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『な、んだとぉ?!』
『何言ってるのさ! シルヴィア・マリュース十八世はヘレナのお姉さんじゃ……』
『その姉を殺して、剣を纂奪したとでもいうの?』
「いや……違うな」
『む?』
『今さっき確認した。ヘレナの姉さん……シルヴィア・マリュース十八世は生きてるよ。無論剣も一緒だ』
「じゃあ、目の前にあるあれはなんですか!?」
【そうだ、あの女は生きてるようだな――『こちら』では】
「こ、こちら?」
『なんのことだ?』
『忘れたのか、これとそっくりなことが前にもあったろうが!』
『――! カイゼルのことか!? それじゃ、この女まさか……!』
【正直、最初は我も驚きを禁じ得なかったぞ。いきなりこんなところへ来たかと思えば、わけのわからん夢に苛なまれる日々】
「私と一緒? では、貴様いったい……」
『やはりそうか――いいかヘレナ、よく聞け。そいつは間違いなくお前じゃない。でも、ヘレナ・マリュースなのは事実なんだ』
「はい? なにをわけのわかんないことを言ってるんです」
『お前は姉に迷惑がかからないよう、国を出奔してLEに入社した。それが俺たちが知るヘレナ・マリュースだ。だけど――もし、それを選んでいなかったら?』
「え――」
『落ち着いて聞け。そいつは、いいや、そいつ“も”ヘレナ・マリュースなんだ。ただし、国を出ず、女王の証たる王冠と剣を手に入れたヘレナ……』
【愚姉を自ら斬り捨てることでな。ふははははははははは!】
「な――んだ、って」
『こちらとは別の歴史を辿った、平行世界のヘレナだっていうの!?』
「そんな……そんなことあり得るんですか!?」
『昔あったのよ、私たちの仲間だったカイゼルって奴に、ある日姿は一緒だけど全然違うあいつが現れたことが』
『しかし、それではヘレナ殿は――!』
【ふん、驚きはこちらも同じことよ! 別の世界とはいえ、我がこんな不甲斐ない輩に育っているとはな! 同じ人間でもこうも異なるか!】
「何が不甲斐ないですか、女王になりたいからって、実の姉を殺すなんて……!」
【ほう? 某、そんなことを申してよいのか? その腰ぬけをも侮辱することになるぞ。何せ、この思いは同一のはずだからな】
「はぁ? 何を言って……」
「っ……」
「ちょっと、ヘレナさん? 何ふぬけてるんですか貴方! しっかりしなさい!」
【はーはっはっは! その女に否定できるわけがない! 欠陥品とはいえ曲がりなりにも我であるなら、抱かなかったはずがない! 女王への憧れを、あの王冠を、剣を我のものにしたいという思いを! この国を自らの手に握りたいという欲望を、たとえ実の姉を殺してでも奪いたかったはずだ! この我のように!】
「ち、ちが……」
【戯言を抜かすな! 我は誰よりも我を知っている! 我は貴様だからなぁ! はーはっはっはっはっは!!】
「いい加減にしなさいよ、この馬鹿女――!」
ヒュン!
ガキャアン!
「え――そんな、矢があいつの眼前で弾けた――?」
【脆弱なり、小娘! そんなものでこの聖剣『シルヴィア』の放つ障壁を防げるものか! でやぁ!】
ビュウゥン!
「きゃあ!」
つづく
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