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「ここ……ですか。例のお城っていうのは」
「やれやれ、成金ってのはどういうセンスしてんでしょうね。こんな気色悪いとこに住んでて平気だったなんて信じられません。――あれ」
「人が通った跡がありますね。ちょっと足跡とかは分かりづらいですが……行ってみますか」
『――もしもし、静馬だ。みんな話せるか?』
「? 通信?」
『おう、こっちは問題ないぜ』
『ヘレナなら、まだ見つかってないけど……』
『いや、その前にみんなに伝えておかなきゃならないことがあってな。ヘレナに関することだ』
『なに?』
『ヘレナの祖国の国旗って知ってるか?』
「ええと……たしか、王冠に突き刺さった剣でしたっけ」
『武力によって作られた女系国家なのだろう? それくらい知ってるぞ』
『そう――王冠と剣は国の象徴でもあるそして、その王冠と剣は実在するんだよ』
『なんですって』
『……お前らが見たっていうヘレナ、腰に剣を二本差していたんだよな?」
「ええ、間違いありません」
『それは断言できるぜ、なあ迦稜?』
『ああ』
『――そいつはヘレナじゃない』
『え?』
『仮にそれがヘレナだとしても、俺たちが知るヘレナではあり得ない――』
『な、なんだそりゃ?』
『あいつの祖国ではな、剣を二本帯刀することはタブーなんだ。まあこれは昔の話で、今は別に禁じられてるわけじゃないみたいだがな。それでも公式の場なんかじゃやっちゃいけないんだ』
『なんでよ?』
『さっきも言ったろ、王国の象徴たる王冠と剣――初代女王が持っていたそれが、今もなお引き継がれてる。その時代の女王陛下にな』
「……!」
『その剣、鞘と柄が赤かったか?』
『あ、ああ……』
『歴代の女王は、戴冠するとその剣と当代最高の鍛冶師に自分の剣を作ってもらう決まりだ。故に、二本帯刀することになる』
『それじゃ、二本差ししてるってことは……!』
『ああ、その剣はただの剣じゃない。初代女王から引き継いだあの剣は、王国女王の正統後継者たる証なんだ――』
「…………」
『ちょっと待て! 正統後継者って、あいつは……!』
『そう、国を出奔した時点であいつの王位継承権は消滅した。剣も今は王位を引き継いだ姉さんが所有しているはずだ。だから言ったろ、ヘレナが二本帯刀していることはあり得ないって。ヘレナはもう、その剣を手にすることはできないんだから』
『……もうわけわかんないわね。こうなったら、本人に直接直談判するしかないわね。さあ、探すのを再開しま』
「いえ、それは必要ないと思いますよ」
『あん?』
『どういうことだ、麻紀』
「いやだって――」
「本人、ここにいますから」
【…………】
『んな……っ!』
『ええっ!? そこにヘレナいるの!?』
「さあ、てね……それで、一つお聞きしたいんですが」
【――なにか?】
「貴方、どちら様ですか?」
つづく
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