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「死亡した牧瀬って、占い師で有名な七哲庵の一員だったよね? もみ合いの末殺されたみたいだけど、どうして細野さんが重要参考人?」
「近所の通報から警察が駆けつけたところに飛び出してきたんだと。メールかなんかで呼び出されたって言ってるけど、そんな状況じゃ怪しいもへったくれもないなぁ。お、香時計ある」
「香時計?」
「線香みたいなもんでな、火つけて燃えた長さで距離測るんだ。あれぐらいのものだとだいたい一本四十分、半分で二十分くらいか……ま、だいたいってところだが、占い師の牧瀬さんはいつも絶やさなかったらしい。ほぼ燃え尽きてるな……」
「午前一時、牧瀬さんから高村さんを殺した犯人がわかったから来てくれとメールがあって、駆けつけた頃にはもう殺されていたそうです。で、京都府警で知られていないことを悪用してやってきました特命係」
「そういえば、四角いものがあった跡が現場にあったけど、あれなんだろうね?」
「そこに何かあったと考えるのが自然だな。しかし現場にも牧瀬さんの荷物にもない。それと、あの香時計は二本燃えていた。となると、約八十分。その時現場にいたってことは、死体発見は二時だから零時二十分から八十分間ずーっとその場にいたことになるだろ? でも、燃えた線香を調べると一本半しか燃えていなかった」
「となると……細野さんが呼ばれたメールってのも偽装だな。犯人が罪を被せるために呼び出したんだろ。となると、線香は本当の犯行時刻をずらすために、線香を燃やし足したんだな」
「恐らく、110番通報も犯人の仕業だろう。細野さんの容疑は晴れたな。しかし、例の置かれていたものとはなんだろう。犯人が持ち去ったなら、例の利休に関わる代物……む、細野さんから教授の遺稿とやらを貰ったぞ」
「で、京都での違法捜査がバレて刑事部長に怒られてたら、官房長から呼び出し食らいました。あれ、官房長の隣にいるの、前に逃がした怪しい男じゃないですか」
「この人、厚労省の人だったんだって。iPS細胞の研究を細野さんが担当していて、その情報が外部に漏れないよう見張ってたんだって。まあiPS細胞が実用化されたらすごいからね。絶対に外部に漏れちゃいけなかったんだ。で、高村さんが殺された日は関連企業とのツメの会議していたとアリバイ成立だね」
「だが、まだ事件は解決していない。やはり京都に戻る必要があるな」
「ん、なんだ神戸……なに、細野さんとは別れたわけじゃなくて、突然消えた?」
「大学四年の頃、お互い上手くいってたのに、急に大学を辞めて京都に引っ込んじまったらしい。連絡もつかずそのまま……何かあったと考えるのが自然だな。細野さんはまだ何か隠してるみたいだし、事件以上に気になっちまうぜ」
「高村さん、東京で学芸員の方にある茶器を鑑定してもらおうとしていました。なんでも、歴史をひっくり返す千利休の幻の茶器とか」
「恐らく、細野教授は幻の茶器に関連してあの四つの謎に関わる大発見をしたんだと思う。でも、それを発表する前に亡くなってしまい大発見も封印されたままだけど、誰かがその遺稿を見つけたんだ。その遺稿にある年号だけど……単なる歴史事実の羅列じゃん」
「最初の記述が遣明使になっている。これは信長も利休も関係してないから、『明』そのものに意味があるんだな。当時の茶器は大抵中国から輸入されたものだから、その幻の茶器も明産なのは間違いない――しかし、それがどうして四つの謎を解くカギになる?」
「――まさか、明の国王直々の贈りものとか? しかも日本国王への」
「お、さすがはヘレナだな。そうなるとこいつは貴重なんて話じゃない。当時明の国王から認められるということは、その国の正統な王になったという証でもあった。それを持つ者こそが日本を治めることができる。それが信長が手に入れたとすれば――」
「そして、信長は利休に鑑定させたんですね。だからこそ上洛し、本能寺で公家相手にやたら大規模な茶会を開きました。恐らく、例の茶器を公家衆相手に見せることで天下人の証を見せつけたんですね。しかしその翌日に本能寺の変で殺されます。……ひょっとして、光秀はその幻の茶器を奪うために信長を襲ったんじゃないでしょうか。でも見つけられなかった。だから安土城へ向かって探しましたが発見できず、みすみす討たれてしまう」
「それを利休が預かってたってこと? たしかにその茶器を持っていれば政治的に絶大な発言力を持てるね。秀吉も重用せざるを得ないわけだ。でも、だったらなんで殺したのかな?」
「多分、幻の茶器を秀吉に求められたのに断ったんだろうな。信長との忠誠を守ったのか、はたまた秀吉の美的センスが気に食わなかったのか……黄金の茶室とか作って、わびさびとは逆方向に行ったからなあ。だから切腹されたのか」
「おお、すげえじゃねえか。幻の茶器があるって前提だけで謎が全部解けたぞ」
「しかし、その幻の茶器とやらはどこへ行ったんだろうな?」
「遺稿には、後年利休が贔屓にした陶芸家の田中長次郎という人のことが書かれていました。その子孫のところへ高村さんが訪れて、茶入れを持って行ったらしいです。それが幻の茶器でしょうか? おや、古い巻物に何か書いてありますね」
現実VS虚構(ニッポンVSゴジラ) 2016.08.31
レビュー企画 相棒Legend12 2015.09.20
レビュー企画 相棒Legend11 2015.07.28
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