まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.04.03
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給与手渡し春宵の喫煙所 ギャラ明細は二行療養の春 鞦韆に退職の日の花束と 保護シール剥がす手応え啄木忌 口座開設朱肉拭き取る夏近し 本採用朧夜の缶チューハイ 春光の起業ゲーミングチェア届く 桜蘂降る陸自の戦車しづか 職を辞したる尾崎放哉鳥曇 我が給与マックのバイトに負けた春

お題は「給与明細」。



フジモン。
給与手渡し 春宵の喫煙所


これが1位。
詩情もあって申し分のない句ですが、
タイトル戦の優勝句としては、やや意外性に欠けたかも。



皆藤愛子。
ギャラ明細は二行 療養の春
療養の春や ギャラ明細二行



なんとなく尻すぼみで寸足らずなリズム。
それによって、
収入のない心もとなさを表現したともいえる。

添削のほうが安定感はありますが、
それが内容に見合うのかは判断が分かれるかも。



梅沢富美男。
鞦韆 しゅうせん に退職の日の花束と
退職の日の花束と鞦韆に
(添削後)

春の季語「鞦韆」はブランコのこと。

原句のように、
最後に助詞「と」を置くと、
共同の意味(~と乗る)か、


かたや添削句のように、
最後に助詞「に」を置くと、
「鞦韆に(乗る)」とも読めますが、
「花束と鞦韆に(悲しくなる)」
「花束と鞦韆に(一人ごちる)」


語順的には、
退職の日の鞦韆に花束と

のほうが誤読は少ないかもしれません。

なお、
「鞦韆」は「秋千」とも書きますが、
いずれにしても「秋」の字が入る春の季語。
語源は「千秋万寿」だそうです。

先日は村上が「ふらここ」で詠みましたが、
きっと梅沢は「退職」の寂しさなどを、
あえて「秋」の字を含む漢字に込めたのでしょう。

まあ、わざわざ漢字で書かずとも、
片仮名や平仮名でも寂しげな気分は出るし、
個人的には、
退職の日のブランコに花束と

のほうが明瞭でいいかなと思います。



フルポン村上。
保護シール剥がす手応え 啄木忌
保護シール剥がす啄木忌の明細
(添削後)
保護シール強 こは (添削後)

兼題写真を見なければ、
何の「保護シール」なのか分からないし、
添削のように「明細」と書き加えても、
やっぱり何のことか分からないと思います。

たとえば「保護シール」は、
ラベルやディスプレイの保護フィルムかもしれないし、
かたや添削の「明細」のほうは、給料明細ではなく、
光熱費などの支払い明細と読まれてしまう可能性が高い。



千原ジュニア。
口座開設 朱肉拭き取る夏近し
口座開設 拭き取る朱肉 夏近し
(添削後)

原句は中七・下五でワンフレーズを作って、
形式的には整っていると思うけど、
添削のほうは三段切れになってしまっている。

先生いわく、原句の中七・下五は、
「複合動詞+形容詞」で用言が重なって韻律が悪い、
とのこと。

であれば、最後を体言にして、
口座開設 朱肉拭き取る夏隣

と直すこともできるし、

おそらく韻律上のつまずきを覚えるのは、
たんに用言が重なるからではなく、
読んだときに、中七の終わりの連体形が、
終止形っぽい語感を与えるからだと思うので、
口座開設 朱肉拭 ぬぐ ひて夏近し

でもいいんじゃないかしら。

それでも、
あくまでも先生の意図を活かすとすれば、
口座開設 拭ふ朱肉の夏近し

のように助詞「の」or「に」を加えるべきだし、

あるいは、
上五・中七でワンカットを作り、
季語と取り合わせる二句一章の形式で、
口座ひらきて拭き取る朱肉 夏近し

みたいにする方法もありますが、
これだと動詞が3つも続いてしまいますね。

動詞を1つ減らすならば、
口座ひらきて拭ふ朱肉や 夏近し

とすることもできます。



森迫永依。
本採用 朧夜の缶チューハイ
本採用通知 春夜の缶チューハイ
(添削後)

前回はマンモス句に似てたけど、
今回もまたフジモンの句に似ましたね。
「給料日の夜のタバコ」と「本採用の夜の缶酎ハイ」。
どちらも、独りのささやかな祝いの情景。

ただし、こちらの句は、
リズムに字足らず感があって、心もとない。
数えてみると6+5+6=17音なのだけど、
長音などの二重母音が多いせいか、短く感じます。

一方、
添削は6+7+6=19音ですが、
こっちのほうが定型感があります。
季語にかんしては「春夜」のほうが暖かな感じですね。



キスマイ横尾。
春光の起業 ゲーミングチェア届く
春光の起業 ゲーミングチェア導入
(添削後)

朝ドラの「こんねくと」みたいに、
2人で起業ってこともあるから、
べつに社員数が少なくても構わないと思うけど、

原句の「届く」が配達の場面なのに対して、
添削の「導入」はすでにオフィスに配置された映像になる。

その意味でいうと、
春光の起業 ゲーミングチェア10脚

のように具体的な数などで見せても大差はない。



立川志らく。
桜蘂 さくらしべ 降る陸自の戦車しづか
戦車しづか 桜蘂降る駐屯地
(添削後)

これは添削に異議なし。

戦前には、
「貴様と俺とは同期の桜 / 花の都の靖国神社」
と歌われたわけだから、
この句材は、そんな歴史も想起させます。



春風亭昇吉。
職を辞したる尾崎放哉 鳥曇 とりぐもり
またも職辞せる放哉 鳥曇
(添削後)

これも添削に異議なし。

放哉のことを詠んだというより、
辞職した自分自身を放哉呼ばわりしているように見えますね。
季語の取り合わせも、風まかせな感じが巧い。

志らくが8位で、昇吉が9位でしたが、
句材でいえば、
1位のフジモンの作品よりも、
落語家ふたりの作品のほうが迫力があったかもしれない。

どちらも、内容はちょっと暗いけど。



勝村政信。
我が給与 マックのバイトに負けた春
マックのバイトに追いつきたし 春の我が給与
(添削後)

サラリーマン川柳ですか?
って感じの安っぽい俳諧味。

かたや添削は8+6+8=22音と、
いっそ短歌にすれば?と思うほどの字余りで、
どういうリズムで読めばいいのかしら?

ジュニアのように、
期待と不安を織り交ぜて、
夏近し バイトにおよばぬ初給与

でどうでしょうか。





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最終更新日  2023.04.04 09:05:42


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