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【どちら様? 我がヘレナではないと申すのか?】
「ええ、貴方はヘレナではありません。なんですかその妙に堅苦しい喋り方は。あと『我』なんて一人称使う人初めて見ましたよ。――それに」
「ヘレナはそんな冷たい目をしません。私を、人を――自分以外この世のすべての物を嘲ったような、そんな薄汚い目は」
【……ふ、ふふふ】
【まあたしかにな。我はヘレナ・マリュースではない。もはやその名は不敬だ】
【だが、我がヘレナ・マリュースで“あった”こともまた事実だ】
「え……?」
【理解できぬだろうな。貴様のような愚民では。またその必要も是なし】
【ただ、貴様は我に切り捨てられれば善なのだから!】
「っ!」
【切捨御免! でえええええええええぇぇい!!】
ガキイィン!!
『ま、麻紀……? おい、返事しろ! おいっ!』
「――え? あれ、私どうして無事……?」
「なんとか……間にあったか?」
「あ……!」
「無事なようだな。良かったよ」
「無事とかはこっちの台詞ですよ! 貴方今までどこに……いえ、そりよりも、貴方は、貴方が……」
「心配するな。私はヘレナ・マリュースだ。――お前が知る、ではあるがな」
「な、なんですかそれ?」
「正直、私にもわからん。ただ、はっきり言えることは……」
【…………】
「この女が、私を散々苦しめた悪夢の元凶ということだ。探し回った甲斐があったぞ」
【ふん、ようやく会えたな、我が映し身よ】
「何が映し身だ、人とそっくりな顔をして帯刀までしおって。その剣をどこで奪った? 何故私の姿をしている」
【奪った? 何をほざく、この剣は最初から我の所有物なるぞ】
「な、何を言っている。その剣は今は姉上の……」
【姉上? あの人がいいばかりで愚劣な女のことか?】
「な……!」
『ちょっと、そっちどうなってるのよ。何が起こったの?』
「どうもこうもありません。ヘレナが二人いるんですよ」
『はあ!?』
『やっぱりドッペルゲンガー!?』
「かどうかはわかりませんが、二人とも違う部分を探せないほど似ています。とりあえず、後から来た方が本物には間違いないですが……」
『もしや、タクティカルレッドの刺客か!?』
『いや、にしてはなんか変じゃねえか?』
『――まさか。いや、そうとしか考えられん。麻紀、その偽ヘレナとやらにスピーカー向けろ!』
「え? は、はい」
『……ヘレナさん、でいいのかな? いや、そう呼ばないほうがいいか?』
【ほう? 貴様、我が何者か承知しているようだな。愚民にしては上出来だ。褒めてつかわす】
『そりゃどうも。なら、不躾を覚悟で聞かせてもらいましょうか……おたくの名前は?』
【……ふ】
「うん?」
【ふはははは、くははははははははっ!】
「な、なんですかこいつ?」
【よろしい、ならば名乗って肯じろう。厳粛に、感謝して聞くがよい。
我の、我が名はたった一つ。
栄光ある神聖シルヴィア王国女王、国家の象徴たる聖剣『シルヴィア』
その唯一にして絶対の正統後継者
女王シルヴィア・マリュース十八世なり!!】
つづく
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