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March 31, 2022
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カテゴリ: REALIZE
演習場の事故の後、謁見の間にガウェイン王と対峙する二人の魔術師の姿があった。魔術師たちは、それぞれ慌てた様子でヒカルの容体を案じる発言をしたのち、それにしてもと、ヒカルがおもしろがって勝手に火薬庫に火炎を打ち放ったのだと証言した。

「いや、確かに王女様の魔力は素晴らしかったのですが、我々も幼い王女のなさりように振り回されて、助けに入るのが遅れてしまいました。」

大げさに嘆いて見せる二人をガウェイン王は黙ったまま見つめていた。

「陛下、我々の証言は今お話しした通りでございます。その、これよりまだ仕事が残っておりますゆえ…」
「そなたたち、我の言を聞かずに立ち去るというか」

ガウェイン王の目は恐ろしく冷たい。二人がそれの意図するところにおびえ始めたところに、近衛兵の声が聞こえた。

「大魔術師シルベスタ・サーガ殿がお見えです」

背の高い扉が静かに開けられ、銀髪の長い髪をなびかせた長身の美丈夫がゆっくりとした足取りで入ってきた。

「此度は世話になった。ヒカルの様子はどうだ?」


 緩やかになびくローブを身にまとい、妖精のような白い肌と青空のような瞳。そして王をも恐れぬ物言いに、王城魔術師団の魔術師たちは声を上げた。

「貴様、さっきからガウェイン陛下の前で失礼だぞ!」
「そうだ。たまたま居合わせて、良いとこ取りしやがって!」

いきり立つ二人を一瞥し、シルベスタはゆっくりと玉座に歩み寄った。

「久しいな、ガウェイン」
「ふふふ。まったくおまえと言うやつは。どこをほっつき歩いていたんだ。」

ガウェイン王とシルベスタはしばらく見つめ合ったあと、ガシっと握手する。

「とりあえず、報告だ。先ほど私が演習場の近くを通りかかった時、ずいぶんと濃度の高い魔力の塊を感知してな。それで、ちょっと覗いてみたんだ。そうしたら、あの少女に火薬庫に火炎を浴びせろと指導している魔術師がいてな。まあ、だれとは言わないが」

言葉を切って、ふっと王城魔術師の方をみやるシルベスタを見て、その場にいた全員がじっと二人を見る。ロイスとフィルが生唾を飲み込む音が謁見室にささやかに響いていた。

「あの護衛はよくやっていた。煙で視界の悪い中に飛び込んで、ギリギリ少女を守っていたのだからな。本当に大切なものがなんなのか、きちんと分かっているのだろう。それに引き換え…、自分の身を守る結界を張ったとて、そんなものは足元からあっさり崩れ去ると言うのに」

「へ、陛下、あの…」

「残念ですが、今は満室です。物置小屋ぐらいしかご用意できませんね」
「そうか、では、その物置部屋をお前たちの部屋とする。すぐに荷物をまとめろ!」

ロイスとフィルはまったく意味が分からない様子だ。

「ガウェイン、ずいぶん手ぬるいじゃないか。こんな雑魚を置いておくとは」
「ははは。相変わらず手厳しいな。まあ今日のところは貴賓室でくつろいでくれ。あとでゆっくり話そう」



「おまえたちが物置小屋に行くことは確定だからな。まあ、そこにすら今後居られるかどうか」

王の退室を機に、崩れ落ちる二人だった。



演習場の事故から2週間が経っていた。意識を取り戻したリッキーは、傍にいた侍女にすぐさまヒカルの状態を確かめていた。リッキーの意識が戻ったことは、すぐに王宮内に伝わり、アランとジークがすぐさまやってきた。

「リッキー、お前がヒカルの護衛についていてくれて良かった。礼を言うよ」
「王太子殿下!もったいないお言葉です!」

 無理に起き上がろうとするリッキーを、ジークが制した。

「やっと気が付いたんだな。まだ無理はするなよ」
「団長、申し訳ありません。王女を守り切れず…」
「大丈夫だ。あの爆発の直後に魔術師のシルベスタ様がお前たちを救いだしてくださった。気づいているかもしれないが、ここは王族エリアの控室だ。シルベスタ様がヒカル王女様共々毎日治癒魔法を施してくださったんだ。もう、怪我も癒えているだろ? あとはなまった筋肉を鍛えなおすだけだ。」

ジークにそう言われて、改めて自分の体を確かめ、リッキーは深いため息をついた。あの時、耳がおかしくなるような爆音と息をすることすら躊躇われる熱風に包まれながら、かすかに見えたヒカルの靴に覆いかぶさるしかできなかった。主であり、大切な友人でもあるヒカルを絶対に失いたくない!ヒカルの笑顔を守るためなら、命など惜しくもなかったのだ。
今、落ち着いて考えると、傷跡すら残らず、あの日の出来事がなかったことのように思える。こんなことは、ありえないのに。リッキーは顔を曇らせてジークを見た。

「お前はシルベスタ様に会ったことがなかったな。そのうちお目にかかれるだろう。あの御仁は、国内最強の魔術師だ。陛下とともにこの国の建国に力を尽くされた大魔術師でな。お前も今は気持ちと体がちぐはぐで不安定だろうが、じきに落ち着くだろうとおっしゃっていた。まぁ、ちょっと変わった方だが、陛下が親友と位置付ける唯一無二の存在だ」

 リッキーは呆気にとられていた。そんなすごい人がなぜ今まで国政に関わっていなかったのか。ヒカルはともかく、なぞ自分まで助けて傷まで治してくれたのか。

「ふふ、とにかく変わった人なんだ。リカルド、お前のことはとても気に入ってるとおっしゃっていた。これは非常に珍しいことだぞ。」

ジークは楽しくて仕方がないのを必死でこらえているように、妙にまじめな顔で言い、アランも苦笑している。動けるなら早めに鍛えなおしておくことだと言い残すと、ジークを連れてアランは仕事に戻った。

上司を見送ってゆっくりとベッドに起き上がる。まだ少しふらつく体を気力で奮い立たせるが、2週間は体力を奪うのに十分だった。
トントンと、控えめなノックが聞こえ、そっとドアが開いた。

「リッキー…。」

 声の主は、リッキーが起き上がっているのを見て、思わずその場に座り込んだ。

「お、おい。大丈夫か。今、やっと起き上がれたばかりなんだ」
「リッキー、生きてるのね。ちゃんと動けるのね。どこも具合悪くないの?良かった。」

 いつも勝気なベスの頬が、あふれ出る涙でべちょべちょになっている。奇跡を目の当たりにしたように小さな声で確かめながらそっと立ち上がり、ベッドサイドに近づく肩は不安で震えている。リッキーはとっさにそんな肩を抱きしめた。

「心配かけたな。ごめんな、ベス。ヒカルはどうしてる?」
「王女様も3日前に意識を取り戻されたわ。事故の事はほとんど覚えてないみたいだった。シルベスタ様が王女様を治療されて、どこにも傷が残らないようにしてくださったの。リッキーを治療されたのもシルベスタ様よ。」
「そうか…。あの爆発の中にいて、生きているのが信じられないぐらいだ。とにかく、ヒカルが生きていて、元気でいてくれるなら良かった。」
「うん、シルベスタ様から言われたの。リッキーが王女様の盾になってくれたから、王女様の命が守られたんだって。そういえば、リッキーの倒れていた場所だと、もう生きているだけで不思議なぐらいだったって言われてたけど、リッキー、何か危険回避の魔法とか使ってたの?」
「ん?…あ、そういえば、ヒカルにもらったお守りのブレスレットは身に着けていたんだけど、どうなっただろう。」

 ベスは、異世界で初めて見たリッキーのブレスレットの強い魔力を思い出してはっとした。

「確かに、あれは強い魔力が封じ込めてあったわ。だけど、あのシルベスタ様もそんなお守りのことは仰ってなかったわ。ヒカル王女様に魔力を封じ込めるような高度な魔術が使えるのかしら…。ううん、そんなことどうだっていいわ。もし、ヒカル王女様のブレスレットが守ってくれたのなら、最高に嬉しいもの。リッキー、生きていてくれてありがとう。王女様の命を守ってくれて、ありがとう。」

 思わずベスの顔を覗き込む。いつもなら、自分の気持ちだけを優先していたベスが、急に大人びて見えたのだ。

「あ、当たり前だろ。」
「うん、そうだよね。 ごめん、まだ仕事中だから、そろそろ王女様のお部屋に戻るね。リッキーが意識を取り戻したって連絡が来たから、王女様が早く顔を見せて、励ましに行くように言ってくださったの」

 途端にリッキーの顔が赤くなった。部屋の扉をあけながら、ベスがふと振り返る。

「お仕事上がりに、もう一度来るわ。ゆっくりやすんでね」
「ああ、じゃあな」

ベスを見送ると、リッキーはベッドで悶絶した。

「どうしたんだよ、ベス。可愛すぎるじゃないか!!」

 思えば事故の前にもヒカルには散々問い詰められていた。やれ、告白したのか、やれ、デートに誘わないのかとか。なんだよ、ヒカルってまだ12歳かそこらだろ?なんでこっちの気持ち汲み取っちゃうかなぁ。


つづく





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最終更新日  March 31, 2022 09:05:55 PM
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