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August 10, 2010
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カテゴリ: 貝の鳩



 王室にやってきて2週間が過ぎた頃、王女に面会のものがやってきた。ジークだ。

「王女さま、ご機嫌麗しゅうございます。」

 うやうやしく頭を下げるジークを見て、ミシェルは笑いを堪えるのに苦労した。しかし、周りには近衛兵やラングレイも同席している。うかつには表情が出せない。
 その時、王室の庭の向こうで小さな爆発音が聞こえた。

「今の音は?」

 驚くラングレイにすかさずジークが叫んだ。

「ご心配には及びません。我ら特殊部隊がすぐに解決して参ります!」
「いや、おそらく城内であろう。私の率いる近衛兵の方が手馴れているのだ。者ども、急げ!」



「気をつけろ。リチャードはお前から隔離されている。こちらに近づこうにもガードが固いのだ。これからの通信には鳩を使おう。ラングレイ殿下はどうも裏の顔をお持ちのようだ。もう少し内偵してみないと分からないが、俺の勘では、次に狙われるのはウイリアム王かハドソン王子だ。気をつけろ!」

 そこまで言うと、ふいにミシェルの顔をまじまじと見た。

「お前…。きれいだな」
「え?!」

 遠くからどやどやと足音が近づいてきた。

「大丈夫だ。下らん仕掛けに過ぎなかったよ。私の部下にかかればあんなものは恐るるに足らずだ」
「さすがはラングレイ殿下!」

 ラングレイは鼻息を荒くして笑って見せた。

「ところでジークとやら、このたびは西部の動乱を見事に治めてきたようだな。おって陛下より褒美が出るようだ。」
「はは。有難きお言葉。」

 ジークは跪き、頭を下げる。満足げな殿下は近衛兵を所払いすると、鋭く言う。



 そういうと、さっさと部屋を出た。

「隊長。今の言葉、どういうことですか?」
「ん、確かにおかしい。お前の任務が長期にわたるとは聞いていない。本物の王女が見つかればすぐに終る話だったはずだ。近衛兵にも伝えず探そうともしていないとは、随分なめられたもんだな」
「おかしいです。陛下には懸命に捜索していると伝えていたのに」

 ミシェルは唇をかんだ。



 か細い肩に大きな手がどんと乗った。不満は言わない。今はこの仕事をこなすのみだ。ミシェルは決意を新たにした。

 ミシェルの任務は簡単に終った。おしゃべりなメイドたちにかかれば、王室の情報はいとも簡単に流れだす。夕食を終えると、ミシェルはすぐさま自分の部屋に戻り、待機していた鳩の足に手紙を結びつけた。

「頼んだよ。」

 そっと夕暮れの空に解き放つと、白い翼を広げてさっそうと飛び出していく。後は隊長からの指示を待つのみだ。
 遠く日の暮れるのを眺めていると、乱暴にドアをノックするものがいた。ハドソンだ。

「ハドソン王子!どうかなさいましたか?」
「シッ! その口の利き方はおかしいだろ!とにかく中に入るぞ!」

 ハドソンはミシェルを押しのけるようにしてレイチェルの部屋に入ると、じっと奥の壁を見つめていた。ふいに胸いっぱいに息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

「お前の目的はなんだ。レイチェルの陰謀か!」
「ご存知とは思いますが、私はラングレイ殿下のご依頼で派遣されたまでです。レイチェル王女の陰謀とはどういうことですか?」

 ハドソンは目をそらし、ちっと舌打ちした。

「男のくせに女の格好させられて、お前は恥ずかしくないのか?」

 苦し紛れに怒鳴るハドソンに、冷たい返事が帰ってきた。

「大変失礼な事を申し上げるようですが、我々一般国民はみな、徴兵制によってお国の為に何年間か軍に身を置かねばなりません。私はまだ未成年ですが、病身の父の身代わりで勤めているのです。どんな屈辱的な仕打ちにも耐えなければ成りません。王子、貴方の生活はそんな国民たちの努力によって守られているのです。そのことを、どうかご理解いただきたい」
「ふん!一般階級ごときが!」

 やりたい放題の生活しか知らない王子には、理解できない言葉だった。自分の苛立ちの矛先が見つからず、王子はぷいと部屋を飛び出して行った。

 翌朝、王室の朝食に招かれたミシェルは、食事の後の歓談会にも出席するようにと呼びたてられた。 初めのうちは緊張のあまり何を食べたのかも分からなかったにせ王女だったが、日が経つにつれ、王家の人々の性格も分かり、それなりの立ち位置を理解した。王家の人々だけの歓談会は打ち解けた雰囲気のなかに始まった。しかし、近衛兵の耳打ちにラングレイが退席して再び戻ってきた時、全ては変ってしまった。

「王様に申し上げます。レイチェル王女の髪とティアラが、先ほど犯行声明と共に門前に置かれていたとの報告が入りました。」





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最終更新日  August 10, 2010 05:58:37 PM
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