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2023.05.24
ジャニー喜多川が性虐待で逮捕されなかった理由。
テーマ:
政治について(19770)
カテゴリ:
政治
ジャニー喜多川の性的虐待が刑事事件にならなかったのは、第一に「訴える者がいなかったから」であり、第二に「訴えたとしても物証がなかったから」だと言われています。
◇
異性間であれ、同性間であれ、一般にセックスには「攻め」と「受け」の役割がある(かならずしも女が「受け」とは限らない)と思いますが、正当な愛情表現であるためには「受け」の側の欲望を基準に考えなければなりません。たんに「攻め」の側の欲望だけを一方的に押しつけるなら、それは暴力行為とみなされます。
戦前の帝国憲法には「姦通罪」がありました。姦通罪は、(たとえ相手との合意があっても)妻の婚外交渉を犯罪とみなす規定でした。逆に、夫婦間でさえあれば、たとえ夫が妻に一方的な欲望を押しつけても、それは犯罪にはならなかった。
しかし、戦後の日本憲法では、この規定が完全に否定されました。たとえ婚外交渉(いわゆる不倫)であっても、双方の合意があれば、それは犯罪とは見なされなくなり、逆に、たとえ夫婦間であっても、夫が自分の欲望を一方的に妻に押しつけるなら、それは性犯罪として裁かれることになった。
とはいえ、戦後になっても長い間、妻が夫の要求に従うのは当然とする考えが消えず、それを「DV」(ドメスティックバイオレンス)だと認識できるようになったのは、わりと最近のことです。一方で、婚外の恋愛を「不倫」と見なして断罪しようとする風潮も、いまだ世間には残存しています。
◇
近年には、さまざまな「ハラスメント」や「虐待」に対する認識も定着し、問題視される機会が増えてきました。スマホなどで音声や動画のような「物証」を記録しやすくなったことも、大きな社会の変化につながりました。
かつてなら、上司が部下に暴力的な言動を下したり、不当な要求を押しつけたりしても、ごく一般的な「指導」として正当化されるのが常だったし、まして部下の立場から上司の言動を断罪するのは困難でした。それを「パワハラ」と見なして抗議できるようになったのは、わりと最近のことです。
◇
しかも、子供の場合、大人の言動が「犯罪」かどうかを自分で判断するのは本質的に難しいことです。どんなに暴力を振るわれても、大人から「しつけ」と言われればそう思い込むほかなく、性的な行為の強制も、大人から「愛情表現」だと言われれば、そう呑み込まざるを得なくなってしまう。数年から数十年も後になって、それが「虐待」だったと理解できたとして、そのときには「物証」なども消滅しているでしょう。
とくにジャニーズ事務所の場合は、子供が大人を断罪するのが困難だったうえに、部下が社長を告発することも困難でしたし、さらには利害をともにする芸能界やマスメディアも、ジャニー喜多川の立場を守り続けるような構造でした。そうした重層性が犯罪を野放しにした。
とはいえ、大人の言動を「虐待」と認識できるのは、子供自身ではなく、やはり周囲の大人なのだから、最低限の配慮として、なるべく子供を密室に置かず、複数の大人の目の届くところに置くことは重要です。カメラを設置するという手段もある。これは芸能事務所に限らず、学校や塾やスポーツクラブや町内会や教会など、子供を預かるすべての機関・団体・個人に義務付けられるべきことです。
◇
なお、これらはとくに同性愛に固有の問題でもなければ、同性愛そのものの問題でもなく、一般的な性犯罪の問題です。いうまでもありませんが、同性愛を差別したり抑圧したりする理由にはなりません。
日本では、とりわけ旧世代の人々が学校の性教育に対して後ろ向きです。そこには「性に対しては受け身であるのが美徳」という古い価値観があり、せいぜいセックスは誰かの欲望を受け入れる形で学べばそれでいいと思っている。しかし、そういう発想こそが、結果的には権力者の欲望を野放しにすることになります。
性教育とは、誰しもが「性の主体」であることを学ばせるためのものです。もちろん受け身であるのを望むのは個人の自由ですが、社会全体としては、誰しもが「性の主体」であることを前提にして考えなければならない。自分のセクシャリティは他人に決められるべきものではないし、まして他人に否定されるべきものでもありません。
…
ちなみに、市川猿之助が親子で心中をはかった事件については、その引き金になったのが
「セクハラ・パワハラの告発」
だったのか、それとも
「セクシャリティ・プライバシーの暴露」
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最終更新日 2023.05.25 06:17:02
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