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『――っだあ、クソ、通信が途絶えた! 麻紀の無線が故障したらしい!』
『こいつはいよいよやばいぞ……早くあいつらんとこ行かねえと!』
「行かないとって、これじゃあ……!」
ビュウウウウウウウウウウウウゥゥッ!!
「なんなのよ、この城を覆っている暴風は! これじゃまともに近づけないわよ!」
「こいつは明らかに人工物だ……例のもう一人のヘレナの仕業か?」
「あいつの持っている剣――『シルヴィア』はたしかに霊剣だが、ここまでの力は有してたか? 信じられん」
(この風は……いやまさか。あり得ん)
「そんなことはいい! 急がねば、このままではヘレナ殿が大変なことになる!」
「何が起こるってんだよ。カイゼルって奴がどうしたってんだ?」
「ああ、そういえばクストはその頃仲間じゃなかったんだったね」
「仲間の一人だったカイゼルに、突然平行世界の自分が現れたのは言ったわよね? その頃から、あいつの体に異変が起こった」
「異変?」
「突然人が変わったり、覚えのないことを話したり、事実とは違う記憶を語ったり……今回のヘレナ殿とまったく一緒なのだ」
「ああ、なんで気付かなかったんだろうっ。気付いていたら何らかの対処方法もあったはずなのに!」
「今更嘆いたってしょうがねえだろ。今はこれをどうにかしねえと、カイゼルの二の舞になっちまう」
「な、なんだよ、そいつに何があったんだよ!」
「――一つの世界に、同じ人間は存在し得ないんだよ」
「は?」
「故に、互いの存在を食い潰し合う。記憶の混濁はその初期段階だ。やがて二人はその境界を維持できなくなり――終いには対消滅を起こす」
「つ、つまりこのままだとヘレナがあの女と一緒に消えちまうってことか!?」
「だからやばいって言ってんだろ! こうなったらこの暴風をかわして……!」
「無理だよ! 風の密度が厚過ぎる! こんなん入ったらズタズタになっちゃう!」
「ちいぃ!」
「なあ、たとえ入れたとしても、ヘレナを救う方法ってあるのか? 消滅しちまうんだろ?」
「――殺すしかない」
「え?」
「別の自分を殺すしかない。相手が死亡した時点で、そいつが世界から拒絶され、消滅する」
「なんだ、簡単じゃねえか。それなら――」
「でも急がないと、相手に与えたダメージが自分にフィードバックするようになるのよ!」
「げぇっ!? と、とにかく時間との勝負ってわけか、ええいこの風どうすりゃ消えるんだ!」
「――俺が行く」
「だから、この風じゃいくらあんたでも……!」
「安心しな、飛び込みゃしねえよ―― 神速!
」
ビュン!
「あ、あいつ……まさか、暴風とは逆に回転することで風を作り、打ち消そうというのか?」
「そりゃ他に手はないが……時間かかるぞこれ」
「うぅ……頑張ってフォルト。ん?」
『――っざけてるんじゃねえってんですよ!!』
「なんだ、この声は。通信機がまだ生きてたのか?」
「え、マジかよ!?」
つづく
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