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May 2, 2022
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カテゴリ: REALIZE2
翌朝は澄み切った青空で、生き生きと輝く草原の緑との対比がすばらしかった。4人は執事に案内されて、牧場を見学し、心地よい風が吹き渡るこの草原で昼食をとることになった。牧草地の端まで迫っている森の木陰にテーブルとイスが設えられている。侍女たちが手際よく食事の用意を整え、4人を迎えてくれた。

「草原を目の前にしていただくのも、気持ちいいものね。」
「お気に召したなら光栄です」

 新鮮な空気を思いっきり吸い込んで深呼吸すると、ヒカルが進められた席についた。

 4人が食事を始めたところで、遠くから鐘の音が鳴りだした。時を告げるような音ではなく、どうやら切羽詰まった何かが起こっているようだ。

「失礼いたします。お食事のところ、大変申し上げにくいのですが、どうやら領地のはずれにオオカミが出たということです。念のため、邸宅にお戻りいただいた方がよろしいかと」
「オオカミですって? 今までこの牧場にオオカミが出たことなんて、なかったじゃない」
「俺が行くよ。どのあたりか分かるか?案内してほしい」

 焦るベスを抑えて、リッキーは有無を言わせない勢いで伝えに来た下働きの男に言うと、「こちらです」と促す男について走っていった。ベスはそんなリッキーに声もかけられず、そのまま見送る事しかできなかった。



  困惑するベスを宥めて、ヒカルが立ち上がった。
邸宅に戻ってしばらくすると、リッキーが下働きの男とともに帰ってきた。フォリナー侯爵が慌てて出迎える。

「リカルド殿、大丈夫ですか?」
「はい、オオカミは仕留めたので安心してください。だけど…」

 そういって、下働きの男の方を見やった。男は悲壮な表情で領主訴える。

「じ、実は、今日だけではなかったのです。他の仲間らも、オオカミに羊をやられたと聞いたのです。領主さま、一度全体の被害を確認していただけないでしょうか?」
「なんだと! 今回だけの事ではなかったのか?!」

 侯爵はすぐさま執事に伝令を出した。1時間もすれば、領民が集まってオオカミ討伐隊が組まれた。リッキーも当然仲間に加わり、出かけて行った。ベスはまたしてもリッキーに声を掛けられず、ただ窓辺から彼らが森に進んでいくのを見守るしかなかった。

 刻々と時間が経つ中、ベスはずっと下を向いたまま動けないでいた。見かねたヒカルは、彼らに軽食の差し入れをするのはどうだろうかと提案する。

「みなさん急いで出かけられたから、喉も乾くだろうし、お茶と軽食を差し入れるのはどうかしら」


 ベスは気を取り直して顔を上げ、厨房へと駆けて行った。

 日が傾きかけたころ、ヒカルとハワードも手伝って、屋敷からほど近いところにお茶を飲むスペースを作り上げた。王女が手伝うというので、恐縮していた執事や侍女たちも、ヒカルの手際の良さに驚き、王女様のご意志ならと、共に作業に入った。
領地の外側を手分けして捜索していた何組かのチームがそろそろ戻り始めている。ベスは、みなを労って、お茶やサンドウィッチを勧めた。リッキーも戻って来て、お茶の支度に気づくと、他のチームの者たちを呼び寄せた。
 領民はみな一様にオオカミの突然の襲撃に驚いていたが、これだけ見回れば大丈夫だろうというのが大方の意見だった。



「おい、ヒカル。一人で行ったらあぶないぞ。まだいるかもしれないんだからな」

そう言いながら追いかけて行った先で、なぜか不自然に立ち尽くしているヒカルに追いついた。

「おい、どうした?」
「えっとね。大きいのが1匹と小さめのが2匹いるわ」

 リッキーはすぐさま剣を取り、オオカミと対峙する。にらみ合いはほんのわずかの時間だった。いきなりガタイの大きなオオカミがリッキー目掛けて襲い掛かってくる。それに合わせて小型のオオカミがヒカルにかみつこうと飛びついた。ヒカルはとっさに掌から突風を飛ばして吹き飛ばしたが、勢い余って、地面に転がってしまった。振り向くとリッキーが小型に足をかみつかれていた。リッキーは大型の牙に剣を当ててせめぎ合って身動きが取れない状態だ。

「リッキー!!」

 ヒカルはすぐさま突風で小型をひるませるが、なかなか離れようとはしない。森の中では炎は危険だが、このままでは埒が明かない。掌に炎を立てると、小型のオオカミに吹き付けた。

「キャン!」と口を離した瞬間、突風で奥の木々の根元に吹き飛ばした。その後ろで、大型のオオカミはリッキーにのしかからんばかりに迫っている。

「リッキー、伏せて!」

 ヒカルは思い切って炎を大型のオオカミの脇腹に叩き込んだ。オオカミはわき腹に煙を立てながら、なおもリッキーから離れない。その時、帰りが遅いと心配したハワードが駆け込んできた。

「なんてことだ!」

剣など持ち合わせていないハワードは、とっさに傍にあった岩を大型のオオカミ目掛けて投げつけた。岩は頭に命中しオオカミは痙攣を起こしたが、それでもリッキーから離れようとしない。他の領民も駆けつけて、なんとかオオカミを捕獲した。
 領民と一緒にやってきたベスが小さな悲鳴を上げてヒカルに飛びついた。

「王女様、お怪我はありませんか?」
「服はひどい状態だけど、私は大丈夫。それよりも、リッキーを見てあげて!」

 気が付くと、リッキーは力尽きて倒れたまま動かない。足からの出血もひどい状態だ。

「ベス、瞬間移動はできる? すぐにシルベスタ様のところに連れて行ってあげて!」
「分かりました!」

 ベスは覚えたばかりの瞬間移動で、リッキーを王宮に運び込んだ。それを見送ると、ハワードはヒカルを抱き上げて領主の邸宅へと向かった。

「ハワードさん、大丈夫です。どこも怪我なんてしてないですから」
「王女様、今日のことは大変危険な行いでした。もう少し、私やベスを頼ってください。リッキーが気づいてついて行ってくれていなかったら、どうなっていたと思いますか?」
「ハワードさん、怒ってますか?」
「はい、私は今、猛烈に怒っています!!」

 美丈夫に姫抱っこされる王女様を目撃してニヤニヤしていた領民は、一気に背筋を伸ばした。

つづく





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最終更新日  May 2, 2022 09:02:28 AM
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