たしていることに加え、のどが乾くことや水をたくさん飲むといった典型的な糖尿病症状か、目の症状(糖尿病性網膜症)、あるいは数ヶ月の血糖値の推移をみる検査値であるHbA1c(NGSP値)が6.5%以上である場合に糖尿病と診断されます。 糖尿病はすい臓(膵臓)のインスリンを分泌するβ細胞が破壊されることで起こる「1型糖尿病」と、過食や運動不足・肥満からインスリンがうまく使えない、あるいはインスリンが作れない「2型糖尿病」に大別されますが、この中でもアルコールは後者の「2型糖尿病」と関連があるとされます。 適切な飲酒による適量のアルコール摂取は糖尿病の発生を抑えると考えられています。具体的には1日あたり20~25g程度のアルコール摂取が糖尿病の発生を抑えるとされています。しかしそれを超えた飲酒量では、肝臓に蓄積した脂肪への影響や、すい臓からのインスリン分泌を抑える影響から、血糖値を上昇させる可能性があると考えられています。また飲みすぎ、食べすぎによってカロリー過多になることこそ、血糖値を上げる最大かつ重要な原因となります。 アルコールの過剰な摂取が続くと、やがてアルコール性肝硬変やアルコール性すい炎に至ります。アルコール性肝硬変では高血糖になるほか、肝臓から必要なブドウ糖が放出されず、命に関わるような低血糖を引き起こすことがあります。またアルコール性すい炎では血糖値を下げる細胞と上げる細胞のどちらも破壊されることで、やはり高血糖にも低血糖にもなり得ます。いずれの病態も血糖値は不安定になりますし、とくに治療としてインスリン製剤やインスリン分泌薬を使用している人はその傾向が激しくなります。糖尿病は自覚症状がなく、気づいたときには進行している病といわれます。適切な飲酒量と定期的な健康診断を心がけましょう。【引用・参照】『アルコールと糖尿病』健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 厚生労働省執筆者:露木 寛之 つゆき ひろゆき独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 精神科
2025.05.25
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アルコールと高尿酸血症・痛風 健康診断などで、尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合に高尿酸血症と判断されます。成人男性の20%が高尿酸血症であると言われています。高尿酸血症は痛風関節炎だけでなく、腎障害やメタボリックシンドローム、心血管障害とも関連があります。原因のひとつにアルコール摂取があるため、高尿酸血症を指摘されたときにはお酒との付き合い方を見直してみましょう。 アルコールが体の中の尿酸値を上げる方向に働く理由は3つあります。①アルコールは体内のエネルギー源であるATPといわれる物質の分解を進めてしまいます。その結果ATPが分解されることでプリン体が増え、そのプリン体はやがて尿酸として体の中に溜まります。②腎臓の機能低下により、尿酸が体から出にくくなり、体の中に溜まっていきます。アルコールと一緒にプリン体を多く含んだ食べ物を多くとってしまうことです。具体的にはレバー、いわし、白子には多くのプリン体が含まれています。③痛風関節炎は高尿酸血症の結果、関節の中に漏れ出た尿酸が塊を作ることで起こります。その塊を白血球が壊すために赤みや痛み、腫れを生じてしまうのです。痛風関節炎は足の親指の付け根に起こりやすいとされています。 また、腎臓の機能が低下することで尿酸が体から出にくくなり、高尿酸血症を起こします。その一方で高尿酸血症があることで、腎臓の機能も低下させてしまうことが知られるようになってきました。また尿路結石も高尿酸血症でよくみられる合併症です。 メタボリックシンドロームでは体の中のインスリンが増えるため、尿酸を外に出す能力が落ち、それと同時に尿酸が多く作られるようにもなるため高尿酸血症になり得ると言われています。さらに、高尿酸血症では肥満や高血圧を合併するため、心血管障害の危険性も上がります。 痛風関節炎の有無や持病、実際の尿酸値によって治療のタイミングは変わりますが、治療の基本はやはり生活習慣の改善になります。食事療法として適切なエネルギー摂取を行うこと、プリン体を過剰にとらないこと、水分を多くとることがポイントです。 また、運動療法としては有酸素運動が勧められています。無酸素運動はかえって尿酸値を上げてしまうこともあり、注意が必要です。 そして適切な飲酒によるアルコールの制限は、治療の重要な柱となります。ビールだけが原因になる、あるいは低プリン体ビールだから大丈夫だと思っている人が多いのですが、前述したように、アルコールはプリン体の有無にかかわらず尿酸値を上げる働きがあります。そのため、どんな種類のアルコールでも適切な飲酒量にとどめておくことが重要です。【引用・参照】『アルコールと高尿酸血症・痛風』健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 厚生労働省執筆者:露木 寛之 つゆき ひろゆき独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 精神科
2025.05.25
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脂肪性肝炎発症のメカニズム アルコール性肝炎には原因の違いから、アルコール性脂肪性肝炎と、非アルコール性脂肪性肝炎があります。病気におかされた際の組織の様子に似ている部分があり、両者とも進行すると肝硬変や肝臓がんになる場合があります。アルコール性肝炎 アルコール性肝炎は常習飲酒家で大量飲酒後に発症し、多くの場合、食欲不振・だるさ・発熱がみられます。肝臓は痛みを出さない臓器ですが、アルコール性肝炎のときは肝臓の腫れとともに右上腹部に痛みが出現し、黄疸もみられ、尿の色が紅茶色になります。ひどくなると腹水とむくみも出現します。血液検査では、白血球が増加し、肝酵素AST(GOT)は200IU/L以上であり、貧血・血小板減少・アルブミン減少・プロトロンビン時間の延長・クレアチニン上昇など、その他の原因で起こる急性肝炎と類似の血液検査異常を示します。診断は飲酒歴がはっきりしていれば容易です。ウイルス性急性肝炎の重症型に劇症肝炎と呼ばれる病態がありますが、アルコール性肝炎にも重症型アルコール性肝炎と呼ばれる病態があり、いずれも救命率が低い重篤な肝炎です。 多量飲酒者が必ずアルコール性肝炎を発症するわけではなく、個体差があります。男性より女性のほうが少ない飲酒量でアルコール性肝障害を起こしやすいと考えられています。一度アルコール性肝炎を発症した人では飲酒により繰り返しアルコール性肝炎となり、肝硬変へと進行していきます。アルコール依存症が背景にある人が多く、この場合アルコール依存症の専門治療も必要です。非アルコール性脂肪性肝炎 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: nonalcoholic steatohepatitis)は、過食・運動不足・肥満(特に内臓脂肪型)・糖尿病・脂質異常症などに合併した脂肪肝を背景として発症する肝炎です。飲酒しない人であれば非アルコール性ということは明白ですが、多くの脂肪肝は飲酒と飲酒以外の要因の両者が関係しており、アルコール性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎にも重なる部分があるはずです。 アルコールが原因の主であれば、通常は肝酵素のAST/ALT(GOT/GPT)比が1以上となります。脂肪肝が診断されると、従来は主に動脈硬化による生活習慣病の予防の観点から生活指導や肥満・糖尿病・脂質異常症の治療が行われてきました。しかしNASHは単なる脂肪肝ではなく、肝硬変へと進行したり肝臓がんになったりするケースがあるため、肝臓病自体の予防の観点からも治療の重要性が強調されています。 日本にはNASHの経過を追った大規模なコホート研究がなく、どの程度の頻度で発症し、どの程度の人が肝硬変や肝臓がんにまで進行するのかが明らかになるまでには、今後の多くの研究を待たなければなりません。しかし、肥満人口の増加とともに今後NASHの増加が予想されています。【引用・参照】『アルコール性肝炎と非アルコール性脂肪性肝炎』健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 厚生労働省執筆者:横山 顕 よこやま あきら独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 臨床研究部部長
2025.05.25
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あなたが自信を養っていく上で、最も悪影響を受ける存在は養育者(親)であるという内容(「養育者(親)から受けた負の影響を乗り越え成長しよう」)を前回アップしました。今回は、考え方・行動の仕方(認知修正・ソーシャルスキル)について伝えていきたいと思います。 考え方や行動を変えてみた。するとあなたが自信を感じる上で望ましいことが起きた。それを少しずつ体感していくことが、何より大切であると私はお伝えしておきたいと思います。感じることの威力が、自信の養成ではよけいに重要になってくるわけです。 その際、最も危険なのは、まちがって「ニセモノの自信」を感じてしまうこと。感じようと努力してしまうことです。相手から認めてもらうための努力はまずニセモノになることに十分注意しておきましょう。<見栄をはる自分からどうするか?>①つい本心から離れた言動をしてしまう仮面をかぶる自分がいる。②それでいい。まずは認めることからだ。③そして、今のあなたができるところから、相手に少しずつ素顔を見せてていけばいい。一度に解決しようとするな。<相手を選んで誠実に対応しよう>①あなたは誠実に生きるのが苦手かもしれない。②基本的に誠実に生きることで、あなたはうしろめたさを感じにくいし、相手からも信用されやすくなる。③ただし、お人よしにならないことだ。相手を選んで誠実になることを覚えておこう。<相手の存在を上手に無視しよう>①相手は自分の存在をいろいろな理由でアピールする場合がある(防衛機制)②しかし相手の攻撃をとりあわなければ、相手のプライドは傷つけられる。反応してしまえば、相手に存在意義を与える。③だから気に入ろうと行動する必要は一切無い。断絶か、ビジネスライクの交流である。※(「ビジネスライク」)<相手に警告を与えよう>①相手はあなたを巻き込んで理不尽な対応をすることが当たり前だと思っているかもしれない。②だがそれは事実ではない。あなたもまた大切な存在なのだ。③巻き込む人に対して、具体的な警告内容を繰り返し伝え続けることは、有効策の1つだ。<ストレスを発散しよう(コーピング)>①過度なストレスは敵意を蓄積させる。②その結果、あなたにいっそう人目を気にさせる。または周囲への関心を失わせる。③だから、コーピングによる定期的又は断続的な発散が有効である。※(「コーピング」)<目先の安全より、揺るぎにくい長期的な自信を目指そう>①嫌われることは、意地悪をされたり、プライドが傷つくことなどのデメリット発生が予想される。②しかし本当に危険なのは不安を解消する為に好かれようとすることである。③常に相手(養育者等)の顔色を伺うとストレス過多となり、自立して大人になどなれない。<現状の問題を自分のせいにしすぎない>①確かに今のあなたの心のありようは苦しいものかもしれない。②しかし、現在の心のありようは、その原因の全てが自分ではない。③成長の過程で必要だったのであり、過去の辛い状況を適応しようと頑張った結果にすぎない。しかもあなたは、それを乗り越える途中なのである。<好きなことを追求せよ>①自分の好きな課題を追求し続けてみよう。②それによって、自分が面白くて生きていると実感でき、他人の眼を気にする暇などなくなる。③その結果、他人の評価や悪意などが大したことにならなくなる。つまりいつの間にか、自信を得ているのである。①楽しさ、好きだ、自分らしいと感じられることを追求してみよう。②一方不自然な環境は、完璧でなくてもいいので改善してみよう。③その結果、他人の評価や悪意などが大したことにならなくなる。つまりいつの間にか、自信を得ているのである。<目標をスモールステップで設定しよう>①明確な目標は能力を養成しやすい。潜在力を発揮させ、達成の心理的満足感や充実感ももたらす。②その際、スモールステップにしておく(少しずつ達成する)ことも重要だ。③方向性が決まり、現実的な目標も定まった。あとは実行し続けるだけだ。確実に少しずつ効果がうまれることだろう。<自己実現の生き方>自己実現の生き方とは、自分の本心からの欲求に基づいて、自分なりの人生の価値を見直し、自分なりの価値を追及する人生に意識と行動を向けていく生き方である。他の人から評価されなくてもよい。自分の好きな人生を自分の好きなように生きること。こうした生き方が、私たちに真の喜びと充実をもたらす。<友達100人でき…なくても、当然良い>誰とでも仲良くすることを求められたのは、幼児期及び学校だけの特殊期間である。<不利益が無ければ、嫌われても上等だ。自信を養う費用とでも考えよう>①たとえ嫌われても不利益がないならそれでいい。②あなたが好かれたいと思う全ての人から好かれるならば、それに越したことはない。③でもそれは現実的にはありえないことを認めてしまうことだ。<人と接するとき、私たちは心の断片で接するのではなく、心全体のあり方が反映される。>【自己受容できなくさせる行為の一例】1拒絶されることを恐れてありのままの自分が出せない。→人とのつきあいがぎこちなくなる。2人より優秀だと証明する 3未来の為に現在を犠牲にし、過去に逃げ込む 4人を学歴や肩書きで評価する 5自分で判断せず、適切に他人に依存できない 6周囲からの自分の評価ばかり気にする※なお自己受容的になれるかどうかは、基本的に8歳までに決定される。(もちろんその後の修正も可能。それが心理教育のすごいところです)<弱点は緩和でよい。強みまで引き上げなくても良い。>①あなたは弱点を強みに変えようと必死かもしれない。②しかし、どの生き方や性格にも強みと弱みがある。③自分らしさを認め、生かしながら、自分の強みをみがけばいい。弱点は緩和で十分だ。<あなたは同世代の人との交流が苦手ではないか?>①同年齢の交流は相互に依存しあう対等の関係である。②自分の弱みをみとめ、自己開示しながらも、持ちつ持たれつで交流する。これが出来ないと同世代が苦手になる。③相手への依存や貢献だけではなりたたない。相手は養育者ではないのである。<傷つきやすさの根源には自己価値観の弱さがある。><弱さ、未熟さ、劣等性もある自分を受け入れられないと、ニセの自信を求めてしまう><人間の健全な心とはもともと揺れ動くものである><人は自然と成長したがる存在だ>①人間には生得的な内発的成長欲求がある。②必要とされる忍耐や努力自体も挑戦心を刺激し、充実した喜びをもたらす。それはカフェテリア実験でも証明されている。③だから成長したい気持ちを発揮し、途中の苦労を感じながらも、成長した自分に対して大いに喜ぼう。<やった者勝ちと思おう(Doerであれ!)>①社会的価値など考えず、3日坊主でも興味あればやってみて、すぐにやめていい。②もしも好きだと感じられたなら、それでよい。子供の頃にやりたかったことをやり直してもいい。③あなたが好きなことは、自信を生み、育ててくれる大切なものなのだ。【次のような特徴を持つ人間とはビジネスライクに徹しよう】・気持ちをむしゃくしゃさせるひと・いつでも自分の思い通りにするひと・巻き込む人・面会中よりも、別れた方がほっとするひと・愚痴が多い人・悪口をいうひと・他人を利用するだけの人・裏切る人・やる気を奪う人<相手の問題は相手に任せよ>①他人があなたに下してくる理不尽等の評価を行う悪癖は、相手の問題であり、相手自身が解決すべきだと認識しよう。自分と相手との境界線を明確に意識しよう。②それは相手を突き放すのではなく、相手の事情を尊重することにもつながる。③具体内容はわからなくても、何かしら事情があるのだろうと思いやることが優しさともなる。<相手に自分を好きになる事を強要していないか?>①あなたはとても、他人の目が気になるかもしれない。②それは、暗黙のうちに「自分さえきちんとすれば相手は褒めて認めてくれる」という認識があるからかもしれない。③これは相手を無視した押し付けである。あなたにも、相手にも、交流したい・認めたい人を決める自由がある。<なぜ他人の目がきになるのか>①「他人の目」がとても気になる人は、身近に批判的な人、心配性の人、過干渉の人がいたことが多い。②そうした環境では自分をありのまま安心してだせる経験ができないので、「他人とは自分に評価を下して傷つける存在」と認識するようになる。③だから傷つけられないようにいつも他人の目を気にするようになる。<他人から危害を加えられる被害妄想が止まらない>①他者からの評価は、事実と異なり、あなたを正当に評価しないものも含まれる。②それはあなたの不安をあおり「もしかしたら(悪い想像…)かもしれない」という被害妄想をエンドレスに生み出す。しかも他人の胸のうちなど読めるわけも無いのだが、相手の非言語メッセージに過度に着目したり、心を読み続けようなどと徒労を行う。③その仕組みを抜本的に解決してくれる最高の対応方法の1つが、自信の養成なのである。<がまんや努力が不足していると決めつけるな>①あなたが抱える自信喪失上の問題は、我慢や努力がたりないわけではない。②疲労の蓄積、体力の限界、精神状態等のもっともな理由が影響している可能性も高い。③つまり努力不足などと呼ぶべき性質のものでなく、健康な人でも同様の結果となる、単なる限界なのだ。つまり休養等をした上で、再び工夫すればよいだけの話なのだ。<自分も相手も、自分の主観で相手を見てしまっている>①他人の目が気になるとき、あなたは相手がみてくる自分と実際の自分を混同している。②相手の見る自分には、相手側の事情と主観が反映されている。③一方、あなたも勝手に「相手はこんな風に思っているだろう」と主観で推測しているのだ。(これを解消する最も有効な手段の1つが、当事者同士で十分にコミュニケーションをすることである)<評価体質の源>①評価体質の基本にあるのは不安の強さである。②不安ゆえに「あいまいなものに耐えられない」度合いが強く、自分なりに決め付けずにはいられなくなってしまうのだ。③これは白黒思考など、非現実的な感じ方(認知の仕方)へとつながってしまう。<自分はどう思われているのか?と気になるのは、自分だけではない。人には多かれ少なかれ、自分が相手にどう思われているのか?と感じる部分がある><他人の目を気にした欲望を持つと周囲が気になる。それは自分の望みを持っていないからだ。それは結局自信の無さに帰結する。>
2025.05.23
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私は今日久しぶりに抑うつ的な体験をしました。もちろん嫌な体験でしたが、せっかくなので「抑うつ状態によってどんなことが起きたのか。そしてどう対応したのか。」それをみなさんに伝えるチャンスと捉えて、今回の記事をUPすることにしました。【実際に発生した症状】1.(無意識に)物事の悪い面ばかりに目を向ける(自動思考) これが起きた結果、私はとても悪い状況の中にいるという錯覚に陥りました。次々と嫌なことが起きているような錯覚にも陥りました。冷静に考え直した結果、確かにいつもと比べて(運が悪く)あまり良くないことが、複数起きてしたのですが、大した問題でもダメージでもない現象ばかりでした。2.いつもよりも(都合の悪いこと・嫌なこと)に対して敏感になる。 これが起きた結果、先ほどの1の自動思考・選択的注意と相まって、次々と悪いこと、嫌なことを見つけてしまいました。これは生き物としてのホメオスタシスが働いている結果で、自分の調子が悪いので、自分を危険にさらすような状況や問題を、普段よりも素早く見つけて対応しようとする働きによるものです。なお都合の悪いこと等に対して、鈍感になって気づかないように対応するケースもとても多く観られます。3.現実的にありえないような被害妄想をイメージしてしまう 「上司が私の実習を認めずに、嫌な対応をしてくる」というような被害妄想を数分間味わいました。複数回妄想しました。(内容は上司以外のものも含む) きっかけは、上司が実習用休暇の許可において、ちょっとした問題行動をしたことでした。これを私は大げさに受け止めてしまったのです。 なおその後、上司は休暇を全て認めた上、(やや外交辞令的でしたが)いつも仕事を熱心に取り組んでくれることに対して感謝しつつ、身体に気を付けるようにも言ってくれました。 このようなきっかけ(今回でいえば上司の小さな問題行為)をトリガーポイントといいます。ちょっとした問題をきっかけにして、大きな問題だと感じたり、大きな問題が起きるだろうと(自動的に)被害妄想に陥る仕組みになっています。そしてトリガーポイントが有効になるのは、既に疲れがたまっていたり、ストレスがたまっている状態なのです。4.身体的な不調(例:胃の痛み)が発生する 私は体のちょっとしただるさと、胃の痛みを感じました。これが続けば、かりに元気なときでさえ、次第に憂鬱になっていくというものです。頭痛などの身体症状を伴う心の問題を抱える場合、まず心療内科を受診して、頭痛の症状を消すだけでも大幅な治療効果が期待できる現象と根っこがまったく同じになります。5.苦痛を感じる時間がいつもよりも長い(その結果、ストレス耐性が減る) 普段対して負担を感じないような肉体労働のある行動が、今日はいつもよりも長時間やらされているような感覚に陥りました。また我慢弱くなり、いつも果たしている十分すぎる職責を、まあまあ程度にしか果たせなくなりました。6.考えるのが面倒くさくなり、すぐに認知行動療法などを活用できなかった。 頭の回転も鈍ったようでした。しかも、被害妄想などに頭の働きの一部を持っていかれたために、いつもなら容易にできる認知行動療法のセルフ活用もできなくなりました。【調子が悪い状態で、私は実際に何を行ったのか?】1.問題のきっかけを作った本人とコミュニケーションをとり、誤解や妄想のふくらみをおさえた。問題自体に対応できれば、それがベストです。今回はそれを行えたので、実際の問題の小ささや、悪いと思えた言動が実は悪くはないことを確認できたこと等につなげられています。(なお私の場合、今回は落ち込んでいた分、気合と十分なリハーサルを行って交渉してしまいました。ですが、調子の悪い最中には直接コミュニケーションを無理しない方法も有効です)2.いつもよりも仕事量をセーブする。身体的な負担は、心理的な負担に直結します。またいつもよりも、休憩時間を増やしました。3.無理やりに認知行動療法など、エネルギーを使うことをすぐにやろうとしない。まずは休憩したり、飯を食ったり、シャワーを浴びたりするなど、コンディション調整を心がけた。結果、自然と胃痛も収まった。(本来なら漢方薬などを飲む予定でした)4.認知行動療法等のセルフワークを行う。私にとっては今回の記事のUPが、それに該当します。これにより、問題が発生しにくくなり、しかも立ち直りやすくもなるという自分の成長へとつなげられます。5.調子の悪い自分を自覚して、自然体に過ごす。今回のように仕事中に発生する場合、十分な対応ができません。ですから、自分を責めるでもなく、解消に向けて精力的に行動するわけでもなく、調子が悪いなぁというあいまいな状況のまま、無理なく仕事をして過ごしました。帰宅後はコンディショニングをしています。【まとめ】 つまり抑うつ状態になった場合、頭があまり働かず、変な使い方もしてしまいます。それを前提として、あまり頭を使わないようにして、次のように対応すると、抑うつ状態は復調しやすいのではないか?と感じられました。1.いつもよりも調子が悪いし、抑うつ状態だなぁと認めてしまう。2.頭をあまり使わずに、肉体的・精神的な負担を軽くしてあげる。(その為には、今回の記事など、あらかじて心理教育を自らおこなっておく)3.余力が出てきたら、肉体的なコンディショニングを行う。特に苦痛や痛みは除去する。4.肉体的なコンディショニングの結果、精神的な余力も出てきたら、精神的なコンディショニングを行う。【その後…】 対応策は一度にすべてできるものではありません。的を得た内容で複数回、継続して行うほどに効果がたかまるものです。私は先ほどよりもコンディションが上がりました。一体何をしたのでしょうか?1.昼寝をする。睡眠はストレスの軽減や疲労の回復にとても有効です。ですので私は、仕事から帰宅してやることを済ませたのちに、セルフカウンセリングを実施しました。きっと途中で安心して、眠ってしまうだろうという読み通り、十分に昼寝することができました。2.セルフカウンセリングを実施する。2回にわたって、なぜいつもと違って、とても神経質になって、一時でも抑うつ状態っぽくなったのか?自分と向き合いました。もちろん自分の強みなどを改めて意識して認めました。一方、自分の弱さや問題点を自分なりに思い出しました。3.コーピングの観点から自分の状態、考え、行動をチェックする。セルフカウンセリングをした結果、自分にはHSPの特徴がある点を思い出しました。日頃あまり意識していないのですが、抑うつ状態になっていると、HSPの個性が強まることを再発見したわけです。そして複数のHSPに関するウェブサイトを、ざっと確認しました。そして次の点が明らかになりました。◆苦手な内容を得意にはできない。しかし苦手なものからも学べるし、行動は変化できるという基本姿勢を思い出せた。(現実的で自己支援的なビリーフへと変えた)◆自分は昨日既に疲労していたし、今朝は足のケガが痛んでいた。つまり元々肉体的なコンディションが、いつもより悪かったのに、それをはっきり意識してフォローしていなかった。親の食事は、自分で用意するようにしてもらった。(自己管理意識の向上と、より自分に優しく、負担は減らすの方向性をハッキリさせた)◆気持ちが落ち着く漢方薬を用意してあるので、それをしばらく飲み続けることにした。またケガの部分にはサポーターを巻いた。(薬をはじめとする医療的ケアの実施)※サポーターを巻いて仕事すればよかった。自分の回復力をあてにしすぎてしまった…◆基本的な心身のコンディションを上げる威力を再確認できた。(レジリエンス向上を再開した)人はもともと元気になろうとする力、元気に対応しようとする力を共に持っています。人ぞれぞれの個性や、置かれた環境によって、それらが上手に発揮されなくなる時があるので、そうした時に日頃から学んである心理教育の内容を活用して、効果的に対応することが、早く元気を取り戻す上で重要だと感じました。私自身も良い体験をできました。(久しぶりの抑うつ状態だったので、ちょっと焦りましたし、ビックリしました)
2025.05.23
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自信にはいろいろなものがあります。本物の自信だけではなく、中には「にせの自信」とも言えるものがあります。例えば「条件付きの自信」というものがあります。これは◆私は成功している。(または私は愛されている。)だから自信をもってもよいはずだなどと、自信を持てる良い条件を勝手に設定し、しかもそれが満たされたときだけ自信を持つことを許可する仕組みになっています。もちろんこれは本物の自信ではありません。 本物の自信とはなにか。それは自然に自分らしさを感じられる自信です。自分を受け入れ、自分らしさを発揮しながら生きていく状態を指します。「自分を肯定する気持ち」を感じられること。自分はこのままでよいのだ、という感覚が本物の自信です。私たちは人ですから、不安や恐怖をはじめとする喜怒哀楽の感情を感じて当然です。それを素直に感じ、認め、それでも自分を信じている。國分康孝先生流に言えば「マイベスト※」を尽くしている。それが本物の自信のある状態だと言えましょう。※マイベストとは、世間が求めたり、理論上達成可能な最高の内容ではなく、「いま、ここ」において自分ができうることを無理なく行うことを指します。他人からベストだと決めつけられた内容を強要されて、実行する事ではありません。 本物の自信を養う上で、子ども時代にどのような養育をされたのか。多くの人にとっては、どのように養育者(親)に育てられ、コミュニケーションされてきたのか。それがとても大きな影響を与えます。養育者の働きかけや教育が適切であったならば、あなたは自分を受け入れやすい人間に成長しやすかったことでしょう。一方虐待などを受けて不適切に養育された場合。自分を受け入れることは、想像以上に困難な課題となったことでしょう。 ですから、本物の自信を養う為には、まず養育者が自分にどのようにかかわってきたのか。コミュニケーションをしてきたのか。それを詳しく、現実的に振り返ることが有効です。現実的にとはどういうことでしょうか?それは次のような内容を含みます。・悪いことだけでなく、良いことも振り返るなど、客観的かつ多角的に振り返る。・当時の養育者の不適切な行為を受けた際の「感情」ではなく、あくまでどういう影響を与えていたのか?という仕組みの面に目を向ける。 PTSDの治療など、精神医療的なカウンセリングなどにおいて、当時に感じた感情を受け止めることは治療上有効になりえる場合があります。しかし、本物の自信を養うための課題の遂行という面では、当時の感情に焦点を当てる必要はありません。まるで科学者のように、原因と結果を把握する姿勢で、振り返るようにしましょう。 その上で今回特集するのは「養育者(親)から受けた負の影響を乗り越え成長すること」です。①原因となる養育者による不適切な対応。②その結果、あなたにどのような状態が発生するのか。③その際、どのような対応を実行すればよいのか。それらを次々と提示して、あなたが本物の自信を養えるように成長できるよう支援します。では早速始めていきましょう。<あなたも良い意味で人間の1人だから安心しよう>①養育者(親)が、あなたの幼少期から過干渉や不自然なコミュニケーションをしてきた場合。②あなたは集団へのとけこみにおいて違和感を感じるかもしれない。自分は普通で無い?異常なのだ!との幻想を抱きがちとなる場合がある。③しかしあなたは他の人と同様に「ただの人」なのだから、ありのままでよい。①養育者は自分自身の考えや発想を常識としてあなたに押し付けてきたかもしれない。②だからあなたは、自分は普通ではない奇人・変人で、非常識な人間だと感じるようになったかもしれない。③だが!この世に「普通の人」などは存在しない。ほとんど全ての人に共有される常識(例:人を殺してはならない。ただしこの「常識」ですら、スイスなどでは安楽死が合法とされている)がありえるが、普通の人など、実はどこにもいないのだ。みんな人である。そしてあなたも人である。安心してほしい。<あなたには自分で生きていく強さと力がある。それを認めて発揮しよう>①養育者の思い通りの人間になるよう、あなたが養育された場合②養育者をマネして他人に過度に期待し、過度に依存しやすくなる結果、傷つきやすくなる。なぜなら、裏切られたり、拒否される頻度が激増するためである。さらに行動自体よりも、人間関係に意識を集中しがちとなる。③なるべく自分の力を活用して生きる姿勢をとっていく。完全に周囲の支援を拒否することではない。無理なく自分にできることは、自分を信じ、自分を頼り、自分で実行することである。<傷つくこと(失敗)は自分の成長のもとになる>①養育者は自分の未熟さや精神面の恐怖などの気持ちを、幼くて未熟なあなたに八つ当たりすることで解消してきた。未熟で有害な防衛適性しか発揮できない人間であった。②あななた養育者の評価を真に受け、自分は非力で成長出来ない人間だと思い込み、これ以上少しでも傷つかないようにと、傷つくことを過度に恐れるようになった。(防衛機制)③しかし!心は傷つくことでも免疫力がつく。問題点を発見出来たり、慣れ(耐性)を獲得できる面がある。あなたには可能性がたくさん眠っているのである。成長することを恐れるな!<問題や悩みを自分の中でハッキリと認めてしまおう>①養育者の理不尽な対応が長く続けられた結果②あなたは養育者との関係や家族という環境だけでなはく、世の中や全ての人との関係などに広げて解釈してしまい、もう悩みには耐えられない!と、完全に回避するようになっているかもしれない。③しかし、悩みを持ちながらこの現実にとどまれるようになることである。悩みを抱える自分を、あるがままに受け入れて、自分に素直に生きることである。驚くことに、それは安心状態の1つとなる。重要なので繰り返すが、自信とは完全無欠で一切の不安がないことではない。<本当に自分が好きで価値があると感じることに集中していこう>①養育者はあなたの言動を常に監視し、批判し、養育者自身の理想を押し付けてきたかもしれない。②だからあなたは養育者をはじめとして、本当に優しく接してくれる人を相手にするときでさえ、常に相手の顔色をうかがい、相手からの評価をひどく気にするようになってしまったかもしれない。③他人から評価されるかどうか?という観点から抜け出ることである。自分の本来の課題(自分にとって価値が高いと感じられ、意味のある課題)へと集中していくことである。(しかも他人は終始自分に注目しておらず、また自分の利害にあることだけに関心があることが多い。)①養育者は常にあなたを監視し、評価してきた。養育者の気に入らないことがあると、あなたを理不尽に攻撃したりしたのかもしれない。②だからあなたは、相対評価に分類される他者からの評価をあまりにも気にするようになってしまった。その結果、他者からの評価を気にするあまり、あなたの不安を大いにあおられてしまう。もしや?…という被害妄想をエンドレスに生み続ける。他人の胸のうちなど読めるわけも無いのだが、相手の非言語メッセージに過度に着目したり、心を読み続けようなどと徒労を行う。③だからこそ、自分にとって価値の高いこと、意味のあることを見出し、集中していくことが重要なのである。断言しよう。「他人の目が気になる心との取り組みは、本当の自分自身の価値を知る、険しくも大変意義のある道のりの一部」であると。<世の中は天国じゃない。でも工夫の余地は十分にある>①養育者との共同生活は、まるで地獄のようであった。あなたは長期間苦しみ続けた。②だからあなたはこれ以上少しの苦しみにも耐えられないと痛感している。どこかに苦しみが一切ないような環境(場所)があるのではないか?と淡い期待を寄せている。③だが、この世界は極上の居心地のよい場所などないという現実を受け止めてしまうことだ。実はあなたにも、いろいろな人を(無意識・意図なく)傷つける一面が存在するのだ。(これは全ての人間にあてはまる事実である) 自分と同質で、自分を傷つけない、そうした人だけが住んでいるユートピアなどどこにもない。仕事がイヤなら、その仕事での良い点を見つける。他人が嫌なら、その人の良い点をみつけることだ。それは事実を客観視できる訓練ともなる。 または距離をとり、ビジネスライクに徹したり、無関係となることだ。そして満足できる1日を毎日積み重ねていくことだ。<見栄(みえ)なんてはらなくていい>①養育者は、あなたに優秀さを要求してきたかもしれない。②だからあなたは常に、自分が優秀出ることをアピールしてきたのかもしれない。相手に受け入れてもらうために。③しかし!集団の中で楽にいたいなら、最初に背伸びした役割期待をもたれないようにすることである。その為には、ありのままの自分でいることである。いい奴・できる奴を演じて目立たなくてもよいのだ。しかもいい奴・できる奴だから、周囲の人気や興味を引き寄せる結果、嫉妬などで嫌がらせされるケースも少なくないのだから。①養育者はあなたのありのままを認めず、否定し、また過大な要求をしてきた。②だからあなたは見栄(「人から見下されたくない」「自分の価値を認めさせたい」)を強くした。③だが、悩みの8割は、その見栄が生んでいるのだ。<だれとどう付き合うか、あなたにも自由がある>①あなたは養育者から「我々の絆は(家族なのだから)絶対に切れないものだ」と主張されつづけてきたかもしれない。②その結果、あなたは養育者との絆は何があっても、続けるべきだと思い込んでいるかもしれない。③しかし、養育者との絆に対して、あなたは自由に判断してよいのだ。ビジネスライクに対応しても良いし、断絶してもよい。養育者に大きな問題があった場合は、民法上の扶養の義務など考えなくていい。実際は無視されるケースが膨大にある。<相手は完全な悪の化身ではない>①養育者は長年不適切に対応し続けてきた。②だからあなたは、養育者の全てを嫌い、否定しているかもしれない。③だが!嫌いな相手にも愛嬌はあるものだ。悪い一部分があるからといって、全てを否定することを過度の一般化という。それを修正していくことで、相手とビジネスライクにかかわり、状況を好転させる要因にできうる。①確かに養育者には山ほど問題言動があった。②それにより、あなたはとても苦労してきたのだろう。③だが、養育者も実は、いろいろな事情を抱えた一人の人間であった。常に完璧に振舞えるわけではなく、不適切な言動を行うこともある。その事実を理解できると、相手も努力が必要な存在だと感じられ、相手への許しの気持ちも一部持てる可能性がある。(但し、無理をして許したり、ましてや愛する必要はない)<相手はあなたの成長や成功を望まなかった>①養育者が適切に成熟していない場合、子を「自分よりも下であるべき」「無力な者に依存され自己価値を感じる」「自分を越えて成功してはならない」と服従を求め、この成長や恋愛を阻害してしまう。②あなたはいつまでたっても、精神的に大人になれず、適切な恋愛をできなかったり、性交渉に過度の罪悪感を抱いたり、自分らしさの発揮に恐怖を感じているかもしれない。③だが健全な養育者とは本来、子が心身ともに健全に発育して、自分らしく人生を送れるように育て教える存在である。①養育者が未成熟で性格に問題を抱えている場合、自我が定まらず一貫しない性格である場合がある。②だからあなたは、ダブルバインド(例:友達を家に招くことを歓迎しておきながら、実際にきた後に苦痛を強く訴求する)になることも多い。そうした状態は、他人の言動をそのまま信用できなくなり、被害妄想的に感じ、他人との感情交流も危険でできないと感じてしまう。③だからあなたは、成熟した大人はダブルバインドを招くような「裏面的交流≒本音と建て前」をあまり使わないという傾向を知る必要がある。幼稚な養育者の個性を、他の全ての他人も持っているにちがいないという発想を、過度の一般化という。<あなたは人間なのだから弱点がたくさんあって当たり前なのです>①養育者はあなたに優秀で、従順な存在としてふるまうようにもとめてきたかもしれない。②だからあなたは、安心して自分の弱点を相手に伝えられなくなった。さらには、自分で弱点を認めることさえ拒否するようになった。③だが自己受容するためには、まずは弱点の意識化から始めればよい。例えば集団への溶け込み、他人への信頼が必要な場面でそれができないとき、「自分は今のところ、それが苦手だし、できないんだなぁ」と認めてしまえばよいのである。<自分らしさを否定せずに活用すればいい>①養育者は自分自身の思い通りにしようと、あなたに様々に要求してきたことだろう。②だからあなたはそれに応えるように、別の自分になろうと必死に努力してきたに違いない。③しかし、性格を変えることは非常に困難である。心全体で構成されているため、ホメオスタシスが作用して、自我が無意識で抵抗するからである。従って、性格は変えずに、思考方法や、行動方法を適切に対応できるように変えるのである。これを認知変容、ソーシャルスキル等と言う。 またあなたが自己変革に固執することは、自主的に囚われの状況を作ることになりかねない。むしろあるがままの自分で生きようとすることが、根本を変えてくれる可能性がある。自己を守ろうとせず、根源的な安心感に浸れるからである。自分らしさを最大限に活用することだ。あなたらしさに自信をもてばいい。 あなたは「自分になんて強みがない」と必死に主張するかもしれない。しかしものごとには必ず多面性がある。二面性以上ある。たとえば、私(筆者)は病弱で体調を崩しがちである。だれもが嫌がる欠点・短所であろう。その一方、私は病気などを原因とする弱者に寄り添えるように成長し、筋トレを長年行ったり野菜を意図してたくさん食べるなどの健康的な生活を送れている。健康だったら、まずできなかったと断言してもいい。<あなたはもう(不本意かもしれないけれど)親孝行済みである>①養育者はあなたを親不孝などと罵っているかもしれない。さらなる貢献や支援を求めてきているかもしれない。②あなたはその主張を真に受けて、更なる支援をしているのかもしれない。③しかし、あなたは実は、養育者には既に貢献済みである。社会ステータスを与え、性交の快感を与え、満足の感情を与え、未成熟さを解消する対象としても存在し続けてきたのである。<自分をほめる技術の向上は練習からはじめよう>①養育者はあなたのことをほとんどほめたり、評価してこなかったかもしれない。②だからあなたは、いわゆる自己肯定感が低いかもしれない。③だから、まずは自分で自分をほめる練習を始めてみることである。交流分析的には人が苦手な人は自分ほめる量が絶対的に不足していると言える。寝る前に「今日起きた良いことを10分以内にできるだけ数え上げてみるトレーニング」などをしてみると良い。<毒親など捨ててしまいなさい(概念上だとしても)>①養育者は感情抑制的だったり、禁欲的だったかもしれない。②だからあなたは、楽しむことが罪悪だと感じられてしまう。夢中になれず、とけこめず、孤独感を感じ、自己抑制的になり、いつも追い立てられ、人に献身する(服従)ことを強いられている。③そんなのは捨ててしまえ。あなたらしく、ありのままでいい。<自分だけが悪いはずという個人化の思い込みから抜け出よう>①養育者は自分自身に問題があるにもかかわらず、非現実的な要求をあなたにし続けてきた。②だからあなたは、問題が起きたり、怒られるのは「自分が悪いからだ!」と個人化してきた。③だが、本当はあなたに主な原因はなかったのである。これからは「原因と結果」という視点をもち、客観的に原因を分析するように心がけていけばいいのである。あなたにも原因がある場合は多いだろうが、あなたに原因の何割があるのか?という視点をまずは持てれば十分である。<世の中きれいごとや理屈だけじゃない>①養育者はつねに品行方正な言動を求めてきたかもしれない。また養育者に対して嘘をつかないよう厳命してきたかもしれない。②あなたはそれを真に受け、かたくなに実行してきたかもしれない。③だが!裏のルール(≒きれいごとではない部分)をある程度活用できないと、自分の失敗や罪を過度に認識せざるを得ず、罪悪感や欺瞞感に苦しむことになる。この世は非現実的なユートピアではないのである。<養育者が心を健全に育てなかったなら、自分で育っていけばいい>①養育者はあなたの自分らしさを育てることはなかった。②あなたは自分らしさを見失い、また手に入れる方法を見つけられなかった。③だが!!成長した後でも、自分で自分らしく言動して快感を得ることで、自分らしさ及び自己肯定感を形成していくことができると今日知ったのだ。自信ができはじめると、防衛的でなくなり、他人の評価が気になりにくくなり、さらにありのままの自分を出しやすくなる。この好循環を続けるのだ。<自分もOK 相手もOK>①養育者はあなたをずっと監視し、要求し続けてきたのだろう。②だからあなたはなぜ自分がこんなにも他人の目を気にするようになったのだろう?と悲痛にかんじているかもしれない。実はその気持ちは、他人の目が気になるということは、暗黙のうちに自分さえきちんとすれば相手は褒めて認めてくれるという認識が働いているためなのだ。そしてこれを養育者以外の相手に対しても、相手の気持ちを無視し押し付けているのである。③だから、自分らしさを認めてあげることだ。一方相手らしさも認めてあげる。そうしてはじめて、本当に人間を一人ずつ個性ある存在として認められることにつながるのである。<不完全な相手を成長したあなたが支援してもいい>①幼いころのあなたにとって、養育者はまるで完璧な存在であった。欠点や弱みなどありえない存在であった。②だからあなたは、養育者と対等のコミュニケーションをとるという発想すら持ち得なかったかもしれない。③だが、実際にやりとりをしてこちらの気持ちを伝えることができれば、相手があなたについて思い込んでいること(≒誤解)を修正することができる。また相手も人間であり、完璧でないと体感ことができるのは、あなたの成長にとって大きな収穫である。<いま、この場で、修正・成長していってよい>①養育者は評価者でもあったから、あなたは一方的に評価され続けたかもしれない。しかもその場での反論や弁解は許されなかったかもしれない。②だからあなたは、相手(養育者)の主張の後になってから、問題や話題を振り返ったかもしれない。③しかし、自信はその場で感じるものである。その場での自分に対する感じ方を良くしていくことが、自信の養成にプラスである。不完全でもいい。「いま、ここで」、よりよい感じ方へと自分なりに修正していってよいのだ。<人を信じる力の大切さに気付き、成長させよう>①養育者はあなたを大切にしない存在だった。②だからあなたは、養育者のことを本当は関係を持ちたくもないし、信頼などできるわけもなかった。③だが、信頼できる(可能性のある)相手に対しては、自己開示的になる必要が信頼構築上必要なのだ。ソーシャルスキルを学び、何より実行しよう。それが親友、配偶者をはじめとする大切なパートナーとの絆を生み出すからだ。 だが現在のあなたには、信頼関係構築の為の経験やスキルが相当不足しているかもしれない。とすれば、信頼関係を構築したい相手を見つけた場合、まずは少しずつ自分をオープンにしていくことである。その際、相手は選ぶ必要がある。相手が評価体質ならば選んではならない。こちらのありのままを受け入れてくれそうな安全な人を選ぼう。<弱くて悪い相手からの悪口を真に受けると自信から遠ざかる>①人が十分に心を成長させられなかった場合、有害な防衛機制を働かせてしまうことがある。例えば、 自分に近い人を嘲笑することで心の葛藤を解決するタイプの人はたくさんいる。それが養育者であったかもしれない。②あなたはそれを真に受けたかもしれない。しかもあなたにとって、嘲笑される原因は理不尽なものであり、そもそも理解不能だったかもしれない。③だが、 嘲笑された者は弱い自分を憎み、偉くなって見返す復讐心を持つ傾向が強いことを自覚することから始めよう。あなたは、自分に対する欲求が質・量ともに高くなりすぎていないだろうか? 理想と現実の乖離(距離は離れること)が、強い憎しみを生む。それは自信とは無縁の世界である。<完全に誠実な人などいない>①いつでも本当の自分であらねばならない、とあなたは信じているかもしれない。②それは強烈なイラショナルビリーフ(非現実的で自分を助けない考え)である。③君は生まれてから一度も嘘をついたことがないのか?そもそも絶対に嘘をつくなと要求してきたのは養育者(親)ではなかったのだろうか?【養育者が主な原因となり、その結果感じやすくなる、弱い自分をつくる感情群】 抑うつ的な人は一度の失敗を誇張して考え、経験を歪めて感じてしまう。 いろいろな場面で失敗を避けようとする人は、何かを避けようとする。それは既に自然体ではない。 無意識に自分の無価値を信じると、それを打ち消そうとしてしまう。その結果、意識の領域(普段の生活場面において)で自分に過度の期待してしまう。(例:自分はできる奴なはずだ 自分は誰よりも尊重されるべき存在だ)あなたはいつも自然と緊張していた。不快感や恐怖を感じていた。養育者と一緒にいたときの感覚なのだ。だから、あなたは本当に好きな人に受け入れてもらうといい。本当に好きとは、好きなだけで他に何も必要ないということだ。一緒にいるだけで満足する。幸せになる。そして、その人に対してはいろいろな欲求を感じないで済む人なのだ。現在の低い自己評価と自分の存在は全く関係ない。あなたという存在は尊いのだ。 頑張りすぎるという行動は、ダメな自分という不安と恐怖が行わせる。 他人から親しまれないのは、実はあなたも偽装された利己主義者だからかもしれない。つまり、外面だけが良くて、実は自分のことばかりを考えて言動していた、あの養育者の振る舞いと同じなのではなかろうか? 失敗しても人は受け入れてくれる。失敗しないことで他人から尊敬されると思うのは間違いだ。 世の中には悪意の人もいれば、好意の人もいる。親の性格・価値観が全ての人間に共通するとは考えないように。 他人を傷つけようとする悪意の人は、その人自身が欲求不満であり、低い自己評価で苦しんでいる。だから、引き下げたり、ごまかしたりする。 他人の期待を先取りするのは、失望されるのが怖いからかもしれない。子供が養育者にみとめられ、ほめられようと、何かよいことをしてすぐに申し出ようとするのと同じ心理である。 自分の依存心が悪意の人を寄せ付ける。 自信の無い人は自分を評価しない人に激しい敵意を抱く。自信のある人は無関係になろうとする。 自信の無い人は時分の言動に対して軽蔑されないかと不安と緊張の連続になる。にもかかわらず、尊敬されない地獄となる。自己が既に地獄だから、どうでもよいことをグズグズとひきずる。□本当に温かい人は骨惜しみしない。愛することの快感を知る人である。養育者とはちがう人である。(ただし養育者にも、その一面はわずかにせよ、あったかもしれない。それを振り返り、冷静に把握できるのは、あなただけであろう)□自己罪悪感を感じるように育てられると、他人の感情に責任を感じてしまうようになる。不愉快な雰囲気は自分の責任だと感じるようになる。そして他人を喜ばせる焦りにつながっていく。□私は親に迷惑をかけないよい子になった。そして、大人になり状況は変化したのに、いつまでも幼い依存心のかたまり(塊)の頃のように感じていないか?□異常な責任感、義務感、正義感、そして自分への高すぎる欲求。それらは周囲からの大きな期待を感じ、その期待を裏切ることへの過度の恐怖心から来ている。そこには養育者の影があるのではないか?□自らの活動自体を楽しめなくなったのは、自らが達成したことを自ら評価し、自ら楽しむことができないからである。だから、他人の評価を考えずに、自分が楽しめそうな活動へとシフトせよ。
2025.05.22
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アルコール性認知症とは アルコールの多量摂取は脳にも影響を及ぼすといわれています。それは多量に飲み過ぎることで、脳が萎縮するのではないかと考えられているからです。 「アルコール性認知症」とは、アルコールを多量に飲み続けたことにより、脳梗塞などの脳血管障害やビタミンB1欠乏による栄養障害などを起こし、その結果生じる認知症です。アルコール依存傾向の人は若い人の場合でも認知機能の低下などの傾向がありますが、高齢になると物忘れや認知症の割合が高くなると言われています。※「アルコール性認知症」については、ウェルニッケ・コルサコフ症候群と同じと考える見解もあります。 疾患の要因となるビタミンB1欠乏についてですが、多量アルコールを摂取すると分解するために体内のビタミンB1が消費され、脳内のビタミンB1などの栄養が欠乏することがわかっています。栄養が欠乏した状態となった脳は、記憶障害などの認知機能障害が発生し「アルコール性認知症」にいたる可能性があります。 また、アルコールの多量摂取の影響と考えられる脳梗塞などの脳血管障害や脳萎縮によって認知機能に障害がみられる場合は、CTやMRIによる画像診断も行われ、アルコール以外に認知症の原因がないと考えられる場合には「アルコール性認知症」とされます。アルコール性認知症の症状 アルコール性認知症の具体的な症状は以下の通りです。症状が進行すると、認知機能障害が見られるようになります。◆歩行時のふらつき、手の震え◆歩行が不安定になり、何かにつかまらないと歩けなくなったり手が震えたりする。◆注意力の低下、記憶力の低下◆感情のコントロールがうまくいかない◆些細なことですぐに怒ったり暴力をふるう。◆行動の抑制ができなくなり、物を盗ったり人のものを勝手に食べたり等をする。◆見当識障害(日時、場所がわからない)◆作話(実際には体験していないことをあたかも本当のように話す)※作話は記憶障害の一種で、記憶が欠落した部分を補うために覚えているものを繋ぎ合せて埋め合わせようとして起こるものですので、嘘をつこうとしているわけではありません。 認知症にアルコール依存症を合併している場合は、うつ症状や幻覚が現れることもあります。うつ状態のため意欲がなくなり、趣味や好きなテレビ番組であっても興味を示さなくなったり、逆に興奮しやすく攻撃的で暴力がみられたり、幻覚が見えたりする場合もあります。アルコール性認知症の治療 「アルコール性認知症」の治療法としては、断酒、薬物療法、食事療法、生活スタイルの改善が挙げられます。◆断酒 まずはお酒を断つことです。アルコールが原因ですから、アルコールを断つことが有効です。アルコール依存症に伴う認知症の場合には長期間の断酒によって認知機能や物忘れが改善することもあるといわれています。ただ、アルコール性認知症以外の認知症を併発している場合は症状の改善は難しくケースが多いです。自分で断酒することが難しい場合は治療施設への入院や自助グループへの参加などを検討されることをお勧めします。◆薬物療法 アルコールを求める気持ちを抑える薬、アルコールの分解を阻害し受け付けなくなる薬などが処方されます。◆食事療法 アルコールの多量摂取によって、脳はビタミンB1、B2、B12、葉酸などの栄養素が不足している状態です。これらを豊富に含んだ、栄養バランスの良い食事を摂取する必要があります。◆生活リズムや生活スタイルの改善 早寝早起き、規則正しい生活、運動やスポーツを始める、また自宅ではどうしてもお酒を飲んでしまう場合は外出する機会を増やすなどの工夫をして、アルコールに手が伸びない、口にできない生活スタイルへ切り替えるようになさってください。アルコール依存症と認知症 高齢者の場合は加齢による脳の機能低下があるため、アルコールによる影響を受けやすく、アルコール性認知症になりやすいといわれています。さらに、高齢者の場合はアルツハイマー型やレビー小体型などの認知症と合併する場合もあります。アルコール性の認知症のみのケースでは、治療によってある程度改善が期待されるのですが、他の認知症と合併してしまうと改善は困難になるケースが目立ちます。 アルコール依存症の高齢者は依存症者全体の20%を占め、そのうち60歳以上の治療中の患者の40%以上に何らかの認知症状が見られるという報告がなされています。相談窓口や医療機関について アルコールの多量摂取の問題も含めて、認知症が疑われる場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医のもとで認知症の診断ができない場合は、適切な医療機関を紹介していただけます。 かかりつけ医がなく、本人が受診に消極的な場合は、地域包括支援センターに相談するのも1つの方法です。地域包括支援センターでは、認知症と診断された後の要介護認定やケアマネージャーの選定などのサポートをしてもらえます。但し治療ではなく、介護観点の支援になります。 治療を希望する場合は、「もの忘れ外来」や「認知症疾患医療センター※」など認知症の診療を専門的に行う医療機関を受診することも1つの方法になります。その他、「精神科」「神経科」「神経内科」「老年病内科」「老年内科」などで認知症の診察や治療を行っている医療機関でも対応が可能です。※「認知症疾患医療センター」とは、認知症の診断・治療・支援を専門的に行う医療機関で、各都道府県や政令指定都市が指定しています。これらのセンターは、認知症の早期発見と適切な支援を通じて、患者さんとそのご家族が住み慣れた地域で安心して生活できるようサポートしています。【参照・引用】油山病院(福岡県)ホームページ太陽生命 ホームページ『太陽生命ダイレクト スマ保険』
2025.05.20
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アルコールの発がん性 アルコールはアルコール脱水素酵素の作用でアセトアルデヒドに変わり、アルデヒド脱水素酵素の作用で酢酸に変わります。これらの酵素の働きには遺伝で決まった強弱があります。 アルコール脱水素酵素の働きが特に弱い人は日本人の5~7%程度にみられ、アルコールが長時間残るためアルコール依存症になりやすく、依存症では30%前後がこの体質です。2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱い人は日本人の40%程度にみられ、アセトアルデヒドの分解が遅いため飲酒で赤くなり、二日酔いを起こしやすい体質です。依存症では15%程度がこの体質です。 アルコールとアセトアルデヒドには発がん性があり、このふたつの酵素の働きが弱い人が飲酒家になると頭頸部・食道の発がんリスクが特に高くなります。頭頸部・食道のがんは1人に複数発生する傾向がありますが、飲酒と喫煙とは相乗的に多発がんの危険性を高め、さらに2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱いと特に多発がんが多くみられます。 コップ1杯のビールで顔が赤くなる体質が、現在または飲酒を始めた最初の1~2年にあった人では、約9割の確率で2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱いタイプと判定されます。飲酒に加え喫煙と野菜果物の摂取不足も同部位の発がんリスクを高めます。飲酒量と発がんリスク 乳がんについては欧米の疫学研究が関係性を示しており、エタノールで10g(5%ビールなら250mL)増加するごとに7.1%リスクが増加しました。日本では近年女性の飲酒が増加傾向にありますが、日本の研究においては飲酒と乳がんとの類似の結果が近年報告されてきています。 大腸がんはエタノール換算50gで1.4倍程度のリスクとなります。日本と欧米の疫学研究を比較すると、日本人は欧米人よりも同じ飲酒量でも大腸がんのリスク増加は若干多い傾向にあります。大腸がんは頻度が多いので飲酒量を減らすことによる予防効果は大きいと予想されます。 肝臓がんの最大の原因はC型・B型肝炎ウイルスへの感染と肝硬変ですが、飲酒も原因のひとつです。飲酒はB型とC型肝炎ウイルス感染者では肝硬変への進展を促進し発がん年齢を低下させます。 最近の研究では、多量飲酒が膵がんと2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱い人の胃がんのリスクを高め、妊婦の飲酒が小児の骨髄性白血病のリスクとなる可能性が報告されてきています。また、飲酒が関連する発がんでは安全な飲酒量は示されていません。頭頸部がん、食道がん、肝臓がんでは禁酒により最初のがんや2つ目のがんの発生リスクが低下することが報告されており、禁煙・禁酒・野菜や果物の摂取に取り組めばさらにリスクは低下します。【引用・参照】『アルコールとがん』健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 厚生労働省執筆者:横山 顕 よこやま あきら 独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 臨床研究部部長
2025.05.20
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アルコール・うつ・自殺……「死のトライアングル」 近年「アルコール・うつ・自殺」の関係が浮かび上がっています。「自殺予防総合対策センター」が平成19年度~21年度に行なった調査で、自殺者の2割以上が、亡くなる前の一年間に飲酒問題を抱えていたことがわかりました。40~50代の男性に多く観られ、彼らは平均して2つの精神疾患を抱えており、中でも「アルコール使用障害」と「うつ病」との合併が多く観られました。 一方彼らの4割以上の人は精神科を受診していましたが、アルコールに関連した治療や援助を受けていた人は皆無でした。 アルコール依存症者はきわめて高い割合で、自殺念慮や自殺企図を経験していることがわかっています。なぜ、アルコールが自殺を引きよせるのでしょうか?1.急性の影響 アルコールは脳の機能を抑制し、思考や判断能力を低下させ、一足飛びに最期の一線を踏み越えさせてしまうリスクを生み出します。実際アルコール問題を抱えた中高年男性自殺既遂者の多くが、最期の致死的行動を飲酒酩酊の状態で行なっています。2.慢性の影響 アルコールは長期的には抑うつ状態を作り出します。加えて、飲酒にまつわるトラブルが続くことで、周囲との関係が悪化し、本人は孤立を深めます。その結果、自殺のリスクをますます高めてしまうのです。アルコール依存症が「慢性自殺」とも呼ばれるのは、このためです。自殺防止のためにも、うつ病対策だけでなく、飲酒問題への対策が欠かせません。なぜアルコール依存症者は「うつ」になるのか? もともと「うつ病」があって、そこからアルコールに依存していく人がいる一方で、逆にアルコール依存によって「うつ状態」になっていく人々もいます。 飲酒の習慣が始まった当初は、飲むことで気分が良くなります。しかし、問題飲酒の段階に至ると、アルコールが入っているときは「ふつう」の気分でいられても、アルコールが抜けると「落ちこみ」に襲われるようになります。この状態になると、飲酒によるさまざまな問題が起きてきます。 飲みすぎを心配したり責めたりする家族との間で不和が生じたり、肝臓病などのアルコール関連疾患、仕事の効率低下や仕事上の失敗、周囲の信頼を失う、飲酒運転など社会的な問題、経済的な問題、失職等です。 酔っている間はこうした悩みを忘れていられても、しらふになれば山積みの問題が目の前にあります。うつ的な気分になるのも当然のことです。 加えて、食欲を失い、やせてくる……この状況で、アルコール専門ではない一般の精神科を受診すれば、うつ病と診断されてもおかしくありません。実際に多くの精神科で、アルコールの問題が見逃されているのです。※イギリスの精神医学のガイドラインにも、飲酒問題がある人でうつ病や不安障害を疑う場合は、アルコールを切って3~4週間経過を見てから判断するよう書かれています。 アルコール依存症にともなって「うつ」になっている場合、断酒してしばらくすれば、うつ状態も改善していくケースが多数です。断酒後も「うつ」の問題が残るケースでは、アルコール依存症の回復と並行して、うつ病としての治療を受ける必要があります。「うつ」の治療を受けているなら、飲酒はタブー! うつの治療を受けているなら、飲酒をやめることが必要です。そもそもアルコールは脳に作用して気分を変化させるため、抗うつ薬が効いているかどうかなど、治療の効果が判断できなくなります。また、抗うつ薬の治療効果が低下したり、副作用が強く現われることもあります。 さらに問題なのは、アルコールには依存性があるため、酔いを求めて依存が進行していくと、「飲むことで問題が悪化している」ことが明らかでも、飲むのをやめるのが非常に難しくなる点です。この段階では、まずアルコール依存症としての治療・援助を受けることが必要です。しかし現在、多くの一般精神科でアルコールの問題が見逃されているのが現状です。 抗うつ薬、睡眠薬、精神安定薬などを服用している状態で、アルコールを飲み続けることは、思わぬ作用を引き起こして生命の危険があります。また、処方薬とアルコールの双方に依存してしまうリスクが高くなります。 アルコール・薬物依存症は、飲酒や薬物使用をコントロールできなくなる病気です。いわば脳の中で飲酒や薬物使用に関するブレーキが壊れてしまい、いくら意志の力を強くしようとしても、行動の制御ができません。しかし、専門的な治療・援助によって、断酒・断薬し、社会復帰することは可能です。なぜ「うつ」の人はアルコールを飲もうとするのか? アルコールには、ほろ酔い加減であれば、気分を良くする(≒高揚させる)作用があります。落ちこんだ気分が一時的にはアップするため、「うつ」のつらさを飲酒による酔いで紛らわそうとする場合があります。 特に男性は、つらさを誰かに打ち明けたり、助けを求めたりするよりも「自分の力で何とかしようとする」傾向が強く、その手段としてアルコールという薬物を使用するケースが多くなります。いわば抗うつ薬代わりに「自己処方」することがしばしば見られるのです。加えて、うつに伴う不眠の苦しさを解消しようとして、寝酒という手段をとる人も少なくありません。 しかし、これらは非常に危険な方法です。アルコールは長期的には、抑うつ傾向を高める効果をもたらします。一時的に気分がアップしたように感じても、連用すればむしろ、うつの症状を強めてしまう結果になるのです。さらに、アルコールは眠りの質を低下させるため、睡眠障害も悪化させます。習慣的な飲酒は、薬物療法の効果を弱めるとの指摘もあります。 精神科外来を受診した40~50代の男性うつ病患者の3割以上が「アルコール依存症水準の飲酒」や、「問題飲酒」をしていたという結果が出ています。(国立精神・神経センター精神保健研究所 松本ら 2011)【引用・参照】『アルコール・薬物・その他の依存問題を予防し、回復を応援する社会を作るNPO法人「ASK(アスク)」の情報発信サイト』特定非営利活動法人ASK(アスク)
2025.05.11
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1. メタボリックシンドロームとは何だろう? メタボリックシンドロームとは、内臓肥満(内臓に脂肪がたまった)の状態(基準は腹囲が男性は85cm女性は90cm以上)かつ、高血圧(130/85mmHg以上)・脂質異常症(HDLコレステロールが40mg/dL未満かつ/または中性脂肪が150mg/dL以上)・高血糖(空腹時血糖が110mg/dL以上)の3つの項目のうち、2つ以上が当てはまる場合をいいます。 なぜメタボリックシンドロームを問題にするかというと、この状態ではきわめて動脈硬化をきたしやすく、心臓・血管疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)の重大な病気になる危険性が大きいからです。2. アルコールは高エネルギー物質 メタボリックシンドロームの要素である肥満症・高血圧症・脂質異常症・高血糖(糖尿病)は生活習慣病といわれ、この4つの生活習慣病のいずれにも飲酒が影響します。 アルコールはエネルギーに変換されるだけでなく、脂肪酸やコレステロール合成にも使われます。アルコール性脂肪肝にはアルコール自体から作られた中性脂肪も含まれます。アルコール代謝でエネルギーを産生している間は、ほかの脂肪などの栄養素は使わずに蓄積されるため、多量飲酒者でビール腹になる人がいるのも当然の現象だと言えましょう。 多量に飲酒する男性で、1B型アルコール脱水素酵素の働きが弱い遺伝体質だと、アルコールが長時間体内に残り、お酒のエネルギーをゆっくり消費するため、より脂肪肝やビール腹になりやすいことも知られています。さらに、つまみが脂っこいものであったり、アルコールによって食欲が亢進したりすることによって更に発生しやすくなります。3. アルコールと生活習慣病 飲酒は少量から血圧を上昇させ、量が多くなるほど血圧上昇が起こりやすいことが知られています。そのため、飲酒量の増加とともに脳出血のリスクが上昇します。 脂質異常症との関連では、飲酒により中性脂肪が増加することがよく見られる現象です。その一方で、動脈硬化を抑制するHDLコレステロールも飲酒で増加する人が多く、一般的に中性脂肪とHDLコレステロールは片方が高いともう片方が低くなるというシーソーの関係があるので、どちらがより強く起きるかは飲酒量に加えて、遺伝的な個体差もあります。 糖尿病は少量飲酒で発症リスクが少し低く、多量飲酒でリスクが上昇する傾向があります。カロリーオーバーだけでなく、アルコール性肝臓病あるいはすい臓(膵臓)のダメージでも糖尿病が発症・増悪します。多量飲酒者では、食事療法・運動療法ともにおろそかになりやすく、糖尿病のコントロールも不良になりやすいのが一般的です。4. 特定健診・特定保健指導での飲酒指導 メタボリックシンドロームの考え方を活用した生活習慣病対策として行われている標準的な健診・保健指導プログラムのなかに、飲酒指導も組み込まれています。生活習慣病のリスクを高める飲酒者に対しては、AUDITなどで飲酒状況の評価を行い、飲酒量を減らす簡単な介入の実施や、専門医に紹介すべきかどうか等を検討します。※AUDITとはWHOが作成した問診票で、8-14点が危険な飲酒、15点以上がアルコール依存症疑いに分類されています。【引用・参照】『アルコールとメタボリックシンドローム』:『健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~』厚生労働省執筆者:横山 顕 よこやま あきら 独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 臨床研究部部長
2025.05.11
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アルコールと循環器疾患1. 飲酒量と循環器疾患との関係 循環器とは血液が循環するときに関係する器官のことで、心臓や血管等が当てはまります。適量の酒は体によいといわれています。 例えば男性でアルコール量20-40ml、女性で20mlの飲酒なら、心臓関連死のリスクが2割減ると言われてます。心不全においても、アルコール量20-40ml程度の飲酒なら保護的に働くそうです。他にも一時的な血圧の低下、脳梗塞への保護的な働きなども期待できます。 2. 過度の飲酒と循環器疾患 一方過度の飲酒(上記の量以上のアルコール摂取)は、各リスクを高めてしまいます。心不全発症率の上昇、高血圧の原因化、脳梗塞発生リスクの増大、不整脈(心房細動)の誘発などが挙げられます。 また、乳がんや肝硬変その他あらゆる疾患のリスク因子となります。ほかにも、いわゆる一気飲みは急性アルコール中毒による突然死のリスクを高めます。3. 循環器疾患にとっての適量とは 先ほどの適切なアルコール摂取量はあくまで目安です。個人差等を踏まえた数値ではないので、注意してください。 また近年では少量の飲酒により、心筋梗塞等のの発症リスクは下がる一方、結核や乳がんなどの他の疾患リスクが上昇するため、少量の飲酒でも注意が必要です。特に、生まれつきお酒を飲めない人や、お酒を飲む習慣がない人に、飲酒を強要しないことも重要です。4. 他の循環器疾患のリスク因子と飲酒 適量のアルコールに循環器疾患の保護作用があっても、循環器疾患には多くのリスク因子が指摘されています。つまりアルコール以外の要素も考慮する必要があります。リスク因子として確立しているものとしては、高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満・喫煙などがあり、保護的に働くものは、適度な運動・果物や野菜を取り入れた食事・ビタミンB12や葉酸などのビタミン類です。たとえば喫煙の循環器疾患に対するリスクは約2倍といわれています。アルコールだけでなく、そのほかのリスク因子に対しても注意する必要があります。 加えてアルコール摂取が、食欲を増進させてしまうなどの面も考慮すべきでしょう。5. 循環器疾患の薬とアルコール 既に循環器疾患にかかっている方は、血液をさらさらにする薬や不整脈の薬を内服している場合があります。こういった薬の一部は肝臓で代謝されるため、肝臓の機能に悪影響を及ぼし得るアルコール摂取は避けるべきと考えられます。さらに、アルコールにより肝臓の機能が極端に低下している方は、断酒をする必要があります。6. 循環器疾患と酒との上手な付き合い方 以上の内容を踏まえて、適量の酒とは、酒によって健康になるという性質のものではないと言えましょう。各々の体質も勘案しつつ、適量のお酒を飲んでもよい環境、すなわち適度な運動をし、バランスの取れた食事をし、生き生きとした健康的な生活の結果として許される「節度ある適度な飲酒」のことを指すと言えるでしょう。【引用・参照】『アルコールと循環器疾患』:『健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~』厚生労働省執筆者:伊東 寛哲 いとうひろあき 独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 精神科医師
2025.05.11
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人生は選択の連続です。「どちらが本当に良いのだろうか?」と迷うことはたくさんあることでしょう。そうした迷いと向き合い、決断するための有効な方法の1つとして、「メリット・デメリット表」を作成する方法があります。これは選ぶ候補となる両方の内容をしっかりと比べ、より良い方(より悪くない方)を選ぶ方法です。※メリットとは利点、長所、得する点という意味です。一方デメリットとは、欠点、短所、損する点という意味です。 メリット・デメリット法のステップ(実行方法)は、次のようになります。第1に選択の対象となる2つについて、それぞれにメリットとデメリットを列挙します。第2にそれらの内容の中から、自分が利益を得る上で重要だと思える内容をチェックします。第3に今度は損得の観点ではなく、自分の本音(例:好き・嫌い / 挑みたい・逃げたいなど)の観点から、重要だと思える内容をチェックします。第4に出来上がった4枚の紙をじっくり見つめながら、最終的に決断します。 これだけだとわかりづらいかもしれません。今日の私の具体例で考えてみましょう。私は平日の今日1日だけ休みになりました。そして「となりの県の温泉施設にいく」か「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」か迷いました。 ステップ1として、まずはそれぞれ列挙していきましょう。頭の中で作業してはダメです。必ず紙、パソコン、スマホなどに書き出してください。第1の分析:「となりの県の温泉施設にいく」メリット・日帰りで温泉が楽しめる・郊外なので、少しは自然も楽しめる・高速道路を使えそうだ・入浴料自体は1200円だし、手ぶらで入れる・ドライブの楽しさもありそうだ第2の分析:「となりの県の温泉施設にいく」デメリット・お金が相当かかってしまいそうだ・朝早起きしないといけない・そんなに温泉の質は良くはなさそうだ・渋滞に巻き込まれる可能性も高い・近くに他の観光スポットはないようだ第3の分析:「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」メリット・お金はほとんどかからない。・どうやらとても自然は豊富なようだ。・渋滞などは一切関係ない。・朝寝坊しても、十分に帰ってこられる。・節約した分、マッサージを受けられそうだ。第4の分析:「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」デメリット・新鮮味がない。(前にも数回行ったことがある)・脚をけがしているので、けがの悪化に注意しないといけない。・朝の時間帯だから、交通事故に余計にきをつけないといけない。次にステップ2として、利益の観点から重要ポイントにチェックしていきます。第1の分析:「となりの県の温泉施設にいく」メリット・日帰りで温泉が楽しめる・郊外なので、少しは自然も楽しめる・高速道路を使えそうだ・手ぶらで入れて楽だそうだ・ドライブの楽しさもありそうだ第2の分析:「となりの県の温泉施設にいく」デメリット・お金が相当かかってしまいそうだ・朝早起きしないといけない・そんなに温泉の質は良くはなさそうだ・渋滞に巻き込まれる可能性も高い・近くに他の観光スポットはないようだ 第3の分析:「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」メリット・お金はほとんどかからない。・どうやらかなり自然は豊富なようだ。・渋滞などは一切関係ない。・朝寝坊できる・節約した分、マッサージを受けられそうだ。第4の分析:「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」デメリット・新鮮味がない。(前にも数回行ったことがある)・脚をけがしているので、けがの悪化に注意しないといけない。・朝の時間帯だから、交通事故にきをつけないといけない。次にステップ3として、自分の本音(感情の部分)の観点でチェックをいれていきます。第1の分析:「となりの県の温泉施設にいく」メリット・日帰りで温泉が楽しめる・郊外なので、少しは自然も楽しめる・高速道路を使えそうだ・手ぶらで入れて楽だそうだ・ドライブの楽しさもありそうだ第2の分析:「となりの県の温泉施設にいく」デメリット・お金が相当かかってしまいそうだ・朝早起きしないといけない・そんなに温泉の質は良くはなさそうだ・渋滞に巻き込まれる可能性も高い・近くに他の観光スポットはないようだ 第3の分析:「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」メリット・お金はほとんどかからない。・どうやらかなり自然は豊富なようだ。・渋滞などは一切関係ない。・朝寝坊できる・節約した分、マッサージを受けられそうだ。第4の分析:「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」デメリット・新鮮味がない。(前にも数回行ったことがある)・脚をけがしているので、けがの悪化に注意しないといけない。・朝の時間帯だから、交通事故にきをつけないといけない。もしも紙に書き出していたら、これで4枚の分析の紙が完成しましたね。後はじっくり眺めながら、一番良いと思えるものを選択します。ちなみに私は「自転車でいける緑豊かなスポットにいく」を選択しました。
2025.05.08
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アルコール依存症治療の概要アルコール依存症の治療は、専門知識をもった医師によって行われます。アルコール依存症には、飲酒行動の異常や離脱症状がみられます。アルコール依存症から回復するためには断酒が基本ですが、最近では新たな治療として飲酒量低減治療も取り入れられています。<断酒パターン>断酒に加えて①身体の治療と離脱症状への対処 ②心理社会的治療(酒害教育、個人精神療法、集団精神療法、自助グループへの参加)が実施されます。<飲酒量低減パターン>飲酒量低減に加えて、①飲酒量の目標設定 ②飲酒量の確認 ③服薬状況などの確認 ④全体的な改善の評価 ⑤治療目標の再評価が実施されます。 断酒(一生お酒を飲まないこと)&断酒補助剤患者さんの治療内容に合わせて、治療を組み合わせて実施しますが、アルコール依存症からの回復(断酒継続)には数年という長い時間がかかります。一般的に約3年間断酒期間が継続すれば、ようやく安定した日常生活を送ることができるようになるといわれています。 アルコール依存症の治療方法アルコール依存症の治療に対して十分な知識、経験を持つ医師のもとで治療が行われます。アルコール依存症の患者さんは、お酒を飲みたいという欲求がとても強く、自分自身では抑えられない状態になっています(精神依存)。そして、お酒を飲むことをやめるとイライラする、不安になる、手が震える、夜眠れない、汗をかく、食べた物を嘔吐するなどの症状(離脱症状)が現れる状態になるのです(身体依存)。このような依存から回復し、身体の健康を取り戻すためには断酒することが必要です。治療の方法としては、多くの場合、入院治療が選択されます。心身の状態が比較的安定していて、患者さんご本人やご家族が医師の指示に従い、自分たちの力で生活改善をしていくことができる場合には、外来治療になることもあります。 アルコール依存症の入院治療アルコール依存症の入院治療は、一般的にいくつかの治療ステップ(導入期、解毒期、リハビリテーション前期・後期)に分けられます。 ◆ステップ1(導入期)まず、病気としての理解、治療への動機づけを行います。◆ステップ2(解毒期)離脱症状に対処するため、断酒を目標として治療を開始します。それと併行、あるいは引き続いて、振戦せん妄等の合併する身体および精神症状を改善するための治療を進めます。◆ステップ3(リハビリテーション前期)離脱症状や振戦せん妄などの症状が回復した後、断酒に向けての本格的な取り組みを開始します。アルコール依存症に対する正しい知識を提供して飲酒問題の現実的認識を促し、生活上の問題点解決に向けて支援します。広範かつ長期的な視野に立ち、家族を含めた依存そのものに対する治療を一貫して進めます。◆ステップ4(リハビリテーション後期)再摂取時の対処法と予防、家庭内問題への対処などに着眼し、断酒の継続とともにストレス対処行動の獲得、家族の回復、生活の安定化などをめざします。 心理社会的治療アルコール依存症の根幹となる治療が心理社会的治療です。心理社会的治療は、患者さんの断酒しようとする気持ちを維持して支えるために、お酒を飲まない習慣を身に付けること、良好な人間関係を構築・維持していくこと、社会生活上のストレスに打ち勝つことを目的に行われます。心理社会的治療には、下記の通りさまざまな種類があり、いくつかの療法を組み合わせながら治療が進められます。 ◆酒害教育:飲酒が引き起こす諸問題やアルコール依存症という病気について学びます。◆個人精神療法:個別に行われるカウンセリングです。精神科医や公認心理士などと話し合い、個別の助言を受けられます。◆集団精神療法:心理社会的治療の中心となる治療です。医師らの指導の下、数名の患者が多様な問題について話し合い、断酒や回復について考えていきます。◆自助グループへの参加:例会やミーティングに参加し、自分の体験談を語ったり、人の体験談を聞いたりします。自分を見つめ直すと共に、同じ病気の仲間ができ、断酒継続の支えとなります。 近年精神療法の方法として、思考や行動のパターンを見直して修正する「認知行動療法」が取り入れられるようになってきました。患者さんの認知、つまり考え方と行動を同時に見直す治療法です。 認知行動療法では、これまでのお酒に対する認知(見方や考え方、価値観)を患者さん自身で検討し、その認知を変えていくことで、これからの行動や生活を改善するよう目指します。グループで話し合いながら、患者さん自身に「認知のかたより」を自覚してもらうことで、断酒の意欲を向上させます。その中で、患者さんは断酒を継続する目的や、飲酒を防ぐ方法などについて考えを深めていくことができるようになります。(アルコール依存症の方に観られやすい認知のかたよりの例)・自分には飲酒の問題はないはずだ・今度こそ適量でやめられるにちがいない・お酒を飲むから何事もうまくいくはずだ・好きだからお酒を飲んでも良い・いつでもお酒はやめられるはずだ※主観的に決めつけている表現になっていることに留意しましょう。 (認知行動療法(グループミーティング)のプロセスモデル)・自身の飲酒問題を整理する。・認知の偏りに気づく。・飲酒の利点と欠点をリストアップしながら、酒に対する考え方を決定する。・断酒の心構えを作る。・再発を防ぐ方法を考える。・断酒継続のための現実的な方法を実行する。 入院・通院の治療の流れと治療内容アルコール依存症の専門医療機関を受診すると、入院治療が原則的に検討されますが、患者さんの状態などによっては通院治療が可能な場合もあります。ここでは、入院および通院の一般的な治療の流れと、治療内容をご説明します。入院か通院かの選択は、アルコール依存症専門医とよく相談のうえ、決めるようにしましょう。 入院治療の場合:入院となる条件重度の離脱症状(振戦せん妄など)、身体疾患の重症度、精神的に不安定、家族が疲弊している等 ◆初回面談単身者の場合は、患者さん自身または福祉事務所の担当ケースワーカーなど地域の支援者と同伴で、ご家族がいる場合はご家族と同伴で初回面談に行くのが一般的です。最初は患者さん本人のみ、その後ご家族と一緒に、または入れ替わって面談は約40分~1時間行われます。 初回の面談では、必ずしも病気を発見することが目的ではありません。医師からは、患者さん自身が飲酒に対して問題を感じているのか、問題として感じているなら、どのような問題として捉えているのかをヒアリングされます。さらに、そのような状況に陥った背景やエピソード、幼少時代の自身の振り返り、治療に対する抵抗感などを、答えやすい順番で質問されます。 また、もう一つ大切なこととして、「治療を受けながらの生活が成り立つのか」という視点での質問もあります。経済状況や親族の援助はあるのかなど、具体的な生活についても確認されます。 ◆入院(一般的期間:2~3か月程度)解毒治療を実施します。アルコール依存症の患者さんの多くは、離脱症状を起こします。悪化して、「振戦せん妄」という意識障害を発症し、幻覚症状が現れるなど症状の重さには個人差があるため、それぞれの症状に合わせた治療が必要です。 解毒期には、病態に即した補液やベンゾジアゼピン系薬剤(向精神薬。鎮静作用等がある)の投与により離脱症状を抑えることが治療の中心となります。その他、幻覚症状がある場合は抗精神病薬、不眠には睡眠導入薬、うつ症状には抗うつ薬が処方されます。早ければ1週間程度で離脱症状は治まります。また、肝臓疾患などの重複身体障害があれば、この時期に並行して治療します。 ◆家族面接、自助グループ、リハビリテーション(治療プログラム)●家族面接アルコール依存症という病気や障害、そのほかの問題を抱えて、どのように対処するかを相談できず、途方に暮れているご家族に必要な知識や情報を知ってもらう機会として、専門施設などではご家族用の教室を設けています。どのように問題に対処するかを専門家とともに考えることで、患者さんやご家族が自分たちの問題に取り組みやすくなり、何とかやっていこうという気持ちを取り戻すことを目指します。 ●リハビリテーション 心身の状態が安定したら、リハビリテーションに入ります。リハビリテーションでは心理社会的治療が中心に行われ、患者さんの断酒しようとする気持ちを維持して支えます。 心理社会的治療にはさまざまな種類があり、いくつかの療法を組み合わせながら治療が進められます。●酒害教育 アルコールが心身、社会的立場などにもたらす害について学びます。●集団精神療法(集団で受ける精神療法で、治療の中心となります) 医師らの指導のもと、数名の患者さんがさまざまな問題について話し合ったりしながら、断酒や回復について考えていきます。話題のテーマはたとえば次のようなものです。 ・自身の飲酒問題について ・なぜ飲み続けたのか ・断酒の心構え ・再発を防ぐ方法 など●個人精神療法 飲酒に対する考え方だけでなく、家族のこと、自身の幼少時代、経済面など個人的な内容の相談もできる。●自助グループ アルコール依存症患者さん本人だけで断酒生活を継続することは容易ではありません。患者さんたちが運営する組織である自助グループに参加し、共感できる仲間に自分の体験談を語ったり、人の体験談を聞いたりして、支え合うことが重要です。 アルコール依存症の患者さんは、治療初期からその後一生、再発のリスクを背負いながら日常生活を送ることになります。したがって、治療の進行に関係なく、自助グループに参加して断酒継続につなげることは大きな意味があります。◆退院 → ◆通院 ◆通院治療の場合:通院となる条件患者さんの離脱症状や身体疾患が軽度で治療意欲が比較的高い、患者さんが医師の指示にしたがって通院することができるなど。通院のメリットは、家族が患者さん本人の回復の様子を肌で感じることができる点です。飲酒量を減らしたり、また患者さんが断酒を継続する過程を家族が共有することで、アルコール依存症について患者さんと共に学ぶことは、今後の家族全体の回復にとっても非常に大切なことです。「通院ペースとしては、最初の週は毎日受診し、その後は2週間に一度のペース程度となります。また2週間の一度の来院ペースの段階では、自主グループへ参加します。」【以上内容の引用先】『アルコール依存症治療ナビ』 日本新薬株式会社ホームページ 「アルコール使用障害」の治療の流れ治療は、悩んだ家族の相談から始まります。アルコール依存症は、本人が飲酒問題を否定や軽視し、専門機関を受診することが少ないため、まず家族に働きかけ、本人を治療につなげるためのプログラム参加を勧めます。本人が受診すると、①身体の健康をとり戻せる。②禁酒あるいは減酒を維持するための方法を練習できる。③再発を予防し、安定した社会生活を過ごすための治療が行える。特に③では医療機関だけではなく、断酒会やAAなどの自助グループ参加が大きな役割を果たします。 治療プロセスとしては、外来治療と入院治療に大別できます。クライエントが来院した後、予診(インテーク)が実施されます。その後医師により診察され、診断名の告知及び治療方針の選択が行われます。外来治療の場合は、治療に並行して検査、心理テスト等が行われます。そして、アディクションビギナープログラム受講、デイケア、減酒プログラムが実施されます。入院治療の場合は、入院治療プログラム(運動プログラム、心理教育プログラム、グループセラピー等)が提供されます。治療後は再発予防プログラムへの一定期間の参加が有効かつ重要となります。【以上内容の引用先】『アルコール使用障害』 東北会病院ホームページ 治療プログラム外来治療プログラム毎週火曜日に開催される「アディクションビギナープログラム」では、心理教育プログラムにてアルコール依存症がどんな病気かを理解していただき、グループセラピーで自身の体験を話していただくことで自分だけではないという思いを持っていただくことと、他の参加者の話からお酒を止めて行くヒントを得ていただています。(このプログラムは、アルコール・薬物障害で治療中(入院・外来)のご本人と、ご家族等を対象としています。)デイケアプログラム「アサープ」は、飲まない生活を維持し生活の質を向上していただくためや、職場復帰前のリハビリのために、火曜日以外の週4日通っていただいています。プログラムはグループセラピー、心理教育プログラム、スポーツの他にアートセラピー、オリジナルワークなどのレクリエーションも交えています。社会生活を飲まずに送っていただくためには自助グループに通うことも重要であり積極的に勧めています。 入院治療プログラムアルコールのない生活を支えていくためのグループセラピーを軸としたリハビリテーションプログラムを行っています。主に精神療法、心理教育プログラム、グループセラピー、運動、外出外泊など、日課や週間予定表に沿って入院治療生活を過ごしていただきます。 病棟内では、素面(しらふ)での規則正しい生活習慣の確立を行います。また、「酒のない社会」での生活を体験し、飲んでいた頃の自分と素面の自分を比較することにより、自身を見つめ直すことができます。そしてグループセラピーに参加することで、同様の問題を抱えた方々と問題を共有し分かち合うことができます。いずれも集団生活を通してスタッフや人との関わりが治療として大切になります。 アルコール依存症治療 外来と入院治療アルコール依存症の外来治療外来治療は断酒目的の方だけではなく、希望や重症度に応じた減酒目的の外来通院も対応しています。アルコール依存症の入院治療飲酒が止まらない時は入院治療をお勧めします。当院は機能の異なる計3つの病棟で、多職種によるアルコール・リハビリテーション・プログラム(ARP)を行います。入院治療を通して心身の健康を取り戻し、アルコール依存症についての知識を深めながら自分に適した再飲酒防止対策を考えることで、アルコール依存症からの回復を目指します。病棟によってARPの内容に違いがあるため、どの病棟での入院治療が適切かは、一人一人の状態に応じてご案内します。ARPは原則として3か月間のプログラムとなっています。定期的にご本人・ご家族・支援者の皆さまとカンファレンスを行い、治療方針を確認しながら進めていきます。 入院治療プログラムの主な内容●勉強会精神科医、内科医、精神保健福祉士、栄養士、作業療法士による講義です。●ミーティング同じ病を持つ仲間の話しを聞き、自己の問題を整理して話す訓練の場です。●OTプログラム身体を動かし、身体の回復を実感し、しらふの仲間を作り、心身の「快体験」を通して断酒によるプラスの効果を確認します。●自助グループ自助グループに入院中から参加します。●メッセージ自助グループやリハビリ施設を利用している回復者の体験を聞きます。AA、OB、障害福祉サービス事業所等がメッセージを届けてくれます。●酒歴発表飲酒していた時の自分を振り返り、今後の生活設計を発表します。 外来でのアルコール依存症のリハビリテーションアルコール依存症デイケア・アルコール依存症からの回復を目指している方が断酒を継続するため、通所してそれぞれの目的に合わせたリハビリテーションに取り組む場所です。・多職種(医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士)から総合的な支援が受けられます。仲間やスタッフとの交流を通して円滑な人間関係を築きながら、アルコールリハビリテーションプログラム(ARP)を通して依存症について深く学ぶことができます。・生活リズムが整います。 開始までの手順主治医による診察 → 見学体験 → 総合判断 → 開始 主なプログラム内容●アルコール依存症について学ぶ・再飲酒予防プログラムみらい ・認知行動療法 ・読書会●体験を分かち合う・各種ミーティング ・施設紹介体験談 ・AA体験 ・回復者体験談 ・わくわくライフ●就労について学ぶ・就労支援わくわくワーク●体を動かす・エクササイズ ・ストレッチ ・タオル体操 ・ウォーキング ・ヨガ ・マインドフルネスなど●娯楽・絵手紙 ・陶芸 ・ヨガ ・映画 ・音楽鑑賞 ・ペン習字 ・写経 ・大人の塗り絵 ・学習活動費用:各種医療保険および自立支援医療制度がご利用いただけます利用期間:原則1年としています 治療中の生活環境に関する相談精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)による相談アルコール依存症の回復過程では、経済面、住居面、ご家族との関係、日中の過ごし方や福祉サービスの利用など、生活の環境に関わる課題の解決が必要なことがあります。その際はソーシャルワーカー(精神保健福祉士)がご相談をお受けしています。ソーシャルワーカーに相談できる例・訪問看護やアルコールデイケアのことをくわしく知りたい・生活保護はどんな制度なのかな?・自助クループについて知りたい・家族向けのミーティングがあるって聞いたけど?・回復施設ってどんなところ?・自立支援医療制度を利用したいけど、どうすればいいの?・医療費の支払いが心配だなぁ…・働きたいけど、どこに相談したらいいのかな?【参考:生活保護制度】病気や高齢で働けなくなった、生計の中心となる人が亡くなったなど、さまざまな事情によって生活に困っている世帯に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立できるよう手助けする制度であり、生活に困窮する方が生活保護を受けることは国民の権利です。居住地保護の原則に従い、現在住んでいる場所(居住地)を管轄する福祉事務所で受けることになります。住民登録の有無とは関係ありません。 世帯単位が原則であり、同じ世帯にいるのに一人だけ保護を受けることは原則としてできません。一緒に暮らしている人全員で保護が必要かどうかを判断します。【参考:自立支援医療制度】自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。精神通院医療における対象者は、精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者です。精神通院医療においては、精神疾患に対する治療として、向精神薬の処方や精神科デイケア等の利用において適応されます。申請方法は、お住まいの区市町村の担当窓口(特別区地域は保健所・保健センター等、市町村地域は市役所・町村役場障害者福祉主管課等)に必要な書類を提出します。【以上内容の引用先】『アルコール依存症治療』 公益財団法人 井之頭病院ホームページ 刑罰から治療へという流れ(SMARPPについて)国際的には、刑罰ではなく依存症の治療を提供する政策が主流である。日本は、覚せい剤乱用が50年も続いている世界的に稀有な国である。日本では、薬物依存症が治療されないため覚醒剤に関した薬物犯罪は、男子62.1%といった高い再犯率を維持し、さらには治療よりも司法のほうが大きな費用がかかるともされている。日本の標準的な精神科医にとっては、覚醒剤によって生じる状態でよく理解されているのは精神症状を呈した場合のみであり、その根本にある依存症を専門とする者は少なく、入院対応できる医療機関は限られ、以前は外来の治療プログラムとなると皆無であるといった状態であった。日本では薬物依存症になった者は、民間の回復施設などを利用する以外に治療という選択肢がない状況にあり、薬物犯罪の刑を一部執行猶予する法案が通ったこともあって、治療体制と治療プログラムの整備が求められていた。2015年には、それまでの8都県だった治療プログラムの提供施設を、日本全国69カ所の精神保健福祉センターに拡大することを決定した。2016年ごろから刑期の1/3などを執行猶予とし、SMARPPの治療プログラムを受けるといった流れができてきた。平成28年度の診療報酬改定にて、SMARPPは依存症集団療法として診療報酬加算が認められた。これは研究の成果に基づいている。平成22年から24年度の計3年間の厚生労働科学研究班「薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究」である。 マトリックス・モデルSMARPPが参考としているのは、マトリックス・モデルという治療プログラムである。マトリックス・モデルとは、ロサンゼルスのマトリックス研究所が開発し、精神刺激薬への依存症を中心とした外来の治療プログラムである。西海岸のドラッグコート(薬物裁判所)にて広く実施されている。マトリックス・モデルは、支持的、受容的に接し、認知行動療法も採用した内容となっている。 治療理念1) 安心して失敗を話せる場であること治療プログラムは再使用があったときにも参加することができ、失敗も安心して正直に話せる安全な場でなければならない。再使用を正直に話したことで不利益を被ることがないように、治療に関する情報をあくまで医療的に用い、司法的な対応に使わないことを参加者に明言する。また、援助者は失敗を語った参加者に対してポジティブなフィードバックを行い、話しても大丈夫だという感覚や、話すことが回復に役立つという実感が持てるよう心がける。2) 参加者の自己決定の尊重依存症の特徴の一つは、「やめたいけれどもやりたい」という両価性にあることを理解した上で、参加者が望む方向に近づくための支援を行う。援助者は様々な情報提供を行うが、その情報を基にどう判断するかについては参加者の選択・決定をサポートし、依存行動をやめるよう強いることはしない。3) 良いところを褒める援助者は、望ましくない行動に罰を与えるのではなく、望ましい行動に報酬を与えることに注力する。報酬の最も基本的な構成要素は、常に参加者のプログラム参加を歓迎し、敬意を持って接することにある。プログラムに参加していること、依存行動の回数や程度のわずかな変化、本人なりに試みた対処行動、正直に話したこと、援助を求める言動など、積極的に良いところを見つけて、ポジティブなフィードバックを行う。4) つながりの重視援助者は、参加者が治療を継続し、支援の場・人とのつながりを維持し、増やせるようになることを重視する。ただ、多くの依存症患者にとって、治療や支援につながることのハードルは高い。そのため、治療に対して十分なモチベーションがない状態でも、毎週の参加が困難でも、遅刻や途中退席になったとしても参加OKにするなど、少しでもプログラムにつながりやすくなるよう、参加への敷居を下げて間口を広げている。 SMARPPの内容SMARPPの構成要素はマトリックス・モデルに準拠しており、認知行動療法による使用の防止を中心として、支持する場合には動機付け面接の原則をとり、実施期間においては8週間全21回と短くなっている。覚醒剤への薬物依存症に対する知識をつけ、薬物の渇望がどう起こり、それに対していかに対処行動を身につけるかといった、具体的な対処スキルの修得に重点が置かれている。また、正直であることを回復との関係において重視しているため、守秘義務やまた情報を治療以外に用いないことといった方針も存在する。 セルフヘルプ自分で読んで行うためのセルフヘルプのワークブックが出版されており、以前のものは2011年の『薬物・アルコール依存症からの回復支援ワークブック』である。2015年に改定された『SMARPP-24:物質使用障害治療プログラム』は、生き方のヒントといった必要性にもこたえている。【以上内容の引用先】『アルコール・薬物依存症プログラムについて』医療法人社団新新会 多摩あおば病院ホームページ『SMARPP』Wikipedia 外来ARPアルコール・リハビリテーション・プログラム)当院の外来では診療のほかにリハビリテーション・プログラムを実施しています。ここでは外来患者様が利用できるプログラムをご紹介します。外来グループワークアルコール依存症に関連するVTR を視聴し、毎週決まったテーマに沿ったフリートークを行います。依存症からの回復には、同じようにお酒の問題を抱えた方や回復している方と出会い、話を聞く・話をするということが大切だと言われています。 外来グループワークは、テーマに関する自身の体験を共有したり、他の参加者のお話を聞いたりすることにより、お互いの気持ちを理解し励ましあうことや、ストレス発散、病気に対する理解を深めることなどを目的としています。また、グループワークへの参加をきっかけに、自分自身の生き方や考え方を見つめ直すことができるかもしれません。 プログラムを運営するスタッフは看護師、精神保健福祉士、公認心理師など多職種で構成されており、様々な視点から参加者の方々のお話を伺い、回復のサポートを行っています。 アルコール・リハビリテーション・デイケア断酒を継続し、精神的・身体的・社会的回復を支援する場所です。デイケアにてさまざまなプログラムに参加することで、生活リズムを保ちながら、自身の飲酒習慣を振り返ることができます。また、利用者同士が交流することで、回復に向けた新しいライフスタイルを掴んでいくこともできます。 当院のアルコール・リハビリテーション・デイケアでは週に1度、近隣の自助グループ(※1)や回復施設から回復者をお招きしてお話を伺うプログラムを実施しています。回復者との交流によって、自分らしい回復の姿を思い描くことや、自助グループへの繋がるきっかけづくりを目的としています。 アルコール依存症は回復可能な病気です。アルコール・リハビリテーション・デイケアは、安全で安心できる居場所として、利用者様がそれぞれに回復できる支援を多職種で行っています。(※1)断酒会やAA など。断酒の継続を目的とした、アルコール依存症当事者の市民団体 入院アルコールリハビリプログラムアルコールプログラムについて駒木野病院では入院・外来・ご家族を対象にアルコール依存症治療のプログラムを行っています。 アルコール入院プログラムについてARP I期治療(ARP:Alcohol Rehabilitation Program)アルコールによりダメージを受けた身体を、症状にあわせて治療していきます。体内からアルコールが抜ける際に、離脱症状が出る場合があります。I期治療は安全に体内からアルコールを抜き(解毒)、体調を整え、II期治療に備える期間です。 ARP II期治療講義などを通し、アルコール依存症について正しく理解し、入院生活を通して自分らしさを取り戻していきます。ARP II期治療では様々な内容のプログラムを行っています。 講座アルコール依存症という病気に関する内容について講義形式で実施しています。アルコール依存症の病理や用いられる薬、社会資源や心理面のサポートについて、医師や薬剤師といった専門職が講師となってプログラムを行っています。 グループワークこれまでの体験を共有する時間です。ご自身の体験や考えを話し、他者の体験や考えを聞いていただく時間です。健康的な自尊心の回復が目的です。 運動プログラム入院中の体力低下を予防し、アルコールにより低下した身体機能を取り戻すためのプログラムです。室内でヨガやストレッチ、筋力トレーニングを行います。また、高尾山の周辺をウォーキングすることもあります。専門の作業療法士がプログラムを担当します。 ワークブックアルコール依存症からの回復のため、専用に作成されたテキストを用い、学習を行います。アルコール依存症の再発メカニズムを学び、再発予防のための手段や対処法について考えていきます。 自助グループ メッセージ断酒会やAA(Alcoholic Anonymous)といった自助グループや、ダルクやマックといったリハビリ施設の方々にご協力いただき、病院内で例会、ミーティングを開催しています。様々な自助グループの方に、アルコール依存症からの回復のメッセージを届けてもらっています。これらのメッセージは①回復のイメージを呼び起こし、②お酒をやめていくという決意を思い起こし、③仲間と励ましあうといった役割があり、依存症の回復にとても有効とされています。 ARP II期終了後は…ARP Ⅱ期終了後はARPリハビリ期への移行をおすすめしています。入院中は病院という環境により「安全管理」されていました。強制的にお酒が飲めない環境にいたことになります。退院するということは「安全管理」を自分でしなくてはいけないということです。退院してすぐは、解放感と飲酒するかもしれない緊張感がある時期と言えます。その時期を少しでも安心して過ごすために、退院して一定期間の間アルコール・リハビリテーション・デイケア(ARD)に参加して、自らの生活スタイルを作り上げていきましょう。ARDでは、そのために様々なプログラムを用意して、皆さんの回復をサポートしていきます。【以上内容の引用先】『アルコール依存症』駒木野病院ホームページ
2025.05.08
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「依存症」についてもっと知ろう依存症は回復できる病気です。健康や生活に問題が起きても、特定の物質、行動、行動の過程にのめり込み、「やめたくてもやめられない」状態を「依存症」といいます。依存する対象は様々ありますが、大きく2つにわかれます。①物質への依存 例: アルコール ②行動・プロセスへの依存 例: ギャンブル ※:医学的定義では、物質の使用および行動・プロセスに関するコントロールの障害を総称して嗜癖とよびます。そして、ある特定の物質の使用に関してコントロールの効かなくなる病気を依存症、行動・ プロセスについては行動嗜癖とよびます。依存する対象は1つとは限らず、複数の対象に同時に依存したり、対象が次々と変わる場合もあります。依存症により生じる日常生活の問題依存症になると、アルコール等の依存対象にかかわることを優先し、他のことに構わなくなっていきます。それにより、本人だけでなく周囲の人の生活にも影響を与えます。また、依存対象による直接の影響もあります。その結果、これまで築いてきた人間関係や社会生活が崩れてしまいます。(影響の例)・物質の影響や、睡眠・ 食事に構わなく なるため、健康を害する・勉強や仕事に集中できず、成績低下・ 留年・ 退学、退職につながる・隠れて借金をしたり、嘘をつく 、怒る、暴力を振るうなどする・依存症を隠すために本人も家族も他者との交流が減り、周囲から孤立する 依存症は脳のコントロール障害●脳内報酬系が刺激され、さらに依存対象が欲しくなる人は不安や緊張をやわらげたり、嫌なことを忘れたりするために、ある特定の行為をすることがあります。特定の物質の摂取により脳内で快楽物質が分泌され、その感覚を脳が報酬として認識すると、ますます摂取を繰り返すようになります。繰り返していくうちに、特定の行動をコントロールする脳機能が弱くなり、自分の意思ではやめられない状態になってしまいます。誰でもなる可能性があり「根性がない」「意思が弱い」からではありません。●次第に耐性ができて、量や回数が増えていく物質の使用や行動・ プロセスによって脳内にドーパミンという快楽物質が脳内に放出されると、中枢神経が興奮して快感につながります。この感覚を脳が報酬と認識すると、その報酬を求める回路が脳内に出来上がります。それが習慣化すると、今度は次第に耐性ができて、快感物質が分泌されても報酬を感じにくくなります。その結果、同じくらいの快感を得るために物質の量や回数、行動・ プロセスの頻度などが増えていきます。アルコールの場合、やがてブラックアウト(前夜飲んでいた時のことを思い出せなくなる)が発生するように進行していきます。●苦しさが和らいだという経験が、依存を強める「お酒を飲んだらよく眠れた」「 ギャンブルをしたら嫌な気分を忘れられた」など苦しさが和らいだという経験が繰り返されると、同じような状況になった時に依存対象を強く欲するようになります。●やめたり減らしたりすると、離脱症状が生じる特定の物質がいつも体内にある状態が続くと、脳はそれが普通の状態だと認識し、体内から物質が減ると様々な不快な症状が出ます。これを離脱症状といいます。(離脱症状の例)*頭痛 *吐き気、嘔吐 *イライラ *不安 *意欲の低下 *不眠*発熱 *発汗 *寒気 *血圧・心拍数の上昇 *体の痛み *手または体のふるえ *けいれん *幻覚、幻聴などなお、症状は、物質や人により異なります。またギャンブルやゲームなどへの依存症でも、イライラや落ち着きのなさなどの一部の離脱症状が起こると言われています。離脱症状を和らげるために物質を再度使用したり、行動・ プロセスを再開してしまうことが多く 、自分の力だけでやめることは難しいのです。●否認の病気「いつでもやめられえる」など、自分が依存症だとは認めません。コントロールできないことを他の原因に求めたりもします。心理的な防衛機制の一種と考えられ、依存症の人には多かれ少なかれ否認があります。否認を克服していくことが依存症の回復プロセス自体となります。●周囲を巻き込む病気人間関係よりも、依存物質や行為を優先する為に、関係が悪化し、家族や周囲の人を巻き込んでしまいます。●孤独の病気依存症は「孤独の病気」とも言われています。孤独感や不安や焦りから物質や行為などに頼るようになってしまい依存症がはじまる場合があります。やがて次第に周囲から孤立し、孤独感や疎外感がつのります。それがますます物質や行為へののめりこみをすすめます。 このように、「やめたくても、やめられない」という依存症は、意志の弱さや根性のなさ、性格の問題ではなく 、誰でもなりうる「 脳の病気」なのです。 なぜ依存症になるのか自分の快楽のためだけではなく 、苦痛を和らげるために物質の使用や特定の行動を繰り返しているうちに、依存症になると考えられています。また依存症の方のかなりの割合に、何らかの生きづらさの問題があると言われています。辛い経験から他人を信じられなくなると、物事や人間関係がうまくいかないなどの困った時に、周囲に援助を求めることができず、一人で抱え込んでしまいます。一人では解決できず苦しみが続く中で、生きのびるために依存対象を使用せざるを得なかったと考えられています。そのため、依存症は「 孤独の病気」 とも言われています。 依存症からの回復依存症は回復できる病気です。回復とは単に「 やめる/やめ続ける」 ことではなく、「 依存対象にとらわれずに、自分らしく生きていける」ことです。回復に必要なことは、医療機関での治療のほか、自助グループでの交流や困りごとの相談、回復施設におけるリハビリテーションの実施など、孤立せず正直に話し合える場をもち続けることです。そうすることで、万が一依存対象の物質を再使用したり行動を再開したとしても、また回復の道に戻ることができます。 家族や周囲の方へ依存症の問題は、家族や周囲の方だけで解決することがとても難しく 、気がつかないうちに家族等の健康や生活にも影響を与え、社会から孤立しがちになります。困っている方や問題に気づいた方から支援者とつながることが、解決の第一歩となります。相談機関では、まず相談者から困っていることを伺い、一緒に問題を整理していきます。家族等や本人の置かれている状況に応じて、他の専門機関への相談を提案することもあります。相談者が元気を取り戻し、依存症について学び、本人への対応の仕方を身につけることが、本人の回復へとつながります。 医療機関での対応についてかかりつけ医療機関や相談機関も活用し、依存症診療を行う精神科や心療内科を受診しましょう。東京都では依存対象ごとに「東京都依存症専門医療機関」を選定しています。医療機関では、必要に応じて身体も含めた検査や診察を行い、心身の状態を確認した上で治療が提案されます。治療は依存対象や使用期間等によっても異なります。●身体症状への対応物質の使用による身体症状(アルコールや市販薬による肝機能低下など)や離脱症状など、身体面の治療を行います。●精神症状の治療物質の使用による後遺症(幻覚や妄想など)や、元々あった精神疾患、併存した精神症状(うつや不安など) の治療を行います。●心理療法回復をめざして、依存症の背景にあるこころの問題に取り組むほか、渇望を招く引き金やその対処方法などをグループや個別面接で学びます。●入院治療通院での治療が難しい場合や生活環境を整える必要等がある場合、入院治療を勧められることがあります。●その他医療機関によっては、家族向けに講座や交流会を行っているところもあります。 自助グループ・ 家族会依存症からの回復をめざす当事者や家族等が自主的に運営するグループです。多くの場合匿名で参加でき、いずれもプライバシーは守られます。グループメンバーと体験や想いをわかちあうことで、気づきや問題解決のヒントを得るとともに、同じ境遇の仲間を得ることで孤独・ 孤立を防ぎます。様々なグループがあり、依存対象別、女性メンバー限定、土日や夜間に開催しているグループもあります。また、当事者だけでなく家族対象のグループもあります。本人と同様に、家族等も孤立せず、正直に話し合える場をもつことは大切です。 公的な相談機関本人だけでなく 、家族や周囲の方からの相談も可能です。まずは、問題だと感じている方が相談機関につながり、どのように対応するかご相談ください。相談は無料で、プライバシーは厳守します。早めの気づきと、専門機関への相談が大切です。 アルコール依存症の簡易チェックツール「CAGE」1あなたは今までに、飲酒を減らさなければならないと思ったことがありますか?2飲酒を批判されて、腹が立ったり、苛立ったことはありますか?3飲酒に後ろめたい気持ちや罪悪感を持ったことがありますか?4朝酒や迎え酒をのんだことがありますか?※2項目以上該当する場合、アルコール依存症の可能性があります。 依存症を抱えている人に避けた方がよい行為1治ったにちがいないと勝手に思い込み、再び依存症の対象になる行為に誘う。2精神力が足りない等の問題が原因だと思い込み、人格を否定しながら批判する。3依存を続ける環境と継続する手助けをしてしまい、目先の辛い状況の緩和・解消を支援する。 依存症に悩まされる家族に避けた方がよい行為1家族を批判する。2家族に原因があると断定して批判する。※家族ができることは限られています。 依存症を抱えている家族に対して望ましい態度●サポートする人の心のケア依存症の治療には長い期間を要します。その間、サポートする家族も大変な苦しみを抱えることになるので、周囲の人との支え合いは不可欠です。同じ悩みを抱える仲間と積極的に交流するなど、自分自身のこころのケアを大切にしましょう。 次のような本人の言動が観られたら、すぐに相談を・酔っているときの暴言・暴力・飲酒運転を繰り返す・仕事や学校を遅刻したり休んだりする・体調が悪いときでも酒を飲む・睡眠や食事がおろそかになる・被害・嫉妬などの妄想がひどい・飲んでいることを隠す・嘘をつく・破損・借金などの後始末をさせられる・本人はお酒の問題をみとめようとしない・お酒でしんでもいい、などという※このようなケースが周囲の関係者にいる場合、抱え込まずに相談することが大切です。また家族の方々自身の心身の健康も大切にしましょう。 依存症が引き起こす病気・アルコールの特徴●うつ病と合併すると自殺の危険性が高まるアルコール依存症の人は、うつ病を発症するケースが多く、併発すると自殺の危険性が高まるというデータがあります。アルコールは結果的に、自殺を誘発することにもつながります。うつ病患者の3割以上がアルコール依存症に罹患しているという調査もあり、両者には密接な関係があります。●アルコールのメリット適切な量のアルコールの摂取は、気持ちをリラックスさせたり、血液の流れをよくする効果があります。また発想の転換や、コミュニケーションを円滑にするなどの効能をもたらす場合もあります。しかし依存症になってしまえば、断酒しか方法はありません。●お酒の入眠効果と睡眠障害お酒には確かに入眠効果があります。しかし寝る前にアルコールを摂取する生活を続けると、本来の睡眠パターンが崩れて眠りが浅くなります。睡眠の質は低下し続け、やがてアルコール無しには眠れないという睡眠障害を引き起こします。 ●多量のアルコール摂取が引き起こす心身への悪影響①肝機能障害(肝硬変など) ②がん ③肥満・高血圧・糖尿病 ④認知機能障害 ⑤胃炎・すい炎 ⑥精神障害(うつ病、依存症など) なお、いわゆるお酒に強い人であっても、病気や依存症につながるリスクは、弱い人と全く同様です。 ●女性や高齢者のアルコール依存症の人が増えています家庭生活へのストレスや、定年などの大きな生活環境や役割の変化をきっかけに、女性や高齢者の間でアルコール依存症が増加しています。 ●より詳しい自己診断テストが掲載されているサイト熊本県精神保健センターの『お酒と上手に付き合う暮らしを』https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/131318.pdfには、「AUDIT」という世界保健機関が調査した内容を基に作成された自己診断テストが掲載されています。 第1章 アルコール依存症について知ろうアルコール依存は病気です。にもかかわらず、世間やあなたは『風邪』は病気だと思うでしょうが、『アルコール依存症』を病気としてなかなか認められないでしょう。では『依存』とは何でしょうか? 人問が体内に取り込む物質の中には、長期間にわたり使用すると、 自分でやめようと思っても、やめられないものがあります。なぜなら、その物質が無い状態を体が我慢できなくなるからです。これを依存といいます。中でもアルコール(お酒)は代表的です。 依存には①心の依存(精神依存)と②体の依存(身体依存)があります。①精神依存とは、その物質がないと不安になったり、イライラするなど、心がその物質に依存することです。②身体依存とは、その物質がないと汗をたくさんかいたり、眠れないなど、体がその物質に依存している状態を言います。自分の生活や周囲の人との関係に問題が起こっているのに、その物質がない状態を我慢できなくなり、その物質に依存し続けるなら、『依存症』という病気になっていると言えるでしょう。 『アルコール依存症』とは、心も体もアルコールに依存してしまう病気です。◆飲酒のコントロールを失う病気◆進行性で死に至る病気◆完治することのない慢性的な病気(従って一生酒を断つ(断酒)しかなくなる)が特徴となります。 アルコール依存症は『完治』しませんが、『回復』します。回復するには断酒しか方法がありません。しかし、自力で酒をやめることは大変難しいことです。あなたが断酒する助けとして ◆最寄りの相談機関(保健所、福祉事務所など)への相談 ◆アルコール依存症の治療を受ける。◆回復を目指す仲間とともに支え合う。◆何よりも自分の酒の問題を認め、それがアルコール依存症という病気であると理解する。以上の行動がとても重要になってきます。 第2章 実際の飲み方はどのように変化していくのか? 飲み方は①から順にエスカレートしていきます。①機会飲酒:最初はコミュニケーションの場やイベントなどで、たまたま飲むことから始まる事でしょう。お酒を飲むことに慣れるにつれて、段々と酔わなくなります。アルコールに対する耐性ができるためです。一度耐性ができると、さらに強くなっていき、次第に自分は酒に強いというセルフイメージを持つようになります。 ②習慣飲酒:お酒に強くなるにつれ、飲酒自体を楽しむようになり、飲酒が習慣になります。次第に嫌なことを忘れるため等のためにも飲酒するようになります。そして、何かある度にお酒を飲むようになっていきます。 ③不健康な飲酒:飲酒が習慣になると「飲まなきゃとやってられん!」という気持ちが強くなり、次第に飲むために理由をつけるようになります。「天気がいいから」「テレビがおもしろくないから」などでさえ理由にして飲酒するというパターンが生まれます。このためアルコール類が近くにないと落ち着かなくなり、いつでも飲めるように用意しようとします。これがアルコールに対する心の依存、つまり『精神依存』です。 精神依存とは、心がアルコールのとりこになっている状態です。精神依存が生じると飲みたい気持ちが強迫的になります。飲酒が、食事より睡眠より何よりも大切で、飲酒しか頭の中にない生活になります。同時に飲酒を周りに注意されるのが非常に嫌でたまらなくなり、朝酒などの異常な行動にでます。 ④朝酒:飲酒欲求を抑える力が無くなっているため、時間を問わず酒を飲みたくなり、次第に朝からの飲酒が習慣になります。酔うことで、嫌な気分、嫌な世の中のことを忘れていたいという気持ちや、アルコール依存症の離脱症状から来る不快さから逃れるため、朝酒をします。 ⑤隠れ酒:朝酒や大量飲酒、それによる『ブラックアウト』(アルコールによって脳がマヒし、記憶の一部分が消えること)などをたびたび起こしたり、酔った上での失敗を繰り返すようになります。次第に周囲の人の目を気にするようになります。周囲の人から非難されるのも嫌で、隠れて飲酒するようになります。そのため、酒を飲んでいる姿だけでなく、酒そのものも車の中や本立ての裏、ゴミ箱の中にまで隠そうとします。 ⑥がぶ飲み・一気飲み:周囲の人に見つからないうちに、また少しでも早く酔った状態になろうとして、がぶがぶと一気に酒を飲みます。 ⑦連続飲酒(発作):目が覚めている限り飲み続け、休みの日などは一日中飲みます。そのため、休み明けには二日酔いで仕事を休み、また一日中飲んでしまいます。 飲酒欲求の完全なノーブレーキ状態です。この段階では、飲酒運転や仕事中の飲酒など、場面をわきまえない飲み方になります。この連続飲酒(発作)は、体力が低下して酒を受けつけられなくなるまで数週間にわたって続きます。 ⑧山型飲酒サイクル:連続飲酒(発作)を続けて体が酒を一滴も受けつけなくなると、一時的にしらふの状態になります。このしらふの状態がしばらく続くと、次第に体力が回復するため、再び飲める体になります。こうなるとまた飲みだし、連続飲酒発作の状態になります。これを何回も繰り返し、連続飲酒→しらふ→連続飲酒のサイクル(まるで山になったり谷になったりというモデル)になります。 ⑨身体依存:大量飲酒が続くと、今度は体がとりこになります。これを身体依存と言います。アルコール離脱症状(アルコールが体から抜けることによる、一種の脳の神経の過剰活動)が現れると、すでに身体依存に至っていると言えます。身体依存に至ると、次のような離脱症状を示します。◆手指のふるえ ◆寝汗•脂汗 ◆こむらがえり ◆吐き気•嘔吐 ◆幻聴•幻視 ◆離脱せん妄 これ以外にも、不安、 イライラ、不眠、無気力、抑うつ気分などといった『うつ状態』を示すことが多いです。『うつ病』なのか『アルコール 依存症』なのかを見極め、それに応じた治療や対応をすることが大切です。これらの離脱症状は、人によって現れる種類や順番、またそれらの症状が継続する期間も異なります。一般的には、これらの症状は断酒後数時間から現れ、およそ2週間で落ち着きますが、中には不眠のように数年続くものもあります。 第3章 アルコール依存症者の心理 アルコール依存症は、アルコールを飲み過ぎることによって起こる体質(体)の病気であり、誰でもかかる可能性のある病気です。そして、体の病気であると同時に「心の病気」でもあります。別名『否認の病気』とも言われ、アルコール依存症者が嘘をついたり、人を裏切ったりするのも、病気の症状である『否認』が原因です。しかし否認を病気の症状だと知っている人は少なく、アルコール依存症になるのは性格の問題や、だらしない人がなる病気だと思われがちです。 しかし、心の病気は回復するものです。回復のためには、 その病気を知り、原因を理解することが必要です。これは病気の再発予防にもつながります。また、周囲の人々も病気に巻き込まれたり、振り回されたりすることから解放される助けとなるでしょう。 否認とはなんでしょうか? アルコール問題を持つ人は、自分の飲酒に問題があることを薄々は気づいています。しかしそれを認めてしまうと、断酒して「しらふの状態」で現実に立ち向かうことになります。それがあまりにも怖いため、 酒の酔いが必要となり、今度は酒を飲み続けるために否認が必要となるのです。 否認という症状には、どんなものがあるのでしょうか? ◆[単純な否認]:飲酒したことが明らかであるのに、「飲んでいない」と言い張る。本当は5合以上飲んでいて、足もともフラフラしているのに、「ビー ル1本だけ」など、飲んだ量を減らして言う等。 ◆[過小評価]:「これくらいの失敗なら酒飲みなら誰でもしている」「やめようと思えばいつでもやめられる」「たまに飲み過ぎることはあっても、アル中にまではなっていない」など、現実に起きている問題を実際よりもたいしたことのないように言ったり、振る舞ったりする等。 ◆[合理化/理由付け]:「仕事の付き合いでしかたなく飲んでいるんだ」「あいつがうるさく小言を言ったりするから」「誰も相手にしてくれないから寂しくて」など、飲む理由を作り、周囲の人だけでなく自分自身にも言い聞かせる等。 ◆[一般化]:「私がアル中なら、世間の酒飲みは皆アル中だ」「日本では酒くらい飲めないと仕事ができない」など、周りの人と比べて、自分の飲み方は普通であると主張する等。 ◆[正当化: 酒で何か失敗しても、「あれは酒のせいではなく、あいつが悪いんだ」と言ったり、体を壊しても、「飲み過ぎよりも、働き過ぎが問題だ」と酒以外に原因があるかのように言い、酒を飲むことを正当化する等。◆[攻撃]:「自分の稼いだ金で酒を飲んで何が悪い?!」と開き直ったり、「ごちゃごちゃ言うな!」と怒鳴たりする等。◆[退行]:「誰も私のつらさをわかってくれない」「自分はどうせだめな人間なんだ」など、自分の中に閉じこもったり、嘆いたりする等。◆[先回り/予防線]:「どうせみんな私をアル中だと思っているんだ」「自分でもどうにかしないといけないことはわかっているんです」など、人から言われる前に問題を認め、それ以上責められないように予防線を張るなど。◆[不安の先取り]:「今、酒をやめたら仕事ができなくなる」「今の生活から酒を取ってしまったら、何の楽しみもなくなってしまう」など、試みる前からやめた後の心配をする等。 アルコール依存症者の本当の気持ちとはどのようなものでしょうか? 一言で否認と言ってもさまざまな種類があり、これらは全て心の病気の症状です。しかし、依存症者の心がすべて病んでしまっているわけではありません。依存症者は病んだ心と健康な心の間で揺れています。 では、アルコール依存症者の否認や言動には、実際にどのような気持ち(心理)が隠されているのでしょうか。 ◆「やめる」と言っては飲む:アルコール依存症者は、酒をやめる気がないわけではありません。断酒したいと思っているのは本当です。しかし依存症という病気のために、体がアルコールを欲しがります。「飲みたい」という渇望(強い欲求)は、意志や努力ではどうにもなりません。「やめたい」「やめよう」という固い決心や強い意志だけでは、病気の症状に打ち勝つことはできないのです。依存症者本人も「やめたい」「やめなければならない」と思いながら、やめることができずに苦しんでいるのです。 ◆嘘をつく:アルコール依存症者が、プンプン匂いがしているのに、「飲んでいない」「一杯だけ」と言ったり、飲むために「ちょっとたばこを買いに」と出て行くなど、明らかにばれてしまうような嘘をつくのは、自分でも「いけないことだ」と感じている表れです。自分で気づいていて、罪悪感もあるために、問いつめられるととっさに嘘をついてしまいます。◆アルコール依存症であることを認めない:「自分はそこまでではない」「多少問題があっても、アルコール依存症まではいってない」という気持ちは、アルコール依存症という病気に対する誤解や偏見から生まれます。多くの人は、アルコール依存症を恥ずかしい病気であると思ったり、酒がやめられないのは意志が弱いせいだと思っているため、依存症の人を見下してしまいがちです。アルコール依存症者は内心、自分の飲酒問題に気づき、「酒もやめられない意志の弱い人間だ」と自分を責めているので、逆に『アルコール依存症』と認めることができないのです。◆言い訳をする:飲むために、または飲んだことに対して言い訳をするのは、そのことを人から責められたくないからです。自分で悪いと思っていることを人から責められるのは、誰でもうれしくありません。また、言い訳をし、飲酒を正当化することで、酒をやめる必要はないと、周囲の人だけでなく、自分にも言い聞かせます。問題を認めたり、酒をやめるということが怖いため、言い訳せずにはいられないのです。 ◆「誰もわかってくれない」などと閉じこもる:アルコール依存症者は、酒を飲み続ける中で、友人や親戚付き合いなどが減っていき、孤独感と孤独になることへの恐怖感を持っています。また、上手に酒を飲めない自分に対して、「なぜ自分は他の人のように飲めないのか?」「やめようと思ってもやめられない自分はだめなやつだ!」と強い劣等感を持っています。しかし自分がどれくらい孤独なのか、どれくらい人よりも劣っているのかという現実から逃げるため、「誰もわかってくれない」と 自分の殼に閉じこもってしまいます。 ◆約束をしては、それを破る:飲んで酔っ払っているときにした約束が守れないだけではなく、しらふのときにしたはずの約束まで破ります。依存症者も、破りたくて約束を破るわけではありません。約束を守りたいと願っているのは、誰よりも本人なのです。しかし、守れない約束をしていることに気づきながら、「自分はまだ大丈夫」と言い聞かせるために、約束をしてしまいます。 ◆攻撃的になる:アルコール依存症者は、「自分はだめな人間だ」と思っているため、周囲の人から言われたことをすべて文句や攻撃と感じます。周囲の人から貴められる前に、怒鳴り散らしたり、暴力を振るったりなどの攻撃をしてしまいます。また、酒が切れたイライラ感も周囲の人への攻撃につながります。 ◆自暴自棄な態度をとる:「好きな酒を飲んで、死ぬなら本望だ」「もう放っておいてくれ」などと言って、周囲の人を戸惑わせます。やけくそな言動をする半面、「飲んで死ぬのは怖い」とも感じています。しかしアルコール依存症者にとっては、 飲んで死ぬことより、飲まずに生きることの方が怖いのです。これは、依存症者本人が回復することを信じられず、「どうしようもない」とあきらめているからです。◆覚えていない:アルコール依存症者には、『ブラックアウト』と呼ばれる部分的な記憶の欠落が頻繁に起こります。また、都合のいいことだけ覚えているという選択的記憶もあります。ですから、依存症者が「覚えていない」と言うのはあながち嘘ではありません。しかし、周囲の人からは嘘をついていると思われることがよくあります。本人にとっても、覚えていないことは不安であるため、それを他人から指摘されると、ついカッとなってしまいます。 ◆飲むことしか考えない:アルコール依存症には、体の病気の症状として、抑え切れない病的飲酒欲求があります。また長い間、当然のように酒を飲みながら生活してきたため、飲まずに生活することが想像できなくなっています。つまり、しらふでは何もできないと自分で決めつけてしまっているのです。そのため、少々約束や仕事に遅刻しても、とにかく酒を口にすることが重要なことだと感じたり、飲んではいけないとわかっていながら、一杯くらいならと酒を口にしてしまったりします。このように飲むことに心がとらわれた状態になり、 やがては飲むことしか考えられなくなってしまいます。 ◆飲んで気が大きくなる:「しらふの時はおとなしくて、とてもいい人なのに…」と言われるアルコール依存症者はよくいます。普段、アルコール依存症者は飲むために嘘をついたり、自分に劣等感を持っているため、酒が入るとその反動で気が大きくなって、「酒飲んで何が悪い」と開き直ってみたり、できない約束をしてしまいます。 ◆節酒に挑戦する:人と一緒に飲まない、ひとりでは飲まない、ビールしか飲まない、薄めて飲む、昼間は飲まないなどは、アルコール問題を持つ人ならば、誰しもが一度は試す『節酒の試み』です。「今度こそ上手に飲んでやろう」「コントロールして飲めば問題はないんだ」と、自らの飲みかたを何とか管理しようとします。しかし、飲酒をコントロールする力を失うことがこの病気の症状なのです。周囲の人も本人もそれを知らないため、必死で節酒に挑戦します。 自分の行動をコントロールできないことを認められず、何度失敗しても、再び節酒に挑戦するのです。 アルコール依存症者は、いつも「やめたい」「やめなければいけない」という気持ちと、「やめたくない」「やめることなんてできない」という正反対の気持ちの間で揺れています。それは、しらふで生きていくことの自信のなさと酒をやめた後の生活をイメージできないからです。その結果、「やめられるわけがない」とあきらめたり、「やめる必要なんてない」と開き直ったり、「やめても意味がない」と決めつけたりしてしまいます。 アルコール中心の生活になり、信頼も失い、人間関係も壊れ、体も壊れていく中で、アルコール依存症者本人も「やめたい、でもどうにもならない」と苦しみ、もがいているのです 第4章 アルコール関連障害とは? アルコール依存症は、体と心の病気ですが、人間としての生活をも壊していきます。身体的障害、精神的障害はもちろんのこと、人間関係や日常生活にもさまざまな障害をもたらします。 アルコール依存症者は、長年にわたって酒を飲み続けることにより、しらふで人と話をしたり、生活を送る上で起きてくる問題に対処する能力などが低下していきます。この『能力の低下』は、酒をやめた後も『障害』として残ります。また、飲んでいる間に身につけた物の考え方や言動も酒をやめたとたんに変化するわけではありません。酒を飲んでいなくても、飲んでいた頃と変わらない人のことを『ドライ・ドランク(しらふの酔っぱらい)』 と言います。 「酒をやめたのに、何もいいことがない」と嘆く人が、本人にも、家族に もよくいますが、これは依存症という病気のために生じた障害が原因しています。この障害によってもたらされるストレスが、再飲酒につながることも少なくありません。アルコール依存症という病気自体は、断酒することにより回復しますが、障害は断酒したからと言って消えるものではありません。 アルコール依存症によって生じた障害は、しらふの生活を続ける中で少しずつ軽減されていくものです。そのため、依存症者やその周囲の人々は、障害を抱え、障害によるストレスとうまくつき合いながら、断酒生活を継続しなければなりません。これはとてもつらいことです。 障害とうまくつき合うには、自分の抱える障害がどんなもので、その障害が(しらふでの)日常生活にどのような影響があるのかをよく知っておく必要があります。この『障害』に気づかないまま断酒生活を続けようとすると、必ず無理が出ます。無理が続けば、それは『スリップ(再飲酒)』につながります。アルコール依存症の結果として障害が生まれ、今度はその障害が原因で再発(再飲酒)する、つまりアルコール依存症が進行するという悪循環が起こります。これを、アルコール関連問題障害の『原因と結果の逆転』と言います。 第5章 アルコール依存症と死アルコール依存症者の平均寿命は51歳といわれています。現在の日本 人の平均寿命と比べると、30年近く短いということになります。このあまりにも短い寿命は、どのようなことが原因となっているのでしょうか。アルコール依存症者の三大死因としては、『肝硬変』『心不全』『不慮の事故』が挙げられます。次に『がん』『脳血管障害』『自殺』『原因不明の死』 が続きます。身体疾患以外の死因としては、次のような原因が挙げられます。 ◆不慮の事故 ◆自殺(アルコール依存症者の死因に占める自殺の割合は、日本人全体の死因に占める自殺の割合の約7倍に達していると言われています。また全自殺 者の6人に1人は、アルコール依存症者であるとも言われています。) ◆原因不明の死 第6章 セルフヘルプグループ 『共通した悩みを持つ人が集まって、自分の体験を語り、ひとの体験を聴くことで、共感しあい仲間となって支えあう』 『セルフヘルプグループ』ではこのような活動が行われています。セルフヘルプグループにはさまざまなものがありますが、今回はアルコール依存症に関わるセルフヘルプグル一プについて説明します。アルコール依存症のセルフヘルプグループでは、酒をやめたい人が集まり、お互いに酒にまつわる体験を語りあい、分かちあうことで、仲間になり支えあいが行われています。 セルフヘルプグループでは、定期的に『ミーティング』や『例会』と呼ばれる集まりを持ち、酒をやめたいと思っているアルコール依存症者なら誰でも参加できます。 ミーティングでは、アルコールにまつわる体験が語られます。そこでは、『言いっ放し、聞きっ放し』というルールがあり、自分が思ったこと感じたこと など、何でも話したいことを話せます。聴くときは、その場で話されたことに 対し、非難やアドバイスをしません。その場で話されたことは、外部にもらされることはありません。そこでの出来事は、その場限りで終わります。参加者に求められることは、自分と向き合い率直に自分の体験を語ることです。 アルコール依存症のセルフヘルプグループには、主なものとしてAAと断酒会があります。◆AA アルコホーリクス アノニマス(Alcoholics Anonymous) ・メンバーは名前を名乗らず、ニックネームで呼び合います。 ・ クローズドミーティング…アルコール依存症者のみが参加できます。 ・ オープンミーティング…アルコール依存症者以外も参加できます。 ・ 独自の回復のプログラムを活用して、それぞれが回復をめざしています。 ◆断酒会 ・会員は、名前を名乗ることを原則としています。 ・例会には、本人だけでなく家族の参加が重視されています。 ・例会…会員なら誰でも参加できます。 ・その他の例会…単身者、女性、身体障害者などそれぞれの例会もあります。 本人のグループ以外にも、アラノン(Al-Anon)や断酒会の家族会など、 アルコール依存症者を家族や友人に持つ人のグループもあります。 それではAさんのグループ体験の内容を確認してみましょう。自分がアルコール依存症であるとは認められず、自力で酒をやめようとしました。しかし、なかなかやめられず、そんな自分を情けなく思い、「もうどうにもならない」と絶望していました。 そんな時、Aさんはすがるような思いで、アルコール依存症のセルフへルプグループのミーティング(例会)に参加してみました。恐る恐る部屋に入ると、グループのメンバーに、「よく来てくれましたね」と温かく迎えられました。Aさんは、その時のメンバーの優しい言葉と真剣なまなざしを忘れることができません。 参加した当初は、「どうして自分がアルコール依存症と認められるのか」 「何故アルコール依存症だなんて人前で言えるのか」と驚きました。また、「皆は本当にアルコール依存症なのか」「本当に酒をやめているのか」などの疑問がありました。しかし毎回ミーティングに参加するにつれ、多くのメンバーが断酒できていることを実感することができました。 A さんは、メンバーの体験談を聴いているうちに、メンバーが『自分と同じ仲間である』こと、皆も同じような苦しみや『どん底の生活』を体験していることが分かってきました。Aさんは、「あそこにもここにも自分がいる」ように感じました。 そして、「自分にも酒がやめられるんだ」「しらふでも生きていけるんだ」 と希望をもつことができました。 Aさんの体験をもとにセルフヘルプグループのもつ機能を整理してみましょう。◆安心感が得られる:セルフヘルプグループの場では、批判や忠告がないだけでなく、話されたことが外部にもれることはありません。ありのままの自分が、まるごと受け入れられることで安心感を得られます。 ◆仲間を通じて自分と出会える:自分の内に押し込めてきた体験や思いを、仲間に言葉にして出すことで、 「自分はこんなことを考えていたのか」と気づき、自分と出会います。また仲間の体験を聴き、自分の体験と重ね合わせることで、『気づかなかった自分の気持ち』に気づき、自分と出会います。 ◆しらふの生活のためのアイデアやモデルが得られる:自分と同じように酒で苦しんでいた人が断酒している姿から、「私も断酒できるのだ」と実感することができます。『十分な休息をとる』『酒の席に出ても飲まない工夫』などアルコール依存症に対処するための知恵を得られます。 実際にしらふで生きている仲間の姿から、酒のない自分の生活を具体的にイメージできます。 ◆自分の存在そのものが仲間を支える:あなたが話す体験は、仲間が昔の自分を振り返ったり、これからの自分を考えるために役立ちます。また、体験談を語る仲間にとって、あなたが黙って話に耳を傾ける姿は安心感と勇気を与えます。◆飲まない時間を過ごせる:ミーティングに参加している間、飲まない時間を過ごせます。また、定期的に通うことで、 生活のリズムができ、断酒継続の助けになります。セルフへルプグループを知る一番の方法は、自分で足を運んで実際にミーティングに参加することです。まずは参加してみませんか? 第7章 酒なし生活術アルコール依存症になると、もう一生酒を飲むことはできません。しかし「一生酒をやめ続けなければならない」と考えるととても気が重くなります。「一生飲まない」ではなく、「今日だけは飲まない」と考えましょう。 その1日を積み重ねていけばよいのです。 ◆通院継続:アルコール依存症は病気ですから、専門治療が必要です。断酒後、少なくとも1年間は定期的に通院しましょう。その間は、不眠やイライラ、うつ状態に陥りやすく、飲酒欲求も生じやすい時期です。また、断酒できているという事実から、「もう通院しなくても自己管理できるはずだ」というような否認も現れます。病院に行けば、困ったときに適切なアドバイスしてもらえるだけでなく、飲めない環境に身を置くことで安心感を得たり、自分の断酒生活を再確認することもできます。 ◆『抗酒剤』の利用:抗酒剤とは、これを服用した後24時間以内に酒を飲むと、血圧は下がり、頭はガンガンし、息苦しくなるなど、ひどい二日酔いの状態になる薬です。これは、体内でアルコールが分解されてできた悪酔いのもとを分解する酵素の働きが、抗酒剤により一時的にブロックされるからです。飲酒欲求は、いつ何時生じるかわかりません。酒をやめたい気持ちを守っていくために、抗酒剤を服用しましょう。 ◆セルフヘルプグループへの参加:アルコール依存症の回復には、セルフヘルプグループへの継続的な参加が欠かせません。しばらく酒をやめていると「自分はアルコール依存症ではないのではないか」という錯覚に陥ります。しかし、アルコール依存症は回復しても完治することのない病気です。そこで、セルフヘルプグループに継続的に参加し、飲酒にまつわる体験を語ったり聴いたりし続けることが、 断酒していくためにはぜひとも必要なのです。つまり、定期的な自己メンテナンスが必要なのです。◆断酒宣言をする:周囲の人に断酒を宣言することは、飲まない生活を続けるための大きな武器になります。現在の日本の社会生活では何かあるごとに飲酒が行われます。そこで、職場、親戚、友人などに 断酒を宣言しておけば、酒席に出ないことを理解してもらったり、酒席で酒をすすめられることを避けられます。また、外来通院やセルフヘルプグループ参加に理解を得るためにも、職場での断酒宣言は 有効です。さらに、酒を飲めない気持ちを自分自身で改めて確認することができます。 ◆酒の誘惑のあるところに近づかない:断酒が安定するまで、少なくとも1年間は酒席に出ないのが賢明です。 冠婚葬祭や正月の集まりも、できれば欠席させてもらいましょう。しかし、酒席に出なければいけないときは、いずれやってくるでしょう。 そのような場合は、次のようなことに注意します。①あらかじめ幹事に飲めないことを断っておく。 ②抗酒剤を飲んでいく。 ③酒をすすめられたら「結構です」ではなく、「私はオレンジジュースをいただきます」と具体的な対応をする。(ウーロン茶は水割りと間違えやすいので、特に席をはずした後は注意する) ④飲酒欲求が刺激されるので、空腹の状態で行かない。 ⑤酒類は手にしない。(お酌もしない) ⑥飲めない人の横に座り、座が乱れ始めたら帰る。 ⑦酒席を飲まずに乗り切って、ほっとした帰り道や帰宅後、つい酒を口にしてしまうことも多いので、断酒仲間や医療機関スタッフに、酒席の事 前事後に電話報告をする習慣をつける。 酒のない生活に慣れるにはどうすればいいのでしょうか?酒を飲み続けていたころは、酒を飲むことでストレスに対処してきました。 人はどんなときにストレスを感じるのでしょうか。 ◆気持ちが落ち込むとき:仲間外れになっていると感じるとき、大切な人が自分のところから去って行ったとき、病気になったとき、パートナーとうまくいかないとき。◆何もかも投げ出したくなるとき:疲れ切ったとき、自分の能力の限界を感じるとき、たてつづけに失敗が重なったとき、自分ではがんばっているつもりなのに周囲に認められないとき。 アルコール依存症から回復するには、何よりも『飲まないでいる』ことが第一条件です。そこでお酒を飲まずに、ストレスに対処する方法を生活に取り入れていく必要があります。また、アルコール依存症者の中には、長年の飲酒の影響により病気(合併症)を抱えている人が少なくありません。この合併症は断酒すればすぐに治るわけではなく、断酒後も長く悩まされる場合があります。(例:糖尿病や高血圧)ストレスに対処するのと同様に、合併症とうまくつき合う工夫を生活に取り入れていく必要があります。◆体を大切にする ◇栄養:三食欠かさず食べる。それも主食(ごはんやパンなど)、主菜 (肉や魚、卵や豆腐などが中心の料理)、副菜(野菜や海草が中心の料理)など、バランスの良い食事を心がけましょう。 ◇運動:急激な運動は避け、散歩や軽い体操から始めてみましょう。適度の運動は食事をおいしくし、不眠を解消するのに役立ちます。 ◇休養 早寝早起きの習慣をつけ、十分に睡眠をとりましょう。疲れたら無理をせずにひと眠り。ゆっくりとお風呂につかったり、マッサージなどをするのもいいかもしれません。 ◆心を大切にする ◇腹が立ったりイライラしたら、感情にまかせて行動する前に、深呼吸したり、音楽を聴くなどしてリラックスしましょう。 ◇問題があるのなら、気持ちが落ち着いてから相手と話し合ったり、誰かに相談したりしてみましょう。 もうだめだと投げ出したり、自暴自棄になったり、自分を責めたりする前に、困っていることを断酒仲間や飲まないことを応援してくれる人に話してみましょう。話すことを通じて、「私がだめな人間だからつらいんじゃない」ということに気づき、問題が整理され、対処する方法が見えてくるかもしれません。 仮に自分が何もできていないように思ったとしても、断酒ができていれば自分にOKを出してあげましょう。 ◆衝動への備え:いくら対処していても、いつの間にかストレスはたまってしまうものです。 ストレスが大きすぎると、受け止めきれず、衝動的な行動に結びつきやすいものです。衝動に従い行動すると、そのときは満たされた気分になりますが、後になって後悔することが多くあります◇人からの働きかけに反射的に反応してしまう。◇ある考えが頭に浮かんで行動しようとする前に、それを実行するとどうなるのかを具体的に想像せずに実行に移してしまう。◇人から何かを頼まれたり誘われたりした場合、自分に問いかける時間を作らずに、即答してしまう。 周囲が見えなくなるほど、ある行為に夢中になることを『のめり込み』と言います。衝動的な行動をいくら続けていても、本当の満足感は得られません。そのため、ますます衝動性に駆り立てられ続け、のめり込みにつながっていきます。断酒後は、酒を飲む代わりに、ある行為にのめり込むことで、自分自身の劣等感や孤独感と向き合うことを避けてしまいがちです。のめり込みを防ぐために、「人のために〜してあげよう」を「自分のために〜しよう」、「普通なら〜しなければならない」を「回復のために〜しよう」 という発想に切り替えましょう。回復のためには、何を一番にするべきかを考え、優先順位をつけて行動しましょう。 酒をやめて、あなたは、「あれもしたい」「これもしなければ」とあせりを感じているかもしれません。しかし、回復はゆっくりと進んでいくものです。 断酒しても、様々なことが一度にできるようになるわけではありません。 社会的に認められる行為で、あなたの時間のすべてを埋めなくてもいいのです。例えば、仕事になかなか復帰できなくても、花をきれいだと思う、お風呂に入り気持ちがいいと感じる、この歌が好きだと思うことなども生きている中の大切な部分です。ゆっくりと自分を見つめてみましょう。 自分自身を大切にし、回復を第一に考えれば、やるべきことの優先順位も自然に分かるようになるでしょう。酒をやめ続けることは楽なことではありません。しらふで生きることを 支えてくれる場所へ進んで足を運びましょう。依存症者にとって、セルフへルプグループは一番のいやされる場と言えます。同じ病気からの回復を目指す人の体験談を聴くことで、やめ続ける勇気と生きるためのエネルギーがわきます。そして、自らも語ることで理解され、受けとめられ、いやされるでしょう。 しらふの状態で感じる自分のしんどさを認めましょう。 従来は飲酒で問題に対処してきたため、しらふで問題に直面するのは非常に困難です。しかし、しらふで生きることのしんどさは、あなたが幼いころからずっと抱えてきたしんどさ、生きづらさなのかもしれません。例えば、人間関係がうまくいかない、自分が生きていることの意味が見いだせない、自分にはいつも何かが足りないと感じていませんか? しんどいと感じることを自分が弱い人間だから、ダメな人間だからと決めつける必要はありません。自分にとって、「しらふで生きるのはしんどいのだ」ということを受け入れてあげましょう。 人間関係の立て直し(埋め合わせ)を図ろう。 自分のしんどさを認められ、自分に優しくなれると、周囲に目を向け始め、今まで壊してきた人間関係を修復しなければと感じるでしょう。しかし、あなたが埋め合わせや立て直しに取り組む前に、まず自分の人間関係にどのような問題があるのかを考えてみましょう。あなたは、次のようなことが思い当たりませんか。 ◆しらふの状態では、自分の気持ちを口に出すことができず、酒を飲むと言いたいことが言える。 ◆つらいことや困っていることを人に相談できない。 ◆いつも相手を気遣って気が休まらず、一緒にいるとストレスがたまる。 ◆他人を信じすぎる、または疑いすぎる。 あなたは、人間関係の立て直しをするため、まず、今までの人とのつき合い方を変えようとするでしょう。あなたがつき合い方を変えようとしても、相手がこれまでと同じように関わってくれば、元の関係に引き戻されてしまうかも知れません。しかし、そうなったとしても、相手や自分を責めたり、「人間関係の立て直しは無理だ」などと思う必要はありません。引き戻されたことに気づいたのは、あなたが変わってきたからです。たとえ相手が変わらなかったとしても、あなたが変わればいいのです。相手を変えようと思う必要はありません。まず、自分のために人間関係の立て直しや埋め合わせに取り組みましょう。 余暇を楽しみましょう。ゆっくりと時間を過ごすことに罪悪感を感じたり、なくしたものを取り戻そうとあせったりしなくなってこそ、心から自分の時間を楽しめます。しかし今までのあなたは、生産的なこと、成果をあげること、有意義なことにだけ興味があったのではありませんか? 前から実行したかったことや、中断していた趣味に挑戦してみてはいかがですか? 自分のしたいことで過ごす時間を心から楽しみましょう。 体の健康を気遣いましょう。人は、痛みや疲れを感じることができてはじめて、体をいたわることが できます。飲んでいたときは、体の健康にあまり注意していなかったのではないでしょうか。あるいは飲むことが一番大切で、健康への適切な配慮ができなかったかも知れません。例えば、飲みすぎるからといって、ウイスキーをいつもより薄めて飲んでも健康を気遣っているとは言えません。 断酒をして新しい生き方を続けていくには、やはり体が資本です。まず何よりも、体の声に耳を傾けるよう心がけましょう。 自己評価を高めましょう。楽に生きていくためには、「あるがままの自分でいいのだ」という感覚を持てるようになることが大切です。酒を飲んでいた頃のあなたは、「酒を飲まなければ何もできない」「私は嘘つきで、意志の弱い人間だ」など、自分に対する否定的な気持ちを持っていませんでしたか? しかし、あなたは今、断酒できています。それだけでも素晴らしいとは思えませんか。もっと自信を持ち、自分を評価してあげましょう。 再飲酒危機のサインとしての否認とその対処を学びましょう。再飲酒する前には、そのサインとして、まるで飲んでいたときと同じような否認や言動が見られます。 ◇一人で酒はやめられる。 ◇自分はアルコール依存症ではないのではないか。 ◇自分は節酒できるかもしれない。 ◇酒は自分の意志でやめられる。 ◇酒をやめてもいいことがない。 ◇酒をやめてやっている。 ◇酒をやめたのだから、問題はすべて片付いた。 では、再飲酒を防ぐため、具体的にどのような対処ができるでしょうか。◇セルフヘルプグループや医療機関とのつながりを大切にする。 ◇酒をやめている仲間との関係を育てる。 ◇疲労をためない、休息をとる。 ◇帰宅した時、すぐに食べられるものを常備しておく。◇飲みたくなったら、最後に酔っ払った時のことを思い出す。◇感情への対処方法(コーピング)を身につける。例)好きな音楽を聴く。 ◇今日一日だけやめる。その一日を積み重ねる。 回復過程としての再飲酒について。再飲酒は、決して取り返しのつかない失敗ではなく、回復を目指す多くの人が経験してきたことです。問題なのは、飲酒したことではなく、むしろ失敗したと感じて、否認や自分を責める気持ちを強めることです。しかし再飲酒した体験を通じて、自分がアルコール依存症であり節酒ができないことを自覚できれば、回復に生かすことができます。そのためには◇セルフヘルプグループに参加し、仲間の話を聴き、再飲酒の体験を語りましょう。◇通院している(いた)専門医療機関に行きましょう。 以前よりも敷居が高く感じられるかも知れませんが、勇気をもって出かけましょう。再飲酒の体験を生かし、そこからまた回復の歩みを続けていけばいいのです 第8章 家族が回復のためにできること アルコール依存症という病気は、病気になった本人だけでなく、一緒に生活している家族や周囲の人々までも、『病んだ状態』にしてしまうという特徴があります。 家族はこれまで、アルコール依存症者が酒を控えるように、または酒をやめるように、必死で努力してきました。しかし、酒をやめさせることも、 飲む量を少なくさせることもできませんでした。家族はそれに腹を立て、感情的になったり、落ち込んだりします。これが長年くり返されると、身も心もク夕ク夕になってしまいます。そして、依存症者が飲むことで頭がいっぱいなのと同じように、家族は依存症者のことで頭がいっぱいになってしまいます。依存症者のことに心がとらわれ、距離がとれない状態になってしまいます。これが『巻き込まれている状態』なのです。 あなたは、依存症という病気に巻き込まれていませんか。いろいろなことに目が向かなくなっていませんか。 次のようなことがないか振り返ってみてください。 ◆あなた自身が疲れきってはいませんか? 依存症者のことに気持ちがとらわれすぎて、自分の体の疲れにも気づかないことがありませんか。 ◆ぐっすり眠れますか? 「今晩も酔って帰ってくるのではないか」「飲み屋から電話がかかるのではないか」など、毎晩心配で夜も眠れない思いをしていませんか? ◆自分の感情がなくなっていませんか? 自分が何を感じているかよりも、人からどう思われるかを気にしすぎて、 自分が何を感じ、何をしたいと思っているのか、わからなくなってはいないでしょうか?◆自分のおしゃれなどを気にかけていますか? 最近自分のために洋服を買ったり、ゆっくり鏡に向かったりする時間を持っていますか。自分を大切にすることを忘れてはいませんか。 イネイブリングとはなんでしょうか? 巻き込まれた状態の中で、家族が良かれと思ってやったことが、結果として依存症者に酒を飲ませることになってしまうような行為を『イネイブリング』と言います。それをする人のことをイネイブラーと言います。イネイブリングとは具体的にどのような行為を指すのでしょう。そして、その行為がなぜ依存症者の飲酒の手助けになるのでしょうか? ◆酒を捨てる、隠す、こっそり飲んだ量を確かめる:家族のこのような行為に対し、飲酒欲求の抑えられない依存症者は、 「もっと上手に飲もう」「もっと上手に酒を手に入れよう」と必死になります。 ◆酔っている人に説教する、非難する:「お前がごちゃごちゃ言うから飲むんだ」という口実を与えてしまったり、 相手の暴力を引き出してしまう場合もあります。 ◆飲酒の言い訳に耳を貸す、 信用する:依存症者は、飲むための言い訳を必死で探しています。 家族が、その言い訳を信じている間は、飲み続けます。 ◆いやな思いをしても言わずに我慢する:依存症者は、飲み続けるために、自分に都合の悪いことは、必死で無視しようとします。家族のいやな思いをたとえ感じたとしても、無視して飲み続けます。 ◆飲酒による借金を肩代わりする:借金をした本人は、請求書を見ることもなく、借金に追われて困ることもなく飲み続けます。 ◆会社や親戚などに、本人に代わり言い訳をする:本人は、直接誰かに非難されたり、恥ずかしい思いをしなくてすみます。 飲酒で起こった問題に直面せず、飲み続けます。 ◆本人が酔って吐いたものや、暴れて壊したものなどを、本人に代わり後始末する:本人は、自分のやった不始末を見ずにすみます。また家族が後でそれを責めると、 責めたことが飲む口実になります。 ◆家庭内の役割を肩代わりする:家庭内の役割(働いてお金を稼いだり、食事の用意、買い物など)をのがれた本人は、飲むことを家族から許されたかのように思ってしまいます。 ◆暴力や暴言などを避けるために、酒を買う:暴力や暴言を防げるどころか、酒を手に入れるために、暴力や暴言はどんどん激しくなる可能性があります。 ◆「今度飲んだら、離婚する」など、できない脅しを繰り返す:単なる脅しとわかると、依存症者は、家族の言葉を聞き流して無視して飲み続けます。またこのような言葉は、依存症者の孤独感を深め、飲酒 欲求を高めることにもなります。 家族の心理について。アルコール依存症が進行していくにつれ、家族の巻き込まれやイネイブリングも進行します。では家族が巻き込まれたり、イネイブリングをする背景にはどのような心理(気持ち)があるのでしょうか。 ◆「家族の責任だから、家族で何とかしなければいけない」:家族の中に混乱が起こるのは、アルコール依存症が家族を巻き込む病気だからです。決して家族が原因ではありません。家族だけで何とかしよう と考える必要はありません。家族の力だけで治すことはできないのです。◆「誰も分かってくれない、誰も助けてくれるはずがない」:アルコール依存症に対する偏見や誤解が強いため、周囲の理解が得られません。それどころか、依存症になったことを家族のせいにする人もいます。 そのため、「誰も分かってくれない」と思い込み、必死で耐えてきたことでしょう。しかし、家族のアルコール問題に苦しんでいるのは、あなただけではありません。 ◆「アルコール依存症なんて恥ずかしい、隠していたい」:アルコール依存症が、誰でもなり得る病気であること、回復する病気であることを理解していないため、世間体を気にして隠してしまいます。こういう気持ちを持っていると、家族自身のストレスがたまるだけでなく、依存症者本人にも伝わってしまいます。 ◆「酒をやめることなんてできるはずがない」 断酒を試みながらも、失敗を繰り返す姿を見るなどして、家族も「断酒できない」と思い込んでしまいます。治療を受けていなければ、断酒できないのは仕方がありません。酒をやめていくには、専門治療とセルフへルプグループが必要なのです。 ◆「こんなに家族が困っているのに、飲み続けるなんて意志が弱いんだ」:もう飲まないと宣言しながらも飲んで、家族を困らせるなどするため、 家族は「やはり意志が弱いんだ」と思い込んでしまいます。依存症者は、飲みたいという気持ち(飲酒欲求)をコントロールすることができません。 どんなに強い意志を持っていても、病気の症状に打ち勝つことはできないのです。 ◆「家族は依存症者の被害者だ」:飲んで起こす問題に振り回され続け、家族は被害者意識を持ちます。家族を苦しめているのは、本人自身ではなく、依存症という病気自体です。本人も家族もこの病気の被害者なのです。 ◆「こんなに家族に迷惑をかけて、なぜ平気でいられるのだろうか」 どんなに家族に飲んで迷惑をかけても、反省しているようには見えないため、家族は本人の気持ちが分からなくなります。本人は、ほとんどいつも酔っ払っている状態なので、自分が家族にどんな迷惑をかけているのか、分かっていないかもしれません。家族が後始末をしてくれるので、現実が見えていないのです アルコール依存症に巻き込まれ、傷つき、悩んできた家族の方は、何もする気力が起きないほど疲れ切っているかもしれません。長い間、背負い込んできた大きな荷物を下ろすことは、最初のうちは抵抗や不安を感じるかもしれませんし、依存症者から攻撃を受けるかもしれません。しかし、あなた自身がアルコール依存症の巻き込まれから抜け出すために、ひいてはアルコール依存症に対処するために、次のことをしてください。あなたが楽になるだけでなく、本人にも変化が起きてきます。 ◆アルコール問題専門の相談機関などに相談しましょう まずは専門家に助けを求めましょう。初めは、少し勇気がいるかもしれませんが、アルコール問題をよく理解している人に、あなたが今まで抱えてきたつらい思いを話してみてください。きっとあなたを励まし、力になってくれるでしょう。 ◆家族やセルフヘルプグループに参加しましょう 依存症者のためではなく、あなた自身のために参加しましょう。あなたと同じように、家族のアルコール問題に傷つき、悩んでいる人に出会い、体験を 分かち合うことで、あなたは勇気づけられ、自信を取り戻すことができます。 ◆あなたの味方を作りましょう 依存症者から少し離れるために、家族以外に友人や相談相手を見つけるように心がけてください。あなたの以前からの友人や家族教室・セルフヘル プグルーブで、悩みを気軽に話せ、いざというときにあなたの味方になってくれる人を探しましょう。 ◆困ったことがあれば、何でも相談しましょう ひとりで悩んだり、耐えたりするのをやめて、小さなことでも誰かに相談するようにしましょう。専門家やセルフヘルプグループの仲間など、アルコール問題に理解のある人に相談することで、落ち着いて問題に向き合うことができるようになります。 ◆本人が酒を飲むか飲まないかは、気にしないようにしましょう 家族は酒を飲み続ける本人を見てイライラしたり、不安になったりするかもしれません。本人の飲酒に振り回されないようにしていくことで、本人が自分の飲酒問題に気づくことにつながります。 ◆酒が原因で起こった問題は、本人の責任に任せましょう。酔って迷惑をかけた相手に謝ったり、二日酔いで休む時に職場に電話するなど、家族が本人の肩代わりをしないようにしましょう。自分の問題は、自分で解決しなければいけません。 家族が肩代わりをやめれば、本人は困り、自分の飲酒問題に気づくことができます。 ◆したくないことはしないようにしましょう。依存症者の機嫌をとるために、酒を買うことなどはやめて、自分のしたくないことや、これからしないと決めたことは、本人にはっきり伝えましょう。暴力や暴言を受けそうになったら、その場を立ち去るようにしましょう。 ◆「わたし」を主語にして、話をするように心がけましょう。例えば、「わたしは、あなたが酒をやめられないことが悲しい」とか、「わたしは、あなたのそういう考えを聞いてとても傷いた」などと話すように心がけましょう。相手を責める口調になることを防ぎ、あなたの気持ちが伝わりやすくなります。 ◆自分のことに関心を向けましょう。あなたは、今までゆっくり鏡を見る時間も持てなかったのではないですか。少しの間、酒や依存症者のことを忘れ、自分自身に目を向けて、音楽や映画を楽しんだりして、のんびりと自分のためだけの時間を持ちましょう。これらのことを一度にしようとする必要はありません。アルコール依存症の回復がゆっくりと進んでいくように、家族も焦らず、少しずつ取り組んでいけばいいのです。家族が変わることで、本人は自分の飲酒問題に気づき、困り始め、飲み続けることが難しくなります。自分も変わらなければ、どうしようもなくなっていきます。まずは、勇気をもって、家族教室やセルフヘルプグループに一歩踏み出してください。そしてその体験を通して、自分自身の人生を見つめ直し、「自分のために生きよう」と思い始めることが大切なのです 第9章 親がこどもにできること世代を超えて伝わるものについて。アルコール依存症者とその配偶者のそれぞれ4分の1は、自分の親もアルコール問題を持っていると言われています。アルコール問題を抱えた家庭で育った子どもは、毎日のように、親の酔って暴力を振るう姿やだらしない生活を見せつけられます。そのため、「自分は親になっても、絶対にお酒は飲まない」「お酒なんてこの世から消えてしまえばいいのに」と、酒を飲む親はもちろん、酒そのものに対しても、とてもいやな気持ちを抱いています。また、アルコール問題を持つ親の飲酒行動に振り回されているもう一方のしらふの親に対しては、「かわいそうだ」と思いながらも、その生き方を「何かおかしい」と感じています。「自分は 親のようにはなるまい」と、両親を尊敬できずに育ちます。にもかかわらず、いつの間にか自分自身がアルコール問題を抱えていたり、またはその配偶者になっていたりします。まるで見えない鎖に縛られているかのようなこの現象を、『世代間伝播』または『世代間連鎖』と言います。 アルコール問題を持つ家庭で育った子どもたちについて。アルコール問題を持つ家庭で育った人は『アダルトチルドレン』 になりやすくなります。子どもはたとえそれがどんな親であっても、「親から愛されたい」「親 に自分の存在を認めてほしい」という思いを強く持っているものです。しかし、アルコール問題を持つ親は大抵アルコールのことばかり考え、一方、しらふの親は配偶者の飲酒問題ばかりに目が向いてしまいがちです。このようにアルコールのことで頭がいっぱいな親たちは、子どもがその日学校で 体験した出来事を興奮して話していても、飲みに出かけるチャンスをうかがってキョロキョロしたり、聞き終ったとたんに配偶者の悪口を言い出すなど、子どもの感情にゆっくりと付き合えないことがあります。 子どもたちは、親に振り向いてもらいたいのに、振り向いてもらえないので、傷つき悲しんでいます。そして親の愛情を求める裏返しとして、親を恨むようになります。このような感情を持ちながら、親が関心のあることや親の要求にあったこと、またそれとはまったく逆の言動をとるようになります。しかし、親の関心がないということを子どもたちは敏感に感じ取り、求めても満たされない飢餓状態を埋めるかのように、アルコールや薬物を求めてしまいます。あるいは、人に必要とされることでしか自分の存在が認められないようになります。このように行動するパターンを『共依存』と言います。この共依存が、世代間伝播(世代間連鎖)を生み出す、見えない鎖の正体なのです。 世代間伝播をくい止めましょう。アルコール問題のある家庭で育った子どもは、どんなに健康そうに見えても、傷つき何らかの影響を受けています。これらの影響から子どもを守ったり、子どもの回復を手助けするために、親ができることはたくさん あります。 まずアルコール問題を持つ親は自分自身の病気からの回復に、しらふの親は配偶者のアルコール問題に巻き込まれた状態からの回復に、全力で取り組みます。たとえアルコール問題を持つ親が飲酒している真っ最中であったとしても、しらふの親は率先して自らの回復を目指し、それと同時に、子どもたちをアルコール問題から守るためにできることをしましょう。 ◆アルコール依存症が病気であることを伝える:アルコール依存症者が酒を飲むのは、本人がだらしないからでも、子どもや家族のことが嫌いだからでもなく、アルコール依存症という『病気』の ためであることを、子どもたちに伝えましょう。アルコール問題を持つ親が、もし「お前たちのせいで酒を飲むんだ」と子どもたちに言ったとしても、それも病気の心が言わせていることを説明します。また、しらふの親自身も病気に巻き込まれているため、親らしい振る舞いができていなかったことを説明しましょう。そして、治療すれば回復が可能であること、また、しらふの親自身がその回復を望み、信じていることも忘れずに伝えましょう。これは、既にアルコール問題を持つ親が治療を受け、断酒し始めている場合でも同じです。『態度で表す』だけでなく、『口に出して伝える』ことが必要なのです。 ◆子どもには責任はないことを伝える。子どもたちは、「自分が怒らせるから、親がお酒を飲むんだ」と自分の言動を責めます。その上しらふの親から「あなたさえいなければ、今すぐ離婚できるのに」「あなたのことを思うと離婚できない」などと言われると、 自分の存在そのものまで責めてしまいます。親が酒を飲むのは病気のせい、 親同士が離婚しないのは親自身の問題です。子どもたちの言動によって家庭が明るくなったり暗くなったりするわけでもなく、誰かが殴られるわけでもないことを、具体的に説明しましょう。たとえ親の回復が始まり、アル コール問題が既に過去のことになっていたとしても、それらのすべての問題は子どもたちの責任ではなかったことを、はっきりと伝えましょう。 ◆親自身の問題に子どもを巻き込まない。夫婦ゲンカをした後に、子どもに相手の様子を見に行かせたり、何かを伝える役や悪口の聞き役をさせたり、「お母さんとお父さんのどちらの味方か」と選択を迫ったりしないようにしましょう。特に子どもが見ている前で、暴力を振るったり、ののしり合ったりするようなことは避けましょう。自分や子どもが暴力を受けそうになったときには、子どもと共にどこかに避難するか、人に助けを求めるなどの具体的な行動によって、自分自身も子どもも守ります。そうすることで、不当な暴力に耐える必要はないことを子どもに示しましょう。 ◆嘘をついたり、事実をごまかしたりしない。アルコール問題を持つ家庭では、それを隠すための嘘やごまかしがたくさんあります。例えば、親が酔っ払って大暴れをし、子どもたちも恐ろしくて眠れない夜を過ごしたのに、翌日には、両親はまるで何事もなかったかのように振る舞っているとします。このようなことを、何度も繰り返し経験しているうちに、子どもたちは、アルコール問題に関する出来事がなかったかのように振る舞うというルールを身につけます。そして、その時の感情についてまでも、感じていないかのように振る舞うようになります。また、親は酔って気が大きくなっている時に、「今度の日曜にはみんなで遊園地に行こう」などと、子どもを喜ばすような約束をします。しかし酔っているため、そんな約束をしたことすら忘れてしまっています。それをしらふの親に訴えたとしても、まともにとり合ってもらえません。このようなことが繰り返されているうちに、言葉が真実味を失い、子どもたちは信じてはいけないというルールを身につけるのです。これらのことを防ぐために、家庭内に起こった出来事について話しても、 否定されたり非難されたりしない安全な場を作り、その時の感情を口に出してもいいのだということを伝えましょう。また、しらふの親だけでも、実行できる約束を子どもたちと交わすようにし、もし約束を守れなかった場合には事情を説明し、素直に子どもに対して謝りましょう。「いろいろ、大変なのよ」「また後で説明するから」などの、その場しのぎのごまかしはやめましょう。 ◆不適切な大人扱いはしない。「どうしたら夫婦関係が良くなるだろうか」など、夫婦間の相談を子どもに持ちかけたり、判断や助言を求めるのは避けましょう。また、「あなただけが頼りだ」「あなたしか私のことをわかってくれる人はいない」などと言って、子どもを親の情緒的な支えにしないようにしましょう。こういうことが連続すると、子どもは「〜を買って」や「〜に連れて行って」などの、子どもなら当然持っている欲求を我慢するようになります。 手のかからない良い子も、単に自分の欲求を我慢しているだけかもしれません。どんなにしっかりしているように見えても、子どもは子ども(自我等が十分に育っていない)ということを忘れないでください。 ◆子どもの SOS を受け止めましょう。 子どもたちは、突然成績が下がったり、食事ができなくなったり、万引きを繰り返すなどの SOS を発することがあります。わかりにくい SOSもあるので、見落とさないように注意しましょう。 このようなSOSに見て見ぬ振りをしたり、頭ごなしに怒ったり、「あなただけはそんな子じゃないと思っていたのに」などと言ったりするのは避けましょう。そうでなくても子どもは、「自分が親を苦しめているのではないか」と大きな罪悪感を感じ、自分で自分を「だめな子だ」と思っています。 子どもと真剣に向き合って、子どもの立場に立って話を聞くように心がけましょう。 子どものSOSをきっかけに、親は世間体を気にして家庭内だけの問題として片付けようとせずに、アルコール問題を扱う専門機関に積極的に相談しましょう。また、子ども自身がセルフヘルプグループに参加したり、相談 援助を受けることができるように励ましてあげましょう。 ◆子どもの価値観を認める 子どもが自分と違う価値観を持ち始めると、親は自分が否定されたよう に感じて不安になり、「それは間違っている」と子どもの考えを受け入れようとしないことがあります。しかし、子どもは親の価値観を否定することで、親をのり越え、自分の価値観を獲得していくのです。否定し合うよりも、その違いについて認め合う方がお互いを理解できます。子どもが何か失敗しても、「だから〜した方がいいと言ったのに」などと責めたりせずに、「またやり直せばいいよ」と慰めてあげましょう。 ◆子どもを生きがいにしない。 本来、配偶者に向けられるはずの期待や、自分が果たせなかった夢や考えを、子どもに押しつけるのはやめましょう。親から「あなただけが生きがい」と言われると、子どもは、親のために生きることや親を喜ばせることだけが、自分の存在価値であるかのように感じてしまいます。親が望むようにできなければ、自分が不必要な存在になってしまうかのような不安を抱きます。子どもをそのような束縛から解放してあげましょう。今まで世代間伝播をくい止めるために、親ができることを挙げてきましたが、何よりも親自身が回復を目指すことが大切です。そして、親が回復していく姿を実際に見せることが、子どもにとっては何よりの励ましとなるでしょう。 自分自身の人生を生きましょう。家族の中で、一人一人が『ありのままの自分がOKとされていること』、 これが健康な家族関係の基本です。家族員のそれぞれが自分の人生を生き楽しんでいること、誰かのために家族が犠牲になったり、家族員の誰かが他の誰かのことを支配したりコントロールしないことが大切です。人は、自分の人生を本当に楽しんでいたら、人から否定されることを恐れません。また、人を否定して、自分を正当化する必要性も感じません。 それは自分の子どもに対しても同様で、たとえ子どもが親を恨んでいたり、 親を軽蔑しているように感じても、多少のショックはあるでしょうが、自分の親としての存在をすべて否定されたようには感じないでしょう。子どもが親を責めたとしても、自分で「自分は親として失格だ」などと自分を責める必要はありません。自分の人生を楽しむ方法を探し、子どもも自分の人生が楽しめるように励ましましょう。 『人生を楽しむ』という意味は人それぞれですが、依存や巻き込まれた状 態からの回復が第一条件であることは、誰しもに当てはまります。回復のためには、自分の目的に合ったセルフヘルプグループに積極的に参加することが有効でしょう。ゆっくりと焦らずに回復を目指しながら、あなた自身の人生の楽しみや生きがいを見つけていきましょう 【注意】アルコール依存症による疾病については、当ブログの【アルコールによる健康障害】シリーズで解説しています。【引用・参照】兵庫県精神保健福祉センターパンフレット 『Repeat~りぴぃーと~』東京都立多摩総合精神保健福祉センターパンフレット 『依存症についてもっと知ろう』『アルコール依存症』岐阜県精神保健福祉センター 『依存症リーフレット(令和6年度)』熊本県精神保健福祉センター 『知っていますか?依存症という病気のこと』大阪府こころの健康総合センター 『アルコールの問題で困っている人のために』厚生労働省 『依存症パンフレット』
2025.05.06
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【はじめに】 私は今回『傷つきやすいあなたが福祉実習を乗り越えるために』を執筆することにしました。なぜなら、傷つきやすい面もお持ちのあなた様にこそ、福祉を誠実に支える人材として活躍してほしいからです。 誤解がないようにお伝えしておきますが、実習で学べたことはたくさんありました。楽しいことやうれしいこともたくさんありました。それは本当のことです。でも、現実的には辛いこともたくさんありました。私は担当教員から助けてもらえませんでした。その上、テキストや学校の授業では教えてくれない内容がカギになってきます。その要点を提供するのが当プログラムの目的です。 私が福祉業界のキャリアをスタートした場所は、高齢者介護のデイサービスでした。当時、私はある男性利用者さんと出会いました。その人は認知機能がとてもしっかりされていましたが、彼が私に言った言葉は次の通りです。「介護の職員はなぁ… まじめで、やさしくて、まともな奴ほど早く辞めてしまうんだよ 。お前は早く辞めないでくれよ…」 彼の分析は非常に鋭いものだと私は思います。真面目で優しい方は、次のような特徴を持っています。1.優しい為に抗議が苦手で、ストレスをためこみ、無理し続けてしまう。2.他人が傷つけられる場面を見たら、心を痛めてしまう。3.だれかをを傷つけている行為を目撃したら、心が痛んでしまう。4.しっかりと福祉を提供しない状況に遭遇すると、余計に傷ついたり、失望したりする。 つまり「本当は福祉マインドを持ち、誠実に福祉をするためにふさわしい人材」であるにもかかわらず、福祉業界が抱える問題に対して余計に弱くなってしまっているのです。私は本当にもったいないことだと思っています。 もしかしたらあなたには、他の個性もあるのかもしれません。何かしらの精神障害や発達障害を持っている。過去に人間関係において傷ついてしまった経験がある。かりにそうだとしても、あなたが志した「福祉への思い」は、きっと本物だろうと思うのです。プロの専門職としての自覚(アイデンティティ)を持って、福祉を提供して、相手に幸せになってもらいたいと願う気持ち。もしあなたがその気持ちを持っているならば、是非とも福祉実習を乗り越えて頂き、今後あなたなりの方法で福祉に貢献して頂きたいと願っています。【目次】1.まずは安心して自分をみつめる環境を調えよう。2.指導者との付き合い方について。3.職員との付き合い方について。4.利用者さんとの付き合い方について。5.実践的な準備方法について。【1.まずは安心して自分をみつめる環境を調えよう】 このプログラムを利用するには、開始する前の準備が大切です。準備とは、あなたがこのプログラムを、安心して取り組めるための環境を調えることです。まず物理的な環境を調えましょう。1.落ち着いた環境でリラックスして座っている。2.できればすぐにおもいついた内容をメモできると良い。3.一人で行う。などの環境を用意します。 用意ができたら、次にこれから紹介するセルフトークを味わいながら読み上げてください。1分間に130文字位を読み進めるぐらいの、かなりゆっくりした速度で読み上げます。なお、紹介したセルフトークよりも、もっと自分の心が安心して納得できるようなトークを作れたならば、もちろん交換してかまいません。(セルフトーク)「わたしは絶対に自分を責めないことを宣言します。私がこのプログラムに取り組む理由は、実習に関する問題に対処するためです。私はたくさんの重要なことに気づきながら、自分を成長させ、安心を感じていきます。問題や、問題を生んでいる要因について、客観的かつ多角的に取り組んでいきます。そして今よりもずっと現実的な視点を持てるようになり、成長させた視点から自分をさらに理解し、反省もしていきます。 私は安心して、心の底まで自分を見つめてよいのです。また私が不安・怖いと思えるできごとは、全て過去に起こったもので、記憶の中で思い出すだけのものです。ですから、現実は危険な状態では全くありません。試しに目の前や周囲を見回してみましょう。(実際にみまわす)あなたにおそいかかる人が誰かいましたか? もちろんいませんね。あなたは安全な環境で、プログラムに取り組んでいるのです。」【2.指導者との付き合い方について】(ここからは黙読でもOKです) 指導者といえど、相手はひとりの人間です。ですから指導者を一人の人間として、尊重する気持ちや姿勢を忘れないようにしましょう。そもそも実習は、利用者さんの日常生活及び職員たちの日常業務活動の場に「お邪魔させて頂く行為」です。「お邪魔して学ばせて頂く」のです。我々が利用者さんの権利をおかすこと、それにつながる職員さんたちの業務活動を妨げることは厳禁です。ですから「自分が安心できて楽に実習を行う為に配慮する」のではなく、「利用者さんや職員さんたちを大切に思って配慮し、当プログラムの内容を実行した結果、ついでに自分が安心できて楽にもなれる」という点を忘れないようにしてください。 人間は長所と短所を併せ持っています。また環境からとても大きな影響を受けています。過去の経験(例:いじめ、虐待)に大きな影響を受け続けている劣等感の強い人も少なくありません。「寿支援者交流会」の事務局長を務めておられる高沢幸男さんは、私との面談の中で次のようなことをおっしゃいました。「福祉の仕事をしている人なんて大体、すねに傷をもっているものですよ」 世間一般の人たちの中には、福祉に携わる人に対して「福祉に取り組むなんて、立派で素晴らしい人だ」とイメージする人が少なくありません。ですが、私は断言します。福祉に携わる人たちも、他の業界や職種に携わる人と殆ど大差はありません。そして過酷な環境にさらされている分、(一時的に)むしろ攻撃的で意地悪な状態になっている人がたくさんいます。その事実は受け止めておきましょう。 指導者たちの実際の能力、やる気、持っている余力、おかれた環境などは、本当にそれぞれです。ですから指導者としての質や姿勢は、要はピンキリだと割り切って下さい。指導者に対して、自分の理想、希望、一般的に望ましいと思える物事を押し付けないようにしてほしいと思います。 そんなことを言っても、自分は授業料を払って学びに来ているのだから、まともに指導するのは当たり前だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが指導者たちは、置かれている状況(環境)から、あまりに多くの影響をうける存在なのです。極端な例ですが、三日三晩不眠不休で働いている状態で、あなたは新たなストレス・課題に適切に対応できるでしょうか? 「自分が正しい(はずだ)から、相手を正してやろう」という考えは厳禁と考えてください。特にキャリアのある方、優秀な方、自信過剰な方は要注意です。仮にソーシャルワーカー資格なら失格の心の姿勢です。理由は①自分の問題点を自覚しにくい ②素直に学べなくなる ③自分のやり方を押し付けてしまううえ、かかわる相手を軽視してしまうことにつながるからです。 最初からできないのは当たり前です。もちろんそれでいいのです。むしろどんな姿勢で実習の準備に取り組み、実習期間を過ごしたのか。あなたは実際どんな人柄なのか、等が大切になります。発展途上だと謙虚に認め、学んで行けばそれでいいんです。 指導者はとても多忙な存在です。いくつもの課題を同時に追いかけていることもしょっちゅうです。そして、自分以外の人間・組織の都合、催促に振り回されることも少なくありません。ですから、実習生のあなたの学習スケジュールを確認したり立案することは、優先順位が高くないこともありえます。従ってあなたは主体的に自分のスケジュールについて、予め理解して整理しておくことが必要となります。スケジュール手帳などを用意して、実習総時間、実習条件、実習期間などは予めできる限り把握しておきましょう。 指導者によっては、実習1日の振り返りを行ってくれる方もいらっしゃいます。まずこの点について感謝しましょう。実習の振り返りをしてくれない方(現実的に不可能な方)はたくさんいるのです。その上での話ですが、指導者の指導には絶対に反論しないようにしましょう。反論してしまうと、今後指導を受けづらくなってしまったり、低評価がつきやすくなったりします。 なぜ反論してはいけないのでしょうか。第1の理由は、指導者側に大きな心理的問題等がある場合、どんなに適切な改善や対応をしても、通用しないからです。第2の理由は、実習生側に不十分・不適切な要素があるからです(私も一部そうでした) 指導者はあなたと意見を交わす対等の相手ではありません。たとえ相手が明らかにまちがった言動をしても、正そうとしてはいけません。もちろん倫理綱領の中には、正すことを求めたり、批判精神を大切にすべきとあるかもしれません。その場合は、あなたが卒業して資格を取った上で、組織窓口等に情報提供をしましょう。 そもそも「指導者はいつも優しく、指導力を発揮して対応すべきだ」というあなたの一方的な思い込みは、非現実的です。確かに筋は通っているかもしれません。「授業料を支払っているから、実習先としての指導・教育効果を発揮するのは当たり前だ!」という主張は、因果が成立しています。でも、実態にそって考えると非現実的になってしまうのです。 指導者や職員は過酷な環境で働いています。しかも能力や姿勢などにも個人差があります。ですので、むしろ「やたら厳しいし、きつく当たってくるし、明らかに八つ当たりの時さえある」のが現実の場合があります。そのようなあまりに理不尽な場合、どう対応すればよいのでしょうか? 第1にいろいろ言われても、「はい、わかりました。」「はい。勉強になりました。」などの対応で済ませて、まともに相手の言動をうけとめないことです。要は心の中ではスルーするわけです。なぜなら、わざと八つ当たりをされるケースなどでは、何をしても無駄だからです。 第2に不適切に対応されたときに「指導者(職員)も辛いんだろうなぁ。対人療法の観点で言えば「心の悲鳴」なんだそうだ。「大変なんだろうなぁ」と、心中で同情します。 第3にできる限り実習指導者に日中はかかわらないように過ごすのも、現実的な一手です。ただし、避けていると相手にばれてはいけません。その分1日の振り返りなどで十分にコミュニケーションするなどのフォローも大切でしょう(心の準備ができるので、まとめての方が楽かもしれませんね) 第4に優秀な成績で実習をクリアする必要はないことを自覚しましょう。仮に実習先で不十分な評定が出たとしても、補講やレポート提出などで挽回できるケースも少なくありません。実習日程を全てクリアすることを最大の目標にして、質は二の次とする場合も、相手の理不尽度が高い場合にはやむを得ない現実的な対応(悪手ですが)として、ありえます。※大切なのは実際の場において、誠実に職務遂行できるかどうかですから。 あなたがもしもかなり若手の場合。指導者をまるで権威者のようにとらえてしまう可能性があります。そうした場合、次のようなリスクが考えられます。①相手の機嫌ばかりうかがい「心中でも」相手の言いなりになる。②自己否定ばかりしてしまう。③相手の言動を全てまともに受け止めてしまい、ストレスが異常に高まってしまう。 そうではなく、相手も(あなたも)「しょせんは人」であることを思い出しましょう。短所も欠点もある人なのです。また指導者の言動は、あなたの実習上の問題点における技術的・専門性の指導をしているだけなのです。加えて指導者には、あなたの人格や尊厳を否定する権限など、みじんもないことを覚えておきましょう。しょせんは、あなたの一部だけを取り上げて、自分の主観だけで批判などをしてくるだけなのですから。 実習生の中には、指導者を無駄に刺激しないようにして、実習を乗り切ろうとする方もおられます。利用者や職員の日常をおかさないためではなく、自分を守る為に目立たないようにして、その結果、指導者から注意やきつい指導を受けないようにするわけです。 確かに一部の場面では有効に働くかもしれません。しかしその姿勢は、利用者さんや職員たちの日常を大切にするという姿勢ではありません。 たとえ表面上は「静かに立っている」ようであっても、単に「指導者や職員を刺激しないように目立たずにいる」ことと、「利用者さんや職員たちの日常をおかさずに、不快感を与えないように留意しながら、細かく観察している」ことでは、天地の差があります。 指導者から現場における具体的な指示をもらえずに困るケースがあるかもしれません。しかし、あなたが実習で慣れてきたり、あなたの人柄、適性等を指導者が感じ始めた場合、指導者(職員)側から指示されることは十分にあります。あなたは現在、することがわからなくて困っているかもしれません。でも明日には相手からの指示や、課題提示があるかもしれないことを頭の片隅に入れておくと良いかもしれません。その為にも、あなたの最善を尽くし続けましょう(無理のある最善ではありません。) 指導者が未熟だったり、日中の実習生の活動を十分に観察できていない場合、指導者からの指示・課題提示が的外れのときがあります。指導者に嫌われて、嫌がらせやしごきの一環として、わざと困難な課題を出されることもあります。 しかし反論はせず、指示内容でわからない部分があれば具体的な追加説明を求めるなどをして、指導者と対立しないようにしましょう。実習は短ければ数週間。長くても数か月で終了してしまいます。そして、実習が終了して資格証が届いてしまえば、そういう大きな問題を抱える指導者とは一生関与しなければよいのです。(逆に一生大切に師匠として仰げる人がいたら、大切にしましょう。相互互恵の関係にしていけると良いですね) 指導者にもいろいろなタイプがあります。もしも相手が内心自信がなかったり、強い劣等感を持っていたりする場合はどうすればいいのか? あいさつなどを礼儀正しくするのはもちろんです。その上で、相手に対して自分が優秀である、できがよい、頑張っているといったアピールをすることは避けましょう。「出来過ぎ君」は嫌われがちです。 むしろ現場における事象について、無知であることを前提に、具体的に質問することを推奨します。具体的に質問する為には、事前にテキストも読んでおく必要があります。目の前で観られた具体的な事象について、学ぶ為に質問をするという本質を忘れないでください。その上で、ついでに相手の劣等感等への対策になるだけなのです。 あなたが試してみたいことについて、必ず事前に指導者に確認しておきましょう。なぜならばあなたには①クライエントが抱える見えない面を十分にアセスメントできていない ②今までの経緯が見えない、からです。また試行したいとお願いする際は、必ず①クライエントの利益 ②クライエントの同意 を盛り込む(形式的でなく本当に)必要があります。 もしもあなたの試みがうまくいった場合、あなたの実力や自信は向上し、クライエントの生活の質も向上することでしょう。同時に、職員等が嫉妬してくるリスクも発生します。学びと貢献をとるのか?リスクを避けるのか? それはあなたの価値観次第です。 指導者はあなたになるべく多くの時間をクライエントと過ごしてほしいと思っています。それこそが実習の重要な機能の1つだからです。そしてテキストで学んだアプローチや理論といった理屈を「あてはめる」行為よりも、まず実際を体験しつつ観て学んで、そこから感じられた内容が「よく考えてみれば〇〇に当てはまった」という経験を重視しましょう。 事前に出された課題において、いろいろな対応方法が載っている場合、その方法をいきなり実践しないようにしましょう。必ず実践前に指導者または有力な職員等に許可をもらうほうが無難です。例えば私は事前に自閉症の方に対して2語文でかかわるように予習させられました。ですので「自閉症の方には基本2語文で関わればいいのだ。いつもそうしよう」と思い込んで、相手の自主性を損ねるという失敗をしました。要は指導者等とのコミュニケーションが不足していたのです。 あなたの理解不足や、間違った試行によって、指導者の指示に従えていない場合がありえます。そうした場合、もちろん質問をして修正や成長を図るのですが、それでも同じことを何度も繰り返す方がいます。その問題への対応方法は、質問をとても具体的なものにするという方法が有効です。例えば「ある場面において、Xさんの〇〇という行動はどうして起きるのでしょうか?その際、話しかける対応法もあるようですが、他にどんな方法があり得るのでしょうか?」という具合です。場面や対象人物を限定して質問してみると、あなたの問題点がわかりやすくなることでしょう。 指導者がアイスブレイクしてくれたとしても、それで相手が友好的でノリがよく、話しやすい人だと思い込まないようにしてください。指導者はあなたが緊張しないように配慮してくれている可能性が高く、一方で冷静にあなたの人柄や個性を観察しているものです。絶対に調子に乗ってはいけません。たとえ友好的に話すとしても、あなたが体育会の1年生で、卒業したばかりのOB(3歳差)と話すぐらいのノリにしておいた方が、私は無難だと強く思います。【3.職員との付き合い方について】 もしも職員と何かしらもめてしまった場合、指導者はかなりの確率で職員側を支援します。今後も付き合いがあり、現在戦力として組織に役立ってくれていて、退職されたら困るのは職員の方だからです。 職員などから実習への志望動機をきかれることがあると思います。その際は自分の志望動機が、相手にどのように伝わるだろうか?と考えておく方が望ましいです。本当の理由が相手の望む理由でない場合は、本当の理由の一部分を活用して、相手が受け入れやすい理由に替えておく方が無難でしょう。 職員の言動を安易にまねてはいけません。職員の全員が、あなたが目指す資格の専門性をもっているわけではないのです。(むしろごく少数でしょう) 残念ながら手本にしようとしたその職員の言動は、不適切である可能性もあるのです。しかもその職員と別の職員が対立している場合は、あなたが問題行為をしているとして、指導者に密告されるリスクがあるのです。 実習の仕組みを知ってしまうと、指導者や職員のメリットはほとんど無いことに気づきます。その際に「みなさまに迷惑をかけたくない」ということを必要以上にPRする人がいます。相手に優しく聞こえる営業トークにも聞こえるこのセリフは、恩着せがましい、口先だけだ、などと反感を持たれるリスクもあります。 もしもあなたが取得する資格以外の有資格者であったり、何かしらの実務経験を十分に持っているなどの方である場合、職員たちはあなたのキャリア(実績)、資格、能力などをねたんだり、嫌がらせをしてくるかもしれません。たしかにそれらは理不尽なものですし、不快なものです。 でも実習先の職員は、全員があなたの指導者(SV)ではありません。いろいろな立場の方々が、働いておられます。中には不十分な能力、適性、専門性などで業務上苦労していたり、過酷な環境で強いストレスを受けている状況等もあり得るのです。 嫌がらせをしてくる人たちを愛そう、とまでは言いません。でもその大変さに共感して、「苦しいのだろうなぁ…」と心中でいたわる気持ちがあってもよいかもしれません。間違っても自分の心を守る為に(=防衛機制)、相手をあわれまないようにしましょう。 少し現場になれてくると、いじられキャラの職員がいる場合、あなたは他の人と同様にちょっといじってしまいたい衝動にかられるかもしれません。ですが、それは絶対にしてはいけません。厳禁行為です。 人の信頼関係の構築における段階には次のようなモデルがありますが、短い実習期間では、進んでも「実験の段階」までで十分です。「関係強化の段階」まで進もうとすると、仲がよくなるか、逆に(ひどく)対立するリスクが生まれます。なお冗談も同様です。(人間関係の発達の5段階)1出会いの段階:簡単なあいさつを通して、人間関係をすすめるかどうかの判断が行われる。2実験の段階:簡単な自己紹介、表面的な世間話やおしゃべりを通じて、お互いのことを探りあう。実はこの段階でストップする人が多い。実習先で交わされる多くの交流はこの段階までです。交流してお互いを認める為、対立した関係になりにくく、孤独感も感じにくいメリットがあります。3関係強化の段階:性格、家族、価値観などについて内面的なコミュニケーションが行われる。親密な関係になり始める。4統合の段階5結束の段階 自分の弱みをむやみに職員(や幼稚な指導者)に見せないことも大切です。自分の弱みを見せるというのは、「実験の段階移行」の段階で行われるものです。にもかかわらず、段階を無視して効果がみこめない行為をしてしまうと、どうなるでしょうか? 疲労して過酷な環境で労働する指導者や職員たちは、むしろあなたを攻撃の対象としてみなしやすくなってしまいます。ですから実習先の職員とは、礼儀正しく敬語を使って、終始対人距離を長めにとっておく安全第一の姿勢で交流しましょう。 そして実は、あなたの存在が未知である職員や指導者も、頻繁に来訪しては去っていく実習生たちに対して、必要以上に深い交流をするのを避けている可能性は高いのです。相手の負担も感じとりましょう。 あなたが社会人である場合、あなたは場面によっては即戦力性を発揮して利用者さんとかかわれるかもしれません。しかしそれは職員からねたまれる可能性があるリスク行為であるうえ、そもそも職員の日常的な支援の様子を観察して学ぶという実習から逸れた行為になってしまいます。職員の日常への侵害ですし、実習と労働をはき違えた行為です。 やることが無くて焦ってしまう。行動していないとアピールにならないと不安になってしまう。そういう気持ちは理解できますが、モデリングで習った通り、未熟な実習生は手本を観察することで非常に多くを学べる存在です。またあなたがソーシャルワーカーを目指しているなら、「かかわり」がいかに重要であるかを習ったはずです。「かかわり」には観察しつつ見守ることも含まれていましたね。 ですから焦らずに、相手に不快感をあたえないように留意しながら、観察することからも学ぶことです。繰り返しになりますが、かかわりには見守りや、一緒の時間を過ごすことも含まれています。何が相手のニーズに対応し、相手を本当に大切にすることなのかを考えて対応してみましょう。 「自分が実際の業務を手伝えば、職員たちは楽になるはずだから良いはずだ。」これは思い込みで決めつけです。繰り返しますが、学びに来ていることをわすれない言動を心がけましょう。ただし相手が手伝いを要求してくれば、実習生には「準職員」の面もありますので、前向きに支援しましょう。そこから見えることも、学びにつなげてください。 では実習生はずっと能動的にかかわらなくてもよいのでしょうか? もちろん違いますね。実習という視点で見ても「指示待ちすぎる姿勢」だと感じられると、周囲の職員や指導者から苦言を言われたり、場合によってはきつく怒られたりすることもあり得ます。 手を出してもいけないし、指示待ちで何もしていないのもいけない。じゃあどうすればいいのか?という声が聞こえてきそうです。その場合は、指導者からの指導内容を最優先しましょう。利用者さんとのコミュニケーションが足りないと言われたら、コミュニケーションする取り組みを増やしてみることが大切です。職員から苦言を言われても、指導者からの指示が出ている旨を伝えましょう。その上で、現場の職員の新たな指示に従うか、とりあえず行動しておいて、その結果を指導者に報告するかします。 職員と一対一でコミュニケーションをしているときは良好な感じだった。でも一対集団(いつものグループ)などになった場合、急に良好な交流ではなくなった。この変化に驚かないでください。相手にも今までの流れがあるのです。グループや組織内の立場などもあります。一対一で見せた姿も、グループ内で見せた姿も、両方とも相手の本物の一面なのです。なお初対面での一対一でのコミュニケーションでは、大体の人が様子見も兼ねてかなり慎重に行ってくるものです。この姿が当たり前だとは思わないようにしましょう。 職員が許可したから、勝手に実行してしまうのは止めましょう。あなたに指示する権限があるのは、指導者だけです。【4.利用者さんとの付き合い方について】 利用者さんとの付き合い方は、教科書や授業を一番生かしやすい内容となります。教科書の内容や授業で習った内容を大切にして、倫理綱領なども守りながらかかわり支援すれば、十分に学べることが多いと思います。 あえて私から伝えるならば、利用者さんを観察すると言っても、実験対象のように観察しないように注意します。つまり相手(職員を含む)の不快感、プレッシャーなどを上手に感じ取って、相手のいつも通りの言動をおかさないように観察します。【5.実践的な準備方法・教員との付き合い方について】 日頃電車通勤していない人は、満員状態のデイリーハッスルなど、かなりのダメージを通勤から受けてしまいます。予め軽減の準備をしておくとよいでしょう。私は一定区間を自転車で通い、リフレッシュしながら通学していました。(事故の際の保険適用等では不利になる可能性があります。ご注意ください) 通勤電車で座れる場所をリサーチしておきましょう。私は一度全く同じ時間帯・曜日に電車に乗ってみて、座れる場所をリサーチしてみました。なお、ホームの端に立って、入ってくる電車の全車両をざっと見ていけば、空いている車両の目途がつけやすくなります。 くつは良いものを使用しましょう。インソールの活用も効果的です。疲労度が全く違ってきます。また事前に体を鍛えて、基礎体力を挙げておきましょう。現場ではクライエントと散歩する、ほぼ一日中立ち業務であることもざらです。ですので、しばらくじっと立位でいるというトレーニングも基礎体力向上とは別に行う方がよいでしょう。減量も有効です。5kg減るだけで、負担が大きく変わってきます。 食事の準備は、施設側の都合に全て合わせましょう。(あなたに摂食上注意する疾患があるなら別ですが)そして昼食は利用者さんと一緒に食べながら、そこからも学べると良いと思います。つまり実習期間中に、休み時間は無いとお考え下さい。 通勤時間にレポートを(一部)作成するようにしましょう。完成させることができなくても、各内容のネタをピックアップする、一部の文章をスマホで作成して、自分のパソコンに転送して、貼り付け機能を利用する、などの工夫が、塵も積もれば山となります。 実習スケジュールにもしも調整の余地がある場合、例えば週に3回の実施と、6回の実施では負担が大幅に違ってしまいます。何を当たり前のことを…と思うかもしれませんが、多くの人は交渉・調整の余地があるにも関わらず、一方的に相手の最初の条件を受け入れてしまう傾向にあります。可能であれば、教員に調整を依頼しましょう。教員から自力での交渉を振られた場合でも、誠実に必要性を訴求しながら週4回以下の実習実施を交渉してみることをお勧めします。 ただし大前提として、あなたの実習上の権利よりも尊重されるのはクライエントの日常生活と、職員たちの日常支援(業務)です。その点はきちんと踏まえておいてください。 実習中に各ネタが無くなって困る人もいらっしゃいます。そうした人は、実習前の準備として「ネタ候補集」を作成しておくとよいと思います。実習に関するテキスト1冊を読んでいく中で、例えば「ストレングスの見つけ方」「エンパワメントの仕方」「最初の会話やかかわりでのラポール形成のこつ」などといった具合に、キーワードを含めて実習日程の1.2倍以上のネタをリストアップしておけば、かなりの助けになるはずです。 もしもあなたがたった1人の親しみやすい職員を見つけられたなら、それはとても幸運なことです。(メンタークラスであれば最高ですね) 福祉の業界にはそうした尊敬に値するような人柄の方も、少数ですが一定数いらっしゃいます。 実習は複数回、または複数クールに渡って行われる場合があります。その際の基本は、初回の反省を次に生かすという姿勢です。ものすごく効果があります。 施設にいる看護師さんには、特に曲者が多いように思います。基本的には病院やクリニックで勤務するはずの看護師さんが、何かしらの事情で施設勤務しているわけです。その場合は人間性、心的問題がある場合も少なくありません。彼女たちは自分の心を守る為に(防衛機制)、プライドが高い、間違いを認めないなどの傾向があるので、一目置いた対応をする方が無難だと思います。もちろん最初から曲者扱いするのはよくありません。かかわってみて、曲者である可能性が高い場合に、やむを得ず行う対応だと思ってください。 学校の教員がもう一人の指導者(SV)になってくれるケースが殆どだと思います。信頼関係を構築しておき、自分一人では対応しきれないケース(非常に困難、あまりに理不尽等)では積極的に頼っていきましょう。定期的な巡回はあると思いますが、それに加えて1.早めの相談2.独断専行して一人で解決しようとしない(例:指導者の上司に報告する)3.教員が実習先について詳しい情報を持っている場合、事前に教えてもらっておく。を行っていくと良いでしょう。 実は…学校側の教員に問題があるケースも考えられます。学校の教員は何十人もマネジメントしなければならず、来年度以降も実習先を確保し続けなければなりません。一方、あなたはお金をもう払ってしまっています。利益確保上は、もう用済みというわけです。 およその教員はしっかりと指導・支援してくれると思います。でも万が一、教員が全く支持的でない場合はどうすればよいのでしょうか? 実例を挙げておきます。教員も人ですから、やる気の高低、あなたとの相性、教員本人が置かれている環境などが影響してきます。私の指導教員は次のような言動をした方でした。・実習中の休日は十分休むように言っておいて、休んだら「バカンス楽しんでますねぇ?」と嫌味を言われる。・「実習は1日でも長く期間を稼いでもらわないと困る!」とどうせ実習中止になるだろうと発言しておいて、「あなたならきっと実習をやりとげられます」とビジネススマイル。・私からの相談等の電話に対し、居留守を使う。・施設でおきた問題行為(例:「うちでは虐待がありますよ」発言や、実際の虐待行為)について、一切認めようとしない。・一方施設側の私に対する評価は、全て鵜呑みにする。・施設指導者と私が対立したことが明るみになった際、「私の顔に泥を塗って!」と赤面して切れる。 こんな指導力・指導姿勢でした。ですから私は、困ったことを実習先の指導者に相談して対応しました。これが対応法その1です。対応法その2は、このプログラムを熟読して頂き、指導力不足の教員の支持機能の代わりとして活用することです。【終わりに】 福祉の仕事は大変です。かつて教員の離職・病休問題において実施されたアンケートがありますしたが、教員の仕事は「ストレスも強いけれど、やりがいも大きい」と感じられていました。私は福祉も同様だと思っています。その上優しくて誠実なあなたを、クライエント(利用者さん)は待っているはずです。共にあなたと何かしらの形で福祉にかかわれることを心から願っています。実習頑張って下さいね。応援してます。
2025.05.04
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