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【ふはーははははははっ! いかに無能でも腰ぬけでも、野望は変わらぬようだな! そりゃそうだ、納得できるわけがない! 生まれた時すら同じなのに、まったく変わらぬ姉が全てを独占し、自分が厄介者扱いなどと!」
「ぐっ……!」
【だからこそ剣を持ったのだろう? 姉と違う自分、姉が苦手とした剣を習得することで、自分と姉が別人だと証明したかったのだ! 成功したよなあ? 腕が立ち過ぎて『シルヴィア一世の再来』などともてはやされ、自分を持ち上げて王位をなんて馬鹿共が集まるほどに!】
「そ、それは……」
【ほら、我と変わらぬではないか! なりたかったんだろう、女王に? その輝く王冠と剣を自らのものにしたかった、いいや、自分のものにならないことに納得いかなかったんだ! 貴様は我、我は貴様だ! その我が、我の行く手を阻む理由がどこにあろうか!!】
「私、私、は……」
【さあ、我に斬り殺されるがいい! 安心せい、貴様の宿願は我が叶えてやろう! この我が、貴様の栄光を奪ったあの愚姉をもう一度地獄に叩き落としてくれ……】
「ふ――っざけてるんじゃねえってんですよ!!」
ビシュッ!
【む? まだやるか小娘が】
「ま、麻紀?」
「さっきから黙ってりゃ言いたい放題――言わせてる貴方も貴方です! 何をあんな馬鹿に好き勝手させてるんですか!」
「だ、だけど、私は本当に――」
「憎んで何が悪いってんですか」
「え?」
「羨んで何が悪いんですか。ええそりゃそうでしょ。一国を統べるなんてそうなれるもんじゃありません。双子のお姉さんにいいとこ取られるなんてそりゃ歯がゆいでしょうよ。憎んで、恨んで当たり前です」
「…………」
「でも、貴方はやらなかったじゃないですか?」
「え……」
「悔しいのに、辛いのに耐えてお姉さんを立てたんでしょ? いくら腹の中でドロドロしたもの抱えてても、それだけは褒められて然るべきです。いいですかヘレナ? 人間ってのはね、一線踏み越えるのと踏み越えないのとでは――」
「全っ然違うんですよ!!」
【こ、このアマ……!】
「こんな馬鹿女の言葉に惑わされてどうするんです! 貴方はとっくに選んだはずです! 女王を捨てて、LEの一員として生きる道を! だったらそれに誇りを持ちなさい!」
「っ!」
【戯言を! 一歩越えようが越えまいが、この女にはたしかに姉を憎悪した、国を欲した! その欲望が、その悪意は、紛れもなく本物を! いくら貴様が否定しようが、それはこの女自身が……!】
「――それ故」
【!?】
「私は嘘をついた。私自身に嘘をついた。自分は女王にふさわしくない、姉上こそが玉座に座るべきと、自分の思いに蓋をして、隠し、偽り続けてきた。やがて偽りながら生きることに疲れ果て、自分の役目すら捨て逃げた――嘘をつき続けたんだ」
【き、貴様――】
「だが、こんな嘘だらけの私にも、一つ偽れないものがある」
【そ、それは?】
「知れたこと。自分が剣をふる理由、己が仲間と居場所を守りたいという思い、そう決めた決意、あれは、あれだけは偽りではない!」
「ヘレナ……」
「あの日誓った! この命賭けてでも守ってみせると! そのためならば、いかなる敵も斬って捨てると! だからこそ私は、この剣はここにあると! その誓いがある限り、私は剣を振るう! これが今の私の欲望だ、悪意だ! わかるだろう、私よ!」
【抜かしたな、この愚か者――!!】
「ああ何度でも言わせてもらおう。私の名はたった一つ!
ラストエスペランサーズ所属、剣士ヘレナ・マリュース

今こそその悪意、断ち切らせてもらう!
【やれるものならやってみろぉ!!!】
つづく
はい、というわけでようやくお披露目です。怒さんには感謝を。そして謝罪を(ぇ ――これ前にもやったな
前回に比べてずいぶん待たせてしまいました。おまけに展開グチャメチャだし。許せなかったらなんべんがボコって構いませんので。
あとはあとがきで喋るか……続きをお楽しみに、とは言えんなあorz
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