まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.09.12
XML
朝ドラ「らんまん」第116回。

…まさかとは思ったけど、
ほんとに五島慶太が小林一三を連れてきましたw



役名は「相島圭一」になってますが、
≫ この先、
≫ たがいに"鉄道の雄"となるのはどうです?
≫ この渋谷には、あなたが降り立てばいい!!

※たがいに西の「阪急」と東の「東急」を作ろうぜ!ってこと。
という小林のセリフから察するに、
相島のモデルは五島慶太と見て間違いない。

しかも、この相島圭一は、
みえ叔母さんの「巳佐登」の常連客だったんですね。



とはいえ、これは明らかなフィクション。
時代的にはありえない話です。

今週の予告によると、
この 5年後 に日露戦争になるらしいので、
時代設定は、まだ 1899年 ごろです。
※6年後が日露戦争だったようなので1898年です。

前の記事 にも書いたとおり、
牧野壽衛が店をもったのは1919年ごろだから、
史実よりも20年ほど設定を早めたことになります!

そして、銀行員時代の小林一三が、

そもそも 1899年 といったら、五島はまだ 17才 ですから(笑)、
官僚として料亭に出入りしてるなんてありえない。
※1898年なので、五島は16才ですね。

小林一三だけを実名にして、

彼を表向き《架空の人物》として扱ってるからでしょう。

しかし、
そこまでして2人を登場させたからには、
脚本家にそれなりの思惑があるはずです。



きっと五島慶太を登場させたのは、
寿恵子の活躍をとおして渋谷の発展を描くためでしょう。

関東大震災で被害の小さかった渋谷は、
五島慶太による東急線の開業とその沿線開発によって、
急速な発展を遂げていく。
阪急を成功させた小林一三もそれに協力します。

ドラマでは描かれないと思うけど、
1964年の東京オリンピックの後には、
NHKの放送センターも渋谷へ引っ越してくる。



五島慶太の才能を見抜いた小林一三は、
いわば「名プロデューサー」として描かれるはずだけど、

寿恵子も負けず劣らずのプロデューサーぶりで、
事前のマーケティングリサーチを積み重ね、
周辺住民への妄想プレゼンテーションもやってたから、

隣に住んでいた汚い酒呑みのオジサンが、
じつは一流の板前だったことを見抜いてるようだし、

さらには、
巳佐登からベテランの仲居を引き抜いたり、
弘法湯の下男 (武井壮) をウーバーイーツ代わりにしたり、
鍋島家の西洋菓子や松濤の高級茶に目をつけたりと、

地域のポテンシャルを引き出しながら、
五島慶太よりも先に渋谷の発展のため手腕をふるっている。



小林一三を登場させた意味は、
そんな寿恵子との "プロデューサー対決" ってのもあるし、

前の記事 も書いたとおり、
「浜辺美波を小林一三にヴァーチャルで対面させる」
という東宝ネタ的な意味合いもあったとは思う。

それから、
わたしは知らなかったのだけど、
1933年に開園した阪急直営の「六甲高山植物園」は、
じつは牧野富太郎の指導で作られた、とのこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/六甲高山植物園
おそらく、そこで牧野と小林の接点も生まれるのですね。

追記:
余談ですが、丈之助のモデルである坪内逍遥も小林一三との接点があります。逍遥の甥で、のちに養子になった坪内士行は、養父と同様にシェイクスピアなどの演劇研究の道に進み、小林一三に請われて宝塚音楽学校の創立に関わり、タカラジェンヌの雲井浪子と結婚し、長年にわたって小林一三の演劇事業に協力しました。彼の娘は女優の坪内ミキコです。
https://www.waseda.jp/inst/weekly/feature/2016/10/10/16049/
https://www.hankyu-bunka.or.jp/ichizo/network100/theater/



…さらにいうと、

つぎの朝ドラ「ブギウギ」にも、
やはり小林一三をモデルとした人物が登場するようで、
※利重剛が演じる「大林林太郎」です。
その伏線を兼ねてる可能性もなくはない。








~以下は「ブギウギ」と小林一三の話です~ 

次回作の「ブギウギ」では、笠置シヅ子と小林一三の関わりが描かれることになる。
笠置シヅ子は松竹に所属するタレントだったのだけど、ほんとうは宝塚に入りたかったようです。でも、試験に落ちたのですね。松竹楽劇団の在籍中には、東宝への移籍を画策したものの、そのときは松竹側に阻止されている。
まあ、笠置シヅ子はお世辞にも宝塚や東宝向きのタレントじゃないのよね。やはり庶民派で松竹向きのタレントだったと思う。

笠置シヅ子は、わたしが日本でもっとも好きな歌手のひとりだけど、彼女の最大の魅力は、不穏でアンダーグラウンドな妖しさであって(薬物常習者だったとの説もあり)、けっしてハイソで上品なキャラではない。



とはいえ、松竹楽劇団が解散した後は、笠置シヅ子が東宝の舞台や映画で活躍する機会も多かったので、おそらく小林一三と接点があったのも、その時期だと思う。

とくに終戦後の一時期は、東宝のほうもアンダーグラウンドな路線に傾斜して、日劇でエロティックな舞台などもやっていました。それは占領下で進駐軍を後ろ盾にせざるをえなかったことにも無縁ではありません。
本来、宝塚や東宝の芸能は、エロティシズムやバイオレンスを嫌う傾向が強いし、現在もそういう社風は変わらないけれど、終戦後にアンダーグラウンドな路線に傾いたり、笠置シヅ子とも関わりがあった頃は、東宝の歴史において特異な時代だったといえます。 (「ゴジラ」や「七人の侍」のような名画もそういう時代に生まれている)

笠置シヅ子の最大のヒット曲「東京ブギウギ」は、そんな終戦直後の日劇で生まれている。東宝の舞台から生まれただけあって、彼女の楽曲の中ではわりと明朗な作品だし、アンダーグラウンドな要素はほとんどありませんが。



松竹楽劇団や新宿ムーランルージュなどが、男性客をターゲットにエロティシズムを押し出したのに対し、宝塚歌劇団はもともと親子連れの客層をターゲットにしていて、エロティシズムを売りにすることはありませんでした。そして、しだいに客層のほとんどが女性になっていった。

なぜ宝塚歌劇団がエロティシズムを売りにしなかったかというと、もともと小林一三のつくった芸能が「鉄道の沿線開発」と一体だったからです。
小林一三は、鉄道沿線の人々に快適な暮らしを提供するために、街づくりからも、芸能からも、ヤクザを排除しました。小林一三が在日朝鮮人を嫌ったのも、当時の在日朝鮮人にヤクザが多かったからです。創業以来、宝塚や東宝は一貫して、土着のヤクザに依存した芸能と一線を画している。



戦後に誕生したナべプロやジャニーズも、ヤクザとの関わりが薄い会社だと言われてるけど、それはもともと進駐軍を後ろ盾にしていたからです。進駐軍を相手にする芸能なら、土着のヤクザに依存する必要がない。
しかし、だからといって、そうした芸能事務所の倫理観が高いとはかならずしも言えない。周知のとおり、ジャニーズ事務所の創業者には、所属タレントを性的欲求の対象にする下心がありました。

宝塚でも、ときおりパワハラやセクハラがニュースになるけれど、すくなくとも創業者の小林一三にそういう下心はなかったと思います。宝塚や東宝は、日本の芸能のなかでは例外的にコンプライアンス意識が高い。それは戦前からの伝統です。いわゆる「清く正しく美しく」ってのは、宝塚女優のモットーであると同時に、運営する側にとっての戒めのスローガンにもなっている。

エロティシズムやバイオレンスを嫌う東宝の芸能は、ある意味では「当たり障りがなくて刺激に乏しい」ってことにもなるけれど、そのコンプライアンス意識の高さは、現在の東宝が世界に進出するうえであきらかに有利に働いている。それがジャニーズ事務所との本質的な違いです。



ところで、日本の主要都市の多くは、江戸以前につくられた城下町などを基礎にしていますが、近代以降に特筆すべき街づくりの例があったとすれば、それは小林一三が手がけたものをおいて他にありません。
阪急沿線の芦屋や六甲山麓地域、そして東急沿線の田園調布のような近代高級住宅街は、すべて小林一三が手がけたものだといってよい。もともとは庶民向けに構想されていたと思いますが、その考え抜かれたコンセプトによって、現在では富裕層にしか住めないような付加価値の高い街になっています。
そういう街づくりが出来たのは、小林一三が経済人であるのみならず文人でもあったことが大きい(彼の政治性も、その両面を備えたところに成り立っています)。小林一三の開発手法を模倣した鉄道沿線の都市は多くありますが、けっして芦屋や田園調布のような街にはなっていません。それらは結局のところ上っ面の模倣にすぎず、実際のところは営利主義にすぎず、本質的なコンセプトが浅いからです。



ちなみに、第1回東宝シンデレラの沢口靖子は大阪出身で、それと同期の斉藤由貴は神奈川出身なので、それぞれ阪急と東急のお膝元から誕生したタレントだと言えます。厳密にいうと、沢口靖子は堺市の出身なので、阪急沿線の都市文化と直接の関係はありませんが。
斉藤由貴は横浜の出身なので、東急沿線の都市の文化を直接的に吸収している。東急が横浜を作ったとまでは言わないけど、現在の横浜市民にとって、JR東海道線よりも、東急東横線からの影響のほうが、文化的な意味合いは大きいと思う。

斉藤由貴は「予感」という美しい曲を作ってますが、これは東横線の情景を描いていて、母親と同じく東宝に所属した娘の水嶋凜もカバーしています。実際、東宝の女優が東横線の曲をつくることには正統性があるわけです。



濱口竜介の世界的評価と相米慎二の再評価が連動するという 2年前の話 も、またベネチアで証明されました。

にほんブログ村 テレビブログへ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2024.04.05 10:23:07


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: