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August 6, 2010
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カテゴリ: 貝の鳩
「いやぁ、王室の食事はうまかったなぁ」

 第3部隊に戻ったジークはご機嫌だった。堅苦しい軍服は早々に脱ぎ、肩につけられていた勲章はケースに戻した。

「ミシェル。聞いてるか?」

 薄い板を挟んで隣の部屋から声がしている。いつもの作業着に着替えたミシェルは軍服を片付けているところだった。

「お前はなにも感じなかったか?」
「何を、ですか?」
「どうにも胡散臭い視線を送っているやつがいたのに、気付かなかったのかと聞いているのだ」

 思わずため息が出る。ミシェルには分かっていた。しかしわざと気付かない振りをして別荘地を出た。パーティー会場の隣にある建物の最上階から、ずっと嫌な視線を感じていたのだ。

「パーティー会場でおもしろいことを聞いた。ウイリアム王の実弟ラングレイ氏はどうやら玉座を狙っているらしい。まさかわが国にもそんな骨肉の争いがあるとはね。それともう一つ。おもしろいことに気が付いた。お前によく似た人物があのパーティーにいた。」


 思わず聞き返した。

「ああ、残念ながら見た目は似ても似つかない。麗しの王女だからな。しかし、顔かたちや雰囲気が似ている。これは役に立つかもしれんな」

 最後の一言はミシェルには聞こえない。ジークは何かに没頭するように黙り込んだ。こうなれば何を尋ねても返事はない。ミシェルは自分の任務に戻った。


 それから半年が過ぎた頃、ジークは多くの内乱を治めた功績が認められ、特殊部隊への配属が決まった。

「お呼びでしょうか?」
「引越しだ!さっさと荷物をまとめて10時に特殊部隊宿舎前に集合!それまでにお前の今までの任務を第4部隊のトムにきっちりと引き継いでおくように。」
「あの、私も引っ越すんでしょうか?」
「命令に従え!駆け足!」

 部屋にやってきたミシェルに、いきなり言いつける。ミシェルには質問の余地がなかった。仕方なく、住み慣れた納戸の荷物を集めると、自宅から持ってきた大きなカバンに詰めた。
 そのまま急いで第4部隊の宿舎へと走ると、トムの部屋を訪ねた。トムはまだ状況がわかっていない様子だったが、もう時間がない。とりあえず、ミシェルがしてきた掃除の手順を伝える。違和感を感じることは事細かに指揮官に報告することも言い忘れなかった。
 ワケがわからないまま、説明を受けているトムの部屋に、仲間が声を掛けてきた。


「はい!」
「そこの小さい奴も一緒に来いだとさ」

 ミシェルは不審に思いながらもトムに続いて指揮官の下に向かった。

「ミシェル、よく来たな」
「あ!ラミネスさん!」

「ラミネスさんはご存知だったのですか?」

 事情を知らないトムの前を言葉が飛び交うばかりだ。

「ああ、すぐにジークから連絡が来たよ。お前も行くんだろ?」
「でも、どうして私まで付いていくんですか?昇格したのは指揮官であって、私には関係ないはずなのに」

 ラミネスはにんまりと笑いながら、そんなミシェルを見た。

「とりあえず、付き合ってやれよ。いいコンビだと思うぜ。」
「ミシェル。ジークさんは乱暴そうに見えるけど、いい人だよ。僕も何度か助けてもらってる。君を連れて行くってことは、きっとこの先に君が活躍できる場所があるってことさ。」

 それまで二人のやり取りを聞いていたトムが口を開いた。

「まあ、そういうことだ。がんばれよ。」
「ありがとうございます!では、失礼します!」

 迷っていた心がすっと開けたような気分だった。任期はあと1年と8ヶ月のはず。そんな短期間でどれだけ活躍できるのかわからないが、父に鍛えてもらった拳法の腕があれば、何とか凌げるかもしれない。ミシェルは覚悟を決めた。

特殊部隊はこの度新設された部隊で、内乱や自然災害、近衛兵でまかなえない王室関連の事件にも出動する。メンバーは職業軍人ばかりで宿舎に家族と共に移り住むということになっている。さすがに宿舎は先の第3部隊とは比べ物にならないほどきっちりとした建物だ。それぞれの部屋はマンションのように独立し、建物の外を歩いただけでは、そこが特殊部隊の宿舎とは到底思えないほどおしゃれなつくりになっている。
ただ一つ違うのは、緊急出動時の赤色燈とスピーカーが各部屋に設置されているということだ。隊長を命ぜられたジークに与えられた部屋は最上階、ゆったりと広い2LDK。一人暮らしには広すぎるほどだ。その隣に併設されたワンルームがミシェルの部屋になる。ワンルームにバストイレ、キッチンがついているだけ。それでもミシェルには最高の居心地だ。

転居してきたメンバーはさっそくミーティングを開く。特殊部隊に配属されるだけあって、みんな個性的な顔ぶれだ。いかにも腕っ節の強そうなディック、クールでスレンダーなスキャットマン、熱血漢のジョージ、メカに強いフィルはぱっと見医学生に見える、優等生タイプのチャーリーは絵に書いたように軍服をパリっと着こなしている。

「新設された特殊部隊のメンバーは見ての通りだ。俺はジーク。この部隊の隊長だ。これからはここが我々の基地ということになる。フィル、司令室の状態はどうだ?」

 フィルは銀縁のめがねを少しずらして親指を立てた。

「よし。外観はどこかの社宅を装っているので、普通に暮らしてもらって構わない。だが、一旦戦闘態勢に入ったら、いつ帰ってくることができるかわからない。それと、なにかの手違いで情報が漏洩することも念頭において、地下に避難通路が設置されている。覚えておいてくれ。」
「地下通路の途中にあるトレーニングルームは自由に使っていいのか?」

 スキャットマンはすでに通路を確認済みのようだ。

「ああ、自由に使ってくれ」

 ディックとジョージがにやりと笑った。





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最終更新日  August 6, 2010 05:57:35 PM
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