まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.02.26
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親友のしゃがれたエール忘れ雪 デンモクがふたりを隔てる春休み 春の夜のカラオケ締めは「雪椿」 カラコロンマイクとお酒沁みる春 朧月負けたらあかんで東京に 「なごり雪」君を見ないで歌い出し らうらうと僧侶の美声花まつり カラオケの履歴は桜らんまんと
2月22日のプレバト俳句。
お題は「カラオケ」。



GLAY・HISASHI。
親友のしゃがれたエール 忘れ雪


これが今週の1位。
かなり知的に感じられる出来です。

的確な写生だけに徹しつつ、
ちゃんと心情が伝わってくるし、
季語の選択も絶妙だし、

という二句一章の型もしっかり出来てる。

どこにも欠点は見当たりません。



関口メンディー。
デンモクがふたりを隔てる春休み
デンモクが隔てるふたり 春休み
(添削後)

デンモクは第一興商の商品名で、
カラオケ操作用リモコン (=電子目次本) だそうです。

まず問題のひとつは、中八をどう処理すべきか。

助詞「を」を除けば済む話ではあるけど、
語順についての先生の解説は正確さに欠ける。
「ふたり隔てる」なら動詞に軸足が来て、

…みたいな話じゃないでしょ!

これは、あくまでも切れの問題です。

つまり、
「隔てるふたり」とすれば、
中七が名詞止めになって切れるけれど、

動詞の連体形が下五に繋がるわけです。

先生&梅沢の添削案だと、
中七で切れるために、
映像のない季語「春休み」だけが浮いてしまう。

季語を映像化するには、
動詞の連体形で修飾して、
デンモクがふたり隔てる春休み

と書くほうが正解でしょう。

しかし、問題はもうひとつある。
そもそも「隔てる」という動詞の選択は、
句材の状況を描くのにふさわしいのかどうか。

この動詞を使うことで、
二人の関係がネガティブな状態に見えて、
別れを予感させてる気がしなくもない。

作者いわく、二人の関係は、
「デンモクを超えてまでは近づけない」ものの、
その反面では、
デンモクがあってこそ繋がってるわけだから、
けっして二人の関係を裂いてるのではありません。

いうならば、
「繋いでもいるけど隔ててもいる」
…みたいな微妙な位置づけのアイテムってこと。

それを客観的に写生するなら、
デンモクをはさむ二人の春休み

とでも書くしかないと思います。



田中あいみ。
カラコロン マイクとお酒沁みる春
ドアベルとマイクとお酒沁みる春
(添削後)

作者いわく、
・おなじ擬音でドアベル&グラスの氷を掛け合わせた
・楽しむ人もいれば悲しむ人もいるカラオケ店の様子
とのことです。

ちょっと材料が多すぎますよね。
「カラオケ」「ドアベル」「グラスの氷」
の3つの要素を描きながら、
客の様子まで季語と取り合わせるってのは…。

しかも擬音の「カラコロン」は、
ドアベルやグラスの氷というよりも、
入店客の下駄の音かしら?と誤解してしまう。

さらに「沁みる」というのは、
作者の主観・心情であって客観写生ではありません。
あえて「沁みる」とは書かずして、
そこに集う人々の心情を想像させなければならない。

かりに「歌と酒が沁みる」と書いていれば、
かろうじて聴覚&味覚の描写と言えたのだけど、
「マイクが沁みる」という変な表現をしたことで、
そうも言えなくなってしまった。
そして、添削句のように、
「ドアベルとマイクと酒が沁みる」と書いたなら、
これはもう聴覚や味覚の描写ではなく、
状況に対する心情の表現と解釈する以外にない。

かりに「カラオケ」の要素を省くなら、
ドア鈴と水割り 泣き笑いの春

のように書けます。



レイザーラモンRG。
朧月 負けたらあかんで東京に


例によってネタを組み込んだお約束の作風。
今回は天童よしみネタを取り入れたわけですが、
パクリ審判で「70点」から「3点」への大減点。

歌謡曲の七五調を安易に取り入れる失敗は、
星の入東風 今夜の恋をくれた人

のときに予測したとおりの結果です↓
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202211150000/

このときの前科があったわけだから、
まして「カラオケ」の兼題で詠ませれば、
こういう顛末になるのは想定内だったし、
そう考えれば、今回の減点査定は、
あらかじめ番組が仕込んだものと思えなくもない。

…とはいえ、
当初の査定が「70点」だっただけあって、
句としてみると、じつによく出来てるのよね(笑)

季語の選択もけっこう的確だし、
「で」を省けば中七の定型になるものの、
あえて中八のダメ押し効果を狙った気もする。
たぶん、この人は、
俳句の作り方は心得てるんだろうなと思う。



梅沢富美男。
らうらうと僧侶の美声 花まつり


締めの一句に認定されましたが…

中七の「美声」があれば「らうらう」は不要だし、
逆に「らうらう」があれば「美声」は要らないでしょ。

ためしに、
らうらうと読経の若し 花まつり

としてみました。

しかし、もっと根本的なことをいえば、
「花まつりで読経する」のは当たり前なのだし、
「剪定で鋏の音がする」ってのと同程度に無内容な凡句です。
伝統行事にかんする知見をひけらかしただけ。



小林幸子。
春の夜のカラオケ 締めは「雪椿」
雪椿咲きカラオケの締めはさて
(添削後)

曲名をそのまま季語として用いたら、
季語の鮮度が落ちてしまうという話です。

添削では、あえて曲名とは明示せず、
あたかも実景の季語っぽい体際にして、
そこから曲を連想させる、という作戦。

…それはまあいいとして、
添削句の「咲き」と「さて」は、
不必要な音数合わせにしか見えません。

ためしに、
雪椿 カラオケの締め選びけり

としてみました。



武田鉄矢。
「なごり雪」君を見ないで歌い出し
なごり雪 君を見ないで歌い出す
(添削後)

これも実景の季語から曲名を連想させる添削。

…それはいいとして、
そもそも「君見ず歌う」と書けば7音で済むものを、
後段の12音をまるまる使う必要ってあるの?

とくに中七の「見ないで」は、
あまりにも口語的かつ散文的な言い回しだし、
かりに4音分を使うにしても、
「見ずして」「見ぬまま」「見れずに」
のように書くべきでしょ。

下五「出す」の必要性についても疑問なので、
なごり雪 君見ぬままに歌う夜

とでも直してもらいたい。

もしも12音分を7音で済ませるなら、
なごり雪 君見ず歌う博多の夜

のようにさえ書けるはずです。



清水アナ。
カラオケの履歴は桜らんまんと


これまた曲名を季語とするのでなく、
やはり実景から曲名を想像させるべき内容。

単純に添削するのなら、
カラオケの履歴 桜のらんまんと

でもいいでしょうが、
カラオケの履歴や 並び立つ桜

と書いたほうが楽曲履歴を連想しやすいかも。


▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12




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最終更新日  2024.02.27 21:34:43


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