まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.09.02
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休暇果つ焼豚玉子飯甘し 秋郊のビストロ放し飼いの軍鶏 きょうりゅうのしそんのたまごまくわうり 露葎槌の子誘く卵三つ 曾祖父の出征朱夏の卵焼き ゆで玉子ていねいに剥く台風夜 立秋のたまご水平線の色 3秒でねれる星月夜のボタン ほの青き地鶏の卵秋の宿 なぜぼくは食べられないの星祭 黄身ふるる熱きふわとろ今朝の秋
8月29日のプレバト俳句。

今回は、小中学生との対戦。
西村和子&高野ムツオ&井上康明が、
審査員として参加してました。

お題は「卵」。

プレバト勢も、ちびっこ勢も、
作者の意図と字面の印象がズレてる句が多かった。

結果オーライで評価することも出来るけど、
それは「まぐれ当たり」ともいえるわけだし、





キスマイ横尾。
秋郊 しゅうこう のビストロ 放し飼いの軍鶏 しゃも


作者も、審査員も、
兼題に沿って「卵料理」の話ばかりしてましたが、
字面から想像されるのは「肉料理」のはずだよね。

作者は「卵料理の高級感」を意図したらしいけど、
むしろ読み手は「肉料理の野性味」を読み取ります。

まあ、結果オーライではあるものの、
名人としての表現力には疑問符がつきます。



かりんちゃん (中3・大阪)
休暇果つ 焼豚玉子飯 めし 甘し


中七の「焼豚玉子飯」は、
愛媛県今治市のソウルフードだそうです。
大阪の子なのに愛媛の料理も知ってるのね。

でも、地元の人でなければ、
夏休みの終わりにそれを食べることの詩情は、




千原ジュニア。
露葎 つゆむぐら 槌の子 つちのこ そび く卵三
露葎 槌の子誘 おび きだす卵
(夏井添削)

子供相手の対戦だってのに、
しかも俳句の内容も子供時代の回想だってのに、
「むぐら」だの「そびく」だのと、
やたらに難しい言葉ばかり並べて、
字面と内容が噛み合ってませんね。

漢字の「ツチノコ」もはじめて見ましたが、
難読な漢字だらけの俳句にしたせいで、
子供のファンタジーの面白さを損なってる。

また、審査員も言ってたとおり、
(たとえそれが実体験だったとしても)

卵が「3個」である必然性は薄い。
きっとツチノコは1匹で来るのだろうから、
卵は3個も要らないよね…っていう。



内藤剛志。
ゆで玉子ていねいに剥く台風夜
ゆで玉子ていねいに剥く台風裡
(西村添削)
ゆで玉子ていねいに剥く野分の夜 (高野添削)
台風の夜や ていねいに剥く玉子 (夏井添削)

添削されましたが、
いままでの内藤の句でいちばん良い出来です。

屋外の暴風と、屋内の静けさ。
家屋に閉じ込められた長い夜の沈黙が伝わってくる。



ふみかちゃん (小2・埼玉)
きょうりゅうのしそんのたまご まくわうり


てっきり、
「真桑瓜は恐竜の子孫の卵のようだ」
という比喩かと思いきや…

作者の話によると、
恐竜の子孫にあたる鶏の卵があって、
それを真桑瓜に取り合わせた句なのね。
審査員も、すこし誤読してた感じです。



かいと君 (小3・兵庫)
立秋のたまご 水平線の色


こちらは、ふみかちゃんとは逆で、
「卵」と「海」との取り合わせかと思いきや…

作者の話によると、
海が見えてるわけじゃなく、
「卵の色が海のように青い」という比喩らしい。
審査員も完全に誤読してましたが…

まあ、結果オーライでしょうか。

ちなみに、かいと君は、
3秒でねれる星月夜のボタン

という過去句も紹介されてました。

押す「ボタン」ではなく、
服の「ボタン」を触りながら寝るのだそうですが、

ファンタジックで面白い内容だし、
9才にして破調を使ってるところが侮れません。



梅沢富美男。
ほの青き地鶏の卵 秋の宿


奇しくも、
かいと君と同じで「青い卵」を詠んでる。

ネットで知らべたら、
青い卵を産むのは南米チリの鶏だけらしい。
日本でも普通に流通してるんでしょうか??

なお、
季語の「秋の宿」は歳時記にも載ってますが、
作者の意図した心情を伝えるならば、
あえて「宿の秋」と書いてもいいと思います。



さなちゃん (中1・愛媛)
曾祖父の出征 朱夏 しゅか の卵焼き


作者によれば、
自分が生まれる前の過去に想いを馳せ、
「曾祖父は出征の日に卵焼きを食べただろう」
と想像したようです。

しかし、字面からは、
前段が《昔話を聞いた場面》
後段が《現在の食卓の場面》
という取り合わせとして読めるし、

実際、そのように読まなれば、
季語の時制が過去になるので鮮度が落ちます。

なお、
中国の五行思想では、
一年の四季や、人生の季節を、
「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」
…のように表現するそうです。

作者は、季語の「朱夏」に、
《夏の太陽》《戦争の血》《日の丸》
などのイメージを重ねたうえで、
「shu」「shu」の頭韻も踏んだとのこと。

読み手しだいでは、
卵の黄身の《赤み》とか、
出征の《赤紙》を想像することも出来ます。



中田喜子。
黄身ふるる 熱きふわとろ 今朝の秋


三段切れなのだけど、
上五・中七の「黄身ふるる/熱きふわとろ」は、
(虚子の「何色と問ふ/黄と答ふ」のように)

一連の流れを動画的に描写したようにも見えます。

しかし、作者の話によれば…

生卵の「ふるる」が、
炒り卵の「ふわとろ」に変化したのではなく、
あんかけ卵の「ふわとろ」の上に、
別の生卵の「ふるる」を落としたのだそうです。

したがって、内容的にも三段切れ!

また、
作者は「頭韻を踏んだ」と言ってるけど、
擬態語の「ふ」を並べた程度では韻とも呼べない。



すばる君 (小5・岩手)
なぜぼくは食べられないの 星祭


字面からは、
中七の「食べられない」が、
可能態か受動態かを判別できません。
かりに可能態だとしても、
何を食べられないのかが分からない。

作者自身は、
「卵アレルギー」のことを詠んだそうですが、
審査員の西村和子は、
「貧困で飢えた子供」との解釈をしてました。

一方、わたしは、
可能態ではなく受動態と誤読したのよね。

岩手県の子が「星祭」を詠んでるとあって、
てっきり宮沢賢治的な意味で、
「食べる者」と「食べられる者」の、
食物連鎖の悲しみを仏教的に表現したのかと。



清水アナ。
秋風の自転車 卵二個割れた


口語の強みがありますね。
過去形も句またがりもまかり通るから。






▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12



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最終更新日  2024.09.05 18:05:08


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