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何がいけなかったのか。
どこが悪かったのか。
自分でももうわからない。
いや――本当はわかっている。何がよくなかったのかは。
それはきっと――間違いなく、
私が生まれたこと自体が、誤りだったのだ。
「急用とはなんだいきなり。人を何の説明もなく呼び出してどういうつもりなんだフォルトは……ん?」
「…………」
「あれは……ヘレナ殿か? こんなところで何をやっているだろう。おい、ヘレ……」
「…………」
「……!?」
「それでそのまま去っていくのを黙って見てたの?」
「追えよ! 馬鹿野郎!」
「私はヘレナ殿が行方不明になってるなど知らなかったのだ! しょうがないだろうが!」
「しかし、貴方すら震えさせるほど殺気放ってたって、それ本当にヘレナだったの?」
「ああ、それは間違いない。ちゃんと顔を見たからな」
「そうなんだよなあ……雰囲気だけがまるで別人なんだよ」
「もしかして……ヘレナの不調は麻紀が目撃する前から始まっていて、夢遊病みたいなの起こしてたんじゃないかな? それだと色々説明がつくんだけど」
「その可能性は高いですね。まあいずれにしろ、今はヘレナを見つけるのが先決でしょう。迦稜さんが目撃したところを中心に捜索しないと」
「フォルトは? あいつなら一人で全部見回せるでしょ」
「おうよ! 一刻も早く見つける必要がある! 時間がない、神速……!」
「ダメ、早すぎて見逃すから」
「う……」
「じゃあローラー作戦でいくしかないか……場所は?」
「ここら辺は……例の城があるあたりじゃない? 昔金持ちが建てさせたけど、会社が潰れて夜逃げして今は廃墟と化したっていう。まあそんなとこに彼女が用があるとは思えないけど」
「じゃあそこは私が担当しましょう。皆さんは他のところをお願いします」
「わかった。ところで、静馬はどうした」
「部屋でヘレナの祖国に関する資料読んでるよ」
「は? 何をやってるんだあいつ、この状況で……」
「いんや、あいつも頑張ってるのさ……あいつなりのやり方でな」
この道しかない。
こうすれば、私は確実に後悔する。それはわかりきっていた。
だが、だとしてもこうするしかなかった。私が欲するもののために。私が私が証明するために。
私は……我自身に嘘をつかないと決めたのだから。
「――ああくそ、データが少なすぎる。閉鎖的で他国との交流が少ない国ってのはわかってたが、これじゃ何も分からん。ヘレナが出てった気持ちもわかるわ。きつすぎる。……まあ、あいつはそんな理由で出奔したんじゃないだろうが」
「とにかく、今ある資料で読み解くしかないんだが……あいつの悪夢の原因、現実とも妄想とも区別つかない苦悶の元凶……そして、ドッペルゲンガー。果たしてこの中にあるのか? ううむ」
「――そうだ。麻紀たちが見たっていう二本の剣。これがなんらかの鍵になるかもしれん。ええと、写真写真……」
「――え?」
「な――んな馬鹿な……!」
つづく
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