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June 21, 2010
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「どうしていいかわからないまま、学校に向かおうとしたとき、ロゼッタが私を連れ去ったのよ。もう充分でしょう。ずるがしこい大人たちに復習してやりましょうって。ロゼッタは私の味方みたいに話しかけてきたわ。おろかな私はすっかり騙されて、あたり屋の仕事を引き受けることになったの。

 指定された車にバスケットボールを当てておいて、すぐそばに老婆のフリをして寝転んでいれば、すぐにロゼッタが助けだしてくれる手はずだったわ。最初にやったときは、簡単に成功したの。その場で示談が成立して、お金もすぐに手に入ったわ。2回目のときはちょっと失敗。スカーフを現場に落としてきてしまったの。あの時は大嫌いなショーンも仲間に入っていていやだったけど、気が動転してなにも思い出せないバカな大人を見ているのはおもしろいと思ってた。

 だけど、ロゼッタたちに依頼をしてきたお客が、思い通りにことが運ばなかったと言ってお金を払ってくれなかったのよ。お客と揉めているうちに、ショーンが失敗は私のせいだと言い出して、走っている車から、突然突き落とされたの。あちこちぶつけて体中痺れていたけど必死で走った。とにかく逃げなくちゃと思ったの。だけど行く宛てもなくて、あっという間にロゼッタに見つかったわ。
 あんたをやらないと私がやられる、だから悪く思わないでねって言って、彼女、私の背中を突然押したの。そこにやってきたのがサムさんだった。
 だけど、あたり屋のことを誰かにばらすと家を放火するって言われたの。」
「大丈夫だよ。僕たちは絶対に他言しない」

 サムはしっかりとリサの目をみつめて力強く答えた。
 はぁ。リサは大きな深呼吸をして、ほんの少しだけ笑顔を取り戻した。

「私、助かったのかな。助かっても、しょうがないんだけどね。家に帰っても、もういる場所なんてなさそうだし」


 俺がサムのヒザに爪を立てると、驚いたように付け加えた。

「ああ、すまん。 うちにはグレンも住んでいる。僕の親友のペットなんだ」

 リサは今までみたこともないほど情けない顔になって、ぼろぼろと涙をこぼした。そして、ひとしきり泣いた後で、真っ赤な鼻を隠そうともしないで笑った。

「ありがとう。私、まだ生きてていいんだよね。居場所をもらえるのよね」

 サムが大きな手のひらでリサの頭をそっとなでてやった。リサは思いのほか素直にされるがままになっていた。
 それにしても、娘がこんな状況なのに、父親が病院にも来ないというのはおかしい。サムもどうやら同じことを考えているようだった。

「ところで、アイスマン氏はどうしてここに来ないんだろう。連絡はしてみたのかい?」
「運ばれてきたときは、病院の人が連絡してくれたそうだけど、ブラウンさんが来ただけだって言ってたわ。私、ちょっと電話してみる」

 アイスマン氏に裏切られたという思いはあるだろうが、連絡が取れないというのはおかしいと思ったのだろう。リサはサムに勧められて連絡を入れることにした。
 しかし、リサの電話に応対したのはブラウン氏だった。何度かアイスマン氏を出すようリサは迫っていたが、どうしても電話口にアイスマン氏を出そうとはしない。
 厭味の一言も言われたのだろう。リサは相当に頭にきた様子だったが、俺たちがみても少し不自然だ。もしかしたら、アイスマン氏は家にいないのではないだろうか。


 しかし、それからしばらくリサのそばについていたが、アイスマン氏から連絡はなかったようだ。

 サムもどうやらその事が気になっているらしく、ちらちらとリサのケータイに視線をやっていた。

「さて、そろそろ僕たちは失礼するよ。いろいろと調べなくちゃならんこともあるんでね。夕方にまた顔を出せると思うんだ。退屈だろうけど、ちょっとゆっくり休んだ方がいいよ。じゃあね」

 サムの軽口にリサはつくろった笑顔で答えた。

 サムの車に乗り込むと、俺は先日サムが仕掛けておいた盗聴器をONにしてみた。するといきなり遠くでがさがさと何かが崩れ落ちるような物音が聞こえてきた。


「まったく!どこにあるというのだ! おかしい…」

 サムが運転しながらつぶやいた。

「ブラウン氏は何を探しているんだろう」
「きっとアイスマン氏のケータイなんじゃないか? リサがあんなに連絡を取りたがっているとなると、ケータイを押さえておく必要があるだろう?」
「どういう意味だよ」

 サムはどうやら、本当にわかっていないらしい。俺はすべてを説明するのが邪魔くさくなった。キーボードに打ち込み始めたとき、サムのケータイが鳴った。

 サムは車を路肩に止めて、顔を曇らせた。

「どういうことなんだ?」

 電話の内容はかなり深刻なもののようだ。じっと様子を伺っていると、電話を切ったサムが俺に問いかけてきた。

「なあ、グレン。お前ならどう思う? せっかく新ブランドの辞令がおりたっていうのに、ロイドが無断欠勤で行方不明になっているっていうんだ。」

 ロイドが無断欠勤?まず考えられるのはキールたちの仕業か、やつらに雇われた連中の仕業だろう。俺がそのことを打ち込むと、サムはすぐさま納得して、ロイドが勤務する会社に潜入すると言い出した。
 この状況だ、ロイドの身に危険が迫っているとも考えられるだろう。だがアイスマン氏の方も置いていけない。俺はサムに二手に分かれることを提案して、アイスマン氏の屋敷のそばで車を下ろしてもらうことにした。

 アイスマン家の門をするりと潜り抜けると、正面に古城のような塔が見える。この前来たときに気付かなかったのは、庭木が伸びていたからだろう。その頂にはめ込まれた時計の文字盤に描かれているのは、湖に浮かぶ白鳥。おそらく紋章だろう。
 以前この屋敷にやってきたとき、ブラウン氏の部屋で見つけたカフスボタンと同じ模様だ。はやりあのカフスボタンはアイスマン氏のものだったのだろう。

 ブラウン氏の部屋にアイスマン氏のカフスボタンがあるというのは納得できない。カフスボタンをはずす理由が見つからないのだ。

 俺は、アイスマン家の屋敷に入る前に、辺りをゆっくりと捜索した。古城のような屋敷の周りには花壇や噴水もあった。裏庭には納屋があり、そのすぐそばには大きなポプラが茂っていた。納屋の裏手に携帯用のパソコンを置いて身軽になると、納屋のすぐ脇にある焼却炉に近づいてみた。さっきから、いやな感じのにおいがくすぶったままになっているのだ。
 焼却炉の窓は開いたままで生木が突っ込まれたままになっている。燃やしている途中で火が消えてしまったのだろう。

 人の気配がしたので、慌てて納屋の裏に逃げこもうとした俺は、変な形のものを踏んで肉球に痛みが走った。振り向くと金色の中に青としろがとけた物体があった。これは、紋章と同じ配色。カフスボタンの片方だ。こんなところに落ちているとはどういうことだ。
 俺は気にかけながらもとりあえず納屋のすぐそばのポプラの木によじ登り、様子を伺った。

 さっきの気配はチャーリーだった。チャーリーはガーデニング用の大きなスコップをかかえて花壇までやってくると、こんもりといっぱいに花を咲かせている草花たちを乱暴に抜き始めた。一通り抜き終わると、焼却炉の様子を見て舌打ちをし、窓に突っ込まれた生木を少しだして火をつけなおしているようだった。まだ乾燥もしていない生木を突っ込むとは、随分乱暴なことをする。
 焼却炉の火は再び燃え、煙がモクモクと空に昇っていく。辺りに広がるいやな匂いに頭がくらくらした。
 チャーリーはそのまま花壇にもどり、大きな穴を掘り始めた。そして植木の苗を数本納屋の中から取り出して穴のそばに置いた。なんだ、庭木を植えるだけだったのか。





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最終更新日  June 21, 2010 10:06:44 PM
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