なせばなる、かも。

なせばなる、かも。

PR

カレンダー

お気に入りブログ

雨上がりの朝 New! Mommy-usagiさん

中森明菜 :『Spicy H… まっちゃんne.jpさん

スコシフシギな世界… まつもとネオさん
りらっくママの日々 りらっくままハッシー!^o^さん
no あこひさん

コメント新着

カフェしんた @ Re[1]:あっれ?(11/11) 千菊丸2151さんへ 確かにそうですよね。…
千菊丸2151 @ Re:あっれ?(11/11) もう11月ですね。 大人になったら、みんな…
千菊丸2151 @ Re[2]:あれ?もう10月だった!(10/07) カフェしんたさんへ 私が働いているのは畜…
カフェしんた @ Re[1]:あれ?もう10月だった!(10/07) 千菊丸2151さんへ ええ、私も同じくです…
千菊丸2151 @ Re:あれ?もう10月だった!(10/07) 最近職場(スーパー)でお節やクリスマス…
August 18, 2010
XML
カテゴリ: 貝の鳩



「お帰り。マーサは元気だったかい?」
「ええ、思ったより元気そうだった。ゴードンさんたちのお名前を聞いて、すごく懐かしいって、言ってたわ。あ、そうだ。デュークって人、知ってる?」
「デューク?ああ、スチュアートの弟だろ?年が離れていたから、スチュアートは随分可愛がっていたんだ。デュークも来たのかい?」

 ゴードンは懐かしそうに言う。

「いいえ、音信不通になってもう何年も経つんですって」
「そうか。それは寂しいなぁ。」

 しんみりとしたところで、ロザーナがやってきた。

「まあ、こんなところにいたの。早く着替えてちょうだい。隣国の王子さまが急にこちらに見えることになったの。急いで!」


 ミシェルの言葉など何の効果もなかった。

「何言ってるの!王女さまにお休みなんてありません!」

 ロザーナはミシェルを無理に引っ張って耳元でしかりつけた。ミシェルは諦めてレイチェル王女の部屋に急いだ。すぐさまドレスに着替え、カツラを被り、メイクを整えて部屋をでた。

「おお、レイチェル王女、探したんだよ。今日は隣国ザッハードのマルコス王子がお越しになる。急に決まったのでおどろいただろうが、先方からの申し出だ。喜んでお受けしなさい。」

 休みはキチンと許可されているのに、随分と好き勝手してくれるじゃないかと心の中で毒づいた。

「ラングレイ殿下、ザッハードのご一行がお見えです。」

 近衛兵の連絡を受け、ラングレイはにんまりと笑った。

「うまくやれよ」

 すれ違いざまそんな言葉を残し、ラングレイはすかさず中央の広間へと急いだ。ミシェルは戸惑った。何をどううまくやれと言うのか。
 しかし、状況は待ってはくれない。すぐさまメイドたちに急かされて、広間へと連れて行かれた。

「レイチェル王女。この度は、私のわがままにおつきあいくださり、感謝しております」


 ロザーナに仕込まれたとおり、ゆっくりと顔を上げるとそこにはつい数時間前に川辺で話をした青年が立っていた。

「やはり君だったか! あえて嬉しいよ!」
「あなたはあの時の!」

 ラングレイはすかさず鋭い視線を送っていたが、問題がなさそうだと分かると、さっさと退室を申し出た。

「本日はレイチェル王女にご用とのこと。我々は、席をはずしておきますゆえ、御用の向きはベルでメイドをお呼びください」



「驚いただろ? さっき出会ったときは気付かなかったんだけど、別れてから思い出したんだ。先日ここで見かけた人だってね」
「私は全然気がつかなかったわ。あの時はショックで…」

 マルコスはそっとミシェルの肩に手を掛けた。

「ごめんね。君を悲しませるつもりではなかったんだ」
「気になさらないで。あの時は気が動転していたんだわ」

 そのまま二人は馬の話やチェスの話で盛り上がり、時間の経つのも忘れていた。

 小さなノックで二人が黙ると、ウイリアム王が入ってきた。

「これは、これは。王様にお目にかかれるとは感激でございます。」
「そんな風にかしこまらなくてもいい。今日はよくぞレイチェルに会いに来てくださったな。ザッハードとわがサンタリカはしっかりとした同盟で結ばれた同志。これからも我が家のように行き来してくだされ」

 ウイリアムは満足げにそういうと、メイドにお茶とお菓子を用意させた。

「わが王室は王妃をなくしたばかりだが、これからは若い世代が賑やかに盛り立てて行ってくれるのが一番なのだ。レイチェル、粗相のないようにな」
「まあ、いやですわ!」

 穏かに会話が弾む中、なぜか違和感を覚えるミシェルだった。


 翌朝、ウイリアム王とラングレイはご機嫌で朝食を摂っていた。相変わらずハドソンは無口なまま食事をすると、さっさと部屋に帰ってしまう。それを目で追うラングレイが、近衛兵の一人に何かを耳打ちしている。
 気付かない振りをしながら、ミシェルはその近衛兵の動きがきになった。早々に食事を切り上げ、自分の部屋に戻ると、小窓に鳩がいるのに気がついた。

「ありがとう」

 はとの足の手紙を開く。そこには急いで書いたらしい慌てた様子の文字が並んでいた。

「ミシェル。落ち着いて聞け。先ほど軍上層部から連絡があった。隊長が消息を絶ったそうだ。俺たちは今週中にリュードに潜入する予定だ。スキャットマンもこちらに戻っている。お前の任務が終わっていないので、連れて行くことは出来ないが、無事を祈ってやってくれ! F」

 堪えていたものがわっとあふれ出してしまった。ベッドに突っ伏して、声を殺して泣いた。嘘だ、嘘に決まっている。自分の目で確かめない限り、私は何も信じたくない!

「どうかご無事で!ずっと祈っています!」

はとの足に手紙をつけ、そっと抱きしめたあと、窓の外に放った。そのままその白い翼の上に乗って飛びだしてしまいたい! ミシェルは唇をかんだ。まだ諦めない。部隊のみんなが行ってくれるのだから。ミシェルが気持ちを落ち着ける前に、ドアがノックされた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  August 18, 2010 10:53:28 AM
コメント(2) | コメントを書く
[貝の鳩] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

プロフィール

カフェしんた

カフェしんた


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: